説明

電磁波吸収体および建材ならびに電磁波吸収方法

【課題】 多峰性または広帯域性を有し、電磁波の吸収量を向上させることができる電磁波吸収体、建材および電磁波吸収方法を提供する。
【解決手段】 パターン層5と損失層とが積層されて電磁波吸収体が構成される。パターン層5は、導電性材料、たとえば金属から成るパターン体12が形成される。パターン体12は、小正方形片13と、大正方形片14と、長方形片15a,15bとを有し、並進対称性を有する。長方形片15a,15bは、各内角が180°以下であり、かつ正多角形状を除く多角形状または楕円に形成され、かつ向きを異ならせて配置されている。このようなパターン層5を備えることによって、多峰性および広域性の少なくとも一方を有し、かつ吸収量が大きい吸収特性を有する、優れた電磁波吸収体1を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を捉えて、吸収する電磁波吸収体および建材ならびに電磁波吸収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波を用いる無線LAN(Local Area Network)を構築し、通信端末装置としてのコンピュータ間で無線通信する通信システムが利用されている。またFWA(Fixed Wireless Access)と呼ばれる広域ネットワークに、通信端末装置が無線通信可能に接続
される通信システムが利用されている。さらに近距離無線通信規格であるBluetoothに従
って無線通信するWPAN(Wireless Personal Area Network)を構築し、通信端末装置間で無線通信する通信システムが利用されている。さらにまたVoWLAN(Voice
over Wireless Local Area Network)と呼ばれる無線LANを構築し、音声通話する携帯電話装置を用いる通信システムが提案されている。また通信システムの1つとして、UHFの電磁波を用いるRFID(Radio Frequency Identification)システムの実用化が進んでいる。UHF帯は、国際的に周波数が統一されていないものの、UHFの電磁波を用いるRFIDシステムでは、10mもの通信距離が得られ、商品管理、物流管理、製品のトレーサビリティ等の広範囲な用途で用途展開されている。
【0003】
このような無線通信する通信システムを接近させて構築する場合、または通信システムが構築されている環境において電子レンジおよび無線通信による盗難防止装置など電磁波を利用する装置を用いる場合、他波干渉と呼ばれる電磁波干渉を生じるおそれがある。またこれとは別に、マルチパス、自己干渉などと呼ばれる反射波などによる誤伝送を生じるおそれがある。その結果、通信端末機器間の伝送速度の低下、BER(Bit Error Rate)の増大すなわち通信環境の劣化、そして情報伝達に誤りを生じる。また通信システムの周辺に設けられる電子機器への影響も懸念され、最悪の事態では、電子機器の誤動作を生じるおそれがある。
【0004】
これらの問題を解決するために、導電性パターン体を有するパターン層を備える電磁波吸収体が用いられている。電磁波吸収体は、導電性パターン体を受信アンテナとして機能させて電磁波を捉え、その捉えた電磁波を導電性パターン体および損失層によって減衰させる。また吸収体は表面で反射する電磁波と一度吸収体内を通過して再放射する電磁波を打消し合うよう干渉させることで、反射を小さくして電磁波を効率よく取り込むように構成されている。
【0005】
電磁波吸収体として、たとえば特許文献1に示される電波反射防止体がある。この特許文献1の電波反射防止体は、金属製電波反射体層、粒子径100μm以下のフェライトおよびカーボンから選ばれた少なくとも1種の粉末を含有する樹脂層、および複数個の幾何学的模様を互いに接触しないように配列してなる、金属粉末を含有する体積固有抵抗値が10−3〜10Ω・cmであり膜厚が5〜500μmのパターン塗膜層を順次積層してなる構造を有する。パターン塗膜層の模様における非塗膜部/塗膜部の比が0.05〜20であり、パターン塗膜が市松模様、多角形又は円である。
【0006】
また電磁波吸収体として、たとえば特許文献2に示される電波反射防止体がある。この特許文献2の電波防止体は、幾何学的模様状に形成され、体積固有抵抗値が10Ω・cm以下であるパターン層、支持層、25〜70体積%が空隙部であるパターン樹脂層、および支持層を順次積層してなる積層体を備える構成である。
【0007】
【特許文献1】特許第3209456号公報(特開平6−140787号公報)
【特許文献2】特開平6−252582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示される電波反射防止体では、パターン塗膜層は、模様における非塗膜部/塗膜部の比が0.05〜20となるように形成され、特許文献2に示される電波反射防止体では、パターン樹脂層は、25〜70体積%が空隙部となるように形成されている。このように特許文献1,2の電波反射防止体は、パターンをどのような比率で形成することがよいかが考慮された構成であるが、電磁波の吸収量をさらに向上させることが望まれている。また複数の周波数の電磁波または広帯域の周波数の電磁波を吸収できる電磁波吸収体が望まれている。
【0009】
本発明の目的は、多峰性または広帯域性を有し、電磁波の吸収量を向上させることができる電磁波吸収体、建材および電磁波吸収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、導電性材料から成る導電性パターン体が形成されるパターン層であって、導電性パターン体は、相互に離間して設けられ、各内角が180°以下であり、かつ正多角形状を除く多角形状または楕円に形成され、かつ向きを異ならせて配置されているパターン片を一部に含み、並進対称性を有するパターン層と、
【0011】
磁性損失材および誘電損失材の少なくともいずれか一方である材料から成る部分を有する損失層とが積層されて構成されることを特徴とする電磁波吸収体である。
【0012】
また本発明は、パターン片は、3回以上の回転対称性を有するように配置されていることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記パターン片は、3回、4回または6回の回転対称性のうち少なくとも1つを有するように配置されることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記パターン層は、パターン層全領域の面積を1とした場合、前記導電性パターン体が形成される領域の面積が0.55以上となる面積比を有することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記パターン片と、正多角形または円に形成されるパターン片を組み合わせて配置されていることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記パターン片は、各辺の長さ寸法が第1寸法以上第2寸法以下である長方形に形成され、
前記導電性パターン体は、一辺の長さ寸法が第1寸法である小さい正方形のパターン片と、一辺の長さ寸法が第1寸法より大きい第2寸法である大きい正方形のパターン片とをさらに含むことを特徴とする電磁波吸収体である。
【0017】
また本発明は、前記長方形のパターン片は、第1寸法の2つの短辺と、第2寸法の2つの長辺とから成る長方形であることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記小さい正方形のパターン片と前記大きい正方形のパターン片とが、前記小さい正方形のパターン片の一対角線と前記大きい正方形のパターン片の一対角線とを同一直線上に配置して並べられ、2つの長方形のパターン片が、短辺を前記小さい正方形のパターン片の一辺と対向させかつ長辺を前記大きい正方形のパターン片の一辺に対向させるようにそれぞれ並べられ、これら4つのパターン片を1群とするパターン群が並べられることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記小さい正方形のパターン片の角部と、前記大きい正方形のパターン片の角部のうちの少なくとも1つ以上の角部が曲線状に形成されることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記長方形のパターン片の角部のうちの少なくとも1つ以上の角部が曲線状に形成されることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記パターン層は、パターン層全領域の面積を1とした場合、導電性パターン体が形成される領域の面積が0.6以上となる面積比を有することを特徴とする。
【0022】
また本発明は、前記損失層は、少なくとも磁性損失材から成る層を有することを特徴とする。
【0023】
また本発明は、前記損失層は、
少なくとも磁性損失材から成る層と、
少なくとも誘電損失材から成る層とを有することを特徴とする。
【0024】
また本発明は、2つ以上の任意の異なる周波数の電磁波を吸収することを特徴とする。
また本発明は、パターン層に複数のパターン片を含み、1つのパターン片による基本共振周波数および高次共振周波数が、他のパターン片のうちの少なくとも1つ以上のパターン片による基本共振周波数と異なることを特徴とする。
【0025】
また本発明は、300MHzから30GHzの電磁波のうち、いずれか一部の帯域の電磁波を吸収することを特徴とする。
【0026】
また本発明は、2.4GHz帯の電磁波を吸収するための電磁波吸収体であって、
総厚み寸法が5mm以下であることを特徴とする。
【0027】
また本発明は、電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽性を有することを特徴とする。
また本発明は、難燃性、準不燃性または不燃性を有することを特徴とする。
【0028】
また本発明は、前記電磁波吸収体を備える建材である。
また本発明は、前記電磁波吸収体を用いることによる電磁波吸収方法である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、パターン層の導電性パターン体を受信アンテナとして機能させて電磁波を捉え、その電磁波エネルギを損失層で損失させることによって、電磁波を吸収することができる。各内角が180°以下であり、かつ正多角形状を除く多角形状または楕円に形成されるパターン片は、照射される電磁波の電界の向きによって、共振するモードの寸法が異なり、異なる周波数で共振する。このようなパターン片を向きを異ならせて配置させた電磁波吸収体では、照射される電磁波の電界の向きに関わらず、異なる周波数で共振する複数の共振モードが存在し、互いに離散した複数の周波数において電磁波の吸収が可能になる。また各モードの共振周波数が隣接している場合は比較的広い周波数帯域にわたって電磁波の吸収が可能になる。
【0030】
また本発明によれば、パターン片は、3回以上の回転対称性を有するように配置されて、特に3回、4回または6回の回転対称性のうち少なくとも1つを有するように配置されることによって、照射される電磁波の電界の向きに関わらず、複数の共振モードをより確実に発生させることができるとともに、照射される電磁波の電界の向きに応じた吸収特性の変化を小さくすることができる。
【0031】
また本発明は、前記パターン層は、パターン層全領域の面積を1とした場合、前記導電性パターン体が形成される領域の面積が0.55以上となる面積比を有している。パターン層が、前記範囲の面積比に形成されることによって、電磁波の吸収量を大きくすることができるとともに、電磁波の吸収量の大きな周波数帯域の帯域幅を大きくすることができる。
【0032】
また本発明は、前記パターン片と、正多角形または円に形成されるパターン片を組み合わせて配置されているので、前記パターン片とは、異なる周波数で共振する複数の共振モードを存在させることができ、互いに離散したさらに複数の周波数において電磁波の吸収が可能になる。
【0033】
また本発明によれば、導電性パターン体は、小さい正方形のパターン片(以下「小正方形片」という)と、大きい正方形のパターン片(以下「大正方形片」という)と、長方形のパターン片(以下「長方形片」という)とを有する。このように導電性パターン体は、形状および寸法の異なる複数種類のパターン片を有している。導電性パターン体によって受信する電磁波の周波数は、各パターン片の形状および寸法に依存するので、形状および寸法の異なる複数種類のパターン片を有することによって、互いに離散した複数の周波数において電磁波の吸収が可能になり、また比較的広い周波数帯域にわたって電磁波の吸収が可能になる。また小正方形片、大正方形片および長方形片を組合せることによって、導電性パターン体が形成されない領域が小さくなるように、パターン片を密に並べて形成することができる。これによってパターン層におけるパターン片が形成される領域の比率を大きくすることができる。パターン片が形成される領域の比率を大きくすることによって、電磁波の吸収量を大きくすることができるとともに、電磁波の吸収量の大きな周波数帯域の帯域幅を大きくすることができる。したがって多峰性および広域性の少なくとも一方を有し、かつ吸収量が大きい吸収特性を有する、優れた電磁波吸収体を得ることができる。
