説明

電界発光素子及びその製造方法

【課題】 R、G、Bの各色の発光が安定して得られ、しかも簡便なプロセスで容易かつ低コストに作製できる積層体を提供すること。
【解決手段】 各発光素子部21B、21G、21Rに共通のガラス基板6上において、少なくとも3種の各発光素子部に共通の透明電極5を形成し、この透明電極上において各発光素子部を含む領域上に共通のホール輸送層形成材料層からなる各ホール輸送層4a、4bを形成し、これらの各ホール輸送層を含む領域上において、各発光素子部を含む領域上に共通の電子輸送層形成材料層からなる各電子輸送層2を形成し、更に、これらの各電子輸送層上に、各発光素子部のそれぞれのカソード電極1を透明電極に対向して形成し、青色発光素子部21Bではホールブロック層33を形成し、ホールブロック層33のない緑色発光素子部21Gを形成し、赤色発光素子部21Rでは赤色発光層32を形成していること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界発光素子及びその製造方法に関し、例えば、自発光の平面型ディスプレイであって、特に、有機薄膜を電界発光層に用いる有機電界発光カラーディスプレイ等の表示素子又は発光性デバイスに好適な電界発光素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マルチメディア指向の商品を初めとして、人間と機械とのインターフェースの重要性が高まってきている。人間がより快適に効率良く機械操作するためには、操作される機械からの情報を誤りなく、簡潔に、瞬時に、充分な量で取り出す必要があり、そのために、ディスプレイを初めとする様々な表示素子について研究が行われている。
【0003】
また、機械の小型化に伴い、表示素子の小型化、薄型化に対する要求も日々、高まっているのが現状である。
【0004】
例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、ノート型ワードプロセッサなどの、表示素子一体型であるラップトップ型情報処理機器の小型化には目を見張る進歩があり、それに伴い、その表示素子である液晶ディスプレイに関しての技術革新も素晴らしいものがある。
【0005】
今日、液晶ディスプレイは、様々な製品のインターフェースとして用いられており、ラップトップ型情報処理機器はもちろんのこと、小型テレビや時計、電卓を初めとして、我々の日常使用する製品に多く用いられている。
【0006】
これらの液晶ディスプレイは液晶が低電圧駆動、低消費電力であるという特徴を生かし、小型から大容量表示デバイスに至るまで、人間と機械のインターフェースとして、表示素子の中心として研究されてきた。
【0007】
しかし、この液晶ディスプレイは自発光性でないため、バックライトを必要とし、このバックライト駆動に、液晶を駆動するよりも大きな電力を必要とするため、結果的に内蔵蓄電池等では使用時間が短くなり、使用上の制限がある。
【0008】
更に、液晶ディスプレイは、視野角が狭いため、大型ディスプレイ等の大型表示素子には適していないことも問題である。
【0009】
また、液晶ディスプレイは、液晶分子の配向状態による表示方法であるので、視野角の中においても、角度によりコントラストが変化してしまうのも大きな問題であると考えられる。
【0010】
また、駆動方式から考えれば、駆動方式の一つであるアクティブマトリクス方式は、動画を扱うに十分な応答速度を示すが、TFT(薄膜トランジスタ)駆動回路を用いるため、画素欠陥により画面サイズの大型化が困難である。
【0011】
液晶ディスプレイにおいて、別の駆動方式である単純マトリクス方式は、低コストである上に画面サイズの大型化が比較的容易であるが、動画を扱うに十分な応答速度を有していないという問題がある。
【0012】
これに対し、自発光性表示素子は、プラズマ表示素子、無機電界発光素子、有機電界発光素子等が研究されている。
【0013】
プラズマ表示素子は低圧ガス中でのプラズマ発光を表示に用いたもので、大型化、大容量化に適しているが、薄型化、コストの面での問題を抱えている。また、駆動に高電圧の交流バイアスを必要とし、携帯用デバイスには適していない。
【0014】
無機電界発光素子は、緑色発光ディスプレイ等が商品化されたが、プラズマ表示素子と同様に、交流バイアス駆動であり、駆動には数百V必要であり、実用性に欠けている。
【0015】
しかし、技術の発展により、カラーディスプレイ表示に必要なR(赤)、G(緑)、B(青)の三原色の発光に成功はしているが、無機材料のために、分子設計などによる発光波長等の制御は困難であり、フルカラー化は困難であると思われる。
【0016】
一方、有機化合物による電界発光現象は、1960年代前半に、強く螢光を発生するアントラセン単結晶へのキャリア注入による発光現象が発見されて以来、長い期間、研究されてきたが、低輝度、単色で、しかも単結晶であったため、有機材料へのキャリア注入という基礎的研究として行われていた。
【0017】
しかし、1987年にEastman Kodak 社のTangらが低電圧駆動、高輝度発光が可能なアモルファス発光層を有する積層構造の有機薄膜電界発光素子を発表して以来、各方面で、R、G、Bの三原色の発光、安定性、輝度上昇、積層構造、作製方法等の研究開発が盛んに行われている。
【0018】
さらに、有機材料の特徴であるが、分子設計等により様々な新規材料が発明され、直流低電圧駆動、薄型、自発光性等の優れた特徴を有する、有機電界発光表示素子のカラーディスプレイへの応用研究も盛んに行われ始めている。
【0019】
有機電界発光素子(以下、有機EL素子と称することがある。)は、1μm以下の膜厚であり、電流を注入することにより電気エネルギーを光エネルギーに変換して面状に発光するなど、自発光型の表示デバイスとして理想的な特徴を有している。
【0020】
図34は、従来の有機EL素子10の一例を示す。この有機EL素子10は、透明基板(例えばガラス基板)6上に、ITO(Indium tin oxide)透明電極5、ホール輸送層4、発光層3、電子輸送層2、陰極(例えばアルミニウム電極)1を例えば真空蒸着法で順次成膜したものである(後記の特許文献1を参照)。
【0021】
そして、陽極である透明電極5と陰極1との間に直流電圧7を選択的に印加することによって、透明電極5から注入されたキャリアとしてのホールがホール輸送層4を経て、また陰極1から注入された電子が電子輸送層2を経て移動し、電子−ホールの再結合が生じ、ここから所定波長の発光8が生じ、透明基板6の側から観察できる。
【0022】
発光層3には、例えばルブレン、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン等の発光物質を使用してよい。これは、電子輸送層2に含有させることができる。
【0023】
図35は、別の従来例を示すものであり、発光層3を省略し、電子輸送層2に上記の如き発光物質を含有させ、電子輸送層2とホール輸送層4との界面から所定波長の発光18が生じるように構成した有機EL素子20を示すものである。
【0024】
図36は、上記の有機EL素子の具体例を示す。即ち、各有機層(ホール輸送層4、発光層3又は電子輸送層2)の積層体を陰極1と陽極5との間に配するが、これらの電極をマトリクス状に交差させてストライプ状に設け、輝度信号回路34、シフトレジスタ内蔵の制御回路35によって時系列に信号電圧を印加し、多数の交差位置(画素)にてそれぞれ発光させるように構成している。
【0025】
従って、このような構成により、ディスプレイとしては勿論、画像再生装置としても使用可能となる。なお、上記のストライプパターンをR、G、Bの各色毎に配し、フルカラー又はマルチカラー用として構成することができる。
【0026】
