説明

電着塗装装置

【課題】塗装境界線のばらつきを抑えることが可能な電着塗装装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の電着塗装装置10によれば、旋回流となって流れる電着塗料液に対する電磁コイルWの相対移動方向の前方に、液面カバー部材30が配置され、その液面カバー部材30が、電着塗料液の液面に宛われて波の発生を抑制する。即ち、電着塗料液の液面と電磁コイルWとが交差した喫水線の上下の変動を抑えることができるから、塗装境界線L1のばらつきを抑えることができる。また、液面カバー部材30の前端部に波押さえ傾斜部30Aを備えたことで、液面カバー部材30が電着塗料液の液面下に潜らないようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電着処理槽内の処理液にワークを沈めて電着塗装を行う電着塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の電着塗装装置では、処理液中の気泡がワークの塗装対象部に付着することを防止するために、処理液に液流を発生させた状態で電着塗装を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−20094号公報(段落[0036]〜[0038]、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の電着塗装装置では、ワークの下側の塗装対象部に対してのみ電着塗装(所謂、ハーフディップ塗装)を行う場合に、処理液の波立ちにより液面とワークとが交差する喫水線が上下に変動するため、ワークの塗装禁止部と塗装対象部との間の塗装境界線がばらつくという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、塗装境界線のばらつきを抑えることが可能な電着塗装装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る電着塗装装置は、ワークに設けた塗装禁止部を除く全体に電着塗装を行うために、ワークの上端に配置された塗装禁止部をワークホルダにて保持して、ワークのうち塗装禁止部以外の塗装対象部を、電着処理槽内の処理液の液面下に沈めた状態に維持すると共に、ワークを処理液に対して相対移動して塗装対象部の周りの気泡を排除するための液流を発生させて電着塗装を行うことが可能な電着塗装装置において、ワークホルダは、ワークのうち塗装禁止部と塗装対象部との間の塗装境界線より上方に離間した位置を保持するように構成され、塗装禁止部に対して少なくともワークの相対移動方向の前方に配置され、処理液の液面に宛がわれて波の発生を抑える液面カバー部材を備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電着塗装装置において、ワークホルダには、ワークを上下方向で位置決めするワーク位置決め部が設けられ、液面カバー部材は、塗装境界線と略同一高さに位置した下面を有する板状をなしかつワークホルダに固定されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の電着塗装装置において、液面カバー部材の前端部には、先端に向かって下面が徐々に上方に迫り上がった波押さえ傾斜部が備えられているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の電着塗装装置において、液面カバー部材は、ワークのうち塗装禁止部と塗装対象部との間の塗装境界部を受容する塗装境界部受容孔を有して、その塗装境界部受容孔に受容された塗装境界部に対してワークの相対移動方向の前方と両側方とを囲む剛体カバー部と、剛体カバー部のうち塗装境界部受容孔の開口縁部から塗装境界部に向かって張り出し、処理液の液面の波を押さえる弾性体カバー部とを備え、塗装境界部受容孔の後端部を開放するか、或いは、剛体カバーを塗装境界部受容孔を横切る線で分割可能とすることで、塗装境界部を塗装境界部受容孔に対して水平方向で挿抜可能としたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の電着塗装装置において、液面カバー部材は、絶縁体で構成されたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
