電磁場印加装置
【課題】 荷電粒子線装置における試料への5段構造の磁場印加装置は、試料を中心に上下対称に2回ずつの偏向を必要とする。そのため、装置の構成が複雑となり形状が大型に成らざるを得なかった。
【解決手段】 磁場と電場の独立性と直交性、そして、それぞれの磁場/電場が荷電粒子線へ与える偏向の線形結合性を利用し、磁場と電場の混在領域を作り出し、それぞれの磁場/電場において荷電粒子線の偏向を制御する。
【解決手段】 磁場と電場の独立性と直交性、そして、それぞれの磁場/電場が荷電粒子線へ与える偏向の線形結合性を利用し、磁場と電場の混在領域を作り出し、それぞれの磁場/電場において荷電粒子線の偏向を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子顕微鏡もしくは荷電粒子線装置において、観察もしくは加工などの対象となる試料に対して磁場あるいは電場を印加する場合に好適な電磁場印加装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡を始めとする荷電粒子線装置では、プローブとして用いる荷電粒子線に対して外部から印加する磁場や電場が、ローレンツ力、静電力などを通じて直接かつ有効に作用することから、磁場や電場は電磁レンズや偏向器として利用されている。
【0003】
とりわけ、電子顕微鏡においては、高分解能像を得るために試料を電磁レンズの強磁場中に浸漬し、焦点距離が短く収差の少ない結像光学系が採用されることが多い。
【0004】
一方、試料が磁性材料などの場合には、電磁レンズなどにより外部から印加される磁場が観察対象である試料の物性を変化させてしまうため、電磁レンズをオフにする、または、試料位置を電磁レンズの磁場から十分遠くにはずす、さらには磁気シールドレンズを用いて試料への磁場浸漬を回避するなど、磁場の影響が観察の妨げにならない工夫が行われている。
【0005】
逆に、超伝導磁束量子の観察や、スピントロニクス素子の磁気的性質の観察などにおいては、試料と外部磁場との相互作用が実験の重要なパラメータとなるため、試料への外部磁場の影響の回避ではなく、試料への印加磁場の強度、方位をコントロールした観察が必要となる。この試料への外部磁場の印加、とりわけ光軸に対して直交方向への磁場の印加は、荷電粒子線を容易に光軸からずらしてしまうため、磁場印加状態のその場観察には、荷電粒子線の光学系を考慮に入れた特別な印加装置が必要とされる。
【0006】
例えば、特許文献1には、試料より上側で、荷電粒子線の流れの上流側に2段の偏向系を配し、試料より下流側にも2段の偏向系が配され、荷電粒子線が光軸と試料との交点を中心に上下対称の軌道を描くように調整される5段の構造を成す磁場印加装置が開示されている。このように5段配置構造とすることで、装置の発生させる最大磁場が試料に印加されるとともに、荷電粒子線は原理的に光軸上を光軸と平行に試料を透過するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3469213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
荷電粒子線装置における試料への5段構造の磁場印加装置は、試料を中心に上下対称に2回ずつの偏向を必要とする。そのため、装置の構成が複雑となり形状が大型に成らざるを得なかった。
【0009】
さらに、光軸上の印加磁場領域は、機構的に構成可能な磁極のサイズもしくは磁場発生コイルの空間サイズだけでなく、磁場発生源から試料までの距離に対応して広がっている。その物理的に広がった磁場領域の上下外側に荷電粒子線を振り戻すための偏向系が構成され、それぞれの偏向系においても同様の物理的磁場領域の広がりが発生している。それぞれの広がった磁場領域の重複を避けて偏向系を構成すると、各偏向系間の距離を十分に取らねばならず、ここでも磁場印加機構の形状の大型化を招いていた。すなわち、機構的な複雑さによる制限と磁場の物理的な広がりの双方から制約を受けるため、5段構造の磁場印加装置の形状は、荷電粒子線装置の付属装置としては大型なものに成っていた。
【0010】
このことは、磁場印加装置本体へも大きな空間を要求することになり、荷電粒子線装置全体の大型化を招くとともに、装置本体設計への負荷を増大させていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本願発明ではその一例として、荷電粒子線装置において、荷電粒子線の光軸上に試料が配置され、該光軸と垂直を成す該試料の位置する平面を含む所定の領域において、所定の方向に磁場を印加するとともに、該磁場の印加された領域を含む領域において、電場を印加することを特徴とする磁場印加装置を提供する。
【0012】
また一例として、荷電粒子線装置において、荷電粒子線の光軸上に試料が配置され、該光軸と垂直を成す該試料の位置する平面を含む所定の領域において、該試料の位置する平面に平行な方向に電場を印加するとともに、該電場の印加された領域の少なくとも1箇所の領域において該試料の位置する平面に平行、かつ該印加電場の方向と直交する方向に磁場を印加することを特徴とする電場印加装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、試料への印加磁場の領域中に振り戻しのための電場を導入することにより、従来よりも小さい空間範囲内において、多段振り戻し偏向と同等の偏向を完了させることが可能となり、磁場印加機構そのものの形状を小型化できる。
【0014】
さらに、電場を導入する新たな機能を有することから、試料に対して磁場だけでなく電場の印加が可能となる。すなわち、本発明によれば、小型で磁場と電場を試料に印加可能な、電磁場印加装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】均一な磁場による荷電粒子線の偏向を説明する模式図である。
【図2】均一な電場による荷電粒子線の偏向を説明する模式図である。
【図3】実施例1の電磁場印加装置を電子顕微鏡に組み込んだ構成を説明する模式図である。
【図4】明細書中説明に用いる各数式を示した図である。
【図5】実施例1の構成を説明する模式図である。
【図6】実施例1の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図7】実施例1の構成を試料ホルダーに組み込んだ例を示す模式図である。
【図8】実施例2の構成を説明する模式図である。
【図9】実施例3の構成を説明する模式図である。
【図10】実施例4の構成を説明する模式図である。
【図11】実施例6の構成を説明する模式図である。
【図12】実施例6の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図13】実施例6の構成において均一場近似が成立する場合の、磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図14A】実施例6の構成における磁場と電場の分布を説明する模式図である。
【図14B】実施例6の構成における磁場による偏向の効果と電場による偏向の効果と、両効果による荷電粒子線の軌道の偏向を説明する模式図である。
【図15】実施例6の電磁場印加装置を電子顕微鏡に組み込んだ構成を説明する模式図である。
【図16】実施例7の構成を説明する模式図である。
【図17】実施例8の構成を説明する模式図である。
【図18】実施例9の構成を説明する模式図である。
【図19】実施例9の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図20】実施例10の構成を説明する模式図である。
【図21】実施例10の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図22】実施例11の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図23】実施例12の構成を説明する模式図である。
【図24】実施例12の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図25】実施例13の構成を説明する模式図である。
【図26】実施例13の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図27】実施例14の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図28】実施例15の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明においては、磁場と電場の独立性と直交性、そして、それぞれの磁場/電場が荷電粒子線へ与える偏向の線形結合性を利用している。
具体的には、試料への印加磁場の領域中への電場領域の導入による振り戻し偏向系の構成、もしくは試料への印加電場の領域中への磁場領域の導入による振り戻し偏向系の構成により、磁場と電場の混在領域を作り出し、それぞれの磁場/電場において荷電粒子線の偏向を制御するようにする。
【0017】
このとき、例えば、試料に磁場を印加し電場による荷電粒子線の振り戻しが行われる場合には、電場による振り戻し偏向は磁場による偏向に打ち勝って作用することを特徴としている。同様に、試料に電場を印加し磁場による荷電粒子線の振り戻しが行われる場合には、磁場による振り戻し偏向は電場による偏向に打ち勝って作用することになる。
【0018】
ここで、図を用いて本願発明の具体的構成を含む内容を詳細に以下説明する。
まずはじめに、図1、2を用いて荷電粒子の偏向の様子について説明する。
【0019】
均一な磁場中での荷電粒子の運動は、図1に示すごとく磁場の方向を軸とした円運動、電場中での荷電粒子の運動は、図2に示す電場の方向への放物線運動であることが知られている。
【0020】
磁場中の円運動の源となるローレンツ力FBは図4中の(数1)で表わされる。また、図1に示す端部での磁場分布の乱れを無視し、全体の磁場強度を均一とした定磁場近似から荷電粒子線が受ける偏向角度θB(均一磁場を射出する際の角度)を図4中の(数2)に示す。ここで、qは荷電粒子の電荷、mは荷電粒子の質量、vは荷電粒子の速度、Bは印加磁場、V0は荷電粒子線の加速電圧、lBは磁場領域の幅である。一方、電場中の荷電粒子は電場より静電力を受け、その方向に加速度運動を行う。その静電力FEは図4中の(数3)で表わされる。磁場の場合と同様に、図2に示す端部での電場の乱れを無視し、全体の強度が均一な電場から荷電粒子線が受ける偏向角度θE(均一電場を射出する際の角度)を図4中の(数4)に示す。
ここで、Eは印加電場、V1は静電偏向系への印加電圧、dは平行平板電極間距離、lEは電場領域の幅である。
【0021】
ローレンツ力FBと静電力FEがつりあう場合には、(数1)と(数3)より、荷電粒子への外力は相殺され、荷電粒子は直線軌道を描くことになる。このための条件を図4中の(数5)に示す。
【0022】
これは、ウィーン条件として知られている関係で、荷電粒子線の速度vに比例するため、荷電粒子線の加速電圧V0が高くなり、速度vが速くなるほど、磁場Bと釣り合いを保つためには大きな電場Eが必要となる。
【0023】
この磁場Bと電場Eが荷電粒子線に与える独立かつ線形結合可能な偏向作用は、荷電粒子線が制御可能となった20世紀前半から様々な装置で利用されている。例えば荷電粒子の質量分析器として、磁場Bと電場Eが平行な方向に印加される場合(B//E)がThomsonの分析器、磁場Bと電場Eが直交する様に印加される場合(B⊥E)がAstonの分析器、およびBainbridgeの分析器として知られている。また、電子線装置に関連しては、ウィーンフィルターなど電子線のモノクロメータとしての応用、スピン検出器・光電子分光装置への応用が行われている。但し、いずれの場合も荷電粒子線の試料入射前、もしくは試料透過/反射後の荷電粒子線に対する操作・制御の一環として行われているもので、試料に対する磁場/電場印加の過程で行われているものでは無い。
<実施例1>
図5に本発明を実施する最も簡単な構造の模式図を示す。互いに直交する磁場と電場とを光軸に垂直な面内で印加する方式である。磁場によるローレンツ力は荷電粒子線に対して磁場の方向と直交する方向に作用するため、コイルペアと平行平板電極は、空間的に干渉しない位置に配置することが可能となる。
【0024】
この機構では、試料に対して磁場と電場が同時に印加可能である。図5の構成では、試料3を直交座標系の原点に配置し、光軸2をZ軸とし、平行平板電極50Xによる電場がX軸方向、磁軸をY軸とする1組のコイルペア40Yにより磁場をY方向に印加する例である。コイルペア40Yは作図の関係上、コイルボビンのみを描いているが、磁性材料を芯部に設置し試料3への印加磁場を強めることも可能である。その際、必要に応じて磁芯部にパーマロイなどの軟磁性材料を用いることにより、残留磁場を減じるような工夫が採られることは言うまでもない。本機構により(数5)を満足する電磁場が与えられたとき、荷電粒子線は偏向を全く受けずに試料を透過するため、原則的に荷電粒子線光学系への調整は不要となる。
【0025】
