説明

電磁流量計

【課題】従来より高い計測精度で流量を計測可能な電磁流量計の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の電磁流量計10は、励磁回路14によって励磁電流を励磁コイル13,13に流して計測流路11を横切す磁束を発生させ、流体の流量に応じた1対の検知電極12,12の間に電位差を発生させる。そして、電磁流量計10が外部電源55から受電していない場合に、電池20Aから電力を受けて磁束密度を比較的低くした節電計測モードになり、外部電源55から受電したときに、磁束密度を比較的高くした高精度計測モードに切り替わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測流路を横切る磁束を励磁コイルにて発生させて、その磁束の磁束密度と計測流路に流れる流体の流速とに応じて計測流路の2点間に生じる電位差を1対の検知電極間にて検出して、流体の流量を計測する電磁流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電磁流量計として、内部電源(例えば、電池)でのみ作動するもの、外部電源(例えば、商用電源や、4−20mA出力の定電流電源)でのみ作動するもの、内部電源と外部電源の何れか任意の一方で作動するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−237113号公報(図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した何れの種類の電磁流量計でも、励磁コイルにて発生させる磁束の磁束密度を高くすればするほど、1対の検知電極にて検出される検知電圧が大きくなって耐ノイズ性が向上し、計測精度が向上する。
【0005】
しかしながら、磁束密度を高くするほど励磁コイルに通電する励磁電流が大きくなって消費電力も高くなるので、励磁コイルに出力させることが可能な最大の磁束密度より低い磁束密度の磁束を励磁コイルが出力するように設定していた。このため、ノイズを受けやすい環境では十分な計測精度を得ることができない場合があった。特に、内部電源で作動可能な電磁流量計では、節電の必要性が高いので、外部電源でのみ作動する電磁流量計に比べて磁束密度が低く設定されていて、計測精度も低いという問題があった。また、積算流量を計測する場合に比べて、単位時間当たりの流量である瞬時流量を計測する場合の方がノイズの影響を受け易く、瞬時流量の計測時に十分な計測精度を得ることが困難であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来より高い計測精度で流量を計測可能な電磁流量計の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る電磁流量計は、計測流路を横切る磁束を励磁コイルにて発生させて、その磁束の磁束密度と計測流路に流れる流体の流速とに応じて計測流路の2点間に生じる電位差を1対の検知電極間にて検出して、流体の流量を計測する電磁流量計において、磁束密度を比較的低くした節電計測モードと、磁束密度を比較的高くした高精度計測モードとに切り替え可能であるところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電磁流量計において、計測流路を通過する流体の積算流量を計測する積算流量計測モードと、計測流路を通過する流体の単位時間当たりの流量である瞬時流量を計測する瞬時流量計測モードとに切り替え操作するための瞬時・積算切替操作部と、瞬時・積算切替操作部の操作に連動して積算流量計測モードでは節電計測モードとする一方、瞬時流量計測モードでは高精度計測モードとするように切り替えるモード連動切替手段とを備えたところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の電磁流量計において、外部電源に接続可能な外部電源接続部と、内部電源と、外部電源から受電していない場合に、内部電源からの電力で励磁コイルに比較的低い磁束を発生させて節電計測モードとする一方、外部電源から受電している場合に、外部電源からの電力で励磁コイルに比較的高い磁束を発生させて高精度計測モードとするように切り替える電源関連モード切替手段とを備えたところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の電磁流量計において、計測流路を通過する流体の積算流量を計測する積算流量計測モードと、計測流路を通過する流体の単位時間当たりの流量である瞬時流量を計測する瞬時流量計測モードとに切り替え