説明

電磁シールドモニタリングシステム

【課題】邪魔にならない位置に送受信アンテナを配置して電磁シールド性能を常時正確に評価することのできる電磁シールドモニタリングシステムを提供すること。
【解決手段】廊下109の天井裏109aの送信アンテナ111から性能評価用電波Wを送信する電波送信機110と、電磁シールドルーム100の天井裏100aの受信アンテナ121で性能評価用電波を受信する電波受信機120と、性能評価用電波の送受により求める電磁シールド性能にアンテナ間の電波の伝搬経路に応じて補正を施した評価結果を表示するメインモニタ10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁シールドモニタリングシステムに関し、詳しくは、電磁シールド性能を常時評価可能にするものに関する。
【背景技術】
【0002】
外部との間で互いに電波(電磁波)の影響を受け合わないように電磁シールドで覆った空間を形成することが多用されている。例えば、所謂、その電磁シールドルーム内に測定装置などを設置して外部からの電波の影響を受けない環境で各種試験を行ったり、逆に、外部装置に影響を及ぼさないように電波を送出する各種装置を電磁シールドルーム内に設置することが行われている。
【0003】
この種の電磁シールドルームには、近年特にセキュリティの問題から電磁シールド性能を常時評価することが要求される場合がある。このような電磁シールドルーム100では、図6に示すように、出入りするドア101付近で電磁シールド性能の低下が発生することが多い。このことから、そのドア101付近を電磁シールド性能の評価対象とする場合には、電波送信機(SG)110と電波受信機(SA)120を準備して、そのドア101を挟むように、例えば、外の廊下109側の送信アンテナ111と電磁シールドルーム100内の受信アンテナ121との一対を互いに対向する姿勢で設置して電波Wを送受させることにより評価試験を行うのが一般的である。なお、電磁シールドルーム100の全体を評価する場合には、複数組のアンテナを設置すればよい。
【0004】
この電磁シールドルーム100の評価試験は、ドア101を挟むようにアンテナ111、121を配置して行うのが好ましいが、一時的な評価試験では問題ないが、常時評価する場合には、人の出入りを妨げてしまうので採用することはできない。
【0005】
このことから、電磁シールドモニタリングシステムとしては、電磁シールドルーム100を問題なく運用しつつ電磁シールド性能を常時評価することを可能にするために、図中に破線で図示するように、天井裏100a、109aなどの天井付近の内外にアンテナ111、121を設置するのが有効である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−94288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような電磁シールドモニタリングシステムにあっては、アンテナ111、121を対向配置させる天井裏100a、109a付近の電磁シールド性能を有効に測定評価することは可能である。
【0008】
しかしながら、そのアンテナ111、121の対向位置から離隔する、例えば、ドア101の下側に、電波Wを遮蔽するシールド機能を損なう漏洩個所Pが発生している場合には、アンテナ111、121の間で送受する電波Wの伝搬距離がその漏洩個所Pを経由するために対向間距離よりも長くなる。このため、アンテナ111、121を天井裏100a、109aに配置するのでは、電波Wが減衰して受信強度が低下することから正確にシールド性能を評価することは難しい。
【0009】
具体的には、例えば、図7に示すように、漏洩個所Pを設定したドア101を評価対象として、電磁シールドルーム100内と廊下109側のドア101を挟む対向空間S内の複数箇所に、アンテナ111、121をそれぞれ順次に配置して電磁シールド性能評価試験を行ったところ、図8のような結果が得られた。この評価試験では、その漏洩個所Pの漏洩形状として、水平偏波が電磁シールドルーム100内に侵入する形状に設定しており、その漏洩個所Pを挟む対向位置のアンテナ111a、121aで送受する周波数1GHzの電波Wに対して電磁シールド性能が40dBになるように漏洩形状や寸法を調整している。
【0010】
この評価試験では、電波受信機120が受信アンテナ121で水平偏波の電波Wを受信するように設定したところ、図8(a)に示すように、ドア101の漏洩個所Pから離隔するほどその電波Wの伝搬距離が長くなって(電波強度は減衰して)電磁シールド性能は50dBから90dBまで見掛け上向上する傾向の評価結果が得られて、その差は40dBであった。要するに、ドア101の高さである2m程度だけでも漏洩個所Pから離れるだけで評価結果が異なってしまい、正確に電磁シールド性能を評価することができないことが分かる。