【0034】
また本発明によれば、長方形片の短辺の長さ寸法が、小正方形片の一辺の長さ寸法と同一であり、長方形片の長辺の長さ寸法が、大正方形片の一辺の長さ寸法と同一である。これによって小正方形片の一辺に長方形片の短辺を対向させ、大正方形片の一辺に長方形片の長辺を対向させるように、各パターン片を並べることによって、パターン片が形成されない領域を可及的に小さくして、パターン片を可及的に密に並べて形成することができる。
【0035】
また本発明によれば、小正方形片と大正方形片とが、一角部同士を突合わせて並べられ、2つの長方形片が、短辺を小正方形片に対向させ、長辺を大正方形片に対向させて並べられる。これら4つのパターン片を1群とするパターン群が並べられるので、小正方形片の数と大正方形片の数を同一にして、パターン片が形成されない領域を可及的に小さくして、パターン片を可及的に密に並べて形成することができる。
【0036】
また本発明によれば、パターン片の角部が曲線状に形成され、すなわち角部にRを付与することによって、電磁波の偏波方向によって電磁波の吸収量(以下電磁波の吸収量を「吸収量」という場合がある)がピーク値となる周波数のずれを小さく抑えて、偏波特性を良好にすることができる。したがって吸収量のピーク値が高く、かつ電磁波の偏波方向によって吸収量がピーク値となる周波数のずれが小さい優れた電磁波吸収特性の電磁波吸収体を実現することができる。
【0037】
全てのパターン片が曲線状の角部を有する構成であってもよいが、全てのパターン片が曲線状の角部を有する構成でなくてもよく、一部のパターン片が曲線状の角部を有する構成であればよい。一部のパターン片が曲線状の角部を有する場合には、その他のパターン片は、曲線状の角部の有無について限定されるものではない。さらに曲線状の角部を有するパターン片は、一部の角部だけが曲線状であってもよいし、全ての角部が曲線状であってもよい。
【0038】
また本発明によれば、パターン層は、そのパターン層全領域の面積を1とした場合、パターン片が形成される領域の面積が0.6以上となる面積比を有している。パターン層が、前記範囲の面積比に形成されることによって、電磁波の吸収量を大きくすることができるとともに、電磁波の吸収量の大きな周波数帯域の帯域幅を大きくすることができる。
【0039】
また本発明によれば、損失層は、磁性損失材および誘電損失材の少なくともいずれか一方から成る層を有するので、パターン層の導電性パターン体によって捉えた電磁波エネルギの損失量を大きくし、電磁波を大きな吸収量で吸収することができる。
【0040】
また本発明によれば、損失層は、少なくとも磁性損失材から成る層と、少なくとも誘電損失材から成る層とを有する。このように磁性損失材から成る層と、誘電損失材から成る層の両方で、パターン層の導電性パターン体によって捉えた電磁波エネルギを損失させるので、損失量を大きくし、電磁波を大きな吸収量で吸収することができる。
【0041】
また本発明によれば、2つ以上の任意の異なる周波数の電磁波の電磁波に対して受信アンテナとして機能し、電磁波を大きな吸収量で吸収することができる。
【0042】
また本発明によれば、1種類のパターン片では吸収できなかった基本および高次共振周波数以外の電磁波に対しても、他のパターン片が共振することにより大きな吸収量で吸収することができる。
【0043】
また本発明によれば、300MHzから30GHzの電磁波のうちの一部の帯域の電磁波に対して受信アンテナとして機能し、電磁波を大きな吸収量で吸収することができる。
【0044】
また本発明によれば、導電性パターン体が2.4GHz帯の電磁波に対して受信アンテナとして機能し、2.4GHz帯の電磁波を大きな吸収量で吸収することができる。しかも総厚み寸法が5mm以下であり、薄形の電磁波吸収体を実現することができる。2.4GHz帯とは、2.4GHz以上2.5GHz未満の周波数帯域である。
【0045】
また本発明によれば、電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽性を有するので、利便性の高い電磁波吸収体を実現することができる。
【0046】
また本発明によれば、電磁波吸収体が、難燃性、準不燃性または不燃性を有しており、難燃性、準不燃性または不燃性が要求される用途、たとえば建材に好適に用いることができる。
【0047】
また本発明によれば、前述の優れた電磁波吸収体を用いて、優れた建材を実現することができる。
【0048】
また本発明によれば、前述の優れた電磁波吸収体を用いることによって、好適に電磁波を吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
図1は、本発明の実施の一形態の電磁波吸収体1の一部を示す正面図である。図2は、電磁波吸収体1の一部を示す断面図である。図2は、電磁波吸収体1の一部を示す断面図である。図1には、図2の上方側である電磁波入射側から見て示している。電磁波吸収体1は、たとえばオフィスなどの空間の電磁波環境を改善するために用いられ、その空間の電磁波を吸収する。電磁波吸収体1は、可撓性を有する板状であり、曲げ伸ばし変形可能である。電磁波吸収体1の形状は、外力が作用しない自然状態で曲面状であってもよいが、本実施の形態では、平面状である。したがって電磁波吸収体1は、平板状である。
【0050】
電磁波吸収体1は、図2に示すとおり複数の層を有する積層体である。電磁波吸収体1は、少なくともパターン層5と、損失層7とを有し、本実施の形態では、さらに導電性反射層(以下「反射層」という)2を有する。本実施の形態では、これらパターン層5、損失層7、反射層2は、電磁波入射側からこの順序で、厚み方向に積層されている。
【0051】
パターン層5は、導電性パターン体(以下「パターン体」という)12を有する。パターン体12は、形状および寸法に依存する共振周波数を有し、その共振周波数の電磁波を受信する受信アンテナとして機能する。パターン層5は、板状基材11の電磁波入射側の表面(以下「第1基材表面」という)に、パターン体12が形成されて構成される。第1基材表面は、板状基材11の厚み方向一方側の表面である。
【0052】
板状基材11は、誘電材料から成っており、この板状基材11もまた、後述の損失層7における誘電体層3と同様の損失機能を有している。誘電材料は、電気絶縁性を有する材料であれば、どのような材料であってもよく、誘電体だけの材料であってもよいし、誘電体と誘電体以外の原料とが混合された材料であってもよい。本実施の形態では、板状基材11は、誘電体だけの誘電材料から成る。板状基材11の材料としては、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂、紙、木、ガラスなどを用いることができる。
【0053】
パターン体12は、導電性材料、たとえば金属から成る。パターン体12の材料としては、たとえば金、白金、銀、ニッケル、クロム、アルミニウム、銅、亜鉛、鉛、タングステンおよび鉄などを用いることができる。金属以外の材料では、カーボン・グラファイト系材料、ITO(酸化インジウムスズ)や酸化亜鉛などの導電性酸化物、ポリアセチレンなどの導電性高分子なども用いることができる。パターン体12は、板状基材11に、たとえば蒸着、メッキ、金属箔の貼着、それらのエッチング処理またはスクリーン印刷によって形成される。
【0054】
図3は、パターン体12のうち1つのパターン群17を拡大して示す正面図である。図1および図3を併せて参照して、パターン体12は、互いに間隔をあけて設けられる複数のパターン片であって、複数種類のパターン片を有している。本実施の形態では、パターン体12は、小さい正方形のパターン片(以下「小正方形片」という)13と、大きい正方形のパターン片(以下「大正方形片」という)14と、長方形のパターン片(以下「長方形片」という)15a,15bとを有する。以下、小正方形片13、大正方形片14、長方形片15a,15bの1つ以上を不特定に指す場合、パターン片という。
【0055】
小正方形片13は、前述の第1基材表面が平面状となる基準状態において、正方形となるパターン片であり、一辺の長さ寸法は、第1寸法L1である。大正方形片14は、基準状態において、正方形となるパターン片であり、一辺の長さ寸法は、第1寸法L1より大きい第2寸法L2(>L1)である。長方形片15a,15bは、第1長方形片15aと第2長方形片15bとを有する。第1長方形片15aと第2長方形片15bとは、基準状態において、互いに向きは異なるが合同な長方形となるパターン片である。2つの合同な多角形のパターン片の向きが異なるというのは、その多角形のパターン片うちの対応する辺の延びる方向が異なっている状態をいう。長方形片15a,15bの各辺の長さ寸法は、第1寸法L1以上第2寸法L2以下である。本実施の形態では、短辺の長さ寸法は、第1寸法L1であり、長方形の長辺の長さ寸法は、第2寸法L2である。
【0056】
各パターン片13,14,15a,15bは、各辺がx方向およびy方向のいずれかと平行になるように形成されている。x方向およびy方向は、板状基材11の第1基材表面に沿う方向である。板状基材11の第1基材表面が平面となる基準状態では、x方向およびy方向は互いに垂直である。
【0057】
1つの小正方形片13と、1つの大正方形片14と、1つの第1長方形片15aと、1つの第2長方形片15bとが組合わされ、これら計4つのパターン片を1群とするパターン群17が構成される。このような4つのパターン片から成る複数のパターン群17が、規則的に並べられている。
【0058】
図3に示すように、1つのパターン群17では、小正方形片13と大正方形片14とが、角部同士を突合せるようにして並べられている。小正方形片13における1つの対角線、具体的には大正方形片14に突合される角部と反対側の角部とを結ぶ対角線18と、大正方形片14における1つの対角線、具体的には小正方形片14に突合される角部と反対側の角部とを結ぶ対角線19とが、同一直線上に配置されるように、小正方形片13と大正方形片14とが並べられる。
【0059】
さらに並んだ小正方形片13および大正方形片14の両側の略三角形状の凹所に、それぞれ嵌まり込むように、第1および第2長方形片15a,15bが設けられる。第1および第2長方形片15a,15bは、短辺を小正方形片13の一辺と対向させかつ長辺を大正方形片14の一辺に対向させるようにそれぞれ並べられる。第1長方形片15aは、短辺がx方向に沿う長方形であり、短辺を小正方形片13のx方向に沿う辺に対向させ、長辺を大正方形片14のy方向に沿う辺に対向させている。第2長方形片15bは、短辺がy方向に沿う長方形であり、短辺を小正方形片13のy方向に沿う辺に対向させ、長辺を大正方形片14のx方向に沿う辺に対向させている。
【0060】
小正方形片13、大正方形片14、第1および第2長方形片15a,15bが、このように並べられ、1つのパターン群17は、各辺がx方向およびy方向のいずれかと平行な正方形状の形状を有している。本実施の形態では、図1に示すように、各パターン群17が、同一の姿勢で、行列状に、x方向およびy方向に整列して並べられている。このようにパターン体12では、各パターン片13,14,15a,15bが、1つのパターン群17の並びを繰返すようにして、並べられており、パターン体12は並進対称性を有する。したがってパターン体12は、巨視的に見て、小正方形片13、大正方形片14、第1および第2長方形片15a,15bを、同数ずつそれぞれ有している。
【0061】
複数の第1および第2長方形片15a,15bは、相互に離間して設けられ、かつ向きを異ならせて配置され、本実施の形態では4回の回転対称性を有するように配置されている。第1および第2長方形片15a,15bは、小正方形片13の中央をとおりX方向およびY方向に垂直な軸線まわりに4回の回転対称となっており、また大正方形片14の中央をとおりX方向およびY方向に垂直な軸線まわりに4回の回転対称となっている。
【0062】
このようなパターン体12の寸法は、吸収すべき電磁波の周波数に基づいて決定される。互いに隣接するパターン片13,14,15a,15b間の間隔Dは、場所によって異なる構成であってもよいが、全体にわたって同一の寸法であってもよく、本実施の形態では、同一である。