図6は図5の関係について、試料3に印加された磁場/電場と荷電粒子線の軌道25に注目するために描かれた簡略図である。コイルペア40を光軸2を軸に90°回転させて平行平板電極50と隣り合う様に描かれているが、対向するコイルペアと対向する平行平板電極は直交関係にある。例えば、正確な位置関係は図5のとおりである。試料3には磁場と電場が時間的に重複するように(例えば、同時に)印加され、磁場と電場の効果が互いに相殺される結果、荷電粒子線25への偏向は生じず、荷電粒子線25は光軸2に沿ったまま流れていく。図6のような試料に印加された磁場/電場と荷電粒子線の軌道に注目するための説明図の簡略化は、本願では今後も必要に応じて使用する。
【0026】
図7は、試料ホルダー35に本実施例の電磁場印加装置を組み込んだ例である。試料ホルダー35の軸とコイルペア40の磁軸を一致させ、試料3の両側のホルダー側部に平行平板電極50を取り付けた例である。一般的には、試料ホルダー35に電磁場印加機構を設置した場合には、試料の観察部位を変えるごとに光学系の再調整を必要とするが、印加される電磁場が(数5)を満足する場合には、荷電粒子線が偏向されていないので、その再調整の必要はなくなる。
【0027】
ここで図3は、荷電粒子線装置として加速電圧100kVから300kV程度の電子顕微鏡を想定し、図5の電磁場印加機構95を試料位置に組み込んだ模式図である。ここでは、電磁場印加機構95の対向するコイルペア40の一方を省略して記載している。
【0028】
電磁場印加機構95は、対物レンズ60の磁場の影響外、すなわち、対物レンズ60の上側に設置されている。
【0029】
図3では照射光学系(13,14)や拡大結像系(61,62、63、64)のレンズを描いているが、これらの電子顕微鏡光学系の構成要素はこの図に限られるものではない。さらに、電子銃の制御ユニット19、加速管の制御ユニット17、第1照射レンズの制御ユニット16、第2照射レンズの制御ユニット15、電磁場印加機構の制御ユニット96、試料の微動機構などの制御ユニット39、対物レンズの制御ユニット65、第1結像レンズの制御ユニット69、第2結像レンズの制御ユニット68、第3結像レンズの制御ユニット67、第4結像レンズの制御ユニット66、試料の像8が結像される観察記録面89、画像の記録媒体79、画像観察・記録媒体の制御ユニット78、画像記録装置77、画像表示装置76、電子顕微鏡装置全体の制御系コンピュータ91、制御系コンピュータのモニタ92、制御系コンピュータのインターフェース93が描かれているが、電子顕微鏡装置・システムについても、これらに限るものではない。
【0030】
また、実際の装置では図3に示した構成要素以外に、電子線27の進行方向を調整する偏向系、電子線の透過領域を制限する絞り機構などが存在する。しかし、これらの装置は、本発明には直接的な関係が無いので、図3では省略している。さらに、電子光学系は真空容器18中に組み立てられ、真空ポンプで継続的に排気されているが、真空排気系についても、本発明とは直接の関係が無いため省略している。
【0031】
このように構成された電子顕微鏡において、電子銃1から放出された電子線27が、試料3の所望する位置に照射され、その像が所望の倍率で観察されるように全てのレンズ系、偏向系等が調整された後、上記図5において示した電磁場印加機構95に対し、制御コンピュータ91を介して試料3を含む所定領域において、時間的に重複するように所望の電場と所望の磁場を印加する。このとき作り出された磁場と電場の混在領域において電子線27の偏向が適正に制御され、電子線27は光軸2からずれることなく伝播し、観察記録面89に試料の像8を結像する。
【0032】
このように実施例1の構成においては、電場と磁場の混在領域を形成し荷電粒子線の偏向を制御するために、具体的には、電場または磁場による荷電粒子線の偏向が、磁場または電場による偏向と相殺されるように電磁場印加機構が発生させるの夫々の電場と磁場を制御する。この詳細条件については後述することにする。
【0033】
このように、試料を含む所定領域に電場、磁場の混在領域を形成して荷電粒子線を制御できることになる為、従来のように大掛かりな多段構成からなる振り戻し偏向系を備えることなく、小型の装置を提供できる。装置の小型化は装置全体の耐振動性能向上などを介して、より安定な試料像の観察を可能とする。
【0034】
この機構では、試料に対して磁場と電場が同時に印加可能であり、高周波フィルタや高周波アンテナ素子など、高機能素子材料の1つとして有望視されている磁性誘電体など、磁場と電場の共存により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。
<実施例2>
図8に本発明の第2の実施例の模式図を示す。図5に示した第1の実施例と同様の構造であるが、磁場、電場ともにX軸方向、Y軸方向のどちらにもコイルペア(40X、40Y)と平行平板電極(50X、50Y)が配置されており、試料3の位置するXY平面内の任意の方向に電磁場を印加可能である。本実施例では、平行平板電極(50X、50Y)をコイルペア(40X、40Y)の内側に配置しているが、(数5)により、高速の荷電粒子線では、電場による偏向効果は磁場による偏向の効果よりも相対的に弱いため、荷電粒子線の軌道に近い位置で電圧を印加することによって、実効的により強い電場を作り出し、電場による偏向の効果を高めるための配置である。X軸方向の磁場とY軸方向の磁場とが合成された磁場の方向と、同様にX軸方向の電場とY軸方向の電場とが合成された電場の方向とが直交し、(数5)を満足する場合、荷電粒子線は偏向を全く受けずに光軸2と平行に試料3を透過する。
【0035】
この様に、X軸方向とY軸方向の磁場、電場を調整することにより、光軸2に垂直な試料3の位置するXY平面内の任意の方向に、所定の磁場/電場を印加可能であり、高周波フィルタや高周波アンテナ素子など、高機能素子材料の1つとして有望視されている磁性誘電体など、磁場と電場の共存により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。
<実施例3>
図9に本発明の第3の実施例の模式図を示す。第2の実施例の図8に、光軸2を磁軸とするコイルペア40Zが付加され、試料3に対してZ軸方向への磁場印加が可能となった構造である。光軸2と平行な磁場は、電磁レンズと同様に荷電粒子線を大きく偏向することはないため、これを補正する機構は必要としない。Z軸方向への印加磁場を発生させるコイルペア40Zは、空芯でない場合にも、光軸2の部分に荷電粒子線を透過させるための孔が必要となる。
【0036】
この機構では、試料に対して、X軸方向とY軸方向の磁場、電場の印加に加えて、Z軸方向への磁場印加が可能であり、高周波フィルタや高周波アンテナ素子など、高機能素子材料の1つとして有望視されている磁性誘電体など、磁場と電場の共存により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。
<実施例4>
図10に本発明の第4の実施例の模式図を示す。第2の実施例の図8に、光軸2と平行なZ方向の電場を印加するための平行平板電極50Zが付加された構造である。光軸2と平行な電場は荷電粒子線を大きく偏向することはないため、これを補正する機構は必要としない。Z軸方向への印加電場を発生させる平行平板電極50Zは、光軸2の部分に荷電粒子線を透過させるための孔が必要となる。
【0037】
この機構では、試料に対して、X軸方向とY軸方向の磁場、電場の印加に加えて、Z軸方向への電場印加が可能であり、高周波フィルタや高周波アンテナ素子など、高機能素子材料の1つとして有望視されている磁性誘電体など、磁場と電場の共存により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。
<実施例5>
図は省略するが、Z軸方向に磁場と電場の両方を印加する機構も可能である。実施例3の図9に描かれたZ軸方向への磁場を発生させるコイルペア40Zと、実施例4の図10に描かれたZ軸方向への電場を発生させる平行平板電極50ZとをX、Y軸方向のコイルペア(40X、40Y)と平行平板電極(50X、50Y)と同様に光軸の方向に重ねて配置すればよい。このとき、Z軸方向のコイルペア40Zと平行平板電極50Zには、光軸2の部分に荷電粒子線を透過させるための孔が必要となる。
【0038】
この機構では、試料に対して、X軸方向とY軸方向の磁場、電場の印加に加えて、Z軸方向へも磁場と電場がそれぞれ印加可能であり、高周波フィルタや高周波アンテナ素子など、高機能素子材料の1つとして有望視されている磁性誘電体など、磁場と電場の共存により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。
<実施例6>
図11に本発明の第6の実施例の模式図を示す。試料3を含む空間領域のY軸方向にコイルペア40Yにより磁場が印加され、その磁場領域中の試料3より上方と下方の2箇所にX軸方向に電場が印加される様に平行平板電極(52X、53X)が配置された構成となっている。この2箇所の平行平板電極(52X、53X)に十分に強い電場が印加されると、電場の印加領域においては、荷電粒子線が印加磁場から受ける偏向作用と逆の方向にまで偏向させることが可能となる。このとき、Y軸方向への印加磁場の領域がZ軸方向に十分に広がっていると、X軸方向の電場領域の上側、および下側にもY軸方向の磁場の印加領域が残り、結果として荷電粒子線は、電磁場印加装置の上から順に、磁場による光軸2から離れる方向への偏向、電場による光軸方向への振り戻し偏向、試料への印加磁場(光軸から離れる方向への偏向)、電場による光軸方向への振り戻し偏向、そして磁場による光軸に沿う方向への偏向、と都合5段の偏向作用を受ける。
【0039】
図12に、試料3に印加された磁場と荷電粒子線の軌道25を説明するための簡略図を示す。図6と同様に、コイルペア40を光軸2を軸に90°回転させて平行平板電極50と隣り合う様に描かれている。電場による偏向は、磁場による偏向に打ち勝って実現されることを特徴としている。先述のとおり、Y軸方向への印加磁場の領域がZ軸方向に十分に広がっていると、X軸方向の電場領域の上側、および下側にもY軸方向の磁場の印加領域が残り、結果として荷電粒子線は、電磁場印加装置の上から順に、磁場による光軸2から離れる方向への偏向、電場による光軸方向への振り戻し偏向、試料への印加磁場(光軸から離れる方向への偏向)、電場による光軸方向への振り戻し偏向、そして磁場による光軸に沿う方向への偏向、と都合5段の偏向作用を受ける。
【0040】
磁場/電場の分布が空間的に均一である場合(均一場近似)について、荷電粒子線の偏向条件について検討する。図13は均一な磁場領域中に均一な電場領域が試料3の上下2箇所に配された場合の、磁場/電場領域の光軸2上の幅と荷電粒子線25の偏向について描いている。このような均一な磁場分布は、例えばヘルムホルツコイルとして実用されているものであり、図13は特別な配置ではなく十分に実現可能な構成である。
【0041】
荷電粒子線25がコイルペア40により発生する試料3への印加磁場領域で偏向される角度をθS、試料3の直上の平行平板電極52による電場領域で偏向される角度をθ2、平行平板電極52による電場領域の上部に残存する磁場領域による偏向角度をθ1とする。同様に試料3の下部の偏向角度もそれぞれθ3、θ4とすると、5段磁場印加機構の振り戻し条件は、以下の図4中の(数6)、(数7)となる。
【0042】
(数2)、(数4)に記載した磁場および電場による偏向角度を与える式を、図13の構成に当てはめると、偏向角度を与える図4中の(数8)、(数9)、(数10)を得る。
(数8)、(数9)、(数10)を条件、(数6)、(数7)に代入すると、図4中の(数11)を得る。
【0043】
この(数11)は、図13に描かれた磁場印加装置における荷電粒子線25の偏向に関して、磁場による偏向と電場による偏向が一致することを意味している。磁場による偏向が図13中で反時計方向、電場による偏向が時計方向であり、磁場印加装置に入射前と射出後の荷電粒子線軌道25は、いずれも光軸上を光軸方向に、すなわち磁場印加装置の影響なく伝播していくことに矛盾の無い結果を与えている。
(数11)を磁場と電場の関係に注目して整理すると、図4中の(数12)を得る。
【0044】
この(数12)は、先述のウィーン条件(数5)に該当する関係式である。
例えば、図13に描かれているごとく、電場領域の幅が磁場領域の幅の1/2の場合(lE=1/2lB)、ウィーン条件と比較すると4倍大きな電場が必要であることを示している。これは、図6と図13の比較において、平行平板電極40の光軸2の方向の大きさが1/2であることと、電場による荷電粒子線25の偏向が磁場による作用に打ち勝って、ちょうど2倍の偏向角度を与えなければならないことを示している。
【0045】
上記、図13に元づく磁場印加装置に対する検討を行ったが、電場印加装置(後述)に関しても、電場と磁場の関係を入れ替えるだけでまったく同様の取り扱いが可能である。
【0046】
磁場/電場が強度に分布を持っている場合の例を図14Aに示す。
【0047】
図14Aは、試料へのY軸方向のコイルペア40Yによる磁場のZ軸方向の分布80を右側に、試料より上方の平行平板電極52Xによる電場のZ軸方向の分布82と下方の平行平板電極53Xによる電場のZ軸方向の分布83を左側に描いた、荷電粒子線25を偏向させる磁場/電場の分布の概念図である。荷電粒子線への偏向の方向が逆転していることを、Z軸の左右(横軸の正負)に分けて描くことで示している。磁場と電場が荷電粒子線に与える偏向の作用は線形結合される(比例関係)ので、図14Aの磁場のZ軸方向の分布80と電場のZ軸方向の分布(82、83)の和を、合成された偏向作用85として図14Bに模式的に示す。また、荷電粒子線の軌道25を合わせて描き、偏向作用の様子も示す。電場分布(82、83)の位置、強度を適切に選ぶことによって、単一の磁場分布80に、荷電粒子線25に対する正負の偏向が可能であることがわかる。
