説明

電磁接触器

【課題】全体の構成を大型化することなく、外部接続導体の磁界の影響を受けることなく通電時に可動接触子を開極させる電磁反発力を抑制することができる電磁接触器を提供する。
【解決手段】電路に介挿された一対の固定接点部2a,2bを有する固定接触子2と、該一対の固定接点部に接離可能な一対の可動接点部3b,3cを有する可動接触子3とを有する接点機構CMを有し、前記一対の固定接触子及び前記可動接触子の少なくとも一方の形状を、通電時に前記固定接点部及び前記可動接点部間に発生する開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を発生する磁界を形成する形状としている。また、前記固定接触子2の外部接続端子2i,2jに接続する外部接続導体20,21を有し、該外部接続導体の前記外部接続端子に取付ける固定部22,23の取付方向を前記可動接触子に流れる電流の方向に対して交差する方向とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流路に介挿された固定接触子及び可動接触子を備えた電磁接触器に関し、通電時の可動接触子を固定接触子から離反させる電磁反発力に抗するローレンツ力を発生させるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
電流路の開閉を行う電磁接触器として、従来、例えば、固定接触子を側面からみてU字形状に折り返し、折り返し部に固定接点を形成し、この固定接点に可動接触子の可動接点を接離可能に配設した構成とし、大電流遮断時に可動接触子に作用する電磁反発力を大きくすることにより開極速度を大きくして、アークを急速に引き伸ばすようにした開閉器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、同様の構成において流れる電流により発生する磁界によってアークを駆動させる電磁接触器の接触子構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−210170号公報
【特許文献2】特開平4−123719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、固定接触子を側面から見てU字形状として発生する電磁反発力を大きくするようにしており、この大きな電磁反発力によって、短絡等による大電流を遮断する大電流遮断時の可動接触子の開極速度を大きくして、アークを急速に引き伸ばし、事故電流を小さな値に限流することができるものである。
しかしながら、ヒューズや回路遮断器と組み合わせて回路を構成する電磁接触器は、大電流の通電時に可動接触子が電磁反発力によって開極することを阻止する必要があり、上述した特許文献2に記載の従来例を適用するには、一般的には可動接触子の固定接触子に対する接触圧を確保する接触スプリングのばね力を大きくすることで対処している。
【0005】
このように接触スプリングによる接触圧を大きくすると、可動接触子を駆動する電磁石で発生する推力も大きくする必要があり、全体の構成が大型化する。あるいは、より限流効果が高く、遮断性能に優れるヒューズや回路遮断器と組み合わせる必要があるという未解決の課題がある。
この未解決の課題を解決するために、前記固定接触子及び可動接触子の少なくとも一方の形状を、通電時に前記固定接触子及び前記可動接触子間に発生する開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を高める形状とすることが考えられる。
【0006】
この場合には、通電時の固定接触子及び可動接触子間に発生する開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を高めて、開極方向の電磁反発力を抑制することができる。しかしながら、電磁接触器の固定接触子の外部接続端子に接続される外部接続導体の形状よっては、開極方向の電磁反発力を抑制するローレンツ力が外部接続導体に流れる電流によって外部接続導体回りに発生する磁界の影響により、弱められるという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、全体の構成を大型化することなく、外部接続導体の磁界の影響を受けることなく通電時に可動接触子を開極させる電磁反発力を抑制することができる電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る電磁接触器の第1の態様は、通電路に介挿された一対の固定接点部を有する固定接触子と該一対の固定接点部に接離可能な一対の可動接点部を有する可動接触子とを有する接点機構を有する。この接点機構の前記一対の固定接触子及び前記可動接触子の少なくとも一方の形状を、通電時に前記固定接点部及び前記可動接点部間に発生する開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を発生する磁界を形成する形状としている。さらに、前記固定接触子の外部接続端子に接続する外部接続導体を有し、該外部接続導体の前記外部接続端子に取付ける固定部の取付方向を前記可動接触子に流れる電流の方向に対して交差する方向とした。