【0063】
このようなパターン層5では、前述のようなパターン体12を形成することによって、パターン層全領域の面積(以下「全面積」という)Saを1とした場合、パターン体12が形成される領域の面積(以下「パターン面積」という)Spが0.6以上となる面積比を有する。全面積は、板状基材11の第1基材表面の面積に相当し、そのうちの60%以上を占める面積の領域に、パターン体12が形成される。したがってパターン面積Spを、第1基材表面のうちパターン体12が形成されていない領域の面積(以下「非パターン面積」という)Soで除算した値は、1.5以上である。
【0064】
パターン体12の寸法は、限定されるものではないが、一例を述べると、第1寸法L1が、9.5mmであり、第2寸法L2が、24mmであり、間隔Dが、4.5mmである。このような寸法のパターン体12では、1つのパターン群17において、次の式(1)〜式(5)が成り立つ。したがって全面積Saを1としたとき、パターン面積Spが0.62となり、62%を占める領域にパターン体12が形成され、パターン面積Spを非パターン面積Soで除算した値(面積比)は、1.64である。
Sp=24×24+9.5×9.5+24×9.5×2
=1122.25[mm] …(1)
Sa=(24+9.5+4.5×2)=1806.25[mm] …(2)
So=1806.25−1122.25=684[mm] …(3)
Sp/So=1122.25/684=1.6407 …(4)
Sp/Sa=1122.25/1806.25=0.6213 …(5)
【0065】
またパターン体12は、前述の形状の外周縁に沿って延びる閉ループの線状(帯状)ではなく、内方領域部分も塗潰される面状のパターンである。したがって導電性反射層2との間にコンデンサを形成することができる。
【0066】
損失層7は、複素比透磁率(μ’、μ”)を有する磁性損失材および複素比誘電率(ε’、ε”)を有する誘電損失材の少なくともいずれか一方である材料から成る部分を有する層である。この損失層7は、磁性損失材である材料から成る部分だけを有する層であってもよいし、誘電損失材である材料から成る部分だけを有する層であってもよいし、磁性損失材である材料から成る部分と誘電損失材である材料から成る部分とを有する層であってもよいし、磁性損失材でありかつ誘電損失材である材料から成る部分を有する層であってもよい。
【0067】
本実施の形態では、損失層7は、電磁波吸収層(以下「吸収層」という)4と、誘電体層3とを有し、電磁波入射側から吸収層4、誘電体層3の順序で積層されている。本実施の形態では、吸収層4は、非導電性、つまり電気絶縁性を有する磁性材料から成り、誘電体層3は、誘電材料から成る。電気絶縁性を有する磁性材料は、磁性損失材でありかつ誘電損失材である。誘電材料は、誘電損失材である。損失層7には磁性または誘電損失材料からなる層が少なくとも1層以上含まれていれば良く、吸収層4が磁性または誘電損失材料である場合、誘電層3の誘電材料は低損失の材料であっても良いし、発泡体のような低誘電率かつ低損失の材料であっても良い。
【0068】
吸収層4を形成する材料には、電気絶縁性を有する磁性体を含む材料が用いられる。この材料は、磁性体だけから成る材料であってもよいし、磁性体と他の素材とを混合した材料であってもよい。磁性体と他の素材を混合する材料の例として、たとえば磁性体と有機重合体とを混合する材料を用いることができる。また磁性体と有機重合体とに、さらに他の素材、たとえばグラファイト、炭素繊維などが加えられる材料を用いることができる。このように吸収層4は、少なくとも磁性体を含む材料から成る層であって、少なくとも磁性損失材である材料から成る層であり、たとえばフェライトなどの焼結体の層、金属酸化物系膜の層、金属高分子系膜の層によって実現することができる。
【0069】
また吸収層4を形成する材料には、電気絶縁性を有する誘電損失材を含む材料が用いられてもよい。この材料は、有機重合体や酸化物などの絶縁材料であってもよいし、アルミニウムなどの非磁性金属の粒子や繊維を絶縁体中に分散させたものでも良い。
【0070】
本実施の形態では、吸収層4は、成形のための結合剤を用い、この結合剤と磁性体としての磁性粉末とを混合した材料から成る。結合剤は、誘電体から成り、これによって吸収層4を形成する材料は、前述のように磁性材料であり、かつ誘電材料でもある。結合剤および磁性粉末は、特に限定されるものではないが、一例を述べると、結合剤および磁性粉末として、以下のものを用いることができる。
【0071】
(結合剤)
結合剤の材料には、各種の有機重合体を用いることが可能であり、たとえばゴム材料、熱可塑性エラストマー材料、各種合成樹脂(プラスチック)材料などの高分子材料を用いることができる。前記ゴム材料としては、たとえば天然ゴムのほか、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)、エチレン−酢酸ビニル系ゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、エチレンアクリル系ゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、水素添加ニトリルゴム(HNBR)などの合成ゴムなどが挙げられる。またこれらゴムの誘導体、または各種変性処理にて改質したものであってもよい。
【0072】
これらのゴム材料は、単独で用いてもよいし、複数をブレンドして用いることができる。ゴム材料には、加硫剤のほか、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤などの従来からゴムの配合剤として用いられていたものを適宜配合することができる。さらにこれら以外の添加剤を添加することができる。たとえば誘電率および導電率を制御するために、所定量の誘電体(カーボンブラック、黒鉛、酸化チタンなど)を、電磁波吸収体1の用途に応じて、具体的には吸収すべき電磁波に対するインピーダンスマッチングおよび温度環境に応じて、材料設計して添加することができる。さらに加工助剤(滑剤、分散剤)を、適宜選択して添加してもよい。
【0073】
熱可塑性エラストマー材料としては、たとえば塩素化ポリエチレンのような塩素系エラストマー、エチレン系共重合体系エラストマー、アクリル系エラストマー、エチレンアクリル共重合体系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アミド系エラストマー、オレフィン系エラストマーなどの各種熱可塑性エラストマーが挙げられる。またこれらエラストマーの導体であってもよい。
【0074】
さらに、各種合成樹脂材料としては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂;ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリスルホン、ウレタン系樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂などの熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂などが挙げられる。またこれら合成樹脂材料の誘導体であってもよい。
また結合体はゴム、エラストマー、樹脂のいずれの発泡体であっても良い。
【0075】
前述の具体的材料は、結合剤のあくまでも一例ではあるが、このような材料を用いることができる。結合剤としては、低分子量のオリゴマータイプおよび液状タイプの材料を用いることができる。熱、圧力、紫外線および硬化剤などによって、シート状に成形可能な材料であれば、任意の材料を選択することができる。
【0076】
特に、本発明では、結合剤の材料として、塩化ビニル樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体、およびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種である材料を用いるのが好ましい。
【0077】
(磁性粉末)
磁性粉末としては、軟磁性粉末が用いられる。軟磁性粉末は、としては、たとえば磁性ステンレス(Fe−Cr−Al−Si合金)、センダスト(Fe−Si−Al合金)、パーマロイ(Fe−Ni合金)、ケイ素銅(Fe−Cu−Si合金)、Fe−Si合金、Fe−Si−B(−Cu−Nb)合金、Fe−Ni−Cr−Si合金、Fe−Si−Cr合金、Fe−Si−Al−Ni−Cr合金などの粉末が挙げられる。また軟磁性粉末として、フェライト粉末または純鉄粉末を用いてもよい。フェライト粉末としては、たとえばMn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Mn−Mgフェライト、Mnフェライト、Cu−Znフェライト、Cu−Mg−Znフェライト、Ba−Ni−Coフェライトなどのソフトフェライトの粉末、または永久磁石材料であるハードフェライトの粉末が挙げられる。純鉄粉末としては、たとえばカルボニル鉄粉が挙げられる。粉末には、粒子と呼ばれるものも含まれる。
【0078】
磁性粉末の形状は、特に限定されるものではないが、球状、扁平状、繊維状などの形状であってもよい。軟磁性粉末の形状としては、高い充填率で充填できるので、球状または略球状の形状が好ましい。これらの磁性粉末は1種類の粉末を単独で用いてもよいが、形状および材料の少なくともいずれか一方が異なる複数種類の粉末をブレンドして用いてもよい。磁性粉末が略球状である場合の平均粒径は、0.1〜500μmであり、好ましくは1〜200μmである。また磁性粉末が扁平状である場合の長径は0.1〜500μmあり、好ましくは1〜200μmであり、アスペクト比は2〜500、好ましくは10〜100である。
【0079】
誘電体層3を形成する材料には、誘電体を含む材料が用いられる。この材料は、誘電体だけから成る材料であってもよいし、誘電体と他の素材とを混合した材料であってもよい。本実施の形態では、誘電体層3は、誘電体だけの誘電材料から成る。誘電体層3を形成する誘電体としては、たとえば合成樹脂、ゴム、紙、木材、石膏、セメントおよびガラスを用いることができる。このように誘電体層3は、少なくとも誘電体を含む材料から成り、少なくとも誘電損失材から成る層である。
【0080】
反射層2は、電磁波吸収体1の全体にわたって設けられる。反射層2は、少なくとも導電性を有し、電磁波を反射させる層であり、電磁波の透過を防ぎ、電磁波を遮蔽する層でもある。この反射層2は、電磁波吸収体1で吸収しきれない電磁波が、電磁波吸収体1を透過してしまうことを防ぐことができる。電磁波吸収体1で吸収しきれない電磁波は、本来吸収すべき周波数の電磁波のうち、損失層7でエネルギを損失させきれなかった電磁波だけでなく、吸収すべき周波数の電磁波とは異なる周波数の電磁波も含まれる。このように反射層2を設けることによって、電磁波吸収体1は、電磁波遮蔽性を有する。
【0081】
反射層2は、導電性材料から成る板、シート、フィルム、箔、織布または不織布によって実現されてもよいし、合成樹脂に導電性材料を混合した混合材料から成る板、シート、フィルム、箔、織布または不織布によって実現されてもよいし、合成樹脂などから成る基材に導電性材料から成る導電性膜が形成される板、シート、フィルム、箔、織布または不織布によって実現されてもよい。基材に導電性膜を形成する方法としては、メッキ、蒸着(スパッタ)、印刷などの方法が挙げられる。反射層2を形成する導電性材料は、金属であってもよいし、カーボンなどの金属以外の材料であってもよい。反射層2を形成する金属として、パターン体12を形成するために用いることができる金属を、同様に用いることができる。本実施の形態では、反射層2は、板状基材の電磁波入射側の表面上に、全面にわたって金属膜が形成されて構成される。
【0082】
電磁波吸収体1は、パターン層5のパターン体12によって、その形状および寸法に依存して決定される共振周波数の電磁波を受信し、パターン体12と反射層2の間に電磁波エネルギを貯め、その電磁波エネルギを、吸収層4および誘電体層3を含む損失層7で損失させる。電磁波エネルギの損失は、電磁波エネルギの熱エネルギへの変換によって生じる。
【0083】
電磁波吸収体1では、照射した電磁波の一部が表面で反射し、残りはパターン片13,14,15a,15b間から電磁波吸収体1内に侵入する。電磁波吸収体1内部では電磁波は減衰しながら伝搬し、一部はパターン片13,14,15a,15b間から再放射される。再放射波の位相は電磁波吸収体1内を伝搬した経路の分だけ表面反射波の位相と異なり、各パターン片13,14,15a,15bの共振周波数では表面反射波と再放射波が逆位相になり打ち消し合う。パターン体12は、各パターン片13,14,15a,15bがそれぞれ異なる周波数で共振し、各共振周波数付近で表面反射波と再放射波が打ち消し合う干渉がおこる電磁波吸収体1では、これらの電磁波同士の干渉によって、反射波の強度を小さくさせることができる。
