説明

電磁アクチュエータ及びカメラ用羽根駆動装置

【課題】電磁アクチュエータのロータを自らの制動トルクにより停止させるようにする。
【解決手段】着磁ロータ部及び駆動ピンを有し所定の中心軸線S回りに回動するロータ50、励磁用のコイル80、着磁ロータ部の外周面に対向する円弧面及び円弧面の端部に形成されるエッジ部を画定しかつコイルへの通電によりお互いに異なる磁極が発生する第1磁極部及び第2磁極部を有するヨーク60を備え、着磁ロータ部は、第1着磁境界面52aを境に外周面をS極及びN極に二分して着磁した第1マグネット52、中心軸線の方向において第1マグネットに積層されると共に第1着磁境界面に対して中心軸線回りに所定の捩れ角度αだけずれた第2着磁境界面53aを境に外周面をN極及びS極に二分して着磁した第2マグネット53とにより形成されている。これにより、ロータは作動角の両端位置において自らの制動トルクにより停止して保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁力により回転駆動力を発生する電磁アクチュエータに関し、特に、着磁された外周面をもつロータ、ロータの外周面に対向する磁極部を形成するヨーク等を備え、カメラのシャッタ羽根、絞り羽根、NDフィルタ羽根等の羽根部材を駆動する際に適用される電磁アクチュエータ及びこれを用いたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁アクチュエータとしては、N極及びS極に二分して着磁された円筒状の外周面を有し所定の作動角を回動し得ると共に一体的に形成された出力ピンを有するロータ、励磁用のコイル、ロータの外周面に対向する円弧面を有しかつコイルへの通電によりお互いに異なる磁極を発生する第1磁極部及び第2磁極部を有する略U字状のヨーク(ステータ)等を備え、コイルへの通電方向を切り替えることにより、作動角を規定する第1停止位置と第2停止位置との間でロータ(及び出力ピン)を回動させ、第1停止位置及び第2停止位置においては、ディテントトルクによりロータをその位置に停止させるようにしたものが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、カメラ用羽根駆動装置としては、撮影用の開口を画定する基板、基板に対して回動自在に支持されて開口部に臨む位置と開口部から後退した位置との間を移動する羽根部材(シャッタ羽根)、羽根部材を駆動するべく上記構成をなす電磁アクチュエータを備え、電磁アクチュエータの通電を制御して、ロータを第1停止位置から第2停止位置まで回転させて羽根部材を開口部に臨む位置(閉鎖位置)まで移動させると共に出力ピンを基板の一部(逃げ孔の一端)に当接させて位置決めし、一方、ロータを第2停止位置から第1停止位置まで回転させて羽根部材を開口部から後退した位置(開放位置)まで移動させると共に出力ピンを基板の一部(逃げ孔の他端)に当接させて位置決めするようにしたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ところで、上記従来の構成においては、ロータの出力ピンを基板の一部に当接させることにより、羽根部材(シャッタ羽根)を閉鎖位置及び開放位置に停止させて位置決めするようにしているため、出力ピンが基板の一部に当接する際に衝突音が発生する。
このことは、出力ピンの当接に限らず、例えば、羽根部材(シャッタ羽根)を基板の一部に当接させて直接位置決めする場合も同様である。
このような衝突音は、不快であり、製品の品質の点からは好ましくなく、特に、羽根部材として絞り羽根を用いて、動画撮影時に絞り動作を行うような場合には、その衝突音が雑音として動画と共に録音されてしまい好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−92741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、小型化等を図りつつ、所望の回転駆動力及び保持力等を発生でき、衝突音等の発生を防止できる電磁アクチュエータ及びこの電磁アクチュエータを