説明

電磁継電器

【課題】高容量通電を可能にする静音型の電磁継電器を提案すると共に、プリント基板実装時において静音性が高く且つ組立が容易な電磁継電器を提案することを目的とする。
【解決手段】本発明の電磁継電器10は、リレー本体11と、リレー本体11に電気的に接続されるプラグ端子14とを具備するプラグイン型の電磁継電器10において、リレー本体11とプラグ端子14との間に介在するバネ部材16を具備し、バネ部材16は、一端でリレー本体11に取り付けられるとともに他端でプラグ端子14に取り付けられて、リレー本体11を弾性的に支持し、バネ部材16が銅合金により形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
高容量用のプラグイン型の電磁継電器において、静音化が求められている。従来、電磁石の動作に伴う接点部の衝撃や振動を吸収することを目的として、様々な静音型の電磁継電器が開発されており、例えば特許文献1に、リレー本体と、それを支持するベースと、バネ性を有する端子と、を備え、リレー本体が端子を介してベースとの間に空隙を有して支持される電磁継電器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−21811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術は、高容量用の電磁継電器を対象としておらず、静音性を向上すると共に高容量通電に適切なバネ端子の材料や、リレー本体とバネ端子との接続方法は開示されていない。また、従来の電磁継電器は、静音性を向上させるために端子の構造に注目したものが多く、プリント基板実装に伴う振動の伝播を抑制する構造、例えば電磁継電器のベースに端子を固定する構造について言及したものは少ない。
【0005】
このように、高容量通電を可能にするプラグイン型の電磁継電器の静音性を向上させること、及び、プリント基板実装型の電磁継電器においても静音性が高く且つ組立を容易にすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、リレー本体と、該リレー本体に電気的に接続されるプラグ端子とを具備するプラグイン型の電磁継電器において、前記リレー本体と前記プラグ端子との間に介在するバネ部材を具備し、前記バネ部材は、一端で前記リレー本体に取り付けられるとともに他端で前記プラグ端子に取り付けられて、前記リレー本体を弾性的に支持し、前記バネ部材が銅合金により形成されている、ことを特徴とする電磁継電器を提供する。
【0007】
また、本発明は、さらに、前記プラグ端子を保持するベースと、前記ベースの上側において前記リレー本体及び前記バネ部材を覆うよう形成されたカバーと、を具備し、前記リレー本体は、前記バネ部材により前記ベース及び前記カバーに非接触に浮動するよう支持されている、電磁継電器を提供する。
【0008】
また、本発明は、前記リレー本体に接続されるダイオード又は抵抗を具備し、前記ダイオード又は抵抗は、前記プラグ端子に圧着されて固定されている、電磁継電器を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記プラグ端子は、前記リレー本体から延びている端子の配列とは異なる配列で配置されており、前記バネ部材は、前記リレー本体から延びている前記端子と、該端子と異なる配列で配置されている前記プラグ端子とを連結するよう形成されている、電磁継電器を提供する。
【0010】
本発明は、ベースと、該ベースを通して延びている端子とを具備する電磁継電器において、前記端子と前記ベースとの空隙部に、クッションとして低硬度接着剤が充填されている、ことを特徴とする電磁継電器を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記ベースは、前記端子の根元部分を囲繞するよう外方向に隆起した隆起部を具備する、電磁継電器を提供する。
【0012】
また、本発明は、プリント基板に実装される電磁継電器であって、前記隆起部が実装時に前記電磁継電器を前記プリント基板に対して支持する、電磁継電器を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記低硬度接着剤がウレタン樹脂である電磁継電器を提供する。
【0014】