こうした有機EL素子を用いた、複数の画素からなる表示デバイスにおいて、発光する有機薄膜層2、3、4は一般に、透明電極5と金属電極1との間に挟まれており、透明電極5側に発光する。
【0027】
【特許文献1】特開平8−213172号公報(第7欄3〜30行目、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかし、上記のような有機EL素子は、なお未解決の問題を有している。
【0029】
有機EL素子のカラーディスプレイへの応用を行う上で、R、G、Bの三原色の安定した発光は必要不可欠な条件であるが、そのデバイス化プロセスにおいてR、G、Bの3系統で全く異なる材料系を用いた場合は、特にB色の発光輝度、効率が不十分であり、また製造工程も煩雑となり、時間もかかってしまう。
【0030】
本発明の目的は、簡略かつ低コストに製造でき、かつ高輝度、高効率で安定した発光が可能な素子構造を有する電界発光素子と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明者は、上記のような実情を鋭意検討し、各色の発光領域を有する少なくとも3種の積層体において、できるだけ共通の材料を用いることにより、簡便かつ廉価にデバイスを作製できることをつきとめ、本発明に到達した。
【0032】
即ち、本発明は、ホール輸送性発光層と電子輸送性発光層とを備えた積層体を少なくとも3種有し、少なくとも3色の発光色を呈する電界発光素子であって、
前記積層体のうち第1の積層体は、前記ホール輸送性発光層と前記電子輸送性発光層 との間にホールブロック層を備え、前記ホール輸送性発光層において電子−ホールの再 結合による発光を生じ、
前記積層体のうち第2の積層体は、前記ホール輸送性発光層と接する前記電子輸送性 発光層において電子−ホールの再結合による発光を生じる
ことを特徴とする電界発光素子に係るものである。
【0033】
この電界発光素子において、前記第1の積層体において青色発光が得られ、前記第2の積層体において緑色発光が得られるように構成するのが望ましい(以下、同様)。
【0034】
また、前記積層体のうち第3の積層体は、前記ホール輸送性発光層上に電子輸送性発光層の一部として形成された赤色発光層を備え、前記赤色発光層において電子−ホールの再結合による赤色発光が得られるように構成するのが望ましい(以下、同様)。
【0035】
また、発光領域がホール輸送性発光層と電子輸送性発光層とにそれぞれ独立に存在する各積層体間で、ホール輸送性発光層及び電子輸送性発光層をそれぞれ共通の材料層で形成すれば、各色の発光色を呈する積層体を簡便なプロセスで容易かつ低コストに作製できることになり、また、有効画素領域全面に、上記共通の各層を大開口マスクで形成することにより、成膜性又は段差被覆性が良好となり、カソード−アノード間の漏れ電流も少なくすることができる(以下、同様)。
【0036】
本発明はまた、ホール輸送性発光層と電子輸送性発光層とを備えた積層体を少なくとも3種有し、少なくとも3色の発光色を呈する電界発光素子であって、
前記積層体のうち第1の積層体は、前記ホール輸送性発光層と前記電子輸送性発光層 との間にホールブロック層を備え、前記ホール輸送性発光層において電子−ホールの再 結合による発光を生じ
前記積層体のうち第2の積層体は、前記ホール輸送性発光層と接する前記電子輸送性 発光層において電子−ホールの再結合による発光を生じ、
前記積層体のうち第3の積層体は、前記ホール輸送性発光層及び前記電子輸送性発光 層とは異なる材料からなっていて前記ホール輸送性発光層上に電子輸送性発光層の一部 として形成された発光層を備え、この発光層において電子−ホールの再結合による発光 を生じる
ことを特徴とする電界発光素子、及び、
前記積層体のうち第1の積層体は、前記ホール輸送性発光層と前記電子輸送性発光層 との間にホールブロック層を備え、前記ホール輸送性発光層において電子−ホールの再 結合による青色発光を生じる
ことを特徴とする電界発光素子を提供するものである。
【0037】
また、本発明は、本発明の電界発光素子を再現性良く製造する方法として、ホール輸送性発光層と電子輸送性発光層とを備えた積層体を少なくとも3種有し、少なくとも3色の発光色を呈する電界発光素子を製造する方法であって、
基体上に、第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上において、少なくとも3種の前記積層体に共通のホール輸送性発光層 を形成する工程と、
前記積層体のうち第1の積層体の形成領域において、前記ホール輸送性発光層上にホ ールブロック層を形成する工程と、
前記ホール輸送性発光層上及び前記ホールブロック層上に、少なくとも3種の前記積 層体に共通の電子輸送性発光層を形成する工程と、
前記電子輸送性発光層上に、第2電極を形成する工程と
を有する、電界発光素子の製造方法を提供するものである。
【0038】
本発明は更に、ホール輸送性発光層と電子輸送性発光層とを備えた積層体を少なくとも3種有し、少なくとも3色の発光色を呈する電界発光素子を製造する方法であって、
基体上に、第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上において、少なくとも3種の前記積層体に共通のホール輸送性発光層 を形成する工程と、
前記積層体のうち第1の積層体の形成領域において、前記ホール輸送性発光層上にホ ールブロック層を形成する工程と、
前記ホール輸送性発光層上に、赤色発光層を電子輸送性発光層の一部として形成する 工程と、
前記ホール輸送性発光層上、前記ホールブロック層上、及び前記赤色発光層上に、少 なくとも3種の前記積層体に共通の電子輸送性発光層を形成する工程と、
前記電子輸送性発光層上に、第2電極を形成する工程と
を有する、電界発光素子の製造方法も提供するものである。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、前記した積層体のうち第1の積層体では、ホール輸送性発光層と電子輸送性発光層との間にホールブロック層を形成しているので、ホール輸送性発光層において電子−ホールの再結合を効率よく生じるようにホールブロック層においてホールの輸送を効果的に制御でき、これによって、ホールブロック層に隣接するホール輸送性発光層が発光して青色の光を高輝度、高効率で安定に放出することができる。そして、ホールブロック層が存在しない第2及び第3の積層体では、電子輸送性発光層において電子−ホールの再結合による緑色発光、及び赤色発光層による赤色発光を生じるので、少なくとも青色、緑色及び赤色のフルカラー発光に対応できる電界発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の電界発光素子及びその製造方法においては、前記発光領域が有機化合物からなり、この発光領域を含む有機物質からなる前記積層体を少なくとも3種有し、これらの積層体の少なくとも1種がホールブロック層をホール輸送性発光層と電子輸送性発光層との間に有し、ホール輸送性有機材料中で電子−ホールの再結合による青色発光が得られることが望ましい。以下、ホール輸送性発光層を単にホール輸送層と称し、電子輸送性発光層を単に電子輸送層と称することがある。
【0041】
このような電界発光素子によれば、上記のホール輸送性有機材料中で電子−ホールの再結合による発光が得られること(即ち、ホール輸送層が電子−ホールの再結合領域である発光層を兼ねた構造であること)によって、低電圧駆動でも安定かつ高輝度の発光、特に青色発光が可能になる。
【0042】
従って、これまで、非発光性の優れた電子輸送材料が存在しないために困難な構造であると考えられてきた、電界発光素子(特に、低電圧駆動、自発光、薄型のアモルファス有機電界発光素子)において、ホール輸送層が発光層を兼ねると共に、長時間の安定した発光を与える長寿命な素子構造の電界発光素子を提供することができる。