操作するための瞬時・積算切替操作部を備えると共に、外部電源から受電しかつ高精度計測モードになっていることを条件にして積算流量計測モードから瞬時流量計測モードへと切り替え可能としたところに特徴を有する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の電磁流量計において、計測流路を備えかつ1対の検知電極を保持した本体ケースに励磁コイル及び内部電源を収容してなり、内部電源のみで流体の流量を計測可能な本体ユニットと、本体ケースに着脱可能な外付ケースに外部電源接続部を保持させた外付ユニットとを備え、外付ケースに収容した1次コイルと本体ケースに収容した2次コイルとのトランス結合によって外部電源から励磁コイルへと給電可能としたところに特徴を有する。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5に記載の電磁流量計において、外付ケースに収容され、外部電源接続部を通して外部電源から受電して作動する外付演算処理回路を設け、本体ケースが保持した発光素子と外付ケースが保持した受光素子とからなるフォトカプラを通して本体ユニットから外付演算処理回路に流量の計測結果を付与可能とすると共に、外付演算処理回路が流量の計測結果を電気パルス信号にして外部出力するためのパルス出力部を外付ケースに保持して備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
[請求項1の発明]
請求項1の電磁流量計の構成によれば、励磁コイルにて発生させる磁束の磁束密度を比較的低くした節電計測モードと、磁束密度を比較的高くした高精度計測モードとに切り替え可能であるから、磁束密度が一定に低く設定されていた従来のものに比べて、高い計測精度で流量を計測することが可能になる。
【0014】
[請求項2の発明]
請求項2の電磁流量計の構成によれば、積算流量を計測する積算流量計測モードと、瞬時流量を計測する瞬時流量計測モードとに切り替えることが可能である。ここで、瞬時流量を計測する場合は、比較的ノイズの影響を受け易くなるが、瞬時流量計測モードになったときに自動的に高精度計測モードに切り替わるので、従来より高い精度で瞬時流量を計測することができる。また、積算流量を計測する場合は、比較的ノイズの影響を受け難くなる一方で長時間に亘る計測が必要であるが、積算流量計測モードになったときに自動的に節電計測モードに切り替わるので、消費電力の低減が効果的に図られる。
【0015】
[請求項3の発明]
請求項3の電磁流量計の構成によれば、電力の総供給に上限がある内部電源が励磁コイルに給電しているときには節電計測モードになる一方、電力の総供給に上限がない外部電源が励磁コイルに給電しているときには高精度計測モードになるように自動的に切り替わるので、内部電源の使用可能期間(寿命)を長くすることができると共に、節電の必要性が比較的低い外部電源の使用時に高い精度で流量の計測を行うことができる。
【0016】
なお、節電計測モードと高精度計測モードとに切り替えるための電磁流量計に節電切替操作スイッチを設けて、積算流量計測モードか瞬時流量計測モードかに拘わらず、また、外部電源に接続されたか否かに拘わらず、節電切替操作スイッチの操作に応じて節電計測モードと高精度計測モードとの任意の一方に切り替わるようにしてもよい。
【0017】
[請求項4の発明]
請求項4の電磁流量計は、外部電源から受電しかつ高精度計測モードになっていることを条件にして積算流量計測モードから瞬時流量計測モードへと切り替え可能としたので、内部電源の使用中に瞬時流量を計測するために高精度計測モードに切り替えて内部電源の残容量を大きく減らしたり、節電計測モード中に瞬時流量を低い精度で計測してしまうようなことがなくなる。即ち、内部電源の残容量を大きく減らすことなく、高い精度で瞬時流量を計測することが可能になる。
【0018】
[請求項5の発明]
請求項5の電磁流量計は、内部電源を有した本体ユニットと外部電源接続部を有した外付ユニットとに分割可能になっていて、外部電源に接続しない場合には、外付ユニットが取り外された本体ユニットのみで流量を計測することができる。また、本体ユニットと外付ユニットとの間は、トランス結合にて給電可能になっているので、本体ユニットの防水・防塵を容易に図ることができると共に、外部電源から本体ユニットへのノイズを低減させることができる。
【0019】
[請求項6の発明]
