電磁波放射装置
【課題】スペクトル幅が狭い電磁波を放射する電磁波放射装置を提供する。
【解決手段】電磁波放射体が加熱機構に加熱され、電磁波放射体の放射面から電磁波が放射される。放射面には周期構造が露出する。周期構造においては、単位構造が周期方向に周期的に配列される。単位構造の各々は、負誘電率部及び正誘電率部を備える。負誘電率部の複素比誘電率の実部は負である。正誘電率部の複素比誘電率の実部は正である。負誘電率部及び正誘電率部は周期方向に交互に配列される。正誘電率部の各々により共振器が形成される。周期構造の周期は、当該共振器の共鳴周波数の電磁波の放射面における実効的な波長の自然数倍である。
【解決手段】電磁波放射体が加熱機構に加熱され、電磁波放射体の放射面から電磁波が放射される。放射面には周期構造が露出する。周期構造においては、単位構造が周期方向に周期的に配列される。単位構造の各々は、負誘電率部及び正誘電率部を備える。負誘電率部の複素比誘電率の実部は負である。正誘電率部の複素比誘電率の実部は正である。負誘電率部及び正誘電率部は周期方向に交互に配列される。正誘電率部の各々により共振器が形成される。周期構造の周期は、当該共振器の共鳴周波数の電磁波の放射面における実効的な波長の自然数倍である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波放射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属等からなる構造物が加熱された場合は、黒体放射により構造物の表面から電磁波が放射される。放射される電磁波の波長は、プランクの法則に従って広範囲に分布する。この電磁波の放射は、赤外線ランプ、白熱電球等において利用される。
【0003】
しかし、特許文献1及び2に示すように、周期構造が構造物の表面に露出する場合は、周期構造により電磁波の共振器が形成され、周期構造の周期の自然数分の1の波長を持つ電磁波が共振器に共鳴する。このため、周期構造が表面に露出する構造物が加熱された場合は、周期構造に共鳴する波長のスペクトル幅が狭い電磁波が構造物の表面から放射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−324126号公報
【特許文献2】国際公開第2007/139022号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術においては、放射される電磁波のスペクトル幅を十分に狭くすることが困難である。
【0006】
本発明は、この問題を解決するためになされる。本発明の目的は、スペクトル幅が狭い電磁波を放射する電磁波放射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電磁波放射装置に向けられる。
【0008】
本発明の第1の局面においては、電磁波放射体が加熱機構に加熱され、電磁波放射体の放射面から電磁波が放射される。放射面には周期構造が露出する。周期構造においては、単位構造が周期方向に周期的に配列される。単位構造の各々は、負誘電率部及び正誘電率部を備える。負誘電率部の複素比誘電率の実部は負である。正誘電率部の複素比誘電率の実部は正である。負誘電率部及び正誘電率部は周期方向に交互に配列される。正誘電率部の各々により共振器が形成される。周期構造の周期が共振器の共鳴周波数の電磁波の放射面における実効的な波長の自然数倍である。
【0009】
本発明の第2の局面は、本発明の第1の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第2の局面においては、電磁波放射体が基体部をさらに備える。基体部の複素比誘電率の実部は負である。負誘電率部は、基体部から突出し周期方向に垂直な方向へ延在する線状突起である。正誘電率部は、周期方向に垂直な方向に延在する線状溝である。2個の負誘電率部及び基体部により囲まれた正誘電率部の各々により共振器が形成される。正誘電率部の幅及び深さは、共鳴周波数の電磁波が共鳴するように決められる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、周期構造及び正誘電率部の各々により形成される共振器の両方に電磁波が共鳴し、スペクトル幅が狭い電磁波が放射される。
【0011】
これらの及びこれら以外の本発明の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面とともに考慮されたときに下記の本発明の詳細な説明によってより明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電磁波放射装置の斜視図である。
【図2】電磁波放射装置の断面図である。
【図3】電磁波放射体の断面図である。
【図4】電磁波放射体の断面図である。
【図5】共鳴の形を示す模式図である。
【図6】電磁波放射体の断面図である。
【図7】電磁波放射体の設計の手順を示すフローチャートである。
【図8】共鳴周波数の深さ依存性を示すグラフである。
【図9】共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図10】スペクトル幅の深さ依存性を示すグラフである。
【図11】共鳴スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(電磁波放射装置の概略)
図1及び図2の模式図は、電磁波放射装置の望ましい実施形態を示す。図1は斜視図である。図2は断面図である。図3の模式図は、電磁波放射体の断面を示す。
【0014】
図1及び図2に示すように、電磁波放射装置1000は、電磁波放射体1002及び加熱機構1004を備える。電磁波放射装置1000は「輻射光源」等とも呼ばれる。
【0015】
(電磁波放射体)
電磁波放射体1002は、電磁波を放射する構造物である。図1から図3までに示すように、電磁波放射体1002の放射面1006には、周期構造1008が露出する。周期構造1008においては、単位構造1010が周期方向D1に周期的に配列され、1次元格子が形成される。単位構造1010の各々は、負誘電率部1012及び正誘電率部1014を備える。負誘電率部1012は負の誘電率を持つ。正誘電率部1014は正の誘電率を持つ。負誘電率部1012の各々の内部における誘電率は、典型的には均一であるが、不均一であってもよい。正誘電率部1014の各々の内部における誘電率は、典型的には均一であるが、不均一であってもよい。周期構造1008は、典型的には平面に形成されるが、円周面等の非平面に形成されてもよい。例えば、白熱電球のフィラメントの表面に周期構造1008が形成されてもよい。
【0016】
負誘電率部1012は、基体部1016から突出し周期方向D1に垂直な方向D2に延在する線状突起である。正誘電率部1014は、方向D2に延在する線状溝である。基体部1016は、負の誘電率を持つ。負誘電率部1012の材質及び基体部1016の材質は、典型的には同じであるが、異なってもよい。基体部1016は、周期方向D1及び方向D2に平行に面状に広がる。
【0017】
負誘電率部1012及び正誘電率部1014は、周期方向D1に交互に配列される。正誘電率部1014は、隣接する2個の負誘電率部1012の間隙である。間隙が誘電体で満たされ、誘電体で満たされた間隙が正誘電率部1014とされてもよい。誘電体は、気体、液体及び固体のいずれでもよい。2個以上の負誘電率部が単位構造の各々に設けられてもよい。2個以上の正誘電率部が単位構造の各々に設けられてもよい。
【0018】
(共振器)