【0043】
即ち、ホール輸送層が発光層である有機電界発光素子でも、高輝度、高効率の安定した発光を得ることができ、特に、青色発光に関しては顕著であり、DC駆動で10000cd/m2以上、1/100デューティ比でのパルス駆動でも直流換算でピーク輝度55000cd/m2以上を得ることが可能である。
【0044】
また、青色発光素子以外でも、緑色発光、更にドーピングによる赤色発光、黄色発光、またドーピングによる色度の調節も可能である。これにより、優れた色度を持つ青色発光を高輝度で得ることができる有機電界青色発光素子を作製することが可能であり、材料開発における可能性と時間短縮、また、新たな発光材料系及び電子輸送材料の設計指針を示すことができる。
【0045】
本発明による電界発光素子及びその製造方法においては、前記発光領域が主として有機ホール輸送層であり、このホール輸送層中で前記再結合を起こすためのホールブロック層を有することが望ましい。
【0046】
そして、前記ホールブロック層の最高占有分子軌道レベルが、前記ホールブロック層の両側に接して積層された各有機層(特に前記ホール輸送層及び前記電子輸送層)のそれぞれの最高占有分子軌道レベルのうちエネルギー的に低い方の最高占有分子軌道レベル以下にあることが望ましい。
【0047】
また、前記ホールブロック層の最低非占有分子軌道レベルが、前記ホールブロック層の両側に接して積層された各有機層(特に前記ホール輸送層及び前記電子輸送層)のそれぞれの最低非占有分子軌道レベルのうちエネルギー的に低い方の最低非占有分子軌道レベル以上にあり、かつエネルギー的に高い方の最低非占有分子軌道レベル以下にあることが望ましい。
【0048】
また、前記ホールブロック層は蛍光収率の低い非発光性材料からなっていることが望ましく、複数層の積層構造であってもよい。
【0049】
更に、ホールブロック層は材料面で制限はないが、ホール輸送性発光層との界面でのエキサイプレックス(exciplex:2量体)の生成(即ち、発光効率の低下)を防止するためにも、蛍光収率の低い非発光性の材料であることが好ましい。
【0050】
前記発光領域が短波長発光用のホール輸送性材料からなっているのがよい。また、前記ホールブロック層に使用可能な材料としては、図4に示すフェナントロリン誘導体が好適であり、具体的に例示すれば、例えば、図5に示す構造式1、図6に示す構造式2、図7に示す構造式3、図8に示す構造式4、図9に示す構造式5、図10に示す構造式6、図11に示す構造式7、図12に示す構造式8、図13に示す構造式9、図14に示す構造式10の各材料が挙げられる。
【0051】
また、前記発光領域が有機化合物からなり、この発光領域を含む有機物質からなる前記積層体を少なくとも3種有し、これらの積層体の少なくとも1種において、電子輸送性有機材料中で電子−ホールの再結合による緑色発光が得られることが望ましい。
【0052】
更に、前記発光領域が有機化合物からなり、この発光領域を含む有機物質からなる前記積層体を少なくとも3種有し、これらの積層体の少なくとも1種において、電子輸送性有機材料中で電子−ホールの再結合による赤色発光が得られることが望ましい。
【0053】
上記のように、発光領域中で電子−ホールの再結合による青色発光を得るための有機層をホールブロック層として積層することにより、安定かつ高輝度で低電圧駆動のホール輸送性発光層を有する有機電界発光素子を得ることができると共に、このホールブロック層のない有機材料の積層領域では電子輸送層中で電子−ホールの再結合による赤色又は緑色発光を得ることができる、少なくともR、G、Bに対応できる優れた有機電界発光素子を提供することができる。
【0054】
上記の素子は、光学的に透明な基体上に、透明電極、有機層(特に有機ホール輸送層、ホールブロック層、有機電子輸送層)及び金属電極が順次積層されているのが望ましい。
【0055】
この場合、同一基体上で前記透明電極、前記有機層及び前記金属電極がマトリクスパターンを形成している有機電界発光素子として構成されているのがよい。
【0056】
これにより、上記の素子は、好適な有機電界発光素子として構成され、カラーディスプレイ用の素子としても好適なものとなる。
【0057】
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0058】
<第1の実施の形態>
図3は、本発明の第1の実施の形態による有機EL素子21の要部を示す概略断面図である。
【0059】
本実施の形態による有機EL素子21は、少なくとも3種類の各色発光用として、アモルファス有機薄膜の積層体からなる有機電界発光素子部21B(青色)、21G(緑色)、21R(赤色)をそれぞれ共通のガラス基板6上に有したものである。
【0060】
図3(A)に示す青色発光素子部21Bでは、ガラス基板6上にロウ又はライン電極としてITO(Indium Tin Oxide)やZnをドープしたインジウム酸化物等(以下、同様)からなる透明電極5をスパッタリング又は真空蒸着等の方法により形成し、その上に順次、青色発光用のホール輸送層4a、ホール輸送性発光層4b、ホールブロック層33、電子輸送層(又は電子輸送性発光層)2、コラム電極としてのカソード電極1を真空蒸着法により積層している。
【0061】
図3(B)に示す緑色発光素子部21Gでは、ガラス基板6上にITO(Indium Tin Oxide)等からなる上記透明電極5をスパッタリング又は真空蒸着等の方法により形成し、その上に順次、上記のホール輸送層4a、ホール輸送性発光層4b、緑色発光用の電子輸送層2、コラム電極としてのカソード電極1を真空蒸着法により積層し、上記のホールブロック層は設けない。
【0062】
図3(C)に示す赤色発光素子部21Rでは、ガラス基板6上にITO(Indium Tin Oxide)等からなる上記透明電極5をスパッタリング又は真空蒸着等の方法により形成し、その上に順次、ホール輸送層4a、ホール輸送性発光層4b、赤色発光用の電子輸送層32、電子輸送層2、コラム電極としてのカソード電極1を真空蒸着法により積層している。
【0063】
図3の有機EL素子21の特徴は、各発光素子部21B、21G、21Rに共通のガラス基板6上において、少なくとも3種の各発光素子部に共通のロウ電極又はライン電極として透明電極5を形成し、この透明電極上において、各発光素子部を含む領域上に共通のホール輸送層形成材料からなる各ホール輸送層4a、4bを形成し、これらの各ホール輸送層を含む領域上において、各発光素子部を含む領域上に共通の電子輸送形成材料からなる各電子輸送層2を形成し、更に、これらの各電子輸送層上に、各発光素子部のそれぞれのカソード電極1を透明電極5に対向してマトリクス状パターンに形成していることである。但し、各発光素子部は特有の層構成を有しており、青色発光素子部21Bではホールブロック層33、赤色発光素子部21Rでは赤色発光層32をそれぞれストライプパターンに有している。
【0064】
従って、各発光素子部においては、発光領域がホール輸送層4(4a、4b)及び電子輸送層2をそれぞれ共通の材料で形成しているので、各色の発光色を呈するストライプ状の積層体(マトリクス)を簡便なプロセスで容易かつ低コストに作製できることになる。しかも、有効画素領域全面に、上記共通の各層を大開口マスクで形成することにより、成膜性又は段差被覆性が良好となり、カソード−アノード間の漏れ電流も少なくすることができる。
【0065】
青色発光素子部21Bは、ホール輸送層4が発光層としての性能を兼ね備えた構造として構成され、その基本構造は後述する他の実施の形態でも同様である。
【0066】
本実施の形態の素子部21Bの特徴は、上記のホールブロック層33がホール輸送層4と電子輸送層2との間に挿入されて積層されているので、ホール輸送層4中での電子−ホールの再結合を促進させ、ホール輸送層4での発光が得られることである。