【0048】
図15は、荷電粒子線装置として加速電圧100kVから300kV程度の電子顕微鏡を想定し、図11の電磁場印加機構95を試料位置に組み込んだ模式図である。対物レンズ60の磁場の影響外、すなわち、対物レンズ60の上側に電磁場印加機構95が設置されている。図15では照射光学系(13,14)や拡大結像系(61,62、63、64)のレンズを描いているが、これらの電子顕微鏡光学系の構成要素はこの図に限られるものではない。さらに、電子銃の制御ユニット19、加速管の制御ユニット17、第1照射レンズの制御ユニット16、第2照射レンズの制御ユニット15、電磁場印加機構の制御ユニット96、試料の微動機構などの制御ユニット39、対物レンズの制御ユニット65、第1結像レンズの制御ユニット69、第2結像レンズの制御ユニット68、第3結像レンズの制御ユニット67、第4結像レンズの制御ユニット66、試料の像8が結像される観察記録面89、画像の記録媒体79、画像観察・記録媒体の制御ユニット78、画像記録装置77、画像表示装置76、電子顕微鏡装置全体の制御系コンピュータ91、制御系コンピュータのモニタ92、制御系コンピュータのインターフェース93が描かれているが、電子顕微鏡装置・システムについても、これらに限るものではない。また、実際の装置では図15に示した構成要素以外に、電子線27の進行方向を調整する偏向系、電子線の透過領域を制限する絞り機構などが存在する。しかし、これらの装置は、本発明には直接的な関係が無いので、図15では省略している。さらに、電子光学系は真空容器18中に組み立てられ、真空ポンプで継続的に排気されているが、真空排気系についても、本発明とは直接の関係が無いため省略している。
【0049】
なお、本実施例6に記載した荷電粒子線25に対する偏向の方法は、偏向系の5段の段数に依存するものではなく、7段でも9段でも、光軸と試料との交点を中心に上下対称の軌道を描くように調整されればよく、5段に限定されるものではない。
<実施例7>
図16に本発明の第7の実施例の模式図を示す。図12に示した第6の実施例と同様の構造であるが、磁場、電場ともにX軸方向、Y軸方向のどちらにもコイルペア(40X、40Y)とX軸方向、Y軸方向のどちらにも2組の平行平板電極((52X、53X)と(52Y、53Y))が配置されている。これらの平行平板電極((52X、53X)と(52Y、53Y))に十分に強い電場が印加されると、磁場とは逆の方向に偏向させることが可能となり、結果的に5段の偏向作用が実現できる。X軸方向とY軸方向の磁場、電場を調整することにより、光軸2に垂直な面内の任意の方向に、所定の磁場/電場を印加可能である。
【0050】
この機構では、試料に対して、X軸方向とY軸方向の任意の方向への磁場の印加が可能であり、スピントロニクス素子など、磁気的相互作用を用いた高機能素子やその材料など、磁場の浸漬により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。<実施例8>
図17に本発明の第8の実施例の模式図を示す。第7の実施例の図16に、光軸2を磁軸とするコイルペア40Zが付加され、試料3に対してZ軸方向への磁場印加が可能となった構造である。光軸2と平行な磁場は、電磁レンズと同様に荷電粒子線を大きく偏向することはないため、これを補正する機構は必要としない。Z軸方向への印加磁場を発生させるコイルペア40Zは、空芯でない場合にも、光軸2の部分に荷電粒子線を透過させるための孔が必要となる。
【0051】
また、図は省略するが、Z軸方向に電場、もしくは磁場と電場の両方を印加する機構も可能である。実施例4の図10に描かれたZ軸方向への電場を発生させる平行平板電極を、もしくは平行平板電極とZ軸方向へ磁場を印加するコイルペアの双方を、X、Y軸方向のコイルペアと平行平板電極の関係と同様に光軸の方向に重ねて配置すればよい。このとき、Z軸方向のコイルペアと平行平板電極には、双方とも光軸部分に荷電粒子線を透過させるための孔が必要となる。
【0052】
この機構では、試料に対して、X軸方向とY軸方向の任意の方向への磁場の印加のみならず、Z軸方向への磁場/電場の印加が可能であり、スピントロニクス素子など、磁気的相互作用を用いた高機能素子やその材料など、磁場の浸漬により物性が変化する材料や、高周波フィルタや高周波アンテナ素子など、高機能素子材料の1つとして有望視されている磁性誘電体など、磁場と電場の共存により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。
<実施例9>
図18に本発明の第9の実施例の模式図を示す。試料3を含む空間領域のY軸方向にコイルペア40Yにより磁場が印加され、その磁場領域中の試料3の上下4箇所に平行平板電極(51X、52X、53X、54X)が配置されX軸方向に電場が印加される構成となっている。試料3への磁場印加と独立して上下4段の偏向系を調整可能であるため、実施例6の図11よりも荷電粒子線への制御性は向上する。試料の直上の平行平板電極(52X、52Y)と直下の平行平板電極(53X、53Y)には、荷電粒子線が印加磁場から受ける偏向作用が相殺される以上の十分に強い電場が印加されなければならない点は、実施例6と同様である。但し、装置の最上部の平行平板電極(51X、51Y)と最下部の平行平板電極(54X、54Y)では、荷電粒子線の電場による偏向方向と磁場による偏向方向が一致するため、平行平板電極((51X、51Y)と(54X、54Y))は相対的に弱い電場の発生で所定の偏向を達成できる。
【0053】
図19に、試料3に印加された磁場と荷電粒子線の軌道25を説明するための簡略図を示す。図6、図12と同様に、コイルペア40を光軸2を軸に90°回転させて平行平板電極50と隣り合う様に描かれている。電場による偏向は、試料3の直上、直下の2箇所の平行平板電極(52、53)には、荷電粒子線が印加磁場から受ける偏向作用が相殺される以上の十分に強い電場が発生されなければならないが、装置の最上部と最下部の平行平板電極(51、54)では、荷電粒子線25への偏向の作用が印加磁場と印加電場で一致するため、平行平板電極(51、54)では調整程度の相対的に弱い電場の発生で所定の偏向を達成できる。
【0054】
光軸に垂直な平面内での任意の方向への偏向のためには、図16と同様にX軸方向、Y軸方向それぞれに磁場/電場の発生のための、コイルペア、平行平板電極が必要である。また、Z軸方向への磁場/電場の印加に関しても、実施例8と同様に、所定のコイルペアと平行平板電極が必要であることは言うまでもない。
【0055】
この機構では、試料に対して、X軸方向とY軸方向の任意の方向への磁場の印加のみならず、Z軸方向への磁場/電場の印加が可能であり、スピントロニクス素子など、磁気的相互作用を用いた高機能素子やその材料など、磁場の浸漬により物性が変化する材料や、高周波フィルタや高周波アンテナ素子など、高機能素子材料の1つとして有望視されている磁性誘電体など、磁場と電場の共存により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。
<実施例10>
図20に本発明の第10の実施例の模式図を示す。実施例9の図18と同様の試料3の上下の各2段の偏向を電場にて行う平行平板電極(52X、53X)の配置となっているが、加えて試料3への印加磁場が各平行平板電極(52X、53X)へ浸漬すること防ぎ、電場による偏向の効果を高めるため、各平行平板電極(52X、53X)の光軸2より外側に磁気シールド(71、72)を設けている。これにより、試料3への印加磁場とまったく独立に、試料3より上下の偏向系(平行平板電極(52X、53X))の操作が可能となる。
【0056】
図21に、試料3に印加された磁場と荷電粒子線の軌道25を説明するための簡略図を示す。試料3の直上の平行平板電極52と直下の平行平板電極53では、磁気シールド(71、72)により試料3への印加磁場による荷電粒子線25の偏向作用が排除されるため、実施例9と比較して弱い印加電場で所定の偏向効果を得ることが可能となる。その代わり、装置の最上部の平行平板電極51と最下部の平行平板電極54では、磁場による偏向が利用できなくなるため、装置の最上部と最下部の平行平板電極(51、54)は、実施例9の場合よりも相対的に強い電場の発生が必要となる。
<実施例11>
図22は、試料の直上の平行平板電極52と直下の平行平板電極53のみに磁気シールド(71、72)を設置した実施例11での、磁場/電場と荷電粒子線の軌道25を説明するための簡略図である。試料の直上の平行平板電極52と直下の平行平板電極53では、磁場の影響が排除されるため、実施例9と比較して弱い印加電場で所定の偏向効果を得ることが可能である。さらに、装置の最上部の平行平板電極51と最下部の平行平板電極54では、試料3へのコイルペア40による印加磁場による偏向効果も利用可能であるため、置の最上部の平行平板電極51と最下部の平行平板電極54では相対的に弱い電場の発生で所定の偏向を達成できる。
【0057】
いずれの平行平板電極においても、相対的に弱い電場の発生で所定の偏向作用を得ることができるため、電場による偏向作用が得難い、高加速電圧の荷電粒子線に対して効果的な電磁場印加装置を提供できる。
【0058】
実施例6から11では、試料への磁場印加装置を想定して説明を行ってきたが、コイルペアと平行平板電極の関係を入れ替えるだけで、発生する電場と磁場の光学系における位置関係が入れ替わるので、直ちに試料への電場印加装置とすることができる。以下、電場印加装置を想定した説明を行う。平行平板電極は銅、アルミニウムなどの非磁性材料で構成されることを前提とした説明を行うが、これに限定するものではない。
<実施例12>
図23に本発明の第12の実施例の模式図を示す。図12のコイルペアと平行平板電極の位置関係を入れ替えた構成図である。試料3を含む空間領域のX軸方向に平行平板電極50Xにより電場が印加され、その電場領域中の試料3の上下2箇所にY軸と平行な磁軸をもつコイルペア(42Y、43Y)が配置され、Y軸方向に磁場が印加される構成となっている。この2箇所のコイルペア(42Y、43Y)に十分に強い磁場が印加されると、磁場の印加領域においては、荷電粒子線が平行平板電極50Xによる印加磁場から受ける偏向作用と逆の方向にまで偏向させることが可能となる。このとき、X軸方向への印加電場の領域がZ軸方向に十分に広がっていると、Y軸方向の磁場領域の上側、および下側にもX軸方向の電場の印加領域が残り、結果として荷電粒子線は、電磁場印加装置の上から順に、電場による光軸2から離れる方向への偏向、磁場による光軸2の方向への振り戻し偏向、試料3への印加電場(光軸2から離れる方向への偏向)、磁場による光軸2の方向への振り戻し偏向、そして電場による光軸2に沿う方向への偏向、と都合5段の偏向作用を受ける。
【0059】
図24に、試料3に印加された電場と荷電粒子線の軌道25を説明するための簡略図を示す。図6などで行った簡略化と同様に、コイルペア(42、43)を光軸2を軸に90°回転させて平行平板電極50と隣り合う様に描かれている。磁場による偏向は、電場による偏向の効果に打ち勝って実現されることを特徴としており、磁場分布の位置、強度を適切に選ぶことによって、平行平板電極50による単一の電場領域内に、荷電粒子線25に対する正負の偏向作用をさせることが可能である。先述のとおり、X軸方向への印加電場の領域がZ軸方向に十分に広がっていると、Y軸方向の磁場領域の上側、および下側にもX軸方向の電場の印加領域が残り、結果として荷電粒子線25は、電磁場印加装置の上から順に、電場による光軸2から離れる方向への偏向、磁場による光軸2の方向への振り戻し偏向、試料3への印加磁場(光軸2から離れる方向への偏向)、磁場による光軸2の方向への振り戻し偏向、そして電場による光軸2に沿う方向への偏向、と都合5段の偏向作用を受ける。
<実施例13>
図25に本発明の第13の実施例の模式図を示す。図16のコイルペアと平行平板電極の位置関係を入れ替えた構成図である。試料3を含む空間領域のX軸方向に平行平板電極50X、Y軸方向に平行平板電極50Yにより電場が印加され、その電場領域中の試料3の上下2箇所にX軸、Y軸とそれぞれ平行な磁軸をもつコイルペア((42X、43X)と(42Y、43Y)が配置される構成となっている。図16と異なる点は、平行平板電極(50X、50Y)の内側(光軸側)にコイルペア((42X、43X)と(42X、42Y))が配置される点である。コイルを構成するコイルボビンや巻きつけられる線材は、一般的には金属材料であり、平行平板電極の内側にコイルペアが配置された場合、コイル自身に平行平板電極の発生させる電場をシールドする効果がある。すなわち、この配置を取るだけで、実施例10での磁場印加装置に付加した磁気シールドと同様の作用として、荷電粒子線に対する電場シールドの効果が期待される。
【0060】