周期構造1008は、特定の波長の電磁波と共鳴する共振器となる。正誘電率部1014の各々は、放射面1006に向けて開かれた開口1020と基体部1016により閉鎖された底1022とを有し、2個の負誘電率部1012に挟まれる。基体部1016とは称しがたい構造物により底1022が閉塞されてもよい。2個の負誘電率部1012及び基体部1016に三方を囲まれ負の誘電率を持つ壁体に囲まれる正誘電率部1014の各々は、特定の周波数の電磁波を閉じ込め特定の周波数の電磁波と共鳴する共振器(以下では「単一共振器」という。)となる。電磁波放射体1002においては、周期構造1008の周期Pが単一共振器の共鳴周波数Fresの電磁波の放射面1006における実効的な波長λeの自然数倍になる。これにより、共鳴周波数Fresの電磁波が周期構造1008及び単一共振器の両方に共鳴する。電磁波放射体1002が加熱された場合は、共鳴周波数Fresにおいて分光放射輝度が極大になるスペクトル幅が狭い電磁波が放射面1006から放射される。
【0019】
(負の誘電率及び正の誘電率)
複素比誘電率εcは、屈折率n及び消衰定数κを用いて、式(1)であらわされる。
【0020】
【数1】
【0021】
物が負の誘電率を持つとは、その物の複素比誘電率εcの実部n2−κ2が負であることを意味する。消衰係数κが屈折率nより大きい場合に複素比誘電率εcの実部は負になる。
【0022】
負の誘電率を持つ物質は、金属、合金等の導電体である。望ましくは、負の誘電率を持つ金属として金(Au)が用いられる。金には、酸化されにくいという利点がある。金に代えて、アルミニウム(Al)、銅(Cu)又は銀(Ag)が用いられてもよい。これらの金属には、導電性が良好であり、理想金属に近いという利点がある。金に代えて、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)又はオスミウム(Os)が用いられてもよい。これらの金属には、熱的性質及び化学的性質が良好であり、高温でも酸化されにくく、接触する物と反応しにくいという利点がある。不純物が添加されn型半導体となるように不純物がドープされたGaAs等の可視光に対して半導体である物質も、遠赤外領域からTHz領域までにおいては、負の誘電率を持ち、導電体とみなされる。
【0023】
物が正の誘電率を持つとは、その物の複素比誘電率εcの実部n2−κ2が正であることを意味する。消衰係数κが屈折率nより小さい場合に複素比誘電率εcの実部は正になる。
【0024】
正の誘電率を持つ物質は、空気等の透明な誘電体である。望ましくは、正の誘電率を持つ物質として、赤外域においてはSi(屈折率3.48)、SiOx(屈折率1.4〜3.48)又はAl2O3(屈折率1.8)が用いられ、波長400〜800nmの可視域においてはGaAs(屈折率3.3)、Si(屈折率3.7)、Ta2O5(屈折率2.5)又はSiOx(屈折率1.4〜3.7)が用いられる。これらに代えて、ダイヤモンド、III-V族半導体、II-VI族半導体、炭化シリコン(SiC)、フッ化カルシウム(CaF)、窒化シリコン(Si3N4)又は酸化チタン(TiO2)が用いられてもよい。ダイヤモンドは、可視域の全体において用いられる。III-V族半導体には、AlGaAS、GaN、GaAsP、GaP、InGaN、AlGaInP等がある。AlGaASは、近赤外域及び赤色域において用いられる。GaNは、緑色域及び青色域において用いられる。GaAsPは、赤色域、橙色域及び青色域において用いられる。GaPは、赤色域、黄色域及び緑色域において用いられる。InGaNは、青緑色域及び青色域において用いられる。AlGaInPは、橙色域、黄緑色域、黄色域及び緑色域において用いられる。II-VI族半導体には、ZnSe等がある。ZnSeは、青色域において用いられる。屈折率の選択の範囲を広げるために、TiO2、SiN、ZnS等の複数の物質が組み合わされて用いられてもよく、フォトニック結晶構造を持つ材料が用いられてもよい。真空の間隙も正誘電率部1014となりうる。
【0025】
(実効的な波長)
共鳴周波数Fresの電磁波の実効的な波長λeは、共鳴周波数Fresの電磁波が存在する場所の屈折率により決まる。また、共鳴周波数Fresの電磁波が周期構造1008に共鳴する場合は、正誘電率部1014及び放射面1006の近傍に共鳴周波数Fresの電磁波の大部分が存在する。このため、実効的な波長λeは、正誘電率部1014の屈折率、放射面1006の近傍の屈折率及び正誘電率部1014が周期構造1008に占める割合に依存する。
【0026】
例えば、電磁波放射体1002が真空中に設置され、正誘電率部1014が真空の間隙であり、放射面1006の近傍が真空である場合は、実効的な波長λeは、真空中における波長λ0に一致する。
【0027】
電磁波放射体1002が空気中に設置され、正誘電率部1014が空気で満たされた間隙であり、放射面1006の近傍が空気で満たされる場合は、実効的な波長λeは、真空中における波長λ0に一致するとみなしてよい。
【0028】
図4の模式図(断面図)に示すように放射面1006が屈折率nの被覆物1018で被覆され、正誘電率部1014が屈折率nの被覆物1018で満たされた間隙であり、放射面1006の近傍が屈折率nの被覆物1018で満たされる場合は、実効的な波長λeは、真空中における波長λ0を屈折率nで除する(λ0/n)ことにより得られる。電磁波放射体1002が屈折率nの気体中又は液体中に設置される場合も同じである。
【0029】
フォトニック結晶構造等の微細構造が放射面1006に設けられ、実効的な波長λeが真空中の波長λ0からずれる場合もある。この場合は、放射面1006における実効的な屈折率が数値計算等により求められる。実効的な波長λeは、真空中における波長λ0を実効的な屈折率nで除する(λ0/n)ことにより得られる。
【0030】
(正誘電率部への共鳴)
線状溝が延在する方向D2に垂直な断面における正誘電率部1014の断面形状(以下では単に「断面形状」という。)が矩形である場合は、正誘電率部1014の幅T及び深さD、光速c、正誘電率部1014の屈折率n、幅方向の共鳴次数m、深さ方向の共鳴次数l並びに開放端の補正項Δφを用いて、単一共振器の共鳴周波数Fresは、式(2)であらわされる。正誘電率部1014の幅Dは、周期方向D1についての正誘電率部1014の寸法である。正誘電率部1014の深さDは、周期方向D1及び線状溝が延在する方向D2に垂直な方向についての正誘電率部1014の寸法である。正誘電率部1014の深さDは、開口1020から底1022までの距離である。
【0031】
【数2】
【0032】
式(2)は、負誘電率部1012及び基体部1016の表面において電界の接線方向成分が零になること及び開口1020の近傍に電界の腹が位置するという共鳴条件から導かれる。共鳴次数m及びlによって共鳴の形は定義される。補正項Δφは、開口1020からの電界の腹の実効的なずれを反映し、数値計算により求められる。
【0033】
正誘電率部1014の幅T及び深さDは、共鳴次数m及びlの組み合わせのいずれかにおいて共鳴周波数Fresが目標とする発光ピーク周波数Fに一致するように決定される。
【0034】
(共鳴の形)
図5の模式図は、共鳴次数mが0又は1であり、共鳴次数lが1又は2である場合の共鳴の形を示す。図5には、電界の腹が明るい部分になり電界の節が暗い部分になるように正誘電率部1014の内部における電界の分布が描かれる。
【0035】
(正誘電率部の幅及び深さ)
図6の模式図(断面図)に示すように正誘電率部1014の断面形状が台形であってもよい。正誘電率部1014の断面形状が台形である場合は、正誘電率部1014の平均的な幅T及び正誘電率部1014の深さDが定義される。正誘電率部1014の平均的な幅T及び正誘電率部1014の深さDは、共鳴次数m及びlの組み合わせのいずれかにおいて共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fに一致するように決定される。
【0036】