【0008】
この構成によると、固定接触子及び可動接触子の少なくとも一方の形状を、例えば、L字形状やC字形状として、通電時に固定接触子及び可動接触子間に発生する開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を発生する形状としたので、大電流通電時の可動接触子の開極を抑制する。また、固定接触子の外部接続端子に接続する外部接続導体の固定部の取付方向を可動接触子に流れる電流の方向に対して交差する方向としている。このため、外部接続導体の固定部で発生する磁界がローレンツ力を発生する磁界に影響することを防止する。
【0009】
また、本発明に係る電磁接触器の第2の態様は、前記外部接続導体が、前記固定部の前記外部接続端子とは反対側に連結されて前記可動接触子の延長方向と平行で且つ電流方向が当該可動接触子と逆方向となる導体部を備えている。
この構成によると、外部接続導体の固定部に接続された導体部が、可動接触子の延長方向と平行で且つ電流方向が可動接触子と逆方向となるように配置されている。このため、導体部で発生する磁束の向きを、ローレンツ力を発生する磁界を形成する磁束の向きと一致させてローレンツ力を発生する磁束密度を増加できる。
【0010】
また、本発明に係る電磁接触器の第3の態様は、前記外部接続導体が、保護ユニットを構成するブスバーで構成されている。
この構成によると、保護ユニットを構成するブスバーで、通電時に固定接触子及び可動接触子間に発生する開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を発生する磁界の磁束密度を増加できる。
【0011】
また、本発明に係る電磁接触器の第4の態様は、通電路に介挿された一対の固定接点部を有する固定接触子と該一対の固定接点部に接離可能な一対の可動接点部を有する可動接触子とを有する接点機構を有する。この接点機構は、前記一対の固定接触子及び前記可動接触子の少なくとも一方の形状を、通電時に前記固定接点部及び前記可動接点部間に発生する開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を発生する磁界を形成する形状としている。そして、前記接点機構を覆うように前記固定接触子に接続される外部接続導体で生じる磁界の影響を抑制する磁性体を配置した。
この構成によると、固定接触子の外部接続端子に接続された外部接続導体に流れる電流によって発生する磁界が前記ローレンツ力を発生する磁界に影響することを磁性体でシールドして、ローレンツ力の低下を抑制できる。
【0012】
また、本発明に係る電磁接触器の第5の態様は、前記可動接触子が、可動部に支持され、表裏の一方の面における両端側にそれぞれ接点部を有する導電板を備えている。また、前記固定接触子が、前記導電板の接点部に対向する固定接点部を支持してそれぞれ前記導電板と平行に当該導電板の両端より外側に向かう第1の導電板部と、該第1の導電板部の外方端部から前記導電板の端部の外側を通って延長する第2の導電板部とで形成されたL字状導電板部を備えている。
この構成によると、L字状導電板部を構成する第2の導電板部で、電磁接触器の通電時に可動接触子及び固定接触子間を開極させる電磁反発力に抗するローレンツ力を発生させる磁束密度を増加させる。
【0013】
また、本発明に係る電磁接触器の第6の態様は、前記固定接触子が、前記第2の導電板部の端部から前記導電板と平行に内方に延長する第3の導電板部を有してC字状に構成されている。
この構成によると、第3の導電板部を流れる電流が可動接触子を流れる電流と逆方向となるので、ローレンツ力を発生する磁束密度をより増加することができる。
【0014】
また、本発明に係る電磁接触器の第7の態様は、前記可動接触子が、可動部に支持される導電板部と、該導電板部の両端に形成されたC字状折り返し部と、該C字状折り返し部の前記導電板部との対向面に形成された接点部とを備えている。また、前記固定接触子が、前記U字状折り返し部内に前記導電板部と平行に配設された前記可動接触子の接点部と接触する接点部を形成した一対の第1の導電板部と、該一対の第1の導電板部の内側端からそれぞれ前記U字状折り返し部の端部の内側を通って延長する第2の導電板部とで構成されるL字状導電板部を備えている。