【0067】
図15は、上記した本実施の形態(図3(A))の積層構造をバンドモデルで模式的に示したものである。
【0068】
図15において、Al及びAl−Li(アルミニウム−リチウム)からなるカソード1及びITO透明電極5の層に示した太線(L1、L2)は、それぞれのメタルの凡その仕事関数であり、これらの両電極間の各層においては上部の太線l1、l2、l3、l4及び数値はそれぞれの最低非占有分子軌道(LUMO)のレベルを示し、下方の太線l5、l6、l7、l8及び数値はそれぞれの最高占有分子軌道(HOMO)のレベルを示している。但し、図15中のエネルギーレベル値は一例であって、材質によって種々に変化するものである。
【0069】
この有機EL素子においては、図15に示すように、アノードとしての透明電極5から注入されたホールhがホール輸送層4を経て移動し、一方、カソードの金属電極1から注入された電子eが電子輸送層2を経て移動し、この電子−ホールがホール輸送性発光層4において再結合して発光を生じる。
【0070】
カソードとしての金属電極1から注入される電子eは、エネルギーレベルの低い方へ移動する性質があるため、金属電極1、電子輸送層2、ホールブロック層33、ホール輸送性発光層4b、ホール輸送層4aの順に各層の最低非占有分子軌道(LUMO)レベルl1〜4を経由してホール輸送性発光層4b、4aに到達することができる。
【0071】
一方、アノードとしてのITO透明電極5から注入されるホールhは、エネルギーレベルの高い方へ移動する性質があるため、ホール輸送層4a、ホール輸送性発光層4b、ホールブロック層33の順に各層の最高占有分子軌道(HOMO)レベルl5〜l7を経由して電子輸送層2へ移動することができる。
【0072】
しかし、図15に示す如く、ホールブロック層33の最高占有分子軌道(HOMO)レベルl7よりも電子輸送層2の最高占有分子軌道(HOMO)レベルl8の方がエネルギー的に低いため、注入されたホールhはホールブロック層33から電子輸送層2へ移動し難くなり、ホールブロック層33に充満するようになる。
【0073】
この結果、ホールブロック層33に充満したホールhがホール輸送層4での電子−ホールの再結合を促進させ、ホール輸送層4を構成するホール輸送性発光層4a、4bの発光材料を発光させることになる。
【0074】
このように、ホールブロック層33を設けることにより、ホール輸送層4において電子−ホールの再結合を効率よく生じるようにホールブロック層33においてホールhの輸送を効果的に制御している。そして、これにより発光するホール輸送性発光層4a、4bのうち、主としてホールブロック層33に隣接するホール輸送性発光層4bによる発光にホール輸送性発光層4aの発光も加わり、図26の如き特定波長(青色)の光を放出する。
【0075】
本来、カソード電極1からの電子の注入とアノード電極5からのホールの注入とにより、電子輸送層2及びホール輸送層4はそれぞれの層において電子−ホールの再結合が生じる。従って、上記の如ホールブロック層33が存在しない場合には、電子輸送層2とホール輸送層4との界面において電子−ホールの再結合が生じ、長波長の発光しか得られない。しかし、本実施例の如くホールブロック層33を設けることにより、発光性物質が含有されているホール輸送層4を発光領域として青色発光を促進させることが可能になる。
【0076】
上記のように、ホールブロック層33はホールhの輸送を制御するためのものであり、このためには、ホールブロック層33の最高占有分子軌道(HOMO)が、ホール輸送性発光層4b及び電子輸送層2の最高占有分子軌道(HOMO)レベルのエネルギー的に低い方のレベルの最高占有分子軌道(HOMO)レベル以下にあり、かつ、ホールブロック層33の最低非占有分子軌道(LUMO)が、ホール輸送性発光層4b及び電子輸送層2の最低非占有分子軌道(LUMO)レベルの、エネルギー的に低い方の最低非占有分子軌道(LUMO)レベル以上であり、エネルギー的に高い方の最低非占有分子軌道(LUMO)レベル以下であればよく、上記の構成に限定されるものではない。
【0077】
上記のホールブロック層33は、種々の材質で形成できると共に、その厚みもその機能を保持することができる範囲で変化させてよい。その厚みは1Å〜1000Å(0.1nm〜100nm)とするのがよいが、厚みがあまり薄いと、ホールブロック能が不完全で再結合領域がホール輸送層と電子輸送層にまたがり易くなり、またあまり厚いと、膜抵抗の増加から発光しないことがある。
【0078】
緑色発光素子部21Gにおいては、上記のホールブロック層33が設けられていないために、ホールが電子輸送層2内に進入し、電子−ホール再結合が電子輸送層2内で生じるため、この電子輸送層2が発光し、図26の如き特定波長(緑色)の光を放出する。
【0079】
赤色発光素子部21Rにおいては、上記のホールブロック層33の代わりに赤色発光層32を設けているために、ホールがその発光層32内に進入し、電子−ホール再結合が発光層32内で生じるため、この発光層32が発光し、図26の如き特定波長(赤色)の光を放出する。
【0080】
上記の有機EL素子21は、図16のような真空蒸着装置11を用いて作製される。この装置の内部には、アーム12の下に固定された一対の支持手段13が設けられ、この双方の固定手段13、13の間には、透明ガラス基板6を下向きにし、マスク22をセットできるステージ機構(図示省略)が設けられている。そして、ガラス基板6及びマスク22の下方には、支軸14aに支持されたシャッター14が配置され、その下方に所定個数の各種蒸着源28を配置する。各蒸着源は、電源29による抵抗加熱方式で加熱される。この加熱には、必要に応じてEB(電子線)加熱方式等も使用される。
【0081】
上記の装置において、マスク22は画素用であり、シャッター14は蒸着材料用である。そして、シャッター14は支軸14aを中心に回動し、蒸着材料の昇華温度に合わせて、材料の蒸気流を遮断するためのものである。
【0082】
マスク22は実際には、図17に示すように3種類使用し、適宜交換して各種成膜を所定パターンに行うものである。マスク22aを用いて上記のホール輸送層4を大開口23aを介して各素子部に共通に成膜した後、マスク22bを用いてホールブロック層33をスリット状開口23bを介して青色発光素子部21Bに所定パターンに形成し、次いでマスク22cを用いて赤色発光層32をスリット状開口23cを介して赤色発光素子部21Rに所定パターンに形成し、次いでマスク22aを用いて各素子部に共通に電子輸送層2を大開口23aを介して形成し、更にマスク(図示せず)を用いて各素子部にカソード電極1をそれぞれ所定パターンに形成する。
【0083】
こうして、図17に示すように、共通のガラス基板6上の透明電極5上に各発光素子部21B、21G、21Rをそれぞれストライプ状に形成する。なお、これらのストライプは絶縁層(ここでは図示せず)によって各発光エリアに区分されている。このように、透明電極5上に同一パターンに各発光素子部を重ねて形成すると、カソード−アノード間のキャリア輸送性が向上し、両極間の電圧降下を減少させることができる。
【0084】
図1及び図2は、上記の真空蒸着装置により作製した有機EL素子21の具体例を示す図である。即ち、ガラス基板6上に、ライン電極となるITO透明電極5を上記した真空蒸着装置により蒸着後に、コラム方向に沿ってSiO224を所定パターンに蒸着し、このSiO2間に透明電極5をそれぞれ画素パターンに露出させる。次いで、蒸着マスクを用いて各有機層4a、4b、33、32、2及びカラム電極として金属電極1(例えばLiF層1aとAl層1bとの積層体)を順次コラム方向にストライプパターンに形成し、マトリクスを作製する。上記した蒸着マスク22a、22b、22cは有機層4、2、33、32の形成に用いる。なお、有機層33、32は透明電極5上にライン方向に形成したが、透明電極5と直交するカラム方向に形成してもよい。