【0011】
また、電波受信機120が受信アンテナ121で垂直偏波の電波Wを受信するように設定したところ、図8(b)に示すように、その電波受信機120ではドア101の漏洩個所Pを経由する水平偏波の電波Wを受信アンテナ121で受信することができない。このため、見掛け上、その漏洩個所P近傍でも電磁シールド性能としては90dBとなってさらに離隔するほど110dB以上に上昇する傾向の評価結果が得られた。すなわち、電磁シールド性能を評価する際には、漏洩する電波Wの偏波を考慮して、少なくとも水平偏波と垂直偏波の双方の電波Wを受信して評価する必要があることが判明した。
【0012】
さらに、この電磁シールド性能の評価試験では、一般的に、単一周波数の電波Wを利用して評価している。しかしながら、図9に示すように、例えば、300MHz、500MHz、1000MHzの単一の電波Wで評価試験を行った結果でも、それぞれの周波数で電磁シールド性能に違いがあって、利用した電波Wの周波数毎の評価結果が得られるだけであり、実質的に、異なる周波数の電磁シールド性能を評価することができていないことが判明した。
【0013】
そこで、本発明は、邪魔にならない位置に送受信アンテナを配置して電磁シールド性能を常時正確に評価することのできる電磁シールドモニタリングシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する電磁シールドモニタリングシステムの発明の一態様は、電磁シールド空間と非電磁シールド空間の一方における常設設置可能な位置に配置される送信アンテナから性能評価用電波を送信する送信部と、前記電磁シールド空間と前記非電磁シールド空間の他方における常設設置可能な位置に配置される受信アンテナで前記性能評価用電波を受信する受信部と、前記受信部が受信する前記性能評価用電波の受信結果に基づいて前記送信アンテナと前記受信アンテナの間の前記性能評価用電波の伝播距離を特定して前記電磁シールド空間と前記非電磁シールド空間の間の電磁シールド性能に該伝搬距離に応じた補正を施して該電磁シールド性能の評価結果を得る性能評価部と、を備えることを特徴とするものである。
【0015】
この発明の態様では、常時設置可能な位置の間で送受する性能評価用電波の受信結果から電磁シールド性能の仮評価結果を得るとともに、その仮評価結果を得る性能評価用電波の伝搬距離を特定して、さらに、その仮評価結果に伝搬距離に応じた補正を施して、評価対象の電磁シールド空間と非電磁シールド空間の間の電磁シールド性能の評価結果を得ることができる。したがって、性能評価用電波の伝搬距離を考慮した電磁シールド性能に補正して正確な評価結果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明の一態様によれば、評価対象の電磁シールド空間と非電磁シールド空間の間で減衰する性能評価用電波の伝搬距離を考慮した電磁シールド性能の評価結果を得ることができ、邪魔にならない位置にアンテナなどを設置して性能評価用電波を送受し正確な性能評価をすることができる。したがって、邪魔になることなく、電磁シールド性能を正確に評価しつつ常時監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る電磁シールドモニタリングシステムの一実施形態を示す図であり、その全体構成を示す立面図である。
【図2】その要部構成を示すブロック図である。
【図3】その電磁シールド性能の評価を説明するタイミングチャートである。
【図4】その電磁シールド性能の補正を説明する一覧表である。
【図5】その電磁シールド性能の周波数特性を示すグラフである。
【図6】その関連技術を説明する立面図である。
【図7】その関連技術の課題を説明する概念図である。
【図8】その関連技術の課題を説明する電波種に応じた電磁シールド性能を示す分布図である。
【図9】その関連技術の電磁シールド性能の周波数毎の評価を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一態様としては、上記の課題解決手段のように、電磁シールド空間と非電磁シールド空間の一方における常設設置可能な位置に配置される送信アンテナから性能評価用電波を送信する送信部と、前記電磁シールド空間と前記非電磁シールド空間の他方における常設設置可能な位置に配置される受信アンテナで前記性能評価用電波を受信する受信部と、前記受信部が受信する前記性能評価用電波の受信結果に基づいて前記送信アンテナと前記受信アンテナの間の前記性能評価用電波の伝播距離を特定して前記電磁シールド空間と前記非電磁シールド空間の間の電磁シールド性能に該伝搬距離に応じた補正を施して該電磁シールド性能の評価結果を得る性能評価部と、を備える構成に加えて、次の構成を備えてもよい。
