説明

電磁ホーン型電子スピン共鳴装置(1)

【課題】ESR測定感度の向上。自動化による操作性の向上、誘電ロスの大きな試料および大型/多量試料の計測、基礎科学から材料工学、環境科学、医薬学分野での臨床現場での血液、組織検査、レドックス関連加齢現象、発癌機構の研究等に即応用可能にする装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波発信装置、電磁ホーンアンテナ装置、試料への磁場変調装置、マイクロ波反射板と、反射波処理装置と、からなる電磁ホーン型電子スピン共鳴(ESR)装置において、前記電磁ホーンアンテナ装置の電磁ホーンの表面にマイクロ波放射凸面レンズを設け、前記マイクロ波反射板を凹面反射面型のマイクロ波反射板にし、マイクロ波放射凸面レンズとマイクロ波凹面反射面型の反射板との間の試料載置台と凹面反射面型のマイクロ波反射板との位置調節装置を設け、マイクロ波パワーモニターを設置して正確なESR同調機構を施し、温度可変や、試料回転用ゴニオメーターを設置可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感度と精度の向上、操作性と応用計測性を大幅に拡大(多目的化)した操作性のよい電磁ホーン型電子スピン共鳴装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の開発の先達は、1983年大矢博昭氏による初めての事例として、X-バンド電磁ホーン型ESRの開発事例と、1991年に相馬純吉・原秀元両氏によるK-バンド電磁ホーン型ESRの開発事例がある。
これに基く改良技術は、下記の特許文献1から特許文献3にて紹介されている。また最近では、発明者らが開発し、非特許文献1により次に紹介する電磁ホーン型電子スピン共鳴装置が紹介され注目されている。
大矢氏及び相馬・原両氏の論文文献や特許文献では、ザボイスキーにより1945年にESR装置が発明されて以来、殆どの場合に試料用セルとして、共振器(空洞共振器、誘電体共振器、ループ・ギャップ共振器等)が採用されてきた。そのために計測時に共振器の高いQ値の維持が必要な為,少量小型で且つ誘電ロスの小さい試料でしか測定できなかった。このため、誘電ロスの大きな試料(水溶液試料・含水試料・生体試料)、導電性試料、金属含有試料、大型試料、多量の溶液(特に誘電ロスの大きな水溶液)試料の場合のESR測定は困難または不可能で,多くの制約があった。特に市販の多くの/殆どのESR装置では共振器の同調の際に、AFC(自動周波数制御)装置を採用しているが、電磁ホーン型ESR装置の場合には、共振器の固有周波数に同調させる必要もなければ、その際の誘電ロスが大きい試料でのQディップの幅広化のためにAFCがうまく作動しない(かからない)、従ってESR計測が不可能という困難も起こらない。また共振器型試料セルでの水溶液試料で極端に細い、もしくは極端に薄い小さな容量の合成石英製の試料容器を使う必要もない。これは電磁ホーン型電子スピン共鳴装置(2)の新規な周波数掃引方式電磁ホーン型ESRの発想・発明につながる事項でもある。そして本発明者により静磁場固定で、マイクロ波周波数を広領域に掃引させた周波数掃引ESRスペクトルの計測にも成功している(8.5GHzから10.5GHzの2GHz間の周波数掃引で方解石中のMn(II)イオン(CaCO3:Mn(II))の6本のESRスペクトル及びDPPH固体粉末標準試料、及び40cc容量のTEMPOL水溶液試料の周波数掃引ESRスペクトルを得ている。当該周波数掃引方式YIG発振器の限界値8GHzから12.4GHzでも周波数掃引ESRスペクトルの確保は可能である。
【0003】
上記の各種の問題を解決するために,1段階として、電磁ホーン(アンテナ)間の空間を試料セルとして採用し、共振器のようなマイクロ波定在波ではなくマイクロ波進行波を用いることで,共振器型ESRのもつ制約・困難を大幅に改善した透過方式電磁ホーン型ESRあるいは反射方式電磁ホーン型ESR(注記:大矢氏により透過方式・反射方式・誘導方式等のアイデアは大矢氏の論文に紹介されている)を稼働させ,感度的には球形や円筒形の高Q値の空洞共振器型ESRに比べ劣るものの、とにかく2006年にESR計測を行うことが可能となった。それ以後2009年の現在までに、感度的には3桁ほど改良してきた。こうして実用レベルでのESR計測を行うことが可能になった。
電磁ホーン型ESR発明の先達が従来開発した上記の装置は未だ感度が低い、
【0004】
<本発明者等が開発し発表した電磁ホーン型電子スピン共鳴装置>
電磁ホーン型電子スピン共鳴装置であるK-band/X-band反射方式電磁ホーン型ESR装置のマイクロ波立体回路のブロック線図を図2に示す。
