説明

電線のコーティング装置及び電線

低コスト化を図ることができる電線のコーティング装置及び色落ちを防止できる電線を提供する。電線のコーティング装置1は電線2の外表面にコーティング層を形成する。電線のコーティング装置1は収容槽10と案内機構11とを備えている。収容槽10はコーティング液Cを収容しかつ密閉されている。コーティング液Cはメタクリル樹脂とこのメタクリル樹脂を溶かす溶媒とからなる。案内機構11は一対のスキージ14,15と複数のローラ16a,16bを備えている。スキージ14は電線2を収容槽10内に導く。ローラ16a,16bは電線2をコーティング液Cに漬ける。スキージ15は電線2の外表面から余分なコーティング液Cを除去するとともに電線2を収容槽10外に導く。コーティング層の厚さは68μm以上でかつ126μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、電線の例えばポリ塩化ビニルなどの合成樹脂からなる被覆部の外表面をアクリル樹脂などで被覆する電線のコーティング装置と、電線に関する。
【背景技術】
移動体としての自動車などには、種々の電子機器が搭載される。このため、前記自動車などは、前記電子機器に電源などからの電力やコンピュータなどからの制御信号などを伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスは、複数の電線と、該電線の端部などに取り付けられたコネクタなどを備えている。
電線は、導電性の芯線と該芯線を被覆する絶縁性の合成樹脂からなる被覆部とを備えている。電線は、所謂被覆電線である。コネクタは、導電性の端子金具と絶縁性のコネクタハウジングとを備えている。端子金具は、電線の端部などに取りつけられかつ該電線の芯線と電気的に接続する。コネクタハウジングは、箱状に形成されかつ端子金具を収容する。
前記ワイヤハーネスを組み立てる際には、まず電線を所定の長さに切断した後、該電線の端部などに端子金具を取り付ける。必要に応じて電線同士を接続する。その後、端子金具をコネクタハウジング内に挿入する。こうして、前述したワイヤハーネスを組み立てる。
前述したワイヤハーネスの電線は、芯線の大きさと、被覆部の材質(耐熱性の有無などによる材質の変更)と、使用目的などを識別する必要がある。なお、使用目的とは、例えば、エアバック、ABS(Antilock Brake System)や車速情報などの制御信号や、動力伝達系統などの電線が用いられる自動車の系統(システム)である。
ワイヤハーネスの電線は、前述した使用目的(系統)を識別するために、例えば、外表面が互いに異なる2色でストライプ模様に形成されてきた。そこで、従来から芯線の周りに合成樹脂を押し出し被覆して、被覆部を形成する際に、まず被覆部を構成する合成樹脂に所望の色の着色剤を混入する。そして、芯線を被覆した合成樹脂即ち被覆部の外表面の一部に、前記着色剤と異なる色の着色剤を付着させる。こうして、被覆部の外表面の一部を着色して、電線をストライプ模様に着色してきた。
一方、自動車は、例えば数年から十数年などの長期間用いられる。さらに、自動車は、寒冷地から高温となる地域で用いられる。このため、前述した自動車に用いられる電線では、前述したようにストライプ模様により形成すると、特に後に付ける着色剤が、時間の経過とともに電線の外表面から落ちる傾向となっていた。
さらに、自動車は、前述したように長期間用いられるため、使用中に新たな電子機器を追加することがある。このため、前述したように外表面の着色剤が落ちると、電線同士の識別が困難となり、所望の電線と追加する電子機器とを電気的に接続することが困難となる。このため、特に、自動車に用いられる電線では、過酷な環境下で長期間、外表面の色が落ちないことが望まれている。この種の問題を解決するために、本発明の出願人は、被覆部の表面に有機溶剤に溶かしたメタクリル樹脂またはアクリル樹脂をコーティングすることを提案している。