より一般的には、正誘電率部1014の幅が一定でない場合は正誘電率部1014の平均的な幅T及び正誘電率部1014の深さDが定義され、正誘電率部1014の平均的な幅T及び正誘電率部1014の深さDは、共鳴次数m及びlの組み合わせのいずれかにおいて共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fに一致するように決定される。
【0037】
正誘電率部1014の深さが一定でない場合は正誘電率部1014の幅T及び正誘電率部1014の平均的な深さDが定義され、正誘電率部1014の幅T及び正誘電率部1014の平均的な深さDは、共鳴次数m及びlの組み合わせのいずれかにおいて共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fに一致するように決定される。
【0038】
正誘電率部1014の幅及び深さが一定でない場合は正誘電率部1014の平均的な幅T及び正誘電率部1014の平均的な深さDが定義され、正誘電率部1014の平均的な幅T及び正誘電率部1014の平均的な深さDは、共鳴次数m及びlの組み合わせのいずれかにおいて共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fに一致するように決定される。
【0039】
正誘電率部1014の断面形状が与えられた場合の単一共振器の共鳴周波数Fresは、例えば、有限差分時間領域法(FDTD)法等により計算される。
【0040】
(加熱機構)
加熱機構1004は、電磁波放射体1002に熱エネルギーを与え、電磁波放射体1002を加熱する。加熱機構1004は、セラミックヒーター、加熱コイル、レーザー加熱機構、マイクロ波加熱機構等である。加熱機構1004が、電磁波放射体1002に電流を流し電磁波放射体1002を発熱させる機構であってもよい。電磁波放射体1002は、望ましくは、プランクの法則から導かれる分光放射輝度が極大になる周波数が発光ピーク周波数Fに近づく温度にまで加熱され、さらに望ましくは、プランクの法則から導かれる分光放射輝度が極大になる周波数が発光ピーク周波数Fに一致する温度にまで加熱される。
【0041】
(電磁波放射体の設計の手順)
図7のフローチャートは、電磁波放射体の設計の手順を示す。
【0042】
(発光ピーク周波数の設定)
電磁波放射体1002の設計においては、目標とする発光ピーク周波数Fが設定される(ステップS101)。発光ピーク周波数Fは、望ましくは、電磁波放射体1002から放射される電磁波が赤外光又は可視光となるように設定される。
【0043】
(正誘電率部の幅及び深さの決定)
発光ピーク周波数Fが設定された後に、単一共振器の共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fに一致するように(Fres=F)正誘電率部1014の幅T及び深さDが決定される(ステップS102)。正誘電率部1014の幅T及び深さDが与えられた場合の共鳴周波数Fresは、式(2)から求められる。より正確な共鳴周波数Fresを求めるために、数値計算が併用されてもよい。数値計算のみから共鳴周波数Fresが求められてもよい。
【0044】
数値計算が併用される場合は、様々な周波数の光を含む広帯域光で1個の単一共振器が励振される数値計算モデルが作成され、共鳴周波数Fresが特定される。数値計算法にはFDTD法、厳密結合波解析法(RCWA)法、有限要素法等がある。また、式(2)から求められた結果を数値計算により求められた結果にフィッティングすることにより、補正項Δφが決定される。例えば、補正項Δφの候補値を変化させながら式(2)から求められた結果と数値計算により求められた結果とが比較され、式(2)から求められた結果と数値計算により求められた結果とが最も近づく候補値が補正項Δφの値として採用される。
【0045】
正誘電率部1014の幅Tは、望ましくは、実効的な波長λeの1/2以上である。正誘電率部1014の幅Tが実効的な波長λeの1/2以上である場合は、光が正誘電率部1014に侵入しやすくなり、周期構造1008及び単一共振器への電磁波の共鳴が強くなり、スペクトル幅が狭くなる。
【0046】
(実効的な波長の決定)
発光ピーク周波数Fが設定された後に、放射面1006における発光ピーク周波数F(共鳴周波数Fres)の光の実効的な波長λeが決定される(ステップS103)。
【0047】
(周期の決定)
実効的な波長λeが決定された後に、周期Pが実効的な波長λeの自然数倍に決定される(ステップS104)。典型的には、周期Pは実効的な波長λeに一致させられる。これにより、発光ピーク周波数Fの光が周期構造1008に共鳴する。
【0048】
この設計の手順により、共鳴周波数Fresの光が周期構造1008及び単一共振器の両方に共鳴し、発光ピーク周波数Fのスペクトル幅が狭い光が放射面1006から放射される。
【0049】
(電磁波放射体の設計の変更の手順)
負誘電率部1012及び正誘電率部1014の材質が同一のまま正誘電率部1014の幅T及び深さDがγ倍になった場合は共鳴周波数Fresが1/γ倍になる。このことは、式(2)から導かれる。また、共鳴周波数Fresが1/γ倍になった場合は、実効的な波長λeはγ倍になる。したがって、発光ピーク周波数Fにおける設計が既に存在する場合は、正誘電率部1014の幅TをT/γへ置き換え、正誘電率部1014の深さDをD/γへ置き換え、周期PをP/γへ置き換えることにより、発光ピーク周波数γFにおける設計が完了する。より一般的には、発光ピーク周波数Fにおける設計が既に存在する場合は、周期構造1008の断面形状を相似拡大又は相似縮小することにより、発光ピーク周波数γFにおける設計が完了する。したがって、第1の発光ピーク周波数における設計が存在する場合は、第2の発光ピーク周波数における設計が第1の発光ピーク周波数における設計から容易に得られる。
【0050】
より一般的に説明すると、負誘電率部1012及び正誘電率部1014の材質が決定された場合は、発光ピーク周波数F及び共鳴周波数Fresが一致する正誘電率部1014の幅T及び深さDの比率が式(2)等により決定される。設計の変更においては、当該比率が維持され、正誘電率部1014の幅T及び深さDが倍率γで除される。また、周期Pも倍率γで除される。これにより、発光ピーク周波数Fがγ倍になる。
【0051】
(設計例1)
設計例1は、上記の電磁波放射体の設計の手順に従った設計に関する。
【0052】
設計例1においては、発光ピーク周波数Fが60THzに設定される。設計例1においては、負誘電率部1012及び基体部1016が金からなり、電磁波放射体1002が空気中に設置され、正誘電率部1014が空気で満たされた間隙であり、放射面1006の近傍が空気で満たされる場合が検討される。
【0053】
金の複素比誘電率は、60THzにおいて、−1284+i252である。金の複素比誘電率の虚部から理解されるように、金の導電率は60THzにおいて1×106S/mであり、金は60THzにおいて理想金属であるとみなしてよい。
【0054】
図8のグラフは、共鳴周波数Fres(縦軸)の正誘電率部1014の深さD(横軸)への依存性を示す。図8のグラフには、正誘電率部1014の幅Tが2.6μmに固定され正誘電率部1014の深さDが変化させられた場合の共鳴周波数Fresの変化が示される。図8のグラフには、FDTD法により計算された共鳴周波数Fresが点で示され、式(2)から計算された共鳴周波数Fresが線で示される。式(2)から求められた共鳴周波数Fresは、FDTD法により求められた共鳴周波数Fresにフィッティングされ、補正項Δφは−150°に設定される。
【0055】