図2においてこのX-band反射方式電磁ホーン型ESR装置は、高周波域周波数のマイクロ波を発振するマイクロ波発振器001と、設定出力のマイクロ波mw0を減衰器ATT1とサーキュレータcirculatorを介して試料sampleに放射する電磁ホーンhornと、試料sampleへの磁場変調装置002と、磁場均一性のよい掃引磁界印加装置(電磁石)と、試料sampleを介したマイクロ波mw1を再び試料sampleを介して電磁ホーンhornに反射するマイクロ波反射板003と、設定出力のマイクロ波mw0と電磁ホーンhornからの反射マイクロ波mw2を導入し、反射マイクロ波mw2と逆の位相を持ち強度の等しい逆位相マイクロ波をつくり反射マイクロ波を逆反射マイクロ波で打ち消しバランスさせ、ある磁場で電子スピンが│-1/2>状態から│1/2>状態に遷移する所謂磁気共鳴によるスピン反転時に試料がその分だけマイクロ波エネルギーを吸収した際のアンバランスによるマイクロ波の極微量変化を増幅してESRスペクトルとして記録するマイクロ波処理回路004とからなる。
マイクロ波処理回路004において、WG-N,WG-SMA:同軸導波管交換器、ATT2:減衰器 Magic tee:マジックティー、Phase shifter:位相器、AMP:プリアンプとロックインアンプを各々示す。図中、ATT3は減衰器である。
この反射方式電磁ホーン型ESR装置の電磁ホーンは、例えば断面が方形の導波管であれば、開口端の開ロ面積が徐々に広くなるよう、底面が開放された角錐台の形状又は円錐台の形状のホーンを取り付けたものである。原理としては、導波管の内部を伝送された電磁波が、開ロ端反射することなく、空間に放射されるための最も単純な形と言える。電磁ホーンの長さは長ければ長いほど指向性は鋭くなる。角錐・円錐をホーンの形の基準とした場合、その頂角を中心角と呼ぶ。これは指向性を鋭くするための最適値がある。
一方マイクロ波反射板の反射面は平坦面が一般的で中には立体的形状が定かでないが側面から見て湾曲したものである。
このように、電磁ホーンのマイクロ波放射面は平坦面であり、マイクロ波反射板の反射面は平坦面かそれに類似のものであるため、何れもマイクロ波の収斂/集束が好ましくなく、ノイズが多く、感度も満足するものでなかった。
【0005】
【特許文献1】特公平3-78945号公報(発信受信電磁ホーンに反射板を対向配置させたタイプの基本)
【特許文献2】特公平3-78591号公報(一方向性の発信電磁ホーンと受信電磁ホーンタイプの基本)
【特許文献3】特公平3-78944号公報(発信電磁ホーンと受信電磁ホーンの交差対向配置の基本)
【特許文献4】特公平3-78946号公報(受信電磁ホーンと反射板が無く試料からの反射マイクロ波を検出するタイプ
【非特許文献1】「電磁ホーン型電子スピン共鳴(ESR)装置の開発とESR応用計測」小林正,桑田賢一・・・日本AEM学会誌Vol.17,No.1,2009年pp138-143
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電磁ホーンのマイクロ波放射面と、マイクロ波反射板の反射面を改良してマイクロ波の収斂/集束を良好に維持し、ノイズを激減させてESR測定感度を所望の感度(2,3桁向上)にするとともに、試料載置台に載せた試料のサイズ、質量、形状、成分等に応じて、電磁ホーンのマイクロ波放射面に対する試料載置台位置とマイクロ波反射板位置を最適に調節してESR測定感度をより高める電磁ホーン型電子スピン共鳴装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴とするところは次の(1)〜(2)の通りである。
(1)、マイクロ波発信装置からのマイクロ波をマイクロ波導波管のメインアーム(01)を介して試料載置台(13)上の試料(13a)に放射する電磁ホーン(11)、
試料載置台(13)の周囲に設けた掃引磁場印加装置(171)(電磁石)と変調分光用の変調装置(170)、
電磁ホーン(11)から試料(13a)を介してのマイクロ波を再び試料(13a)を介して電磁ホーン(11)に反射するマイクロ波反射板(14)、
前記マイクロ波導波管のメインアーム(02)から分岐したリファレンスアーム(03)からの参照用の発信マイクロ波と、マイクロ波反射板(14)から試料(13a)と電磁ホーン(11)とメインアーム(02)を介しての反射マイクロ波をミキサー(32)に導入して、試料中の不対電子のスピンが反転する磁気共鳴時にマイクロ波エネルギーを試料が吸収した際のマイクロ波パワーの極微量変化を検出し記録する差動増幅装置(40)・ロックイン増幅装置(41),記録装置(42)とからなる電磁ホーン型電子スピン共鳴装置において、
前記電磁ホーンアンテナ装置の電磁ホーン(11)の表面(射出口)にマイクロ波放射凸面レンズ(12)を設け、前記マイクロ波反射板(14)を例えば放物凹面、球凹面、平面組み合わせ凹面、湾局面組み合わせ凹面、楕円凹面等の凹面とした凹面反射面型反射板(14a)にしたことを特徴とする電磁ホーン型電子スピン共鳴装置。
【0008】
(2)、マイクロ波発信装置からのマイクロ波をマイクロ波導波管のメインアーム(01)を介して試料載置台(13)上の試料(13a)に放射する電磁ホーン(11)、
