説明

電磁継電器

【課題】 電磁継電器のサイズを変えずに、通電時の発熱を抑えることで温度上昇を低減し、大電流の通電を可能にすると共に各固定端子を容易に電気的に独立させることができる電磁継電器を提供する。
【解決手段】 絶縁ベース10の中央部に端子固定ブロック11を固定し、電磁ブロック20が備えている可動接点26がメーク側及びブレーク側固定接点12a,13aと対向するように、2個の電磁ブロック同士が点対称となる位置に圧入固定して成る電磁継電器において、端子固定ブロック11は、ブレーク側固定端子13の脚部に絶縁ベース10への圧入部13cを備え、メーク側及びブレーク側固定端子12,13の電気的連結部14の中央にスリット部12d,13dを設けて端子固定ブロック11の固定ブロック部11aの外側に露出させ、電気的連結部14の中央切断部で切断することでメーク側及びブレーク側固定端子を電気的に独立できる電磁継電器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関し、特に自動車電装、産業機器、家電機器などに使用される電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高級化に伴って、この自動車の自動ドアロック、パワーウィンド等に使用される電気装置を制御するために電磁リレー(電磁継電器)が多用されている。電気装置の基本的機能は、モーターの電機子あるいはソレノイドのプランジャーを、正逆回転あるいは正逆動作させるために、電気的負荷への正逆電流を制御するものである。このため、これらの電気装置には、少なくとも2個の電磁リレーが必要で、これを1個のケースに収納したものが主流となっており、例えば特許文献1に開示されているような電磁リレー装置がある。
【0003】
図4に示す従来(特許文献1)の電磁継電器は、絶縁ベース110と、可動接点126を備えアーマチュア125に連動する可動接点ばね124を有する2個の電磁ブロック120と、略コ字状端子の端部の外側2箇所にメーク側固定接点112aを備えたメーク側固定接点端子112及び略コ字状端子の端部の内側2箇所にブレーク側固定接点113aを備えたブレーク側固定端子113を絶縁部材で一体成形することにより、メーク側及びブレーク側の固定接点が各々対向するように配置した端子固定ブロック111とで構成されている。
【0004】
また、端子固定ブロック111のメーク側及びブレーク側端子の電気的連結部中央部は、ブロック外側に露出していて、ブレーク側は絶縁ベース110への圧入部113cとなっている。さらに、端子固定ブロック111には、ブレーク側の電気的連結部を必要に応じて切断できる貫通穴113fが設けてある。
【0005】
また、本電磁リレー装置は、端子固定ブロック111を、絶縁ベース110中央に固定し、さらに、2個の前記電磁ブロック120を該電磁ブロック120が備えている可動接点124が固定接点112a、113aと対向するように、かつ2個のブロック同士が点対称となる位置に配置し、圧入固定して構成されている。
【0006】
ここで、各固定接点を電気的に独立させる場合には、図5に示すように、端子固定ブロック111のメーク側固定端子112の中央部にスリット部112dを設け、切断位置(切り欠き部)112xで切断することで、また、ブレーク側固定接点端子113では予め設けてある貫通穴113fの部分を切断位置(切断部)113xで切断することで実現する。
【0007】
また、モーターやソレノイドなどの制御において、数十Aを通電する電磁リレー装置では、通電パスを形成する接点や端子、可動バネなどの発熱、あるいはコイルからの発熱による温度上昇などが原因で動作不良を発生する可能性がある。
【0008】
そのため、電磁リレー装置内部の温度上昇を低減する必要がある。この要求に対応するためには、リレー内部で発生した熱を外部に導出して放熱したり、あるいは、熱の発生を抑える為に固定端子の電気抵抗を下げる必要があり、固定端子の断面積を大きくしなければならない。
【0009】
【特許文献1】実開平04−027547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の端子固定ブロックでは、各接点を独立させるために、図5の各貫通穴113f部から端子の切断位置113xで端子を切断しなければならない。
【0011】
しかしながら、固定接点端子の断面積を大きするため、板厚を厚くする必要があり、その分ブレーク側切断部の貫通穴の面積を小さくせざるを得ないため、その部分の切断には、高精度な成形機、プレス機が必要となり、結果としてコスト高となってしまう。また、この対策として、端子固定ブロックのサイズを大きくするなどがあるが、電磁リレー装置自体のサイズが、その分、大きくなるなどの欠点がある。
【0012】
