説明

電界印加装置および半田槽

【課題】フラックスを塗布した半田付け箇所を半田浴中に浸漬した際に、フラックス等のガス凝集体が生成されにくくして、ディップ半田付けに際して半田付け対象周辺にガス凝集体の爆散による半田ボールの飛散を効果的に抑制すること。
【解決手段】本半田付け装置21は、半田槽23と、電界印加装置25とを具備する。電界印加装置25は半田浴27中に電界を印加するもので、電界発生源としてプラス電圧が印加されるプラス電圧印加電極25aと、マイナス電圧を印加するマイナス電圧印加電極25と、両端子25a,25b間に電圧を印加する電源25cとにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品(電子機器)が備える端子などの半田付け対象を半田浴中でディップ半田することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半田槽内に満たした半田浴に、例えばトランス等の端子に巻線を巻き付けてなる半田付け対象を浸漬し、該半田付け対象に半田付け処理をする場合、一般に、ディップ半田付け処理の前段工程として半田付け対象にフラックスを塗布することが行われる。
【0003】
フラックスは、良く知られるように、半田付け箇所における半田濡れ性を高めたりして、半田付けの品質を高めるために行われる(特許文献1参照)。
【0004】
従来の半田槽について図12および図13を参照して説明する。
【0005】
図12に示すように、電子機器本体1の下部から巻線3が巻き付けられた端子5が突出し、その端子3は図示略のフラックスが塗布された状態で半田浴7中に浸漬される。なお、巻線3はエナメル被覆を有しているが、この浸漬により溶けることで端子5と半田付けされる。
【0006】
このディップ半田付けに際して、半田浴7は高温であるために、前記浸漬によりフラックスとエナメルが溶融半田中に溶けることで多数の微小ガス玉9が半田浴7中に発生してくると共に、図13に示すように、これら多数の微小ガス玉9は半田浴7表面に浮上し、その浮上の過程で相互に凝集してその直径が次第に増大し、かつ、加速を付けて半田浴7表面に、浮上してくる。
【0007】
こうして半田浴7表面に浮上してきたガス凝集体11は、半田浴7表面で沸騰により周囲に爆散することが知られている。
【0008】
このとき、ガス凝集体11は径が大きいために、その爆散の衝撃も大きく、その衝撃力で、その周囲の溶融半田が多数の半田ボール13となって飛び散り、この飛び散った半田ボール13が例えばトランス本体1の下面1aにある図示略の回路部分やその他に付着して、例えば回路短絡の要因となる、などの問題を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開08−33974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明においては、フラックスを塗布した半田付け箇所を半田浴中に浸漬した際に、フラックス等のガス凝集体が生成されにくくし、そのガス凝集体が発生しその一部が半田浴表面に浮上しても径が小さい状態で浮上するようにし、半田付け対象周辺での上述した半田ボールの飛散を効果的に抑制できるようにすることを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による電界印加装置は、半田槽の槽壁に装着、接触ないしは接続されて、あるいは前記半田槽内の半田浴中に浸漬されて用いられ、前記半田浴中に電界を印加する少なくとも1つのプラス電圧を連続的もしくは断続的に印加する電極を有するか、少なくとも2つ一対のプラスおよびマイナスの電圧を連続的に印加するもしくは断続的に印加する電極により構成され、前記プラス電圧印加電極には電界発生源として電圧が印加される、ことを特徴とする。
【0012】
前記電圧の印加形態は、特に限定されるものではなく、電圧を連続的に印加する場合は、直流電圧の形態でも、交流電圧の形態でもよく、さらに、それらに準じる形態でもよく、また、電圧を断続的に印加する場合は、パルス電圧の形態でも、その他のいかなる形態でもよい。
【0013】
前記電極の形状は、特に限定されるものではなく、端子状、ブロック状、その他の形状を含む。
【0014】
前記半田槽は、ディップ式、噴流式のいずれも含む。
【0015】
前記電圧印加電極は、前記半田槽全体が導電材料製であるときはその槽壁に、装着、接触ないしは接続される電極とし、前記半田槽全体が絶縁材料製であるときはその槽壁の一部に埋設ないしは槽壁に装着される電極とし、前記半田槽に対して固定または前記半田浴の深さ方向に移動してその設置位置が変更可能としてよい。