用いたカメラ用羽根駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電磁アクチュエータは、円筒状の着磁ロータ部及び駆動ピンを有し所定の中心軸線回りに回動し得るロータと、励磁用のコイルと、着磁ロータ部の外周面に対向する円弧面及び円弧面の端部に形成されるエッジ部を画定しかつコイルへの通電によりお互いに異なる磁極が発生する第1磁極部及び第2磁極部を有するヨークとを備えた電磁アクチュエータであって、上記着磁ロータ部は、第1着磁境界面を境に外周面をS極及びN極に二分して着磁された第1マグネットと、中心軸線の方向において第1マグネットに積層されると共に第1着磁境界面に対して中心軸線回りに所定の捩れ角度だけずれた第2着磁境界面を境に外周面をN極及びS極に二分して着磁された第2マグネットとにより形成されている、ことを特徴としている。
この構成によれば、ロータの着磁ロータ部が第1マグネット及び第1マグネットに対して所定の捩れ角度だけずれて積層された第2マグネットからなる二段構成をなしているため、ロータが所定の角度範囲(作動角)を回転する際に、第1マグネットとヨーク(第1磁極部及び第2磁極部)との間の磁気的作用力と、第2マグネットとヨーク(第1磁極部及び第2磁極部)との間の磁気的作用力との合成力により、ロータを一方向に回転させて磁気的作用力(自らの制動トルク)のみで一方の回転端に停止させることができ、又、ロータを他方向に回転させて磁気的作用力(自らの制動トルク)のみで他方の回転端に停止させることができる。したがって、従来のように駆動ピンを基板の一部に当接させて停止させる必要がなく、衝突音等の発生を防止することができる。
【0008】
上記構成をなす電磁アクチュエータにおいて、ヨークの円弧面は、第1磁極部に形成された第1円弧面と、第2磁極部に形成された第2円弧面を含み、ヨークのエッジ部は、第1円弧面の端部に形成された第1エッジ部と、第2円弧面の端部に形成された第2エッジ部を含み、第1エッジ部及び第2エッジ部は、ロータの中心軸線に直交する直線上に位置するように形成され、ロータは、第1回転端位置と第2回転端位置とにより画定される所定の作動角の範囲を回転するように形成され、第1回転端位置において、第1マグネットのS極の外周面の中央は第1エッジ部と径方向において対向し、第1マグネットのN極の外周面の中央は第2エッジ部と径方向において対向し、第2回転端位置において、第2マグネットのN極の外周面の中央は第1エッジ部と径方向において対向し、第2マグネットのS極の外周面の中央は第2エッジ部と径方向において対向するように形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、ロータの着磁ロータ部(第1マグネット及び第2マグネット)は、ヨークの第1磁極部における第1円弧面及び第1エッジ部と第2磁極部における第2円弧面及び第2エッジ部との間で、磁気的作用力(磁気的吸引力、磁気的反発力)を生じ、特に、第1円弧面及び第2円弧面よりも第1エッジ部及び第2エッジ部との間において強い磁気的作用力を生じ、ロータが一方向又は他方向に回転し始める際に大きな起動トルクを得ることができ、又、ロータが一方の回転端位置又は他方の回転端位置に停止する際に大きな制動トルクを得ることができる。
すなわち、ロータが第1回転端位置に位置するとき、第1マグネットのS極外周面(の中央)と第1磁極部の第1エッジ部との間に強力な磁気的吸引力が作用しかつ第1マグネットのN極外周面(の中央)と第2磁極部の第2エッジ部との間に強力な磁気的吸引力が作用して、ロータは第1回転端位置に安定して保持され又第2回転端位置から回転して第1回転端位置に停止する際に強力な制動トルクが生じて、ロータは第1回転端位置に確実に停止させられ、一方、ロータが第2回転端位置に位置するとき、第2マグネットのN極外周面(の中央)と第1磁極部の第1エッジ部との間に強力な磁気的吸引力が作用しかつ第2マグネットのS極外周面(の中央)と第2磁極部の第2エッジ部との間に強力な磁気的吸引力が作用して、ロータは第2回転端位置に安定して保持され又第1回転端位置から回転して第2回転端位置に停止する際に強力な制動トルクが生じて、ロータは第2回転端位置に確実に停止させられる。