図26に、試料3に印加された電場と荷電粒子線の軌道25を説明するための簡略図を示す。図6などで行った簡略化と同様に、コイルペア(42、43)を光軸2を軸に90°回転させて平行平板電極50と隣り合う様に描かれている。磁場による偏向は、コイルペア(42、43)により、電場による偏向とは独立して実現できるため、磁場分布の位置、強度を適切に選ぶことによって、荷電粒子線25に対する5段の偏向作用を実現することが可能である。先述のとおり、X軸およびY軸方向への印加電場の領域がZ軸方向に十分に広がっていると、X軸およびY軸方向の磁場領域の上側と下側にもX軸およびY軸方向の電場の印加領域が残り、結果として荷電粒子線25は、電磁場印加装置の上から順に、電場による光軸2から離れる方向への偏向、磁場による光軸2の方向への振り戻し偏向、試料3への印加磁場(光軸2から離れる方向への偏向)、磁場による光軸2の方向への振り戻し偏向、そして電場による光軸2に沿う方向への偏向、と都合5段の偏向作用を受ける、Z軸方向への磁場/電場の印加についても、先の第5、第8の実施例などと同様に、試料位置の上下に対向するコイルペアと平行平板電極を配置すれば、まったく問題なく対応可能である。このとき、Z軸方向のコイルペアと平行平板電極には、双方とも光軸部分に荷電粒子線を透過させるための孔が必要となる。
<実施例14>
図27に本発明の第14の実施例の模式図を示す。図19に示した第9の実施例の場合と、磁場と電場の関係が逆になった平行平板電極50をコイルペア(41、42、43、44)の内側(光軸2の側)に配置する例を示している。すなわち、試料3の上側に2段の磁場による偏向系(コイルペア(41、42))と下側にも2段の磁場による偏向系(コイルペア(43、44))とが設けられ、5段の偏向作用を実現する構成である。金属製のコイル自身による電場シールドの効果が期待できる点は、第13の実施例と同様である。
【0061】
X軸、Y軸の双方に磁場/電場を印加するためのコイルペアと平行平板電極とを付加したり、Z軸方向への磁場/電場を印加するためのコイルペアと平行平板電極とを付加するなどの場合が考えられるのは先の第13の実施例の場合と同様である。
<実施例15>
図28に本発明の第15の実施例の模式図を示す。図27に示した第14の実施例と同様に、試料3の上側に2段の磁場による偏向系(コイルペア(41、42))と下側にも2段の磁場による偏向系(コイルペア(43、44))とが設けられ、5段の偏向作用を実現する構成であるが、試料位置の上下の偏向系に電場が作用する必要がないため、平行平板電極50を小さくし、電場の印加領域を試料位置近傍に制限した例である。
【0062】
X軸、Y軸の双方に磁場/電場を印加するためのコイルペアと平行平板電極とを付加したり、Z軸方向への磁場/電場を印加するためのコイルペアと平行平板電極とを付加するなどの場合が考えられるのは先の第13、第14の実施例の場合と同様である。
【0063】
上記では、本願発明の特徴である電磁場印加装置について詳述してきたが、各実施例にて示した電磁場印加装置は、図3、図15において示された電子顕微鏡に搭載できることは勿論のこと、他の走査透過電子顕微鏡、透過電子顕微鏡、イオンビーム装置等の荷電粒子線装置に搭載可能であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0064】
1…電子源もしくは電子銃、12…加速管、13…第1照射レンズ、14…第2照射レンズ、15…第2照射レンズの制御ユニット、16…第1照射レンズの制御ユニット、17…加速管の制御ユニット、18…真空容器、19…電子源の制御ユニット、2…光軸、25…荷電粒子線もしくは荷電粒子線の軌道、27…電子線もしくは電子線の軌道、3…試料、35…試料ホルダー、39…試料の微動機構などの制御ユニット、4…磁場印加コイルもしくはコイルペア、40…試料への磁場印加コイルもしくはコイルペア(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、41…第1の磁場偏向系のコイルもしくはコイルペア(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、42…第2の磁場偏向系のコイルもしくはコイルペア(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、43…第3の磁場偏向系のコイルもしくはコイルペア(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、44…第4の磁場偏向系のコイルもしくはコイルペア(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、45…第1の磁場偏向系のコイルもしくはコイルペア、46…第2の磁場偏向系のコイルもしくはコイルペア、43…第3の磁場偏向系のコイルもしくはコイルペア、47…第2照射レンズの制御ユニット、48…第1照射レンズの制御ユニット、49…加速管の制御ユニット、5…平行平板電極、51…第1の平行平板電極(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、52…第2の平行平板電極(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、53…第3の平行平板電極(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、54…第4の平行平板電極(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、57…絶縁支持体、60…対物レンズ、61…第1結像レンズ、62…第2結像レンズ、63…第3結像レンズ、64…第4結像レンズ、65…対物レンズの制御ユニット、66…第4結像レンズの制御ユニット、67…第3結像レンズの制御ユニット、68…第2結像レンズの制御ユニット、69…第1結像レンズの制御ユニット、71…試料より上側の磁気シールド、72…試料より下側の磁気シールド、76…画像表示装置、77…画像記録装置、78…画像観察・記録媒体の制御ユニット、79…画像の記録媒体、8…試料の像、80…コイルペア40による磁場のZ軸方向の分布、82…平行平板電極52による電場のZ軸方向の分布、83…平行平板電極53による電場のZ軸方向の分布、85…合成された偏向作用、89…観察・記録面、91…電子顕微鏡装置全体の制御系コンピュータ、92…電子顕微鏡装置全体の制御系コンピュータのモニタ、93…電子顕微鏡装置全体の制御系コンピュータのインターフェース、95…電磁場印加装置、96…電磁場印加装置の制御ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は電子顕微鏡もしくは荷電粒子線装置において、観察もしくは加工などの対象となる試料に対して磁場あるいは電場を印加する場合に好適な電磁場印加装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡を始めとする荷電粒子線装置では、プローブとして用いる荷電粒子線に対して外部から印加する磁場や電場が、ローレンツ力、静電力などを通じて直接かつ有効に作用することから、磁場や電場は電磁レンズや偏向器として利用されている。
【0003】
とりわけ、電子顕微鏡においては、高分解能像を得るために試料を電磁レンズの強磁場中に浸漬し、焦点距離が短く収差の少ない結像光学系が採用されることが多い。
【0004】
一方、試料が磁性材料などの場合には、電磁レンズなどにより外部から印加される磁場が観察対象である試料の物性を変化させてしまうため、電磁レンズをオフにする、または、試料位置を電磁レンズの磁場から十分遠くにはずす、さらには磁気シールドレンズを用いて試料への磁場浸漬を回避するなど、磁場の影響が観察の妨げにならない工夫が行われている。
【0005】
逆に、超伝導磁束量子の観察や、スピントロニクス素子の磁気的性質の観察などにおいては、試料と外部磁場との相互作用が実験の重要なパラメータとなるため、試料への外部磁場の影響の回避ではなく、試料への印加磁場の強度、方位をコントロールした観察が必要となる。この試料への外部磁場の印加、とりわけ光軸に対して直交方向への磁場の印加は、荷電粒子線を容易に光軸からずらしてしまうため、磁場印加状態のその場観察には、荷電粒子線の光学系を考慮に入れた特別な印加装置が必要とされる。
【0006】
例えば、特許文献1には、試料より上側で、荷電粒子線の流れの上流側に2段の偏向系を配し、試料より下流側にも2段の偏向系が配され、荷電粒子線が光軸と試料との交点を中心に上下対称の軌道を描くように調整される5段の構造を成す磁場印加装置が開示されている。このように5段配置構造とすることで、装置の発生させる最大磁場が試料に印加されるとともに、荷電粒子線は原理的に光軸上を光軸と平行に試料を透過するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3469213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
荷電粒子線装置における試料への5段構造の磁場印加装置は、試料を中心に上下対称に2回ずつの偏向を必要とする。そのため、装置の構成が複雑となり形状が大型に成らざるを得なかった。
【0009】
さらに、光軸上の印加磁場領域は、機構的に構成可能な磁極のサイズもしくは磁場発生コイルの空間サイズだけでなく、磁場発生源から試料までの距離に対応して広がっている。その物理的に広がった磁場領域の上下外側に荷電粒子線を振り戻すための偏向系が構成され、それぞれの偏向系においても同様の物理的磁場領域の広がりが発生している。それぞれの広がった磁場領域の重複を避けて偏向系を構成すると、各偏向系間の距離を十分に取らねばならず、ここでも磁場印加機構の形状の大型化を招いていた。すなわち、機構的な複雑さによる制限と磁場の物理的な広がりの双方から制約を受けるため、5段構造の磁場印加装置の形状は、荷電粒子線装置の付属装置としては大型なものに成っていた。
【0010】
このことは、磁場印加装置本体へも大きな空間を要求することになり、荷電粒子線装置全体の大型化を招くとともに、装置本体設計への負荷を増大させていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本願発明ではその一例として、荷電粒子線装置において、荷電粒子線の光軸上に試料が配置され、該光軸と垂直を成す該試料の位置する平面を含む所定の領域において、所定の方向に磁場を印加するとともに、該磁場の印加された領域を含む領域において、電場を印加することを特徴とする磁場印加装置を提供する。
【0012】
また一例として、荷電粒子線装置において、荷電粒子線の光軸上に試料が配置され、該光軸と垂直を成す該試料の位置する平面を含む所定の領域において、該試料の位置する平面に平行な方向に電場を印加するとともに、該電場の印加された領域の少なくとも1箇所の領域において該試料の位置する平面に平行、かつ該印加電場の方向と直交する方向に磁場を印加することを特徴とする電場印加装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、試料への印加磁場の領域中に振り戻しのための電場を導入することにより、従来よりも小さい空間範囲内において、多段振り戻し偏向と同等の偏向を完了させることが可能となり、磁場印加機構そのものの形状を小型化できる。
【0014】
さらに、電場を導入する新たな機能を有することから、試料に対して磁場だけでなく電場の印加が可能となる。すなわち、本発明によれば、小型で磁場と電場を試料に印加可能な、電磁場印加装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】均一な磁場による荷電粒子線の偏向を説明する模式図である。
【図2】均一な電場による荷電粒子線の偏向を説明する模式図である。
【図3】実施例1の電磁場印加装置を電子顕微鏡に組み込んだ構成を説明する模式図である。
【図4】明細書中説明に用いる各数式を示した図である。
【図5】実施例1の構成を説明する模式図である。
【図6】実施例1の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図7】実施例1の構成を試料ホルダーに組み込んだ例を示す模式図である。
【図8】実施例2の構成を説明する模式図である。
【図9】実施例3の構成を説明する模式図である。
【図10】実施例4の構成を説明する模式図である。
【図11】実施例6の構成を説明する模式図である。
【図12】実施例6の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図13】実施例6の構成において均一場近似が成立する場合の、磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図14A】実施例6の構成における磁場と電場の分布を説明する模式図である。
【図14B】実施例6の構成における磁場による偏向の効果と電場による偏向の効果と、両効果による荷電粒子線の軌道の偏向を説明する模式図である。
【図15】実施例6の電磁場印加装置を電子顕微鏡に組み込んだ構成を説明する模式図である。
【図16】実施例7の構成を説明する模式図である。
【図17】実施例8の構成を説明する模式図である。
【図18】実施例9の構成を説明する模式図である。
【図19】実施例9の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図20】実施例10の構成を説明する模式図である。