図8のグラフからは、正誘電率部1014の深さDにより共鳴周波数Fresが制御されることが理解される。また、図8のグラフからは、正誘電率部1014の幅Tが2.6μmである場合は、共鳴周波数Fresを発光ピーク周波数の60THzに一致させることができる共鳴モードのひとつは、共鳴次数mが0であり共鳴次数lが2であるFres[0,2]であることが理解される。さらに、図8のグラフからは、正誘電率部1014の幅Tが2.6μmである場合は、共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fの60THzに一致するのは、正誘電率部1014の深さDが2.7μmである場合であることが理解される。したがって、正誘電率部1014の幅Tは2.6μmに決定され、正誘電率部1014の深さDは2.7μmに決定される。正誘電率部1014の深さDが固定され、共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fの60THzに一致する正誘電率部1014の幅Tが決定されてもよい。
【0056】
60THzの光の真空中の波長は5μmである。
【0057】
空気の複素比誘電率は、任意の周波数において、1であるとみなしてよい。また、電磁波放射体1002が空気中に設置され、正誘電率部1014が空気で満たされた間隙であり、放射面1006の近傍が空気で満たされる場合が検討されているので、放射面1006における60THzの光の実効的な波長λeは、真空中の波長λ0と同じ5μmに決定される。したがって、周期Pは5μmに決定される。
【0058】
図9のグラフは、設計例1の共鳴スペクトルを示す。図9のグラフには、吸収率(縦軸)の波長(横軸)への依存性が示される。吸収率は、RCWA法により計算される。RCWA法による吸収率の計算においては、無限個の単位構造1010が周期的に配列された電磁波放射体1002の放射面1006に垂直に様々な周波数の光が照射され広帯域の光に対する吸収率が求められる数値計算モデルが作成され、線状突起及び線状溝が延在する方向D2に偏光する光の吸収率が計算される。
【0059】
図9に示すように、設計例1の共鳴スペクトルにおいては、スペクトル波長幅(半値全幅)は10nmとなり、発光ピーク波長は5μmとなった。
【0060】
共鳴の鋭さは、発光ピーク波長をスペクトル波長幅で除した値であるQ値で表される。設計例1のQ値は500である。
【0061】
比較のために、国際公開第2007/139022号の図52から図54までのグラフに示された共鳴スペクトルから求められたQ値を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示すQ値は、16〜32であり、設計例1より著しく小さい。すなわち、設計例1においては著しく大きいQ値が得られ、スペクトル幅が狭い光を放射する電磁波放射体1002が得られる。
【0064】
図10のグラフは、スペクトル波長幅Δλ(縦軸)の正誘電率部1014の深さD(横軸)への依存性を示す。図10には、正誘電率部1014の深さDを上記の2.7μmからずらした場合のスペクトル波長幅Δλが示される。
【0065】
図10に示すように、正誘電率部1014の深さDが上記の2.7μmからずらされた場合は、スペクトル波長幅Δλが広くなる。
【0066】
(設計例2)
設計例2は、上記の電磁波放射体の設計の手順に従った設計に関する。
【0067】
設計例2においては、発光ピーク周波数Fが50THzに設定される。設計例2においても、負誘電率部1012及び基体部1016が金からなり、電磁波放射体1002が空気中に設置され、正誘電率部1014が空気で満たされた間隙であり、放射面1006の近傍が空気で満たされる場合が検討される。
【0068】
屈折率nが1.0であり共鳴次数mが0であり共鳴次数lが2である場合に共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fの50THzに一致する正誘電率部1014の幅T及び深さDが決定される。
【0069】
正誘電率部1014に光を十分に侵入させるために正誘電率部1014の幅Tが実効的な波長λeの1/2以上である3.1μmに決定された場合は、式(2)から正誘電率部1014の深さDが3.2μmに決定される。
【0070】
50THzの光の真空中の波長λ0は6μmである。50THzの光の放射面1006における実効的な波長λeは6μmである。したがって、周期Pは6μmに決定される。
【0071】
図11のグラフは、設計例2の共鳴スペクトルを示す。図11のグラフには、吸収率(縦軸)の波長(横軸)への依存性が示される。吸収率は、設計例1の場合と同様に計算される。
【0072】
図11に示すように、設計例2の共鳴スペクトルにおいては、スペクトル波長幅(半値全幅)は6nmとなり、発光ピーク波長Fは6μmとなった。設計例2の場合は、Q値は1000である。設計例2においても著しく大きいQ値が得られ、スペクトル幅が狭い電磁波を放射する電磁波放射体1002が得られる。
【0073】
(設計例3〜7)
設計例3〜7は、上記の電磁波放射体の設計の手順に従った設計に関する。
【0074】
表2は、発光ピーク周波数Fが30〜70THzに設定された設計例3〜7の設計結果を示す。共鳴次数mは0とし、共鳴次数lは2とした。設計例3〜7においても、正誘電率部1014の幅Tは実効的な波長λeの1/2以上に決定される。
【0075】
【表2】
【0076】
設計例3〜7においても著しく大きいQ値が得られ、スペクトル幅が狭い電磁波を放射する電磁波放射体1002が得られる。
【0077】
(設計例8〜12)
設計例8〜12は、上記の電磁波放射体の設計の手順に従った設計の例に関する。
【0078】
表3は、発光ピーク周波数Fが30〜70THzに設定された設計例8〜12の設計結果を示す。共鳴次数mは0とし、共鳴次数lは3とした。設計例8〜12においても、正誘電率部1014の幅Tは実効的な波長λeの1/2以上に決定される。
【0079】
【表3】
【0080】
共鳴モードがFres[0,3]へ変更された設計例8〜12においても著しく大きいQ値が得られ、スペクトル幅が狭い電磁波を放射する電磁波放射体1002が得られる。
【0081】
(設計例13〜16)
設計例13〜16は、上記の電磁波放射体の設計の変更の手順に従った設計の変更に関する。
【0082】
表4は、γ=1.5(設計例13)、2.0(設計例14)、2.5(設計例15)及び3.0(設計例16)の設計の変更例を示す。元の設計は設計例6である。
【0083】
【表4】
【0084】
設計例13〜16においても著しく大きいQ値が得られ、スペクトル幅が狭い電磁波を放射する電磁波放射体1002が得られる。
【0085】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において例示であり、この発明は上記の説明に限定されない。例示されない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定されうる。
【符号の説明】
【0086】
1000 電磁波放射装置
1002 電磁波放射体
1004 加熱機構
1006 放射面
1008 周期構造
1010 単位構造
1012 負誘電率部
1014 正誘電率部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波放射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属等からなる構造物が加熱された場合は、黒体放射により構造物の表面から電磁波が放射される。放射される電磁波の波長は、プランクの法則に従って広範囲に分布する。この電磁波の放射は、赤外線ランプ、白熱電球等において利用される。
【0003】
しかし、特許文献1及び2に示すように、周期構造が構造物の表面に露出する場合は、周期構造により電磁波の共振器が形成され、周期構造の周期の自然数分の1の波長を持つ電磁波が共振器に共鳴する。このため、周期構造が表面に露出する構造物が加熱された場合は、周期構造に共鳴する波長のスペクトル幅が狭い電磁波が構造物の表面から放射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−324126号公報