【0085】
この有機EL素子21によれば、各発光素子部においては、発光領域がホール輸送層4(4a、4b)と電子輸送層2(32)にそれぞれ独立に存在し、各発光素子部間でホール輸送層4(4a、4b)及び電子輸送層2をそれぞれ共通の材料層で形成しているので、各色の発光色を呈するストライプ状の積層体(マトリクス)を簡便なプロセスで容易かつ低コストに作製できることになる。しかも、大面積で有機層4a、4b、2を形成しているので、絶縁層24上を含めて成膜性が向上し、カソード−アノード間の漏れ電流も少なく、安定した信頼性の高い性能を得ることができる。これは、図1(B)中に破線で示すように、絶縁層24の上面を曲面状にすれば、更に一層効果が良好となる。
【0086】
上記の真空蒸着装置11においては、上記した図1及び図2のような画素を有するもの以外に、形状、サイズを変更することができ、多数の小さい画素を個々に、或いは大きい画素を単独に形成することもできる。
【0087】
上記電界発光素子の透明電極、有機ホール輸送層、有機ホールブロック層、赤色発光層、有機電子輸送層及び金属電極は、それぞれが複数層からなる積層構造であってもよい。
【0088】
また、上記電界発光素子における各有機層は、真空蒸着以外にも、昇華又は気化を伴う他の成膜方法或いはスピンコートやキャスト等の方法で形成してもよい。
【0089】
また、上記した電界発光素子のホール輸送性発光層は、この素子の発光スペクトルの制御のために微量分子の共蒸着を行ってもよく、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体等の有機物質を微量含む有機薄膜であってもよい。
【0090】
また、上記電界発光素子は、R、G、Bの3色の発光に好適であるが、その他の発光色をも、使用する発光材料種によって得ることができる。
【0091】
また、ホール輸送材料として使用可能な材料としては、ベンジジン又はその誘導体、スチリルアミン又はその誘導体、トリフェニルメタン又はその誘導体をはじめ、ポルフィリン又はその誘導体、トリアゾール又はその誘導体、イミダゾール又はその誘導体、オキサジアゾール又はその誘導体、ポリアリールアルカン又はその誘導体、フェニレンジアミン又はその誘導体、アリールアミン又はその誘導体、オキサゾール又はその誘導体、アントラセン又はその誘導体、フルオレノン又はその誘導体、ヒドラゾン又はその誘導体、スチルベン又はその誘導体、またはポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物、アニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が挙げられる。
【0092】
具体的には、α−ナフチルフェニルジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、4,4’,4”−トリメチルトリフェニルアミン、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2,2’−チエニルピロール)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
また、電子輸送性材料として使用可能な材料としては、キノリン又はその誘導体、ペリレン又はその誘導体、ビススチリル又はその誘導体、ピラジン又はその誘導体等が挙げられる。
【0094】
具体的には、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン又はこれらの誘導体等が挙げられる。
【0095】
また、赤色発光用材料としては、BSB−BCNの他、上記電子輸送材料中にDCM、DCM2、Nile Red、フェノキサジン等をドープしたものが挙げられる。
【0096】
上記電界発光素子のアノード電極、カソード電極等の使用材料にも制限はない。
【0097】
カソード電極材料については、効率良く電子を注入するために、電極材料の真空準位からの仕事関数の小さい金属を用いるのが好ましく、アルミニウム−リチウム合金以外にも、例えば、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、銀、カルシウム、バリウム、リチウム等の低仕事関数金属を単体で、または他の金属との合金として安定性を高めて使用してもよい。
【0098】
また、アノード電極側から有機電界発光を取り出すため、後述する実施例はアノード電極には透明電極であるITOを用いたが、効率良くホールを注入するために、アノード電極材料の真空準位からの仕事関数が大きいもの、例えば金、二酸化スズ−アンチモン混合物、酸化亜鉛−アルミニウム混合物の電極を用いてもよい。
【0099】
また、発光材料を選択することによって、R、G、Bの三色を発光するフルカラー用、又はマルチカラー用の有機電界発光素子を作製することができる。その他、本発明はディスプレイ用としてだけでなく、光源用としても使用可能な有機電界発光素子に適用できると共に、他の光学的用途にも適用することができる。
【0100】
なお、上記した有機電界発光素子は、安定性を高めるためにゲルマニウム酸化物等で封止を行って大気中の酸素等の影響を排してもよく、また真空に引いた状態で素子を駆動してもよい。
【0101】
<第2の実施の形態>
図24は、本発明の第2の実施の形態による青色発光素子部21Bの要部を示す概略断面図である。
【0102】
本実施の形態による有機EL素子では、図3の素子と比べて、ITO透明電極5上に、ホール輸送性発光層4bを形成し、ホール輸送性発光層を単層に形成していることが異なっている。それ以外の緑色発光素子部21G、赤色発光素子部21Rは、図3の素子と同様である。
【0103】
<第3の実施の形態>
図25は、本発明の第3の実施の形態による青色発光素子部21Bの要部を示す概略断面図である。
【0104】
本実施の形態による有機EL素子では、図3の素子と比べて、ITO透明電極5上に、ホール輸送層(ホール輸送性発光層を兼ねる)4aを形成し、上記した第2の実施の形態と同様にホール輸送性発光層を単層に形成している。それ以外は、上記した第2の実施の形態と同様である。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例について更に詳細に説明する。
【0106】
実施例1
本実施例による有機EL素子21の具体的な構成をその製造方法に基づいて説明する。
【0107】
まず、30mm×36mm、12組のR、G、Bストライプの単純マトリクスを作製するために、53mm×53mmのガラス基板6に例えば膜厚約100nmのITO透明電極5を幅1.15mm、間隔0.1mmで36本形成し、コラム側にはSiO2の真空蒸着により絶縁層24を幅0.5mm、間隔1.0mmで31本形成した。従って、1つの有機電界発光素子作製用のセルの発光領域は1.0mm×1.15mmであり、開口率は60.8%となった。
【0108】
そして、上記のITO透明電極5上に、開口部23aの面積が40.0mm×48.0mmのマスク22aを用い、ITO電極5を含む全体にホール輸送層4aとしてm−MTDATA(4,4’,4”−tris(3−methylphenylphenylamino)triphenylamine:図18の構造式のもの)を蒸着速度0.2〜0.4nm/secで真空蒸着法により真空下で30nmの厚みに蒸着した。
【0109】
次に、このホール輸送層4a上に、ホール輸送性発光層4bとして、α−NPD(α−naphtylphenyldiamine:図19の構造式のもの。これは図20(A)のα−PPD又は図20(B)のα−TPD、図20(C)のTPDでもよい。)を50nmの厚みに真空蒸着(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)して、発光性を有した2層構造のホール輸送層4を形成した。
