電磁波遮蔽材、複合化積層体及び画像表示装置
【課題】画像表示パネルの画素配列との干渉によるモアレ発生を防ぐと共に、メッシュパターンの粗密による明暗ムラも同時に防ぎ、なお且つ、導電性を維持しつつメッシュの外光反射によるコントラスト低下を防いだ電磁波遮蔽材と、これを用いた複合化積層体、画像表示装置を提供する。
【解決手段】導電体パターン層1の表面に暗色層2を有し、導電体パターン層が呈する、多数の開口部Aを画成するメッシュパターン1Pが、二つの分岐点Bの間を延びて開口部を画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、開口部が一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンからなる。開口部は少なくとも五角形及び六角形を含んでなるのが好ましい。
【解決手段】導電体パターン層1の表面に暗色層2を有し、導電体パターン層が呈する、多数の開口部Aを画成するメッシュパターン1Pが、二つの分岐点Bの間を延びて開口部を画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、開口部が一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンからなる。開口部は少なくとも五角形及び六角形を含んでなるのが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスプレイの画像観察者側である前面に配置するのに好適な電磁波遮蔽材と、これをさらに複合化した複合化積層体と、これらを用いた画像表示装置に関する。
特に、画像表示パネルの画素配列との干渉によるモアレが生じず、外光によるコントラスト低下も防げる電磁波遮蔽材及び複合化積層体、並びにこれらを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネル、EL(電界発光)パネルなど、各種画像表示パネルが普及しているが、画像表示パネルの前面には光学フィルタが配置される。例えば、プラズマディスプレイパネルでは、前面に配置する光学フィルタとして電磁波遮蔽材が使われている。電磁波遮蔽材は、通常、正方格子などの単位格子が平面内に繰返し配列した、空間周期を有する金属メッシュからなる(特許文献1)。
ただ、こうした周期パターンを有する金属メッシュからなる電磁波遮蔽材は、画像表示パネルの画素配列も周期的配列をしている為に、画素の配列周期と干渉して、モアレ(縞模様)が生じる。
【0003】
このモアレを防ぐ為に、通常、電磁波遮蔽材は、金属メッシュの配列方向をディスプレイパネの画素の配列方向から3〜45°程度傾ける、いわゆるバイアス角を設けることが行われている(特許文献2)。
また、画像表示パネルの前面に配置する光学フィルタには、外光の混入によって画像が白化しコントラストが低下するのを防止する機能も要求されている。
【0004】
特許文献2では、コントラスト向上フィルタを積層した電磁波遮蔽材を提案している。コントラスト向上フィルタは、通常、暗色の光吸収部と光透過部とが面内にストライプ状に交互に配列した周期的パターンからなるコントラスト向上層を有する。コントラスト向上層の周期的パターンも、画像表示パネルの画素の配列周期と干渉して、モアレが生じる。そこで、このモアレを防ぐ為に、コントラスト向上層も同様に、その配列方向を、画像表示パネルの画素の配列方向に対して、バイアス角を設けることが知られている。
さらに、コントラスト向上層は電磁波遮蔽材の金属メッシュとも干渉して、光学フィルタ内でモアレが生じるので、コントラスト向上層と金属メッシュとの間でも、バイアス角を設けることが知られている(特許文献2)。
【0005】
このように、周期的パターンを有する要素同士を複合化することによって、モアレ防止は、適用する画像表示パネルのサイズ毎に、金属メッシュ、コントラスト向上層及び画像表示パネルの三者の周期的パターンのそれぞれの周期、周期同士の比率、寸法、などを考慮することになり、製品設計が複雑化する。
【0006】
そこで、周期的パターンをランダム化したものも提案されている。例えば、正方格子状の金属メッシュについて、正方格子の配列方向の2方向、これをX軸方向とY軸方向とすると、このうち1方向、例えばX軸方向についてのみ、その配列周期をランダム化した電磁波遮蔽材である(特許文献3)。
或いは、図17(A)の正方格子パターンを元に、図17(B)の様に、縦線と横線の格子点に於ける4つの内角を、全て90°以外の角度に設定したパターンにしてランダム化した、電磁波遮蔽材である(特許文献4)。
ただ、特許文献3や特許文献4によるランダム化では、なお、配列に周期性が残り、モアレは残留する。
【0007】
一方、有機溶剤処理と酸処理とを組み合わせた化学処理によって形成した金属メッシュからなる電磁波遮蔽材も提案されている(特許文献5)。この金属メッシュは完全にランダムパターン化しており、この電磁波遮蔽材によれば、モアレは解消する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3388682号公報
【特許文献2】特表2009−535673号公報
【特許文献3】特開平11−121974号公報
【特許文献4】特開平4−217397号公報
【特許文献5】国際公開第2007/114076号のパンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献5による電磁波遮蔽材は、メッシュパターン自体に粗密が存在し、濃淡ムラが目視され、画像表示パネルの前面に配置とする表示画像に明暗ムラが生じる。
また、コントラスト向上層の有無に関わらず、いずれの電磁波遮蔽材を採用するにせよ、外光が金属メッシュ表面で反射して画面が白化しコントラストが低下するので、黒化層を表面に形成して外光反射を防止するのが普通である。ただ、既存の黒化層、例えば、黒化ニッケルめっき、銅−コバルト合金めっき、酸化銅黒化層などでは、導電性と外光反射防止性との両立が困難であった。
加えて、特許文献5の完全ランダムなメッシュパターンは、その製法にも起因して、開口部内に途中まで入り込んで行き止まりとなる部分が一部に発生する。こうした行き止まりの部分は断線して回路が開いた形となり、正方格子等の閉回路のみからなるメッシュパターンに比べて同じ開口率での導電性(電磁波遮蔽性)は低下する。
【0010】
すなわち、本発明の課題は、電磁波遮蔽材ついて、画像表示パネルの画素と干渉に起因するアレ発生を防ぐと共に、導電体メッシュの粗密による明暗ムラも同時に防ぎ、なお且つ、十分な導電性を確保しつつメッシュ表面での外光反射による画面白化・コントラスト低下を防ぐことである。
また、このような電磁波遮蔽材或いは複合化積層体を備えた画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明では、次の様な構成の電磁波遮蔽材、複合化積層体及び画像表示装置とした。
(1)導電体パターン層と、その少なくとも表裏面の何れか1面に形成された暗色層とを有する電磁波遮蔽材であって、
前記導電体パターン層の平面視形状が多数の開口部を画成するメッシュパターンからなり、このメッシュパターンは、二つの分岐点の間を延びて前記開口部を画成する多数の境界線分から形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、前記開口部が一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンであり、
前記暗色層は、表面に溝状凹部を有し、この溝状凹部が形成された表面に突出した針状金属を有する、
電磁波遮蔽材。
(2)開口部の平面視形状として、少なくとも五角形及び六角形を含んでなる、上記(1)の電磁波遮蔽材。
(3)暗色層が形成された導電体パターン層に、さらに透明基材が積層されている上記(1)または(2)の複合化積層体。
(4)さらに機能層が積層されている、上記(1)〜(3)のいずれかの電磁波遮蔽材。
(5)画像表示パネルと、この画像表示パネルの前面に配置された上記(1)〜(3)のいずれかの電磁波遮蔽材または上記(4)の複合化積層体とを備えた画像表示装置。
【発明の効果】
【0012】
(1)本発明の電磁波遮蔽材によれば、導電体パターン層のメッシュパターンが周期性がない特定のパターンであるために、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが出来ると共に、メッシュパターンの粗密による明暗ムラも極めて効果的に目立たなく出来、モアレ解消と明暗ムラ解消とを両立させることができる。また、モアレ防止のためにバイアス角を付ける必要がないために、製品設計が容易になる。さらに、導電体パターン層表面に設けた特定の表面構造をした暗色層によって、導電性を維持しつつ、外光反射が極めて効果的に抑制され、画像のコントラスト低下を防ぐことができ、導電性とコントラスト低下防止性とが両立する。
(2)本発明の複合化積層体によれば、上記効果に加えて、電磁波遮蔽機能以外の他の機能が複合化されたものとできる。
(3)本発明の画像表示装置によれば、上記電磁波遮蔽材乃至は複合化積層体による効果を享受でき、十分な導電性を維持しつつ、モアレ、明暗ムラ、コントラスト低下の全てを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による電磁波遮蔽材の一実施形態を説明する断面図(A)及び(C)と平面図(B)。
【図2】暗色層の表面の溝状凹部と針状金属の表面構造を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図3】メッシュパターンの一例を示す平面図。
【図4】メッシュパターンに繰返周期が存在しないことを説明する平面図。
【図5】メッシュパターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図6】メッシュパターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図7】メッシュパターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図8】決定された母点群の分散の程度を絶対座標系と相対座標系で説明する図。
【図9】決定された母点からボロノイ図を作成してメッシュパターンを決定する方法を示す図。
【図10A】本発明によるメッシュパターンを示す平面図。
【図10B】画像表示パネルの画素配列を示す平面図。
【図10C】図10Aと図10Bとを重ねた状態を示す平面図。
【図11A】従来の導電体パターン層が有する周期的パターンを示す平面図。
【図11B】画像表示パネルの画素配列を示す平面図。
【図11C】図11Aと図11Bとを重ねた状態を示す平面図。
【図12】開口部の形状例を示す平面図。
【図13】メッシュパターンが電磁波遮蔽材の寸法の1/3以上の大きさの単位パターン領域として繰り返された一例を示す平面図。
【図14】本発明による電磁波遮蔽材の別の実施形態(透明基材付き)を示す断面図。
【図15】本発明による複合化積層体の実施形態を示す断面図。
【図16】本発明による画像表示装置の実施形態を示す断面図。
【図17】従来の電磁波遮蔽材におけるランダムパターンの一例を示す平面図であり(A)はランダム化前、(B)はランダム化後。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、説明上の都合に応じて適宜、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0015】
〔A〕用語の定義:
以下に、本発明において用いる主要な用語について、その定義をここで説明しておく。
【0016】
「シート面」とは、シート状の電磁波遮蔽材を全体的かつ大局的に見た場合において、その平面方向と一致する面のことを意味する。通常は、電磁波遮蔽材の表面、裏面、又は表裏両面と平行な面となる。図1に於いては、XY平面又はこれと平行な面となる。
「表面」、「裏面」、「側面」とは、シート面に平行な2面の一方の面が「表面」であり他方の面が「裏面」である。一方の面を「表面」とするか「裏面」とするかの区別はない。「側面」とはシート面に平行ではない面、典型的にはシート面に垂直な面であり、層の断面として露出する面が該当する。
「平面視形状」とは、「シート面」に平行な面に於ける形状のことを意味する。言い換えると、「平面視形状」とは、「シート面」に立てた法線の方向から見た形状のことを意味する。
「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0017】
〔B〕電磁波遮蔽材:
本発明による電磁波遮蔽材を、図1に示す一実施形態例を参照して説明する。
【0018】
図1で例示する本発明の電磁波遮蔽材10は、図1(A)の断面図で示すように、導電体パターン層1と、この導電体パターン層1の、表裏面と両側側面の全部の表面に形成された暗色層2とからなる。この暗色層2は、表面に溝状凹部3を有し、この溝状凹部3が形成された表面に針状金属4を有する。この溝状凹部3と針状金属4を有する暗色層2の表面構造によって、外光が効果的に吸収され、導電体パターン層1による外光反射を極めて効果的に防ぐことができる。
特に、分岐、蛇行、又はこれらの両方を有する渓谷状の溝状凹部3によって、光が溝状凹部3の内部に進入すると複雑な経路で反射を多数回繰り返すことで減衰する。この為、溝状凹部3によって、外光反射を防止する。
さらに、針状金属4によっても、外光が、針間の面で多重反射されるうちに、吸収、散乱が多数回起こり、多くの光を減衰させ、反射光量、特に鏡面反射光量を大幅に減少させて、外光の反射を防止する。
【0019】
図1(B)の平面図で示すように、導電体パターン層1は、これを上からみた、つまりシート状の電磁波遮蔽材10をZ軸方向からみた平面視形状が、多数の開口部Aを画成する特有のメッシュパターン1Pを呈している。このメッシュパターン1Pは、二つの分岐点Bの間を延びて前記開口部Aを画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、前記開口部Aが一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンである。