【0009】
上記構成をなす電磁アクチュエータにおいて、第1マグネットに対する第2マグネットの捩れ角度は、ロータの作動角と同一に設定されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、第1マグネットに対する第2マグネットの捩れ角度を適宜調整することにより、ロータの作動角を直接的に調整することができる。
【0010】
本発明のカメラ用羽根駆動装置は、被写体光を通す開口部を有する基板と、開口部に臨む位置と開口部から退避した退避位置との間を回動自在に基板に支持された羽根部材と、羽根部材を駆動する駆動源とを備え、駆動源として、上記構成をなす電磁アクチュエータを含み、羽根部材にはロータの駆動ピンが直接連結されている、ことを特徴としている。
この構成によれば、駆動源として上述の電磁アクチュエータを採用するが故に、装置の小型化等を達成しつつも、十分な回転駆動力が駆動ピンから出力されて、羽根部材を所望のタイミングで確実に安定して駆動でき、又、ロータは作動角の両端位置において自らの制動トルクにより停止するため、駆動ピン等をストッパあるいは基板の一部に当接させる際に生じる衝突音等を解消することができ、羽根部材を所定の位置(例えば、開口部に臨む位置あるいは開口部から退避した位置)に高精度に停止させて保持することができる。
特に、ロータの駆動ピンが羽根部材に直接連結されているため、ロータ(駆動ピン)の作動角に対応させて羽根部材を直接的に往復動させることができ、リンク部材等を介して連動させる場合に比べて、ロータが停止する際の自らの制動トルクに抵抗するような慣性トルクを小さくすることができ、それ故に、羽根部材を所望の停止位置により高精度に停止させて保持することができる。
【発明の効果】
【0011】
上記構成をなす電磁アクチュエータによれば、構造の簡素化、小型化等を達成しつつ、所望の回転駆動力及び保持力等を発生することができ、又、衝突音等の発生を防止できる電磁アクチュエータを得ることができ、又、上記構成をなすカメラ用羽根駆動装置によれば、駆動源として上述の電磁アクチュエータを採用するが故に、装置の小型化等を達成しつつも、ロータにより得られる十分な回転駆動力により、羽根部材(例えば、シャッタ羽根、絞り羽根、NDフィルタ羽根等)を、衝突音等を生じることなく、所望のタイミングで確実に安定して駆動させることができ、又、開口部に臨む位置又は開口部から退避した位置に確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電磁アクチュエータを備えたカメラ用羽根駆動装置を示す分解斜視図である。
【図2】(a)は図1に示すカメラ用羽根駆動装置の平面図であり、(b)は図1に示すカメラ用羽根駆動装置の一部をなす本発明に係る電磁アクチュエータの側面図である。
【図3】本発明に係る電磁アクチュエータの一部をなすロータを示すものであり、(a)はその平面図であり、(b)はその側面図である。
【図4】本発明に係る電磁アクチュエータを示す平面図である。
【図5】(a),(b),(c),(d)は、電磁アクチュエータの動作を説明するためのそれぞれの状態を示す平面図である。
【図6】(a),(b),(c),(d)は、電磁アクチュエータの動作を説明するためのそれぞれの状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
このカメラ用羽根駆動装置は、図1及び図2に示すように、被写体光を通す開口部10a,20aを有する基板としての地板10及び裏板20、地板10の上方を覆うように配置されると共に被写体光を通す開口部30aを有するカバー板30、開口部10a,20a,30aに臨む位置と開口部10a,20a、30aから退避した退避位置との間を回動自在に地板10に支持された羽根部材としての絞り羽根40、絞り羽根40を駆動する駆動源としての電磁アクチュエータM(ロータ50、ヨーク60、ボビン70、励磁用のコイル80)等を備えている。
【0014】