【0084】
このように電磁波吸収体1は、パターン層5を利用した電磁波の干渉により反射を小さくして吸収体内部に電磁エネルギを効率よく取り込み、損失層7による損失(熱エネルギへの変換)を利用して電磁波を吸収する。電磁波吸収体1は、パターン層5と損失層7を用いることによって電磁波を効率よく受信し、前述のエネルギ変換によって、電磁波を効率良く吸収することができる。
【0085】
電磁波吸収体1によって吸収する電磁波の周波数は、パターン体12の形状、寸法および間隔に依存するとともに、損失層7の厚み寸法、したがって吸収層4および誘電体層3に依存するので、これの形状および寸法を選択して決定される。電磁波吸収体1の吸収対象とする電磁波の周波数は、特に限定されるものではないが、300kHz以上3000GHz以下の範囲の周波数であってもよい。電磁波吸収体1は、たとえば特にUHF帯(860MHz以上960MHz未満)、2.4GHz帯(2.4GHz以上2.5GHz未満)、5GHz帯(5.15GHz以上5.35GHz未満、5.47GHz以上5.725GHz未満)、5.8GHz帯(5.725GHz以上5.875GHz未満)の電磁波を吸収するために用いられる。
【0086】
第1寸法L1は、たとえば10mm以上45mm以下であり、第2寸法L2は、たとえば5mm以上27mm以下である。互いに隣接するパターン片13,14,15a,15b間の間隔Dは、全体にわたって同一の寸法であり、0.5mm以上10mm以下たとえば2mmである。吸収層4の厚み寸法は、たとえば0.2mm以上4.0mm以下であり、誘電体層3の厚み寸法は、たとえば1.5mm以上7.0mm以下である。これら寸法は、あくまで一例であり、これに限定されるものではない。
【0087】
また電磁波吸収体1は、難燃性、準不燃性または不燃性を有している。難燃性としてはUL94V0の評価を得ることが目安である。電磁波吸収体1の用途は限定されないが、たとえば建材の構成部材として用いられる。難燃性、準不燃性または不燃性を有する電磁波吸収体1は、好適に建材を構成することができる。建材は、建築物を建立するために用いられる素材であり、たとえば内装材、壁材、床材、衝立材、天板材、表面材である。電磁波吸収体1に、難燃性、準不燃性、または不燃性を付与するにあたっては、電磁波吸収体1に、たとえば難燃剤または難燃助剤が添加される。難燃剤または難燃助剤は、たとえば吸収層4および誘電体層3に添加される。
【0088】
難燃剤としては、公知なものを単独またはブレンドして用いることができる。難燃剤としては、たとえば燐化合物系難燃剤、ホウ素化合物、ハロゲン系難燃剤、亜鉛系難燃剤、窒素系難燃剤および水酸化物系難燃剤を用いることができる。燐化合物系難燃剤としては、燐酸エステルなどが挙げられる。ハロゲン系難燃剤としては、臭素系難燃剤などが挙げられる。亜鉛系難燃剤としては、炭酸亜鉛、ホウ酸亜鉛などが挙げられる。窒素系難燃剤としては、トリアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、メラミン系化合物が挙げられる。水酸化物系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。また難燃助剤としては、カーボンブラック、脂肪酸金属塩などを用いることができる。これらの難燃剤および難燃助剤を用い、UL94のV0などの難燃性を達成すべく配合設計する。
【0089】
このような電磁波吸収体1によれば、各内角が180°以下であり、かつ正多角形状を除く多角形状を有する長方形片15a,15bは、照射される電磁波の電界の向きによって、共振するモードが異なり、異なる周波数で共振する。このような長方形片15a,15bを向きを異ならせて配置すると、照射される電磁波の電界の向きに関わらず、複数の長方形片15a,15bで共振モードを異ならせることができ、互いに離散した複数の周波数において電磁波の吸収が可能になり、また比較的広い周波数帯域にわたって電磁波の吸収が可能になるとともに、照射される電磁波の電界の向きに応じた吸収特性の変化を小さくすることができる。また複数の長方形片15a,15bが3回以上の回転対称性を有するように配置されているので、これら長方形片15a,15bの向きを確実に異ならせることができ、また4回の回転対称に配置することによって、小正方形片13、大正方形片14を組み合わせたときにパターン片を密に並べることができる。
【0090】
またパターン体12は、小正方形片13と、大正方形片14と、長方形片15a,15bとを有する。このようにパターン体12は、形状および寸法の異なる複数種類のパターン片を有している。パターン体12によって受信する電磁波の周波数は、各パターン片13,14,15a,15bの形状および寸法に依存するので、形状および寸法の異なる複数種類のパターン片を有することによって、2つ以上の任意の異なる周波数の電磁波の電磁波に対して受信アンテナとして機能し、互いに離散した複数の周波数において電磁波の吸収が可能になり、また比較的広い周波数帯域にわたって電磁波の吸収が可能になる。
またパターン層5に複数のパターン片を含み、1つのパターン片による基本共振周波数および高次共振周波数が、他のパターン片のうちの少なくとも1つ以上のパターン片による基本共振周波数と異なるので、1種類のパターン片では吸収できなかった基本および高次共振周波数以外の電磁波に対しても、他のパターン片が共振することにより大きな吸収量で吸収することができる。
【0091】
また小正方形片13、大正方形片14および長方形片15a,15bを組合せることによって、パターン片13,14,15a,15bを密に並べて形成することができる。これによってパターン面積を大きくすることができ、電磁波の吸収量を大きくすることができるとともに、電磁波の吸収量の大きな周波数帯域の帯域幅を大きくすることができる。したがって多峰性および広域性の少なくとも一方を有し、かつ吸収量が大きい吸収特性を有する、優れた電磁波吸収体1を得ることができる。
【0092】
特に前述のように、長方形片15a,15bの短辺の長さ寸法が、小正方形片13の一辺の長さ寸法と同一であり、長方形片15a,15bの長辺の長さ寸法が、大正方形片14の一辺の長さ寸法と同一であり、図3に示すように並べることによって、各パターン片13,14,15a,15bの数を同一にして、パターン片を可及的に密に並べ、パターン面積を可及的に大きくすることができる。
【0093】
このようにして、複数種類のパターン片13,14,15a,15bを組合せ、かつ全面積を1とした場合にパターン面積が0.6以上の面積比となるパターン層5を実現することができる。パターン層5の面積比が、前記範囲に形成されることによって、電磁波の吸収量を大きくすることができるとともに、電磁波の吸収量の大きな周波数帯域の帯域幅を大きくすることができる。また電磁波吸収体1では、損失層7は、吸収層4と、誘電体層3とを有し、これら吸収層4および誘電体層3の両方で、パターン体12によって捉えた電磁波のエネルギを損失させるので、損失量を大きくし、電磁波を大きな吸収量で吸収することができる。
【0094】
また電磁波吸収体1は、電磁波遮蔽板として機能する反射層2を有している。これによって電磁波吸収体1は、電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽性を有する。したがって電磁波吸収体1は、電磁波を吸収するだけでなく、電磁波を遮蔽することが可能であり、利便性が向上される。さらに反射層2がない構成では、電磁波吸収体1の近傍に導電性材料から成る物体が存在するか否かによって、またその導電性の違いによっても受信アンテナとして機能するパターン体12のインピーダンスが変化し、受信可能な電磁波の周波数が変化してしまうが、反射層2を備える構成では、吸収体の背面近傍に存在する導電性材料から成る物体の影響を排除することが可能であり、この点においても利便性が向上される。また反射層2は、前述のように電磁波の吸収の一翼を担う電磁波干渉を生じさせる構成でもあり、電磁波の吸収量を大きくすることにも寄与している。この電磁波吸収体1は、優れた電磁波吸収特性を有する。
【0095】
図4は、本発明の実施の他の形態の電磁波吸収体1Aの一部を示す正面図である。この実施の形態は、前述の図1〜図3の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明する。図1〜図3の実施の形態では、各パターン群17は、同一の姿勢で行列状に並べられたけれども、この実施の形態では、1つの姿勢、たとえば図1〜図3の姿勢を基準姿勢と、この基準姿勢とは異なる3つの姿勢との計4つの姿勢のパターン群17が規則的に並べられている。
【0096】
図4に示すように、この実施の形態では、基準姿勢に加えて、x方向に反転させた姿勢、y方向に反転させた姿勢、x方向およびy方向に反転させた姿勢が加えられている。さらに具体的には、x方向およびy方向の1つおきに基準姿勢のパターン群17が設けられ、基準姿勢のパターン群17のx方向隣りには、x方向に反転させた姿勢のパターン群が並べられ、基準姿勢のパターン群17のy方向隣りには、y方向に反転させた姿勢のパターン群が並べられ、x方向およびy方向の1つおきとなる残余の位置にx方向およびy方向に反転させた姿勢のパターン群17が設けられる。基準姿勢のパターン群17に関して、x方向およびy方向に対して45度を成す2つの斜め方向隣りに、x方向およびy方向に反転させた姿勢のパターン群17が設けられている。したがってこの実施の形態では、4つの姿勢のパターン群17は、隣接するパターン群17との間で、小正方形片13同士、大正方形片14同士、第1長方形片15a同士、第2長方形片15b同士を突合せるようにして並べられる。
【0097】
本実施の形態におけるパターン体12においても、各パターン片13,14,15a,15bが、1つのパターン群17の並びを繰返すようにして、並べられており、パターン体12は並進対称性を有する。本実施の形態においても第1および第2長方形片15a,15bは、4回の回転対称性を有する。第1および第2長方形片15a,15bは、4つの小正方形片13に囲まれる領域の中央をとおりX方向およびY方向に垂直な軸線まわりに4回の回転対称となっており、また4つの大正方形片14に囲まれる領域の中央をとおりX方向およびY方向に垂直な軸線まわりに4回の回転対称となっている。
【0098】
このように、各パターン片13,14,15a,15bの並び方の異なる図4のパターン層5は、図1〜図3のパターン層5に代えて用いることができる。このような構成であっても、前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0099】
図1および図4に示すパターン群17の並びは、あくまでも一例であり、これ以外の並びであってもよい。たとえば前述の前記4つの姿勢のうちの2つの姿勢を選択し、これら2つの姿勢のパターン群17を市松模様の配置で並べるようにしてもよい。また各パターン群17が千鳥状に並べられる構成であってもよい。このように並びを変更しても、前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0100】
図5は、本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Dの一部を示す正面図である。この実施の形態は、前述の図1〜図4の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明する。図1〜図4の実施の形態では、パターン群17が、1つの小正方形片13と、1つの大正方形片14と、1つの第1長方形片15aと、1つの第2長方形片15bとが組合わされて構成されているけれども、本実施の形態では、2つの第1長方形片15aと、2つの第2長方形片15bとが組合わされてパターン群17が構成される。
【0101】
図5に示すように、第1長方形片15aは長辺がy方向に平行な長方形であり、第2長方形片15bは長辺がx方向に平行な長方形である。第1長方形片15aと第2長方形片15bとは、基準状態において、互いに向きは異なるが合同な長方形となるパターン片である。第1長方形片15aと、第2長方形片15bとは、市松模様の配置で並べられている。すなわち第1長方形片15aのそれぞれの短辺は、第2長方形片15bの長辺の中央部に対向し、第1長方形片15aのそれぞれの長辺の中央部は、第2長方形片15bの短辺の中央部に対向している。X方向で隣接する第1長方形片15aと第2長方形片15bとは、Y方向の中央がX方向に揃うように配列され、Y方向で隣接する第1長方形片15aと第2長方形片15bとは、X方向の中央がY方向に揃うように配列される。互いに隣接する第1長方形片15aおよび第2長方形片15bの間隔Dは、本実施の形態では、全体にわたって同一の寸法である。