図1(C)は図1(B)中のC−C線での断面図である。図1(C)の断面図で示す様に、C−C線(図4に於ける任意位置に任意角度で伸ばした仮想的な線分diに相当する)を横切る開口部Aの幅t1,t2,t3,・・・・は、一定でない。メッシュパターン1Pで画成される開口部Aは、従来の正方格子など格子状の周期的メッシュパターンに於ける単位格子に相当する。この点で、メッシュパターン1Pは、単位格子つまり開口部Aが、間に境界線分Lを介して複数互いに隣接して配列して構成されている。
なお、図1(C)では、導電体パターン層1のみを描いてあり、暗色層2などその他の図示は省略してある。
【0020】
このため、本実施形態では、上記メッシュパターン1Pは、従来のような周期的配列ではなく、そのメッシュパターン1Pが非周期的パターンであるために、画像表示パネルの前面フィルタとして用いた時に、画素配列との干渉によるモアレを生じず、明暗ムラも生じず、モアレと明暗ムラとを極めて効果的に防ぐことができる。
【0021】
図2は、暗色層2の表面の溝状凹部3と針状金属4とを具体的に示す、走査型電子顕微鏡写真である。図中、溝状凹部3を有する表面に、多数の針状金属4が存在するのが視認される。
【0022】
〔導電体パターン層〕
導電体パターン層1は、導電性材料からなり平面視形状が本発明特有の非周期的なメッシュパターン1Pを呈する。
導電性材料としては、銅、アルミニウム、錫、ニッケル等の金属を用いることができる。導電体パターン層1は、こうした金属からなる金属箔、金属厚膜等からフォトエッチング法などにより所定のメッシュパターン1Pを形成することで得ることができる。
導電体パターン層1の厚みは、電磁波遮蔽性能(導電性)、形成法等の点から、通常は2〜100μm、より好ましくは5〜20μm程度である。
メッシュパターン1Pの線幅は、電磁波遮蔽性能などの観点から通常は5〜50μmである。また、開口部Aの面積割合は透明性と電磁波遮蔽性能の両立性の点で、50〜95%程度である。
【0023】
[メッシュパターンとこれにより画成される開口部]
メッシュパターン1Pは、導電体パターン層1を、シート面の法線方向(図1でZ軸方向)から観察した場合における平面視形状である。以下、このメッシュパターン1Pについて、図3および図9を主として参照しながら説明する。
【0024】
メッシュパターン1Pは、図3に示す如く、二つの分岐点Bの間を延びて開口部Aを画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0、つまり、3.0以上で4.0未満であり、且つ、前記境界線分Lで画成された前記開口部Aに繰返周期を持つ方向が存在しない領域を含んでなるパターンとなっている。
なお、メッシュパターン1Pは、開口部Aが繰返周期を持つ方向が存在しない配列となってモアレ防止効果が十分に発現される為には、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口部Aの面積及び形状は一定でないようなパターンとすると良い。好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口部Aの50%以上が互いにその面積及び形状が異なるようにする。より好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口部Aをメッシュパターン1Pの全域に亙って、全て互いにその面積及び形状が異なるようにする。これは、言い換えると、メッシュパターン1Pに含まれる開口部Aのうち、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一となる開口部Aの形状及び面積がすべて同一ではなく、少なくとも一部は他と異なるものになると言うことを意味する。なお、ここで周囲を囲繞する境界線分Lの数とは、開口部Aが多角形である場合は、その多角形の角数と一致する。また、以上に於いて、2つの開口部A同士が互いに合同な図形であって且つその向きが異なる場合も、これらの2つの開口部Aの形状は互いに異なると見做す。
【0025】
図3および図9に示すように、メッシュパターン1Pのライン部Ltは、多数の分岐点Bを含んでいる。メッシュパターン1Pのライン部Ltは、両端において分岐点Bを形成する多数の境界線分Lから構成されている。すなわち、メッシュパターン1Pのライン部Ltは、二つの分岐点Bの間を延びる多数の境界線分Lから構成されている。そして、分岐点Bにおいて、境界線分Lが接続されていくことにより、開口部Aが画成されている。言葉を換えて言うと、境界線分Lで囲繞され、区画されて1つの閉領域としての開口部Aが画成されている。
【0026】
なお、図3および図9に示すように、ライン部Ltが境界線分Lのみから構成されているため、特許文献5に開示のメッシュパターンの如く開口部Aの内部に延び入って行き止まりとなるライン部Ltは存在しない。このような態様によれば、電磁波遮蔽材10に十分な導電性と高い透明性とを同時に付与することを効果的に実現することできる。
【0027】
一方、モアレの発生を防止するため、本実施形態による電磁波遮蔽材10の導電体パターン層1が有するメッシュパターン1Pでは、その全領域が、開口部Aが繰返周期を有する方向が存在しないようになっている。モアレを確実に解消する為には、メッシュパターン1Pの全領域がこのような領域のみから構成されていることが好ましい。本実施形態はこの様な構成からなる。本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、単にメッシュパターン1Pのパターンを不規則化するのではなく、メッシュパターン1Pの開口部Aが一定の規則性を持った繰返周期で並べられた方向が存在しないようにメッシュパターン1Pのパターンを画成することにより、開口部Aが周期的配列された構成の従来の正方格子状などの電磁波遮蔽材と、周期的画素配列を有する画像表示パネルとを重ねた際に生じ得るモアレを、極めて効果的に目立たなくさせることが出来ると判明した。
【0028】
[繰返周期の不存在]
図4は、メッシュパターン1Pで画成される多数の開口部Aが、一定の周期で配置されている領域が存在せず、繰返周期が存在しないことを説明するXY平面に平行なシート面に於ける平面図である。このシート面の面内において、同図では、任意の位置で任意の方向を向く一本の仮想的な直線diが選ばれている。
この一本の直線diが、ライン部Ltの境界線分Lと交差し交差点が形成される。この交差点を、図面では図面左下から順に、交差点c1,c2,c3,・・・・・,c9として図示してある。隣接する交差点、例えば、交差点c1と交差点c2との距離が、前記或る一つの開口部Aの直線di上での寸法t1である。次に、寸法t1の開口部Aに対して直線di上で隣接する別の開口部Aについても、同様に、直線di上での寸法t2が定まる。そして、任意位置で任意方向の直線diについて、直線diと交差する境界線分Lとから、任意位置で任意方向の直線diと遭遇する多数の開口部Aについて、該直線di上における寸法として、t1,t2,t3,・・・・・・,t8が定まる。そして、t1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びには、周期性が存在しない。
図4では、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8は、判り易い様に図面下方に、直線diと共にメッシュパターン1Pとは分離して描いてある。
【0029】
この直線diを図4で図示のものから任意の位置で任意の角度回転させて別の方向について各開口部Aの寸法t1,t2,・・を求めると、やはり図4の場合と同様、直線di方向に対して繰返し周期性は見られない。
すなわち、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びの様に、境界線分Lで画成された開口部Aには繰返周期を持つ方向が存在しない。
言い換えると、開口部Aの配置において、任意位置を通る任意方向の仮想的線分di上での開口部Aの寸法tiの並びの数列が非周期関数となる。すなわち、t(i)=t(i+M)となるMが存在しない(i,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
このように、開口部Aが繰返周期を持つ方向が存在しないことを、開口部Aが一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない、と表現する。
【0030】
さらに、本実施形態によるメッシュパターン1Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている。このように一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている場合、メッシュパターン1Pの配列パターンを、正方格子パターン(N=4.0)から大きく異なるパターンとすることができる。また、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている場合には、ハニカム配列(N=3.0)からも大きく異なるパターンとすることができる。そして、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nを3.0≦N<4.0とした上で、開口部Aの配列を不規則化して、開口部Aが繰返周期を持って並べられた方向が安定して存在しないようにすることが可能となり、その結果、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることが、確認された。
【0031】
なお、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nは、厳密には、メッシュパターン1P内に含まれる全ての分岐点Bについて、延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出することになる。ただし、実際的には、ライン部Ltによって画成された一つ当たりの開口部Aの大きさ等を考慮した上で、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、後述の寸法例で開口部Aが形成されているメッシュパターン1Pにおいては、10mm×10mmの部分)に含まれる分岐点Bについて延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出し、算出された値を当該メッシュパターン1Pについての一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nとして取り扱うようにしてもよい。
【0032】
実際に、図3に示された電磁波遮蔽材10の導電体パターン層1のメッシュパターン1Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている。一例を挙げると、図3のメッシュパターン1Pの場合、合計387個の分岐点Bについて計測したところ、境界線分Lが3本の分岐点Bが373個、境界線分Lが4本の分岐点Bが14個であり(分岐する境界線分Lの数が5個以上の分岐点は0個)、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数(平均分岐数)は3.04個であった。
【0033】
[画像表示パネルの画素配列との干渉によるモアレ発生状況]
図10Cには、図3及び図10Aに示されたメッシュパターン1Pを有する電磁波遮蔽材10を、図10Bに示された画像表示パネル40に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図10Cからも理解され得るように、図3及び図10A示されたメッシュパターン1Pを実際に作製して画像表示パネル40の画素配列上に配置した場合、視認され得る程度の縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)は発生しなかった。
【0034】
ここで、図10Bで示された画像表示パネル40の画素配列は、画像表示パネル40に於ける典型的な画素配列である。図10Bに示す様に、この画像表示パネル40では、一つの画素Pは、赤色に発光する副画素(サブピクセル)RPと、緑色に発光する副画素GPと、青色に発光する副画素BPと、から構成されている。すなわち、画像表示パネル40はカラーで画像を形成することができる。図10Bに示された例は、いわゆるストライプ配列として、画素Pが形成されている。すなわち、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、それぞれ、一つの方向(図10Bでは縦方向)に連続して並べられている。一方、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、当該一つの方向に直交する方向(図10Bでは横方向)に、一つずつ、順に並べられている。なお、図10Bは、画像表示パネル40の画像形成面(出光面、即ち画面)への法線方向、言い換えると、画像表示パネル40のパネル面への法線方向から当該画像表示パネル40を観察した状態で、画素Pの配列を示している。
【0035】
一方、従来の電磁波遮蔽材50において、周期的メッシュパターン51Pで画成される開口部Aに一定の繰返周期が存在する場合のモアレ発生を例示するのが図11A〜図11Cである。
【0036】
図11Aに図示したものは、正方格子状の周期的メッシュパターン51Pであり、本発明のメッシュパターン1Pとは異なるものである。