試料載置台(13)の周囲に設けた掃引磁場印加装置(171)(電磁石)と変調分光用の変調装置(170)、
電磁ホーン(11)から試料(13a)を介してのマイクロ波を再び試料(13a)を介して電磁ホーン(11)に反射するマイクロ波反射板(14)、
前記マイクロ波導波管のメインアーム(02)から分岐したリファレンスアーム(03)からの参照用の発信マイクロ波と、マイクロ波反射板(14)から試料(13a)と電磁ホーン(11)とメインアーム(02)を介しての反射マイクロ波をミキサー(32)に導入して、試料中の不対電子のスピンが反転する磁気共鳴時にマイクロ波エネルギーを試料が吸収した際のマイクロ波パワーの極微量変化を検出し記録する差動増幅装置(40)・ロックイン増幅装置(41),記録装置(42)とからなる電磁ホーン型電子スピン共鳴装置において、
前記電磁ホーンアンテナ装置の電磁ホーン(11)の表面(射出口)にマイクロ波放射凸面レンズ(12)を設け、前記マイクロ波反射板(14)を凹面反射面型反射板(14a)にし、最適のESRスペクトルを得るための同調/チューニング用として前記各マイクロ波のパワーモニター装置及び試料載置台(13)の位置調節装置(15)と反射板(14)の位置調整装置(16)を設けたことを特徴とする電磁ホーン型電子スピン共鳴装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置は、前記構成により電磁ホーンのマイクロ波の収斂/集束を良好に維持し、ノイズを激減させてESR測定感度を所望の感度(2,3桁向上)にするとともに、試料載置台に載せた試料のサイズ、質量、形状、成分、状態等に応じて、電磁ホーンのマイクロ波放射面に対する試料載置台位置とマイクロ波反射板位置を最適に調節してESR測定感度をより高め、更に試料載置台に温度可変装置などを設けて、ESRスペクトルとともに、試料の誘電率、電気伝導度、比熱、熱伝導度、熱膨張率、音速等などの測定を同時に可能にする等の優れた効果を呈するものである。
以下に本発明の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の技術的作用効果を詳細に説明する。
【0010】
1.電磁ホーンアンテナ装置の電磁ホーンの開口部(表面)にマイクロ波放射凸面レンズを設け、マイクロ波反射板を凹面反射面型のマイクロ波反射板にすることによりマイクロ波が良好に収斂/集束され、ノイズの低減、感度の向上につながる優れた作用効果を呈する。
【0011】
2.マイクロ波放射凸面レンズとマイクロ波凹面反射面型の反射板との間の試料載置台と、凹面反射板とを移動可能にし、その位置調節用としてパワーモニター装置を有する試料位置を精密に微調節する装置を設けることにより、試料とマイクロ波放射凸面レンズとマイクロ波凹面反射面型の反射板との相対関係位置を最適なESR測定条件にセットすることができ、最大感度でのESR計測を可能にする優れた作用効果を呈する。
【0012】
3.前記1.2.を採用したことによる装置全体の総合作用効果は、試料位置の調整、反射鏡の位置(マイクロ波が試料を透過しやすい試料の場合)、リファレンスアームの減衰器(アッテネーター)の調整、リファレンスアームの位相器(フェーズシフター)の調整などの4つの要素で最大測定感度を容易確実にチューニング(同調)することができる。
【0013】
4.このように感度の大幅な向上のために、磁場変調コイル用のAMPを従来より大出力がでるものに変更して、このAMPに整合させた多巻き磁場変調コイルを作製し、設置することが可能になり、大幅な感度の改善が可能になった。
【0014】
5.マイクロ波が試料通過の前後の箇所でのマイクロ波パワーモニターの設置と、マイクロ波メインアームとレファレンスアームでのミキサー直前でのパワーモニターの設置により、2.及び3.の同調(チューニング)がより精密に行えるようになった。
【0015】
6.また試料載置台に温度可変装置を設けることにより、電極を施した強誘電体等の試料を設置してのESRスペクトルと誘電率の同時計測システムの構築及びESRスペクトルと熱容量(比熱)、ESRスペクトルと試料の電気伝導度、熱伝導度、熱膨張率、試料中の音速等の同時測定、さらにはESRスペクトルとSTM・STS(走査型トンネル顕微鏡像・走査型トンネル電流分光)又はAFM(原子間力顕微鏡像)との同時測定、さらにダイヤモンドアンビルやマイクロボンベ方式の超高圧静水圧印加時のESRスペクトルの計測、1軸性応力印加装置を設置して一軸性応力印加時の試料の歪みのスピンハミルトニアンを介しての研究を可能にする。
【0016】