【0019】
第1の他の態様としては、前記送信部と前記受信部は、前記性能評価用電波として広帯域周波数の電波信号を前記送信アンテナと前記受信アンテナの間で送受するように構成されていてもよい。
【0020】
この態様では、性能評価用電波として広帯域周波数の電波信号を利用して、電磁シールド空間と非電磁シールド空間の間で送受することができ、周波数に応じた電磁シールド性能を評価することができる。
【0021】
第2の他の態様としては、前記受信部の前記受信アンテナで水平方向に振動する水平偏波と垂直方向に振動する垂直偏波の双方を受信するように構成されていてもよい。
【0022】
この態様では、評価対象の電磁シールド空間と非電磁シールド空間の間の境界を経由してきた性能評価用電波が一方向に偏波している場合でも、極端に受信不能になってしまうことなく、水平偏波と垂直偏波のいずれかとして受信することができ、偏波方向に依存して評価が不正確になることを回避することができる。
【0023】
第3の他の態様としては、前記性能評価部は、前記性能評価用電波の伝播距離と、前記電磁シールド空間と前記非電磁シールド空間の間の境界面とから前記性能評価用電波の伝播経路を前記評価結果として特定するように構成されていてもよい。
【0024】
この態様では、性能評価用電波を送受するアンテナ位置の間の評価対象の境界面内で、その双方のアンテナ位置からの離隔距離の合算距離が性能評価用電波の伝搬距離に一致する箇所を伝搬経路として特定することができる。
【0025】
ここで、この態様では、前記送受信アンテナを複数個所に配置してもよい。この場合には、前記性能評価部は、複数個所で前記受信アンテナが受信する前記性能評価用電波の受信結果に基づいて当該性能評価用電波の伝播経路をより正確かつ容易に特定することができる。
【0026】
第4の他の態様としては、前記性能評価部が得る前記評価結果を報知する報知部を備えていてもよい。
【0027】
この態様では、常時評価する電磁シールド性能の評価結果を利用者に表示出力や音声出力などして報知することができ、電磁シールド性能に異常が発生したことを迅速に把握させて対処することができる。また、電磁シールド性能の評価結果として、性能評価用電波の伝搬経路を特定している場合には、その伝搬経路を表示して電波の漏洩個所を容易に特定し適切かつ迅速な修理等を可能にすることができ、電磁シールド性能を早期に正常に回復させることができる。
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1〜図5は本発明に係る電磁シールドモニタリングシステムの一実施形態を示す図である。ここで、本実施形態でも、図6で説明する電磁シールドモニタリングシステムと同様の構成を備えることから同様の構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0029】
図1において、電磁シールドモニタリングシステムは、図6のシステムと同様に、廊下(非電磁シールド空間)109の天井裏109aに配置されている送信アンテナ111を備える電波送信機(SG)110と、電磁シールドルーム(電磁シールド空間)100の天井裏100aに配置されている受信アンテナ121を備える電波受信機(SA)120と、これら電波送信機(送信部)110と電波受信機(受信部)120がそれぞれ接続されて統括制御するとともに、その電波受信機120による受信情報に基づく適正な電磁シールド性能を評価してその評価結果を利用者が確認可能に表示するメインモニタ(性能評価部)10と、を備えて構築されている。なお、本実施形態では、送信アンテナ111を廊下109側に配置するとともに受信アンテナ121を電磁シールドルーム100側に配置して、その電磁シールドルーム100内に無用な電波の侵入を制限する電磁シールド性能として評価する場合を一例にして説明するが、反対に設置して電波の漏洩を制限する電磁シールド性能を評価するようにセッティングする場合に適用してもよい。
【0030】
ここで、電波送信機110と電波受信機120は、スイッチで切替えて水平偏波と垂直偏波を含む性能評価用電波Wを送信して受信するようになっており、後述する電磁シールド面(境界面)の漏洩個所Pの形状などに起因する性能評価用電波Wの偏波により評価が不正確になることを回避するようになっている。
【0031】
このシステムは、電磁シールド性能を評価する対象を間に挟む対向位置にアンテナ111、121を配置することを基本としている。本実施形態では、最も電磁シールド性能が低下し易いドア101が取り付けられている壁面(境界面)を常時監視(評価)する対象として、人の出入りの邪魔にならない天井裏100a、109a側にそのアンテナ111、121に配置し電磁シールド性能を正確に評価するようになっている。