【特許文献2】国際公開第2007/139022号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術においては、放射される電磁波のスペクトル幅を十分に狭くすることが困難である。
【0006】
本発明は、この問題を解決するためになされる。本発明の目的は、スペクトル幅が狭い電磁波を放射する電磁波放射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電磁波放射装置に向けられる。
【0008】
本発明の第1の局面においては、電磁波放射体が加熱機構に加熱され、電磁波放射体の放射面から電磁波が放射される。放射面には周期構造が露出する。周期構造においては、単位構造が周期方向に周期的に配列される。単位構造の各々は、負誘電率部及び正誘電率部を備える。負誘電率部の複素比誘電率の実部は負である。正誘電率部の複素比誘電率の実部は正である。負誘電率部及び正誘電率部は周期方向に交互に配列される。正誘電率部の各々により共振器が形成される。周期構造の周期が共振器の共鳴周波数の電磁波の放射面における実効的な波長の自然数倍である。
【0009】
本発明の第2の局面は、本発明の第1の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第2の局面においては、電磁波放射体が基体部をさらに備える。基体部の複素比誘電率の実部は負である。負誘電率部は、基体部から突出し周期方向に垂直な方向へ延在する線状突起である。正誘電率部は、周期方向に垂直な方向に延在する線状溝である。2個の負誘電率部及び基体部により囲まれた正誘電率部の各々により共振器が形成される。正誘電率部の幅及び深さは、共鳴周波数の電磁波が共鳴するように決められる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、周期構造及び正誘電率部の各々により形成される共振器の両方に電磁波が共鳴し、スペクトル幅が狭い電磁波が放射される。
【0011】
これらの及びこれら以外の本発明の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面とともに考慮されたときに下記の本発明の詳細な説明によってより明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電磁波放射装置の斜視図である。
【図2】電磁波放射装置の断面図である。
【図3】電磁波放射体の断面図である。
【図4】電磁波放射体の断面図である。
【図5】共鳴の形を示す模式図である。
【図6】電磁波放射体の断面図である。
【図7】電磁波放射体の設計の手順を示すフローチャートである。
【図8】共鳴周波数の深さ依存性を示すグラフである。
【図9】共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図10】スペクトル幅の深さ依存性を示すグラフである。
【図11】共鳴スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(電磁波放射装置の概略)
図1及び図2の模式図は、電磁波放射装置の望ましい実施形態を示す。図1は斜視図である。図2は断面図である。図3の模式図は、電磁波放射体の断面を示す。
【0014】
図1及び図2に示すように、電磁波放射装置1000は、電磁波放射体1002及び加熱機構1004を備える。電磁波放射装置1000は「輻射光源」等とも呼ばれる。
【0015】
(電磁波放射体)
電磁波放射体1002は、電磁波を放射する構造物である。図1から図3までに示すように、電磁波放射体1002の放射面1006には、周期構造1008が露出する。周期構造1008においては、単位構造1010が周期方向D1に周期的に配列され、1次元格子が形成される。単位構造1010の各々は、負誘電率部1012及び正誘電率部1014を備える。負誘電率部1012は負の誘電率を持つ。正誘電率部1014は正の誘電率を持つ。負誘電率部1012の各々の内部における誘電率は、典型的には均一であるが、不均一であってもよい。正誘電率部1014の各々の内部における誘電率は、典型的には均一であるが、不均一であってもよい。周期構造1008は、典型的には平面に形成されるが、円周面等の非平面に形成されてもよい。例えば、白熱電球のフィラメントの表面に周期構造1008が形成されてもよい。
【0016】
負誘電率部1012は、基体部1016から突出し周期方向D1に垂直な方向D2に延在する線状突起である。正誘電率部1014は、方向D2に延在する線状溝である。基体部1016は、負の誘電率を持つ。負誘電率部1012の材質及び基体部1016の材質は、典型的には同じであるが、異なってもよい。基体部1016は、周期方向D1及び方向D2に平行に面状に広がる。
【0017】
負誘電率部1012及び正誘電率部1014は、周期方向D1に交互に配列される。正誘電率部1014は、隣接する2個の負誘電率部1012の間隙である。間隙が誘電体で満たされ、誘電体で満たされた間隙が正誘電率部1014とされてもよい。誘電体は、気体、液体及び固体のいずれでもよい。2個以上の負誘電率部が単位構造の各々に設けられてもよい。2個以上の正誘電率部が単位構造の各々に設けられてもよい。
【0018】
(共振器)
周期構造1008は、特定の波長の電磁波と共鳴する共振器となる。正誘電率部1014の各々は、放射面1006に向けて開かれた開口1020と基体部1016により閉鎖された底1022とを有し、2個の負誘電率部1012に挟まれる。基体部1016とは称しがたい構造物により底1022が閉塞されてもよい。2個の負誘電率部1012及び基体部1016に三方を囲まれ負の誘電率を持つ壁体に囲まれる正誘電率部1014の各々は、特定の周波数の電磁波を閉じ込め特定の周波数の電磁波と共鳴する共振器(以下では「単一共振器」という。)となる。電磁波放射体1002においては、周期構造1008の周期Pが単一共振器の共鳴周波数Fresの電磁波の放射面1006における実効的な波長λeの自然数倍になる。これにより、共鳴周波数Fresの電磁波が周期構造1008及び単一共振器の両方に共鳴する。電磁波放射体1002が加熱された場合は、共鳴周波数Fresにおいて分光放射輝度が極大になるスペクトル幅が狭い電磁波が放射面1006から放射される。
【0019】
(負の誘電率及び正の誘電率)
複素比誘電率εcは、屈折率n及び消衰定数κを用いて、式(1)であらわされる。
【0020】
【数1】
【0021】
物が負の誘電率を持つとは、その物の複素比誘電率εcの実部n2−κ2が負であることを意味する。消衰係数κが屈折率nより大きい場合に複素比誘電率εcの実部は負になる。
【0022】
負の誘電率を持つ物質は、金属、合金等の導電体である。望ましくは、負の誘電率を持つ金属として金(Au)が用いられる。金には、酸化されにくいという利点がある。金に代えて、アルミニウム(Al)、銅(Cu)又は銀(Ag)が用いられてもよい。これらの金属には、導電性が良好であり、理想金属に近いという利点がある。金に代えて、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)又はオスミウム(Os)が用いられてもよい。これらの金属には、熱的性質及び化学的性質が良好であり、高温でも酸化されにくく、接触する物と反応しにくいという利点がある。不純物が添加されn型半導体となるように不純物がドープされたGaAs等の可視光に対して半導体である物質も、遠赤外領域からTHz領域までにおいては、負の誘電率を持ち、導電体とみなされる。
【0023】