請求項6の構成によれば、電磁流量計が外部出力した流量の計測結果を、電磁流量計以外の装置で受信して、例えば、流量の異常監視や流量を調整するための弁の調整等の処理に利用することができる。また、請求項6の構成では、流量の計測結果を本体ユニットから外付ユニットの外付演算処理回路へとフォトカプラを通して付与し、その外付演算処理回路が流量の計測結果を電気パルス信号にして外部出力するので、本体ユニットの防水・防塵を容易に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電磁流量計のブロック図
【図2】電磁流量計の動作を説明するためのタイムチャート
【図3】第2実施形態に係る電磁流量計のブロック図
【図4】第3実施形態に係る電磁流量計のブロック図
【図5】第4実施形態に係る電磁流量計のブロック図
【図6】変形例に係る電磁流量計のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る第1実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。図1には、本実施形態の電磁流量計10の電気的構成がブロック図にして示されている。この電磁流量計10は、計測管41の側部に回路収容部屋42を有してなる流量計ケース40を備えている。計測管41の内側は、本発明に係る計測流路11になっていて、計測管41の両端部が例えば図示しないパイプに接続され、そのパイプを流れる流体が計測流路11を通過する。また、計測管41には、1対の検知電極12,12が貫通した状態で保持され、それら1対の検知電極12,12の先端部が、計測流路11内で露出しかつ計測流路11の軸方向(流体が流れる方向)に対して交差する方向で対向している。一方、1対の検知電極12,12の基端部は、回路収容部屋42内に露出して、増幅回路15を介してメイン制御回路16に接続されている。
【0022】
回路収容部屋42には、計測管41を間に挟んで対向する位置に1対の励磁コイル13,13が配置されている。これら1対の励磁コイル13,13は、回路収容部屋42に収容された励磁回路14における1対の出力部の間に直列接続されている。そして、励磁回路14が周期的に反転する励磁電流を励磁コイル13,13に通電する。また、励磁コイル13,13は、共通の励磁電流で励磁されて互いに同じ向きの磁束を発生させ、その磁束が、計測流路11のうち検知電極12,12に挟まれた部分を横切るようになっている。これにより、計測流路11を流れる流体の流速と磁束の磁束密度とに応じた電位差が、1対の検知電極12,12の間に検知電圧として発生し、その検知電圧が、増幅回路15で増幅されてメイン制御回路16に取り込まれる。メイン制御回路16は、取り込んだ検知電圧と、励磁コイル13にて発生させた磁束の磁束密度とから計測流路11を通過する流体の流速を演算し、その流速に計測流路11の流体通過面積を乗じて流量を演算し、出力する。また、電磁流量計10に備えた図示しない表示スイッチをオンすれば、メイン制御回路16が演算した流量等を電磁流量計10に備えたモニタ17で視認することができる。
【0023】
また、電磁流量計10には、例えば、瞬時・積算切替操作部35が設けられていて、この瞬時・積算切替操作部35を操作することで、計測流路11を通過する流体の積算流量を計測する積算流量計測モードと、計測流路11を通過する流体の単位時間当たりの流量である瞬時流量を計測する瞬時流量計測モードとに切り替えることができる。具体的には、瞬時流量計測モード及び積算流量計測モードでは、ともに、最新のn回の計測結果の平均値から瞬時流量を演算している。そして、そのnの値が、瞬時流量計測モードでは、積算流量計測モードよりも小さく設定されている。このため、瞬時流量計測モードでは、例えば、ノイズによって突発的な異常値が計測された場合に、演算される瞬時流量が異常値の影響を受け易くなっている。なお、平均値の求め方は、最新のn回の計測結果を単純に平均してもよいし、最新の計測結果と、それ以前のn−1回分の計測結果をもとに指数平均処理を行ってもよい。
【0024】
電磁流量計10は、第1と第2の電源回路21,22と本発明の「内部電源」に相当する電池20Aとを回路収容部屋42に収容して備えると共に、受電用コネクタ31とパルス信号出力用コネクタ32と4−20mA信号出力用コネクタ33とを、本発明に係る「外部電源接続部」として流量計ケース40の外面に備えている。
【0025】
第2電源回路22は1つの入力部と少なくとも2つの出力部とを備え、受電用コネクタ31に接続される外部電源55から直流出力を受けて、それを制御用直流電圧に変圧して一方の出力部から出力すると共に、交流に変換して他方の出力部から出力する。
【0026】