この構成によると、可動接触子側で電磁接触器の通電時に可動接触子及び固定接触子間を開極させる電磁反発力に抗するローレンツ力を発生させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通電路に介挿された固定接触子及び可動接触子を有する接点機構の大電流通電時の固定子接触子及び可動接触子に生じる開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を発生することができる。このため、機械的押圧力を使用することなく大電流通電時の可動接触子の開極を確実に防止することができる。また、外部接続導体を流れる電流による磁界が通電時に開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を発生させる磁界に影響することを防止して、ローレンツ力の低下を防止する。さらには、外部接続導体に可動接触子を流れる電流方向とは逆方向の電流を流す導体部を形成すると、上記ローレンツ力を発生する磁束密度を増加できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電磁接触器の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の平面図であって、(a)は外部接続導体が互いに逆方向に延長している状態を示す平面図、(b)は外部接続導体が互いに同一方向に延長している状態を示す平面図、(c)は従来例を示す平面図である。
【図3】本発明に適用し得る接点機構を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は開極時の接点機構を示す断面図、(c)は閉極時の接点機構を示す断面図、(d)は閉極時の磁束を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す平面図であって、(a)はU字状の外部接続導体を示す平面図、(b)はL字状の外部接続導体を示す平面図、(c)はクランク状の外部接続導体を示す平面図である。
【図5】保護ユニットを示す構成図である。
【図6】本発明の電磁接触器の第3の実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明に適用し得る接点機構の他の例を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は開極状態の断面図、(c)は閉極状態の断面図である。
【図8】本発明に適用し得る接点機構のさらに他の例を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は開極状態の断面図、(c)は閉極状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明による接点機構を適用した電磁接触器を示す断面図である。
図1において、1は例えば合成樹脂製の本体ケースである。この本体ケース1は、上部ケース1aと下部ケース1bの2分割構造を有する。上部ケース1aには、接点機構CMが内装されている。この接点機構CMは、上部ケース1aに固定配置された固定接触子2と、この固定接触子2に接離自在に配設された可動接触子3とを備えている。
【0018】
また、下部ケース1bには、可動接触子3を駆動する操作用電磁石4が配設されている。この操作用電磁石4は、E字脚型の積層鋼板で形成された固定鉄心5と、同様にE字脚型の積層鋼板で形成された可動鉄心6とが対向して配置されている。
固定鉄心5の中央脚部5aにはコイルホルダ7に巻装された単相交流が供給される電磁コイル8が固定されている。また、コイルホルダ7の上面と可動鉄心6の中央脚6aの付け根との間に可動鉄心6を固定鉄心5から離れる方向に付勢する復帰スプリング9が配設されている。
【0019】
さらに、固定鉄心5の外側脚部の上端面にはシェーディングコイル10が埋め込まれている。このシェーディングコイル10によって、単相交流電磁石において交番磁束の変化による電磁吸引力の変動、騒音及び振動を抑制することができる。
そして、可動鉄心6の上端に接触子ホルダ11が連結されている。この接触子ホルダ11にはその上端側に軸直角方向に形成された挿通孔11aに、可動接触子3が接触スプリング12によって固定接触子2に対して所定の接触圧を得るように下方に押圧されて保持されている。
この可動接触子3は、図2に拡大図示するように、中央部が接触スプリング12によって押圧された細長い棒状の導電板部3aで構成され、この導電板部3aの両端側の下面に可動接点部3b,3cがそれぞれ形成されている。
【0020】