【0016】
前記電圧印加電極は、前記半田浴中への電界印加のときに当該半田浴に浸漬される電極とし、かつ、融点が前記半田浴温度より高い材料で作られた電極としてよい。
【0017】
前記電圧印加電極の上方にあって前記半田浴表面を覆うカバーを備えてよい。
【0018】
前記電圧印加電極は、前記半田浴で半田付けされる半田付け対象を保持する保持治具に端子状に下方に突出して設けられる電極とし、前記保持治具は前記半田浴表面に対して上下移動可能としてよい。
【0019】
前記電圧印加電極を、前記半田浴で半田付けされる半田付け対象あるいはこれを保持する保持治具に下方に突出して設け、かつ、前記保持治具に設けているときは、前記保持治具に固定するかまたは前記プラスとマイナスの電圧印加電極を互いの間を遠近移動可能としてよい。
【0020】
電子部品保持治具には、前記電界印加装置における電圧印加電極を下方に延びるように設けてよい。
【0021】
電子部品には、前記電界印加装置における電圧印加電極を下方に延びるように設けてよい。
【0022】
本発明による半田槽は、前記電界印加装置における少なくともプラス電圧印加電極が槽壁に装着、接触ないしは接続可能あるいは半田浴中に浸漬可能としてある、ことを特徴とする。
【0023】
この半田槽は、その槽壁に前記電極が設けられていない状態であっても、該電極を槽壁に装着、接触ないしは接続可能であれば、本発明の半田槽に含むことができるものであり、また、半田槽内に半田浴が有っても無くても、電極を半田浴中に浸漬することが可能な構造になっていれば、本発明の半田槽に含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明においては、プラスとマイナスの電圧印加電極を用いて半田浴中に電界を印加することができるので、フラックスを塗布した半田付け対象を半田浴中に浸漬して半田付けする際に、フラックス等の微小ガス玉が発生すると、それら微小ガス玉はプラス電圧印加電極に捕捉することができ、これにより、半田浴表面へ浮上する微小ガス玉数が減少し、また、凝集しても大きな凝集体にはならないので、半田浴表面でガス凝集体が爆散することによる半田ボールの飛散を効果的に抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る半田付け装置と、半田槽の半田浴中に電界を印加する電界印加装置とを示す図である。
【図2】図2は、図1の半田付け装置において、電界印加装置により半田槽内の半田浴に電界印加したときのガス玉の生成と電界印加電極側でガス玉が捕捉される状態を示す図である。
【図3】図3は半田槽側壁に対するプラス電圧印加電極の接続位置の変形例を示す図である。
【図4】図4は半田槽側壁とプラス電圧印加電極との接続位置の変形例を示す図である。
【図5】図5(a)は直流電源の電圧波形図、図5(b)はパルス電源の電圧波形図である。
【図6】図6は電界印加装置の電極が投入されている状態を示す半田槽断面図である。
【図7】図7は半田槽の半田浴表面上にカバーが配置されている状態を示す半田槽断面図である。
【図8】図8(a)は電界印加装置の電極が装着付きの半田付け対象保持治具において該電極が半田浴に浸漬前の状態を示す図、図8(b)は前記浸漬状態を示す図、図8(c)は前記浸漬状態から前記電極を半田浴から引き上げた状態を示す図である。
【図9】図9(a)は図8の保持治具に取り付けた電極の移動の説明に用いるもので電極が第1の移動位置にある状態を示す図、図9(b)は前記電極が第2の移動位置にある状態を示す図である。
【図10】図10はトランスと半田槽とを示すもので、該トランスのコイルボビンに電界印加装置の端子状電極が取り付けられている状態を示す図である。
【図11】図11(a)は電極が半田浴に浸漬前の状態にある噴流半田槽全体の概略構成を示す図、図11(b)は図11(a)の要部拡大図である。
【図12】図12は、従来の半田槽において半田付け対象にディップ半田付けする際に微小ガス玉が生成する状態を示す図である。
【図13】図13は、従来の半田槽において前記微小ガス玉が凝集してガス凝集体が生成され、そのガス凝集体により半田ボールが飛散する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態に係る電界印加装置、半田槽および半田付け装置を説明する。
【0027】
