説明

電磁波シールド用ガスケット

【課題】耐熱性に優れ、高温の環境下においても、導電性筐体等の被着体との接圧が維持されるとともに、外皮層(導電性被覆材)の電気抵抗の増加を防止できる電磁波シールド用ガスケットを提供する。
【解決手段】棒状に形成された芯材2と、その側面周囲に覆設されたシート状の外皮層3(導電性被覆材)と、芯材2の側面と外皮層3の内壁面とを接着する接着層4とを備え、導電性筐体等の間隙に挟まれて電磁波を遮蔽する電磁波シールド用ガスケット1において、芯材2をシリコーン発泡体で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の環境における使用に適した電磁波シールド用ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電磁波シールド用ガスケットとしては、スポンジ(発泡体)状の芯材の周囲を金属箔等の導電性被覆材で包囲した構成の電磁波シールド用ガスケットが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2710744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の電磁波シールド用ガスケットにおいては、柔軟性、加工性、価格等の観点から、軟質のウレタン発泡体が好適に芯材として用いられている。しかしながら、軟質のウレタン発泡体は、一般的に長期信頼性に乏しいという問題を有する。
特に高温環境下での使用においては、ウレタン発泡体の劣化による歪みから、被着体への接圧が低下し、導電性能が悪化するという問題がある。
【0005】
また、軟質のウレタン発泡体は一般に難燃性が乏しく、この点で発火のおそれがある高熱環境下での使用には適さないという問題がある。難燃性を高めたウレタン発泡体も存在するが、(1)軟質性に劣る、(2)難燃性があるが、一般には80℃程度の水準で十分な耐熱性とは云えない。さらに難燃性を向上させる効果があるホットメルトの接着層を用いて難燃性を向上させることも考えられるが、その場合には大型サイズの電磁波シールド用ガスケットでの難燃性の実現が難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、高温の環境においてグランド電位を確保するのに適した電磁波シールド用ガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1記載の電磁波シールド用ガスケットは、棒状に形成された芯材と、前記芯材の側面周囲に覆設されたシート状の導電性被覆材と、該芯材の側面と導電性被覆材の内壁面とを接着する接着層とを備え、導電性筐体の間隙に挟まれて電磁波を遮蔽する電磁波シールド用ガスケットにおいて、前記芯材がシリコーン発泡体で構成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2記載の電磁波シールド用ガスケットは、その芯材に用いられるシリコーン発泡体の平均セル径が100μm以下であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3記載の電磁波シールド用ガスケットは、前記接着層は、塗布時粘度が10〜100pa・Sの範囲である接着剤から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電磁波シールド用ガスケットによれば、耐熱性が必要とされる環境下での使用が可能となる。
【0011】
また、本発明の電磁波シールド用ガスケットによれば、非常に柔軟でありながら長期にわたり低歪み性を維持できるシリコーン発泡体を芯材に用いているので、被着体への接圧も維持され、導電性能の低下を抑えることができる。
【0012】
更に、本発明の電磁波シールド用ガスケットによれば、シリコーン発泡体を芯材に用いているので、側面周囲に覆設されたシート状の導電性被覆材との接着剤としてシリコーン系の接着剤を用いることができ、難燃性をより向上させることができる。具体的には、150℃以上の耐熱性を有する材料で構成することにより、高耐熱(例えば125℃)を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】は本発明の好適な実施例に係る電磁波シールドガスケットの断面斜視図である。
【図2】(a)は実施例に係る芯材に接着剤を塗布した状態を示す説明図、(b)は塗布した接着剤が硬化して接着層となった状態を示す示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。図1に示す電磁波シールド用ガスケット1は、棒状(四角柱状)に形成された芯材2と、芯材2の側面周囲に覆設されたシート状の外皮層3と、芯材2の側面と外皮層3の内壁面を接着する接着層4と、必要に応じて設ける粘着テープ5を備える。芯材2は、難燃性に優れたシリコーン発泡体で形成されている。使用できるシリコーン発泡体としては、例えばサンポリマー株式会社製の「SE−800」がある。これ以外でも難燃性規格UL94V−0を満たすシリコーン発泡体を用いることができる。
【0015】
前記芯材2を形成するシリコーン発泡体は、微細セル発泡品であって、具体的にはその平均セル径が100μm以下であるものが好ましい。このような微細セル発泡品を用いることによって、外皮層3との接着をなす接着層4として、シリコーン系接着剤のみならず、他の接着剤やホットメルト等を使用することも可能となる。これにより、本発明のように芯材2をシリコーン発泡体に変更しても、従来のウレタン発泡品を芯材とした製品の製造設備をそのまま利用することができる。
【0016】
前記外皮層3は導電性被覆材として設けられるものであり、PET織布に銅/ニッケル(Cu/Ni)の金属めっきを施したものや、PET/PPSなどの耐熱性樹脂でなる樹脂フィルム表面にアルミ蒸着/金属スパッタリングによる金属箔を形成したものが用いられる。
PET繊維の選定の最適化や、より高密度の織加工、あるいは表面の目止めコーティング等を施せば熱劣化要因が排除され、PET繊維の熱伸縮による金属めっきの亀裂に起因する電気抵抗値の増加を防止することができる。また、さらに耐熱性を高めるためには、アラミド繊維に金属めっきを施した高耐熱素材を用いることもできる。
【0017】
前記接着層4としては、上述のとおり、シリコーン系接着剤のみならず、他の接着剤、高耐熱対応粘着剤、ホットメルト等を使用することも可能である。そして、その塗布時粘度が10〜100pa・Sの範囲にある接着剤を用いるのが好ましい。
この数値が10pa・S以上であると、図2(a)に示す如く、接着剤を塗布しても、前記芯材2を構成するシリコーン発泡体のセル内に接着剤が一定量以上入り込まないので、該接着剤の接着効果を十分に発揮させ得る。
一方、100pa・S以下であると、上述の接着効果を発揮しつつ、それでも接着剤の一部がシリコーン発泡体のセル内に入り込む。そしてこの入り込んだ接着剤が硬化することで、いわゆるアンカー効果(図2(b)参照)、を発現して、接着効果と併せて前記芯材2を外皮層3に強固に接着することになる。
【0018】
前記粘着テープ5は、電磁波シールド用ガスケット1を被着体、例えば開閉される導電性筐体の合わせ部に装着するためのものであって、外皮層3の外表面の一部に設けられる。粘着テープ5は、耐熱型アクリル系材料またはシリコーン系材料を用いた両面粘着テープが好適である。
【符号の説明】
【0019】
1 電磁波シールド用ガスケット、2 芯材、3 外皮層、4 接着層、5 粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状に形成された芯材と、前記芯材の側面周囲に覆設されたシート状の導電性被覆材と、前記芯材の側面と導電性被覆材の内壁面とを接着する接着層とを備え、導電性筐体の間隙に挟まれて電磁波を遮蔽する電磁波シールド用ガスケットにおいて、
前記芯材がシリコーン発泡体で構成されることを特徴とする電磁波シールド用ガスケット。
【請求項2】
前記シリコーン発泡体は、その平均セル径が100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド用ガスケット。
【請求項3】
前記接着層は、塗布時粘度が10〜100pa・Sの範囲である接着剤から構成されることを特徴とする請求項1また請求項2に記載の電磁波シールド用ガスケット。

【図1】
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【図2】
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