【0102】
パターン群17は、1つの第1長方形片15aと、この第1長方形片15aのX方向の一方およびY方向の一方にそれぞれ隣接する2つの第2長方形片15bと、この2つの第2長方形片15bにそれぞれ長辺および短辺が対向する第1長方形片15aとが組み合わされて構成されている。パターン体12は、複数のパターン群17が規則的に並べられており、並進対称性を有する。パターン群17に含まれる第1および第2長方形片15a,15bは、相互に離間して設けられ、4回の回転対称性を有する。前述のように第1および第2長方形片15a,15bが整列して並べられると、1つのパターン群17に含まれる第1および第2長方形片15a,15bは、これらの第1および第2長方形片15a,15bに囲まれる領域の中央をとおり、X方向およびY方向に垂直な軸線まわりに4回の回転対称となっている。
【0103】
パターン体12の寸法は、限定されるものではないが、一例を述べると、第1および第2長方形片15a,15bの短辺の長さ寸法である第1寸法L1が、21mmであり、第1および第2長方形片15a,15bの長辺の長さ寸法である第2寸法L2が、9.5mmであり、間隔Dが、1mmである。このような寸法のパターン体12では、全面積Saを1としたとき、パターン面積Spが0.55以上となる。このように本実施の形態のような長方形片のみを有するパターン層においては、パターン面積Spを0.55以上とすることができ、パターン層が、前記範囲の面積比に形成されることによって、電磁波の吸収量を大きくすることができるとともに、電磁波の吸収量の大きな周波数帯域の帯域幅を大きくすることができる。
【0104】
このように、各パターン片15a,15bの並び方の異なる図5のパターン層5は、図1〜図3のパターン層5に代えて用いることができる。このような構成であっても、前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0105】
図6は、本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Eの一部を示す正面図である。この実施の形態は、前述の図1〜図5の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明する。本実施の形態と図5の実施の形態ではパターン片の形状が異なり、図5の実施の形態では、パターン群17は、2つの第1長方形片15aと、2つの第2長方形片15bとが組合わされて構成されているけれども、本実施の形態では、2つの第1楕円形片15cと、2つの第2楕円形片15dとが組合わされてパターン群17が構成される。第1および第2楕円形片15c,15dは、第1および第2長方形片15a,15bと同様の材料から成る。
【0106】
図6に示すように、第1楕円形片15cは長軸がy方向に平行な楕円形であり、第2楕円形片15dは長軸がx方向に平行な楕円形である。第1楕円形片15cと第2楕円形片15dとは、基準状態において、互いに向きは異なるが合同な楕円形となるパターン片である。2つの合同な楕円形のパターン片の向きが異なるというのは、その各楕円形のパターン片の長軸および短軸の延びる方向が異なっている状態をいう。第1楕円形片15cと、第2楕円形片15dとは、市松模様の配置で並べられている。すなわち第1楕円形片15cの長軸方向のそれぞれの端部は、第2長方形片15bの短軸方向の端部に対向し、第1楕円形片15cのそれぞれの短軸方向のそれぞれの端部は、第2楕円形片15dの短軸方向の端部に対向している。x方向で隣接する第1楕円形片15cと第2楕円形片15dとは、y方向の中央がx方向に揃うように配列され、すなわち長軸と短軸とがx方向に直線状に並ぶように配列される。またy方向で隣接する第1楕円形片15cと第2楕円形片15dとは、x方向の中央がy方向に揃うように配列され、すなわち短軸と長軸とがx方向に直線状に並ぶように配列される。x方向およびy方向で互いに隣接する第1楕円形片15cおよび第2楕円形片15dの間隔Dは、本実施の形態では、全体にわたって同一の寸法である。
【0107】
パターン群17は、1つの第1楕円形片15cと、この第1楕円形片15cのX方向の一方およびY方向の一方にそれぞれ隣接する2つの第2楕円形片15dと、この2つの第2楕円形片15dにそれぞれ長軸方向の端部および短軸方向の端部が対向する第1楕円形片15cとが組み合わされて構成されている。
【0108】
パターン体12は、複数のパターン群17が規則的に並べられており、並進対称性を有する。パターン群17に含まれる第1および第2楕円形片15c,15dは、相互に離間して設けられ、4回の回転対称性を有する。パターン群17に含まれる4つの第1および第2楕円形片15c,15dは、これらの4つの第1および第2長方形片15a,15bに囲まれる領域の中央をとおり、X方向およびY方向に垂直な軸線まわりに4回の回転対称となっている。
【0109】
パターン体12の寸法は、限定されるものではないが、一例を述べると、第1および第2楕円形片15cの長軸方向の長さ寸法である第1寸法L1が、27.5mmであり、第1および第2楕円形片15c,15dの短軸方向の長さ寸法である第2寸法L2が、(10)mmであり、間隔Dが、1mmである。このような寸法のパターン体12では、全面積Saを1としたとき、パターン面積Spが0.55以上となる。このように本実施の形態のような楕円形片のみを有するパターン層においては、パターン面積Spを0.55以上とすることができ、パターン層が、前記範囲の面積比に形成されることによって、電磁波の吸収量を大きくすることができるとともに、電磁波の吸収量の大きな周波数帯域の帯域幅を大きくすることができる。
【0110】
このように、各パターン片の形状および並び方の異なる図6のパターン層5は、図1〜図5のパターン層5に代えて用いることができる。このような構成であっても、前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。またパターン片の形状を楕円形状とすることによって、電磁波の偏波方向によって電磁波の吸収量がピーク値となる周波数のずれを小さく抑えて、偏波特性を良好にすることができる。したがって電磁波の偏波方向によって電磁波の吸収量がピーク値となる周波数のずれが小さい優れた電磁波吸収特性の電磁波吸収体を実現することができる。
【0111】
図7は、本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Fの一部を示す正面図である。この実施の形態は、前述の図1〜図6の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明する。本実施の形態と、図1〜図3の実施の形態とでは、各パターン片13,14,15a,15bの形状のみが異なる。本実施の形態の各パターン片13,14,15a,15bの形状は、図1〜図3の実施の形態における各パターン片13,14,15a,15bについて、これら各パターン片13,14,15a,15bの全ての角部を、外方に凸となる曲線状としたものである。各角部の曲率半径Rは、角部を直角としたときの長方形の各辺の2分の1以下に選ばれ、材料・構成により異なるが各辺の4分の1程度が望ましい。
【0112】
パターン片13,14,15a,15bの角部が曲線状に形成されることによって、すなわち角部にRを付与することによって、電磁波の偏波方向によって電磁波の吸収量がピーク値となる周波数のずれを小さく抑えて、偏波特性を良好にすることができる。したがって吸収量のピーク値が高く、かつ電磁波の偏波方向によって吸収量がピーク値となる周波数のずれが小さい優れた電磁波吸収特性の電磁波吸収体を実現することができる。
【0113】
本実施の形態のように全てのパターン片13,14,15a,15bが曲線状の角部を有する構成であってもよいが、パターン片13,14,15a,15bのうちの一部が曲線状の角部を有する構成であればよい。たとえばパターン片13,14は曲線状の角部を有し、パターン片15a,15bは直角の角部を有する構成としてもよいし、またたとえばパターン片13,14は直角の角部を有し、パターン片15a,15bは曲線状の角部を有する構成としてもよい。このように一部のパターン片が曲線状の角部を有する場合には、その他のパターン片は、曲線状の角部の有無について限定されるものではない。さらに曲線状の角部を有するパターン片は、そのパターン片の角部のうちの一部の角部だけが曲線状であってもよいし、全ての角部が曲線状であってもよい。
【0114】
このように、各パターン片の形状および並び方の異なる図7のパターン層5は、図1〜図6のパターン層5に代えて用いることができる。このような構成であっても、前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0115】
また本実施の形態では、図1〜図3に示す実施の形態のパターン片13,14,15a,15bについて、その角部を曲線状にしているが、前述したいずれの実施の形態のパターン片13,14,15a,15bについても、角部を曲線状に形成してもよいし、また以下に述べる実施の形態のパターン片についても、角部を曲線状に形成してもよい。
【0116】
図8は、本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Gの一部を示す正面図である。この実施の形態は、前述の図1〜図7の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明する。図1〜図3の実施の形態では、パターン群17が、1つの小正方形片13と、1つの大正方形片14と、1つの第1長方形片15aと、1つの第2長方形片15bとが組合わされて構成されているけれども、本実施の形態ではパターン群17が、1つの小円形片13aと、1つの大円形片14aと、1つの第1楕円形片15cと、1つの第2楕円形片15dとが組み合わされて構成される。
【0117】
小円形片13aは、前述の第1基材表面が平面状となる基準状態において、円方形となるパターン片であり、直径の寸法は、第1寸法L1である。大円形片14aは、基準状態において、正方形となるパターン片であり、直径の寸法は、第1寸法L1より大きい第2寸法L2(>L1)である。第1楕円形片15cと第2楕円形片15dとは、基準状態において、互いに向きは異なるが合同な楕円形となるパターン片である。第1および第2楕円形片15c,15dの長軸方向の長さ寸法は、第1寸法L1以上第2寸法L2以下である。本実施の形態では、第1および第2楕円形片15c,15dの短軸方向の長さ寸法は、第1寸法L1であり、長軸方向の長さ寸法は、第2寸法L2である。
【0118】
図8に示すように、1つのパターン群17では、第1楕円形片15cの長軸がy方向に延び、第2楕円形片15dの長軸がx方向に延びる。第1および第2楕円形片15c,15dのそれぞれの長軸の延長線の交点上に小円形片13aの中心が設けられ、第1および第2楕円形片15c,15dのそれぞれの短軸の延長線の交点上に大円形片14aの中心が設けられる。
【0119】
前記パターン群17が繰り返すようにして並べられることによって、パターン体12では、y方向において各第1楕円形片15cの間に小円形片13aが配置され、またy方向において各第2楕円形片15dの間に大円形片14aが配置され、x方向において各第1楕円形片15cの間に大円形片13bが配置され、またx方向において各第2楕円形片15dの間に小円形片13aが配置されており、並進対称性を有する。したがってパターン体12は、巨視的に見て、小円形片13a、大円形片14a、第1および第2楕円形片15c,15dを、同数ずつそれぞれ有する。
【0120】
複数の第1および第2楕円形片15c,15dは、相互に離間して設けられ、4回の回転対称性を有する。第1および第2楕円形片15c,15dは、小円形片13aの中央をとおりX方向およびY方向に垂直な軸線まわりに4回の回転対称となっており、また大円形片14aの中央をとおりX方向およびY方向に垂直な軸線まわりに4回の回転対称となっている。
【0121】
パターン体12の寸法は、限定されるものではないが、一例を述べると、第1および第2楕円形片15c,15dの長軸方向の長さ寸法および小円形状片13aの直径である第1寸法L1が、9mmであり、第1および第2楕円形片15c,15dの短軸方向の長さ寸法および大円形状片14aの直径である第2寸法L2が、26mmであり、間隔Dが、2mmである。このような寸法のパターン体12では、全面積Saを1としたとき、パターン面積Spが0.6以上となる。
【0122】