図1を参照して、半田付け装置21は、ディップ式の半田槽23と、電界印加装置25とを備える。半田槽23には、半田浴27が入れられる。半田槽23は、槽壁が四方を囲む側槽壁23a,23bと底槽壁23cとで囲まれてなる。半田槽23におけるこれら槽壁は、銅などと比較して抵抗値が高いステンレスで構成される。
【0028】
電界印加装置25は、半田浴27中に電界を発生させる電界発生源としてプラス電圧が印加されるプラス電圧印加電極25aと、プラス電圧に対して相対的にマイナス電圧を印加するマイナス電圧印加電極25bと、両端子25a,25b間に電圧を印加する電圧可変型の直流電源25cと、により構成される。
【0029】
プラス電圧印加電極25aの一端側は、半田槽23の槽側壁23aに接続され、他端側は、直流電源25cのプラス側に接続される。
【0030】
直流電源25cのマイナス側は接地される。
【0031】
マイナス電圧印加電極25bは、一端側が半田槽23の槽側壁23bに接続され、他端側が接地される。
【0032】
プラス電圧印加電極25aの一端側と、マイナス電圧印加電極25bの一端側との間には半田浴27が介在し、これにより半田浴27中にはプラス電圧印加電極25a側を電界発生源として電界が印加される。この電界の強度は、直流電源25cの電圧調整により調整できるようになっている。
【0033】
図2を参照して、半田槽23の半田浴27中に、電子部品の一例であるトランスにおいて、巻線端部3を巻き付けた端子5が半田付け対象として浸漬される。この浸漬により、その半田付け対象に塗布してあるフラックスや巻線3のエナメル被覆が溶けて微小ガス玉29が発生してくる。
【0034】
微小ガス玉29を構成する成分のうち、フラックスはロジンベースのフラックスであり、半田濡れ性向上のために各種活性剤が添加されており、半田浴27中ではマイナスイオンに帯電した微小ガス玉29となる。
【0035】
この場合、半田浴27中にはプラス電圧印加電極25aから電界が印加されているので、微小ガス玉29には微小ガス玉29自身が有する浮上力以外に、その浮上を阻止する方向にプラス電圧印加電極25aによるイオンクーロン力が作用する。その結果、微小ガス玉29は、自身の浮上力で半田浴27表面に即座に浮上していくのではなく、浮上力よりもイオンクーロン力が大きいと、イオンクーロン力によりプラス電圧印加電極25a方向に引き寄せられる。この場合、微小ガス玉29の浮上力よりもイオンクーロン力が大きくなるように直流電源25cの電圧調整により電界強度が調整されている。
【0036】
そのため、多数の微小ガス玉29はプラス電圧印加電極25aが設けてある半田槽23の内周壁面に付着していき、それらが半田浴27表面に向けて浮上する過程で凝集してガス凝集体となることが抑制されるようになる。
【0037】
また、ガス凝集体31が、多少、生成されたとしても、半田槽23の内周壁面に付着する微小ガス玉29が多くなり、凝集できる微小ガス玉29の数が少なく、結果、ガス凝集体31の生成径は小さく、これによりガス凝集体31が半田浴27表面で爆散したとしても半田ボールを強く飛散させるほどの爆散にはならず、また、その爆散による半田ボールがトランス本体に付着するようなことは抑制される。
【0038】
なお、上述の実施形態では、半田槽23の槽材料が比較的高抵抗であるステンレス製であり、そのため、プラス、マイナス電圧印加電極25a,25bが半田槽23の槽壁に接続されても、プラス、マイナス電圧印加電極25a,25b間には所要の電位差があり、必要とする電界を半田浴27に印加することができる。
【0039】
この場合、半田槽23全体を絶縁性材料で構成した場合、プラス電圧印加電極25aを直接、半田槽23の槽壁に接続してもよいが、例えば図3(a)で示すように半田槽23の槽側壁23aに電極33を埋設し、これにプラス電圧印加電極25aを接続したり、あるいは、図3(b)で示すように槽側壁23aに電極35を設け、この電極35にプラス電圧印加電極25aを接続したりしてもよい。
【0040】
なお、半田槽23を低抵抗材料で構成した場合、プラス電圧印加電極25aを半田槽23外壁に絶縁性材料を設け、この絶縁性材料上にプラス電圧印加電極25を設けることで当該プラス電圧印加電極25aを半田槽23外壁からフローティングさせる一方、マイナス電圧印加電極25bはその一端側を半田槽23に接続し、他端側を接地させるとよい。
【0041】
また、プラス電圧印加電極25aは、図4で示すように、半田浴27の浴面に応じて槽側壁23aに対しての接続位置を25a´、25a´´と上下方向に移動可能にして、微小ガス玉29の捕捉位置を変更可能としてもよい。これは、プラス電圧印加電極25aを半田浴表面から所定深さdの位置に対応して設けることが好ましいからである。この深さdとしては、フラックスガスが凝集体となって半田浴表面に加速度を付けて浮上する以前にプラス電圧印加電極25aが接続する位置の半田槽23の内周壁面に付着させることができる深さが好ましい。