【0110】
次に、このホール輸送層4上に、面積が1.16mm×49mmであるストライプ状開口23bを12本有するマスク22bに交換して、ITO電極5の発光領域である1.15mm×48.0mmのストライプパターンに、図4に示す一般式で表されるフェナントロリン誘導体、例えばバソクプロイン(2,9−dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline:図6の構造式2で示されるもの)をホールブロック層33として、透明電極5上に20nmの厚み(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)に真空蒸着した。
【0111】
次に、ホール輸送層4上に、面積が1.16mm×49mmであるストライプ状開口23cを12本有するマスク22cに交換して、ITO電極5の発光領域である1.15mm×48.0mmのストライプパターンに、BSB−BCN(図23の構造式で示されるもの)を電子輸送性赤色発光材料層32として、透明電極5上に20nmの厚み(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)に真空蒸着した。
【0112】
その後、マスク開口部23aの面積が40.0mm×48.00mmのマスク22aに交換し、電子輸送層又は電子輸送性発光層2としてAlq3 (8−hydroxy quinoline aluminum:図21の構造式のもの)を40nmの厚みに真空蒸着した。
【0113】
次に、開口部の面積が1.16mm×49mmのマスクに交換し、カソード電極1としてAl−Li(アルミニウム−リチウム合金:Li濃度約1mol%)を約0.5nmの厚みに、更にAlを約200nmの厚みに真空蒸着して、図1に示したR、G、B対応の有機EL素子21を作製した。
【0114】
次に、この実施例による有機EL素子について、素子の特性を測定し、その結果を示す。
【0115】
図26は、図1に示した実施例1による有機EL素子21の分光特性を示すグラフである。即ち、ホールブロック層として機能するバソクプロインを有する発光領域では最大発光波長は460nm、CIE色度座標上での座標は(0.155,0.11)であり、良好な青色発光を呈した。これは、発光スペクトルの形状からα−NPDからの発光であることは明らかであった。また、バソクプロインのない発光部位は、電子輸送性発光材料であるAlq3からの発光が得られ、最大発光波長520nm、CIE(0.33,0.55)の良好な緑色発光が得られた。α−NPDとAlq3 の間にBSB−BCNを蒸着したストライプの部位は、最大発光波長635nm、CIE(0.60,0.39)の良好な赤色発光を得ることができた。
【0116】
そして輝度は、図27に示す如く、青色発光部位では、電流密度500mA/cm2において10000cd/m2であり、また、電流密度1mA/cm2の時の発光効率は1.2lm/Wであった。緑色発光部位では、電流密度100mA/cm2において7000cd/m2であり、電流密度1mA/cm2の時の発光効率は1.1lm/Wであった。赤色発光部位では、電流密度500mA/cm2において5600cd/m2であり、電流密度1mA/cm2の時の発光効率は0.03lm/Wであった。
【0117】
更に、この有機EL素子をデューティ比1/100でパルス駆動したところ、電流密度5500mA/cm2の時に、直流駆動に換算するとピーク輝度55000cd/m2であり、十分に実用に耐えることのできる高性能で高輝度の青色発光素子部を作製することができた。
【0118】
実施例2
本実施例による有機EL素子21の具体的な構成をその製造方法に基づいて説明する。
【0119】
まず、30mm×36mm、12組のR、G、Bストライプの単純マトリクスを作製するために、53mm×53mmのガラス基板6に例えば膜厚約100nmのITO透明電極5を幅1.15mm、間隔0.1mmで36本形成し、コラム側にはSiO2の真空蒸着により絶縁層24を幅0.5mm、間隔1.0mmで31本形成した。従って、1つの有機電界発光素子作製用のセルの発光領域は1.0mm×1.15mmであり、開口率は60.8%となった。
【0120】
そして、上記のITO透明電極5上に、開口部23aの面積が40.0mm×48.0mmのマスク22aを用い、ITO電極5を含む全体にホール輸送層4aとしてm−MTDATA(4,4’,4”−tris(3−methylphenylphenylamino)triphenylamine:図18の構造式のもの)を蒸着速度0.2〜0.4nm/secで真空蒸着法により真空下で30nmの厚みに蒸着した。
【0121】
次に、このホール輸送層4a上に、ホール輸送性発光層4bとして、α−NPD(α−naphtylphenyldiamine:図19の構造式のもの。これは図20(A)のα−PPD又は図20(B)のα−TPD、図20(C)のTPDでもよい。)を50nmの厚みに真空蒸着(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)して、発光性を有した2層構造のホール輸送層4を形成した。
【0122】
次に、このホール輸送層4上に、面積が1.16mm×49mmであるストライプ状開口23bを12本有するマスク22bに交換して、ITO電極5の発光領域である1.15mm×48.0mmのストライプパターンに、図4に示す一般式で表されるフェナントロリン誘導体、例えばバソクプロイン(2,9−dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline:図6の構造式2で示されるもの)をホールブロック層33として、透明電極5上に20nmの厚み(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)に真空蒸着した。
【0123】
次に、ホール輸送層4上に、面積が1.16mm×49mmであるストライプ状開口23cを12本有するマスク22cに交換して、ITO電極5の発光領域である1.15mm×48.0mmのストライプパターンに、DCM2(図22の構造式で示されるもの)とAlq3 (8−hydroxy quinoline aliminum:図21の構造式のもの)とをDCM2のモル比が0.5〜1%となるように、電子輸送性赤色発光材料層32として、透明電極5上に20nmの厚み(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)に共蒸着した。
【0124】
その後、マスク開口部23aの面積が40.0mm×48.00mmのマスク22aに交換し、電子輸送層又は電子輸送性発光層2としてAlq3(8−hydroxy quinoline aluminum:図21の構造式のもの)を40nmの厚みに真空蒸着した。
【0125】
次に、開口部の面積が1.16mm×49mmのマスクに交換し、カソード電極1としてAl−Li(アルミニウム−リチウム合金:Li濃度約1mol%)を約0.5nmの厚みに、更にAlを約200nmの厚みに真空蒸着して、図1に示したR、G、B対応の有機EL素子21を作製した。
【0126】
次に、この実施例による有機EL素子について、素子の特性を測定し、その結果を示す。
【0127】
即ち、実施例1による有機EL素子21と同様、ホールブロック層として機能するバソクプロインを有する発光領域では最大発光波長は460nm、CIE色度座標上での座標は(0.155,0.11)であり、良好な青色発光を呈した。これは、発光スペクトルの形状からα−NPDからの発光であることは明らかであった。また、バソクプロインのない発光部位は、電子輸送性発光材料であるAlq3からの発光が得られ、最大発光波長520nm、CIE(0.33,0.55)の良好な緑色発光が得られた。α−NPDとAlq3の間にDCM2とAlq3を共蒸着したストライプの部位は、最大発光波長645nm、CIE(0.66,0.34)の良好な赤色発光を得ることができた。