[請求項1及び2の発明]
請求項1の電着塗装装置によれば、電着処理槽内の処理液に対するワークの相対移動方向の前方に液面カバー部材が配置され、ワークの塗装対象部を処理液の液面下に沈めた状態で、液面カバー部材が処理液の液面に宛われて波の発生を抑える。即ち、処理液面とワークとが交差した喫水線の上下の変動を抑えることができるから、ワークの塗装境界線のばらつきを抑えることができる。
【0012】
ここで、電着処理槽内で処理液を循環又は巡回させる場合には、液面カバー部材を電着処理槽に固定し、ワークを電着処理槽に対して一定の位置で保持してもよい。また、ワークを電着処理槽に対して移動させる場合には、請求項2の発明のように、ワークホルダに液面カバー部材を固定して、ワークと液面カバー部材とが一定の位置関係を保ったまま処理液に対して相対移動するようにすればよい。
【0013】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、液面カバー部材の前端部に波押さえ傾斜部を備えたことで、液面カバー部材が処理液の液面下に潜らないようにすることができる。
【0014】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、ワークに液面カバー部材を装着する場合は、液面カバー部材に形成された塗装境界部受容孔の後端部からワークを水平方向に挿入するか、或いは、剛体カバーを塗装境界部受容孔を横切る線で分割しておき、その塗装境界部受容孔に水平方向からワークを挿入してから分割された剛体カバーを合体させればよい。本発明によれば、ワークに対する液面カバー部材の装着が、塗装禁止部にマスキングテープを貼ってマスキング処理を行う場合に比べて容易なので、作業性が向上する。また、塗装境界部受容孔に対して水平方向からワークを挿抜可能なので、挿抜時に、弾性体カバー部に付着している処理液が塗装禁止部に付着することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る電着処理槽の概念図
【図2】(A)電着処理前の電着処理槽の概念図、(B)電着処理中の電着処理槽の概念図
【図3】電着処理中の液面カバー部材と電磁コイルの側面図
【図4】液面カバー部材の平面図
【図5】電磁コイルの斜視図
【図6】変形例に係る液面カバー部材の(A)平面図、(B)X−X線断面図
【図7】変形例に係る液面カバー部材の平面図
【図8】変形例に係る電着処理槽の概念図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図2における符号11は、電着塗料液を貯留した電着処理槽である。電着処理槽11内には図示しない電極が配置され、その電極と被塗物であるワークWとの何れか一方を陽極とし他方を陰極として、それらの間に通電すると、ワークWの表面に、電着塗料液中に溶けた樹脂が析出して電着被膜が形成される。
【0017】
本実施形態で例示するワークWは、例えば、モータ用の電磁コイルであり、図5に示されている。電磁コイルWは、偏平断面の銅線を巻回軸方向から見て四角形になるように巻回すると共に、1対の直線端末部Wb,Wbを巻回部Waの四角形の一辺から同じ方向に突出させた構造になっている。また、本実施形態で例示する電着塗料液は、例えば、ポリイミド樹脂及びその他絶縁材料を溶剤に溶かしたものであり、乾燥又は硬化により電磁コイルWの表面に絶縁被膜を形成する。
【0018】
図1に示すように、電着処理槽11は上面開放の円筒形構造をなしており、電着塗料液は、電着処理槽11内を起流ポンプ15によって一方向に旋回するようになっている。電着処理槽11の外周壁12の内面には、導入口12Aと導出口12Bとが開口している。導入口12Aと導出口12Bは、電着塗料液の液面より下側でかつ、電着処理槽11の周方向で所定角度(例えば、90度〜180度)離して配設されている。導入口12Aからは、電着処理槽11の外周壁12の接線方向でかつ電着処理液の流動方向の前方に向かって液体導入路13Aが延びている。また、導出口12Bからは、電着処理槽11の外周壁12の接線方向でかつ電着処理液の流動方向の後方に向かって液体導出路13Bが延びている。これら液体導入路13Aと液体導出路13Bの間は流路管14によって接続されている。
【0019】