一方、固定接触子2は、図2に拡大図示するように、可動接触子3の可動接点部3b,3cに下側から対向する一対の固定接点部2a,2bを支持して導電板部3aと平行に外側に向かう第1の導電板部2c,2dと、この第1の導電板部2c,2dの導電板部3aより外側となる外側端部から導電板部3aの端部の外側を通って上方に延長する第2の導電板部2e,2fとで形成されたL字状導電板部2g,2hを備えている。そして、これらL字状導電板部2g,2hの上端に、図1に示すように、上部ケース1aの外側に延長して固定された外部接続端子2i,2jに連結されている。
【0021】
そして、外部接続端子2i及び2jには、図2に示すように、外部接続導体20及び21が接続されている。これら外部接続導体20及び21は、外部接続端子2i及び2jに連結される固定部22及び23が可動接触子3の導電板部3aを流れる電流方向と直交する方向に延長して連結されている。ここで、外部接続導体20及び21の延長方向は、図2(a)に示すように互いに逆方向に延長する場合及び図2(b)に示すように互いに同一方向に延長する場合の何れでもよい。
【0022】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
今、操作用電磁石4の電磁コイル8が非通電状態である状態では、固定鉄心5及び可動鉄心6間に電磁吸引力が生じることはなく、復帰スプリング9によって、可動鉄心6が固定鉄心5から上方に離れる方向に付勢され、この可動鉄心6の上端がストッパ13に当接することにより電流遮断位置に保持される。
【0023】
この可動鉄心6が電流遮断位置にある状態では、可動接触子3が、図3(a)に示すように、接触子ホルダ11の挿通孔11aの底部に接触スプリング12によって接触されている。この状態で、可動接触子3の導電板部3aの両端側に形成された可動接点部3b,3cが固定接触子2の固定接点部2a,2bから上方に離間しており、接点機構CMが開極状態となっている。
【0024】
この接点機構CMの開極状態から、操作用電磁石4の電磁コイル8に単相交流を供給すると、固定鉄心5と可動鉄心6との間で吸引力が発生し、可動鉄心6が復帰スプリング9に抗して下方に吸引される。これにより、接触子ホルダ11に支持されている可動接触子3が下降して、可動接点部3b,3cが固定接触子2の固定接点部2a,2bに接触スプリング12の接触圧で接触し、閉極状態となる。
【0025】
この閉極状態となると、例えば、直流電源(図示せず)に接続された固定接触子2の外部接続端子2iから入力される例えば数十kA程度の大電流が第2導電板部2e、第1導電板部2c、固定接点部2aを通じて可動接触子3の可動接点部3bに供給される。この可動接点部3bに供給された大電流は導電板部3a、可動接点部3cを通じて固定接点部2bに供給される。この固定接点部2bに供給された大電流は、第1導電板部2d、第2導電板部2f、外部接続端子2jに供給されて、外部の負荷に供給される通電路が形成される。
【0026】
このとき、固定接触子2の固定接点部2a,2b及び可動接触子3の可動接点部3b、3c間に可動接点部3b,3cを開極させる方向の電磁反発力が発生する。
しかしながら、固定接触子2は、図3(a)に示すように、第1の導電板部2c,2d及び第2の導電板部2e,2fによってL字状導電板部2g,2hが形成されているので、上述した図3(c)に示す電流路が形成されることにより、可動接触子3を流れる電流に対し、図3(d)に示す磁界を形成する。このため、フレミングの左手の法則により、可動接触子3の導電板部3aに可動接点部3b,3cを固定接点部2a,2b側に押し付ける開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を作用させることができる。
【0027】
したがって、可動接触子3を開極させる方向の電磁反発力が発生しても、これに抗するローレンツ力を発生させることができるので、可動接触子3が開極することを確実に抑制することができる。このため、可動接触子3を支持する接触スプリング12の押圧力を小さくすることができ、これに応じて操作用電磁石4で発生する推力も小さくすることができ、全体の構成を小型化することができる。
【0028】
しかも、この場合、固定接触子2にL字状導電板部2g,2hを形成するだけで良く、固定接触子2の加工を容易に行うことができるとともに、別途開極方向の電磁反発力に抗する電磁力又は機械力を発生する部材を必要としないので、部品点数が増加することはなく、全体の構成が大型化することを抑制することができる。