電磁ホーン型ESR用に特別に開発した試料温度可変装置(a室温から高温までの抵抗加熱仕様試料温度可変装置、b不凍液やシリコーン・オイルをアルミ・ブロック製の温度可変装置に導き、クーリング・サーキュレーターで-20℃から+150℃まで可変出来る試料温度可変装置、c合成石英製ジュワー瓶(魔法瓶)に無誘導巻きヒーターを設置したステージを置き、ヒーターレベルより下に液体窒素あるいは冷媒を注入した低温用温度可変装置)に設置して固体・溶液試料のESRスペクトルの温度変化を計測する、(温度可変仕様の)単結晶試料用1軸回転/2軸回転/3軸回転仕様のゴニオメーターを設置してESRスペクトルの静磁場あるいはマイクロ波磁場方位を考慮した単結晶試料のESRスペクトル(共鳴磁場及び線幅、強度)角度依存性。また誘電率・電気伝導性・熱容量(比熱)・熱伝導性計測、熱膨張率との同時測定(発明者は既に硫酸三グリシン強誘電体単結晶の強誘電軸に垂直に電極を設置してコンデンサーにして、49℃の強誘電体キュリー温度前後の±30℃の温度範囲(20℃から80℃)で、各温度のステップ変化ごとのESRスペクトルと誘電率の同時計測に成功している。あるいは除振機構を備え、走査型トンネル分光(STS)装置を試料空間に設置し、トンネル電流とESR分光の同時計測、トンネル電流とESRスペクトル強度変化の相互エンハンス効果の計測、及びストレインゲージを用いた簡易熱膨張計等の他物性量との同時計測を、試料温度を可変しながら、可能にしたものである。)を可能ならしめる。
【0017】
7.各種形状の試料及び測定容器、デバイス等機器、及び他物性量との同時測定のESR計測のために、各所に作業用の穴や隙間及び各種の資材・機器の取り付け機構等を設けることができた。
これにより、当該装置を多目的利用するために、各所に作業用の穴や資材の取り付け用の固定器が設置できる仕様になっている。(1)紫外線や可視光線、あるいは温度可変用の赤外線照射装置の設置機構、(2)単結晶試料の1軸・2軸回転装置の設置機構、(3)クロマトグラフィー用のカラム等の垂直上下移動・計測機構の設置、(4)2種又は多種の試薬の試料セル内での混合・反応機構の設置、(5)ESRスペクトルと誘電率・比熱・熱膨張率等との各種物性量同時計測用の設置空間の確保(脱着可能なマイクロ波反射板の後方にかなり大きな空間を設けている)と各種多目的計測用器具設置用のビス穴、ジグ設置用固定器具等々の取り付け機構の設置が自由に可能である。
【0018】
<活用例など>
本発明の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の活用例は次の通りである。
(1)、今後 aダイヤモンドアンビルによる超高圧静水圧下でのESR計測、b発明者が開発した2電源Zupancic型MRIコイルとアンチヘルムホルツMRIコイルを設置した、電磁ホーン型3次元ESRイメージング装置、c電磁ホーン型cwESR装置のパルスESR化、並びに d走査型トンネル分光(STS)との併用計測・クロス計測が可能となる
(2)、単一〜単三型のマンガン乾電池に抵抗をつなぎ、放電/消耗させながら電解質中の炭素ラジカルと途中から生成するマンガン2価イオンのESRスペクトルの時間依存性。
(既に計測・解析済み) 新規な二次電池・太陽電池・燃料電池開発への応用性を内在している。
(3)、生活排水中及び工場排水中のCr(III)、Mn(II)イオン等の計測。(一部 実施済み 環境科学への応用:水処理、水モニター、排気ガス・粉塵モニター等)
(4)、TEMPOLラジカルのL-アスコルビン酸(ビタミンC)によるラジカル消去のin situ 実験。(既に計測・解析済み)
(5)、DPPH溶液、TEMPOL水溶液、硫酸マンガン水溶液の溶解過程のESR計測。これら試料のESRスペクトルの濃度依存性。(既に計測・解析済み)
(6)、強誘電体チタン酸バリウム:Mn(II)、 硫酸グリシン:Cu(II)イオン等の誘電ロスの大きなキュリー点とその前後の温度でのESRスペクトルと誘電率の同時計測。(既に計測・解析済み)
(7)、DMPO等のスピントラップ剤を用いたO2-(スーパーオキシド)ラジカル、OHラジカルの計測と、ビタミンCやビタミンEあるいはコエンザイム剤による
これらのラジカルの消去過程の検証、新薬の開発手段に活用。
(8)、アラニンや蔗糖で作成したESR用の試料及びESRイメージングプレートによる放射線量測定システム。ESRスペクトルの線幅の大きな場合のESRイメージング。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
マイクロ波反射方式電磁ホーン型ESR装置を実施するための最良の形態は次のとおりである。
マイクロ波反射方式電磁ホーン型ESR装置は、マイクロ波発振器と、電磁ホーン11のマイクロ波放射凸面レンズ12からマイクロ波を試料に放射する電磁ホーンアンテナ装置と、試料への掃引磁場印加装置171(電磁石)と、変調分光用の磁場変調装置170と、試料を介したマイクロ波を再び試料を介して電磁ホーン11に反射させる凹面反射面型のマイクロ波反射板14aと、マイクロ波導波管のメインアーム02からマイクロ波をリファレンスム03に分波させ、これをメインアーム02でのサーキュレーター5、電磁ホーン11、試料13a、反射板14a、試料13a、電磁ホーン11、サーキュレーター5を通してミキサー32(マジックティー)に導入するマイクロ波と逆の位相を持ち、これらメインアーム02経由で試料を介したマイクロ波と、リファレンスアーム03を介したマイクロ波をミキサー32にいれ検波して、差動(前置)増幅器して後、ロックイン増幅器に導く。