【0128】
そして輝度は、青色発光部位では、電流密度500mA/cm2において10000cd/m2であり、また、電流密度1mA/cm2の時の発光効率は1.2lm/Wであった。緑色発光部位では、電流密度100mA/cm2において7000cd/m2であり、電流密度1mA/cm2の時の発光効率は1.1lm/Wであった。赤色発光部位では、電流密度250mA/cm2において160cd/m2であり、電流密度1mA/cm2の時の発光効率は0.04lm/Wであった。
【0129】
実施例3
本発明の第3の実施例による有機EL素子をその製造方法に基づいて説明する。
【0130】
本実施例による有機EL素子では、ホール輸送層4aを設けず、ホール輸送性発光層4bとしてα−NPD(α−naphtyl phenyl diamine:図19の構造式のもの。これは、図20(A)のα−PPD又は図20(B)のα−TPD又は(C)のTPDでもよい。)を真空蒸着法により真空下で例えば50nmの厚みに蒸着(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)しており、ホール輸送性発光層を単層に形成したこと以外は第1の実施例と同様である。
【0131】
図28は、図24に示した実施例3による有機EL素子の分光特性を示すグラフである。
【0132】
この実施例の場合は、最大発光波長(吸収ピーク)は約460nmであり、またCIE色度座標上での座標は(0.155 ,0.11)であり、良好な青色発光を呈した。緑色発光及び赤色発光については、図26と同様であった。
【0133】
そして、図29に示す如く、電流密度400mA/cm2での輝度は1400cd/m2であった。
【0134】
発光スペクトルの形状から、青色発光部位ではα−NPDからなるホール輸送性発光層4bからの発光であることは明らかであった。
【0135】
しかも、図30のしきい値電圧特性に示す如く、電圧が5V位までは電流は殆ど流れず、5Vを過ぎて徐々に流れ始め、6V過ぎから急速に流れ出す。即ち、低電圧駆動が可能であると共に、しきい値電圧特性が良好であることを示している。
【0136】
実施例4
本発明の第4の実施例による有機EL素子をその製造方法に基づいて説明する。
【0137】
本実施例による有機EL素子では、ホール輸送性発光層4aとしてm−MTDATA(4,4’,4”−tris(3−methylphenylphenylamino)triphenylamine:図18の構造式のもの)を真空蒸着法により、真空下で50nmの厚みに蒸着(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)しており、上記した第3の実施例と同様にホール輸送性発光層を単層に形成した。
【0138】
図31は、図25に示した実施例4による有機EL素子の分光特性を示すグラフである。
【0139】
この実施例の場合は、最大発光波長(吸収ピーク)は約500nmであり、またCIE色度座標上での座標は(0.26,0.47)であり、良好な緑色発光を呈した。赤色発光については、図26と同様であった。
【0140】
そして、図32に示す如く、青色発光部位では、電流密度110mA/cm2での輝度は280cd/m2であった。
【0141】
発光スペクトルの形状から、m−MTDATAからなるホール輸送性発光層4aからの発光であることは明らかであった。
【0142】
図33に示す電圧:輝度特性からも、低電圧での駆動が可能であり、輝度が良好である。
【0143】
上記したことから明らかなように、本発明に基づく各実施例1〜4の有機EL素子は、ホールブロック層33をホール輸送性発光材料4a及び/又は4bと電子輸送層2との間に設けることにより、ホール輸送層での電子−ホールの再結合が十分となって発光層を兼ねることができ、効率の高い安定した発光を得ることができる。
【0144】
また、実施例1、2の如き青色発光だけでなく、実施例4で示したような緑色発光や、更にはドーピングによる赤色発光、ドーピングによる色度の調節も可能であった。
【0145】
上記した各実施例により、既存の材料を用いても、優れた色度を持つ青色発光を高輝度で得られる有機EL素子を作製することが可能であることが示され、材料開発における可能性と時間短縮を実現でき、また、新たな発光材料系及び電子輸送材料の設計指針を示すことができるものと考えられる。
【0146】
本発明は、上述した如く、積層体のうち第1の積層体は、ホール輸送性発光層と電子輸送性発光層との間にホールブロック層を備えているので、ホール輸送性発光層において電子−ホールの再結合を効率よく生じるようにホールブロック層においてホールの輸送を効果的に制御でき、これによって、ホールブロック層に隣接するホール輸送性発光層が発光して青色の光を放出することができる。即ち、ホールブロック層をホール輸送性発光層と電子輸送性発光層との間に挿入する構造によって、従来、非発光性の優れた電子輸送材料が存在しないことで困難な構造であると考えられてきた、ホール輸送層が発光層である有機電界発光素子でも、高輝度、高効率の安定した発光を得ることができる。特に、青色発光に関しては顕著であり、DC駆動で10000cd/m2以上、1/100デューティ比でのパルス駆動でも直流換算でピーク輝度55000cd/m2以上を得ることが可能である。
【0147】
また、ホールブロック層が存在しない第2及び第3の積層体では、電子輸送性発光層において電子−ホールの再結合による緑色発光、及び赤色発光層による赤色発光を生じるので、少なくとも青色、緑色及び赤色のフルカラーの発光に対応できる電界発光素子を提供することができる。
【0148】
そして、発光領域がホール輸送性発光層と電子輸送性発光層とにそれぞれ独立に存在する各積層体間で、ホール輸送性発光層及び電子輸送性発光層をそれぞれ共通の材料で形成すれば、各色の発光色を呈する積層体を簡便なプロセスで容易かつ低コストに作製できることになる。また、有機画素領域前面に、上記共通の各層を大開口マスクで形成することにより、成膜性または段差被覆性が良好となり、カソード−アノード間の漏れ電流を少なくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、例えば、自発光の平面型ディスプレイであって、特に、有機薄膜を電界発光層に用いる有機電界発光カラーディスプレイ等の表示素子又は発光性デバイスに好適な電界発光素子及びその製造方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明による有機EL素子の例の要部についてアノードと直交する断面図(A)、アノードに沿う断面図(B)((A)の(B)−(B)線断面図)である。
【図2】同、有機EL素子の概略分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による有機EL素子の要部の概略断面図であって、(A)は青色発光素子部、(B)は緑色発光素子部、(C)は赤色発光素子部である。
【図4】同、ホールブロック層に使用可能なフェナントロリン誘導体の一般式を示す図である。
【図5】同、フェナントロリン誘導体の構造式1を示す図である。
【図6】同、フェナントロリン誘導体の構造式2を示す図である。
【図7】同、フェナントロリン誘導体の構造式3を示す図である。
【図8】同、フェナントロリン誘導体の構造式4を示す図である。
【図9】同、フェナントロリン誘導体の構造式5を示す図である。