従って、本発明は、電磁継電器(電磁リレー装置)のサイズを大きくすることなく、固定端子の電気抵抗を下げるために固定端子の断面積を大きくして十分な放熱性を確保し、高容量(大電流)化でき、かつ、必要なときには各固定接点を容易に独立させることができる電磁継電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために成されたもので、略コ字状端子の端部の外側2箇所に接点を備えたメーク側固定接点端子と、略コ字状端子の端部の内側2箇所に接点を備えたブレーク側固定接点端子とを、絶縁部材で一体成形することにより、メーク側及びブレーク側の固定接点が各々対向するように配置した端子固定ブロックを形成し、メーク側及びブレーク側端子の電気的連結部中央部は固定ブロック部の外側に露出しておき、ブレーク側固定端子の脚部に絶縁ベースへの圧入部を設けている端子固定ブロックを装備したことを特徴とする電磁継電器が得られる。
【0014】
また、本発明によれば、各固定端子を電気的に独立させたい場合には、前記端子固定ブロックの固定ブロック部の外側に露出した部分に予めスリットを設けておき、そこで切断することで実現する。
【0015】
また、本発明によれば、絶縁ベースへの圧入部を、端子固定ブロックの両側に設けることにより、各固定端子を独立させる場合の切断位置を、中央部にすることができ、端子固定ブロック内の切断用の貫通穴を不必要としたことを特徴とする電磁継電器が得られる。
【0016】
また、電気的連結部の引き回し部の構造も簡素化でき、端子の板厚、板幅を増加させることが容易にでき、端子固定ブロックのサイズを大きくすることなく、電気抵抗を下げることができることを特徴とする電磁継電器が得られる。
【0017】
即ち、本発明によれば、コイルが巻装された一端に固定ヨークを有するコアと、このコアの他端に対向して配置されたコイルへの通電により吸引されるアーマチュアに連動する可動接点を有する可動接点ばねを備えた電磁ブロックと、略コ字状端子の端部の外側2箇所に接点を備えたメーク側固定接点端子と略コ字状端子の端部の内側2箇所に接点を備えたブレーク側固定接点端子とを絶縁部材で一体成形することによりメーク側及びブレーク側の固定接点が各々対向するように配置した端子固定ブロックと、絶縁ベースとで構成され、絶縁ベースの中央部に前記端子固定ブロックを圧入固定し、さらに、2個の前記電磁ブロックをこの電磁ブロックが備えている可動接点が固定接点と対向するように、かつ2個電磁のブロック同士が点対称となる位置に圧入固定して成る電磁継電器において、前記端子固定ブロックは、前記ブレーク側固定端子の脚部に前記絶縁ベースへの圧入部を備え、前記メーク側及びブレーク側固定端子の電気的連結部の中央にスリット部を設け、このスリット部を前記端子固定ブロックの固定ブロック部の外側に露出させ、電気的連結部の中央切断部で切断することで、前記メーク側及びブレーク側固定端子を電気的に独立できることを特徴とした電磁継電器が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、メーク側及びブレーク側固定端子の電気的連結部の中央に設けたスリット部を端子固定ブロックの固定ブロック部の外側に露出させ、露出した電気的連結部の中央切断部でスリット部を切断することで、メーク側及びブレーク側固定端子を電気的に容易に独立させることができる。従って、露出した電気的連結部の中央切断部でスリット部を容易に切断できることから、メーク側及びブレーク側固定端子の板厚、板幅を増加させることができ、端子固定ブロックのサイズを大きくすることなく、メーク側及びブレーク側固定端子の電気抵抗を下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良の形態を具体的に説明する。
【0020】
図1は、本発明による電磁継電器の斜視図である。また、図2は、本発明による電磁継電器の分解斜視図である。また、図3は、本発明による電磁継電器に用いられる端子固定ブロックの説明図で、図3(a)は正面図、図3(b)は側面図である。
【0021】
図1及び図2において、電磁継電器1は、コイル22が巻装されたコア21と、コア21の一端に固定されたヨーク23と、コア21の他端に対向して配置されコイル22への通電によりコア21に吸引されるアーマチュア25と、可動接点26を備えアーマチュア25に連動する可動接点ばね24を有する2個の電磁ブロック20を有している。
【0022】
さらに、略コ字状端子の端部の外側2箇所にメーク側固定接点12aを備えたメーク側固定端子12と、略コ字状端子の端部の内側2箇所にブレーク側固定接点13aを備えたブレーク側固定端子13とを、絶縁部材で一体成形することにより、メーク側及びブレーク側固定接点12a及び13aが各々対向するように配置した端子固定ブロック11を有する。
【0023】
この端子固定ブロック11は、ブレーク側接続端子13bの脚部に絶縁ベース10への圧入部13cを備え、メーク側及びブレーク側固定端子12及び13の電気的連結部14の中央部は端子固定ブロック11の固定ブロック部11aの外側に露出している。
【0024】
また、電磁継電器1は、端子固定ブロック11を絶縁ベース10の中央位置に圧入固定し、その両側に電磁ブロック20の可動接点26がメーク側及びブレーク側固定接点12a及び13aと対向するように電磁ブロック20を配置し、かつ、2個の電磁ブロック20同士が点対称となる位置に圧入固定して構成されている。