また、本発明は、プリント基板に実装される電磁継電器であって、前記電磁継電器より突起して、実装時に前記電磁継電器を前記プリント基板に対して支持するスタンドオフを具備し、前記スタンドオフはクッションとなる低硬度接着剤を介して前記プリント基板に接着されている、ことを特徴とする電磁継電器を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記スタンドオフの底面に前記低硬度接着剤を充填する凹部が形成されている、電磁継電器を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電磁継電器は、リレー本体とプラグ端子との間にバネ部材を介在させ、リレー本体を弾性的に支持することで、リレー本体から発生する振動がプラグ端子に伝播することを抑制し、電磁継電器の静音化を実現している。また、バネ部材を銅合金により形成することで、高容量通電を可能にするプラグイン型の電磁継電器として耐通電性や耐熱性を備えつつ静音化することを可能にした。
【0017】
また、本発明の電磁継電器は、端子とベースとの空隙部に、クッションとして低硬度接着剤を充填することで、端子からベースに伝播する振動を抑制している。また、低硬度接着剤を介して電磁継電器を支持するスタンドオフをプリント基板に接着することで、電磁継電器からプリント基板に伝播する振動を抑制している。低硬度接着剤をクッションとして使用することで、電磁継電器をプリント基板に実装することに伴う振動共振、音圧増幅を防止し、装置の静音性を向上させることができる。また、新たに部品を追加することなく静音化しているので、低コストで静音型の電磁継電器の提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施形態の電磁継電器の構成を示した分解斜視図である。
【図2】第一実施形態の電磁継電器を示す側面図である。
【図3】第一実施形態の電磁継電器の底面を示す底面図である。
【図4】第一実施形態の電磁継電器の電気的な接続状況を示す回路図である。
【図5】図5(a)は第一実施形態の電磁継電器で用いるU字形バネ部材の一つを示す斜視図、図5(b)はそのU字形バネ部材の側面図、図5(c)はU字形バネ部材をプラグ端子に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図6】図6(a)はダイオードの取付状況を示す斜視図、図6(b)はダイオードの取付状況を示す部分拡大図、図6(c)はダイオードを支持する支持部を示す斜視図である。
【図7】図7(a)は第二実施形態の電磁継電器の底面を示す斜視図、図7(b)は図7(a)のVII−VII線に沿った電磁継電器の部分断面図である。
【図8】図8(a)は第二実施形態の電磁継電器の別例の底面を示す斜視図、図8(b)は、図8(a)のVIII−VIII線に沿った電磁継電器の部分断面図である。
【図9】図9(a)は第三実施形態の電磁継電器の底面を示す斜視図、図9(b)は図9(a)のIX−IX線に沿った電磁継電器の部分断面図である。
【図10】図10(a)は第三実施形態の電磁継電器の別例の底面を示す斜視図、図10(b)は図10(a)のX−X線に沿った電磁継電器の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。また、以下の実施形態において同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付して示している。
【0020】
(第一実施形態)
図1は、本発明による第一実施形態の電磁継電器10の構成を示した分解斜視図である。本実施形態の電磁継電器10は、リレー本体11と、ベース13と、プラグ端子14a〜14d(以下まとめてプラグ端子14と記載する場合がある)と、リレー本体11とプラグ端子14a〜14dとの間に介在するU字形バネ部材16a〜16d(以下、まとめてU字形バネ部材16と記載する場合がある)と、主にリレー本体11、ベース13、及びU字形バネ部材16を覆うカバー18とから構成されている。U字形バネ部材16は、それぞれの一端でリレー本体11から延びる接点端子12aa、12ab(図2、図6(a)参照)、12ca、12cbや、コイル端子12b、12d(以下、接点端子及びコイル端子をまとめて端子12と記載する場合がある)に取り付けられると共に、他端でプラグ端子14に取り付けられて、リレー本体11を弾性的に支持している。図2は、組立後の電磁継電器10を示す側面図であり、カバー18内のリレー本体11とU字形バネ部材16の位置が分かるようそれらが点線で示されている。なお、本実施形態の電磁継電器10は高容量用の電磁継電器(以下、高容量リレーと記載する場合がある。)であり、30A以上の電流に対応するよう、通常の電磁継電器よりも耐通電性や耐熱性を備えている。