【図21】実施例10の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図22】実施例11の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図23】実施例12の構成を説明する模式図である。
【図24】実施例12の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図25】実施例13の構成を説明する模式図である。
【図26】実施例13の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図27】実施例14の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【図28】実施例15の磁場/電場と荷電粒子線の軌道の関係を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明においては、磁場と電場の独立性と直交性、そして、それぞれの磁場/電場が荷電粒子線へ与える偏向の線形結合性を利用している。
具体的には、試料への印加磁場の領域中への電場領域の導入による振り戻し偏向系の構成、もしくは試料への印加電場の領域中への磁場領域の導入による振り戻し偏向系の構成により、磁場と電場の混在領域を作り出し、それぞれの磁場/電場において荷電粒子線の偏向を制御するようにする。
【0017】
このとき、例えば、試料に磁場を印加し電場による荷電粒子線の振り戻しが行われる場合には、電場による振り戻し偏向は磁場による偏向に打ち勝って作用することを特徴としている。同様に、試料に電場を印加し磁場による荷電粒子線の振り戻しが行われる場合には、磁場による振り戻し偏向は電場による偏向に打ち勝って作用することになる。
【0018】
ここで、図を用いて本願発明の具体的構成を含む内容を詳細に以下説明する。
まずはじめに、図1、2を用いて荷電粒子の偏向の様子について説明する。
【0019】
均一な磁場中での荷電粒子の運動は、図1に示すごとく磁場の方向を軸とした円運動、電場中での荷電粒子の運動は、図2に示す電場の方向への放物線運動であることが知られている。
【0020】
磁場中の円運動の源となるローレンツ力FBは図4中の(数1)で表わされる。また、図1に示す端部での磁場分布の乱れを無視し、全体の磁場強度を均一とした定磁場近似から荷電粒子線が受ける偏向角度θB(均一磁場を射出する際の角度)を図4中の(数2)に示す。ここで、qは荷電粒子の電荷、mは荷電粒子の質量、vは荷電粒子の速度、Bは印加磁場、V0は荷電粒子線の加速電圧、lBは磁場領域の幅である。一方、電場中の荷電粒子は電場より静電力を受け、その方向に加速度運動を行う。その静電力FEは図4中の(数3)で表わされる。磁場の場合と同様に、図2に示す端部での電場の乱れを無視し、全体の強度が均一な電場から荷電粒子線が受ける偏向角度θE(均一電場を射出する際の角度)を図4中の(数4)に示す。
ここで、Eは印加電場、V1は静電偏向系への印加電圧、dは平行平板電極間距離、lEは電場領域の幅である。
【0021】
ローレンツ力FBと静電力FEがつりあう場合には、(数1)と(数3)より、荷電粒子への外力は相殺され、荷電粒子は直線軌道を描くことになる。このための条件を図4中の(数5)に示す。
【0022】
これは、ウィーン条件として知られている関係で、荷電粒子線の速度vに比例するため、荷電粒子線の加速電圧V0が高くなり、速度vが速くなるほど、磁場Bと釣り合いを保つためには大きな電場Eが必要となる。
【0023】
この磁場Bと電場Eが荷電粒子線に与える独立かつ線形結合可能な偏向作用は、荷電粒子線が制御可能となった20世紀前半から様々な装置で利用されている。例えば荷電粒子の質量分析器として、磁場Bと電場Eが平行な方向に印加される場合(B//E)がThomsonの分析器、磁場Bと電場Eが直交する様に印加される場合(B⊥E)がAstonの分析器、およびBainbridgeの分析器として知られている。また、電子線装置に関連しては、ウィーンフィルターなど電子線のモノクロメータとしての応用、スピン検出器・光電子分光装置への応用が行われている。但し、いずれの場合も荷電粒子線の試料入射前、もしくは試料透過/反射後の荷電粒子線に対する操作・制御の一環として行われているもので、試料に対する磁場/電場印加の過程で行われているものでは無い。
<実施例1>
図5に本発明を実施する最も簡単な構造の模式図を示す。互いに直交する磁場と電場とを光軸に垂直な面内で印加する方式である。磁場によるローレンツ力は荷電粒子線に対して磁場の方向と直交する方向に作用するため、コイルペアと平行平板電極は、空間的に干渉しない位置に配置することが可能となる。
【0024】
この機構では、試料に対して磁場と電場が同時に印加可能である。図5の構成では、試料3を直交座標系の原点に配置し、光軸2をZ軸とし、平行平板電極50Xによる電場がX軸方向、磁軸をY軸とする1組のコイルペア40Yにより磁場をY方向に印加する例である。コイルペア40Yは作図の関係上、コイルボビンのみを描いているが、磁性材料を芯部に設置し試料3への印加磁場を強めることも可能である。その際、必要に応じて磁芯部にパーマロイなどの軟磁性材料を用いることにより、残留磁場を減じるような工夫が採られることは言うまでもない。本機構により(数5)を満足する電磁場が与えられたとき、荷電粒子線は偏向を全く受けずに試料を透過するため、原則的に荷電粒子線光学系への調整は不要となる。
【0025】
図6は図5の関係について、試料3に印加された磁場/電場と荷電粒子線の軌道25に注目するために描かれた簡略図である。コイルペア40を光軸2を軸に90°回転させて平行平板電極50と隣り合う様に描かれているが、対向するコイルペアと対向する平行平板電極は直交関係にある。例えば、正確な位置関係は図5のとおりである。試料3には磁場と電場が時間的に重複するように(例えば、同時に)印加され、磁場と電場の効果が互いに相殺される結果、荷電粒子線25への偏向は生じず、荷電粒子線25は光軸2に沿ったまま流れていく。図6のような試料に印加された磁場/電場と荷電粒子線の軌道に注目するための説明図の簡略化は、本願では今後も必要に応じて使用する。
【0026】
図7は、試料ホルダー35に本実施例の電磁場印加装置を組み込んだ例である。試料ホルダー35の軸とコイルペア40の磁軸を一致させ、試料3の両側のホルダー側部に平行平板電極50を取り付けた例である。一般的には、試料ホルダー35に電磁場印加機構を設置した場合には、試料の観察部位を変えるごとに光学系の再調整を必要とするが、印加される電磁場が(数5)を満足する場合には、荷電粒子線が偏向されていないので、その再調整の必要はなくなる。
【0027】
ここで図3は、荷電粒子線装置として加速電圧100kVから300kV程度の電子顕微鏡を想定し、図5の電磁場印加機構95を試料位置に組み込んだ模式図である。ここでは、電磁場印加機構95の対向するコイルペア40の一方を省略して記載している。
【0028】
電磁場印加機構95は、対物レンズ60の磁場の影響外、すなわち、対物レンズ60の上側に設置されている。
【0029】
図3では照射光学系(13,14)や拡大結像系(61,62、63、64)のレンズを描いているが、これらの電子顕微鏡光学系の構成要素はこの図に限られるものではない。さらに、電子銃の制御ユニット19、加速管の制御ユニット17、第1照射レンズの制御ユニット16、第2照射レンズの制御ユニット15、電磁場印加機構の制御ユニット96、試料の微動機構などの制御ユニット39、対物レンズの制御ユニット65、第1結像レンズの制御ユニット69、第2結像レンズの制御ユニット68、第3結像レンズの制御ユニット67、第4結像レンズの制御ユニット66、試料の像8が結像される観察記録面89、画像の記録媒体79、画像観察・記録媒体の制御ユニット78、画像記録装置77、画像表示装置76、電子顕微鏡装置全体の制御系コンピュータ91、制御系コンピュータのモニタ92、制御系コンピュータのインターフェース93が描かれているが、電子顕微鏡装置・システムについても、これらに限るものではない。
【0030】
また、実際の装置では図3に示した構成要素以外に、電子線27の進行方向を調整する偏向系、電子線の透過領域を制限する絞り機構などが存在する。しかし、これらの装置は、本発明には直接的な関係が無いので、図3では省略している。さらに、電子光学系は真空容器18中に組み立てられ、真空ポンプで継続的に排気されているが、真空排気系についても、本発明とは直接の関係が無いため省略している。
【0031】
このように構成された電子顕微鏡において、電子銃1から放出された電子線27が、試料3の所望する位置に照射され、その像が所望の倍率で観察されるように全てのレンズ系、偏向系等が調整された後、上記図5において示した電磁場印加機構95に対し、制御コンピュータ91を介して試料3を含む所定領域において、時間的に重複するように所望の電場と所望の磁場を印加する。このとき作り出された磁場と電場の混在領域において電子線27の偏向が適正に制御され、電子線27は光軸2からずれることなく伝播し、観察記録面89に試料の像8を結像する。
【0032】
このように実施例1の構成においては、電場と磁場の混在領域を形成し荷電粒子線の偏向を制御するために、具体的には、電場または磁場による荷電粒子線の偏向が、磁場または電場による偏向と相殺されるように電磁場印加機構が発生させるの夫々の電場と磁場を制御する。この詳細条件については後述することにする。
【0033】
このように、試料を含む所定領域に電場、磁場の混在領域を形成して荷電粒子線を制御できることになる為、従来のように大掛かりな多段構成からなる振り戻し偏向系を備えることなく、小型の装置を提供できる。装置の小型化は装置全体の耐振動性能向上などを介して、より安定な試料像の観察を可能とする。
【0034】
この機構では、試料に対して磁場と電場が同時に印加可能であり、高周波フィルタや高周波アンテナ素子など、高機能素子材料の1つとして有望視されている磁性誘電体など、磁場と電場の共存により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。
<実施例2>
図8に本発明の第2の実施例の模式図を示す。図5に示した第1の実施例と同様の構造であるが、磁場、電場ともにX軸方向、Y軸方向のどちらにもコイルペア(40X、40Y)と平行平板電極(50X、50Y)が配置されており、試料3の位置するXY平面内の任意の方向に電磁場を印加可能である。本実施例では、平行平板電極(50X、50Y)をコイルペア(40X、40Y)の内側に配置しているが、(数5)により、高速の荷電粒子線では、電場による偏向効果は磁場による偏向の効果よりも相対的に弱いため、荷電粒子線の軌道に近い位置で電圧を印加することによって、実効的により強い電場を作り出し、電場による偏向の効果を高めるための配置である。X軸方向の磁場とY軸方向の磁場とが合成された磁場の方向と、同様にX軸方向の電場とY軸方向の電場とが合成された電場の方向とが直交し、(数5)を満足する場合、荷電粒子線は偏向を全く受けずに光軸2と平行に試料3を透過する。
【0035】
この様に、X軸方向とY軸方向の磁場、電場を調整することにより、光軸2に垂直な試料3の位置するXY平面内の任意の方向に、所定の磁場/電場を印加可能であり、高周波フィルタや高周波アンテナ素子など、高機能素子材料の1つとして有望視されている磁性誘電体など、磁場と電場の共存により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。
<実施例3>
図9に本発明の第3の実施例の模式図を示す。第2の実施例の図8に、光軸2を磁軸とするコイルペア40Zが付加され、試料3に対してZ軸方向への磁場印加が可能となった構造である。光軸2と平行な磁場は、電磁レンズと同様に荷電粒子線を大きく偏向することはないため、これを補正する機構は必要としない。Z軸方向への印加磁場を発生させるコイルペア40Zは、空芯でない場合にも、光軸2の部分に荷電粒子線を透過させるための孔が必要となる。
【0036】
この機構では、試料に対して、X軸方向とY軸方向の磁場、電場の印加に加えて、Z軸方向への磁場印加が可能であり、高周波フィルタや高周波アンテナ素子など、高機能素子材料の1つとして有望視されている磁性誘電体など、磁場と電場の共存により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。
<実施例4>
図10に本発明の第4の実施例の模式図を示す。第2の実施例の図8に、光軸2と平行なZ方向の電場を印加するための平行平板電極50Zが付加された構造である。光軸2と平行な電場は荷電粒子線を大きく偏向することはないため、これを補正する機構は必要としない。Z軸方向への印加電場を発生させる平行平板電極50Zは、光軸2の部分に荷電粒子線を透過させるための孔が必要となる。
【0037】
この機構では、試料に対して、X軸方向とY軸方向の磁場、電場の印加に加えて、Z軸方向への電場印加が可能であり、高周波フィルタや高周波アンテナ素子など、高機能素子材料の1つとして有望視されている磁性誘電体など、磁場と電場の共存により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。