【0025】
ここで端子固定ブロック11の構造を図3により説明する。図3において、図3(a)は正面図、図3(b)は側面図である。また、前記絶縁ベース10への圧入部13cは、ブレーク側接続端子13dの脚部に形成している。また、中央露出部のブレーク側端子固定枠13eは、メーク側またはブレーク側固定端子12,13を一体成形するときの端子の固定に使用する部分で、絶縁ベース10へ組み込む前に、中央切断部13xで切断される。
【0026】
また、メーク側固定端子12及びブレーク側固定端子13で構成される一対の端子を電気的に独立させる場合には、絶縁ベースへ組み込む前に、メーク側固定端子12に形成されたスリット部12dを含む電気的連結部14の中央切断部12xの位置で予め切断することにより実現する。
【0027】
次に、本発明による実施例の効果について説明する。表1に、メーク側及びブレーク側固定端子の板厚を0.4mm(従来品)から0.7mm(本実施例品)に増加した端子固定ブロックにおける端子固定ブロックのサイズ及びブレーク側固定接点と接続端子間の電気抵抗を比較した結果を示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1から明らかなように、本発明による固定端子ブロックによれば、固定端子ブロックのサイズを変えることなく、(メーク側及びブレーク側)固定接点と接続端子間の電気抵抗を半減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明による電磁継電器は、モーターやソレノイドなどの比較的大きな電流の駆動制御が必要で、発熱の大きい自動車電装の電磁継電器への適用が好適であるほか、産業機器、家電機器などにも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係わる電磁継電器の斜視図。
【図2】本発明に係わる電磁継電器の分解斜視図。
【図3】本発明に係わる電磁継電器に用いられる端子固定ブロックの説明図。図3(a)は正面図、図3(b)は側面図。
【図4】従来の電磁継電器を説明するための分解斜視図。
【図5】従来の電磁継電器に用いられる端子固定ブロックの正面図。
【符号の説明】
【0032】
1 電磁継電器
10,110 絶縁ベース
10a,110a 端子固定ブロック圧入穴
10b,110b 電磁ブロック圧入穴
11,111 端子固定ブロック
11a 固定ブロック部
12,112 メーク側固定端子
12a,112a メーク側固定接点
12b,112b メーク側接続端子
12d,112d スリット部
12x 中央切断部
112x 切り欠き部
13,113 ブレーク側固定端子
13a,113a ブレーク側固定接点
13b,113b ブレーク側接続端子
13c,113c 圧入部
13d,113d スリット部
13e ブレーク側端子固定枠
13f,113f 貫通穴
13x 中央切断部
113x 切断位置
14,114 電気的連結部
20,120 電磁ブロック
21,121 コア
22,122 コイル
23,123 ヨーク
24,124 可動接点ばね
25,125 アーマチュア
26,126 可動接点
27,127 ヒンジ部
28,128 コモン端子
29,129 コイル端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻装された一端に固定ヨークを有するコアと該コアの他端に対向して配置され、前記コイルへの通電により吸引されるアーマチュアに連動する可動接点を有する可動接点ばねを備えた電磁ブロックと、略コ字状端子の端部の外側にメーク側固定接点を備えたメーク側固定接点端子と略コ字状端子の端部の内側にブレーク側固定接点を備えたブレーク側固定接点端子を絶縁部材で一体成形することによりメーク側およびブレーク側の固定接点が各々対向するように配置した端子固定ブロックと、絶縁ベースとで構成され、前記絶縁ベースの中央部に前記端子固定ブロックを固定し、さらに、2個の前記電磁ブロックを該電磁ブロックが備える可動接点が固定接点と対向するように、かつ2個の電磁ブロック同士が点対称となる位置に圧入固定して成る電磁継電器において、前記端子固定ブロックは、前記ブレーク側固定端子の脚部に前記絶縁ベースへの圧入部を備え、前記メーク側およびブレーク側固定端子の電気的連結部の中央にスリット部を設け、該スリット部を前記端子固定ブロックの固定ブロック部の外側に露出させ、電気的連結部の中央切断部で切断することで前記メーク側およびブレーク側固定端子を電気的に独立できることを特徴とする電磁継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−18914(P2007−18914A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200319(P2005−200319)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【出願人】(302005204)NECトーキン岩手株式会社 (6)