地板10は、図1及び図2(a)に示すように、被写体光を通すための円形をなす開口部10a、ロータ50を中心軸線S回りに回動自在に支持する支軸11、ロータ50の駆動ピン54を通す略円弧状の貫通孔12、ヨーク60を位置決めする凹部13、絞り羽根40を回動自在に支持する支軸14、裏板20を連結する連結部(不図示)及びカバー板30を連結する連結部(不図示)等を備えている。
【0015】
裏板20は、図1に示すように、被写体光を通すための円形の開口部20a、ロータ50の駆動ピン54を移動自在に受け入れる円弧状の長孔21、地板10の支軸14を通す円孔22、地板10に連結される連結部(不図示)等を備えている。
そして、裏板20は、絞り羽根40が取り付けられた状態で、地板10の背面と所定の間隔をおいてネジ等により連結され、地板10と協働して絞り羽根40を回動自在に収容する羽根室を画定している。
【0016】
カバー板30は、図1に示すように、被写体光を通すための円形の開口部30a、ボビン70に巻回されたコイル80を露出させる切り欠き部31、地板10と協働してヨーク60を押さえ込む押圧部32、地板10に連結される連結部(不図示)等を備えている。
そして、カバー板30は、電磁アクチュエータMが取り付けられた状態で、その押圧部32によりヨーク60を押さえ込むようにして、地板10の前面にネジ等により連結されている。
【0017】
絞り羽根40は、図1及び図2(a)に示すように、支軸14が挿入される円孔41、ロータ50の駆動ピン54が挿入される長孔42、所定の絞り口径をなす絞り開口43等を備えている。
そして、駆動ピン54が往復動することにより、絞り羽根40は、図2(a)に示すように開口部10a,20a、30aから退避した退避位置と、開口部10a,20a,30aに臨む位置(絞り位置)との間を往復動するようになっている。
尚、絞り羽根40としては、通過する光量を減少させるNDフィルタ羽根、あるいは、赤外光をカットするフィルタ羽根等各種の絞り羽根を適用することができる。
【0018】
電磁アクチュエータMは、図2ないし図4に示すように、円筒状の着磁ロータ部及び駆動ピンを有し所定の中心軸線S回りに回動し得るロータ50、略U字状のヨーク60、ヨーク60に嵌合されたボビン70、ボビン70に巻回された励磁用のコイル80により構成されている。
【0019】
ロータ50は、図2ないし図4に示すように、支軸11が通される中心孔51a´を画定する筒部51a及び筒部51aの下端部から径方向に突出する腕部51bを画定するホルダ51、ホルダ51(の筒部51a)に結合された円筒状の着磁ロータ部としての第1マグネット52及び第2マグネット53、ホルダ51(の腕部51b)から中心軸線Sと平行に伸長する駆動ピン54等を備えている。
ここで、ホルダ51(筒部51a、腕部51b)及び駆動ピン54は、樹脂材料(非磁性材料)により一体的に形成されている。
駆動ピン54は、円柱状に形成されて、絞り羽根40の長孔42に摺動自在に挿入されるようになっている。
【0020】
第1マグネット52は、中心軸線Sを通る第1着磁境界面52aを境に二分してS極に着磁されたS極外周面52b及びN極に着磁されたN極外周面52cを有し、ホルダ51の筒部51aに外嵌されて結合されている。
第2マグネット53は、中心軸線Sを通る第2着磁境界面53aを境に二分してN極に着磁されたN極外周面53b及びS極に着磁されたS極外周面53cを有し、第2着磁境界面53aを第1着磁境界面52aに対して中心軸線S回りに所定の捩れ角度αだけずらした状態で中心軸線Sの方向において第1マグネット52に積層され、ホルダ51の筒部51aに外嵌されて結合されている。
【0021】
そして、ロータ50は、中心軸線Sを中心として、図4に示すように、第1回転端位置P1と第2回転端位置P2とにより画定される所定の作動角θの範囲を回動し得るように、中心孔51a´に地板10の支軸11が通されて回動自在に支持されている。
ここで、第1マグネット52に対する第2マグネット53の捩れ角度αは、ロータ50の作動角θと同一に設定されている。