【0042】
また、プラス電圧印加電極25aは、実施形態では半田槽23の槽側壁23aに接続したが、これに限定されず、槽底壁23cでもよい。
【0043】
また、半田槽23の槽側壁23aに対するプラス電圧印加電極25aの接続形態は、単に接触させるだけでもよいし、接続固定させてもよいし、コネクタ結合する形態でもよい。電極の形状は特に限定されない。
【0044】
以上の実施形態では、電界印加装置25により半田浴27中に電界を印加するようにしたので、フラックスを塗布した半田付け対象を半田浴中に浸漬して半田付けする際に、フラックス等がガス玉となって凝集して半田浴27表面へ浮上しようとしても、電界印加装置25により捕捉されるようになって、フラックス等の凝集は起きにくくなり、また、凝集が起きても大きなガス凝集体にはならずに済むので、半田浴27表面で多少爆散してもその爆散力は小さくて済み、こうした爆散による半田ボールの飛散を効果的に抑制できるようになる。
【0045】
図5(a)に電源25cの出力電圧V1の波形を示す。実施形態では電源25cは、直流電源であったが、これに限定されず、この直流電源に代えて、図示略のパルス電源から図5(b)に示すパルス電圧V2をプラス電圧印加電極25aに印加するようにしてもよい。
【0046】
このパルス電圧V2の電圧周波数および電圧の大きさなどは、半田付け対象および半田付けの内容などに応じて適宜調整するとよい。
【0047】
図6を参照して本発明の他の実施形態を説明する。半田槽23における半田浴27中に半田付け対象の一例であるトランス本体35の端子35aが浸漬されている。
【0048】
トランス本体35における半田付け対象である端子35aを間に挟んで対向するように、耐熱処理が施されてかつ通電可能とされたケーブル37,39の先端に吊持させたプラスとマイナスの電圧印加電極41,43を浸漬する。
【0049】
そしてケーブル37,39を介して両電圧印加電極41,43間に電圧を印加することで、半田浴27中に電界を印加することができる。
【0050】
この場合、電圧印加電極41,43の材料としては耐熱性が要求されるので、例えば、タングステン、ジルコニア、セリウム、ランタニウム、ハフニウム、トリウム等の金属やそれらの合金材料、あるいは、グラファイト等の非金属材料を、非消耗電極として用いることができる。
【0051】
半田浴27の温度が300〜400℃であれば、その温度で電極が溶かされない融点温度の金属であることが必要であり、タングステン等はそれら半田浴27の温度より十分高い融点を有する。
【0052】
なお、半田浴27表面には、スズの酸化物である半田ドロスが発生するので、所要の半田付けが終了すると、一般に、半田浴27表面から半田ドロスを除去する処理が行われる。このため、半田ドロス除去処理工程により、半田付け作業時間およびコストが余分に必要となっている。
【0053】
そこで、実施形態では、図7に示すように、これらプラスとマイナスの電圧印加電極41,43上方の半田浴27表面を覆うようにカバー45,47を設ける。
【0054】
プラス電圧印加電極41には、前述したように、フラックス等のガス玉49が付着し、また、ガス玉49の一部は半田浴27表面に浮上してくる。また、半田浴27表面には、良く知られる半田ドロス51が発生してくる。なお、一部のガス玉は、小規模であるが爆散して小半田ボール53として飛散したりする。
【0055】
実施形態では、カバー45は小半田ボール53の周囲への飛散を防止したり、半田ドロス51が端子35a方向に漂流しないように堰き止めたりするために設けられる。また、マイナス電圧印加電極43側にもカバー47を設けている。これはマイナス電圧印加電極43をプラス電圧印加電極として使用する場合もあるからである。交互に電極をプラス、マイナスと使用することで、電極消耗を抑制することができる。また、マイナス電圧印加電極43をプラス電圧印加電極として使用しない場合でも半田ドロス51の堰き止めとして用いることができる。
【0056】
このようにカバーにより小半田ボール53の周囲への飛散を防止することで半田付け対象への半田付けを良好に行うことができ、また半田ドロス51が端子35a方向に漂流しないように堰き止めることができるので、半田ドロス除去処理工程を削減ないしは軽減することができ、半田付け作業時間およびコストを低減することができる。
【0057】