<実施例5>
図は省略するが、Z軸方向に磁場と電場の両方を印加する機構も可能である。実施例3の図9に描かれたZ軸方向への磁場を発生させるコイルペア40Zと、実施例4の図10に描かれたZ軸方向への電場を発生させる平行平板電極50ZとをX、Y軸方向のコイルペア(40X、40Y)と平行平板電極(50X、50Y)と同様に光軸の方向に重ねて配置すればよい。このとき、Z軸方向のコイルペア40Zと平行平板電極50Zには、光軸2の部分に荷電粒子線を透過させるための孔が必要となる。
【0038】
この機構では、試料に対して、X軸方向とY軸方向の磁場、電場の印加に加えて、Z軸方向へも磁場と電場がそれぞれ印加可能であり、高周波フィルタや高周波アンテナ素子など、高機能素子材料の1つとして有望視されている磁性誘電体など、磁場と電場の共存により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。
<実施例6>
図11に本発明の第6の実施例の模式図を示す。試料3を含む空間領域のY軸方向にコイルペア40Yにより磁場が印加され、その磁場領域中の試料3より上方と下方の2箇所にX軸方向に電場が印加される様に平行平板電極(52X、53X)が配置された構成となっている。この2箇所の平行平板電極(52X、53X)に十分に強い電場が印加されると、電場の印加領域においては、荷電粒子線が印加磁場から受ける偏向作用と逆の方向にまで偏向させることが可能となる。このとき、Y軸方向への印加磁場の領域がZ軸方向に十分に広がっていると、X軸方向の電場領域の上側、および下側にもY軸方向の磁場の印加領域が残り、結果として荷電粒子線は、電磁場印加装置の上から順に、磁場による光軸2から離れる方向への偏向、電場による光軸方向への振り戻し偏向、試料への印加磁場(光軸から離れる方向への偏向)、電場による光軸方向への振り戻し偏向、そして磁場による光軸に沿う方向への偏向、と都合5段の偏向作用を受ける。
【0039】
図12に、試料3に印加された磁場と荷電粒子線の軌道25を説明するための簡略図を示す。図6と同様に、コイルペア40を光軸2を軸に90°回転させて平行平板電極50と隣り合う様に描かれている。電場による偏向は、磁場による偏向に打ち勝って実現されることを特徴としている。先述のとおり、Y軸方向への印加磁場の領域がZ軸方向に十分に広がっていると、X軸方向の電場領域の上側、および下側にもY軸方向の磁場の印加領域が残り、結果として荷電粒子線は、電磁場印加装置の上から順に、磁場による光軸2から離れる方向への偏向、電場による光軸方向への振り戻し偏向、試料への印加磁場(光軸から離れる方向への偏向)、電場による光軸方向への振り戻し偏向、そして磁場による光軸に沿う方向への偏向、と都合5段の偏向作用を受ける。
【0040】
磁場/電場の分布が空間的に均一である場合(均一場近似)について、荷電粒子線の偏向条件について検討する。図13は均一な磁場領域中に均一な電場領域が試料3の上下2箇所に配された場合の、磁場/電場領域の光軸2上の幅と荷電粒子線25の偏向について描いている。このような均一な磁場分布は、例えばヘルムホルツコイルとして実用されているものであり、図13は特別な配置ではなく十分に実現可能な構成である。
【0041】
荷電粒子線25がコイルペア40により発生する試料3への印加磁場領域で偏向される角度をθS、試料3の直上の平行平板電極52による電場領域で偏向される角度をθ2、平行平板電極52による電場領域の上部に残存する磁場領域による偏向角度をθ1とする。同様に試料3の下部の偏向角度もそれぞれθ3、θ4とすると、5段磁場印加機構の振り戻し条件は、以下の図4中の(数6)、(数7)となる。
【0042】
(数2)、(数4)に記載した磁場および電場による偏向角度を与える式を、図13の構成に当てはめると、偏向角度を与える図4中の(数8)、(数9)、(数10)を得る。
(数8)、(数9)、(数10)を条件、(数6)、(数7)に代入すると、図4中の(数11)を得る。
【0043】
この(数11)は、図13に描かれた磁場印加装置における荷電粒子線25の偏向に関して、磁場による偏向と電場による偏向が一致することを意味している。磁場による偏向が図13中で反時計方向、電場による偏向が時計方向であり、磁場印加装置に入射前と射出後の荷電粒子線軌道25は、いずれも光軸上を光軸方向に、すなわち磁場印加装置の影響なく伝播していくことに矛盾の無い結果を与えている。
(数11)を磁場と電場の関係に注目して整理すると、図4中の(数12)を得る。
【0044】
この(数12)は、先述のウィーン条件(数5)に該当する関係式である。
例えば、図13に描かれているごとく、電場領域の幅が磁場領域の幅の1/2の場合(lE=1/2lB)、ウィーン条件と比較すると4倍大きな電場が必要であることを示している。これは、図6と図13の比較において、平行平板電極40の光軸2の方向の大きさが1/2であることと、電場による荷電粒子線25の偏向が磁場による作用に打ち勝って、ちょうど2倍の偏向角度を与えなければならないことを示している。
【0045】
上記、図13に元づく磁場印加装置に対する検討を行ったが、電場印加装置(後述)に関しても、電場と磁場の関係を入れ替えるだけでまったく同様の取り扱いが可能である。
【0046】
磁場/電場が強度に分布を持っている場合の例を図14Aに示す。
【0047】
図14Aは、試料へのY軸方向のコイルペア40Yによる磁場のZ軸方向の分布80を右側に、試料より上方の平行平板電極52Xによる電場のZ軸方向の分布82と下方の平行平板電極53Xによる電場のZ軸方向の分布83を左側に描いた、荷電粒子線25を偏向させる磁場/電場の分布の概念図である。荷電粒子線への偏向の方向が逆転していることを、Z軸の左右(横軸の正負)に分けて描くことで示している。磁場と電場が荷電粒子線に与える偏向の作用は線形結合される(比例関係)ので、図14Aの磁場のZ軸方向の分布80と電場のZ軸方向の分布(82、83)の和を、合成された偏向作用85として図14Bに模式的に示す。また、荷電粒子線の軌道25を合わせて描き、偏向作用の様子も示す。電場分布(82、83)の位置、強度を適切に選ぶことによって、単一の磁場分布80に、荷電粒子線25に対する正負の偏向が可能であることがわかる。
【0048】
図15は、荷電粒子線装置として加速電圧100kVから300kV程度の電子顕微鏡を想定し、図11の電磁場印加機構95を試料位置に組み込んだ模式図である。対物レンズ60の磁場の影響外、すなわち、対物レンズ60の上側に電磁場印加機構95が設置されている。図15では照射光学系(13,14)や拡大結像系(61,62、63、64)のレンズを描いているが、これらの電子顕微鏡光学系の構成要素はこの図に限られるものではない。さらに、電子銃の制御ユニット19、加速管の制御ユニット17、第1照射レンズの制御ユニット16、第2照射レンズの制御ユニット15、電磁場印加機構の制御ユニット96、試料の微動機構などの制御ユニット39、対物レンズの制御ユニット65、第1結像レンズの制御ユニット69、第2結像レンズの制御ユニット68、第3結像レンズの制御ユニット67、第4結像レンズの制御ユニット66、試料の像8が結像される観察記録面89、画像の記録媒体79、画像観察・記録媒体の制御ユニット78、画像記録装置77、画像表示装置76、電子顕微鏡装置全体の制御系コンピュータ91、制御系コンピュータのモニタ92、制御系コンピュータのインターフェース93が描かれているが、電子顕微鏡装置・システムについても、これらに限るものではない。また、実際の装置では図15に示した構成要素以外に、電子線27の進行方向を調整する偏向系、電子線の透過領域を制限する絞り機構などが存在する。しかし、これらの装置は、本発明には直接的な関係が無いので、図15では省略している。さらに、電子光学系は真空容器18中に組み立てられ、真空ポンプで継続的に排気されているが、真空排気系についても、本発明とは直接の関係が無いため省略している。
【0049】
なお、本実施例6に記載した荷電粒子線25に対する偏向の方法は、偏向系の5段の段数に依存するものではなく、7段でも9段でも、光軸と試料との交点を中心に上下対称の軌道を描くように調整されればよく、5段に限定されるものではない。
<実施例7>
図16に本発明の第7の実施例の模式図を示す。図12に示した第6の実施例と同様の構造であるが、磁場、電場ともにX軸方向、Y軸方向のどちらにもコイルペア(40X、40Y)とX軸方向、Y軸方向のどちらにも2組の平行平板電極((52X、53X)と(52Y、53Y))が配置されている。これらの平行平板電極((52X、53X)と(52Y、53Y))に十分に強い電場が印加されると、磁場とは逆の方向に偏向させることが可能となり、結果的に5段の偏向作用が実現できる。X軸方向とY軸方向の磁場、電場を調整することにより、光軸2に垂直な面内の任意の方向に、所定の磁場/電場を印加可能である。
【0050】
この機構では、試料に対して、X軸方向とY軸方向の任意の方向への磁場の印加が可能であり、スピントロニクス素子など、磁気的相互作用を用いた高機能素子やその材料など、磁場の浸漬により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。<実施例8>
図17に本発明の第8の実施例の模式図を示す。第7の実施例の図16に、光軸2を磁軸とするコイルペア40Zが付加され、試料3に対してZ軸方向への磁場印加が可能となった構造である。光軸2と平行な磁場は、電磁レンズと同様に荷電粒子線を大きく偏向することはないため、これを補正する機構は必要としない。Z軸方向への印加磁場を発生させるコイルペア40Zは、空芯でない場合にも、光軸2の部分に荷電粒子線を透過させるための孔が必要となる。
【0051】
また、図は省略するが、Z軸方向に電場、もしくは磁場と電場の両方を印加する機構も可能である。実施例4の図10に描かれたZ軸方向への電場を発生させる平行平板電極を、もしくは平行平板電極とZ軸方向へ磁場を印加するコイルペアの双方を、X、Y軸方向のコイルペアと平行平板電極の関係と同様に光軸の方向に重ねて配置すればよい。このとき、Z軸方向のコイルペアと平行平板電極には、双方とも光軸部分に荷電粒子線を透過させるための孔が必要となる。
【0052】
この機構では、試料に対して、X軸方向とY軸方向の任意の方向への磁場の印加のみならず、Z軸方向への磁場/電場の印加が可能であり、スピントロニクス素子など、磁気的相互作用を用いた高機能素子やその材料など、磁場の浸漬により物性が変化する材料や、高周波フィルタや高周波アンテナ素子など、高機能素子材料の1つとして有望視されている磁性誘電体など、磁場と電場の共存により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。
<実施例9>
図18に本発明の第9の実施例の模式図を示す。試料3を含む空間領域のY軸方向にコイルペア40Yにより磁場が印加され、その磁場領域中の試料3の上下4箇所に平行平板電極(51X、52X、53X、54X)が配置されX軸方向に電場が印加される構成となっている。試料3への磁場印加と独立して上下4段の偏向系を調整可能であるため、実施例6の図11よりも荷電粒子線への制御性は向上する。試料の直上の平行平板電極(52X、52Y)と直下の平行平板電極(53X、53Y)には、荷電粒子線が印加磁場から受ける偏向作用が相殺される以上の十分に強い電場が印加されなければならない点は、実施例6と同様である。但し、装置の最上部の平行平板電極(51X、51Y)と最下部の平行平板電極(54X、54Y)では、荷電粒子線の電場による偏向方向と磁場による偏向方向が一致するため、平行平板電極((51X、51Y)と(54X、54Y))は相対的に弱い電場の発生で所定の偏向を達成できる。
【0053】
図19に、試料3に印加された磁場と荷電粒子線の軌道25を説明するための簡略図を示す。図6、図12と同様に、コイルペア40を光軸2を軸に90°回転させて平行平板電極50と隣り合う様に描かれている。電場による偏向は、試料3の直上、直下の2箇所の平行平板電極(52、53)には、荷電粒子線が印加磁場から受ける偏向作用が相殺される以上の十分に強い電場が発生されなければならないが、装置の最上部と最下部の平行平板電極(51、54)では、荷電粒子線25への偏向の作用が印加磁場と印加電場で一致するため、平行平板電極(51、54)では調整程度の相対的に弱い電場の発生で所定の偏向を達成できる。
【0054】
光軸に垂直な平面内での任意の方向への偏向のためには、図16と同様にX軸方向、Y軸方向それぞれに磁場/電場の発生のための、コイルペア、平行平板電極が必要である。また、Z軸方向への磁場/電場の印加に関しても、実施例8と同様に、所定のコイルペアと平行平板電極が必要であることは言うまでもない。
【0055】
この機構では、試料に対して、X軸方向とY軸方向の任意の方向への磁場の印加のみならず、Z軸方向への磁場/電場の印加が可能であり、スピントロニクス素子など、磁気的相互作用を用いた高機能素子やその材料など、磁場の浸漬により物性が変化する材料や、高周波フィルタや高周波アンテナ素子など、高機能素子材料の1つとして有望視されている磁性誘電体など、磁場と電場の共存により物性が変化する材料の微細な観察・加工において効果を持つ構成である。
<実施例10>