図11Cには、図11Aに示された周期的メッシュパターン51Pを、図11Bに示された画像表示パネル40(図10Bで示したものと同じである)に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図11A、図11B及び図11Cからも理解され得るように、周期的メッシュパターン51Pを有する電磁波遮蔽材50が画像表示パネル40の画素配列上に配置されると、周期的メッシュパターン51Pと画素の規則的パターンとの干渉によって、明暗の筋(図11Cに示された例では、左上から右下に延びている明暗の筋)が視認されるようになる。
【0037】
なお、図11Aおよび図11Cに示された例では、周期的メッシュパターン51Pの正方格子を構成する多数の直線の配列方向が、画素Pの配列方向に対して、数度傾斜している。この傾斜角をバイアス角(度)と呼称する。このような傾斜は、一般的に、モアレを目立たなくさせるものとして広く用いられている手法である。但し、図11Cに縞状模様が視認されることからも理解され得るように、モアレ発生の程度は単にバイアス角のみで決まる訳では無く、この他、画素P及び周期的メッシュパターン51Pの繰返周期比、周期的メッシュパターン51Pの線幅等の要因にも依存する。周期的メッシュパターン51Pのバイアス角のみでモアレを解消しようとすると、画像表示パネル40の設計仕様毎に応じてバイアス角の異なる電磁波遮蔽材50を用意する必要が有る。
【0038】
[メッシュパターンのパターン形状の作成方法]
ここで、本発明固有の上記メッシュパターン1Pのパターンを作成する方法の一例を以下に説明する。
【0039】
ここで説明する方法は、母点を決定する工程と、決定された母点からボロノイ図を作成する工程と、ボロノイ図における一つのボロノイ境界によって結ばれる二つのボロノイ点の間を延びる境界線分Lの経路を決定する工程と、決定された経路の太さを決定して各境界線分Lを画定してメッシュパターン1P(ライン部Lt)のパターンを決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。なお、上述した図3に示されたパターンは、実際に以下に説明する方法で決定されたパターンである。
【0040】
まず、母点を決定する工程について説明する。最初に、図5に示すように、絶対座標系O−X−Y(この座標系O−X−Yは普通の2次元平面であるが、後述の相対座標と区別する為、頭に「絶対」を付記する)の任意の位置に一つ目の母点(以下、「第1の母点」と呼ぶ)BP1を配置する。次に、図6に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れた任意の位置に第2の母点BP2を配置する。言い換えると、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径rの円の円周(以下、「第1の円周」と呼ぶ)上の任意の位置に、第2の母点BP2を配置する。次に、図7に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ第2の母点BP2から距離r以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点BP2,BP3から距離r以上離れた任意の位置に、第4の母点を配置する。
【0041】
このようにして、次の母点を配置することができなくなるまで、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、第2の母点BP2を基準にしてこの作業を続けていく。すなわち、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を配置する。第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更して、同様の手順で母点を形成していく。
【0042】
以上の手順で、メッシュパターン1Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。メッシュパターン1Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。ここまでの処理により、2次元平面(XY平面)に於いて不規則的に配置された母点群が、メッシュパターン1Pが形成されるべき領域内に一様に分散した状態となる。
【0043】
このような工程で2次元平面(XY平面)内に分布された母点群BP1、BP2、・・、BP6(図8(A)参照)について、個々の母点間の距離は一定では無く分布を有する。但し、任意の隣接する2母点間の距離Rの分布は完全なランダム分布(一様分布)でも無く、平均値RAVGを挾んで上限値RMAXと下限値RMINとの間の範囲ΔR=RMAX−RMINの中で分布している。なお、ここで、隣接する2母点であるが、母点群BP1、BP2、・・からボロノイ図を作成した後、2つのボロノイ領域XAが隣接していた場合に、その2つのボロノイ領域XAの母点同士が隣接していると定義する。
【0044】
即ち、ここで説明した母点群について、各母点を原点とする座標系(相対座標系o−x−yと呼称し、一方、現実の2次元平面を規定する座標系を絶対座標系O−X−Yと呼称する)上に、原点に置いた母点と隣接する全母点をプロットした図8(B)、図8(C)、・・等のグラフを全母点について求める。そして、これら全部の相対座標系上の隣接母点群のグラフを、各相対座標系の原点oを重ね合わせて表示すると、図8(D)の如きグラフが得られる。この相対座標形上での隣接母点群の分布パターンは、母点群を構成する任意の隣接する2母点間の距離が0から無限大迄の一様分布では無く、原点oからの距離がRAVG−ΔRからRAVG+ΔR迄の有限の範囲(半径RMINからRMAX迄のドーナツ形領域)内に分布していることを意味する。
なお、図8(D)からわかる様に、任意の1母点から見た他の母点の方位(角度)分布は等方的(乃至は略等方的)である。このことが、これらの母点(群)から生成されるメシュパターン1Pに於ける開口部Aの方位(角度)分布が等方的(乃至は略等方的)となることに対応する。
【0045】
以上の様にして、各母点間の距離を設定することによって、該母点群から以下に説明する方法で得られるボロノイ領域XA、更には、これから得られる開口部Aの大きさ(乃至は開口部Aの面積)の分布についても、一様分布(完全ランダム)では無く、有限の範囲内に分布したものとなる。
この様に構成することにより、メッシュパターン1Pを目視した際の濃淡(明暗)ムラが、より一層、効果的に解消する。メッシュパターン1Pの目視時の濃淡ムラを、実質上、目視不能とし、且つメッシュパターン1Pの非周期性によるモアレ防止性とも両立させる為には、開口部Aの大きさD(開口部Aの大きさ)の最大値をDMAX、最小値をDMINとしたときに、当該大きさDの分布範囲ΔD=DMAX−DMINが大きさDの平均値DAVGに対して、
0.1≦ΔD/DAVG≦0.6
より好ましくは、
0.2≦ΔD/DAVG≦0.4
とする。
また、開口部Aの大きさの平均値DAVGは、透明性と電磁波遮蔽性との両立性の点から、100〜1000μm程度とする。通常は、150〜300μm程度である。
なお、ここで、開口部Aの大きさDは、全ての開口部Aについて、以下の定義とする。
(1)或る一つの開口部Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描ける場合は、この開口部Aの外接円直径を以って、大きさDとする。
(2)或る一つの開口部Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描け無い場合は、この開口部Aに属する2分岐点B間の距離の最大値を以って、大きさDとする。
【0046】
なお、以上の母点を決定する工程において、距離rの大きさを変化させることにより、一つあたりの開口部Aの大きさDを調節することができる。具体的には、距離rの大きさを小さくすることにより、一つあたりの開口部Aの大きさDを小さくすることができ、逆に距離rの大きさを大きくすることにより、一つあたりの開口部Aの大きさDを大きくすることができる。
【0047】
次に、図9に示すように、配置された母点を基準にして、ボロノイ図を作成する。図9に示すように、ボロノイ図とは、隣接する2つの母点BP、BP間に垂直二等分線を引き、その各二等分線同士の交点で結ばれた線分で構成される図である。ここで、二等分線の線分をボロノイ境界XBと呼び、ボロノイ境界XBの端部をなすボロノイ境界XB同士の交点をボロノイ点XPと呼び、ボロノイ境界XBに囲まれた領域をボロノイ領域XAと呼ぶ。
【0048】
図9のように作成されたボロノイ図において、各ボロノイ点XPが、メッシュパターン1Pの分岐点Bをなすようにする。そして、一つのボロノイ境界XBの端部をなす二つのボロノイ点XPの間に、一つの境界線分Lを設ける。この際、境界線分Lは、図3に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定してもよいし、あるいは、他の境界線分Lと接触しない範囲で二つのボロノイ点XPの間を種々の経路(例えば、円(弧)、楕円(弧)、抛物線、双曲線、正弦曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、ベッセル関数曲線等の曲線状、折れ線状等の経路)で延びるようにしてもよい。なお、境界線分Lは、図3に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定した場合、各ボロノイ境界XBが、境界線分Lを画成するようになる。
【0049】
各境界線分Lの経路を決定した後、各境界線分Lの線幅(太さ)を決定する。境界線分Lの線幅は、作成されたメッシュパターン1Pを呈する導電体パターン層1によって得られる導電性と透明性とを勘案して、決定される。以上のようにして、メッシュパターン1Pのパターンを決定することができる。
【0050】
以上のような本実施形態によれば、電磁波遮蔽材10の導電体パターン層1における光吸収部2を有するメッシュパターン1Pが、二つの分岐点Bの間を延びて多数の開口部Aを画成する多数の境界線分Lから形成されており、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっており、且つ、開口部Aが繰返周期を持つ方向が存在しないようになっている。この結果、規則的(周期的)に画素Pが配列された画像表示パネル40に、この電磁波遮蔽材10を重ねたとしても、縞状の模様(モアレ、干
渉縞)が視認され得る程度に発生することを効果的に防止することができる。
【0051】
〔暗色層〕
暗色層2は、その表面に溝状凹部3を有し、この溝状凹部3が形成された表面に突出した針状金属4を有する。暗色層2は、導電体パターン層1の表面に対する黒化処理によって形成され、外光を減衰させる。暗色層2は、暗色であれば良く、黒以外に低明度の色、例えば茶褐色など有彩色でもよい。
なお、図1に示す電磁波遮蔽材10では、暗色層2は、導電体パターン層1のメッシュパターン1Pに於ける境界線分Lに該当する部分の表面、裏面、及び両側側面の4面全てに設けられている。このため、全周囲からの光を吸収し減じることができる。ただ、暗色層2を設ける導電体パターン層1の面は、導電体パターン層1の少なくとも表裏面の何れか1面であっても良い。1面のみの場合、その面を電磁波遮蔽材10を画像表示パネルに適用時に観察者側となる面とすることで外光反射が防止される。
【0052】
(溝状凹部)
暗色層2の溝状凹部3は、暗色層2の下地膜として、金属の電解めっきによって形成することができる。なお、この下地膜は、暗色層2の表面の一部(溝状凹部3)を造形する為のものであり、本発明では、暗色層2の一部として取り扱う。
【0053】
電解めっきする金属としては、導電性が高く容易に電解めっき可能な金属(乃至その合金)であれば特に制限はなく、例えば、銅、銀、金、クロム、ニッケル、錫、などを用いることができる。なかでも、銅は材料費及び導電性に優れ好ましいる。めっき皮膜の厚さは、例えば、0.1〜10μmである。
電解めっきは公知の方法でよく、電解めっき条件は、例えば、浴温度20〜60℃、電流密度0.001〜10A/dm2、めっき時間1〜10min程度である。
電流密度を例えば2A/dm2などと大きくすることによって、めっき皮膜の表面に、溝状凹部3が、分岐、蛇行、又はこれらの両方を有する渓谷状の形状として生成し易くなる。具体例を示せば、硫酸銅五水和物75g/L、硫酸180g/L、塩酸60mg/L、炭化水素系高分子系めっき添加剤(配向調整剤)40mL/Lを含む液で、浴温25℃、電流密度2A/dm2、めっき時間5minの処理条件とする。
こうした溝状凹部3、特に、分岐、蛇行、又はこれらの両方を有する渓谷状の溝状凹部3によって、光が溝状凹部3の内部に進入すると複雑な経路で反射を多数回繰り返すことで減衰する。この結果、溝状凹部3によって外光反射を防止できる。
【0054】
(針状金属)
暗色層2の針状金属4は、溝状凹部3を形成する為に設けた下地膜の表面を黒化処理することによって生成される。
黒化処理は、例えば、硫酸銅五水和物と硫酸を含む水溶液からなる電解浴を用いた陰極電解処理によって、粗面化処理を行うことで、前記下地膜の表面に、銅からなる針状金属4を有する暗色層2を形成することができる。粗面化処理は、陰極電解で針状金属4を析出させた後、その上に金属めっきして針状金属4の脱落を防いだ後、金属皮膜を形成するのが好ましい。
針状金属4は、電流密度を大きくすることによって生成され易くなる。針状金属4の長さは、0.1〜1μm程度である。針状金属4の形成の具体例を示せば、第1段階は、硫酸銅五水和物70g/L、硫酸100g/L、浴温40℃、電流密度40A/dm2、電解時間5s、陽極:白金で処理し、第2段階は硫酸銅五水和物250g/L、硫酸100g/L、浴温45℃、電流密度20A/dm2、電解時間30s、陽極:白金の条件で処理する。
表面に多数の針状金属4を有することよって、暗色層2に入射した外光が針状金属4の面間で多重反射することで、吸収、散乱が多数回発生して、光を減衰させて、外光反射が防止される。