【0021】
リレー本体11は、図示しないがその内部においてボビンにコイルが巻き付けられた電磁石及びその電磁石のコイルの励磁に反応して接離する接点部が設けられており、動作時又は復帰時において振動や音が発生する。そして、接点部に通電する接点端子12aa、12ab、12ca、12cb、及び電磁石に通電するコイル端子12b、12dがリレー本体11の底部を通って延びている。電磁石や接点部等の構成は通常の電磁継電器と同じものなのでその説明は省略する。
【0022】
ベース13は、成型材料等により平板状に形成された部材であり、プラグ端子14が貫通する貫通孔が設けられており、プラグ端子14を保持するようになっている。
【0023】
次に、プラグ端子14について説明する。図3は電磁継電器10の底面を示す図である。プラグ端子14はリレー本体11を例えば配電盤や電源設備に接続するための接続部品である。本実施形態のプラグ端子14は図3に示すようにマイクロISO規格で配列されており、電磁継電器10の高容量通電を可能するために通常の端子より大きい厚みや幅を有している。上述のように、プラグ端子14はリレー本体11の端子12にU字形バネ部材16を介して電気的に接続される。そして、それぞれのプラグ端子14の上方端部には、U字形バネ部材16にかしめにより機械的に連結するための突起部17が形成されている(図5(c)、図6(a)を参照)。
【0024】
次に、リレー本体11の端子12とプラグ端子14との電気的な接続について、図4の回路図に基づいて説明する。図から分かるように、プラグ端子14aはバネ部材16aを介して接点端子12aa、12abに接続されており、プラグ端子14cはバネ部材16cを介して接点端子12ca、12cbに接続されている。プラグ端子14bはバネ部材16bを介してコイル端子12bに接続されており、プラグ端子14dはバネ部材16dを介してコイル端子12dに接続されている。プラグ端子14bとプラグ端子14dとに通電されることでコイル19が励磁して、接点部20a、20bが閉じられることによりプラグ端子14aとプラグ端子14cとが通電するようになる。なお、プラグ端子14bとプラグ端子14dとの間にはコイル19と並列して、ダイオード24が取り付けられている。ダイオード24は逆電流による回路の破壊を防止するために取り付けられており、ダイオード24の代わりに抵抗を取り付けてもよい。
【0025】
カバー18は、成型材料により底面が開口した箱状に形成された部材である。図2に示すように、リレー本体11及びU字形バネ部材16a〜16dを覆うよう形成されており、組立後はカバー18の開口部がベース13に接合される。カバー18及びベース13によりリレー本体11の略全体を覆うことで、リレー本体11から発生する音が外部に漏れるのを防止し、電磁継電器10の静音性を向上させている。
【0026】
次に、U字形バネ部材16の形状について説明する。図5(a)はU字形バネ部材16aの斜視図、図5(b)はその側面図である。図から分かるように、U字形バネ部材16aは、図5(a)に示す方向Aから見た断面形状が略U字形に形成されており、例えば垂直方向から加わる力に対して弾性をもって撓むことが可能になっている。U字形バネ部材16aは、一方の端部としてリレー本体12の接点端子12aa、12abに接続するリレー側接続部21aと、他方の端部としてプラグ端子14aに接合するプラグ側接続部22aと、リレー側接続部21aとプラグ側接続部22aとを曲面により連結する折曲り部23aとから形成されている。折曲り部23aが弾性変形してリレー本体11から受ける振動を緩衝・抑制することで、プラグ端子14aに振動が伝播し難くなっており、電磁継電器10を静音化することができる。
【0027】
リレー側接続部21aは、リレー本体11の接点端子12aa、12abのそれぞれと接合するよう先端が二股に形成されている。U字形バネ部材16aが接点端子12aaと端子12abとに接合することで、通電する経路が増加し高容量通電を可能すると共に、部材が一つになることで部品点数を減らすことができる。また、U字形バネ部材16aの大きさ、特に幅を大きくすることで、高容量リレーに必要な耐通電性や耐熱性を確保することができる。一方、U字形バネ部材16aの他方の端部であるプラグ側接続部22aには、プラグ端子14aに形成された突起部17(図6(a)参照)を通すためのかしめ用の孔が形成されている。