図20に本発明の第10の実施例の模式図を示す。実施例9の図18と同様の試料3の上下の各2段の偏向を電場にて行う平行平板電極(52X、53X)の配置となっているが、加えて試料3への印加磁場が各平行平板電極(52X、53X)へ浸漬すること防ぎ、電場による偏向の効果を高めるため、各平行平板電極(52X、53X)の光軸2より外側に磁気シールド(71、72)を設けている。これにより、試料3への印加磁場とまったく独立に、試料3より上下の偏向系(平行平板電極(52X、53X))の操作が可能となる。
【0056】
図21に、試料3に印加された磁場と荷電粒子線の軌道25を説明するための簡略図を示す。試料3の直上の平行平板電極52と直下の平行平板電極53では、磁気シールド(71、72)により試料3への印加磁場による荷電粒子線25の偏向作用が排除されるため、実施例9と比較して弱い印加電場で所定の偏向効果を得ることが可能となる。その代わり、装置の最上部の平行平板電極51と最下部の平行平板電極54では、磁場による偏向が利用できなくなるため、装置の最上部と最下部の平行平板電極(51、54)は、実施例9の場合よりも相対的に強い電場の発生が必要となる。
<実施例11>
図22は、試料の直上の平行平板電極52と直下の平行平板電極53のみに磁気シールド(71、72)を設置した実施例11での、磁場/電場と荷電粒子線の軌道25を説明するための簡略図である。試料の直上の平行平板電極52と直下の平行平板電極53では、磁場の影響が排除されるため、実施例9と比較して弱い印加電場で所定の偏向効果を得ることが可能である。さらに、装置の最上部の平行平板電極51と最下部の平行平板電極54では、試料3へのコイルペア40による印加磁場による偏向効果も利用可能であるため、置の最上部の平行平板電極51と最下部の平行平板電極54では相対的に弱い電場の発生で所定の偏向を達成できる。
【0057】
いずれの平行平板電極においても、相対的に弱い電場の発生で所定の偏向作用を得ることができるため、電場による偏向作用が得難い、高加速電圧の荷電粒子線に対して効果的な電磁場印加装置を提供できる。
【0058】
実施例6から11では、試料への磁場印加装置を想定して説明を行ってきたが、コイルペアと平行平板電極の関係を入れ替えるだけで、発生する電場と磁場の光学系における位置関係が入れ替わるので、直ちに試料への電場印加装置とすることができる。以下、電場印加装置を想定した説明を行う。平行平板電極は銅、アルミニウムなどの非磁性材料で構成されることを前提とした説明を行うが、これに限定するものではない。
<実施例12>
図23に本発明の第12の実施例の模式図を示す。図12のコイルペアと平行平板電極の位置関係を入れ替えた構成図である。試料3を含む空間領域のX軸方向に平行平板電極50Xにより電場が印加され、その電場領域中の試料3の上下2箇所にY軸と平行な磁軸をもつコイルペア(42Y、43Y)が配置され、Y軸方向に磁場が印加される構成となっている。この2箇所のコイルペア(42Y、43Y)に十分に強い磁場が印加されると、磁場の印加領域においては、荷電粒子線が平行平板電極50Xによる印加磁場から受ける偏向作用と逆の方向にまで偏向させることが可能となる。このとき、X軸方向への印加電場の領域がZ軸方向に十分に広がっていると、Y軸方向の磁場領域の上側、および下側にもX軸方向の電場の印加領域が残り、結果として荷電粒子線は、電磁場印加装置の上から順に、電場による光軸2から離れる方向への偏向、磁場による光軸2の方向への振り戻し偏向、試料3への印加電場(光軸2から離れる方向への偏向)、磁場による光軸2の方向への振り戻し偏向、そして電場による光軸2に沿う方向への偏向、と都合5段の偏向作用を受ける。
【0059】
図24に、試料3に印加された電場と荷電粒子線の軌道25を説明するための簡略図を示す。図6などで行った簡略化と同様に、コイルペア(42、43)を光軸2を軸に90°回転させて平行平板電極50と隣り合う様に描かれている。磁場による偏向は、電場による偏向の効果に打ち勝って実現されることを特徴としており、磁場分布の位置、強度を適切に選ぶことによって、平行平板電極50による単一の電場領域内に、荷電粒子線25に対する正負の偏向作用をさせることが可能である。先述のとおり、X軸方向への印加電場の領域がZ軸方向に十分に広がっていると、Y軸方向の磁場領域の上側、および下側にもX軸方向の電場の印加領域が残り、結果として荷電粒子線25は、電磁場印加装置の上から順に、電場による光軸2から離れる方向への偏向、磁場による光軸2の方向への振り戻し偏向、試料3への印加磁場(光軸2から離れる方向への偏向)、磁場による光軸2の方向への振り戻し偏向、そして電場による光軸2に沿う方向への偏向、と都合5段の偏向作用を受ける。
<実施例13>
図25に本発明の第13の実施例の模式図を示す。図16のコイルペアと平行平板電極の位置関係を入れ替えた構成図である。試料3を含む空間領域のX軸方向に平行平板電極50X、Y軸方向に平行平板電極50Yにより電場が印加され、その電場領域中の試料3の上下2箇所にX軸、Y軸とそれぞれ平行な磁軸をもつコイルペア((42X、43X)と(42Y、43Y)が配置される構成となっている。図16と異なる点は、平行平板電極(50X、50Y)の内側(光軸側)にコイルペア((42X、43X)と(42X、42Y))が配置される点である。コイルを構成するコイルボビンや巻きつけられる線材は、一般的には金属材料であり、平行平板電極の内側にコイルペアが配置された場合、コイル自身に平行平板電極の発生させる電場をシールドする効果がある。すなわち、この配置を取るだけで、実施例10での磁場印加装置に付加した磁気シールドと同様の作用として、荷電粒子線に対する電場シールドの効果が期待される。
【0060】
図26に、試料3に印加された電場と荷電粒子線の軌道25を説明するための簡略図を示す。図6などで行った簡略化と同様に、コイルペア(42、43)を光軸2を軸に90°回転させて平行平板電極50と隣り合う様に描かれている。磁場による偏向は、コイルペア(42、43)により、電場による偏向とは独立して実現できるため、磁場分布の位置、強度を適切に選ぶことによって、荷電粒子線25に対する5段の偏向作用を実現することが可能である。先述のとおり、X軸およびY軸方向への印加電場の領域がZ軸方向に十分に広がっていると、X軸およびY軸方向の磁場領域の上側と下側にもX軸およびY軸方向の電場の印加領域が残り、結果として荷電粒子線25は、電磁場印加装置の上から順に、電場による光軸2から離れる方向への偏向、磁場による光軸2の方向への振り戻し偏向、試料3への印加磁場(光軸2から離れる方向への偏向)、磁場による光軸2の方向への振り戻し偏向、そして電場による光軸2に沿う方向への偏向、と都合5段の偏向作用を受ける、Z軸方向への磁場/電場の印加についても、先の第5、第8の実施例などと同様に、試料位置の上下に対向するコイルペアと平行平板電極を配置すれば、まったく問題なく対応可能である。このとき、Z軸方向のコイルペアと平行平板電極には、双方とも光軸部分に荷電粒子線を透過させるための孔が必要となる。
<実施例14>
図27に本発明の第14の実施例の模式図を示す。図19に示した第9の実施例の場合と、磁場と電場の関係が逆になった平行平板電極50をコイルペア(41、42、43、44)の内側(光軸2の側)に配置する例を示している。すなわち、試料3の上側に2段の磁場による偏向系(コイルペア(41、42))と下側にも2段の磁場による偏向系(コイルペア(43、44))とが設けられ、5段の偏向作用を実現する構成である。金属製のコイル自身による電場シールドの効果が期待できる点は、第13の実施例と同様である。
【0061】
X軸、Y軸の双方に磁場/電場を印加するためのコイルペアと平行平板電極とを付加したり、Z軸方向への磁場/電場を印加するためのコイルペアと平行平板電極とを付加するなどの場合が考えられるのは先の第13の実施例の場合と同様である。
<実施例15>
図28に本発明の第15の実施例の模式図を示す。図27に示した第14の実施例と同様に、試料3の上側に2段の磁場による偏向系(コイルペア(41、42))と下側にも2段の磁場による偏向系(コイルペア(43、44))とが設けられ、5段の偏向作用を実現する構成であるが、試料位置の上下の偏向系に電場が作用する必要がないため、平行平板電極50を小さくし、電場の印加領域を試料位置近傍に制限した例である。
【0062】
X軸、Y軸の双方に磁場/電場を印加するためのコイルペアと平行平板電極とを付加したり、Z軸方向への磁場/電場を印加するためのコイルペアと平行平板電極とを付加するなどの場合が考えられるのは先の第13、第14の実施例の場合と同様である。
【0063】
上記では、本願発明の特徴である電磁場印加装置について詳述してきたが、各実施例にて示した電磁場印加装置は、図3、図15において示された電子顕微鏡に搭載できることは勿論のこと、他の走査透過電子顕微鏡、透過電子顕微鏡、イオンビーム装置等の荷電粒子線装置に搭載可能であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0064】
1…電子源もしくは電子銃、12…加速管、13…第1照射レンズ、14…第2照射レンズ、15…第2照射レンズの制御ユニット、16…第1照射レンズの制御ユニット、17…加速管の制御ユニット、18…真空容器、19…電子源の制御ユニット、2…光軸、25…荷電粒子線もしくは荷電粒子線の軌道、27…電子線もしくは電子線の軌道、3…試料、35…試料ホルダー、39…試料の微動機構などの制御ユニット、4…磁場印加コイルもしくはコイルペア、40…試料への磁場印加コイルもしくはコイルペア(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、41…第1の磁場偏向系のコイルもしくはコイルペア(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、42…第2の磁場偏向系のコイルもしくはコイルペア(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、43…第3の磁場偏向系のコイルもしくはコイルペア(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、44…第4の磁場偏向系のコイルもしくはコイルペア(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、45…第1の磁場偏向系のコイルもしくはコイルペア、46…第2の磁場偏向系のコイルもしくはコイルペア、43…第3の磁場偏向系のコイルもしくはコイルペア、47…第2照射レンズの制御ユニット、48…第1照射レンズの制御ユニット、49…加速管の制御ユニット、5…平行平板電極、51…第1の平行平板電極(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、52…第2の平行平板電極(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、53…第3の平行平板電極(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、54…第4の平行平板電極(X:X軸方向、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向)、57…絶縁支持体、60…対物レンズ、61…第1結像レンズ、62…第2結像レンズ、63…第3結像レンズ、64…第4結像レンズ、65…対物レンズの制御ユニット、66…第4結像レンズの制御ユニット、67…第3結像レンズの制御ユニット、68…第2結像レンズの制御ユニット、69…第1結像レンズの制御ユニット、71…試料より上側の磁気シールド、72…試料より下側の磁気シールド、76…画像表示装置、77…画像記録装置、78…画像観察・記録媒体の制御ユニット、79…画像の記録媒体、8…試料の像、80…コイルペア40による磁場のZ軸方向の分布、82…平行平板電極52による電場のZ軸方向の分布、83…平行平板電極53による電場のZ軸方向の分布、85…合成された偏向作用、89…観察・記録面、91…電子顕微鏡装置全体の制御系コンピュータ、92…電子顕微鏡装置全体の制御系コンピュータのモニタ、93…電子顕微鏡装置全体の制御系コンピュータのインターフェース、95…電磁場印加装置、96…電磁場印加装置の制御ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線装置において、荷電粒子線の光軸上に試料が配置され、該光軸と垂直を成す該試料の位置する平面を含む所定の領域において、所定の方向に磁場を印加するとともに、該磁場の印加された領域の少なくとも1箇所の領域において、電場を印加することを特徴とする被観察試料もしくは被加工試料への電磁場印加装置。
【請求項2】
前記磁場の印加方向と前記電場の印加方向とが前記試料の位置する平面にそれぞれ平行であるとともに、前記磁場と前記電場の印加方向が直交することを特徴とする請求項1に記載の電磁場印加装置。
【請求項3】
前記印加磁場が前記試料の位置する平面内の前記試料の両側で、かつ前記光軸に対向して配置された磁軸を同じくする、少なくとも2つのコイルにより構成された、少なくとも1組のコイルペアにより発生させられるものであることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の電磁場印加装置。
【請求項4】