こうして、表面に溝状凹部3と針状金属4とを有する暗色層2を形成することで、溝状凹部3による効果と、針状金属4による効果との相乗効果によって、外光反射防止性能がより高められる。
【0055】
〔変形形態〕
本発明の電磁波遮蔽材10は、上記した実施形態以外のその他の各種形態をとり得る。以下、その一部を説明する。
【0056】
[開口部の形状]
開口部Aの形状は、少なくとも五角形と六角形とを含むことが好ましい。開口部Aに少なくとも五角形と六角形とを含むことによって、モアレを目立たなくさせることが出来ると共に、メッシュパターン1Pの粗密による明暗ムラもより確実に目立たなくさせることができる。更に好ましくは、開口部Aの形状が五角形、六角形、及び七角形を含む様にする。
例えば、図10Aの形態で使用したメッシュパターン1Pについて、合計4631個の開口部A(多角形)について計測したところ、
3角形 0個
4角形 79個
5角形 1141個
6角形 2382個
7角形 927個
8角形 94個
9角形 8個
10角形以上 0個
であった。
なお、このメッシュパターン1Pについて、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数を計測したところ3.07であった。
【0057】
[単位パターン領域としての繰返し]
上述した実施形態では、電磁波遮蔽材10中の導電体パターン層1の全領域において、メッシュパターン1Pによって画成される開口部Aが繰返周期を持つ方向が存在しないようになっている例を説明した。しかしながら、図14の様に、その内部に於いてメッシュパターン1Pの全領域が、単位パターン領域Sを複数集合してメッシュパターン1Pの全領域が構成されるようにして、且つ各単位パターン領域S内に於いては、複数の開口部Aが、所定の繰返周期のないパターンで配列されている領域からなるようにしてもよい。
すなわち、この形態に於いては、メッシュパターン1Pの全領域中に、局所的に見たときに、同一パターンで開口部群が配列されてなる単位パターン領域Sを2箇所以上含むようになる。この場合、特定方向について、一定周期で4箇所以上の繰返しが無ければ、単位パターン領域S同士の繋ぎ目は実質上目立ち難く、無視し得る。もちろん、単位パターン領域S中でモアレも濃淡ムラも生じていない。この例において、一つの単位パターン領域S内におけるメッシュパターン1Pのパターンは、例えば、図5〜図9を参照しながら説明したパターン作成方法と同様にして作成することができる。
【0058】
特に最近では、画像表示パネルの大型化が進んでおり、この様な大画面の画像表示パネルに対しては、メッシュパターン1Pが、複数の単位パターン領域Sの配列から構成されていて、且つ各々の単位パターン領域S内に於いては互いに同一のパターンで開口部Aが配列されている構成とした複数の単位パターン領域Sを含む形態とした方が、メッシュパターン1Pのパターン作成を格段に容易化することが可能となる点において好ましい。
【0059】
なお、特に一種類の単位パターン領域Sを図13に示す様に縦横に複数配置する例においては、特定方向(図面縦方向と横方向の2方向)で単位パターン領域Sとしての繰返しが存在する。図13の実施形態に於いては、横方向に繰返周期SP2、縦方向に繰返周期SP1を以って単位パターン領域Sが繰り返される。この条件下では、特定方向に於ける単位パターン領域Sの寸法をLsとし、該特定方向に延びる任意の直線dj上において単位パターン領域Sが寸法Ls内に開口部AをM個有するとき、直線dj上の或る開口部Aに注目すると、直線dj上では開口部Aの個数がM個分だけ離れた位置には、全く同じ寸法tj及び形状の開口部Aが常に存在するという規則性を有する。すなわち、開口部Aの直線dj上での寸法tjについて、直線dj上で順番に数えてk番目の寸法tj(k)と、そこから更にM番目の(k+M)番目の寸法tj(k+M)とが同じとなる、tj(k)=tj(k+M)の関係が成立する(k,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
【0060】
しかし、この規則性は、単位パターン領域Sとしての繰返周期(前記で言えば寸法Lsがその繰返周期に該当する)に基づくものであり、開口部Aとしての繰返周期ではなく、各単位パターン領域S内に於いて開口部Aが繰返周期を上記特定方向に持つことではない。また、単位パターン領域Sとしての繰返周期は、画像表示パネルの画素配列の配列周期に対して寸法が例えば1000倍以上異なる為に、モアレが発生する様な近い寸法関係にない。
【0061】
図13に示された例では、電磁波遮蔽材10が、同一の形状を有した六つの単位パターン領域Sに分割され、各単位パターン領域S内で、各導電体パターン層1が有するメッシュパターン1Pが同一に構成されている。そして、六つの単位パターン領域Sは、図13の縦方向(図の上下方向)に繰返周期SP1で三つの領域が並ぶとともに、図13の横方向に繰返周期SP2で二つの領域が並ぶように配列されている。
【0062】
[透明基材の積層]
本発明の電磁波遮蔽材は、図14の断面図で示す実施形態の電磁波遮蔽材10の様に、透明基材5が積層された構成としても良い。透明基材5の積層により、機械的強度を増すことができ、また、導電体パターン層1として透明基材5上に印刷法により形成した導電性組成物層を容易に利用することが可能となる。印刷法は、例えば、スクリーン印刷、凹版印刷、フレキソ印刷などである。
積層面は、導電体パターン層1の表裏面のうちいずれか1面又は2面とすることができる。
【0063】
(透明基材)
透明基材1としては、透明な樹脂シート、ガラスやセラミックス等の無機板を用いることができる。上記樹脂シートの樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートシートは好適な材料である。樹脂シートの厚みは、取扱性、コスト等の点で通常は12〜500μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。樹脂シートはウェブ状、枚葉シート状いずれの形態でも良い。
【0064】
(導電性組成物層)
前記導電性組成物層としては、導電性粒子と樹脂バインダを含有する導電性組成物からなるインキを印刷して形成することができる。導電性粒子は、銀、銅、アルミニウム、錫、ニッケルなど高導電性金属(これら金属単体或いは合金)粒子、或いは樹脂粒子や非金属無機物粒子の表面を金、銀など高導電性金属で被覆した金属被覆粒子、或いは黒鉛粒子などである。また、樹脂バインダは、樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを単独使用又は併用する。熱可塑性樹脂には熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂など、硬化性樹脂には、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などを使用する。また、電離放射線硬化性樹脂には、電離放射線で架橋など重合硬化するモノマー及びプレポリマーの1種以上を含む組成物を使用する。モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を用いることができる。なかでも、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。電離放射性硬化性樹脂を硬化させる電離放射線としては、通常、紫外線や電子線が用いられる。
【0065】
前記導電性組成物層としては、国際公開第2008/149969号のパンフレットで開示された「引抜プライマ方式凹版印刷法」を利用したものは、より高精細にできる点で好ましい。なお、この凹版印刷法は、凹版版面の凹部内に充填したインキ(導電ペースト)を引き抜いて、被印刷物への転移を促進させる、電離放射線硬化性樹脂等からなるプライマ層を、印刷の最中に流動状態で作用させて版面上で固化させてから、離版し印刷する方法である。このプライマ層は、他の印刷法に見られない断面形状を有し、導電性組成物層の形成部での厚さがその非形成部での厚さよりも厚い形状となる。
このプライマ層は透明な樹脂層で、その樹脂は熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等で、硬化性樹脂は熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等が可能だが、固化が迅速な点で紫外線照射等で硬化する電離放射線硬化性樹脂が好ましくは用いられる。
【0066】
〔C〕複合化積層体:
本発明の複合化積層体30は、図15に例示する実施形態例の様に、上述した本発明の電磁波遮蔽材10と、これに積層された少なくも1層の機能層20とからなる。機能層20の積層により、電磁波遮蔽材10による電磁波遮蔽機能と、機能層の機能とが複合化した光学部材とすることができる。機能層20の積層面は、図15(A)に示す電磁波遮蔽材10の観察者V側の面、或いは、図15(B)に示す様に観察者V側とは反対側の面、或いは、図示はしないが、これらの両面、のいずれでも良い。
機能層20としては、光学フィルタに於ける従来公知の各種機能層を適宜採用することができる。機能層20は、光学機能層と非光学機能層とがある。光学機能層の例としては、近赤外線吸收層、ネオン光吸收層、調色層、紫外線吸収層、反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)特開2007−272161号公報等に記載のいわゆるマイクロルーバ層等が挙げられ、非光学機能層の例としては、ハードコート層、耐衝撃層(衝撃吸收層)、防汚層、帯電防止層、抗菌層、防黴層等が挙げられる。こられの機能層の内容は、従来公知のものとすることができる。
複合化積層体30は、これらの機能層により、電磁波遮蔽機能に加えて、1または複数の機能が複合化されたものとすることができる。機能層により複数の機能を設ける場合、それぞれの機能毎に1層を設けても良いし、複数の機能を1層で兼用して設けてもよい。
【0067】
〔D〕画像表示装置:
本発明による画像表示装置は、図16に例示する実施形態例の様に、画像表示パネル40と、この画像表示パネル40の観察者V側である前面40aの側に配置された上記の様な電磁波遮蔽材10又は複合化積層体30を、少なくとも備える画像表示装置100である。本画像表示装置100は、上記画像表示パネル40以外に、筐体(キャビネット)、入出力部品等の他、画像表示装置の用途に応じて、例えば、テレビジョン受像機の場合はチューナ等の、公知の各種部品を備える。これらのその他の構成要素は、特に制限はなく、用途に応じたものとなる。
画像表示パネル40は、プラズマディスプレイパネル、液晶パネル、EL(電界発光)パネル等の平面画像を表示可能な表示パネルである。また、表示面が平面のブラウン管等でも良い。画像表示パネル40としては、ディスプレイ駆動回路等の各種回路、該駆動回路と画像表示パネル本体間の配線、これらを一体化するシャーシ、フレーム等を含んでいても良い。従って、画像表示パネル40は、「ディスプレイモジュール」乃至は「パネルモジュール」等と呼ぶこともできる。
【0068】
図面では電磁波遮蔽材10又は複合化積層体30と、画像表示パネル40とは、互いに分離独立して間に空気層を介して配置した構成となっているが、間に透明樹脂の接着剤層を介して積層一体化しても良く、一体化により総厚みを減らすことができる。
【0069】
以上のように、電磁波遮蔽材10又は複合化積層体30を用いた画像表示装置100とすることによって、導電体パターン層1の周期的配列に起因するモアレ発生を解消すると共に、その配置の粗密による明暗ムラも解消して、これらを両立させ、なおかつ外光によるコントラスト低下を防いだ画像表示装置とすることができる。
【0070】
〔E〕用途:
本発明による電磁波遮蔽材10或いは複合化積層体30は、各種画像表示パネルの観察者側の前面に配置する用途が好適である。画像表示パネルとしては、例えば、プラズマディスプレイパネル、液晶表示パネル、電界発光パネル、電子ペーパーなどの他、ブラウン管などでもよい。
また、本発明による電磁波遮蔽材10或いは複合化積層体30は、住宅、店舗、学校、事務所、病院乃至医院等の建物の窓、透明な扉、透明な壁面乃至間仕切に貼着し、一方から他方又は他方から一方への、或いはこれら両法において、望まれない電磁波を遮蔽する用途にも使用出来る。
また、電磁波遮蔽材10或いは複合化積層体30を備える本発明による画像表示装置100は、テレビジョン受像機、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器、デジタルフォトフレーム等の画像表示装置として好適である。
【符号の説明】
【0071】
1 導電体パターン層
1P メッシュパターン
2 暗色層
3 溝状凹部
4 針状金属
5 透明基材
10 電磁波遮蔽材
20 機能層
30 複合化積層体
40 画像表示パネル
50 従来の電磁波遮蔽材
100 画像表示装置
A 開口部
B 分岐点
BP 母点
L 境界線分
Lt ライン部(境界線分の集合)
S 単位パターン領域
V 観察者
【技術分野】
【0001】
本発明はディスプレイの画像観察者側である前面に配置するのに好適な電磁波遮蔽材と、これをさらに複合化した複合化積層体と、これらを用いた画像表示装置に関する。
特に、画像表示パネルの画素配列との干渉によるモアレが生じず、外光によるコントラスト低下も防げる電磁波遮蔽材及び複合化積層体、並びにこれらを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネル、EL(電界発光)パネルなど、各種画像表示パネルが普及しているが、画像表示パネルの前面には光学フィルタが配置される。例えば、プラズマディスプレイパネルでは、前面に配置する光学フィルタとして電磁波遮蔽材が使われている。電磁波遮蔽材は、通常、正方格子などの単位格子が平面内に繰返し配列した、空間周期を有する金属メッシュからなる(特許文献1)。
ただ、こうした周期パターンを有する金属メッシュからなる電磁波遮蔽材は、画像表示パネルの画素配列も周期的配列をしている為に、画素の配列周期と干渉して、モアレ(縞模様)が生じる。
【0003】
このモアレを防ぐ為に、通常、電磁波遮蔽材は、金属メッシュの配列方向をディスプレイパネの画素の配列方向から3〜45°程度傾ける、いわゆるバイアス角を設けることが行われている(特許文献2)。
また、画像表示パネルの前面に配置する光学フィルタには、外光の混入によって画像が白化しコントラストが低下するのを防止する機能も要求されている。
【0004】
特許文献2では、コントラスト向上フィルタを積層した電磁波遮蔽材を提案している。コントラスト向上フィルタは、通常、暗色の光吸収部と光透過部とが面内にストライプ状に交互に配列した周期的パターンからなるコントラスト向上層を有する。コントラスト向上層の周期的パターンも、画像表示パネルの画素の配列周期と干渉して、モアレが生じる。そこで、このモアレを防ぐ為に、コントラスト向上層も同様に、その配列方向を、画像表示パネルの画素の配列方向に対して、バイアス角を設けることが知られている。
さらに、コントラスト向上層は電磁波遮蔽材の金属メッシュとも干渉して、光学フィルタ内でモアレが生じるので、コントラスト向上層と金属メッシュとの間でも、バイアス角を設けることが知られている(特許文献2)。
【0005】
このように、周期的パターンを有する要素同士を複合化することによって、モアレ防止は、適用する画像表示パネルのサイズ毎に、金属メッシュ、コントラスト向上層及び画像表示パネルの三者の周期的パターンのそれぞれの周期、周期同士の比率、寸法、などを考慮することになり、製品設計が複雑化する。
【0006】
そこで、周期的パターンをランダム化したものも提案されている。例えば、正方格子状の金属メッシュについて、正方格子の配列方向の2方向、これをX軸方向とY軸方向とすると、このうち1方向、例えばX軸方向についてのみ、その配列周期をランダム化した電磁波遮蔽材である(特許文献3)。
或いは、図17(A)の正方格子パターンを元に、図17(B)の様に、縦線と横線の格子点に於ける4つの内角を、全て90°以外の角度に設定したパターンにしてランダム化した、電磁波遮蔽材である(特許文献4)。
ただ、特許文献3や特許文献4によるランダム化では、なお、配列に周期性が残り、モアレは残留する。
【0007】
一方、有機溶剤処理と酸処理とを組み合わせた化学処理によって形成した金属メッシュからなる電磁波遮蔽材も提案されている(特許文献5)。この金属メッシュは完全にランダムパターン化しており、この電磁波遮蔽材によれば、モアレは解消する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3388682号公報
【特許文献2】特表2009−535673号公報
【特許文献3】特開平11−121974号公報
【特許文献4】特開平4−217397号公報
【特許文献5】国際公開第2007/114076号のパンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献5による電磁波遮蔽材は、メッシュパターン自体に粗密が存在し、濃淡ムラが目視され、画像表示パネルの前面に配置とする表示画像に明暗ムラが生じる。
また、コントラスト向上層の有無に関わらず、いずれの電磁波遮蔽材を採用するにせよ、外光が金属メッシュ表面で反射して画面が白化しコントラストが低下するので、黒化層を表面に形成して外光反射を防止するのが普通である。ただ、既存の黒化層、例えば、黒化ニッケルめっき、銅−コバルト合金めっき、酸化銅黒化層などでは、導電性と外光反射防止性との両立が困難であった。
加えて、特許文献5の完全ランダムなメッシュパターンは、その製法にも起因して、開口部内に途中まで入り込んで行き止まりとなる部分が一部に発生する。こうした行き止まりの部分は断線して回路が開いた形となり、正方格子等の閉回路のみからなるメッシュパターンに比べて同じ開口率での導電性(電磁波遮蔽性)は低下する。
【0010】
すなわち、本発明の課題は、電磁波遮蔽材ついて、画像表示パネルの画素と干渉に起因するアレ発生を防ぐと共に、導電体メッシュの粗密による明暗ムラも同時に防ぎ、なお且つ、十分な導電性を確保しつつメッシュ表面での外光反射による画面白化・コントラスト低下を防ぐことである。
また、このような電磁波遮蔽材或いは複合化積層体を備えた画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明では、次の様な構成の電磁波遮蔽材、複合化積層体及び画像表示装置とした。
(1)導電体パターン層と、その少なくとも表裏面の何れか1面に形成された暗色層とを有する電磁波遮蔽材であって、
前記導電体パターン層の平面視形状が多数の開口部を画成するメッシュパターンからなり、このメッシュパターンは、二つの分岐点の間を延びて前記開口部を画成する多数の境界線分から形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、前記開口部が一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンであり、
前記暗色層は、表面に溝状凹部を有し、この溝状凹部が形成された表面に突出した針状金属を有する、
電磁波遮蔽材。
(2)開口部の平面視形状として、少なくとも五角形及び六角形を含んでなる、上記(1)の電磁波遮蔽材。
(3)暗色層が形成された導電体パターン層に、さらに透明基材が積層されている上記(1)または(2)の複合化積層体。
(4)さらに機能層が積層されている、上記(1)〜(3)のいずれかの電磁波遮蔽材。
(5)画像表示パネルと、この画像表示パネルの前面に配置された上記(1)〜(3)のいずれかの電磁波遮蔽材または上記(4)の複合化積層体とを備えた画像表示装置。
【発明の効果】
【0012】
(1)本発明の電磁波遮蔽材によれば、導電体パターン層のメッシュパターンが周期性がない特定のパターンであるために、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが出来ると共に、メッシュパターンの粗密による明暗ムラも極めて効果的に目立たなく出来、モアレ解消と明暗ムラ解消とを両立させることができる。また、モアレ防止のためにバイアス角を付ける必要がないために、製品設計が容易になる。さらに、導電体パターン層表面に設けた特定の表面構造をした暗色層によって、導電性を維持しつつ、外光反射が極めて効果的に抑制され、画像のコントラスト低下を防ぐことができ、導電性とコントラスト低下防止性とが両立する。
(2)本発明の複合化積層体によれば、上記効果に加えて、電磁波遮蔽機能以外の他の機能が複合化されたものとできる。
(3)本発明の画像表示装置によれば、上記電磁波遮蔽材乃至は複合化積層体による効果を享受でき、十分な導電性を維持しつつ、モアレ、明暗ムラ、コントラスト低下の全てを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による電磁波遮蔽材の一実施形態を説明する断面図(A)及び(C)と平面図(B)。
【図2】暗色層の表面の溝状凹部と針状金属の表面構造を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図3】メッシュパターンの一例を示す平面図。
【図4】メッシュパターンに繰返周期が存在しないことを説明する平面図。
【図5】メッシュパターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図6】メッシュパターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図7】メッシュパターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図8】決定された母点群の分散の程度を絶対座標系と相対座標系で説明する図。
【図9】決定された母点からボロノイ図を作成してメッシュパターンを決定する方法を示す図。
【図10A】本発明によるメッシュパターンを示す平面図。
【図10B】画像表示パネルの画素配列を示す平面図。
【図10C】図10Aと図10Bとを重ねた状態を示す平面図。
【図11A】従来の導電体パターン層が有する周期的パターンを示す平面図。
【図11B】画像表示パネルの画素配列を示す平面図。
【図11C】図11Aと図11Bとを重ねた状態を示す平面図。
【図12】開口部の形状例を示す平面図。
【図13】メッシュパターンが電磁波遮蔽材の寸法の1/3以上の大きさの単位パターン領域として繰り返された一例を示す平面図。
【図14】本発明による電磁波遮蔽材の別の実施形態(透明基材付き)を示す断面図。
【図15】本発明による複合化積層体の実施形態を示す断面図。
【図16】本発明による画像表示装置の実施形態を示す断面図。
【図17】従来の電磁波遮蔽材におけるランダムパターンの一例を示す平面図であり(A)はランダム化前、(B)はランダム化後。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、説明上の都合に応じて適宜、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0015】
〔A〕用語の定義:
以下に、本発明において用いる主要な用語について、その定義をここで説明しておく。
【0016】
「シート面」とは、シート状の電磁波遮蔽材を全体的かつ大局的に見た場合において、その平面方向と一致する面のことを意味する。通常は、電磁波遮蔽材の表面、裏面、又は表裏両面と平行な面となる。図1に於いては、XY平面又はこれと平行な面となる。
「表面」、「裏面」、「側面」とは、シート面に平行な2面の一方の面が「表面」であり他方の面が「裏面」である。一方の面を「表面」とするか「裏面」とするかの区別はない。「側面」とはシート面に平行ではない面、典型的にはシート面に垂直な面であり、層の断面として露出する面が該当する。
「平面視形状」とは、「シート面」に平行な面に於ける形状のことを意味する。言い換えると、「平面視形状」とは、「シート面」に立てた法線の方向から見た形状のことを意味する。
「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0017】
〔B〕電磁波遮蔽材:
本発明による電磁波遮蔽材を、図1に示す一実施形態例を参照して説明する。
【0018】
図1で例示する本発明の電磁波遮蔽材10は、図1(A)の断面図で示すように、導電体パターン層1と、この導電体パターン層1の、表裏面と両側側面の全部の表面に形成された暗色層2とからなる。この暗色層2は、表面に溝状凹部3を有し、この溝状凹部3が形成された表面に針状金属4を有する。この溝状凹部3と針状金属4を有する暗色層2の表面構造によって、外光が効果的に吸収され、導電体パターン層1による外光反射を極めて効果的に防ぐことができる。
特に、分岐、蛇行、又はこれらの両方を有する渓谷状の溝状凹部3によって、光が溝状凹部3の内部に進入すると複雑な経路で反射を多数回繰り返すことで減衰する。この為、溝状凹部3によって、外光反射を防止する。
さらに、針状金属4によっても、外光が、針間の面で多重反射されるうちに、吸収、散乱が多数回起こり、多くの光を減衰させ、反射光量、特に鏡面反射光量を大幅に減少させて、外光の反射を防止する。
【0019】
図1(B)の平面図で示すように、導電体パターン層1は、これを上からみた、つまりシート状の電磁波遮蔽材10をZ軸方向からみた平面視形状が、多数の開口部Aを画成する特有のメッシュパターン1Pを呈している。このメッシュパターン1Pは、二つの分岐点Bの間を延びて前記開口部Aを画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、前記開口部Aが一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンである。
図1(C)は図1(B)中のC−C線での断面図である。図1(C)の断面図で示す様に、C−C線(図4に於ける任意位置に任意角度で伸ばした仮想的な線分diに相当する)を横切る開口部Aの幅t1,t2,t3,・・・・は、一定でない。メッシュパターン1Pで画成される開口部Aは、従来の正方格子など格子状の周期的メッシュパターンに於ける単位格子に相当する。この点で、メッシュパターン1Pは、単位格子つまり開口部Aが、間に境界線分Lを介して複数互いに隣接して配列して構成されている。
なお、図1(C)では、導電体パターン層1のみを描いてあり、暗色層2などその他の図示は省略してある。
【0020】
このため、本実施形態では、上記メッシュパターン1Pは、従来のような周期的配列ではなく、そのメッシュパターン1Pが非周期的パターンであるために、画像表示パネルの前面フィルタとして用いた時に、画素配列との干渉によるモアレを生じず、明暗ムラも生じず、モアレと明暗ムラとを極めて効果的に防ぐことができる。
【0021】
図2は、暗色層2の表面の溝状凹部3と針状金属4とを具体的に示す、走査型電子顕微鏡写真である。図中、溝状凹部3を有する表面に、多数の針状金属4が存在するのが視認される。
【0022】
〔導電体パターン層〕
導電体パターン層1は、導電性材料からなり平面視形状が本発明特有の非周期的なメッシュパターン1Pを呈する。
導電性材料としては、銅、アルミニウム、錫、ニッケル等の金属を用いることができる。導電体パターン層1は、こうした金属からなる金属箔、金属厚膜等からフォトエッチング法などにより所定のメッシュパターン1Pを形成することで得ることができる。
導電体パターン層1の厚みは、電磁波遮蔽性能(導電性)、形成法等の点から、通常は2〜100μm、より好ましくは5〜20μm程度である。
メッシュパターン1Pの線幅は、電磁波遮蔽性能などの観点から通常は5〜50μmである。また、開口部Aの面積割合は透明性と電磁波遮蔽性能の両立性の点で、50〜95%程度である。
【0023】
[メッシュパターンとこれにより画成される開口部]
メッシュパターン1Pは、導電体パターン層1を、シート面の法線方向(図1でZ軸方向)から観察した場合における平面視形状である。以下、このメッシュパターン1Pについて、図3および図9を主として参照しながら説明する。
【0024】
メッシュパターン1Pは、図3に示す如く、二つの分岐点Bの間を延びて開口部Aを画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0、つまり、3.0以上で4.0未満であり、且つ、前記境界線分Lで画成された前記開口部Aに繰返周期を持つ方向が存在しない領域を含んでなるパターンとなっている。
なお、メッシュパターン1Pは、開口部Aが繰返周期を持つ方向が存在しない配列となってモアレ防止効果が十分に発現される為には、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口部Aの面積及び形状は一定でないようなパターンとすると良い。好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口部Aの50%以上が互いにその面積及び形状が異なるようにする。より好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口部Aをメッシュパターン1Pの全域に亙って、全て互いにその面積及び形状が異なるようにする。これは、言い換えると、メッシュパターン1Pに含まれる開口部Aのうち、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一となる開口部Aの形状及び面積がすべて同一ではなく、少なくとも一部は他と異なるものになると言うことを意味する。なお、ここで周囲を囲繞する境界線分Lの数とは、開口部Aが多角形である場合は、その多角形の角数と一致する。また、以上に於いて、2つの開口部A同士が互いに合同な図形であって且つその向きが異なる場合も、これらの2つの開口部Aの形状は互いに異なると見做す。
【0025】
図3および図9に示すように、メッシュパターン1Pのライン部Ltは、多数の分岐点Bを含んでいる。メッシュパターン1Pのライン部Ltは、両端において分岐点Bを形成する多数の境界線分Lから構成されている。すなわち、メッシュパターン1Pのライン部Ltは、二つの分岐点Bの間を延びる多数の境界線分Lから構成されている。そして、分岐点Bにおいて、境界線分Lが接続されていくことにより、開口部Aが画成されている。言葉を換えて言うと、境界線分Lで囲繞され、区画されて1つの閉領域としての開口部Aが画成されている。
【0026】
なお、図3および図9に示すように、ライン部Ltが境界線分Lのみから構成されているため、特許文献5に開示のメッシュパターンの如く開口部Aの内部に延び入って行き止まりとなるライン部Ltは存在しない。このような態様によれば、電磁波遮蔽材10に十分な導電性と高い透明性とを同時に付与することを効果的に実現することできる。
【0027】
一方、モアレの発生を防止するため、本実施形態による電磁波遮蔽材10の導電体パターン層1が有するメッシュパターン1Pでは、その全領域が、開口部Aが繰返周期を有する方向が存在しないようになっている。モアレを確実に解消する為には、メッシュパターン1Pの全領域がこのような領域のみから構成されていることが好ましい。本実施形態はこの様な構成からなる。本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、単にメッシュパターン1Pのパターンを不規則化するのではなく、メッシュパターン1Pの開口部Aが一定の規則性を持った繰返周期で並べられた方向が存在しないようにメッシュパターン1Pのパターンを画成することにより、開口部Aが周期的配列された構成の従来の正方格子状などの電磁波遮蔽材と、周期的画素配列を有する画像表示パネルとを重ねた際に生じ得るモアレを、極めて効果的に目立たなくさせることが出来ると判明した。
【0028】
[繰返周期の不存在]
図4は、メッシュパターン1Pで画成される多数の開口部Aが、一定の周期で配置されている領域が存在せず、繰返周期が存在しないことを説明するXY平面に平行なシート面に於ける平面図である。このシート面の面内において、同図では、任意の位置で任意の方向を向く一本の仮想的な直線diが選ばれている。
この一本の直線diが、ライン部Ltの境界線分Lと交差し交差点が形成される。この交差点を、図面では図面左下から順に、交差点c1,c2,c3,・・・・・,c9として図示してある。隣接する交差点、例えば、交差点c1と交差点c2との距離が、前記或る一つの開口部Aの直線di上での寸法t1である。次に、寸法t1の開口部Aに対して直線di上で隣接する別の開口部Aについても、同様に、直線di上での寸法t2が定まる。そして、任意位置で任意方向の直線diについて、直線diと交差する境界線分Lとから、任意位置で任意方向の直線diと遭遇する多数の開口部Aについて、該直線di上における寸法として、t1,t2,t3,・・・・・・,t8が定まる。そして、t1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びには、周期性が存在しない。
図4では、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8は、判り易い様に図面下方に、直線diと共にメッシュパターン1Pとは分離して描いてある。
【0029】
この直線diを図4で図示のものから任意の位置で任意の角度回転させて別の方向について各開口部Aの寸法t1,t2,・・を求めると、やはり図4の場合と同様、直線di方向に対して繰返し周期性は見られない。
すなわち、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びの様に、境界線分Lで画成された開口部Aには繰返周期を持つ方向が存在しない。
言い換えると、開口部Aの配置において、任意位置を通る任意方向の仮想的線分di上での開口部Aの寸法tiの並びの数列が非周期関数となる。すなわち、t(i)=t(i+M)となるMが存在しない(i,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
このように、開口部Aが繰返周期を持つ方向が存在しないことを、開口部Aが一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない、と表現する。
【0030】
さらに、本実施形態によるメッシュパターン1Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている。このように一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている場合、メッシュパターン1Pの配列パターンを、正方格子パターン(N=4.0)から大きく異なるパターンとすることができる。また、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている場合には、ハニカム配列(N=3.0)からも大きく異なるパターンとすることができる。そして、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nを3.0≦N<4.0とした上で、開口部Aの配列を不規則化して、開口部Aが繰返周期を持って並べられた方向が安定して存在しないようにすることが可能となり、その結果、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることが、確認された。
【0031】
なお、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nは、厳密には、メッシュパターン1P内に含まれる全ての分岐点Bについて、延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出することになる。ただし、実際的には、ライン部Ltによって画成された一つ当たりの開口部Aの大きさ等を考慮した上で、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、後述の寸法例で開口部Aが形成されているメッシュパターン1Pにおいては、10mm×10mmの部分)に含まれる分岐点Bについて延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出し、算出された値を当該メッシュパターン1Pについての一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nとして取り扱うようにしてもよい。
【0032】
実際に、図3に示された電磁波遮蔽材10の導電体パターン層1のメッシュパターン1Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている。一例を挙げると、図3のメッシュパターン1Pの場合、合計387個の分岐点Bについて計測したところ、境界線分Lが3本の分岐点Bが373個、境界線分Lが4本の分岐点Bが14個であり(分岐する境界線分Lの数が5個以上の分岐点は0個)、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数(平均分岐数)は3.04個であった。
【0033】
[画像表示パネルの画素配列との干渉によるモアレ発生状況]
図10Cには、図3及び図10Aに示されたメッシュパターン1Pを有する電磁波遮蔽材10を、図10Bに示された画像表示パネル40に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図10Cからも理解され得るように、図3及び図10A示されたメッシュパターン1Pを実際に作製して画像表示パネル40の画素配列上に配置した場合、視認され得る程度の縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)は発生しなかった。
【0034】
ここで、図10Bで示された画像表示パネル40の画素配列は、画像表示パネル40に於ける典型的な画素配列である。図10Bに示す様に、この画像表示パネル40では、一つの画素Pは、赤色に発光する副画素(サブピクセル)RPと、緑色に発光する副画素GPと、青色に発光する副画素BPと、から構成されている。すなわち、画像表示パネル40はカラーで画像を形成することができる。図10Bに示された例は、いわゆるストライプ配列として、画素Pが形成されている。すなわち、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、それぞれ、一つの方向(図10Bでは縦方向)に連続して並べられている。一方、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、当該一つの方向に直交する方向(図10Bでは横方向)に、一つずつ、順に並べられている。なお、図10Bは、画像表示パネル40の画像形成面(出光面、即ち画面)への法線方向、言い換えると、画像表示パネル40のパネル面への法線方向から当該画像表示パネル40を観察した状態で、画素Pの配列を示している。
【0035】
一方、従来の電磁波遮蔽材50において、周期的メッシュパターン51Pで画成される開口部Aに一定の繰返周期が存在する場合のモアレ発生を例示するのが図11A〜図11Cである。
【0036】
図11Aに図示したものは、正方格子状の周期的メッシュパターン51Pであり、本発明のメッシュパターン1Pとは異なるものである。
図11Cには、図11Aに示された周期的メッシュパターン51Pを、図11Bに示された画像表示パネル40(図10Bで示したものと同じである)に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図11A、図11B及び図11Cからも理解され得るように、周期的メッシュパターン51Pを有する電磁波遮蔽材50が画像表示パネル40の画素配列上に配置されると、周期的メッシュパターン51Pと画素の規則的パターンとの干渉によって、明暗の筋(図11Cに示された例では、左上から右下に延びている明暗の筋)が視認されるようになる。
【0037】
なお、図11Aおよび図11Cに示された例では、周期的メッシュパターン51Pの正方格子を構成する多数の直線の配列方向が、画素Pの配列方向に対して、数度傾斜している。この傾斜角をバイアス角(度)と呼称する。このような傾斜は、一般的に、モアレを目立たなくさせるものとして広く用いられている手法である。但し、図11Cに縞状模様が視認されることからも理解され得るように、モアレ発生の程度は単にバイアス角のみで決まる訳では無く、この他、画素P及び周期的メッシュパターン51Pの繰返周期比、周期的メッシュパターン51Pの線幅等の要因にも依存する。周期的メッシュパターン51Pのバイアス角のみでモアレを解消しようとすると、画像表示パネル40の設計仕様毎に応じてバイアス角の異なる電磁波遮蔽材50を用意する必要が有る。
【0038】
[メッシュパターンのパターン形状の作成方法]
ここで、本発明固有の上記メッシュパターン1Pのパターンを作成する方法の一例を以下に説明する。
【0039】
ここで説明する方法は、母点を決定する工程と、決定された母点からボロノイ図を作成する工程と、ボロノイ図における一つのボロノイ境界によって結ばれる二つのボロノイ点の間を延びる境界線分Lの経路を決定する工程と、決定された経路の太さを決定して各境界線分Lを画定してメッシュパターン1P(ライン部Lt)のパターンを決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。なお、上述した図3に示されたパターンは、実際に以下に説明する方法で決定されたパターンである。
【0040】
まず、母点を決定する工程について説明する。最初に、図5に示すように、絶対座標系O−X−Y(この座標系O−X−Yは普通の2次元平面であるが、後述の相対座標と区別する為、頭に「絶対」を付記する)の任意の位置に一つ目の母点(以下、「第1の母点」と呼ぶ)BP1を配置する。次に、図6に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れた任意の位置に第2の母点BP2を配置する。言い換えると、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径rの円の円周(以下、「第1の円周」と呼ぶ)上の任意の位置に、第2の母点BP2を配置する。次に、図7に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ第2の母点BP2から距離r以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点BP2,BP3から距離r以上離れた任意の位置に、第4の母点を配置する。
【0041】
このようにして、次の母点を配置することができなくなるまで、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、第2の母点BP2を基準にしてこの作業を続けていく。すなわち、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を配置する。第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更して、同様の手順で母点を形成していく。
【0042】
以上の手順で、メッシュパターン1Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。メッシュパターン1Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。ここまでの処理により、2次元平面(XY平面)に於いて不規則的に配置された母点群が、メッシュパターン1Pが形成されるべき領域内に一様に分散した状態となる。
【0043】
このような工程で2次元平面(XY平面)内に分布された母点群BP1、BP2、・・、BP6(図8(A)参照)について、個々の母点間の距離は一定では無く分布を有する。但し、任意の隣接する2母点間の距離Rの分布は完全なランダム分布(一様分布)でも無く、平均値RAVGを挾んで上限値RMAXと下限値RMINとの間の範囲ΔR=RMAX−RMINの中で分布している。なお、ここで、隣接する2母点であるが、母点群BP1、BP2、・・からボロノイ図を作成した後、2つのボロノイ領域XAが隣接していた場合に、その2つのボロノイ領域XAの母点同士が隣接していると定義する。
【0044】
即ち、ここで説明した母点群について、各母点を原点とする座標系(相対座標系o−x−yと呼称し、一方、現実の2次元平面を規定する座標系を絶対座標系O−X−Yと呼称する)上に、原点に置いた母点と隣接する全母点をプロットした図8(B)、図8(C)、・・等のグラフを全母点について求める。そして、これら全部の相対座標系上の隣接母点群のグラフを、各相対座標系の原点oを重ね合わせて表示すると、図8(D)の如きグラフが得られる。この相対座標形上での隣接母点群の分布パターンは、母点群を構成する任意の隣接する2母点間の距離が0から無限大迄の一様分布では無く、原点oからの距離がRAVG−ΔRからRAVG+ΔR迄の有限の範囲(半径RMINからRMAX迄のドーナツ形領域)内に分布していることを意味する。
なお、図8(D)からわかる様に、任意の1母点から見た他の母点の方位(角度)分布は等方的(乃至は略等方的)である。このことが、これらの母点(群)から生成されるメシュパターン1Pに於ける開口部Aの方位(角度)分布が等方的(乃至は略等方的)となることに対応する。
【0045】
以上の様にして、各母点間の距離を設定することによって、該母点群から以下に説明する方法で得られるボロノイ領域XA、更には、これから得られる開口部Aの大きさ(乃至は開口部Aの面積)の分布についても、一様分布(完全ランダム)では無く、有限の範囲内に分布したものとなる。
この様に構成することにより、メッシュパターン1Pを目視した際の濃淡(明暗)ムラが、より一層、効果的に解消する。メッシュパターン1Pの目視時の濃淡ムラを、実質上、目視不能とし、且つメッシュパターン1Pの非周期性によるモアレ防止性とも両立させる為には、開口部Aの大きさD(開口部Aの大きさ)の最大値をDMAX、最小値をDMINとしたときに、当該大きさDの分布範囲ΔD=DMAX−DMINが大きさDの平均値DAVGに対して、
0.1≦ΔD/DAVG≦0.6
より好ましくは、
0.2≦ΔD/DAVG≦0.4
とする。
また、開口部Aの大きさの平均値DAVGは、透明性と電磁波遮蔽性との両立性の点から、100〜1000μm程度とする。通常は、150〜300μm程度である。
なお、ここで、開口部Aの大きさDは、全ての開口部Aについて、以下の定義とする。
(1)或る一つの開口部Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描ける場合は、この開口部Aの外接円直径を以って、大きさDとする。
(2)或る一つの開口部Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描け無い場合は、この開口部Aに属する2分岐点B間の距離の最大値を以って、大きさDとする。
【0046】
なお、以上の母点を決定する工程において、距離rの大きさを変化させることにより、一つあたりの開口部Aの大きさDを調節することができる。具体的には、距離rの大きさを小さくすることにより、一つあたりの開口部Aの大きさDを小さくすることができ、逆に距離rの大きさを大きくすることにより、一つあたりの開口部Aの大きさDを大きくすることができる。
【0047】
次に、図9に示すように、配置された母点を基準にして、ボロノイ図を作成する。図9に示すように、ボロノイ図とは、隣接する2つの母点BP、BP間に垂直二等分線を引き、その各二等分線同士の交点で結ばれた線分で構成される図である。ここで、二等分線の線分をボロノイ境界XBと呼び、ボロノイ境界XBの端部をなすボロノイ境界XB同士の交点をボロノイ点XPと呼び、ボロノイ境界XBに囲まれた領域をボロノイ領域XAと呼ぶ。
【0048】
図9のように作成されたボロノイ図において、各ボロノイ点XPが、メッシュパターン1Pの分岐点Bをなすようにする。そして、一つのボロノイ境界XBの端部をなす二つのボロノイ点XPの間に、一つの境界線分Lを設ける。この際、境界線分Lは、図3に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定してもよいし、あるいは、他の境界線分Lと接触しない範囲で二つのボロノイ点XPの間を種々の経路(例えば、円(弧)、楕円(弧)、抛物線、双曲線、正弦曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、ベッセル関数曲線等の曲線状、折れ線状等の経路)で延びるようにしてもよい。なお、境界線分Lは、図3に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定した場合、各ボロノイ境界XBが、境界線分Lを画成するようになる。
【0049】
各境界線分Lの経路を決定した後、各境界線分Lの線幅(太さ)を決定する。境界線分Lの線幅は、作成されたメッシュパターン1Pを呈する導電体パターン層1によって得られる導電性と透明性とを勘案して、決定される。以上のようにして、メッシュパターン1Pのパターンを決定することができる。
【0050】
以上のような本実施形態によれば、電磁波遮蔽材10の導電体パターン層1における光吸収部2を有するメッシュパターン1Pが、二つの分岐点Bの間を延びて多数の開口部Aを画成する多数の境界線分Lから形成されており、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっており、且つ、開口部Aが繰返周期を持つ方向が存在しないようになっている。この結果、規則的(周期的)に画素Pが配列された画像表示パネル40に、この電磁波遮蔽材10を重ねたとしても、縞状の模様(モアレ、干
渉縞)が視認され得る程度に発生することを効果的に防止することができる。
【0051】
〔暗色層〕
暗色層2は、その表面に溝状凹部3を有し、この溝状凹部3が形成された表面に突出した針状金属4を有する。暗色層2は、導電体パターン層1の表面に対する黒化処理によって形成され、外光を減衰させる。暗色層2は、暗色であれば良く、黒以外に低明度の色、例えば茶褐色など有彩色でもよい。
なお、図1に示す電磁波遮蔽材10では、暗色層2は、導電体パターン層1のメッシュパターン1Pに於ける境界線分Lに該当する部分の表面、裏面、及び両側側面の4面全てに設けられている。このため、全周囲からの光を吸収し減じることができる。ただ、暗色層2を設ける導電体パターン層1の面は、導電体パターン層1の少なくとも表裏面の何れか1面であっても良い。1面のみの場合、その面を電磁波遮蔽材10を画像表示パネルに適用時に観察者側となる面とすることで外光反射が防止される。
【0052】
(溝状凹部)
暗色層2の溝状凹部3は、暗色層2の下地膜として、金属の電解めっきによって形成することができる。なお、この下地膜は、暗色層2の表面の一部(溝状凹部3)を造形する為のものであり、本発明では、暗色層2の一部として取り扱う。
【0053】
電解めっきする金属としては、導電性が高く容易に電解めっき可能な金属(乃至その合金)であれば特に制限はなく、例えば、銅、銀、金、クロム、ニッケル、錫、などを用いることができる。なかでも、銅は材料費及び導電性に優れ好ましいる。めっき皮膜の厚さは、例えば、0.1〜10μmである。
電解めっきは公知の方法でよく、電解めっき条件は、例えば、浴温度20〜60℃、電流密度0.001〜10A/dm2、めっき時間1〜10min程度である。
電流密度を例えば2A/dm2などと大きくすることによって、めっき皮膜の表面に、溝状凹部3が、分岐、蛇行、又はこれらの両方を有する渓谷状の形状として生成し易くなる。具体例を示せば、硫酸銅五水和物75g/L、硫酸180g/L、塩酸60mg/L、炭化水素系高分子系めっき添加剤(配向調整剤)40mL/Lを含む液で、浴温25℃、電流密度2A/dm2、めっき時間5minの処理条件とする。
こうした溝状凹部3、特に、分岐、蛇行、又はこれらの両方を有する渓谷状の溝状凹部3によって、光が溝状凹部3の内部に進入すると複雑な経路で反射を多数回繰り返すことで減衰する。この結果、溝状凹部3によって外光反射を防止できる。
【0054】
(針状金属)
暗色層2の針状金属4は、溝状凹部3を形成する為に設けた下地膜の表面を黒化処理することによって生成される。
黒化処理は、例えば、硫酸銅五水和物と硫酸を含む水溶液からなる電解浴を用いた陰極電解処理によって、粗面化処理を行うことで、前記下地膜の表面に、銅からなる針状金属4を有する暗色層2を形成することができる。粗面化処理は、陰極電解で針状金属4を析出させた後、その上に金属めっきして針状金属4の脱落を防いだ後、金属皮膜を形成するのが好ましい。
針状金属4は、電流密度を大きくすることによって生成され易くなる。針状金属4の長さは、0.1〜1μm程度である。針状金属4の形成の具体例を示せば、第1段階は、硫酸銅五水和物70g/L、硫酸100g/L、浴温40℃、電流密度40A/dm2、電解時間5s、陽極:白金で処理し、第2段階は硫酸銅五水和物250g/L、硫酸100g/L、浴温45℃、電流密度20A/dm2、電解時間30s、陽極:白金の条件で処理する。
表面に多数の針状金属4を有することよって、暗色層2に入射した外光が針状金属4の面間で多重反射することで、吸収、散乱が多数回発生して、光を減衰させて、外光反射が防止される。
こうして、表面に溝状凹部3と針状金属4とを有する暗色層2を形成することで、溝状凹部3による効果と、針状金属4による効果との相乗効果によって、外光反射防止性能がより高められる。
【0055】
〔変形形態〕
本発明の電磁波遮蔽材10は、上記した実施形態以外のその他の各種形態をとり得る。以下、その一部を説明する。
【0056】
[開口部の形状]
開口部Aの形状は、少なくとも五角形と六角形とを含むことが好ましい。開口部Aに少なくとも五角形と六角形とを含むことによって、モアレを目立たなくさせることが出来ると共に、メッシュパターン1Pの粗密による明暗ムラもより確実に目立たなくさせることができる。更に好ましくは、開口部Aの形状が五角形、六角形、及び七角形を含む様にする。
例えば、図10Aの形態で使用したメッシュパターン1Pについて、合計4631個の開口部A(多角形)について計測したところ、
3角形 0個
4角形 79個
5角形 1141個
6角形 2382個
7角形 927個
8角形 94個
9角形 8個
10角形以上 0個
であった。
なお、このメッシュパターン1Pについて、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数を計測したところ3.07であった。
【0057】
[単位パターン領域としての繰返し]
上述した実施形態では、電磁波遮蔽材10中の導電体パターン層1の全領域において、メッシュパターン1Pによって画成される開口部Aが繰返周期を持つ方向が存在しないようになっている例を説明した。しかしながら、図14の様に、その内部に於いてメッシュパターン1Pの全領域が、単位パターン領域Sを複数集合してメッシュパターン1Pの全領域が構成されるようにして、且つ各単位パターン領域S内に於いては、複数の開口部Aが、所定の繰返周期のないパターンで配列されている領域からなるようにしてもよい。
すなわち、この形態に於いては、メッシュパターン1Pの全領域中に、局所的に見たときに、同一パターンで開口部群が配列されてなる単位パターン領域Sを2箇所以上含むようになる。この場合、特定方向について、一定周期で4箇所以上の繰返しが無ければ、単位パターン領域S同士の繋ぎ目は実質上目立ち難く、無視し得る。もちろん、単位パターン領域S中でモアレも濃淡ムラも生じていない。この例において、一つの単位パターン領域S内におけるメッシュパターン1Pのパターンは、例えば、図5〜図9を参照しながら説明したパターン作成方法と同様にして作成することができる。
【0058】
特に最近では、画像表示パネルの大型化が進んでおり、この様な大画面の画像表示パネルに対しては、メッシュパターン1Pが、複数の単位パターン領域Sの配列から構成されていて、且つ各々の単位パターン領域S内に於いては互いに同一のパターンで開口部Aが配列されている構成とした複数の単位パターン領域Sを含む形態とした方が、メッシュパターン1Pのパターン作成を格段に容易化することが可能となる点において好ましい。
【0059】
なお、特に一種類の単位パターン領域Sを図13に示す様に縦横に複数配置する例においては、特定方向(図面縦方向と横方向の2方向)で単位パターン領域Sとしての繰返しが存在する。図13の実施形態に於いては、横方向に繰返周期SP2、縦方向に繰返周期SP1を以って単位パターン領域Sが繰り返される。この条件下では、特定方向に於ける単位パターン領域Sの寸法をLsとし、該特定方向に延びる任意の直線dj上において単位パターン領域Sが寸法Ls内に開口部AをM個有するとき、直線dj上の或る開口部Aに注目すると、直線dj上では開口部Aの個数がM個分だけ離れた位置には、全く同じ寸法tj及び形状の開口部Aが常に存在するという規則性を有する。すなわち、開口部Aの直線dj上での寸法tjについて、直線dj上で順番に数えてk番目の寸法tj(k)と、そこから更にM番目の(k+M)番目の寸法tj(k+M)とが同じとなる、tj(k)=tj(k+M)の関係が成立する(k,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
【0060】
しかし、この規則性は、単位パターン領域Sとしての繰返周期(前記で言えば寸法Lsがその繰返周期に該当する)に基づくものであり、開口部Aとしての繰返周期ではなく、各単位パターン領域S内に於いて開口部Aが繰返周期を上記特定方向に持つことではない。また、単位パターン領域Sとしての繰返周期は、画像表示パネルの画素配列の配列周期に対して寸法が例えば1000倍以上異なる為に、モアレが発生する様な近い寸法関係にない。
【0061】
図13に示された例では、電磁波遮蔽材10が、同一の形状を有した六つの単位パターン領域Sに分割され、各単位パターン領域S内で、各導電体パターン層1が有するメッシュパターン1Pが同一に構成されている。そして、六つの単位パターン領域Sは、図13の縦方向(図の上下方向)に繰返周期SP1で三つの領域が並ぶとともに、図13の横方向に繰返周期SP2で二つの領域が並ぶように配列されている。
【0062】
[透明基材の積層]
本発明の電磁波遮蔽材は、図14の断面図で示す実施形態の電磁波遮蔽材10の様に、透明基材5が積層された構成としても良い。透明基材5の積層により、機械的強度を増すことができ、また、導電体パターン層1として透明基材5上に印刷法により形成した導電性組成物層を容易に利用することが可能となる。印刷法は、例えば、スクリーン印刷、凹版印刷、フレキソ印刷などである。
積層面は、導電体パターン層1の表裏面のうちいずれか1面又は2面とすることができる。
【0063】
(透明基材)
透明基材1としては、透明な樹脂シート、ガラスやセラミックス等の無機板を用いることができる。上記樹脂シートの樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートシートは好適な材料である。樹脂シートの厚みは、取扱性、コスト等の点で通常は12〜500μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。樹脂シートはウェブ状、枚葉シート状いずれの形態でも良い。
【0064】
(導電性組成物層)
前記導電性組成物層としては、導電性粒子と樹脂バインダを含有する導電性組成物からなるインキを印刷して形成することができる。導電性粒子は、銀、銅、アルミニウム、錫、ニッケルなど高導電性金属(これら金属単体或いは合金)粒子、或いは樹脂粒子や非金属無機物粒子の表面を金、銀など高導電性金属で被覆した金属被覆粒子、或いは黒鉛粒子などである。また、樹脂バインダは、樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを単独使用又は併用する。熱可塑性樹脂には熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂など、硬化性樹脂には、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などを使用する。また、電離放射線硬化性樹脂には、電離放射線で架橋など重合硬化するモノマー及びプレポリマーの1種以上を含む組成物を使用する。モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を用いることができる。なかでも、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。電離放射性硬化性樹脂を硬化させる電離放射線としては、通常、紫外線や電子線が用いられる。
【0065】
前記導電性組成物層としては、国際公開第2008/149969号のパンフレットで開示された「引抜プライマ方式凹版印刷法」を利用したものは、より高精細にできる点で好ましい。なお、この凹版印刷法は、凹版版面の凹部内に充填したインキ(導電ペースト)を引き抜いて、被印刷物への転移を促進させる、電離放射線硬化性樹脂等からなるプライマ層を、印刷の最中に流動状態で作用させて版面上で固化させてから、離版し印刷する方法である。このプライマ層は、他の印刷法に見られない断面形状を有し、導電性組成物層の形成部での厚さがその非形成部での厚さよりも厚い形状となる。
このプライマ層は透明な樹脂層で、その樹脂は熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等で、硬化性樹脂は熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等が可能だが、固化が迅速な点で紫外線照射等で硬化する電離放射線硬化性樹脂が好ましくは用いられる。
【0066】
〔C〕複合化積層体:
本発明の複合化積層体30は、図15に例示する実施形態例の様に、上述した本発明の電磁波遮蔽材10と、これに積層された少なくも1層の機能層20とからなる。機能層20の積層により、電磁波遮蔽材10による電磁波遮蔽機能と、機能層の機能とが複合化した光学部材とすることができる。機能層20の積層面は、図15(A)に示す電磁波遮蔽材10の観察者V側の面、或いは、図15(B)に示す様に観察者V側とは反対側の面、或いは、図示はしないが、これらの両面、のいずれでも良い。
機能層20としては、光学フィルタに於ける従来公知の各種機能層を適宜採用することができる。機能層20は、光学機能層と非光学機能層とがある。光学機能層の例としては、近赤外線吸收層、ネオン光吸收層、調色層、紫外線吸収層、反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)特開2007−272161号公報等に記載のいわゆるマイクロルーバ層等が挙げられ、非光学機能層の例としては、ハードコート層、耐衝撃層(衝撃吸收層)、防汚層、帯電防止層、抗菌層、防黴層等が挙げられる。こられの機能層の内容は、従来公知のものとすることができる。
複合化積層体30は、これらの機能層により、電磁波遮蔽機能に加えて、1または複数の機能が複合化されたものとすることができる。機能層により複数の機能を設ける場合、それぞれの機能毎に1層を設けても良いし、複数の機能を1層で兼用して設けてもよい。
【0067】
〔D〕画像表示装置:
本発明による画像表示装置は、図16に例示する実施形態例の様に、画像表示パネル40と、この画像表示パネル40の観察者V側である前面40aの側に配置された上記の様な電磁波遮蔽材10又は複合化積層体30を、少なくとも備える画像表示装置100である。本画像表示装置100は、上記画像表示パネル40以外に、筐体(キャビネット)、入出力部品等の他、画像表示装置の用途に応じて、例えば、テレビジョン受像機の場合はチューナ等の、公知の各種部品を備える。これらのその他の構成要素は、特に制限はなく、用途に応じたものとなる。
画像表示パネル40は、プラズマディスプレイパネル、液晶パネル、EL(電界発光)パネル等の平面画像を表示可能な表示パネルである。また、表示面が平面のブラウン管等でも良い。画像表示パネル40としては、ディスプレイ駆動回路等の各種回路、該駆動回路と画像表示パネル本体間の配線、これらを一体化するシャーシ、フレーム等を含んでいても良い。従って、画像表示パネル40は、「ディスプレイモジュール」乃至は「パネルモジュール」等と呼ぶこともできる。
【0068】
図面では電磁波遮蔽材10又は複合化積層体30と、画像表示パネル40とは、互いに分離独立して間に空気層を介して配置した構成となっているが、間に透明樹脂の接着剤層を介して積層一体化しても良く、一体化により総厚みを減らすことができる。
【0069】
以上のように、電磁波遮蔽材10又は複合化積層体30を用いた画像表示装置100とすることによって、導電体パターン層1の周期的配列に起因するモアレ発生を解消すると共に、その配置の粗密による明暗ムラも解消して、これらを両立させ、なおかつ外光によるコントラスト低下を防いだ画像表示装置とすることができる。
【0070】
〔E〕用途:
本発明による電磁波遮蔽材10或いは複合化積層体30は、各種画像表示パネルの観察者側の前面に配置する用途が好適である。画像表示パネルとしては、例えば、プラズマディスプレイパネル、液晶表示パネル、電界発光パネル、電子ペーパーなどの他、ブラウン管などでもよい。
また、本発明による電磁波遮蔽材10或いは複合化積層体30は、住宅、店舗、学校、事務所、病院乃至医院等の建物の窓、透明な扉、透明な壁面乃至間仕切に貼着し、一方から他方又は他方から一方への、或いはこれら両法において、望まれない電磁波を遮蔽する用途にも使用出来る。
また、電磁波遮蔽材10或いは複合化積層体30を備える本発明による画像表示装置100は、テレビジョン受像機、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器、デジタルフォトフレーム等の画像表示装置として好適である。
【符号の説明】
【0071】
1 導電体パターン層
1P メッシュパターン
2 暗色層
3 溝状凹部
4 針状金属
5 透明基材
10 電磁波遮蔽材
20 機能層
30 複合化積層体
40 画像表示パネル
50 従来の電磁波遮蔽材
100 画像表示装置
A 開口部
B 分岐点
BP 母点
L 境界線分
Lt ライン部(境界線分の集合)
S 単位パターン領域
V 観察者
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体パターン層と、その少なくとも表裏面の何れか1面に形成された暗色層とを有する電磁波遮蔽材であって、
前記導電体パターン層の平面視形状が多数の開口部を画成するメッシュパターンからなり、このメッシュパターンは、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、前記開口領域が一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンであり、
前記暗色層は、表面に溝状凹部を有し、この溝状凹部が形成された表面に突出した針状金属を有する、
電磁波遮蔽材。
【請求項2】
開口部の平面視形状として、少なくとも五角形及び六角形を含んでなる、請求項1に記載の電磁波遮蔽材。
【請求項3】
暗色層が形成された導電体パターン層に、さらに透明基材が積層されている請求項1または2に記載の複合化積層体。
【請求項4】
さらに機能層が積層されている、請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波遮蔽材。
【請求項5】
画像表示パネルと、この画像表示パネルの前面に配置された請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波遮蔽材または請求項4に記載の複合化積層体と、を備えた画像表示装置。
【請求項1】
導電体パターン層と、その少なくとも表裏面の何れか1面に形成された暗色層とを有する電磁波遮蔽材であって、
前記導電体パターン層の平面視形状が多数の開口部を画成するメッシュパターンからなり、このメッシュパターンは、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、前記開口領域が一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない領域を含んでなるパターンであり、
前記暗色層は、表面に溝状凹部を有し、この溝状凹部が形成された表面に突出した針状金属を有する、
電磁波遮蔽材。
【請求項2】
開口部の平面視形状として、少なくとも五角形及び六角形を含んでなる、請求項1に記載の電磁波遮蔽材。
【請求項3】
暗色層が形成された導電体パターン層に、さらに透明基材が積層されている請求項1または2に記載の複合化積層体。
【請求項4】
さらに機能層が積層されている、請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波遮蔽材。
【請求項5】
画像表示パネルと、この画像表示パネルの前面に配置された請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波遮蔽材または請求項4に記載の複合化積層体と、を備えた画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−62364(P2013−62364A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199654(P2011−199654)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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