物が正の誘電率を持つとは、その物の複素比誘電率εcの実部n2−κ2が正であることを意味する。消衰係数κが屈折率nより小さい場合に複素比誘電率εcの実部は正になる。
【0024】
正の誘電率を持つ物質は、空気等の透明な誘電体である。望ましくは、正の誘電率を持つ物質として、赤外域においてはSi(屈折率3.48)、SiOx(屈折率1.4〜3.48)又はAl2O3(屈折率1.8)が用いられ、波長400〜800nmの可視域においてはGaAs(屈折率3.3)、Si(屈折率3.7)、Ta2O5(屈折率2.5)又はSiOx(屈折率1.4〜3.7)が用いられる。これらに代えて、ダイヤモンド、III-V族半導体、II-VI族半導体、炭化シリコン(SiC)、フッ化カルシウム(CaF)、窒化シリコン(Si3N4)又は酸化チタン(TiO2)が用いられてもよい。ダイヤモンドは、可視域の全体において用いられる。III-V族半導体には、AlGaAS、GaN、GaAsP、GaP、InGaN、AlGaInP等がある。AlGaASは、近赤外域及び赤色域において用いられる。GaNは、緑色域及び青色域において用いられる。GaAsPは、赤色域、橙色域及び青色域において用いられる。GaPは、赤色域、黄色域及び緑色域において用いられる。InGaNは、青緑色域及び青色域において用いられる。AlGaInPは、橙色域、黄緑色域、黄色域及び緑色域において用いられる。II-VI族半導体には、ZnSe等がある。ZnSeは、青色域において用いられる。屈折率の選択の範囲を広げるために、TiO2、SiN、ZnS等の複数の物質が組み合わされて用いられてもよく、フォトニック結晶構造を持つ材料が用いられてもよい。真空の間隙も正誘電率部1014となりうる。
【0025】
(実効的な波長)
共鳴周波数Fresの電磁波の実効的な波長λeは、共鳴周波数Fresの電磁波が存在する場所の屈折率により決まる。また、共鳴周波数Fresの電磁波が周期構造1008に共鳴する場合は、正誘電率部1014及び放射面1006の近傍に共鳴周波数Fresの電磁波の大部分が存在する。このため、実効的な波長λeは、正誘電率部1014の屈折率、放射面1006の近傍の屈折率及び正誘電率部1014が周期構造1008に占める割合に依存する。
【0026】
例えば、電磁波放射体1002が真空中に設置され、正誘電率部1014が真空の間隙であり、放射面1006の近傍が真空である場合は、実効的な波長λeは、真空中における波長λ0に一致する。
【0027】
電磁波放射体1002が空気中に設置され、正誘電率部1014が空気で満たされた間隙であり、放射面1006の近傍が空気で満たされる場合は、実効的な波長λeは、真空中における波長λ0に一致するとみなしてよい。
【0028】
図4の模式図(断面図)に示すように放射面1006が屈折率nの被覆物1018で被覆され、正誘電率部1014が屈折率nの被覆物1018で満たされた間隙であり、放射面1006の近傍が屈折率nの被覆物1018で満たされる場合は、実効的な波長λeは、真空中における波長λ0を屈折率nで除する(λ0/n)ことにより得られる。電磁波放射体1002が屈折率nの気体中又は液体中に設置される場合も同じである。
【0029】
フォトニック結晶構造等の微細構造が放射面1006に設けられ、実効的な波長λeが真空中の波長λ0からずれる場合もある。この場合は、放射面1006における実効的な屈折率が数値計算等により求められる。実効的な波長λeは、真空中における波長λ0を実効的な屈折率nで除する(λ0/n)ことにより得られる。
【0030】
(正誘電率部への共鳴)
線状溝が延在する方向D2に垂直な断面における正誘電率部1014の断面形状(以下では単に「断面形状」という。)が矩形である場合は、正誘電率部1014の幅T及び深さD、光速c、正誘電率部1014の屈折率n、幅方向の共鳴次数m、深さ方向の共鳴次数l並びに開放端の補正項Δφを用いて、単一共振器の共鳴周波数Fresは、式(2)であらわされる。正誘電率部1014の幅Dは、周期方向D1についての正誘電率部1014の寸法である。正誘電率部1014の深さDは、周期方向D1及び線状溝が延在する方向D2に垂直な方向についての正誘電率部1014の寸法である。正誘電率部1014の深さDは、開口1020から底1022までの距離である。
【0031】
【数2】
【0032】
式(2)は、負誘電率部1012及び基体部1016の表面において電界の接線方向成分が零になること及び開口1020の近傍に電界の腹が位置するという共鳴条件から導かれる。共鳴次数m及びlによって共鳴の形は定義される。補正項Δφは、開口1020からの電界の腹の実効的なずれを反映し、数値計算により求められる。
【0033】
正誘電率部1014の幅T及び深さDは、共鳴次数m及びlの組み合わせのいずれかにおいて共鳴周波数Fresが目標とする発光ピーク周波数Fに一致するように決定される。
【0034】
(共鳴の形)
図5の模式図は、共鳴次数mが0又は1であり、共鳴次数lが1又は2である場合の共鳴の形を示す。図5には、電界の腹が明るい部分になり電界の節が暗い部分になるように正誘電率部1014の内部における電界の分布が描かれる。
【0035】
(正誘電率部の幅及び深さ)
図6の模式図(断面図)に示すように正誘電率部1014の断面形状が台形であってもよい。正誘電率部1014の断面形状が台形である場合は、正誘電率部1014の平均的な幅T及び正誘電率部1014の深さDが定義される。正誘電率部1014の平均的な幅T及び正誘電率部1014の深さDは、共鳴次数m及びlの組み合わせのいずれかにおいて共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fに一致するように決定される。
【0036】
より一般的には、正誘電率部1014の幅が一定でない場合は正誘電率部1014の平均的な幅T及び正誘電率部1014の深さDが定義され、正誘電率部1014の平均的な幅T及び正誘電率部1014の深さDは、共鳴次数m及びlの組み合わせのいずれかにおいて共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fに一致するように決定される。
【0037】
正誘電率部1014の深さが一定でない場合は正誘電率部1014の幅T及び正誘電率部1014の平均的な深さDが定義され、正誘電率部1014の幅T及び正誘電率部1014の平均的な深さDは、共鳴次数m及びlの組み合わせのいずれかにおいて共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fに一致するように決定される。
【0038】
正誘電率部1014の幅及び深さが一定でない場合は正誘電率部1014の平均的な幅T及び正誘電率部1014の平均的な深さDが定義され、正誘電率部1014の平均的な幅T及び正誘電率部1014の平均的な深さDは、共鳴次数m及びlの組み合わせのいずれかにおいて共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fに一致するように決定される。
【0039】
正誘電率部1014の断面形状が与えられた場合の単一共振器の共鳴周波数Fresは、例えば、有限差分時間領域法(FDTD)法等により計算される。
【0040】
(加熱機構)
加熱機構1004は、電磁波放射体1002に熱エネルギーを与え、電磁波放射体1002を加熱する。加熱機構1004は、セラミックヒーター、加熱コイル、レーザー加熱機構、マイクロ波加熱機構等である。加熱機構1004が、電磁波放射体1002に電流を流し電磁波放射体1002を発熱させる機構であってもよい。電磁波放射体1002は、望ましくは、プランクの法則から導かれる分光放射輝度が極大になる周波数が発光ピーク周波数Fに近づく温度にまで加熱され、さらに望ましくは、プランクの法則から導かれる分光放射輝度が極大になる周波数が発光ピーク周波数Fに一致する温度にまで加熱される。