第1電源回路21は2つの入力部と少なくとも2つの出力部とを備え、電池20Aからの直流出力か第2電源回路22からの交流出力かの何れかを受けて、一方の出力部から制御用直流電圧を出力すると共に、他方の出力部から励磁・増幅用直流電圧を出力する。また、第2電源回路22からの交流出力は、トランス24を介して第1電源回路21に取り込まれるようになっている。詳細には、第1電源回路21は、第2電源回路22及びトランス24を通して外部電源55から受電している場合には、電池20Aからの受電ラインを遮断し、外部電源55からの電力を使用して制御用直流電圧と励磁・増幅用直流電圧とを出力する。一方、第1電源回路21は、外部電源55から受電していない場合には、電池20Aから受電した電力を使用して制御用直流電圧のみを出力し、励磁・増幅用直流電圧は出力しない。ここで、電池20Aの出力電圧を第1電圧とすると、第1電源回路21が出力する励磁・増幅用直流電圧は、第1電圧より大きな第2電圧になっている。
【0027】
受電用コネクタ31は、公知な4−20mA出力の定電流電源である外部電源55のコネクタと接続可能になっていて、外部電源55の4−20mA出力を受ける。なお、外部電源55は、本発明に係る「外部電源」に相当し、商用電源から電力を受けて作動するようになっている。
【0028】
パルス信号出力用コネクタ32は、電磁流量計10による流量の計測結果を電気パルス信号にして出力するために備えられている。また、4−20mA信号出力用コネクタ33は、電磁流量計10による流量の計測結果を4−20mAの電流信号にして出力するために備えられている。また、それら電気パルス信号及び4−20mAの電流信号を生成するために、メイン制御回路16とは別個にサブ制御回路26が回路収容部屋42内に備えられ、そのサブ制御回路26は、第2電源回路22から制御用直流電圧を受けて作動すると共に、メイン制御回路16の出力をフォトカプラ25を介して取得する。そして、サブ制御回路26は、メイン制御回路16から取得した流量等の演算結果を、パルス信号出力用コネクタ32の接続相手となる外部装置56との間のプロトコルに従ったパルス信号に変換してパルス信号出力用コネクタ32に出力すると共に、4−20mA信号出力用コネクタ33の接続相手となる外部装置56との間のプロトコルに従った4−20mAの電流信号に変換して4−20mA信号出力用コネクタ33に出力する。なお、サブ制御回路26は、4−20mAの電流信号を生成するために、受電用コネクタ31を通して外部電源55からの4−20mA出力を取り込んでいる。
【0029】
電磁流量計10は、外部電源55から受電していない状態では、本発明に係る節電計測モードになる一方、外部電源55から受電している状態では、本発明に係る高精度計測モードになる。即ち、電磁流量計10に外部電源55から給電されているか否かに応じて節電計測モードか高精度計測モードかの何れかに切り替わるようになっている。具体的には、励磁回路14には、切替回路18を介して電池20A又は第1電源回路21における励磁・増幅用直流電圧の出力部の何れか一方が選択的に導通接続されるようになっている。また、第1電源回路21における励磁・増幅用直流電圧の出力部には、切替回路18と共に増幅回路15が共通接続されている。そして、切替回路18は、第1電源回路21から励磁・増幅用直流電圧を受けていない場合には、切替回路18と電池20Aとの間を導通させる。
【0030】
これにより、電磁流量計10が、外部電源55から受電していない状態では(図2のt0〜t1の期間参照)、励磁回路14は、電池20Aによる第1電圧の出力電圧を所定周期で切り替えて励磁コイル13,13に印加して、その第1電圧に対応した磁束密度B1(図2参照)の磁束が計測流路11を横切るように発生する。また、増幅回路15は、電池20Aによる第1電圧の出力電圧に対応した第1ゲインで、検知電極12,12間の検知電圧を増幅してメイン制御回路16に付与する。
【0031】
一方、電磁流量計10が、外部電源55から受電している状態では(図2のt1〜t3の期間参照)、励磁回路14は、第1電源回路21による第2電圧の出力電圧を所定周期で切り替えて励磁コイル13,13に印加し、これにより第2電圧に対応した磁束密度B2(図2参照)の磁束が計測流路11を横切るように発生する。また、増幅回路15は、第1電源回路21による第2電圧の出力電圧に対応した第2ゲインで、検知電極12,12間の検知電圧を増幅してメイン制御回路16に付与する。なお、上述の切替回路18、第1電源回路21及び励磁回路14とから本発明に係る「電源関連モード切替手段」が構成されている。
【0032】