したがって、第1マグネット52に対する第2マグネット53の捩れ角度αを適宜調整することにより、ロータ50の作動角θを直接的に調整することができる。
【0022】
ヨーク60は、図4に示すように、磁力線を通す磁性材料により扁平(板状)でかつ略U字状に屈曲して形成され、その一端側において第1円弧面61a及び第1エッジ部61bを画定する第1磁極部61、その他端側において第2円弧面62a及び第2エッジ部62bを画定する第2磁極部62を備えている。
第1円弧面61aは、図4に示すように、主として、ロータ50のS極外周面52b及びN極外周面53bと所定隙間をおいて対向するように形成されている。
第2円弧面62aは、図4に示すように、主として、ロータ50のN極外周面52c及びS極外周面53cと所定隙間をおいて対向するように形成されている。
第1エッジ部61bは第1円弧面61aの端部に形成され、第2エッジ部62bは第2円弧面62aの端部に形成されて、第1エッジ部61bと第2エッジ部62bとは、図4に示すように、中心軸線Sに直交する直線L上に位置するように形成されている。
【0023】
そして、第1エッジ部61bは、ロータ50が第1回転端位置P1に位置するとき、第1マグネット52のS極外周面52bの中央と径方向において対向し、ロータ50が第2回転端位置P2に位置するとき、第2マグネット53のN極外周面53bの中央と径方向において対向するように形成され、第2エッジ部62bは、ロータ50が第1回転端位置P1に位置するとき、第1マグネット52のN極外周面52cの中央と径方向において対向し、ロータ50が第2回転端位置P2に位置するとき、第2マグネット53のS極外周面53cの中央と径方向において対向するように形成されている。
【0024】
すなわち、ロータ50とヨーク60との間の磁気的作用については、ロータ50が第1回転端位置P1に位置するとき、第1マグネット52のS極外周面52b(の中央)が第1磁極部61の第1エッジ部61bと径方向において対向して強力な磁気的吸引力を生じかつ第1マグネット52のN極外周面52c(の中央)が第2磁極部62の第2エッジ部62bと径方向において対向して強力な磁気的吸引力を生じ、ロータ50は、第1回転端位置P1に安定して保持され、又、第2回転端位置P2から回転して第1回転端位置P1に停止する際に強力な制動トルク(すなわち、第1マグネット52のS極外周面52bの中央が第1エッジ部61bを通過しようとするときに第1エッジ部61bに引き戻す力、及び第1マグネット52のN極外周面52cの中央が第2エッジ部62bを通過しようとするとき第2エッジ部62bに引き戻す力)が生じて、ロータ50は第1回転端位置P1に確実に停止させられる。
【0025】
一方、ロータ50が第2回転端位置P2に位置するとき、第2マグネット53のN極外周面53b(の中央)が第1磁極部61の第1エッジ部61bと径方向において対向して強力な磁気的吸引力を生じかつ第2マグネット53のS極外周面53c(の中央)が第2磁極部62の第2エッジ部62bと径方向において対向して強力な磁気的吸引力を生じ、ロータ50は、第2回転端位置P2に安定して保持され、又、第1回転端位置P1から回転して第2回転端位置P2に停止する際に強力な制動トルク(すなわち、第2マグネット53のN極外周面53bの中央が第1エッジ部61bを通過しようとするときに第1エッジ部61bに引き戻す力、及び第2マグネット53のS極外周面53cの中央が第2エッジ部62bを通過しようとするとき第2エッジ部62bに引き戻す力)が生じて、ロータ50は第2回転端位置P2に確実に停止させられる。
【0026】
ボビン70は、図4に示すように、コイル80を巻回する筒部71、筒部71の両側に形成された鍔部72、ヨーク60の第2磁極部62側の腕部が嵌合される嵌合孔73を備えている。
コイル80は、図4に示すように、ボビン70の筒部71に巻回されている。
そして、コイル80を巻回したボビン70は、ヨーク60の第2磁極部62側の腕部に外嵌されて保持されるようになっている。
【0027】