図8を参照して本発明のさらに他の実施形態を説明する。図8(a)は、電界印加装置の電極が装着付きの半田付け対象保持治具において該電極が半田浴に浸漬前の状態を示す図、図8(b)は前記浸漬状態を示す図、図8(c)は前記浸漬状態から前記電極を半田浴から引き上げた状態を示す図である。これらの図を参照して、半田槽23の半田浴27上方に例えばトランス本体55の端子55aが半田付け対象とされる。このトランス本体55は、保持治具57に保持されて半田槽23の半田浴27の上方に保持されている。
【0058】
保持治具57には、端子55aを間に対向するように、端子状にプラス、マイナス電圧印加電極59,61が設けられ、これらプラス、マイナス電圧印加電極59,61は下方に延びている。このプラス、マイナス電圧印加電極59,61は端子55aよりもその下端が下方に延びている。そして、保持治具57が矢印方向に下降されて図8(b)で示すようにプラス、マイナス電圧印加電極59,61が半田浴27に浸漬されると共に、端子55aも半田浴27に浸漬される。
【0059】
そして、端子55aに半田付けが行われると共にプラス、マイナス電圧印加電極59,61間に電圧が印加される。そして、この半田付けにより発生したフラックスのガス玉(図示略)は、プラス電圧印加電極59に付着する。こうして半田付けが終了すると、図8(c)で示すように、保持治具57を半田浴27から矢印で示す方向に引き上げる。
【0060】
この場合、保持治具57に対してプラス、マイナス電圧印加電極59,61を半田浴27表面に対して水平方向(図9では左右方向)に移動可能とする。
【0061】
そして、保持治具57により保持する電子部品65が大型である場合には、図9(a)で示すように、マイナス電圧印加電極59,61を水平方向に互いに離間するよう移動させてその対向間距離を電子部品65の端子65aの半田付けサイズに合わせた対向間距離Aとする。
【0062】
また、保持治具57により保持する電子部品67が小型である場合には、図9(b)で示すように、マイナス電圧印加電極59,61を水平方向に互いに接近するよう移動させてその対向間距離を電子部品67の端子67aの半田付けサイズに合わせた対向間距離B(<A)とする。
【0063】
このようにして保持治具57に対してプラス、マイナス電圧印加電極59,61を半田浴27表面に対して水平方向に移動可能とすることで、電子部品のサイズに合わせた半田付けおよびガス玉の捕捉を行うことができる。
【0064】
図10を参照して本発明のさらに他の実施形態を説明する。この実施形態では、半田付け対象としては一例としてトランスの端子を例とする。このトランス69は、コイルボビン71を有する。
【0065】
このコイルボビン71は、中空巻胴部73、フランジ75、および端子台77を有する。中空巻胴部73には一次、二次側巻線79が巻装される。端子台77下面から複数の端子81が鉛直下方に配列状態で突出している。
【0066】
端子台77下面には電界印加装置としてのプラス電圧印加電極83が端子状に各端子81よりも下方に延びて設けられている。
【0067】
このトランス69の巻線端部85を端子81に巻き付けて半田付けするに際して、そのトランス69を半田浴27表面に下降させ、端子81を半田浴27中に浸漬させる。このとき、プラス電圧印加電極83は端子81よりも下方に位置するので、十分に半田浴27中に浸漬される。
【0068】
この場合、マイナス電圧印加電極は半田槽23が接地される場合は省略することができる。半田槽23が接地されない場合は、半田浴27中にマイナス電圧印加電極を配置してもよい。
【0069】
いずれにしても、端子81への半田付けにおいては、端子台77の下面に設置したプラス電圧印加電極83に電圧を印加すると、そのプラス電圧印加電極83にはその半田付けで発生したフラックスのガス玉を捕捉することができる。
【0070】
図11を参照して本発明のさらに他の実施形態を説明する。図11(a)は、半田浴が噴流式の半田槽の場合であって、その全体の概略構成を示し、図11(b)は、その要部を拡大して示す図である。
【0071】
これらの図を参照して、噴流半田槽23Aの半田浴27上方に例えばトランス本体87の端子85aが半田付け対象とされる。この端子85aには巻線端部85bが巻装されている。
【0072】
トランス本体87は、保持治具89に保持されて噴流半田槽23Aの半田浴27の上方に保持されている。噴流半田槽23A内には、モータ91で回転駆動されるプロペラ93が配備されている。
【0073】
プロペラ93が回転すると、噴流半田槽23A内の半田は矢印P0方向に移動し、半田浴27表面で矢印P1,P2のように半田が盛り上がって噴流半田27aが発生する。