このように、各パターン片の形状の異なる図8のパターン層5は、図1〜図7のパターン層5に代えて用いることができる。このような構成であっても、前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0123】
図9は、本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Gの一部を示す正面図である。この実施の形態は、前述の図1〜図7の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明する。本実施の形態と、図1〜図7の実施の形態とでは、各パターン片の形状が異なる。本実施の形態のパターン体12は並進対称性を有し、複数の菱形片15eを有する。菱形片15eは、前述の第1基材表面が平面状となる基準状態において、菱形となるパターン片である。
【0124】
複数の菱形片15eは、基準状態において、互いに向きは異なっている場合であっても、合同な菱形となるパターン片である。複数の菱形片15eは、相互に離間して設けられ、3または6回の回転対称性を有するように配置されている。複数の菱形片15eのうち少なくとも3つは菱形片15eの鈍角どうしが接近しており、それぞれの菱形の2つの対角線のうち短い方の対角線を延長した延長線が1点で交わるように設けられ、この延長線の交線が交わる点をとおり、X方向およびY方向に垂直な軸線まわりに3回の回転対称となっている。また複数の菱形片15eのうち少なくとも6つは菱形片15eの鋭角どうしが接近しており、それぞれの菱形の2つの対角線のうち長い方の対角線を延長した延長線が1点で交わるように設けられ、この延長線の交線が交わる点をとおり、X方向およびY方向に垂直な軸線まわりに6回の回転対称となっている。
【0125】
このように、各パターン片の形状および並び方の異なる図9のパターン層5は、図1〜図8のパターン層5に代えて用いることができる。このような構成であっても、前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。また本実施の形態では、パターン片を菱形としているが、平行四辺形としても同様の効果を達成することができる。
【0126】
図10は、本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Jの一部を示す正面図である。この実施の形態は、前述の図1〜図9の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明する。本実施の形態と、図1〜図9の実施の形態とでは、各パターン片の配列が異なる。本実施の形態のパターン体は、複数の菱形片15eと、複数の正方形片21を有する。正方形片21は、前述の第1基材表面が平面状となる基準状態において、正方形となるパターン片である。
【0127】
パターン体12では、1つの正方形片21の各辺にそれぞれ、菱形片15eの各辺を対向させて配置される。すなわち1つの正方形片21の1辺には、1つの菱形片15eの一辺が対向し、間隔Dをあけて設けられる。正方形片21と、菱形片15eとの対向する各辺の長さは、略等しく形成される。正方形片21の各辺に対向する辺を有する4つの菱形片15eは、相互に離間して設けられ、4回の回転対称性を有する。菱形片15eは、正方形片21の中央をとおりX方向およびY方向に垂直な軸線まわりに4回の回転対称となっている。
【0128】
このように、各パターン片の形状および並び方の異なる図10のパターン層5は、図1〜図9のパターン層5に代えて用いることができる。このような構成であっても、前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。また本実施の形態では、パターン片を菱形としているが、平行四辺形として、4つの菱形片15eに囲まれる領域ごとに、大きさの異なる2種類の正方形片を設ける構成としてもよい。
【0129】
図11は、本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Kの一部を示す正面図である。この実施の形態は、前述の図1〜図10の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明する。本実施の形態では、1つの正方形片21と、2つの六角形片22a,22bとが組合わされてパターン群17が構成される。六角形片22a,22bは、第1六角形片22aと第2六角形片22bとを有する。第1六角形片22aと第2六角形片22bとは、基準状態において、互いに向きは異なるが合同な長方形となるパターン片である。六角形片22a,22bは、前述の第1基材表面が平面状となる基準状態において、多角形となるパターン片であり、その各内角は180°以下であって、かつ正六角形を除く形状である。また第1および第2六角形片22a,22bは、それぞれがその中心をとおり、x方向およびy方向に平行な軸線まわりに2回の回転対称に形成される。六角形片22a,22bのうち、平行な2辺の長さ寸法は、第7寸法L7であり、その他の片の長さ寸法は第7寸法L7よりも小さい第8寸法L8(<L7)である。第7寸法L7の辺を長辺という。
【0130】
第1六角形片22aの長辺は、y方向に平行となり、正方形片21の一辺に対向する。第1六角形片22aの長辺と、この長辺に対向する正方形片21の一辺とは間隔Dをあけて配置される。また第2六角形片22bの長辺は、x方向に平行となり、正方形片21の一辺に対向する。第2六角形片22bの長辺と、この長辺に対向する正方形片21の一辺とは間隔Dをあけて配置される。第1六角形片22aの第2六角形片22bに対向する辺と、第2六角形片22bの第1六角形片22aに対向する辺とは、平行となり、間隔Dが設けられる。
【0131】
本実施の形態では、図11に示すように、各パターン群17が、同一の姿勢で、行列状に、x方向およびy方向に整列して並べられている。このようにパターン体12では、各パターン片21,22a,22bが、1つのパターン群17の並びを繰返すようにして、並べられており、パターン体12は並進対称性を有する。
【0132】
複数の第1および第2六角形片22a,22bは、相互に離間して設けられ、4回の回転対称性を有するように配置されている。第1および第2六角形片22a,22bは、正方形片21の中央をとおりX方向およびY方向に垂直な軸線まわりに4回の回転対称となっており、また隣接する4つの第1および第2六角形片22a,22bに囲まれる領域の中央をとおりX方向およびY方向に垂直な軸線まわりに4回の回転対称となっている。
【0133】
このように、各パターン片の並び方の異なる図11のパターン層5は、図1〜図10のパターン層5に代えて用いることができる。このような構成であっても、前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0134】
図12は、本発明の実施の他の形態の電磁波吸収体1Bの一部を示す断面図である。この実施の形態は、前述の図1〜図11の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明する。この実施の形態では、図12の上方側となる電磁波入射側から、吸収層4、パターン層5、誘電体層3と、導電性反射層2とが、この順序で積層して構成される。パターン層5は、図1〜図3のパターン層5であってもよいし、図4〜図11のいずれのパターン層5であってもよいし、各パターン片13,14,15a,15bがこれらの並び以外のパターン層5であってもよい。そのほかの構成は、前述の実施の形態と同様である。このようにパターン層5よりも電磁波入射側に吸収層4を設け、損失層7にパターン層5が挟まれる構成であってもよい。このような構成であっても、前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0135】
図13は、本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Cの一部を示す断面図である。この実施の形態は、前述の図1〜図11の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付し、異なる構成についてだけ説明する。この実施の形態では、パターン層5に対して図13の上方側となる電磁波入射側に、表面層6が形成される。表面層6は、磁性損失材および誘電損失材の少なくともいずれか一方である材料から成る層であって、損失層7を構成する。表面層6は、吸収層4および誘電体層3のいずれかであってもよいし、その他の層であってもよい。パターン層5は、図1〜図3のパターン層5であってもよいし、図4〜図11のいずれのパターン層5であってもよいし、各パターン片13,14,15a,15bがこれらの並び以外のパターン層5であってもよい。そのほかの構成は、前述の実施の形態と同様である。このようにパターン層5よりも電磁波入射側に表面層6を設け、損失層7にパターン層5が挟まれる構成であってもよい。このような構成であっても、前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0136】
本発明の電磁波吸収体は、パターン層と損失層とを備える構成であればよく、積層構成は、前述の図2、図12、図13に示す積層構成に限定されるものではない。本発明の実施の形態として、たとえば電磁波入射側から、誘電体層3、吸収層4、パターン層5、吸収層4、誘電体層3、反射層2の順に構成したものなども可能である。さらに本発明の実施の形態として、電磁波入射側からの順序が、パターン層5、吸収層4、反射層2の積層体、パターン層5、誘電体層3、反射層2の積層体などがある。後者は、吸収層4が誘電損失層である場合で、誘電体層3を別に設けない構成である。各層は単層であっても、複層であってもいいし、複層の場合はまったく同一の層である必要もない。これらに限定されるものではなく、様々な態様の積層体が含まれる。またこれらの積層体は主要な層を抽出したものであり、必ずしもこの通りに並ぶ必要もなく、例えば各層の間に接着層、粘着層、支持体層または保護層などが入っても同様の効果が得られる。また吸収層4および誘電体層3に接着剤もしくは粘着剤を配合することで、吸収層4および誘電体層3が接着層や粘着層を兼ねる構成とすることも可能である。
【0137】
さらに本発明の実施の形態として、電磁波吸収体は、図2、図12、図13に示す反射層2を含まず、このような反射層2を含まない電磁波吸収体が、電磁波入射側とは反対側の表面を、電磁波遮蔽性能を有する物体表面に対向させて、設置されるように構成されてもよい。電磁波遮蔽性能を有する物体は、たとえば反射層2と同様な構成を有してもよく、たとえば金属板などによって実現されてもよい。このような構成は、反射層2を有する電磁波吸収体と同様の電磁波吸収特性を得ることができる。
【0138】
前述の実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、構成を変更することができる。たとえばパターン体12は、吸収層4または誘電体層3など損失層7の表面に直接形成し、板状基材11を用いない構成としてもよい。また損失層7は、必ずしも吸収層4と誘電体層3との両方を備えている必要はなく、いずれか一方だけを備える構成、たとえば吸収層4だけを備え、誘電体層3を備えていない構成であってもよい。また損失層7は、吸収層4と誘電体層3とに加えて、1または複数の他の層を備える構成であってもよい。また反射層2のない構成もあり得る。前述の各実施の形態のうちの2つ以上の形態の構成を組合せてもよい。
【0139】
また前述の実施の形態は、パターン片の少なくとも一部が3回、4回または6回の回転対称性を有するように構成されているが、パターン片が、3回以上の回転対称性を有する構成であれば、同様の効果を達成することができる。特に3回、4回、および6回の回転対称性を有する構成とすると、回転対称性と並進対称性の両方を満足するようパターン配置させることが容易となるので好ましい。また回転対称に配置されるパターン片の形状は、長方形状、楕円形状、菱形および平行四辺形に限らず、各内角が180°以下であり、かつ正多角形状を除く多角形状に形成されればよい。また、パターン片のうちの少なくとも一部のパターン片が前述したような回転対称性を有していればよい。また、長方形片または楕円形片のみを有するパターン層においては、パターン面積Spを0.55以上とし、長方形片または楕円形片と、正方形片または円形片を組合せを有するパターン層においては、パターン面積Spを0.6以上となるように各パターン片の寸法を選択することが好ましい。
【0140】