上記構成をなす電磁アクチュエータMが駆動源としてカメラ用羽根駆動装置に適用された状態において、ロータ50が第1回転端位置P1に位置するとき、絞り羽根40が開口部10a,20a,30aから退避した退避位置(開き位置)に位置し、ロータ50が第2回転端位置P2に位置するとき、絞り羽根40が開口部10a,20a,30aに臨む位置(絞り位置/閉じ位置)に位置するようになっている。また、コイル80への閉じ通電(絞り通電)により、ロータ50が第1回転端位置P1から第2回転端位置P2まで回転すると共に絞り羽根40が退避位置(開き位置)から絞り位置(閉じ位置)まで回転し、コイル80への開き通電により、ロータ50が第2回転端位置P2から第1回転端位置P1まで回転すると共に絞り羽根40が臨む位置(絞り位置/閉じ位置)から退避位置(開き位置)まで回転するようになっている。
【0028】
ここで、絞り羽根40には、ロータ50の駆動ピン54が直接連結されているため、ロータ50(駆動ピン54)の作動角θに対応させて絞り羽根40を直接的に往復動させることができ、リンク部材等を介して連動させる場合に比べて、ロータ50が停止する際の自らの制動トルクに抵抗するような慣性トルクを小さくすることができ、それ故に、絞り羽根40を退避位置(開き位置)及び絞り位置(閉じ位置)に高精度に停止させて保持することができる。
【0029】
上記構成をなす電磁アクチュエータMの動作及びカメラ用羽根駆動装置の動作について、図5及び図6を参照しつつ説明する。
先ず、図5(a)に示すように、コイル80が非通電の状態で、ロータ50が反時計回りの第1回転端位置P1に位置するとき、第1マグネット52のS極外周面52bの中央は第1磁極部61の第1エッジ部61bと径方向において対向しかつ第1マグネット52のN極外周面52cの中央は第2磁極部62の第2エッジ部62bと径方向において対向して強力な磁気的吸引力(保持力)を生じ、又、第2マグネット53のN極外周面53bの中央は第1磁極部61の第1円弧面61aと径方向において対向しかつ第2マグネット53のS極外周面53cの中央は第2磁極部62の第2円弧面62aと径方向において対向して磁気的吸引力(保持力)を生じる。これにより、ロータ50は、第1回転端位置P1に保持され、絞り羽根40は退避位置(開き位置)に保持されることになる。
【0030】
この状態において、図5(b)に示すように、コイル80に閉じ通電が行われると、第1磁極部61にS極が発生しかつ第2磁極部62にN極が発生する。これにより、第2マグネット53のN極外周面53bと第1円弧面61aとの間及びS極外周面53cと第2円弧面62aとの間に磁気的吸引力が生じるものの、第1マグネット52のS極外周面52bと第1円弧面61a及び第1エッジ部61bとの間に強力な磁気的反発力が生じかつN極外周面52cと第2円弧面62a及び第2エッジ部62bとの間に強力な磁気的反発力が生じ、これらの合成力により時計回りの大きな起動トルクが得られて、ロータ50は第2回転端位置P2に向けて回転し始め、絞り羽根40は開口部10a,20a,30aに臨む位置(絞り位置/閉じ位置)に向けて回転し始める。
【0031】
そして、図5(c)に示すように、ロータ50が時計回りに回転して第2回転端位置P2に至ると共に絞り羽根40が絞り位置(閉じ位置)に至る際に、第1マグネット52のS極外周面52bの中央は第1磁極部61の第1円弧面61a及び第1エッジ部61bから逸脱した位置にありかつ第1マグネット52のN極外周面52cの中央は第2磁極部62の第2円弧面62a及び第2エッジ部62bから逸脱した位置にあり、第2マグネット53のN極外周面53bの中央は第1磁極部61の第1エッジ部61bと径方向において対向しかつ第2マグネット53のS極外周面53cの中央は第2磁極部62の第2エッジ部62bと径方向において対向して強力な磁気的吸引力(制動トルク)を生じる。これにより、ロータ50は、第2回転端位置P2に停止させられ、絞り羽根40は絞り位置(閉じ位置)に停止させられることになる。
そして、図5(d)に示すように、コイル80への通電が断たれると(非通電とされると)、ロータ50は第2回転端位置P2に保持され、絞り羽根40は絞り位置(閉じ位置)に保持されることになる。
【0032】