【0041】
(電磁波放射体の設計の手順)
図7のフローチャートは、電磁波放射体の設計の手順を示す。
【0042】
(発光ピーク周波数の設定)
電磁波放射体1002の設計においては、目標とする発光ピーク周波数Fが設定される(ステップS101)。発光ピーク周波数Fは、望ましくは、電磁波放射体1002から放射される電磁波が赤外光又は可視光となるように設定される。
【0043】
(正誘電率部の幅及び深さの決定)
発光ピーク周波数Fが設定された後に、単一共振器の共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fに一致するように(Fres=F)正誘電率部1014の幅T及び深さDが決定される(ステップS102)。正誘電率部1014の幅T及び深さDが与えられた場合の共鳴周波数Fresは、式(2)から求められる。より正確な共鳴周波数Fresを求めるために、数値計算が併用されてもよい。数値計算のみから共鳴周波数Fresが求められてもよい。
【0044】
数値計算が併用される場合は、様々な周波数の光を含む広帯域光で1個の単一共振器が励振される数値計算モデルが作成され、共鳴周波数Fresが特定される。数値計算法にはFDTD法、厳密結合波解析法(RCWA)法、有限要素法等がある。また、式(2)から求められた結果を数値計算により求められた結果にフィッティングすることにより、補正項Δφが決定される。例えば、補正項Δφの候補値を変化させながら式(2)から求められた結果と数値計算により求められた結果とが比較され、式(2)から求められた結果と数値計算により求められた結果とが最も近づく候補値が補正項Δφの値として採用される。
【0045】
正誘電率部1014の幅Tは、望ましくは、実効的な波長λeの1/2以上である。正誘電率部1014の幅Tが実効的な波長λeの1/2以上である場合は、光が正誘電率部1014に侵入しやすくなり、周期構造1008及び単一共振器への電磁波の共鳴が強くなり、スペクトル幅が狭くなる。
【0046】
(実効的な波長の決定)
発光ピーク周波数Fが設定された後に、放射面1006における発光ピーク周波数F(共鳴周波数Fres)の光の実効的な波長λeが決定される(ステップS103)。
【0047】
(周期の決定)
実効的な波長λeが決定された後に、周期Pが実効的な波長λeの自然数倍に決定される(ステップS104)。典型的には、周期Pは実効的な波長λeに一致させられる。これにより、発光ピーク周波数Fの光が周期構造1008に共鳴する。
【0048】
この設計の手順により、共鳴周波数Fresの光が周期構造1008及び単一共振器の両方に共鳴し、発光ピーク周波数Fのスペクトル幅が狭い光が放射面1006から放射される。
【0049】
(電磁波放射体の設計の変更の手順)
負誘電率部1012及び正誘電率部1014の材質が同一のまま正誘電率部1014の幅T及び深さDがγ倍になった場合は共鳴周波数Fresが1/γ倍になる。このことは、式(2)から導かれる。また、共鳴周波数Fresが1/γ倍になった場合は、実効的な波長λeはγ倍になる。したがって、発光ピーク周波数Fにおける設計が既に存在する場合は、正誘電率部1014の幅TをT/γへ置き換え、正誘電率部1014の深さDをD/γへ置き換え、周期PをP/γへ置き換えることにより、発光ピーク周波数γFにおける設計が完了する。より一般的には、発光ピーク周波数Fにおける設計が既に存在する場合は、周期構造1008の断面形状を相似拡大又は相似縮小することにより、発光ピーク周波数γFにおける設計が完了する。したがって、第1の発光ピーク周波数における設計が存在する場合は、第2の発光ピーク周波数における設計が第1の発光ピーク周波数における設計から容易に得られる。
【0050】
より一般的に説明すると、負誘電率部1012及び正誘電率部1014の材質が決定された場合は、発光ピーク周波数F及び共鳴周波数Fresが一致する正誘電率部1014の幅T及び深さDの比率が式(2)等により決定される。設計の変更においては、当該比率が維持され、正誘電率部1014の幅T及び深さDが倍率γで除される。また、周期Pも倍率γで除される。これにより、発光ピーク周波数Fがγ倍になる。
【0051】
(設計例1)
設計例1は、上記の電磁波放射体の設計の手順に従った設計に関する。
【0052】
設計例1においては、発光ピーク周波数Fが60THzに設定される。設計例1においては、負誘電率部1012及び基体部1016が金からなり、電磁波放射体1002が空気中に設置され、正誘電率部1014が空気で満たされた間隙であり、放射面1006の近傍が空気で満たされる場合が検討される。
【0053】
金の複素比誘電率は、60THzにおいて、−1284+i252である。金の複素比誘電率の虚部から理解されるように、金の導電率は60THzにおいて1×106S/mであり、金は60THzにおいて理想金属であるとみなしてよい。
【0054】
図8のグラフは、共鳴周波数Fres(縦軸)の正誘電率部1014の深さD(横軸)への依存性を示す。図8のグラフには、正誘電率部1014の幅Tが2.6μmに固定され正誘電率部1014の深さDが変化させられた場合の共鳴周波数Fresの変化が示される。図8のグラフには、FDTD法により計算された共鳴周波数Fresが点で示され、式(2)から計算された共鳴周波数Fresが線で示される。式(2)から求められた共鳴周波数Fresは、FDTD法により求められた共鳴周波数Fresにフィッティングされ、補正項Δφは−150°に設定される。
【0055】
図8のグラフからは、正誘電率部1014の深さDにより共鳴周波数Fresが制御されることが理解される。また、図8のグラフからは、正誘電率部1014の幅Tが2.6μmである場合は、共鳴周波数Fresを発光ピーク周波数の60THzに一致させることができる共鳴モードのひとつは、共鳴次数mが0であり共鳴次数lが2であるFres[0,2]であることが理解される。さらに、図8のグラフからは、正誘電率部1014の幅Tが2.6μmである場合は、共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fの60THzに一致するのは、正誘電率部1014の深さDが2.7μmである場合であることが理解される。したがって、正誘電率部1014の幅Tは2.6μmに決定され、正誘電率部1014の深さDは2.7μmに決定される。正誘電率部1014の深さDが固定され、共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fの60THzに一致する正誘電率部1014の幅Tが決定されてもよい。
【0056】
60THzの光の真空中の波長は5μmである。
【0057】
空気の複素比誘電率は、任意の周波数において、1であるとみなしてよい。また、電磁波放射体1002が空気中に設置され、正誘電率部1014が空気で満たされた間隙であり、放射面1006の近傍が空気で満たされる場合が検討されているので、放射面1006における60THzの光の実効的な波長λeは、真空中の波長λ0と同じ5μmに決定される。したがって、周期Pは5μmに決定される。
【0058】
図9のグラフは、設計例1の共鳴スペクトルを示す。図9のグラフには、吸収率(縦軸)の波長(横軸)への依存性が示される。吸収率は、RCWA法により計算される。RCWA法による吸収率の計算においては、無限個の単位構造1010が周期的に配列された電磁波放射体1002の放射面1006に垂直に様々な周波数の光が照射され広帯域の光に対する吸収率が求められる数値計算モデルが作成され、線状突起及び線状溝が延在する方向D2に偏光する光の吸収率が計算される。
【0059】
図9に示すように、設計例1の共鳴スペクトルにおいては、スペクトル波長幅(半値全幅)は10nmとなり、発光ピーク波長は5μmとなった。
【0060】