流路管14の途中には起流ポンプ15が接続されている。起流ポンプ15は電着処理槽11内の電着塗料液を導入口12Aから吸い込むと共に、その電着塗料液を導出口12Bから電着処理槽11内に向けて加速して放出する。電着塗料液は、電着処理槽11の外周壁12の接線方向に向かって放出され、これにより、電着処理槽11の外周壁12に沿った電着塗料液の旋回流(図1における反時計回り方向の流れ)が生成される。また、流路管14のうち、導入口12Aと起流ポンプ15との間には、フィルター16が設けられている。導入口12Aから取り込まれた電着塗料液は、全てこのフィルター16を通過するようになっている。
【0020】
図2に示すように電着塗装装置10のうち、電着処理槽11の上方にはワークホルダ20が備えられている。ワークホルダ20は、電着処理槽11の上方に設けられた架台(図示せず)から垂下された中心支持軸24と、中心支持軸24の下端部から円盤状に張り出したベース盤21と、ベース盤21の下面に設けられた複数のチャック治具22とから構成されており、ワークとしての複数の電磁コイルWを保持可能となっている。複数のチャック治具22は、ベース盤21の周方向及び径方向に一定間隔を開けて配設されている。また、チャック治具22は、ベース盤21の中央寄り部分には設けられておらず、ベース盤21の外周寄り部分に設けられている。
【0021】
図3に示すように、各チャック治具22は、電磁コイルWにおける1対の直線端末部Wb,Wbの先端を、銅線の偏平方向から把持して、電磁コイルWを吊り下げた状態で保持可能となっている。
【0022】
詳細には、各チャック治具22には、電磁コイルWにおける2つの直線端末部Wb,Wbを把持するために、2つのチャックヘッド22A,22Aが設けられている、チャックヘッド22A,22Aは、下面及び、後述する液面カバー部材30とは反対側に開放した把持溝22B,22Bを有しており、その把持溝22B,22Bに直線端末部Wb,Wbの先端(上端)を水平方向から挿抜可能となっている。また、把持溝22B,22Bの内側の天井面22C,22Cに直線端末部Wb,Wbを突き当てることで、電磁コイルWが上下方向で位置決めされるようになっている。なお、天井面22C,22Cは、本発明の「ワーク位置決め部」に相当する。
【0023】
ワークホルダ20は上下動可能となっており、ワークホルダ20から吊り下がった電磁コイルWを電着塗料液に対して挿抜可能となっている(図2(A)及び同図(B)参照)。ここで、電磁コイルWは、巻回部Waより上側の塗装境界線L1(図5参照)まで電着塗料液の液面下に沈められる。これにより、塗装境界線L1から下側の部分に対して電着塗装が行われる。
【0024】
図3に示すように、ベース盤21の下面側には液面カバー部材30が設けられている。液面カバー部材30は、ベース盤21から垂下した連結シャフト23によってワークホルダ20に固定されており、電着塗料液に対して相対移動する電磁コイルWのうち、液面から露出した1対の直線端末部Wb,Wbに対して、電磁コイルWの相対移動方向の前方に配置されている。
【0025】
液面カバー部材30は平板状をなしており、その下面が電磁コイルWの塗装境界線L1(図5参照)と略同一高さになっている。また、図3に示すように、液面カバー部材30の前端部には、その下面が先端に向かって湾曲しながら徐々に迫り上がった波押さえ傾斜部30Aが設けられている。さらに、図4に示すように、液面カバー部材30のうち波押さえ傾斜部30Aとは反対側の後端縁30Bは、電着塗料液の液面から露出した1対の直線端末部Wb,Wbに近接するように段差形状となっている。液面カバー部材30は、絶縁体(例えば、シリコン樹脂やテフロン(登録商標)樹脂)で構成されており、電着被膜が形成されないようになっている。
【0026】
図3に示すように、電磁コイルWを電着塗料液に対して塗装境界線L1まで沈めると、液面カバー部材30は電着塗料液の液面に宛われて、その下面が、電着処理槽11内を旋回流となって流れる電着塗料液の液面に接する。
【0027】
次に本実施形態の電着塗装装置10の作用について説明する。電着工程では、電着処理槽11の真上にワークホルダ20を位置決めし、次いで、ワークホルダ20を降下させて、ワークホルダ20に吊り下げ保持された複数の電磁コイルWを電着塗料液に浸漬させる。電磁コイルWを塗装境界線L1まで沈めたら、起流ポンプ15を起動して電着処理槽11内に旋回流を生成し、その状態で、電着処理槽11内の電極(図示せず)と電磁コイルWとの間に通電を行う。すると、電磁コイルWのうち、電着塗料液の液面下に沈んだ部分に電着被膜が形成される。規定の処理時間に亘って電着処理を行ったら、ワークホルダ20を上昇させて電磁コイルWを電着塗料液から引き揚げ、ワークホルダ20ごと、次工程(例えば、焼付工程)に搬送する。