一方、図6(a)に示すように、コイル80が非通電のとき、ロータ50が第2回転端位置P2に保持され、絞り羽根40が絞り位置(閉じ位置)に保持された状態から、図6(b)に示すように、コイル80に開き通電が行われると、第1磁極部61にN極が発生しかつ第2磁極部62にS極が発生する。これにより、第2マグネット53のN極外周面53bと第1円弧面61aとの間及びS極外周面53cと第2円弧面62aとの間に磁気的反発力が生じるものの、第1マグネット52のS極外周面52bと第1円弧面61a及び第1エッジ部61bとの間に強力な磁気的吸引力が生じかつN極外周面52cと第2円弧面62a及び第2エッジ部62bとの間に強力な磁気的吸引力が生じ、これらの合成力により反時計回りの大きな起動トルクが得られて、ロータ50は第1回転端位置P1に向けて回転し始め、絞り羽根40は開口部10a,20a,30aから退避する退避位置(開き位置)に向けて回転し始める。
【0033】
そして、図6(c)に示すように、ロータ50が反時計回りに回転して第1回転端位置P1に至ると共に絞り羽根40が退避位置(開き位置)に至る際に、第2マグネット53のN極外周面53bの中央は第1磁極部61の第1円弧面61aに対向しかつ第2マグネット53のS極外周面53cの中央は第2磁極部62の第2円弧面62aに対向した位置にあり、第1マグネット52のS極外周面52bの中央は第1磁極部61の第1エッジ部61bと径方向において対向しかつ第1マグネット52のN極外周面52cの中央は第2磁極部62の第2エッジ部62bと径方向において対向して強力な磁気的吸引力(制動トルク)を生じる。これにより、ロータ50は、第1回転端位置P1に停止させられ、絞り羽根40は退避位置(開き位置)に停止させられることになる。
そして、図6(d)に示すように、コイル80への通電が断たれると(非通電とされると)、ロータ50は第1回転端位置P1に保持され、絞り羽根40は退避位置(開き位置)に保持されることになる。
【0034】
上記のように、上記構成をなす電磁アクチュエータMによれば、ロータ50が作動角θの両端位置(第1回転端位置P1及び第2回転端位置P2)に停止するとき、従来のように駆動ピンをストッパあるいは基板の一部に当接させて停止させるのではく、自らの制動トルクにより停止するため、衝突音等が生じるのを防止でき、それ故に、このカメラ用羽根駆動装置を搭載したカメラにおいて、動画撮影時に絞り動作を行うような場合であっても、衝突音等の雑音が録音されるのを防止することができる。
尚、上記実施形態において、第1マグネット52のS極とN極を入れ替えかつ第2マグネット53のN極とS極を入れ替えて、コイル80への通電方向を逆にすれば、前述同様に動作するのは言うまでもない。
【0035】
上記実施形態においては、絞り羽根40を停止させるストッパを設けていないが、絞り羽根40が退避位置(開き位置)からさらに外側に移動したときに当接するストッパを設け、又、絞り羽根40が開口部10a,20a,30aに臨む位置(絞り位置)からさらに移動したときに当接するストッパを設けることにより、本来の停止位置(退避位置、絞り位置)においては衝突音等を生じることなく、絞り羽根40が誤って過移動(オーバーラン)するのを防止することができる。
上記実施形態においては、羽根部材として絞り羽根40を示したが、これに限定されるものではなく、シャッタ羽根、その他の羽根部材を適用することができる。
上記実施形態においては、一つの羽根部材(絞り羽根40)を駆動する駆動源として本発明に係る電磁アクチュエータMを採用したカメラ用羽根駆動装置を示したが、これに限定されるものではなく、複数の羽根部材を駆動する駆動源として本発明に係る電磁アクチュエータを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上述べたように、本発明の電磁アクチュエータは、構造の簡素化、小型化等を達成しつつ、所望の回転駆動力及び保持力等を発生でき、又、衝突音等の発生を防止できるため、カメラ用羽根駆動装置の駆動源として適用できるのは勿論のこと、被動部材を往復動させる必要のあるその他の光学機器あるいは電子機器等の駆動源としても有用である。