前記印加電場が前記試料の位置する平面内の前記試料の両側で、かつ前記光軸に対向して配置された電界軸を同じくする、少なくとも2つの平板電極により構成された、少なくとも1組の平行平板電極により発生させられるものであることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の電磁場印加装置。
【請求項5】
前記印加磁場と前記印加電場による偏向の効果が相殺されることによって、前記光軸に沿って流れる荷電粒子線の伝播方向が偏向されないことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項6】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ磁場を印加可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項7】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ印加する磁場が、前記光軸と平行な磁軸をもつ、少なくとも2つのコイルにより構成された、少なくとも1組のコイルペアにより発生させられるものであることを特徴とする請求項6に記載の電磁場印加装置。
【請求項8】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ電場を印加可能であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項9】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ印加する電場が、前記光軸と平行な電界軸をもつ、少なくとも2つの平板電極により構成された、少なくとも1組の平行平板電極により発生させられるものであることを特徴とする請求項8に記載の電磁場印加装置。
【請求項10】
前記光軸に沿って流れる荷電粒子線の伝播方向が、前記試料よりも荷電粒子線の上流側で前記光軸から離れる方向に偏向された後、前記光軸方向に偏向され、前記試料の配する位置で前記光軸上に戻るとともに前記光軸から離れる方向に偏向され、前記試料よりも荷電粒子線の下流側で前記光軸方向に偏向された後、前記光軸上で光軸に沿って流れる方向に偏向されることを特徴とする請求項1から4のいずれか、もしくは請求項6から9のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項11】
前記平行平板電極の、前記光軸を中心とした動径方向外側に、前記光軸を内に包む少なくとも2箇所に磁気シールドを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか、もしくは請求項6から10のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項12】
荷電粒子線装置において、荷電粒子線の光軸上に試料が配置され、該光軸と垂直を成す該試料の位置する平面を含む所定の領域において、所定の方向に電場を印加するとともに、該電場の印加された領域の少なくとも1箇所の領域において該試料の位置する平面に平行に磁場を印加することを特徴とする被観察試料もしくは被加工試料への電磁場印加装置。
【請求項13】
前記印加電場が前記試料の位置する平面内の前記試料の両側で、かつ前記光軸に対向して配置された電界軸を同じくする、少なくとも2つの平板電極により構成された、少なくとも1組の平行平板電極により発生させられるものであることを特徴とする請求項12に記載の電磁場印加装置。
【請求項14】
前記印加磁場が前記試料の位置する平面内の前記試料の両側で、かつ前記光軸に対向して配置された磁軸を同じくする、少なくとも2つのコイルにより構成された、少なくとも1組のコイルペアにより発生させられるものであることを特徴とする請求項12に記載の電磁場印加装置。
【請求項15】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ磁場を印加可能であることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項16】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ印加する磁場が、前記光軸と平行な磁軸をもつ、少なくとも2つのコイルにより構成された、少なくとも1組のコイルペアにより発生させられるものであることを特徴とする請求項15に記載の電磁場印加装置。
【請求項17】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ電場を印加可能であることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項18】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ印加する電場が、前記光軸と平行な電界軸をもつ、少なくとも2つの平板電極により構成された、少なくとも1組の平行平板電極により発生させられるものであることを特徴とする請求項17に記載の電磁場印加装置。
【請求項19】
前記光軸に沿って流れる荷電粒子線の伝播方向が、前記試料よりも荷電粒子線の上流側で前記光軸から離れる方向に偏向された後、前記光軸方向に偏向され、前記試料の配する位置で前記光軸上に戻るとともに前記光軸から離れる方向に偏向され、前記試料よりも荷電粒子線の下流側で前記光軸方向に偏向された後、前記光軸上で光軸に沿って流れる方向に偏向されることを特徴とする請求項12から18のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項20】
試料に荷電粒子線を照射する荷電粒子線照射手段と、
当該試料と同一平面上に対向配置された一対の磁場印加手段と、
当該磁場印加手段によって磁場印加された磁場形成領域内に電場及び磁場の混在領域を形成するように、電場を印加する電場印加手段とを備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項1】
荷電粒子線装置において、荷電粒子線の光軸上に試料が配置され、該光軸と垂直を成す該試料の位置する平面を含む所定の領域において、所定の方向に磁場を印加するとともに、該磁場の印加された領域の少なくとも1箇所の領域において、電場を印加することを特徴とする被観察試料もしくは被加工試料への電磁場印加装置。
【請求項2】
前記磁場の印加方向と前記電場の印加方向とが前記試料の位置する平面にそれぞれ平行であるとともに、前記磁場と前記電場の印加方向が直交することを特徴とする請求項1に記載の電磁場印加装置。
【請求項3】
前記印加磁場が前記試料の位置する平面内の前記試料の両側で、かつ前記光軸に対向して配置された磁軸を同じくする、少なくとも2つのコイルにより構成された、少なくとも1組のコイルペアにより発生させられるものであることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の電磁場印加装置。
【請求項4】
前記印加電場が前記試料の位置する平面内の前記試料の両側で、かつ前記光軸に対向して配置された電界軸を同じくする、少なくとも2つの平板電極により構成された、少なくとも1組の平行平板電極により発生させられるものであることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の電磁場印加装置。
【請求項5】
前記印加磁場と前記印加電場による偏向の効果が相殺されることによって、前記光軸に沿って流れる荷電粒子線の伝播方向が偏向されないことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項6】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ磁場を印加可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項7】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ印加する磁場が、前記光軸と平行な磁軸をもつ、少なくとも2つのコイルにより構成された、少なくとも1組のコイルペアにより発生させられるものであることを特徴とする請求項6に記載の電磁場印加装置。
【請求項8】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ電場を印加可能であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項9】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ印加する電場が、前記光軸と平行な電界軸をもつ、少なくとも2つの平板電極により構成された、少なくとも1組の平行平板電極により発生させられるものであることを特徴とする請求項8に記載の電磁場印加装置。
【請求項10】
前記光軸に沿って流れる荷電粒子線の伝播方向が、前記試料よりも荷電粒子線の上流側で前記光軸から離れる方向に偏向された後、前記光軸方向に偏向され、前記試料の配する位置で前記光軸上に戻るとともに前記光軸から離れる方向に偏向され、前記試料よりも荷電粒子線の下流側で前記光軸方向に偏向された後、前記光軸上で光軸に沿って流れる方向に偏向されることを特徴とする請求項1から4のいずれか、もしくは請求項6から9のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項11】
前記平行平板電極の、前記光軸を中心とした動径方向外側に、前記光軸を内に包む少なくとも2箇所に磁気シールドを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか、もしくは請求項6から10のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項12】
荷電粒子線装置において、荷電粒子線の光軸上に試料が配置され、該光軸と垂直を成す該試料の位置する平面を含む所定の領域において、所定の方向に電場を印加するとともに、該電場の印加された領域の少なくとも1箇所の領域において該試料の位置する平面に平行に磁場を印加することを特徴とする被観察試料もしくは被加工試料への電磁場印加装置。
【請求項13】
前記印加電場が前記試料の位置する平面内の前記試料の両側で、かつ前記光軸に対向して配置された電界軸を同じくする、少なくとも2つの平板電極により構成された、少なくとも1組の平行平板電極により発生させられるものであることを特徴とする請求項12に記載の電磁場印加装置。
【請求項14】
前記印加磁場が前記試料の位置する平面内の前記試料の両側で、かつ前記光軸に対向して配置された磁軸を同じくする、少なくとも2つのコイルにより構成された、少なくとも1組のコイルペアにより発生させられるものであることを特徴とする請求項12に記載の電磁場印加装置。
【請求項15】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ磁場を印加可能であることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項16】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ印加する磁場が、前記光軸と平行な磁軸をもつ、少なくとも2つのコイルにより構成された、少なくとも1組のコイルペアにより発生させられるものであることを特徴とする請求項15に記載の電磁場印加装置。
【請求項17】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ電場を印加可能であることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項18】
前記試料に対し前記光軸と平行な方向へ印加する電場が、前記光軸と平行な電界軸をもつ、少なくとも2つの平板電極により構成された、少なくとも1組の平行平板電極により発生させられるものであることを特徴とする請求項17に記載の電磁場印加装置。
【請求項19】
前記光軸に沿って流れる荷電粒子線の伝播方向が、前記試料よりも荷電粒子線の上流側で前記光軸から離れる方向に偏向された後、前記光軸方向に偏向され、前記試料の配する位置で前記光軸上に戻るとともに前記光軸から離れる方向に偏向され、前記試料よりも荷電粒子線の下流側で前記光軸方向に偏向された後、前記光軸上で光軸に沿って流れる方向に偏向されることを特徴とする請求項12から18のいずれかに記載の電磁場印加装置。
【請求項20】
試料に荷電粒子線を照射する荷電粒子線照射手段と、
当該試料と同一平面上に対向配置された一対の磁場印加手段と、
当該磁場印加手段によって磁場印加された磁場形成領域内に電場及び磁場の混在領域を形成するように、電場を印加する電場印加手段とを備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2011−76812(P2011−76812A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225864(P2009−225864)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]