【0028】
ところで、電着被膜の生成過程では、陰極側で水の電気分解が起きて水素ガスが発生する。この水素ガスが電着被膜に入り込むと、所謂、ガスピンホールという塗膜欠陥の原因となり得る。これに対し、本実施形態では、電着塗料液を電着処理槽11内で旋回流にして流動させることで、電着塗膜に対する水素ガスやその他気泡の付着を防止することができるので、ガスピンホールの発生を抑えることができる。
【0029】
また、例えば、電着処理前の電磁コイルWによって電着処理槽11に持ち込まれたゴミや、電着塗料液中の凝集物などの異物は、旋回流による遠心力によって電着処理槽11の外周壁12側に移動して起流ポンプ15によって導入口12Aに吸い込まれ、フィルター16で取り除かれるから、電着塗料液の液質悪化を抑制することができる。
【0030】
そして、本実施形態によれば、旋回流となって流れる電着塗料液に対する電磁コイルWの相対移動方向の前方に、液面カバー部材30が配置され、その液面カバー部材30が、電着塗料液の液面に宛われて波の発生を抑制する。即ち、電着塗料液の液面と電磁コイルWの直線端末部Wb,Wbとが交差した喫水線の上下の変動を抑えることができるから、塗装境界線L1のばらつきを抑えることができる。また、液面カバー部材30の前端部に波押さえ傾斜部30Aを備えたことで、液面カバー部材30が電着塗料液の液面下に潜らないようにすることができる。また、液面カバー部材30は繰り返し使用することができるから、使い捨てのマスキングテープを使用した場合に比べて、廃棄物を削減することができる。
【0031】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0032】
(1)上記実施形態では、ワークとして電磁コイルWを例示したが、例えば、自動車ボディでもよい。また、電着塗料は、絶縁被膜を形成するためのものに限定するものではなく、防錆用や装飾用であってもよい。
【0033】
(2)上記実施形態では、ワークホルダ20は、円盤状のベース盤21の下面に複数のチャック治具22を備えた構成であったが、中心支持軸24から放射状に延びた複数の支持梁の下面にその長手方向に沿って複数のチャック治具22を設けた構成でもよい。
【0034】
(3)上記実施形態において、ワークホルダ20を中心支持軸24を回転軸にして旋回流と同じ方向又は逆方向に回転させてもよい。或いは、起流ポンプ15を設けずに、ワークホルダ20の回転によって旋回流を生成するようにしてもよい。
【0035】
(4)前記実施形態では、1つのワークに対して1つの液面カバー部材30が設けられていたが、複数のワークで1つの液面カバー部材30を共有する構成にしてもよい。
【0036】
(5)液面カバー部材は、上記実施形態の構成に限定するものではなく、例えば、図6又は図7に示した構成としてもよい。例えば、図6に示す液面カバー部材130は、平板状の剛体カバー131に、電磁コイルWにおける塗装境界部(1対の直線端末部Wb,Wb)を受容する1対の塗装境界部受容孔132,132が形成されている。1対の塗装境界部受容孔132,132は、直線状に延びたスリット形状をなすと共に、波押さえ傾斜部30Aとは反対側の後端部が開放している。また、塗装境界部受容孔132,132の開口縁部から塗装境界部に向かってシリコン樹脂又はフッ素樹脂で構成された弾性体カバー部133,133が張り出している。そして、塗装境界部受容孔132,132に受容された塗装境界部を、電着塗料液に対する電磁コイルWの相対移動方向の前方と側方とから囲むと共に、塗装境界部受容孔132,132の後端部から電磁コイルWの塗装境界部を水平方向に挿抜可能な構成となっている。なお、弾性体カバー133,133は塗装境界部に接触していてもよいし、隙間が空いていてもよい。
【0037】
図7に示す液面カバー部材230は、塗装境界部受容孔132,132が、電磁コイルWの塗装境界部(直線端末部Wb,Wb)の断面形状に対応した長孔形状をなし、塗装境界部が、剛体カバー131によって電着塗料液に対する相対移動方向の前後両方及び両側方から囲まれるようになっている。そして、剛体カバー131を、塗装境界部受容孔132,132を横切る線L2で二分割可能とすることで、塗装境界部を塗装境界部受容孔132,132に対して水平方向から挿抜可能な構成となっている。