これにより磁場掃引時あるいは周波数掃引時に、磁気共鳴によりマイクロ波を吸収し、電子スピン反転時にのみ試料がマイクロ波エネルギーを吸収した際のメインアーム側とリファレンスアーム側のマイクロ波パワーのアンバランスによる変化分を磁場変調あるいは周波数変調分光法で高感度に検出した磁場掃引ESRスペクトルあるいは周波数掃引ESRスペクトルとして記録するマイクロ波増幅回路と、試料位置・反射板位置を最適化し最適のESRスペクトルを得るための同調/チューニング用として前記各マイクロ波のパワーモニター装置を有する試料の位置調節装置からなる。
【0020】
マイクロ波反射方式電磁ホーン型ESR装置は、上記した構成により、3桁以上のESR測定感度の向上。パソコン自動化によるESRスペクトルの積算機能によるS/N比(感度)の向上及び操作性の向上。マイクロ波波長計(マイクロ波フリーケンシーカウンター)とプロトンのNMR(核磁気共鳴)を利用した磁場測定器を用いて、精密なマイクロ波周波数と共鳴磁場(磁束密度)の計測を行い、hν=gβH の式から精度のよいg値(結晶の場合はgテンソル)や零磁場分裂相互作用定数(結晶の場合はDテンソル、D,E定数)及び超微細構造定数(hfs定数、結晶の場合はhfs相互作用テンソル)を計測することができる。
このように精密多目的仕様にして、物理学、化学分野の基礎科学から材料科学、環境科学、医薬学分野での臨床現場での血液、生体組織検査と新薬の開発、レドックス関連の加齢現象、発癌機構の研究等に即応用可能にするX-バンドおよびK-バンド(さらには電磁石等の均一磁場発生器の磁場(磁束密度)の大きさが大きく出来れば、さらに高感度化が可能なQ-バンドのマイクロ波反射方式電磁ホーン型電子スピン共鳴(ESR/EPR)装置が実現できる電磁ホーン型ESR装置である。
更には、数十〜数百GHz帯のマイクロ波をライトパイプ、小型電磁ホーン、平面導波路回路を設けた高周波長帯での電磁ホーン型(または別種アンテナ型)ESR装置も可能となる。
【実施例1】
【0021】
本発明の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の実施例として、X-バンドおよびK-バンド反射方式電磁ホーン型ESR装置を図1に示し、その各構成と技術的意義を以下に詳細に説明する。
図1に示す実施例1の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の基本回路構成は、マイクロ波発振装置と、マイクロ波を試料に放射する電磁ホーンアンテナ装置と、試料への磁場変調装置と、試料を介したマイクロ波を再び試料を介して電磁ホーンに反射するマイクロ波反射板14と、電磁ホーン11からの反射マイクロ波を導入し、リファレンスアーム03でのこれと逆の位相を持ち強度の等しい逆位相マイクロ波をつくり反射マイクロ波を逆位相マイクロ波で打ち消しバランスさせ、ある磁場強度での磁気共鳴によるスピン反転時に試料がマイクロ波エネルギーを吸収した際のアンバランスによる反射マイクロ波の変化をミキサー(マジック・ティー)32部で検波するマイクロ波立体回路部と、高感度で増幅してESRスペクトルとして記録する差動増幅40・ロックイン増幅装置41とからなる。
【0022】
1.マイクロ波発振装置の構成と作用効果
マイクロ波発振装置は、ガン発振器用電源33、ガン発振器34、単向管35、半固定式減衰器36、マイクロ波導波管からマイクロ波用同軸ケーブルに変換する同軸導波管変換器39a、アンプ電源37、広帯域用アンプ38からなる大出力も可能なマイクロ波発生部と、アンプ38からのマイクロ波を導入する同軸導波管変換器37aとメインアーム導波管01、アイソレータ1、マイクロ波周波数カウンター2、方向性結合器3、減衰器(メインアーム用)4、サ−キュレータ5、メインアーム導波管02、試料入射前マイクロ波パワーモニター計測端子部6、試料からの反射マイクロ波のパワーモニター計測端子部6'からなるマイクロ波導波管メインアーム部とからなる。
前記マイクロ波発生部は、ガン発振器用電源33からの一定電圧供給で所定のマイクロ波をガン発振器34で発生させ、ガン発振器34からの進行波と後退波の混じったマイクロ波を単向管35で進行マイクロ波のみに選択し、単向管35からの進行マイクロ波を半固定式減衰器36と同軸導波管変換器39aによりマイクロ波用同軸ケーブルにもってきて、マイクロ波増幅用のアンプ38に導入し、アンプ38から同軸導波管変換器37aを経て、再び導波管にマイクロ波を導入する。