【0028】
U字形バネ部材16を介して、リレー本体11の端子12とプラグ端子14とを接合することで、端子12の配列を本実施形態のプラグ端子14の配列のように別の規格に変更することができる。例えば、PCB用に配列された任意の端子を有するリレーをマイクロISO規格に従ったプラグ端子の配列に変換することができる。
【0029】
他のU字形バネ部材16b〜16dも略同じ構成で形成されており、リレー側接続部とプラグ側接続部とを曲面により連結する折曲り部を有している。特に、U字形バネ部材16cは、図5(c)に示すように、U字形バネ部材16aと同様、リレー側接続部21cがリレー本体11の接点端子12ca、12cbのそれぞれと接合するよう先端が二股に形成されている。本実施形態の電磁継電器10のリレー本体11は、U字形バネ部材16により、ベース13及びカバー18に非接触に浮動するよう支持されている。このようにリレー本体11を支持することで、リレー本体11の動作時又は復帰時の振動がベース13、プラグ端子14、及びカバー18を通じて外部に伝播し難くなり、電磁継電器10の静音性が向上する。
【0030】
本実施形態のU字形バネ部材16の材料としては銅合金が使用されており、厚みが0.2mm程度、さらに好ましくは0.17mmの板金から折曲加工することにより作製される。銅合金は導電率及び強度の両方において高い性能を有しており、高容量リレーのU字形バネ部材として使用するのに好適である。銅合金のなかでも、特にクロム(Cr)やジルコニウム(Zr)を含有するCu−Cr−Zr系合金は、導電率が75〜85(%IACS)、引張強さが約450〜650N/mm2の性質を有しており、高容量リレーのU字形バネ部材として使用するのに望ましい。このような銅合金を材料にしたU字形バネ部材を用いることで、耐通電性や耐熱性を維持しつつ、リレー本体11の端子12とプラグ端子14とを弾性的に接続すことができる。
【0031】
次に、U字形バネ部材16と端子12との接合方法について説明する。U字形バネ部材16の一方の端部(リレー側接続部)と、リレー本体11の端子12とは、ハンダ溶接、抵抗溶接、アーク溶接、レーザ溶接、リベットかしめのうちから選択された一つの方法により接合される。これらの接合方法は耐通電性及び耐熱性が高く、端子12とU字形バネ部材16の一端とを、高容量通電を可能にしつつ接合することができる。
【0032】
また、図5(a)に示すように、U字形バネ部材16aの他方の端部にあるプラグ側接続部22aには、上述のように、プラグ端子14aに接続するための孔が形成されている。そのため、プラグ端子14aに形成された突起部17(図6(a)参照)を通して、かしめを実施することで、プラグ端子14aとU字形バネ部材16aとを高容量通電を可能にしながらも強固に接続することができる。他のU字形バネ部材も同様に孔が形成されており、一例として、図5(c)に、U字形バネ部材16cの孔にプラグ端子14cの突起部17を通してかしめにより接続した状態を示す。
【0033】
本実施形態の電磁継電器10には、図6(a)に示すように、プラグ端子14bと14dを繋ぐダイオード24が設けられている。このダイオード24は、上述のように逆電流による回路の破壊を防止するために取り付けられており、ダイオード24の代わりに抵抗が取り付けられてもよい。プラグ端子14b、14dには、ダイオード24を支持するよう、それぞれに支持部25a、25bが形成されている。通常、これらの支持部25a、25bと、ダイオード24から延びる端子24aはハンダにより溶着されるが、本実施形態の電磁継電器10では、図6(c)に示すように支持部25a、25bの上方端部にスリット26を設けて、図6(b)に示すように、ダイオード24から延びる端子24aをスリット26に挿入して圧着して、ダイオード24がプラグ端子14b、14dに固定されるようになっている。これにより電磁継電器10を組み立てる際、ダイオード24を容易に取り付けることができる。
【0034】