さらに、固定接触子2の外部接続端子2i及び2jに接続された外部接続導体20及び21の固定部22及び23が可動接触子3の導電板部3aを流れる電流の方向と直交する方向に延長している。このため、外部接続導体20の固定部22を流れる電流によって発生する磁界が可動接触子3の導電板部3aを流れる電流によって発生する磁界を弱める方向に作用することはなく、大きなローレンツ力を発生することができる。
【0029】
因みに、図2(c)に示すように、固定接触子2の外部接続端子2i及び2hに外部接続導体20及び21の固定部22及び23を可動接触子3の導電板部3aを流れる電流の方向と平行に延長して接続した場合を考える。この場合には、外部接続導体20及び21の固定部22及び23を流れる電流によって発生する磁界が可動接触子3の導電板部3aを流れる電流によって発生する磁界に干渉することなる。このため、可動接触子3の導電板部3aで発生する磁界が弱められることにより、通電時に可動接触子3を開極させる方向の電磁反発力に抗するローレンツ力が小さくなってしまう。
【0030】
その後、接点機構CMの閉極状態から操作用電磁石4への通電を遮断して、電流遮断状態とすると、図3(b)に示すように、固定接触子2のL字状導電板部2g,2hの固定接点部2a,2bから可動接触子3の可動接点部3b,3cが上方に離間する。このとき、固定接点部2a,2b及び可動接点部3b,3c間にアークが発生する。
このようにして発生するアークは、図示しないが可動接触子3に沿って配置されたアーク消弧用磁石等のアーク消弧機構によって消弧されて、固定接触子2の接点部2a及び2bと可動接触子3の可動接点部3b及び3cとの間の電流が遮断されて開極状態に復帰する。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態を図4について説明する。
この第2の実施形態では、固定接触子2の外部接続端子2i及び2jに接続される外部接続導体を可動接触子3の導電板部3aで発生する磁界を強めるように構成したものである。
すなわち、第2の実施形態では、図4(a)に示すように、前述した第1の実施形態における図2(a)における外部接続導体20及び21の構成を変更している。
【0032】
先ず、外部接続導体20は、固定接触子2の外部接続端子2iに接続された固定部22の他端に上部ケース1aの正面に沿って可動接触子3の導電板部3aと平行に延長する第1の導体部25と、この導体部25の他端から上部ケース1aの側面に沿って後方に外部接続端子2jに対向する位置まで延長する第2の導体部26と、この第2の導体部26の他端から可動接触子3の導電板部3aの延長方向と同一方向に延長する外部接続導体部27とを備えている。
【0033】
また、外部接続導体21も、外部接続導体20と点対称となるように、第1の導体部28、第2の導体部29及び外部接続導体部30を備えている。
この第2の実施形態によると、外部接続導体20及び21の固定部22及び23については前述した第1の実施形態と同様に、可動接触子3の導電板部3aで流れる電流により生じる磁界に影響を与えることがないように配置されている。そして、外部接続導体20及び21には、可動接触子3の導電板部3aと平行に延長する第1の導体部25及び28を有し、これら第1の導体部25及び28に流れる電流の方向が図4(a)に示すように、可動接触子3の導電板部3aに流れる電流の方向とは逆方向とされている。
【0034】
このため、外部接続導体20及び21の第1の導体部25及び28で発生する磁界が可動接触子3の導電板部3aで発生する磁界に重畳されることになり、可動接触子3の導電板部3aの回りの磁束密度を高めることができ、通電時に可動接触子3に発生する開極方向の電磁力に抗するより大きなローレンツ力を発生することができる。したがって、通電時における可動接触子3の開極を確実に防止することができる。このため、可動接触子3を支持する接触スプリング12の押圧力をより小さくすることができ、これに応じて操作用電磁石4で発生する推力もより小さくすることができ、全体の構成をより小型化することができる。
【0035】
なお、上記第2の実施形態においては、外部接続導体20及び21をU字状に形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図4(b)に示すように、固定部22及び23と外部接続導体部を兼ねる第1の導体部25及び28とでL字状に構成するようにしても上記と同様の作用効果を得ることができる。さらには、図4(c)に示すように、第1の導体部25及び28を半分の長さとし、その自由端から固定部22及び23と反対方向に延長する外部接続導体部31及び32を形成するようにしてもよい。
【0036】