これにより同軸導波管変換器37aでマイクロ波導波管01に導入されたマイクロ波は単向管(アイソレーター)1で進行マイクロ波のみに選択され、そのごく一部は同軸導波管変換器1aを介して、マイクロ波周波数カウンター2に導入されて、ガン発振器の正確な周波数を6から7桁精度で計測する。メインアーム導波管01は方向性結合器3でメインアーム導波管02とリファレンスアーム導波管03との二つに分岐され、メインアーム導波管02側ではマイクロ波パワー調整用の減衰器4をとおり、パワーを調整されてサーキュレーター5に入る。
このマイクロ波はサーキュレーター5の特徴で、全てのマイクロ波が試料のある電磁ホーン11側に導かれる。途中にあるパワーモニター用の計測端子6でこのマイクロ波が検知され、パワーモニター22で計測される。一方、試料を介して電磁ホーンに戻ってきたマイクロ波はパワーモニター用の計測端子6'で検知され、パワーモニター23で計測される。
【0023】
2.電磁ホーンアンテナ装置の構成と作用効果
電磁ホーンアンテナ装置は、スリースタブチューナー7、ツイスト導波管8、矩形円形導波管9、円形導波管10、電磁ホーン11、テフロン(登録商標)製のマイクロ波放射凸面レンズ12からなる。
電磁ホーンアンテナ装置は、サ−キュレータ5とパワーモニター用の計測端子6を通過したマイクロ波は、試料位置を仮想的位置に置ける働きのあるスリースタブチューナー7(通常使用時にはこれを全て抜いておいて無効化にしておく)に導入され、さらにマイク波振動面を90°回転されるためにツイスト導波管8に導入して、さらに矩形円形導波管9にて円形マイクロ波モードにして、円形導波管10の延長上の電磁ホーン11に導入しそのマイクロ波放射凸面レンズ12から試料13aを介して凹面反射面型のマイクロ波反射板14aに向けて放射する。
これによりマイクロ波パワー計測端子6でパワー計測されたマイクロ波はスリースタブチューナー7に入り、定在波モードのマイクロ波振動面をツイスト導波管で90°回転された後、矩形から円形マイクロ波モードに矩形円形導波管9で変換されて、電磁ホーンアンテナ11にて定在波から球面進行波になり試料空間に放出される。これは測定感度を上げるためにテフロン(登録商標)製のマイクロ波放射凸面レンズ12にて極力収斂させる。誘電ロスが大きくて透過性の悪い試料では試料13で直ちに反射され、マイクロ波の透過性のよい試料では、さらに後方の凹面反射面型のマイクロ波反射板14aに達し、ここで凹面反射面型の反射板14aの効果で、収斂反射されて再度試料13aに入り、試料13aを抜けて電磁ホーン11に戻り、マイクロ波パワー計測端子6'にてパワー計測された後にサーキュレーター5に入り、サーキュレーター5から同軸導波管交換器51と減衰器52、同軸導波管交換器53を介して進行しミキサー(マジックティー)32へと導かれ、またパワーモニター21でパワー計測される。
【0024】
3.試料への掃引磁場印加装置(電磁石)と磁場変調装置の構成と作用効果
磁場変調装置は、公知のものであり、図1で電磁ホーン11、試料13a、凹面反射面型の反射鏡14aを囲むように描かれた点線の円形部分に磁場変調コイルを設置して、100kHzのサイン波を大出力のアンプで増幅して、当該アンプにインピーダンス・マッチングさせた一対の多巻きコイルに導入されて、試料への掃引磁場印加装置で発生させた磁場均一性のよい静磁場に100kHzの交流磁場を重畳させて、ロックイン増幅装置41とあわせて変調分光法にて3桁ほどの計測感度の改善を行っている。図1では点線の円形部分の磁場変調コイル設置部以外は省略されている。
【0025】
4.位置調節装置の構成と作用効果(信号処理内容)
マイクロ波放射凸面レンズ12とマイクロ波凹面反射面型の反射板14との間に設けた試料載置台13と、凹面反射面型のマイクロ波反射板14には、各々位置調節装置のラックピニオン式の位置調節機構15、16を設けてある。
位置調節装置は、手動でもよいが、本例は、前記各々 ラックピニオン式の位置調節機構15、16のピニオン用ステッピングモータM1、M2のGP-IB制御器Co1,Co2を介して統括制御用コンピュータ装置Coにより、次の操作が行われる。
a ,パワーモニター22で所定のマイクロ波出力値に設定する。(例えば300mW)
b ,ステッピングモーターM2で凹面反射面型の反射板14を一番後方まで移動 (又は マイクロ波吸収板を試料13aと凹面反射面型の反射板14間に挿入する)
c ,次にパワーモニター21の読みが最大になるように、モーターM2を回して凹面反射面型の反射板14を試料13aに近づける。
d ,メインアーム導波管02の減衰器4でパワーモニター22の出力を設定する。レファレンス側減衰器39でパワーモニター32aを調整して、パワーモニター21とパワーモニター32aで測定のマイクロ波出力値がバランスするように調整する。
e ,この状態でリファレンスアーム導波管03の位相器31を調整してJEOL製(日本電子社製)マイクロ波ユニットのモニター電流を最小にするように位相調整をする。
f ,磁場掃引をしてパソコン画面上に磁場掃引ESRスペクトルを得る。
以上のaからfの処理を、手動又はパソコン制御自動化(GP-IBもしくはラボビュー等で)を行う。