以上、本実施形態について図を用いて説明した。本実施形態の電磁継電器10では、リレー本体11をU字形バネ部材16で支持することにより、リレー本体11から発生する動作時又は起動時の振動がプラグ端子14に伝播することを抑制して、電磁継電器10の静音化を実現している。また、U字形バネ部材16を銅合金により作製することで、高容量リレーとして耐通電性や耐熱性を備えつつ静音化することが可能になった。また、リレー本体11の端子12とU字形バネ部材16とをハンダ溶接やリベットかしめ等を用いることで高容量通電を可能にしつつ連結している。また、プラグ端子14とは別の部材としてU字形バネ部材16を用いることで、リレー本体11から延びる端子12の配列を別の規格の配列、例えばマイクロISO規格に変換することができる。なお、本実施形態では、リレー本体11とプラグ端子14とを連結するバネ部材をその断面がU字形であるバネ部材を用いているが、バネ部材は弾性を有していればよく、例えば断面をZ字形や波状、又はコイル状に形成してもよい。
【0035】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について、図を用いて説明する。図7(a)は本実施形態の電磁継電器30の底面を示す斜視図であり、図7(b)は図7(a)のVII−VIIに沿った電磁継電器30の部分断面図で、電磁継電器30をプリント基板100に実装した状況を示している。
【0036】
本実施形態の電磁継電器30は、プリント基板実装型の電磁継電器であり、その内部においてボビンにコイルが巻き付けられた電磁石及びその電磁石のコイルの励磁に反応して動作する接点部が設けられている(図示しない)。上述のボビンや電磁石及び接点部等は、図7(a)に示すベース32及びカバー33からなるケース本体31の内部に組み込まれており、電磁石のコイルや接点部に通電する端子34a〜34e(以下、これらをまとめて端子34と記載する場合がある)が、ベース32から貫通孔を通して延びている。
【0037】
本実施形態では、それぞれの端子34a〜34eの根元部分の周辺を囲うよう、ベース32から外方向に隆起した隆起部35a〜35e(以下、これらをまとめて隆起部35と記載する場合がある)を設け、端子34の根元部分と隆起部35との間に形成された空隙部36にクッションとして低硬度接着剤37を充填している。端子34がベース32にクッションとなる低硬度接着剤37を介して固定されるので、端子34からベース32に伝播する振動が抑制され、電磁継電器30の静音性を向上させることができる。
【0038】
低硬度接着剤37が振動の伝播を抑制するためには、その硬度(JIS−A(JIS K6253))が40から50程度であるのがよく、本実施形態では、その性質を満たす接着剤としてウレタン樹脂を用いている。ウレタン樹脂は、硬度が45以上、伸びが150%以上、引張強さが2Mpa以上の性質を有しており、電磁継電器30の振動を抑制するのに好適である。また、低硬度接着剤37にゴムを利用することも可能であるが、空隙部36への充填の容易性からウレタン樹脂のほうが望ましい。また、通常、電磁継電器30をプリント基板100に実装する場合、エポキシ樹脂が利用されているが、エポキシ樹脂はその硬度が85以上あるので、クッションとして振動を抑制することが難しい。
【0039】
また、通常、電磁継電器はプリント基板実装時にプリント基板に対して一定の間隔を開けて電磁継電器が支持されるよう、電磁継電器の底面の4隅にスタンドオフが設けられている(図8(a)スタンドオフ38参照)。本実施形態では、ベース32の隆起部35a〜35eをベース32の表面から同じ高さHになるよう形成しており、電磁継電器30を実装するプリント基板100に対して一定の間隔を開けて支持することができる。そのため、別途スタンドオフを形成する必要がない。そして、隆起部35をスタンドオフとして利用することで、空隙部36に充填された低硬度接着剤37がプリント基板100に接触する。そのため、低度接着剤37が接着剤として機能するだけでなく、クッションとしても機能し、ベース32からプリント基板100に伝播する振動を抑制することができる。
【0040】
隆起部35の高さHの大きさは、0.5〜1.0mm程度で形成されている。また、空隙部36の大きさに制限はないが、充填する低硬度接着剤37はある程度の弾性力を維持しつつもできるだけ少ない方がよく、図7(b)に示す空隙部36の半径Lの大きさを、0.5〜1.0mm程度にするのが望ましい。
【0041】
本実施形態の別例について、図を用いて説明する。図8(a)は本実施形態の別例である電磁継電器40の底面を示す斜視図、図8(b)は図8(a)のVIII−VIII線に沿った部分断面図であり、プリント基板100に実装した状況を示す図である。
【0042】