【0074】
この噴流半田27aにより、端子85aに巻線端部85bが半田付けされる。
【0075】
なお、噴流半田槽23Aには、外槽23Bが設けられている。噴流半田槽23A内の半田は、矢印P3から外槽23Bに入り、外槽23B内を矢印P4に移動し、プロペラ93により矢印P5から半田吸込口101を介して吸い込まれて噴流半田槽23A内に戻るようになっている。
【0076】
なお、噴流半田槽23Aによる半田付けは、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行われてもよい。
【0077】
保持治具89には、プラス、マイナス電圧印加電極95,97が設けられ、これらプラス、マイナス電圧印加電極95,97は、端子85aよりもその下端が下方に延びている。そして、保持治具89が下降されて図11(b)で示すようにプラス、マイナス電圧印加電極95,97(一方の電極97のみ図示)が半田浴27に浸漬され、端子85aも半田浴27の噴流半田27aに浸漬される。この場合、半田浴27中の半田はプロペラ93により、矢印P0の方向、つまりプラス電圧印加電極95方向に流れているので、半田付けにより、噴流半田27a内に発生したフラックスのガス玉99は、プラス電圧印加電極95方向に高速移動して該電極95に効果的に付着して捕捉される。
【0078】
上記実施形態で説明したように、半田付け対象を半田浴中でディップ半田するに際しては、電界印加装置により半田浴中に電界を印加するようにしたので、フラックスを塗布した半田付け箇所を半田浴中に浸漬して半田付けする際に、フラックス等が微小ガス玉となって凝集して半田浴表面へ浮上しようとしても、前記電界印加装置により捕捉されてしまう結果、フラックス等は凝集しにくくなり、また、凝集しても大きな凝集体となって半田浴表面に浮上しなくなり、結果として従来のように大きいフラックス等のガス凝集体が半田浴表面で爆散しなくなり、また、爆散しても小さいガス凝集体の爆散で済み、こうした爆散による半田ボールの飛散を効果的に抑制できるようになる。これにより、信頼性が高い半田付けを行うことができる。
【符号の説明】
【0079】
21 半田付け装置
23 半田槽
25 電界印加装置
25a プラス電圧印加電極
25b マイナス電圧印加電極
25c 電圧可変型直流電源
27 半田浴
29 微小ガス玉
31 ガス凝集体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田槽の槽壁に装着、接触ないしは接続されて、あるいは前記半田槽内の半田浴中に浸漬されて用いられ、前記半田浴中に電界を印加する少なくとも1つのプラス電圧を連続的もしくは断続的に印加する電極を有するか、少なくとも2つ一対のプラスおよびマイナスの電圧を連続的に印加するもしくは断続的に印加する電極により構成され、前記プラス電圧印加電極には電界発生源として電圧が印加される、ことを特徴とする電界印加装置。
【請求項2】
前記電圧印加電極は、前記半田槽全体が導電材料製であるときはその槽壁に、装着、接触ないしは接続される電極であり、前記半田槽全体が絶縁材料製であるときはその槽壁の一部に埋設ないしは槽壁に装着される電極であり、かつ、前記半田槽に対して固定または前記半田浴の深さ方向に移動してその設置位置が変更可能になっている
請求項1に記載の電界印加装置。
【請求項3】
前記電圧印加電極は、前記半田浴中への電界印加時に当該半田浴に浸漬されると共に、かつ、融点が前記半田浴の温度よりも高い材料で作られた耐熱性の電極である、
請求項1に記載の電界印加装置。
【請求項4】
さらに前記電圧印加電極の上方にあって前記半田浴表面を覆うカバーを備える、
請求項3に記載の電界印加装置。
【請求項5】
前記電圧印加電極が、前記半田浴で半田付けされる半田付け対象あるいはこれを保持する保持治具に下方に突出して設けられ、かつ、前記保持治具に設けられているときは、前記保持治具に固定または前記プラスとマイナスの電圧印加電極が互いの間を遠近移動可能に設けられている、
請求項1に記載の電界印加装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の電界印加装置における少なくともプラス電圧印加電極が槽壁に装着、接触ないしは接続可能あるいは半田浴中に浸漬可能としてある、
ことを特徴とする半田槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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