また、図5に示すように、電磁接触器1の保護ユニット40を、直流電力源と電磁接触器1の固定接触子2の外部接続端子2iとの間にヒューズ41を介挿したブスバー42と、電磁接触器1の固定接触子112の外部接続端子2jと負荷とを結ぶブスバー43とで構成する。そして、ブスバー42の固定接触子2の外部接続端子2jと接続部分を前述した図4(a)に示す外部接続導体20と同一形状に形成し、ブスバー43を外部接続導体21と同一形状に形成するようにしても上述した第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
さらに、本願発明の第3の実施形態を図6について説明する。
この第3の実施形態では、接点機構CMが外部接続導体20及び21の磁界の影響を受けないようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態では、図6に示すように、上部ケース1aの固定接触子2のL字状導体部2g及び2hを収納した接点収納空間50の内壁にL字状導体部2g及び2hを囲むように磁性体シールド体51を配置した構成を有する。
ここで、磁性体シールド体51は、磁性体で下端を開放した桶状に形成されており、少なくともL字状導体部2g及び2hの第2の導電板部2e及び2fと接触する内周面に絶縁膜又は絶縁層が形成されている。
【0038】
この第3の実施形態によると、接点機構CM全体が磁性体シールド体51によって覆われているので、上部ケース1aの外部に配置された外部接続端子2i及び2jに接続される外部接続導体20及び21に流れる電流によって発生する磁界を磁気シールドすることができる。このため、固定接触子2のL字状導電板部2g及び2hと可動接触子3の導電板部3aとを流れる電流によって発生する磁界に外部磁界が影響することを確実に阻止することができる。したがって、通電時の可動接触子3を開極させる電磁力に抗するローレンツ力が弱められることなく、通電時の可動接触子3の開極を確実に防止することができる。
この場合には、外部接続導体20及び21で発生する磁界が磁性体シールド体51によって磁気シールドされるので、外部接続導体20及び21の接続方向を任意に設定することができる。
【0039】
なお、上記第3の実施形態においては、磁性体シールド体51を固定接触子のL字状導電板部2g及び2hと可動接触子3の導電板部3aとで構成される接点機構CMの全体を覆うように配置した場合について説明した。しかしながら、本発明は上記構成に限定されるものではなく、磁性体シールド体51を外部接続導体20及び21に流れる電流によって発生する磁界がローレンツ力を発生する部位に影響することを防止さえすればよい。このため、外部接続端子2i及び2jと対向する対向側面部のみに形成したり、図6の構成から前後側面を削除した構成としたりすることができる。
【0040】
なお、上記第1〜第3の実施形態においては、固定接触子2にL字状導電板部2g及び2hを形成してローレンツ力を発生する形状とした場合について説明した。しかしながら、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、図7(a)〜(c)に示すように、前述した第1の実施形態における図3の構成において、固定接触子2のL字状導電板部2g,2hにおける第2の導電板部2e,2fを可動接触子3の導電板部3aの端部の上端側を覆うように折り曲げて、導電板部3aと平行な第3の導電板部2m,2nを形成してU字状導電部2o,2pを形成したことを除いては前述した第1〜第3の実施形態と同様の構成を有する。
【0041】
この構成によると、接点機構CMが、図7(c)に示すように、閉極状態となると、例えば、直流電源(図示せず)に接続された固定接触子2の外部接続端子2iから入力される例えば数十kA程度の大電流が第3の導電板部2m、第2の導電板部2e、第1の導電板部2c、固定接点部2aを通じて可動接触子3の可動接点部3bに供給される。この可動接点部3bに供給された大電流は導電板部3a、可動接点部3cを通じて固定接点部2bに供給される。この固定接点部2bに供給された大電流は、第1の導電板部2d、第2の導電板部2f、第3の導電板部2n、外部接続端子2jに供給されて、外部の負荷に供給される通電路が形成される。
このとき、固定接触子2の固定接点部2a,2b及び可動接触子3の可動接点部3b、3c間に可動接点部3b,3cを開極させる方向の電磁反発力が発生する。
【0042】