【符号の説明】
【0037】
10 地板(基板)
10a 開口部
11 支軸
12 貫通孔
13 凹部
14 支軸
20 裏板(基板)
20a 開口部
21 長孔
22 円孔
30 カバー板
30a 開口部
31 切り欠き部
32 押圧部
40 絞り羽根(羽根部材)
41 円孔
42 長孔
43 絞り開口
M 電磁アクチュエータ(駆動源)
50 ロータ
51 ホルダ
51a 筒部
51a´ 中心孔
51b 腕部
52 第1マグネット(着磁ロータ部)
52a 第1着磁境界面
52b S極外周面
52c N極外周面
53 第2マグネット(着磁ロータ部)
53a 第2着磁境界面
53b N極外周面
53c S極外周面
54 駆動ピン
60 ヨーク
61 第1磁極部
61a 第1円弧面
61b 第1エッジ部
62 第2磁極部
62a 第2円弧面
62b 第2エッジ部
70 ボビン
71 筒部
72 鍔部
73 嵌合孔
80 励磁用のコイル
P1 第1回転端位置
P2 第2回転端位置
S 中心軸線
L 中心軸線に直交する直線
α 捩れ角度
θ 作動角


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の着磁ロータ部及び駆動ピンを有し所定の中心軸線回りに回動し得るロータと、励磁用のコイルと、前記着磁ロータ部の外周面に対向する円弧面及び前記円弧面の端部に形成されるエッジ部を画定しかつ前記コイルへの通電によりお互いに異なる磁極が発生する第1磁極部及び第2磁極部を有するヨークと、を備えた電磁アクチュエータであって、
前記着磁ロータ部は、第1着磁境界面を境に外周面をS極及びN極に二分して着磁した第1マグネットと、前記中心軸線の方向において前記第1マグネットに積層されると共に前記第1着磁境界面に対して前記中心軸線回りに所定の捩れ角度だけずれた第2着磁境界面を境に外周面をN極及びS極に二分して着磁した第2マグネットとにより形成されている、
ことを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記ヨークの円弧面は、前記第1磁極部に形成された第1円弧面と、前記第2磁極部に形成された第2円弧面を含み、
前記ヨークのエッジ部は、前記第1円弧面の端部に形成された第1エッジ部と、前記第2円弧面の端部に形成された第2エッジ部を含み、
前記第1エッジ部及び第2エッジ部は、前記中心軸線に直交する直線上に位置するように形成され、
前記ロータは、第1回転端位置と第2回転端位置とにより画定される所定の作動角の範囲を回転するように形成され、
前記第1回転端位置において、前記第1マグネットのS極の外周面の中央は前記第1エッジ部と径方向において対向し、第1マグネットのN極の外周面の中央は前記第2エッジ部と径方向において対向し、
前記第2回転端位置において、前記第2マグネットのN極の外周面の中央は前記第1エッジ部と径方向において対向し、第2マグネットのS極の外周面の中央は前記第2エッジ部と径方向において対向するように形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記捩れ角度は、前記作動角と同一に設定されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
被写体光を通す開口部を有する基板と、前記開口部に臨む位置と前記開口部から退避した退避位置との間を回動自在に前記基板に支持された羽根部材と、前記羽根部材を駆動する駆動源とを備え、
前記駆動源は、請求項1ないし3いずれか一つに記載の電磁アクチュエータであり、
前記羽根部材には、前記ロータの駆動ピンが直接連結されている、
ことを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−29730(P2013−29730A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166715(P2011−166715)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】