【0038】
上記構成によれば、電磁コイルW(ワーク)に対する液面カバー部材130,230の装着は、マスキングテープを使用するマスキング処理に比べて容易なので、作業性が向上する。また、塗装境界部受容孔132,132に対して電磁コイルWを水平方向から挿抜可能なので、挿抜時に、弾性体カバー部133,133に付着している電着塗料液が、塗装境界線L1より上側の部分に付着することを防止することができる。
【0039】
(6)上記実施形態では、電着処理槽11が円形であったが、図8に示すように電着処理槽11を直線状に延びた縦長構造とし、その長手方向の一端から他端に向けて(図8の左から右へ)ワークWを電着塗料液にハーフディップしたまま直線状に搬送するようにしてもよい。このとき、電着塗料液は、電着処理槽11の底側でワークWの搬送方向と同方向に流動しかつ、液面側でワークWの搬送方向と逆向き流動するように循環させてもよいし、電着処理槽11の底側でワークWの搬送方向と逆方向に流動しかつ液面側で、ワークWの搬送方向と同方向に流動するように循環させてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 電着塗装装置
11 電着処理槽
20 ワークホルダ
30 液面カバー部材
30A 波押さえ傾斜部
130 液面カバー部材
131 剛体カバー
132 塗装境界部受容孔
133 弾性体カバー部
230 液面カバー部材
L1 塗装境界線
W 電磁コイル(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに設けた塗装禁止部を除く全体に電着塗装を行うために、前記ワークの上端に配置された前記塗装禁止部をワークホルダにて保持して、前記ワークのうち前記塗装禁止部以外の塗装対象部を、電着処理槽内の処理液の液面下に沈めた状態に維持すると共に、前記ワークを前記処理液に対して相対移動して前記塗装対象部の周りの気泡を排除するための液流を発生させて電着塗装を行うことが可能な電着塗装装置において、
前記ワークホルダは、前記ワークのうち前記塗装禁止部と前記塗装対象部との間の塗装境界線より上方に離間した位置を保持するように構成され、
前記塗装禁止部に対して少なくとも前記ワークの相対移動方向の前方に配置され、前記処理液の液面に宛がわれて波の発生を抑える液面カバー部材を備えたことを特徴とする電着塗装装置。
【請求項2】
前記ワークホルダには、前記ワークを上下方向で位置決めするワーク位置決め部が設けられ、前記液面カバー部材は、前記塗装境界線と略同一高さに位置した下面を有する板状をなしかつ前記ワークホルダに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の電着塗装装置。
【請求項3】
前記液面カバー部材の前端部には、先端に向かって前記下面が徐々に上方に迫り上がった波押さえ傾斜部が備えられていることを特徴とする請求項2に記載の電着塗装装置。
【請求項4】
前記液面カバー部材は、前記ワークのうち前記塗装禁止部と前記塗装対象部との間の塗装境界部を受容する塗装境界部受容孔を有して、その塗装境界部受容孔に受容された前記塗装境界部に対して前記ワークの相対移動方向の前方と両側方とを囲む剛体カバー部と、前記剛体カバー部のうち前記塗装境界部受容孔の開口縁部から前記塗装境界部に向かって張り出し、前記処理液の液面の波を押さえる弾性体カバー部とを備え、
前記塗装境界部受容孔の後端部を開放するか、或いは、前記剛体カバーを前記塗装境界部受容孔を横切る線で分割可能とすることで、前記塗装境界部を前記塗装境界部受容孔に対して水平方向で挿抜可能としたことを特徴とする請求項2又は3に記載の電着塗装装置。
【請求項5】
前記液面カバー部材は、絶縁体で構成されたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の電着塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−117133(P2012−117133A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270060(P2010−270060)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)