しかしながら、固定接触子2は、図3に示すように、第1の導電板部2c,2d、第2の導電板部2e,2f及び第3の導電板部2m,2nによってU字状導電板部2o,2pが形成されているので、固定接触子2の第3の導電板部2m,2nとこれに対向する可動接触子3の導電板部3aとで逆方向の電流が流れることになる。このため、固定接触子2の第3の導電板部2m,2nが形成する磁界と可動接触子3の導電板部3aに流れる電流の関係からフレミング左手の法則により可動接触子3の導電板部3aを固定接触子2の固定接点部2a,2bに押し付けるローレンツ力を発生することができる。このローレンツ力によって、固定接触子2の固定接点部2a,2b及び可動接触子3の可動接点部3b,3c間に発生する開極方向の電磁反発力に抗することが可能となり、可動接触子3の可動接点部3b,3cが開極することを防止することができる。
【0043】
さらに、図8(a)〜(c)に示すように、可動接触子3の形状を変更して通電時の開極方向の電磁力に抗するローレンツ力を発生させるようにしてもよい。
すなわち、図8(a)〜図8(c)に示すように、可動接触子3の導電板部3aの両端側から上方に延長する第1の導電板部3d,3eと、この第1の導電板部3d,3eの上端から内方に延長する第2の導電板部3f,3gとで、導電板部3aの上方側に折り返すU字状折り返し部3h,3iが形成されている。これらU字状折り返し部3h,3iの第2の導電板部3f,3gにおける先端側の下面に可動接点部3j,3kが形成されている。
【0044】
また、固定接触子2は、接点機構CMの開極状態で、可動接触子3のU状折り返し部3h,3iを形成する導電板部3aと第2の導電板部3f,3gとの間に対向し、内方に延長する第4の導電板部2q,2rと、これら第4の導電板部2q,2rの内方端から上方に可動接触子3のU字状折り返し部3h,3iの内側端部の内側を通って上方に延長する第5の導電板部2s,2tとでL字状導電板部2u,2vが形成されている。そして、第4の導電板部2q,2rの可動接触子3の可動接点部3j,3kに対向する位置に固定接点部2w,2xが形成されている。
【0045】
この図8の構成によると、接点機構CMが閉極状態となると、図8(c)に示すように、例えば、直流電源(図示せず)に接続された固定接触子2の外部接続端子2iから入力される例えば数十kA程度の大電流が第5の導電板部2s、第4の導電板部2q、固定接点部2wを通じて可動接触子3の可動接点部3jに供給される。この可動接点部3jに供給された大電流は第2の導電板部3f、第1の導電板部3d、導電板部3a、第1の導電板部3e、第2の導電板部3g、可動接点部3kを通じて固定接点部2xに供給される。この固定接点部2xに供給された大電流は、第4の導電板部2r、第5の導電板部2t、外部接続端子2jを通じて、外部の負荷に供給される通電路が形成される。
このとき、固定接触子2の固定接点部2w,2x及び可動接触子3の可動接点部3j、3k間に可動接点部3j,3kを開極させる方向の電磁反発力が発生する。
【0046】
しかしながら、可動接触子3は、導電板部3a、第1の導電板部3d,3e及び第2の導電板部3f,3gによってU字状折り返し部3h,3iが形成されているので、可動接触子3の導電板部3aと固定接触子2の第4の導電板部2q,2rとに逆方向の電流が流れることになる。このため、図8(c)に示すように、可動接触子3の導電板部3aに流れる電流と固定接触子2の第4の導電板部2q,2rが形成する磁界により、導電板部3aに可動接触子3の可動接点部3j,3kを固定接触子2の固定接点部2w,2xに押し付けるローレンツ力を発生することができる。このローレンツ力によって、固定接触子2の固定接点部2w,2x及び可動接触子3の可動接点部3j,3k間に発生する開極方向の電磁反発力に抗することが可能となり、大電流の通電時に可動接触子3の可動接点部3j,3kが開極することを防止することができる。
【0047】
さらに、図8の構成では、固定接触子2にL字状導電板部2u,2vが形成されているので、可動接触子3の第2の導電板部3f,3gの上側にL字状導電板部2u,2vの第5の導電板部2s,2tによる磁束強化部が形成されるので、前述した第1の実施形態と同様のローレンツ力も発生することができ、より強力に可動接触子3の開極を防止することができる。
【0048】
なお、上記第1〜第3の実施形態においては、外部接続導体20及び21の固定部22及び23を可動接触子2の電流方向と直交するする方向に配置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、固定部22及び23に流れる電流によって発生する磁界がローレンツ力を低減させない程度の角度で交差させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…本体ケース、1a…上部ケース、1b…下部ケース、2…固定接点、2a,2b…固定接点部、2c,2d…第1の導電板部、2e,2f…第2の導電板部、2g,2h…L字状導電板部、2i,2j…外部接続端子、2m,2n…第3の導電板部、2o,2p…U字状導電板部、2q,2r…第4の導電板部、2s,2