図8(a)に示す電磁継電器40は、図7(a)に示す電磁継電器30と同様に、プリント基板実装型の電磁継電器である。図7に記載の電磁継電器30とは、低硬度接着剤37を充填する範囲が異なっている。具体的には、電磁継電器40のべース32の表面の大部分において、端子34a〜34eの根元部分を含むよう凹部39が形成されており、その凹部39に低硬度接着剤37が充填されている。小型の電磁継電器の場合、端子34間の間が狭く、それぞれの端子34の根元に隆起部35を形成することが困難な場合、図8(a)に示す構成が有利である。この場合、ベース32の四隅から突出するスタンドオフ38を形成してもよい。
【0043】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態について、図を用いて説明する。図9(a)は本実施形態の電磁継電器50の底面を示す斜視図であり、図9(b)は図9(a)のIX−IX線に沿った電磁継電器50の部分断面図であり、プリント基板100に実装された状況を示す。
【0044】
電磁継電器50は、図7(a)の電磁継電器30と同様に、プリント基板実装型の電磁継電器であり、その内部においてボビンにコイルが巻き付けられた電磁石及びその電磁石のコイルの励磁に反応して動作する接点部が設けられて(図示しない)、電磁石や接点部に通電する端子54がベース52から貫通孔を通して延びている。本実施形態と第二実施形態の電磁継電30とが異なる点は低硬度接着剤57を充填する位置である。
【0045】
一般的な電磁継電器にはスタンドオフが設けられており、プリント基板実装時にスタンドオフがプリント基板に接触して電磁継電器を支持している。そのため、電磁継電器から発生した振動が、ベース及びスタンドオフを介してプリント基板に直接的に伝播し、装置の静音化を妨げる一つの要因となっていた。そこで、本実施形態では、図9(a)に示すように、電磁継電器50のベース52から突出するスタンドオフ55a〜55d(以下、まとめてスタンドオフ55と記載する場合がある)の底面に低硬度接着剤57を塗布してプリント基板100に接着することで振動の伝播を抑制している。また単に塗布するだけでは、低硬度接着剤57の容量が小さくその弾力性が弱い。そのため、本実施形態では低硬度接着剤57がクッションとして機能するよう、各スタンドオフ55a〜55dのそれぞれに凹部56を形成し、凹部56に低硬度接着剤57を充填することでその弾力性が発揮できるようになっている(図9(b)参照)。
【0046】
低硬度接着剤57として、第二実施形態と同様、ウレタン樹脂を用いるのがよい。また、振動の伝播を抑制するには、スタンドオフ55がプリント基板100に接触する部分よりも、低硬度接着剤57がプリント基板100に接触する部分が広い方が好ましい。そのため、図9(b)に示す低硬度接着剤57を囲むスタンドオフ55の壁58の厚みDはより薄い方が望ましい。本実施形態のように、電磁継電器50とプリント基板100とが接触する部分に低硬度接着剤57を適用することで、電磁継電器50をプリント基板100に固定すると共に、ベース52から伝播する振動を抑制することが可能になる。
【0047】
本実施形態の別例について、図10(a)、図10(b)を用いて説明する。図10(a)は、本実施形態の別例である電磁継電器60の底面を示す斜視図、図10(b)は図10(a)のX−X線に沿った部分断面図であり、プリント基板100に実装した状況を示す図である。
【0048】
電磁継電器60は、図9に記載の電磁継電器50と比べて、スタンドオフ65a〜65d(以下、まとめてスタンドオフ65と記載する場合がある)に低硬度接着剤を塗布する部分が異なっている。具体的には、図10(b)に示すように、ベース62から突出するスタンドオフ65aの全体を覆うように低硬度接着剤67を塗布している。このような構成は特に小型の電磁継電器においてスタンドオフが小さく、スタンドオフの底面に充分な大きさの凹部を設けられない場合に有利である。スタンドオフ65の全体を低硬度接着剤67により覆うことで、小型の電磁継電器の場合でも、低硬度接着剤67がクッションとなるよう、ある程度の容量を確保することができ、ベース62からプリント基板100への振動の伝播を抑制することができる。
【0049】