共鳴の鋭さは、発光ピーク波長をスペクトル波長幅で除した値であるQ値で表される。設計例1のQ値は500である。
【0061】
比較のために、国際公開第2007/139022号の図52から図54までのグラフに示された共鳴スペクトルから求められたQ値を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示すQ値は、16〜32であり、設計例1より著しく小さい。すなわち、設計例1においては著しく大きいQ値が得られ、スペクトル幅が狭い光を放射する電磁波放射体1002が得られる。
【0064】
図10のグラフは、スペクトル波長幅Δλ(縦軸)の正誘電率部1014の深さD(横軸)への依存性を示す。図10には、正誘電率部1014の深さDを上記の2.7μmからずらした場合のスペクトル波長幅Δλが示される。
【0065】
図10に示すように、正誘電率部1014の深さDが上記の2.7μmからずらされた場合は、スペクトル波長幅Δλが広くなる。
【0066】
(設計例2)
設計例2は、上記の電磁波放射体の設計の手順に従った設計に関する。
【0067】
設計例2においては、発光ピーク周波数Fが50THzに設定される。設計例2においても、負誘電率部1012及び基体部1016が金からなり、電磁波放射体1002が空気中に設置され、正誘電率部1014が空気で満たされた間隙であり、放射面1006の近傍が空気で満たされる場合が検討される。
【0068】
屈折率nが1.0であり共鳴次数mが0であり共鳴次数lが2である場合に共鳴周波数Fresが発光ピーク周波数Fの50THzに一致する正誘電率部1014の幅T及び深さDが決定される。
【0069】
正誘電率部1014に光を十分に侵入させるために正誘電率部1014の幅Tが実効的な波長λeの1/2以上である3.1μmに決定された場合は、式(2)から正誘電率部1014の深さDが3.2μmに決定される。
【0070】
50THzの光の真空中の波長λ0は6μmである。50THzの光の放射面1006における実効的な波長λeは6μmである。したがって、周期Pは6μmに決定される。
【0071】
図11のグラフは、設計例2の共鳴スペクトルを示す。図11のグラフには、吸収率(縦軸)の波長(横軸)への依存性が示される。吸収率は、設計例1の場合と同様に計算される。
【0072】
図11に示すように、設計例2の共鳴スペクトルにおいては、スペクトル波長幅(半値全幅)は6nmとなり、発光ピーク波長Fは6μmとなった。設計例2の場合は、Q値は1000である。設計例2においても著しく大きいQ値が得られ、スペクトル幅が狭い電磁波を放射する電磁波放射体1002が得られる。
【0073】
(設計例3〜7)
設計例3〜7は、上記の電磁波放射体の設計の手順に従った設計に関する。
【0074】
表2は、発光ピーク周波数Fが30〜70THzに設定された設計例3〜7の設計結果を示す。共鳴次数mは0とし、共鳴次数lは2とした。設計例3〜7においても、正誘電率部1014の幅Tは実効的な波長λeの1/2以上に決定される。
【0075】
【表2】
【0076】
設計例3〜7においても著しく大きいQ値が得られ、スペクトル幅が狭い電磁波を放射する電磁波放射体1002が得られる。
【0077】
(設計例8〜12)
設計例8〜12は、上記の電磁波放射体の設計の手順に従った設計の例に関する。
【0078】
表3は、発光ピーク周波数Fが30〜70THzに設定された設計例8〜12の設計結果を示す。共鳴次数mは0とし、共鳴次数lは3とした。設計例8〜12においても、正誘電率部1014の幅Tは実効的な波長λeの1/2以上に決定される。
【0079】
【表3】
【0080】
共鳴モードがFres[0,3]へ変更された設計例8〜12においても著しく大きいQ値が得られ、スペクトル幅が狭い電磁波を放射する電磁波放射体1002が得られる。
【0081】
(設計例13〜16)
設計例13〜16は、上記の電磁波放射体の設計の変更の手順に従った設計の変更に関する。
【0082】
表4は、γ=1.5(設計例13)、2.0(設計例14)、2.5(設計例15)及び3.0(設計例16)の設計の変更例を示す。元の設計は設計例6である。
【0083】
【表4】
【0084】
設計例13〜16においても著しく大きいQ値が得られ、スペクトル幅が狭い電磁波を放射する電磁波放射体1002が得られる。
【0085】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において例示であり、この発明は上記の説明に限定されない。例示されない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定されうる。
【符号の説明】
【0086】
1000 電磁波放射装置
1002 電磁波放射体
1004 加熱機構
1006 放射面
1008 周期構造
1010 単位構造
1012 負誘電率部
1014 正誘電率部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波放射装置であって、
電磁波を放射する放射面を有し、周期構造が前記放射面に露出し、前記周期構造において単位構造が周期方向に周期的に配列され、複素比誘電率の実部が負である負誘電率部及び複素比誘電率の実部が正である正誘電率部を前記単位構造の各々が備え、前記負誘電率部及び前記正誘電率部が前記周期方向に交互に配列され、前記正誘電率部の各々により共振器が形成され、前記周期構造の周期が前記共振器の共鳴周波数の電磁波の前記放射面における実効的な波長の自然数倍である電磁波放射体と、
前記電磁波放射体を加熱する加熱機構と、
を備える電磁波放射装置。
【請求項2】
請求項1の電磁波放射装置において、
前記電磁波放射体は、
複素比誘電率の実部が負である基体部、
をさらに備え、
前記負誘電率部は、前記基体部から突出し前記周期方向に垂直な方向へ延在する線状突起であり、
前記正誘電率部は、前記周期方向に垂直な方向に延在し、前記共鳴周波数の電磁波が共鳴する幅及び深さを持つ線状溝であり、
2個の前記負誘電率部及び前記基体部により囲まれた前記正誘電率部の各々により前記共振器が形成される
電磁波放射装置。
【請求項1】
電磁波放射装置であって、
電磁波を放射する放射面を有し、周期構造が前記放射面に露出し、前記周期構造において単位構造が周期方向に周期的に配列され、複素比誘電率の実部が負である負誘電率部及び複素比誘電率の実部が正である正誘電率部を前記単位構造の各々が備え、前記負誘電率部及び前記正誘電率部が前記周期方向に交互に配列され、前記正誘電率部の各々により共振器が形成され、前記周期構造の周期が前記共振器の共鳴周波数の電磁波の前記放射面における実効的な波長の自然数倍である電磁波放射体と、
前記電磁波放射体を加熱する加熱機構と、
を備える電磁波放射装置。
【請求項2】
請求項1の電磁波放射装置において、
前記電磁波放射体は、
複素比誘電率の実部が負である基体部、
をさらに備え、
前記負誘電率部は、前記基体部から突出し前記周期方向に垂直な方向へ延在する線状突起であり、
前記正誘電率部は、前記周期方向に垂直な方向に延在し、前記共鳴周波数の電磁波が共鳴する幅及び深さを持つ線状溝であり、
2個の前記負誘電率部及び前記基体部により囲まれた前記正誘電率部の各々により前記共振器が形成される
電磁波放射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【公開番号】特開2013−8472(P2013−8472A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138771(P2011−138771)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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