t…第5の導電板部、2u,2v…L字状導電板部、2w,2x…固定接点部、3…可動接触子、3a…導電板部、3b,3c…可動接点部、3d,3e…第1の導電板部、3f,3g…第2の導電板部、3h,3i…U字状折り返し部、3j,3k…可動接点部、4…操作用電磁石、5…固定鉄心、6…可動鉄心、8…電磁コイル、9…復帰スプリング、11…接触子ホルダ、12…接触スプリング、13…ストッパ、20,21…外部接続導体、22,23…固定部、225,28…第1の導体部、26,29…第2の導体部、27,30…外部接続導体部、31,32…外部接続導体部、40…保護ユニット、41…ヒューズ、42,43…ブスバー、50…接点収納空間、51…磁性体シールド体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電路に介挿された一対の固定接点部を有する固定接触子と該一対の固定接点部に接離可能な一対の可動接点部を有する可動接触子とを有する接点機構を有し、前記一対の固定接触子及び前記可動接触子の少なくとも一方の形状を、通電時に前記固定接点部及び前記可動接点部間に発生する開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を発生する磁界を形成する形状とし、
前記固定接触子の外部接続端子に接続する外部接続導体を有し、該外部接続導体の前記外部接続端子に取付ける固定部の取付方向を前記可動接触子に流れる電流の方向に対して交差する方向とした
ことを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記外部接続導体は、前記固定部の前記外部接続端子とは反対側に連結されて前記可動接触子の延長方向と平行で且つ電流方向が当該可動接触子と逆方向となる導体部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記外部接続導体は、保護ユニットを構成するブスバーで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の電磁接触器。
【請求項4】
通電路に介挿された一対の固定接点部を有する固定接触子と該一対の固定接点部に接離可能な一対の可動接点部を有する可動接触子とを有する接点機構を有し、前記一対の固定接触子及び前記可動接触子の少なくとも一方の形状を、通電時に前記固定接点部及び前記可動接点部間に発生する開極方向の電磁反発力に抗するローレンツ力を発生する磁界を形成する形状とし、
前記接点機構を覆うように前記固定接触子に接続される外部接続導体で生じる磁界の影響を抑制する磁性体を配置した
ことを特徴とする電磁接触器。
【請求項5】
前記可動接触子は、可動部に支持され、表裏の一方の面における両端側にそれぞれ接点部を有する導電板を備え、
前記固定接触子は、前記導電板の接点部に対向する固定接点部を支持してそれぞれ前記導電板と平行に当該導電板の両端より外側に向かう第1の導電板部と、該第1の導電板部の外方端部から前記導電板の端部の外側を通って延長する第2の導電板部とで形成されたL字状導電板部を備えている
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電磁接触器。
【請求項6】
前記固定接触子は、前記第2の導電板部の端部から前記導電板と平行に内方に延長する第3の導電板部を有してC字状に構成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の電磁接触器。
【請求項7】
前記可動接触子は、可動部に支持される導電板部と、該導電板部の両端に形成されたC字状折り返し部と、該C字状折り返し部の前記導電板部との対向面に形成された接点部とを備え、
前記固定接触子は、前記U字状折り返し部内に前記導電板部と平行に配設された前記可動接触子の接点部と接触する接点部を形成した一対の第1の導電板部と、該一対の第1の導電板部の内側端からそれぞれ前記U字状折り返し部の端部の内側を通って延長する第2の導電板部とで構成されるL字状導電板部を備えている
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電磁接触器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−84424(P2013−84424A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223144(P2011−223144)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(508296738)富士電機機器制御株式会社 (299)