【図10】同、フェナントロリン誘導体の構造式6を示す図である。
【図11】同、フェナントロリン誘導体の構造式7を示す図である。
【図12】同、フェナントロリン誘導体の構造式8を示す図である。
【図13】同、フェナントロリン誘導体の構造式9を示す図である。
【図14】同、フェナントロリン誘導体の構造式10を示す図である。
【図15】同、実施の形態による有機EL素子の積層構造を模式的に示すバンドモデル図である。
【図16】同、実施の形態に使用する真空蒸着装置の概略断面図である。
【図17】同、実施の形態に使用する蒸着マスクと作製された有機EL素子の概略平面図である。
【図18】同、実施の形態に使用するm−MTDATA(ホール輸送性発光材料)の構造式を示す図である。
【図19】同、実施の形態に使用するα−NPD(ホール輸送性発光材料)の構造式を示す図である。
【図20】同、実施の形態に使用可能な他のホール輸送性発光材料を示し、(A)はα−PPDの構造式、(B)はα−TPDの構造式、(C)はTPDの構造式を示す図である。
【図21】同、実施の形態に使用したAlq3 (電子輸送材料)の構造式を示す図である。
【図22】本発明の実施例に使用したDCM2(電子輸送性発光材料)の構造式を示す図である。
【図23】本発明の他の実施例に使用したBSB−BCN(電子輸送性発光材料)の構造式を示す図である。
【図24】本発明の第2の実施の形態による有機EL素子の要部の概略断面図である。
【図25】本発明の第3の実施の形態による有機EL素子の要部の概略断面図である。
【図26】本発明の第1の実施例による有機EL素子の分光特性を示すグラフである。
【図27】同、第1の実施例による有機EL素子の電流−輝度特性を示すグラフである。
【図28】本発明の他の実施例による有機EL素子の分光特性を示すグラフである。
【図29】同、他の実施例による有機EL素子の電流−輝度特性を示すグラフである。
【図30】同、他の実施例による有機EL素子の電圧−輝度特性を示すグラフである。
【図31】本発明の他の実施例による有機EL素子の分光特性を示すグラフである。
【図32】同、他の実施例による有機EL素子の電流−輝度特性を示すグラフである。
【図33】同、他の実施例による有機EL素子の電圧−輝度特性を示すグラフである。
【図34】従来の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
【図35】同他の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
【図36】同有機EL素子の具体例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0151】
1…金属電極(カソード)、2…電子輸送層、4…ホール輸送層、
4a、4b…ホール輸送性発光層、5…ITO透明電極(アノード)、6…ガラス基板、10、20、21…有機EL素子、21R…赤色発光素子部、21G…緑色発光素子部、
21B…青色発光素子部、22、22a、22b、22c…蒸着マスク、24…絶縁層、32…赤色発光層、33…ホールブロック層、e…電子、h…ホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホール輸送性発光層と電子輸送性発光層とを備えた積層体を少なくとも3種有し、少なくとも3色の発光色を呈する電界発光素子であって、
前記積層体のうち第1の積層体は、前記ホール輸送性発光層と前記電子輸送性発光層 との間にホールブロック層を備え、前記ホール輸送性発光層において電子−ホールの再 結合による発光を生じ、
前記積層体のうち第2の積層体は、前記ホール輸送性発光層と接する前記電子輸送性 発光層において電子−ホールの再結合による発光を生じる
ことを特徴とする電界発光素子。
【請求項2】
前記第1の積層体において青色発光が得られる、請求項1に記載した電界発光素子。
【請求項3】
前記第2の積層体において緑色発光が得られる、請求項1に記載した電界発光素子。
【請求項4】
前記積層体のうち第3の積層体は、前記ホール輸送性発光層上に電子輸送性発光層の一部として形成された赤色発光層を備え、前記赤色発光層において電子−ホールの再結合による赤色発光が得られる、請求項1に記載した電界発光素子。
【請求項5】
ホール輸送性発光層と電子輸送性発光層とを備えた積層体を少なくとも3種有し、少なくとも3色の発光色を呈する電界発光素子であって、
前記積層体のうち第1の積層体は、前記ホール輸送性発光層と前記電子輸送性発光層 との間にホールブロック層を備え、前記ホール輸送性発光層において電子−ホールの再 結合による発光を生じ、
前記積層体のうち第2の積層体は、前記ホール輸送性発光層と接する前記電子輸送性 発光層において電子−ホールの再結合による発光を生じ、
前記積層体のうち第3の積層体は、前記ホール輸送性発光層及び前記輸送性発光層と は異なる材料からなっていて前記ホール輸送性発光層上に電子輸送性発光層の一部とし て形成された発光層を備え、この発光層において電子−ホールの再結合による発光を生 じる
ことを特徴とする電界発光素子。
【請求項6】
ホール輸送性発光層と電子輸送性発光層とを備えた積層体を少なくとも3種有し、少なくとも3色の発光色を呈する電界発光素子であって、
前記積層体のうち第1の積層体は、前記ホール輸送性発光層と前記電子輸送性発光層 との間にホールブロック層を備え、前記ホール輸送性発光層において電子−ホールの再 結合による青色発光を生じる
ことを特徴とする電界発光素子。
【請求項7】
ホール輸送性発光層と電子輸送性発光層とを備えた積層体を少なくとも3種有し、少なくとも3色の発光色を呈する電界発光素子を製造する方法であって、
基体上に、第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上において、少なくとも3種の前記積層体に共通のホール輸送性発光層 を形成する工程と、
前記積層体のうち第1の積層体の形成領域において、前記ホール輸送性発光層上にホ ールブロック層を形成する工程と、
前記ホール輸送性発光層上及び前記ホールブロック層上に、少なくとも3種の前記積 層体に共通の電子輸送性発光層を形成する工程と、
前記電子輸送性発光層上に、第2電極を形成する工程と
を有する、電界発光素子の製造方法。
【請求項8】
ホール輸送性発光層と電子輸送性発光層とを備えた積層体を少なくとも3種有し、少なくとも3色の発光色を呈する電界発光素子を製造する方法であって、
基体上に、第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上において、少なくとも3種の前記積層体に共通のホール輸送性発光層 を形成する工程と、
前記積層体のうち第1の積層体の形成領域において、前記ホール輸送性発光層上にホ ールブロック層を形成する工程と、
前記ホール輸送性発光層上に赤色発光層を電子輸送性発光層の一部として形成する工 程と、
前記ホール輸送性発光層上、前記ホールブロック層上及び前記赤色発光層上に、少な くとも3種の前記積層体の共通の電子輸送性発光層を形成する工程と、
前記電子輸送性発光層上に、第2電極を形成する工程と
を有する、電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2006−245011(P2006−245011A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128988(P2006−128988)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【分割の表示】特願平10−2984の分割
【原出願日】平成10年1月9日(1998.1.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】