以下、電磁界シミュレーションによる実施例について説明する。吸収体前面に対して電磁波を垂直に照射したときの反射特性をTLM法(Transmission Line Matrix:伝送線路行列法)にて評価した。図14は、実施例1の電磁波吸収体1の吸収特性を示すグラフである。表1は、実施例1の電磁波吸収体1の材料定数を示し、表2は、実施例1の吸収特性を示す。実施例1の電磁波吸収体1は、電磁波の入射側から、パターン層5、吸収層4、誘電体層3、反射層2の順に積層される図2の積層構成を有する。パターン体12は、図1および図3の構成を有し、その寸法は、小正方形片13の第1寸法L1=9.5mm、大正方形片の第2寸法L2=24mm、間隔D=4.5mmである。実施例1の電磁波吸収体1は、図14および表2に示すように、吸収対象となる電磁波の周波数が2.44GHzと、5.21GHzとなり、吸収特性が双峰性を示す。
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】

【0143】
実施例1の電磁波吸収体1の材料特性は、表1に示すが、2.45GHzの電磁波に対する値を述べると、次のとおりである。パターン層5は、接着剤(第1接着層)で吸収層4に接着されており、パターン層5の基材11と第1接着層と(表1には、支持・接着層と記載)は、誘電率の実部εr’=3かつ虚部εr’’=0.01であり、これら基材11と接着層とを合せた厚み寸法が0.16mmである。吸収層4は、比誘電率の実部εr’=12.86かつ虚部εr’’=1.29であり、比透磁率の実部μr’=1.46かつ虚部μr’’=0.43であり、厚み寸法が0.5mmである。誘電体層3は、比誘電率の実部εr’=4.22かつ虚部εr’’=0.12であり、厚み寸法が2mmである。誘電体層3と反射層2とは接着剤(第2接着層)で接着され、その第2接着層は、比誘電率の実部εr’=3かつ虚部εr’’=0.01であり、厚み寸法が0.05mmである。パターン層5のパターン体12および反射層2は、アルミニウム(Al)から成り、導電率σ=3.54e7である。
【0144】
図15は、実施例1の電磁波吸収体1の吸収特性と、1種類の寸法の正方形のパターン片を有する比較例1,2の電磁波吸収体の吸収特性とを比較して示すグラフである。図16は、比較例1および比較例2のパターン体の形状を示す正面図である。表3は、実施例1および比較例1,2の電磁波吸収体の吸収特性を示し、表4は、実施例1および比較例1,2のパターン面積と比パターン面積の比を示す。比較例1,2の電磁波吸収体は、実施例1の電磁波吸収体1と、パターン体12だけが異なる。比較例1のパターン体は、図16(1)に示すように、実施例1の大正方形片14だけが実施例1の間隔Dをあけて行列状に並ぶ構成である。比較例2のパターン体12は、図16(2)に示すように、実施例1のパターン体12から、小正方形片13および各長方形片15a,15bを取除いた構成である。
【0145】
【表3】

【0146】
【表4】

【0147】
図15および表4に示すように、単一寸法の正方形のパターン片14だけをもつ比較例1では、パターン片14が共振する2.3GHz帯と高次共振の7.1GHz帯に吸収帯域をもつが、高次共振周波数は基本共振周波数の約3倍の周波数帯域に現れるため高次共振による吸収帯域の制御に限度がある。また比較例2の場合も、比較例1の場合と共振周波数が異なるが、同様の課題を有する。本発明に従う実施例1の電磁波吸収体1は、2.4GHz帯(2.4GHz以上2.5GHz未満)と5.2GHz帯(5.2GHz以上5.3GHz未満)の2つの帯域に吸収ピークが存在している。
【0148】
図17は、実施例1の電磁波吸収体1の吸収特性と、2種類の寸法の正方形のパターン片を有する比較例3,4の電磁波吸収体の吸収特性とを比較して示すグラフである。図18は、比較例3および比較例4のパターン体の形状を示す正面図である。表5は、実施例1および比較例3,4の電磁波吸収体の吸収特性を示し、表6は、実施例1および比較例3,4のパターン面積と比パターン面積の比を示す。比較例3,4の電磁波吸収体は、実施例1の電磁波吸収体1と、パターン体12だけが異なる。比較例3のパターン体は、図18(1)に示すように、実施例1のパターン体12から、各長方形片15a,15bを取除いた構成である。比較例4のパターン体12は、図18(2)に示すように、実施例1のパターン体12の各長方形片15a,15bを、小正方形片14に置換えた構成である。
【0149】
【表5】

【0150】
【表6】

【0151】
図17および表5に示すように、大小の正方形のパターン片をもつ比較例3,4では、パターン片が共振する2.5GHz帯(2.5GHz以上2.6GHz未満)と5.7GHz帯(5.7GHz以上5.8GHz未満)に吸収ピークを有する双峰の吸収特性を示すが、パターンを密に配置するのに限界があり、ピーク吸収量は本発明に従う実施例1の電磁波吸収体1には及ばない。本発明によると、ピーク吸収量の大きな双峰の吸収帯域をもつ電磁波吸収体1を得ることができる。
【0152】
図19は、実施例2の電磁波吸収体1の吸収特性と、1種類の寸法の正方形のパターン片を有する比較例5の電磁波吸収体の吸収特性とを比較して示すグラフである。図20は、比較例5のパターン体の形状を示す正面図である。表7は、実施例1および比較例5の電磁波吸収体の吸収特性を示す。実施例2の電磁波吸収体1は、電磁波の入射側から、パターン層5、吸収層4、誘電体層3、反射層2の順に積層される実施例1と同様の図2の積層構成を有する。パターン体12は、図1および図3の構成を有し、その寸法は、小正方形片13の第1寸法L1=22mm、大正方形片の第2寸法L2=23.5mm、間隔D=5mmである。
【0153】
【表7】

【0154】
実施例2の電磁波吸収体1の材料特性は、実施例1と同様であり、2.45GHzの電磁波に対する値を述べると、次のとおりである。パターン層5は、接着剤(第1接着層)で吸収層4に接着されており、パターン層5の基材11と第1接着層と(表1には、支持・接着層と記載)は、誘電率の実部εr’=3かつ虚部εr’’=0.01であり、これら基材11と接着層とを合せた厚み寸法が0.16である。吸収層4は、比誘電率の実部εr’=12.86かつ虚部εr’’=1.29であり、比透磁率の実部μr’=1.46かつ虚部μr’’=0.43であり、厚み寸法が0.5mmである。誘電体層3は、比誘電率の実部εr’=4.22かつ虚部εr’’=0.12であり、厚み寸法が2mmである。誘電体層3と反射層2とは接着剤(第2接着層)で接着され、その第2接着層は、比誘電率の実部εr’=3かつ虚部εr’’=0.01であり、厚み寸法が0.05mmである。パターン層5のパターン体12および反射層2は、アルミニウム(Al)から成り、導電率σ=3.54e7である。
【0155】
比較例5の電磁波吸収体は、実施例2の電磁波吸収体1と、パターン体12だけが異なる。比較例5のパターン体は、図17に示すように、実施例2の大正方形片14だけが実施例2の間隔Dをあけて行列状に並ぶ構成である。
【0156】
図19および表7に示すように、単一寸法の正方形パターンをもつ比較例5では、パターンが共振する2.4GHz帯(2.4GHz以上2.5GHz未満)に吸収帯域をもつが、−15dB吸収帯域幅(−15dB以上の反射損失が得られる連続した周波数範囲の最も高い周波数から最も低い周波数を減産した値)は107MHzであり、本発明に従う実施例2の電磁波吸収体1の−15dB吸収帯域幅の119MHzには及ばない。実施例2のように、わずかに寸法の異なる2種類のパターン片を有する構成では、1種類の寸法のパターン片だけを有する構成に比べて、吸収可能な周波数帯域の広帯域化が可能である。本発明によると、吸収量の大きな帯域が広い電磁波吸収体1を得ることができる。
【0157】
図21は、実施例3〜7の電磁波吸収体1の吸収特性を示すグラフである。表8は、実施例3〜7の電磁波吸収体1の材料定数を示し、表9は、実施例3〜7の吸収特性を示す。表10は、実施例3〜7のパターン面積と比パターン面積の比を示す。
【0158】
【表8】

【0159】
【表9】

【0160】
【表10】

【0161】
実施例3〜7の電磁波吸収体1は、電磁波の入射側から、パターン層5、吸収層4、誘電体層3、反射層2の順に積層される図2の積層構成を有する。実施例3〜7の電磁波吸収体1の材料特性は、表8に示すが、2.45GHzの電磁波に対する値を述べると、次のとおりである。パターン層5は、接着剤(第1接着層)で吸収層4に接着されており、パターン層5の基材11と第1接着層と(表1には、支持・接着層と記載)は、誘電率の実部εr’=3かつ虚部εr’’=0.04であり、これら基材11と接着層とを合せた厚み寸法が0.16mmである。吸収層4は、比誘電率の実部εr’=23.23かつ虚部εr’’=0.76であり、比透磁率の実部μr’=1.20かつ虚部μr’’=0.47であり、厚み寸法が0.5mmである。誘電体層3は、比誘電率の実部εr’=4.49かつ虚部εr’’=0.10であり、厚み寸法が2mmである。誘電体層3の背面に反射層2が設置されるパターン層5のパターン体12および反射層2は、アルミニウム(Al)から成り、導電率σ=3.54e7である。
【0162】
実施例3のパターン体12は、図5の構成を有し、その寸法は、第1および第2長方形片15a,15bの第1寸法L1=21mm、第1および第2長方形片15a,15bの第2寸法L2=9.5mm、間隔D=1mmである。実施例3の電磁波吸収体1は、図21および表9に示すように、吸収対象となる電磁波の周波数が2.48GHzと、5.28GHzとなり、吸収特性が双峰性を示す。
【0163】
実施例4のパターン体12は、図6の構成を有し、その寸法は、第1および第2楕円形片15c,15dの第1寸法L1=27.5mm、第1および第2楕円形片15c,15dの第2寸法L2=10mm、間隔D=1mmである。実施例4の電磁波吸収体1は、図21および表9に示すように、吸収対象となる電磁波の周波数が2.45GHzと、5.21GHzとなり、吸収特性が双峰性を示す。
【0164】
実施例5のパターン体12は、図1の構成を有し、その寸法は、小正方形片13の第1寸法L1=8mm、大正方形片14の第2寸法L2=21mm、間隔D=2mmである。実施例5の電磁波吸収体1は、図21および表9に示すように、吸収対象となる電磁波の周波数が2.49GHzと、5.30GHzとなり、吸収特性が双峰性を示す。
【0165】
実施例6のパターン体12は、図7の構成を有し、その寸法は、小正方形片13の第1寸法L1=8.5mm、大正方形片14の第2寸法L2=22mm、間隔D=2mmであり、曲率半径Rは、3mmである。実施例6の電磁波吸収体1は、図21および表9に示すように、吸収対象となる電磁波の周波数が2.47GHzと、5.22GHzとなり、吸収特性が双峰性を示す。
【0166】
実施例7のパターン体12は、図8の構成を有し、その寸法は、小円形状片13aおよび第1および第2楕円形片15c,15dの第1寸法L1=9mm、大円形片14aおよび第1および第2楕円形片15c,15dの第2寸法L2=26mm、間隔D=2mmである。実施例7の電磁波吸収体1は、図21および表9に示すように、吸収対象となる電磁波の周波数が2.46GHzと、5.21GHzとなり、吸収特性が双峰性を示す。
【0167】
したがって、本発明に従う実施例3〜7の電磁波吸収体1は、2.4GHz帯(2.4GHz以上2.5GHz未満)と5.2GHz帯(5.2GHz以上5.3GHz以下)の2つの帯域に吸収ピークが存在しており、吸収特性が双峰性を示すことが判る。
【0168】
以下、フリースペース法による実施例について説明する。フリースペース法は、送信アンテナから電磁波を送信して、自由空間に置かれた測定試料である電磁波吸収体に平面波を照射し、反射波を受信アンテナで受信して吸収体の反射係数を得る測定方法である。今回は入射角10°のTE波、TM波両方について測定を実施した。使用した測定機器は、ネットワークアナライザー(アジレントテクノロジー社製商品名HP8720ES)であり、アンテナはダブルリジッドアンテナである。電磁波吸収体1である測定試料の矩形の各辺のサイズは500×500(mm)である。
【0169】