メイン制御回路16は、第1電源回路21が外部電源55から受電しているか否かの判別信号を第1電源回路21から取得する。そして、第1電源回路21が外部電源55から受電していない場合用の演算処理と、第1電源回路21が外部電源55から受電している場合用の演算処理とを切り替えて検知電圧から流量を演算する。即ち、メイン制御回路16は、上記した磁束密度B1,B2の値と、第1と第2ゲインの値とを記憶している。そして、第1電源回路21が外部電源55から受電していない場合には、メイン制御回路16は、磁束密度B1と第1ゲインを含んだ演算式か、或いは、磁束密度B1及び第1ゲイン用に予め設定しておいた検知電圧と流量との対応マップを使用して、検知電圧から流量を求める。一方、第1電源回路21が外部電源55から受電している場合には、メイン制御回路16は、磁束密度B2と第2ゲインを含んだ演算式か、或いは、磁束密度B2及び第2ゲイン用に予め設定しておいた検知電圧と流量との対応マップを使用して、検知電圧から流量を求める。
【0033】
なお、図2の最下端部には、節電計測モードと高精度計測モードとに切り替えた場合に、電磁流量計10のパルス信号出力用コネクタ32から出力される4−20mAの電流信号の変化が示されている。
【0034】
このように本実施形態の電磁流量計10は、電力の総供給に上限がある電池20A(内部電源)で作動しているときには、励磁コイル13,13が出力する磁束の磁束密度が比較的低く、消費電力が小さい節電計測モードになる一方、電力の総供給に上限がない外部電源55で作動しているときには、励磁コイル13,13が出力する磁束の磁束密度が比較的高く、高精度の計測が可能な高精度計測モードになるように自動的に切り替わるので、電池20Aの使用可能期間(寿命)を長くすることができると共に、節電の必要性が比較的低い外部電源55の使用時に高い精度で流量の計測を行うことができる。
ここで、特に、流体の瞬時流量を計測する場合には、計測時の突発的なノイズの影響を受け易く、従来のように磁束密度が比較的低いと、精度よく計測することは困難である。ところが、本実施形態では、磁束密度が比較的高い高精度計測モードで瞬時流量を計測することができるので、瞬時流量を精度よく計測することができる。
また、外部電源55からの電力が、トランス24を通して第1電源回路21に付与されるので、外部電源55からのノイズを低減させることができる。また、電磁流量計10は計測結果をパルス信号出力用コネクタ32及び4−20mA信号出力用コネクタ33から外部出力するので、その計測結果を、電磁流量計10以外の外部装置56で受信して、例えば、流量の異常監視や流量を調整するための弁の調整等の処理に利用することができる。さらには、メイン制御回路16とパルス信号出力用コネクタ32及び4−20mA信号出力用コネクタ33の間にフォトカプラ25を設けたので、パルス信号出力用コネクタ32及び4−20mA信号出力用コネクタ33にノイズが入力されてもメイン制御回路16が影響を受けることがない。
【0035】
[第2実施形態]
本実施形態の電磁流量計10Vは、図3に示されており、第1実施形態の電磁流量計10を本体ユニット10Hと外付ユニット10Jとに2分割した構成になっている。即ち、電磁流量計10Vの流量計ケース40Vは、本体ケース45と外付ケース46とに分割され、外付ケース46が本体ケース45に対して着脱可能に結合されるようになっている。そして、外付ケース46に前記第1実施形態で説明した第2電源回路22及びサブ制御回路26と、トランス24における1次コイルL1及びフォトカプラ25におけるフォトトランジスタT1(本発明の「受光素子」に相当する)をパッケージしかつ、外付ケース46の外面に、受電用コネクタ31,パルス信号出力用コネクタ32,4−20mA信号出力用コネクタ33を固定して外付ユニット10Jが構成されている。また、トランス24における2次コイルL2及びフォトカプラ25における発光ダイオードD1(本発明の「発光素子」に相当する。)を含む、外付ケース46にパッケージされていない電磁流量計10の全ての電気回路が本体ケース45にパッケージされて本体ユニット10Hが構成され、本体ユニット10Hが電池20Aのみで流体の流量を計測することができるようになっている。そして、本体ユニット10Hと外付ユニット10Jとを合体させることで、1次コイルL1と2次コイルL2とが隣接配置されて外付ユニット10Jから本体ユニット10Hへと給電可能となり、かつ、発光ダイオードD1とフォトトランジスタT1とが隣接配置されて本体ユニット10Hから外付ユニット10Jへと信号を送信することができるようになる。なお、本実施形態におけるサブ制御回路26が、本発明の「外付演算処理回路」に相当する。
【0036】