【0026】
5.温度可変装置と単結晶用ゴニオメーターと誘電率計測装置とこれらの同時計測手段についてその構成と作用効果。
【0027】
(1)、試料載置台13に設ける温度可変装置は次の3種類の温度可変を行っている。
a ,アルミブロックに穴をあけ、ヒーターと制御用熱電対と試料測温用熱電対を挿入して、PID制御で温度可変をする。室温から200℃まで
温度可変を行えた。
b ,合成石英でジュワー瓶を作製し、ジュワー瓶内に銅製の縦長の試料載置台を設置して、試料載置台最高部に試料を設置し、試料の直ぐ下に、無誘導巻きのマンガニン線ヒーターを設置し、冷媒(液体窒素又はアルコールとドライアイスの混合物等)を、ヒーター部より下部に満たして、
PID制御で温度可変を-196℃から+70℃までの温度可変を行う。
当該装置では、試料載置台部分に試料回転装置を設け、1軸試料回転仕様の温度可変装置にしている。
c ,L字型アルミブロックに縦横高さ方向の一筆書きの溶液通路を設け、測温用の熱電対穴も設けて、クーリング・サーキュレーターからの
不凍液を流しこれまでのところ試料設置部で−15℃から+60℃までの温度可変と、シリコーンオイルに切り替えて室温から+130℃までの温度可変を行っている。
【0028】
(2)、試料載置台13に設ける単結晶用ゴニオメーターについて
a ,円筒形プラスチック容器を2枚重ね、外部を試料載置台13に固定して、角度目盛りをつけた内部円筒型プラスチック容器に軽量紙粘土で単結晶試料等を固定して、外部容器内で回転させる1軸回転機構付き試料回転装置。試料回転軸は鉛直線に平行。
b ,試料設置部をマコールもしくは軟質テフロン(登録商標)もしくはデルリン(登録商標)製の容器状に作製した試料載置台に軽量紙粘土で試料を固定して、試料載置台13にアルミの立板に設置し、後方の目盛りのついた大型ダイヤルで角度を読みながら回転させる1軸回転機構付き試料回転装置。試料回転軸はマイクロ波照射方向に平行にする。
c ,発明者が過去に共振器型ESR装置用に開発した5種類の2軸ゴニオメーターを仕様の小変更とゴニオメーターを大型化し、一部のギヤーや
回転装置をテフロンから金属(アルミもしくは真鍮)に変更した2軸ゴニオメーター。(室温計測用、温度可変計測用、ステッピングモーターを用いた自動計測用2軸ゴニオメーター)
これには発明者が1985年に開発したウルフネットと2軸ゴニオメータを用いたスピンハミルトニアンテンソルの主軸の直接探索法が応用できる。
d ,発明者が過去に共振器型ESR装置用に開発した3軸ゴニオメーターを仕様の小変更とゴニオメーターを大型化し、一部のギヤーや 回転装置をテフロンから金属(アルミもしくは真鍮)に変更した3軸ゴニオメーター。単結晶中のある不対電子センターのあるサイトのみの定量状態分析法に利用できる。
【0029】
(3)、誘電率計測とESRスペクトルの同時計測装置
(1)のaの温度可変装置に試料の一部に帯状の電極を施して、一部分をコンデンサー仕様にした試料を設置して、温度をPID制御でステップ・スキャンで変化させて各測定温度で固定させてESR計測と誘電率計測を行うもので、ESRと他の物性量との同時計測として、Cu(II)イオンを添加させた強誘電体硫酸三グリシン単結晶試料のキュリー点とその前後の強誘電相と常誘電相でESRスペクトルと誘電率(ε',ε")の同時計測に成功している。
【0030】
(4)、(3)と同様に
a ,熱容量(比熱)とESRスペクトルの同時測定、
b ,リン青銅バネにストレインゲージを貼り付けた簡易型熱膨張計とESR計測の同時測定
c ,熱伝導率とESRスペクトルとの同時測定装置
d ,電気伝導率とESRスペクトルとの同時測定装置
e ,除振機構を設けてその中に設置したSTS(走査型トンネル電流分光)装置を設け、トンネル電流とESRスペクトルの同時計測・クロス計測を介してフェルミ準位での電子状態の研究。
f ,発明者が過去に共振器用ESR装置で開発した1軸性応力印加装置を電磁ホーン型ESRに改造して設置する。
g ,ダイヤモンドアンビル装置を設置して超高圧静水圧を印加してその高圧下でのESRスペクトル観測
h ,発明者が過去に開発した2電流電源用多巻きZupancic型MRIコイルとアンチヘルムホルツMRIコイルを用いた3次元MRIコイルを設置して、
ESRイメージング(ESR-CT)仕様にする。

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明装置は、前述の優れた効果を呈する。このため以下に紹介の各種分野に適用でき、この種産業に多大な貢献をするものである。
1.物理学、化学の基礎科学分野での各種固相、液相、気相物質の基礎研究
2.医学での臨床検査室での血液、生体組織の迅速検査
3.医薬学分野でのレドックス関連の加齢現象及び難治疾患(癌、糖尿病、虚血、高血圧、アルツハイマー等)の機作解明。
4.環境科学分野での水処理、水質検査、ジーゼル排気ガス等の粉塵検査。