【0032】
具体的には、メインモニタ10は、電磁シールドルーム100の利用者が各種情報を目視可能に表示するとともに入力操作可能にドア101付近に設置されており、図2に示すように、CPU(central processing unit)11がROM(read-only memory)12内に予め格納されている評価プログラムと各種パラメータに従ってRAM(random-access memory)13をワークエリアとして利用しつつ各種演算を行うことにより装置各部を統括制御するようになっている。このメインモニタ10は、各種要求や情報の入力操作をする操作部16と、この操作部16からの入力情報やCPU11による評価結果をモニタ表示する表示部15と、がCPU11、ROM12およびRAM13と共にバス20を介して接続されている。
【0033】
また、メインモニタ10は、CPU11が読取・書込する各種情報や後述する評価用表示データを不揮発に格納するHDD(hard disk drive)14がそのバス20に接続されている。また、そのバス20には、CPU11が電波送信機110や電波受信機120と間で情報のやり取り可能にIF(Interface)18、19が接続されている。
【0034】
HDD14内には、評価対象の電磁シールドルーム100のシールド面の2次元または3次元データが予め格納されており、例えば、ドア101が取り付けられている廊下109側との境界面となる壁面形状のデータが図1に図示する形態で今回の評価結果と共に表示部15に表示可能に準備されている。
【0035】
そして、CPU11は、上記の評価プログラムを実行して電磁シールドルーム100の電磁シールド性能を評価するようになっており、予め設定されている一定間隔で電波送信機110の送信アンテナ111から性能評価用電波Wを一方位方向に送出して受信アンテナ121を介して電波受信機120に受信させる。
【0036】
このとき、電波受信機120は、電磁シールドルーム100のシールド面を通過(漏洩)して内部に侵入してきた性能評価用電波Wを受信アンテナ121で受信することになり、そのシールド面に欠陥がなく、十分な電磁シールド性能を備える場合には、受信感度はない。しかしながら、例えば、電磁シールドルーム100のドア101の周縁部の一部(シールド面)に性能評価用電波Wを漏洩する漏洩箇所Pが存在する場合には、電波受信機120は、図3に示すように、その漏洩個所Pを経由する所定以上の強度の性能評価用電波Wを、送信アンテナ111からの伝搬経路(伝搬距離)に応じた伝搬時間分だけ送信タイミングから遅延した受信タイミングに受信することになる。要するに、ドア101の下部に漏洩個所P1が存在する場合とドア101の上部に漏洩個所P2が存在する場合とでは、性能評価用電波Wの伝搬経路L1、L2毎に伝搬距離が異なってその伝搬時間に差異が生じる。
【0037】
ここで、電磁シールド性能SE(dB)は、一般的に、次式(1)に示すように、電磁シールド材料を介在させることなく性能評価用電波Wを受信したときの受信強度E1(dB)と、電磁シールド材料を介在させて性能評価用電波Wを受信したときの受信強度E2(dB)との差分で評価する。
SE(dB)=E1(dB)−E2(dB) ・・・(1)
【0038】
その性能評価用電波Wの受信強度はその伝搬距離に応じて減衰することから、電磁シールド性能を正確に評価するには、上記(1)式に減衰強度D(dB)を加えて補正して次式(2)により求めるのが適正である。この減衰強度D(dB)は、計算により求めてもよいが、実験により求めて利用するようにしてもよい。例えば、図4に示すように、性能評価用電波Wの伝搬距離(m)毎に応じた受信時の減衰強度(dB)の対応表を作成して利用する。なお、ここでは伝搬距離で表示するが、これに限るものではなく、例えば、伝搬時間(送信から受信までの遅延時間)をそのまま使うようにしてもよい。
SE(dB)=E1(dB)−E2(dB)−D(dB) ・・・(2)
【0039】
詳細には、メインモニタ10(CPU11)は、電波送信機110に送信アンテナ111から性能評価用電波Wを送信させたときに、電波受信機120がその性能評価用電波Wを所定以上の受信強度で受信アンテナ121を介して受信した場合に、電磁シールド性能を算出する評価処理を実行する。この評価処理では、その性能評価用電波Wの送信タイミングから受信タイミングまでの遅延時間(伝搬時間)から伝搬距離を算出して特定することにより減衰強度D(dB)を取得し、受信強度E2(dB)と共に、予め設定されているシールド材料が介在することがない場合の受信強度E1(dB)から減算して算出した評価結果の電磁シールド性能SE(dB)を表示部15に表示出力して報知する。すなわち、メインモニタ10が報知部を構成している。
【0040】