本実施形態の電磁流量計10Vは、外部電源55に接続しない場合には、外付ユニット10Jが取り外された本体ユニット10Hのみで流量を計測することができる。また、本体ユニット10Hと外付ユニット10Jとの間は、1次コイルL1と2次コイルL2とのトランス結合にて給電可能になっているので、本体ユニット10Hの防水・防塵を容易に図ることができる。また、流量の計測結果を本体ユニット10Hから外付ユニット10Jへと発光ダイオードD1とフォトトランジスタT1とからなるフォトカプラ25を通して付与しているので、本体ユニット10Hの防水・防塵を容易に図ることができる。
【0037】
[第3実施形態]
本実施形態の電磁流量計10Wは、図4に示されており、前記第2実施形態の電磁流量計10Vにおける外付ユニット10Jと2次コイルL2と発光ダイオードD1とを有しない構造になっている。即ち、この電磁流量計10Wは、外部電源55から受電不能になっていて、電池20Aのみで作動する。また、この電磁流量計10Vには、節電計測モードと高精度計測モードとに切り替えるための節電切替操作スイッチ34が備えられている。そして、節電切替操作スイッチ34の操作に応じて節電計測モードと高精度計測モードとに切り替ることができる。
【0038】
具体的には、第1電源回路21は、高精度計測モードに設定された場合にのみ、メイン制御回路16からの指令に応じて励磁・増幅用直流電圧を出力するようになっている。そして、節電切替操作スイッチ34にて節電計測モードに設定された状態では、切替回路18Wが、電池20Aを励磁回路14と増幅回路15とに接続した第1接続状態になり、高精度計測モードに設定されると、切替回路18Wが、電池20Aを励磁回路14と増幅回路15から遮断し、第1電源回路21の励磁・増幅用直流電圧の出力部を励磁回路14に接続した第2接続状態に切り替わるようになっている。これにより電磁流量計10Wは節電計測モードと高精度計測モードとに手動で切り替えることができる。
【0039】
[第4実施形態]
本実施形態の電磁流量計10Yは、図5に示されており、前記第1実施形態の電磁流量計10を変形したもので、外部電源55から受電していない場合には、瞬時・積算切替操作部35の操作に連動して積算流量計測モードでは節電計測モードとなる一方、瞬時流量計測モードでは高精度計測モードとになるように構成されている。
【0040】
具体的には、電磁流量計10Yが外部電源55から受電していない状態では、第1電源回路21は、瞬時流量計測モードに設定された場合にのみ、メイン制御回路16からの指令に応じて励磁・増幅用直流電圧を出力する。そして、瞬時・積算切替操作部35の操作により積算流量計測モードに設定された状態では、切替回路18Yが、電池20Aを励磁回路14と増幅回路15とに接続した第1接続状態になり、瞬時流量計測モードに設定された状態では、切替回路18Yが、電池20Aを励磁回路14と増幅回路15から遮断して、第1電源回路21の励磁・増幅用直流電圧の出力部を励磁回路14に接続した第2接続状態に切り替わるようになっている。これにより、電磁流量計10Yは、外部電源55から受電していない場合に、積算流量計測モードでは節電計測モードとなる一方、瞬時流量計測モードでは高精度計測モードになるように自動で切り替わる。その他の構成に関しては、第1実施形態の電磁流量計10と同じである。
【0041】
上記したように本実施形態の電磁流量計10Yは、瞬時流量計測モードになったときに自動的に高精度計測モードに切り替わるので、積算流量の計測より比較的ノイズの影響を受け易くい瞬時流量の計測を精度よく行うことができる。また、積算流量を計測する場合は、比較的ノイズの影響を受け難くなる一方で長時間に亘る計測が必要であるが、積算流量計測モードになったときに自動的に節電計測モードに切り替わるので、消費電力の低減が効果的に図られる。
【0042】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0043】
(1)図6に示した電磁流量計10Xのように、第1実施形態の電池20Aの代わりに二次電池20Bを設けておき、切替回路18を排除して、二次電池20Bの出力と、第1電源回路21における励磁・増幅用直流電圧の出力部とを、励磁回路14と増幅回路15に共通接続してした構成にしてもよい。このような構成にすれば、第1電源回路21が第2電圧を出力しているときには(外部電源55から受電しているときには)、二次電池20Bの第1電圧より高電位になるので、第1電源回路21が励磁回路14及び増幅回路15に接続されると共に、二次電池20Bを充電することができ、第1電源回路21が第2電圧を出力していないときには(外部電源55から受電していないときには)、二次電池20Bの第1電圧が、第1電源回路21の出力より高電位になるので、二次電池20Bが励磁回路14及び増幅回路15に接続される。
【0044】
(2)前記第1実施形態の電磁流量計10を、外部電源55から受電しかつ高精度計測モードになっていることを条件にして積算流量計測モードから瞬時流量計測モードへと切り替え可能な構成にしてもよい。このような構成にすれば、電池20Aの使用中に瞬時流量を計測すべく、高精度計測モードに切り替えて電池20Aの残容量を大きく減らしたり、瞬時流量を低い精度で計測してしまうようなことがなくなる。即ち、電池20Aの残容量を大きく減らすことなく、高い精度で瞬時流量を計測することが可能になる。
【符号の説明】
【0045】
10,10V,10W,10X,10Y 電磁流量計
10H 本体ユニット
10J 外付ユニット
11 計測流路
12 検知電極
13 励磁コイル
14 励磁回路
16 メイン制御回路
20A,20B 内部電源
24 トランス
25 フォトカプラ
26 サブ制御回路
35 瞬時・積算切替操作部
45 本体ケース
46 外付ケース
55 外部電源
L1 1次コイル
L2 2次コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測流路を横切る磁束を励磁コイルにて発生させて、その磁束の磁束密度と前記計測流路に流れる流体の流速とに応じて前記計測流路の2点間に生じる電位差を1対の検知電極間にて検出して、前記流体の流量を計測する電磁流量計において、
前記磁束密度を比較的低くした節電計測モードと、前記磁束密度を比較的高くした高精度計測モードとに切り替え可能であることを特徴とする電磁流量計。
【請求項2】
前記計測流路を通過する流体の積算流量を計測する積算流量計測モードと、前記計測流路を通過する流体の単位時間当たりの流量である瞬時流量を計測する瞬時流量計測モードとに切り替え操作するための瞬時・積算切替操作部と、
前記瞬時・積算切替操作部の操作に連動して前記積算流量計測モードでは前記節電計測モードとする一方、前記瞬時流量計測モードでは前記高精度計測モードとするように切り替えるモード連動切替手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項3】
外部電源に接続可能な外部電源接続部と、
内部電源と、
前記外部電源から受電していない場合に、前記内部電源からの電力で前記励磁コイルに比較的低い磁束を発生させて前記節電計測モードとする一方、前記外部電源から受電している場合に、前記外部電源からの電力で前記励磁コイルに比較的高い磁束を発生させて前記高精度計測モードとするように切り替える電源関連モード切替手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項4】
前記計測流路を通過する流体の積算流量を計測する積算流量計測モードと、前記計測流路を通過する流体の単位時間当たりの流量である瞬時流量を計測する瞬時流量計測モードとに切り替え操作するための瞬時・積算切替操作部を備えると共に、前記外部電源から受電しかつ前記高精度計測モードになっていることを条件にして前記積算流量計測モードから前記瞬時流量計測モードへと切り替え可能としたことを特徴とする請求項3に記載の電磁流量計。
【請求項5】
前記計測流路を備えかつ前記1対の検知電極を保持した本体ケースに前記励磁コイル及び前記内部電源を収容してなり、前記内部電源のみで前記流体の流量を計測可能な本体ユニットと、前記本体ケースに着脱可能な外付ケースに前記外部電源接続部を保持させた外付ユニットとを備え、前記外付ケースに収容した1次コイルと前記本体ケースに収容した2次コイルとのトランス結合によって前記外部電源から前記励磁コイルへと給電可能としたことを特徴とする請求項3又は4に記載の電磁流量計。
【請求項6】
前記外付ケースに収容され、前記外部電源接続部を通して前記外部電源から受電して作動する外付演算処理回路を設け、
前記本体ケースが保持した発光素子と前記外付ケースが保持した受光素子とからなるフォトカプラを通して前記本体ユニットから前記外付演算処理回路に前記流量の計測結果を付与可能とすると共に、前記外付演算処理回路が前記流量の計測結果を電気パルス信号にして外部出力するためのパルス出力部を前記外付ケースに保持して備えたことを特徴とする請求項5に記載の電磁流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−163381(P2012−163381A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22300(P2011−22300)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【Fターム(参考)】