5.MRIコイルを用いたESRイメージング、さらにはESR-STM (走査型トンネル顕微鏡)装置開発と磁場印加で生じたラーモア歳差運動のある周波数に選択された高分解能ESRイメージング像の獲得。
6.アラニン及びアラニンイメージングプレートを用いた放射線線量計測システムの構築。試料の非破壊ESR年代測定法への応用。
7.他の診断機器(X線コンピュータトモグラフィー、超音波画像診断等、PET等)との同時/連続検査診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の一例であるX-band及びK-band反射方式電磁ホーン型ESR装置のマイクロ波立体回路のブロック線図である。
【図2】従来の電磁ホーン型電子スピン共鳴装置の一例を示すブロック線図である。
【符号の説明】
【0033】
図1において
1:アイソレータ
2:周波数カウンター
3:方向性結合器
4:減衰器(メインアーム)
5:サ−キュレータ
7:スリースタブチューナー
8:ツイスト導波管
9:矩形円形導波管
10:円形導波管
11:電磁ホーン
12:マイクロ波放射凸面レンズ
13a:試料
13:試料載置台
14a:凹面反射面型のマイクロ波反射板
15:試料の位置調節機構(ラックピニオン式)
16:凹面反射面型の反射板の位置調節機構(ラックピニオン式)
17:磁場変調コイル
21:パワーモニター
22:パワーモニター
23:パワーモニター
32a:パワーモニター
31:位相器(リファレンスアーム)
32:ミキサー(マジックT)
33:ガン電源
34:ガン発振器
35:単向管
36:半固定式減衰器
37:アンプ電源
38:アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波発信装置からのマイクロ波をマイクロ波導波管のメインアーム(01)を介して試料載置台(13)上の試料(13a)に放射する電磁ホーン(12)、
試料載置台(13)の周囲に設けた掃引磁場印加装置(171)(電磁石)と変調分光用の変調装置(170)、
電磁ホーン(11)から試料(13a)を介してのマイクロ波を再び試料(13a)を介して電磁ホーン(11)に反射するマイクロ波反射板(14)、
前記マイクロ波導波管のメインアーム(02)から分岐したリファレンスアーム(03)からの参照用の発信マイクロ波と、マイクロ波反射板(14)から試料(13a)と電磁ホーン(11)とメインアーム(02)を介しての反射マイクロ波をミキサー(32)に導入して、試料中の不対電子のスピンが反転する磁気共鳴時にマイクロ波エネルギーを試料が吸収した際のマイクロ波パワーの極微量変化を検出し記録する差動増幅装置(40)・ロックイン増幅装置(41),記録装置(42)とからなる電磁ホーン型電子スピン共鳴装置において、
前記電磁ホーンアンテナ装置の電磁ホーン(11)の表面(射出口)にマイクロ波放射凸面レンズ(12)を設け、前記マイクロ波反射板(14)を凹面反射面型反射板(14a)にしたことを特徴とする電磁ホーン型電子スピン共鳴装置。
【請求項2】
マイクロ波発信装置からのマイクロ波をマイクロ波導波管のメインアーム(01)を介して試料載置台(13)上の試料(13a)に放射する電磁ホーン(11)、
試料載置台(13)の周囲に設けた掃引磁場印加装置(171)(電磁石)と変調分光用の変調装置(170)、
電磁ホーン(11)から試料(13a)を介してのマイクロ波を再び試料(13a)を介して電磁ホーン(11)に反射するマイクロ波反射板(14)、
前記マイクロ波導波管のメインアーム(02)から分岐したリファレンスアーム(03)からの参照用の発信マイクロ波と、マイクロ波反射板(14)から試料(13a)と電磁ホーン(11)とメインアーム(02)を介しての反射マイクロ波をミキサー(32)に導入して、試料中の不対電子のスピンが反転する磁気共鳴時にマイクロ波エネルギーを試料が吸収した際のマイクロ波パワーの極微量変化を検出し記録する差動増幅装置(40)・ロックイン増幅装置(41),記録装置(42)とからなる電磁ホーン型電子スピン共鳴装置において、
前記電磁ホーンアンテナ装置の電磁ホーン(11)の表面(射出口)にマイクロ波放射凸面レンズ(12)を設け、前記マイクロ波反射板(14)を凹面反射面型反射板(14a)にし、最適のESRスペクトルを得るための同調/チューニング用として前記各マイクロ波のパワーモニター装置及び試料載置台(13)の位置調節装置(15)と反射板(14)の位置調整装置(16)を設けたことを特徴とする電磁ホーン型電子スピン共鳴装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−99776(P2011−99776A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255036(P2009−255036)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)
【出願人】(509307897)