以上、本発明の第二実施形態及び第三実施形態について図を用いて説明した。本発明の電磁継電器は、ベースと端子との間の空隙部を低硬度接着剤により充填することで、端子からベースに伝播する振動を抑制している。また、プリント基板実装時にベースとプリント基板とを低硬度接着剤により接着して固定することで、ベースからプリント基板に伝播する振動を抑制している。そのため、電磁継電器をプリント基板に実装することに伴う振動共振、音圧増幅を防止し、装置の静音性を向上させることができる。また、新たに部品を追加することなく静音化しているので、低コストで静音型の電磁継電器の提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 電磁継電器
11 リレー本体
12aa、12ab、12ca、12cb 接点端子
12b、12d コイル端子
13 ベース
14a〜14d プラグ端子
16a〜16d U字形バネ部材
18 カバー
19 コイル
20a、20b 接点部
21 リレー側接続部
22 プラグ側接続部
23 折曲り部
24 ダイオード
25 支持部
30、40、50、60 プリント基板実装型電磁継電器
31、51、61 ケース本体
32、52、62 ベース
33、53、63 カバー
34a〜34e 端子
35a〜35e 隆起部
36 空隙部
37、57、67 低硬度接着剤
38 スタンドオフ
54a〜54e 端子
55a〜55d スタンドオフ
56 凹部
65a〜65d スタンドオフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リレー本体と、該リレー本体に電気的に接続されるプラグ端子とを具備するプラグイン型の電磁継電器において、
前記リレー本体と前記プラグ端子との間に介在するバネ部材を具備し、
前記バネ部材は、一端で前記リレー本体に取り付けられるとともに他端で前記プラグ端子に取り付けられて、前記リレー本体を弾性的に支持し、
前記バネ部材が銅合金により形成されている、
ことを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
さらに、前記プラグ端子を保持するベースと、
前記リレー本体及び前記バネ部材を覆うよう形成されたカバーと、を具備し、
前記リレー本体は、前記バネ部材により前記ベース及び前記カバーに非接触に浮動するよう支持されている、請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記リレー本体に接続されるダイオード又は抵抗を具備し、
前記ダイオード又は抵抗は、前記プラグ端子に圧着されて固定されている、請求項1又は2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記プラグ端子は、前記リレー本体から延びている端子の配列とは異なる配列で配置されており、
前記バネ部材は、前記リレー本体から延びている前記端子と、該端子と異なる配列で配置されている前記プラグ端子とを連結するよう形成されている、請求項1から3の何れか一項に記載の電磁継電器。
【請求項5】
ベースと、該ベースを通して延びている端子とを具備する電磁継電器において、
前記端子と前記ベースとの空隙部に、クッションとして低硬度接着剤が充填されている、ことを特徴とする電磁継電器。
【請求項6】
前記ベースは、前記端子の根元部分を囲繞するよう外方向に隆起した隆起部を具備する、請求項5に記載の電磁継電器。
【請求項7】
前記電磁継電器は、プリント基板に実装される電磁継電器であって、
前記隆起部が、実装時において前記電磁継電器を前記プリント基板に対して支持する、請求項6に記載の電磁継電器。
【請求項8】
前記低硬度接着剤はウレタン樹脂である、請求項5から7の何れか一項に記載の電磁継電器。
【請求項9】
プリント基板に実装される電磁継電器であって、
前記電磁継電器より突起して、実装時に前記電磁継電器を前記プリント基板に対して支持するスタンドオフ、を具備し、
前記スタンドオフは、クッションとなる低硬度接着剤を介して前記プリント基板に接着される、ことを特徴とする電磁継電器。
【請求項10】
前記スタンドオフの底面に前記低硬度接着剤を充填する凹部が形成されている、請求項9に記載の電磁継電器。
【請求項11】
前記低硬度接着剤はウレタン樹脂である、請求項9又は10に記載の電磁継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−142210(P2012−142210A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183(P2011−183)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)