このとき、CPU11は、送信アンテナ111と受信アンテナ121の間に、算出した性能評価用電波Wの伝搬距離を当てはめて電磁シールドルーム100のドア101が配置されている壁面における漏洩個所Pを推定して、その性能評価用電波Wの伝搬経路として電磁シールドルーム100内に表示することもでき、例えば、電磁シールド性能が異常値を示したときに警報を発して報知するようにしてもよい。
【0041】
これにより、電磁シールドルーム100の電磁シールド性能を常時評価(監視)するために、邪魔にならないように送信アンテナ111や受信アンテナ121を天井裏100a、109aに配置する設置環境でも、伝搬距離が長くなることによる電波強度の減衰を考慮して正確な評価結果を得ることができ、電磁シールド性能の劣化を迅速に把握して修理等をすることができる。また、電磁シールド面における漏洩個所Pを容易に特定して適切に修理等をすることができる。
【0042】
ここで、電波送信機110と電波受信機120は、UWB(Ultra Wide Band)方式を採用してアンテナ111、121の間で高帯域周波数の性能評価用電波Wを送受するようにしてもよく、例えば、1度の評価測定時に300MHz〜1000MHzの周波数範囲の性能評価用電波Wを5MHz毎に送受させて、図5に示すように、電磁シールド性能における周波数特性を評価可能にすることもできる。
【0043】
また、電波受信機120が水平偏波または垂直偏波の一方のみを受信するように切り替えて、電磁シールド面における漏洩個所Pの形状を特定して表示部15に表示させるようにしてもよい。
【0044】
このように本実施形態においては、送信アンテナ111や受信アンテナ121を邪魔にならない天井裏100a、109aに配置しても、性能評価用電波Wの伝搬距離(伝搬経路)を考慮して電磁シールド性能を正確に評価することができる。したがって、電磁シールドルーム100の電磁シールド性能を常時監視(評価)することができる。
【0045】
上述の実施形態の他の態様としては、上述実施形態では送信アンテナ111と受信アンテナ121とが1対1で対応するようにセッティングするシステムとして説明するが、送信アンテナ111と受信アンテナ121を複数箇所に配置して送信アンテナ111から送出される一つの性能評価用電波Wを複数箇所で送受信するようにし、それぞれの異なる伝搬経路(伝搬距離)を用いて漏洩個所Pを正確に特定可能にすることもできる。
【0046】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
10 メインモニタ
15 表示部
16 操作部
20 バス
100 電磁シールドルーム
100a、109a 天井裏
101 ドア
109 廊下
110 電波送信機
111 送信アンテナ
120 電波受信機
121 受信アンテナ
L1、L2 伝搬経路
P、P1、P2 漏洩個所
W 性能評価用電波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁シールド空間と非電磁シールド空間の一方における常設設置可能な位置に配置される送信アンテナから性能評価用電波を送信する送信部と、前記電磁シールド空間と前記非電磁シールド空間の他方における常設設置可能な位置に配置される受信アンテナで前記性能評価用電波を受信する受信部と、前記受信部が受信する前記性能評価用電波の受信結果に基づいて前記送信アンテナと前記受信アンテナの間の前記性能評価用電波の伝播距離を特定して前記電磁シールド空間と前記非電磁シールド空間の間の電磁シールド性能に該伝搬距離に応じた補正を施して該電磁シールド性能の評価結果を得る性能評価部と、を備えることを特徴とする電磁シールドモニタリングシステム。
【請求項2】
前記送信部と前記受信部は、前記性能評価用電波として広帯域周波数の電波信号を前記送信アンテナと前記受信アンテナの間で送受することを特徴とする請求項1に記載の電磁シールドモニタリングシステム。
【請求項3】
前記受信部の前記受信アンテナで水平方向に振動する水平偏波と垂直方向に振動する垂直偏波の双方を受信することを特徴とする請求項1または2に記載の電磁シールドモニタリングシステム。
【請求項4】
前記性能評価部は、前記性能評価用電波の伝播距離と、前記電磁シールド空間と前記非電磁シールド空間の間の境界面とから前記性能評価用電波の伝播経路を前記評価結果として特定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁シールドモニタリングシステム。
【請求項5】
前記性能評価部が得る前記評価結果を報知する報知部を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電磁シールドモニタリングシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate