説明

電磁波遮蔽材の製造方法

【課題】 良好な電磁波遮蔽効果を有する電磁波遮蔽材の製造方法を提供することである。
【解決手段】 接着剤中にアルミニウム粉を混入した所定量のアルミニウム粉混入液を基材の一方の面に吹き付ける工程と、基材の前記一方の面を加圧する工程とを含むことを特徴とする電磁波遮蔽材の製造方法が提供される。アルミニウム粉混入液の吹き付け量は、吹き付けようとする基材の1平方メートル当たり0.0001グラム又はそれ以上であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波遮蔽材の製造方法に関する。本発明の方法によって製造される電磁波遮蔽材は、建築、航空機、船舶、自動車、電車などの他、畜舎、衣服、ヘルメット等、電磁波を遮蔽する必要のあるあらゆる分野に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
電気が流れると、電界と磁界が生じ、電磁波が発生する。すなわち、電気器具を使用すると、電磁波が発生する。電磁波は、種々の電子装置に侵入することによって、装置の正常な動作を妨げることがある。例えば、体内に埋め込まれる心臓ペースメーカーは、電磁波によって誤作動する危険性が指摘されている。また、電磁波が身体に有害な影響を及ぼすおそれがあるという学説が提唱されている。そのため、電磁波を遮蔽する手段に対する需要がある。
【0003】
従来、電磁波遮蔽材として、電解鉄箔等をメッキした基材、フェライト焼結タイル、フェライト粉体を含んだ合成ゴムなど、種々の型式のものが提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電磁波遮蔽材では、良好な電磁波遮蔽効果を得ることができないという課題があった。本発明は、このような状況に鑑みて案出されたものであって、良好な電磁波遮蔽効果を有する電磁波遮蔽材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載の電磁波遮蔽材の製造方法は、接着剤中にアルミニウム粉を混入した所定量のアルミニウム粉混入液を基材の一方の面に吹き付ける工程と、前記基材の前記一方の面を加圧する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0006】
本願請求項2に記載の電磁波遮蔽材の製造方法は、接着剤中にアルミニウム粉を混入した所定量のアルミニウム粉混入液を基材の一方の面に吹き付ける工程と、前記基材の前記一方の面を加圧する工程と、加圧した前記一方の面に別の基材を配置する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項3に記載の電磁波遮蔽材の製造方法は、前記請求項1又は2の方法において、前記所定量が、吹き付けようとする基材の1平方メートル当たり0.0001グラム又はそれ以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法により製造された電磁波遮蔽材により、良好な電磁波遮蔽効果を得ることができる。また、本発明の方法は、比較的簡単に実施することができるので、安価な電磁波遮蔽材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る電磁波遮蔽材の製造方法に関する。まず最初に、基材を準備する。基材としては、任意の織布、不織布、メッシュ網、合成樹脂材料(例えば、ビニル樹脂材)を用いてよい。
【0010】
次いで、接着剤中にアルミニウム粉を混入したもの(以下「アルミニウム粉混入液」という)を基材の一方の面に吹き付ける。接着剤は、通常のものを使用してよい。また、この吹き付けは、スプレーノズルを用いて行われるが、スプレーノズルは、通常のものを使用してよい。
【0011】
アルミニウム粉混入液の吹き付け量は、種々の実験を行った結果、吹き付けようとする基材の1平方メートル当たり、0.0001グラム又はそれ以上であるのが好ましい。
【0012】
次いで、アルミニウム粉混入液が吹き付けられた基板の面を加圧する。これにより、電磁波遮蔽材が形成される(図1(a)参照)。なお、加圧には、通常のプレス機を使用してよい。
【0013】
次に、本発明の製造方法によって形成される電磁波遮蔽材の効果を検証するために行われた実験について説明する。この実験においては、電磁波を発生する電気器具として、電子レンジ、電気掃除機、ヘアードライヤー、電気ひげそり器、電気ドリル、テレビ、蛍光灯スタンドを準備した。
【0014】
実験の結果は、図2の表に示したとおりである。この表において、Aは各電気器具から100mmの距離において測定した磁束密度の値、Bは一方の面にアルミニウム粉混入液を吹き付けた基板(吹き付け量:0.05g/m2 )で各電気器具を遮蔽した場合における各電気器具から100mmの距離において測定した磁束密度の値、Cは一方の面にアルミニウム粉混入液を吹き付けた後に加圧した基板(吹き付け量:0.05g/m2 )で各電気器具を遮蔽した場合における各電気器具から100mmの距離において測定した磁束密度の値をそれぞれ示している。
【0015】
図2から分かるように、本発明の方法によって製造された電磁波遮蔽材を用いない場合(A欄参照)には測定磁束密度が最大で2,000mGにも及んでいたのが、本発明の方法によって製造された電磁波遮蔽材で遮蔽すると、測定磁束密度が実質的にゼロであった(C欄参照)。なお、加圧工程を実施しなかった基板で遮蔽した場合には、電磁遮蔽材を使用しなかった場合とほぼ同等の磁束密度が測定された(B欄参照)。このことから、加圧工程が重要な意義を有することが分かる。
【0016】
本発明の方法によって製造された電磁波遮蔽材が、上述のように、良好な電磁波遮蔽効果を有することが確認されたが、本発明者は、このような効果を有する理由が、以下のようなものであると推測する。すなわち、アルミニウムは、電気伝導率が良いことは周知である。図3(a)は、アルミニウム粉混入液を基材に吹き付けた状態を模式的に示した図である。図3(a)に示される状態では、アルミニウム粉混入液中において、アルミニウム粉が存在しない部分がかなり見受けられる。図3(b)は、加圧工程を経た状態を模式的に示した図である。図3(b)に示されるように、アルミニウム粉混入液を加圧することにより、より高密度のアルミニウム粉の被膜が基材の表面に形成されることになる(換言すると、基材の表面がアルミニウム粉でほぼ被覆される)。これにより、電磁波遮蔽効果が増大するものと思われる。
【0017】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0018】
例えば、基材のアルミニウム粉混入液が吹き付け加圧された面に、更に別の基材を配置してもよい(図1(b)参照)。この場合、両方の基材は、同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は、本発明の方法によって製造された電磁波遮蔽材を示した概略斜視図、図1(b)は、本発明の方法によって製造された別の電磁波遮蔽材を示した概略斜視図である。
【図2】本発明の方法によって製造された電磁波遮蔽材の効果を検証するために行われた実験の結果を示した表である。
【図3】本発明の方法によって製造された電磁波遮蔽材の効果を説明するための模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波遮蔽材の製造方法であって、
接着剤中にアルミニウム粉を混入した所定量のアルミニウム粉混入液を基材の一方の面に吹き付ける工程と、
前記基材の前記一方の面を加圧する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
電磁波遮蔽材の製造方法であって、
接着剤中にアルミニウム粉を混入した所定量のアルミニウム粉混入液を基材の一方の面に吹き付ける工程と、
前記基材の前記一方の面を加圧する工程と、
加圧した前記一方の面に別の基材を配置する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記所定量が、吹き付けようとする基材の1平方メートル当たり0.0001グラム又はそれ以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−344720(P2006−344720A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168037(P2005−168037)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(597133293)
【出願人】(599025031)
【Fターム(参考)】