吸収体構成は表面側からパターン層5、損失層7、反射層2の構成で、各層は粘着層を介して接合される。パターン層は厚さが100μmのPETフィルムの基材と導電性パターンからなる。導電性パターンは銀ペーストからなる導電性インクを印刷することにより形成される。損失層7は吸収層4と誘電体層3から構成され、吸収層4はPVCに磁性損失材であるフェライトや誘電損失材である黒鉛からなり、誘電体層3はPVCからなり、吸収層4と誘電体層3は熱融着により一体化される。吸収層4の配合はPVC(株式会社カネカ、KS1700)100(phr)、フェライト(JFEフェライト株式会社製LD−M)235(phr)、黒鉛(日本黒鉛株式会社製青P 65(phr)をベースに可塑剤、分散剤、炭酸カルシウム等を添加している。吸収層4と誘電体層3の同軸管法測定による材料定数は、表11に示すが、2.45GHzの電磁波に対する値を述べると、次のとおりである。吸収層4は、比誘電率の実部εr’=23.31かつ虚部εr’’=0.93であり、比透磁率の実部μr’=1.29かつ虚部μr’’=0.6であり、厚み寸法が0.5mmである。誘電体層3は、比誘電率の実部εr’=4.56かつ虚部εr’’=0.09であり、厚み寸法が2mmである。反射層2は25μmPETフィルムの基材にアルミ蒸着を行い、アルミ蒸着面側に75μmのPVCからなる支持層を接着剤で貼りあわせたシートである。パターン層5の導電性インク側と損失層7の吸収層4側、損失層7の誘電体層3側と反射層2のPET基材側はそれぞれ30μmの両面粘着テープ(株式会社寺岡製作所製)を用いて張り合わされる。
【0170】
【表11】

【0171】
図22と表12は、実施例8、9および比較例6の入射角10°のTE波に対する吸収特性を示すグラフと表であり、図23と表13は、実施例8、9および比較例6の入射角10°のTM波に対する吸収特性を示すグラフと表である。
【0172】
図22、23において吸収特性を示す反射特性|ΔS21|とは金属板設置時の反射特性を基準(0dB)としたときの吸収体の反射特性であり、反射特性とは送信側アンテナから送信する電磁波の電力に対する受信側アンテナで受信する電磁波の電力比をデシベル表記したものである。
【0173】
【表12】

【0174】
【表13】

【0175】
実施例8のパターン形状は実施例5と同じく、パターン体12は、図1の構成を有し、その寸法は、小正方形片13の第1寸法L1=8mm、大正方形片14の第2寸法L2=21mm、間隔D=2mmである。実施例8の電磁波吸収体1は、図22,23および表12、13に示すように、吸収対象となる電磁波の周波数が2.49GHzと、5.29GHzとなり、吸収特性が双峰性を示す。
【0176】
実施例9のパターン形状は実施例6と同じく、パターン体12は、図7の構成を有し、その寸法は、小正方形片13の第1寸法L1=8.5mm、大正方形片14の第2寸法L2=22mm、間隔D=2mmであり、曲率半径Rは3mmである。実施例9の電磁波吸収体1は、図22,23および表12,13に示すように、吸収対象となる電磁波の周波数が2.53GHzと、5.21GHzとなり、吸収特性が双峰性を示す。
【0177】
比較例6のパターン層はアルミ蒸着による導電パターンであり、パターン形状は角部にRが付与されたR付正方形パターンと角部にRを付与されたR付十字形状パターンの組合せで、図24に示す構成を有する。その寸法は、十字長a2x,a2y=17.5mm、十字幅a1x,a1y=1.5mm、正方形寸法=20.5mm、間隔D=1.5mmであり、十字曲率半径Rは7.5mmで、正方形十字曲率半径Rは7mmある。比較例6の電磁波吸収体1は、図22,23および表12,13に示すように、吸収対象となる電磁波の周波数が2.45GHzのみで吸収特性が単峰性を示す。
【0178】
したがって、本発明に従う実施例8,9の電磁波吸収体1は、2.4GHz帯(2.4GHz以上2.5GHz未満)と5.2GHz帯(5.2GHz以上5.3GHz以下)の2つの帯域に吸収ピークが存在しており、吸収特性が双峰性を示すことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】本発明の実施の一形態の電磁波吸収体1の一部を示す正面図である。
【図2】電磁波吸収体1の一部を示す断面図である。
【図3】パターン体12のうち1つのパターン群17を拡大して示す正面図である。
【図4】本発明の実施の他の形態の電磁波吸収体1Aの一部を示す正面図である。
【図5】本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Dの一部を示す正面図である。
【図6】本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Eの一部を示す正面図である。
【図7】本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Fの一部を示す正面図である。
【図8】本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Gの一部を示す正面図である。
【図9】本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Hの一部を示す正面図である。
【図10】本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Jの一部を示す正面図である。
【図11】本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Kの一部を示す正面図である。
【図12】本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Bの一部を示す断面図である。
【図13】本発明の実施のさらに他の形態の電磁波吸収体1Cの一部を示す断面図である。
【図14】実施例1の電磁波吸収体1の吸収特性を示すグラフである。
【図15】実施例1の電磁波吸収体1の吸収特性と、1種類の寸法の正方形のパターン片を有する比較例1,2の電磁波吸収体の吸収特性とを比較して示すグラフである。
【図16】比較例1および比較例2のパターン体の形状を示す正面図である。
【図17】実施例1の電磁波吸収体1の吸収特性と、2種類の寸法の正方形のパターン片を有する比較例3,4の電磁波吸収体の吸収特性とを比較して示すグラフである。
【図18】比較例3および比較例4のパターン体の形状を示す正面図である。
【図19】実施例2の電磁波吸収体1の吸収特性と、1種類の寸法の正方形のパターン片を有する比較例5の電磁波吸収体の吸収特性とを比較して示すグラフである。
【図20】比較例5のパターン体の形状を示す正面図である。
【0180】
【図21】実施例3〜7の電磁波吸収体1の吸収特性を示すグラフである。
【図22】実施例8、9および比較例6の入射角10ーのTE波に対する吸収特性を示すグラフである。
【図23】実施例8、9および比較例6の入射角10ーのTM波に対する吸収特性を示すグラフである。
【図24】比較例6の導電パターンを示す平面図である。
【符号の説明】
【0181】
1,1A,1B,1C,1E,1F,1G,1H,1J,1K 電磁波吸収体
2 反射層
3 誘電体層
4 吸収層
5 パターン層
11 板状基材
12 パターン体
13 小正方形片
13a 小円形片
14 大正方形片
14a 大正方形片
15a,15b 長方形片
15c、15d 楕円形片
15e 菱形片
17 パターン群
21 正方形片
22a,22b 六角形片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料から成る導電性パターン体が形成されるパターン層であって、導電性パターン体は、相互に離間して設けられ、各内角が180°以下であり、かつ正多角形を除く多角形または楕円に形成され、かつ向きを異ならせて配置されているパターン片を一部に含み、並進対称性を有するパターン層と、
磁性損失材および誘電損失材の少なくともいずれか一方である材料から成る部分を有する損失層を少なくとも1層以上積層される構成を含むことを特徴とする電磁波吸収体。
【請求項2】
前記パターン片は、3回以上の回転対称性を有するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の電磁波吸収体。
【請求項3】
前記パターン片は、3回、4回または6回の回転対称性のうち少なくとも1つを有するように配置されることを特徴とする請求項2に記載の電磁波吸収体。
【請求項4】
前記パターン層は、パターン層全領域の面積を1とした場合、前記導電性パターン体が形成される領域の面積が0.55以上となる面積比を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項5】
前記パターン片と、正多角形または円に形成されるパターン片を組み合わせて配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項6】
正多角形を除く多角形に形成される前記パターン片は、各辺の長さ寸法が第1寸法以上第2寸法以下である長方形に形成され、
前記導電性パターン体は、一辺の長さ寸法が第1寸法である小さい正方形のパターン片と、一辺の長さ寸法が第1寸法より大きい第2寸法である大きい正方形のパターン片とをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の電磁波吸収体。
【請求項7】
前記長方形のパターン片は、第1寸法の2つの短辺と、第2寸法の2つの長辺とから成ることを特徴とする請求項6に記載の電磁波吸収体。
【請求項8】
前記小さい正方形のパターン片と前記大きい正方形のパターン片とが、前記小さい正方形のパターン片の一対角線と前記大きい正方形のパターン片の一対角線とを同一直線上に配置して並べられ、2つの前記長方形のパターン片が、短辺を前記小さい正方形のパターン片の一辺と対向させかつ長辺を前記大きい正方形のパターン片の一辺に対向させるようにそれぞれ並べられ、これら4つのパターン片を1群とするパターン群が並べられることを特徴とする請求項6または7に記載の電磁波吸収体。
【請求項9】
前記小さい正方形のパターン片の角部と、前記大きい正方形のパターン片の角部のうちの少なくとも1つ以上の角部が曲線状に形成されることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項10】
前記長方形のパターン片の角部のうちの少なくとも1つ以上の角部が曲線状に形成されることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項11】
前記パターン層は、パターン層全領域の面積を1とした場合、前記導電性パターン体が形成される領域の面積が0.6以上となる面積比を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項12】
前記損失層は、少なくとも磁性損失材から成る層を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項13】
前記損失層は、
少なくとも磁性損失材から成る層と、
少なくとも誘電損失材から成る層とを有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項14】
2つ以上の任意の異なる周波数の電磁波を吸収することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項15】
パターン層に複数のパターン片を含み、1めのパターン片による基本共振周波数および高次共振周波数が、他のパターン片のうちの少なくとも1つ以上のパターン片による基本共振周波数と異なることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項16】
300MHzから30GHzの電磁波のうち、いずれか一部の帯域の電磁波を吸収することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項17】
2.4GHz帯の電磁波を吸収するための電磁波吸収体であって、
総厚み寸法が5mm以下であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項18】
電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽性を有することを特徴とする請求項1〜17のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項19】
難燃性、準不燃性または不燃性を有することを特徴とする請求項1〜18のいずれか1つに記載の電磁波吸収体。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1つに記載の電磁波吸収体を備える建材。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1つに記載の電磁波吸収体を用いることによる電磁波吸収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−270793(P2008−270793A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85049(P2008−85049)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】