電線の被覆部の外表面にメタクリル樹脂またはアクリル樹脂をコーティングする際に、これらのメタクリル樹脂またはアクリル樹脂を溶かした有機溶媒中に電線を漬けることが考えられる。このとき、有機溶剤は、常温であっても蒸発するため、排気装置を設けて、作業員の作業環境を良好に保つことが望まれる。また、前記有機溶剤が蒸発すると、メタクリル樹脂またはアクリル樹脂の濃度が変化して、所定の厚さでメタクリル樹脂またはアクリル樹脂をコーティングすることが困難となる虞があった。このため、前述したメタクリル樹脂またはアクリル樹脂の濃度を一定に保つ必要が生じる。
このように、メタクリル樹脂またはアクリル樹脂を溶かした有機溶剤中に電線を漬ける際には排気装置や濃度を一定に保つ機構などが必要となって、設備が大型化するとともにコストが高騰する傾向であった。このため、勿論、電線自体のコストも高騰する。
さらに、電線の外表面をコーティングするメタクリル樹脂またはアクリル樹脂は、勿論、電線の外表面に付着してこの電線を着色した着色剤が落ちない厚さであることが望まれる。
したがって、本発明の第1の目的は、低コスト化を図ることができる電線のコーティング装置を提供することにある。本発明の第2の目的は、色落ちを防止できる電線を提供することにある。
【発明の開示】
第1の目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の電線のコーティング装置は、電線の合成樹脂からなる被覆部の外表面をメタクリル樹脂またはアクリル樹脂で被覆する電線のコーティング装置において、密閉されかつメタクリル樹脂またはアクリル樹脂と、メタクリル樹脂またはアクリル樹脂を溶かす溶媒とからなるコーティング液を収容する収容槽と、前記収容槽内に前記電線を通して前記コーティング液中に前記電線を漬けるとともに、コーティング液中に漬けられた電線を前記収容槽外に導く案内手段と、を備え、前記案内手段は、前記電線の外表面に付着した余分なコーティング液を除去し、かつ前記収容槽外に前記コーティング液が漏れることを防止する構成となっていることを特徴としている。
このことによれば、メタクリル樹脂またはアクリル樹脂と、メタクリル樹脂またはアクリル樹脂を溶かす溶媒とからなるコーティング液を収容する収容槽が密閉されている。また、電線を収容槽内に導いてコーティング液に漬けた後、収容槽外に導く案内手段が、収容槽外にコーティング液が漏れることを防止する。このため、コーティング液が、収容槽内に閉じ込められることとなる。
第2の目的を達成するために、請求項2に記載の本発明の電線は、導電性の芯線と、この芯線を被覆しかつ合成樹脂からなる被覆部と、この被覆部の外表面を被覆するコーティング層と、を備えた電線において、前記コーティング層はメタクリル樹脂からなりかつこのコーティング層の厚さが68μm以上でかつ126μm以下であることを特徴としている。
このことによれば、メタクリル樹脂からなるコーティング層の厚さが68μm以上でかつ126μm以下であるので、コーティング層により電線の色落ちを確実に防止できる。
本明細書に記したメタクリル樹脂とは、メタクリル酸又はメタクリル酸エステルを重合して得られる樹脂である。特に、メタクリル酸メチル重合体は透明性、耐候性の点ですべてのプラスチックの中で最も優れ、建築、照明、看板、雑貨、その他の工業部品に広く用いられている。また、各種メタクリル酸エステル、例えばメタクリル酸エチル、n−ブチル、iso−ブチル、ヘキシル、ラウリルなどは、塗料、接着剤、繊維や皮革及び紙の仕上げ用として需要が伸びている。更にメタクリル酸を共重合してカボキシル基をポリマーに導入すると、接着性の向上、水溶性、架橋性などの特性が付与されるので広く行われている。
請求項3に記載の本発明の電線は、請求項2に記載の電線において、前記コーティング層の厚さが87μm以上でかつ126μm以下であることを特徴としている。
このことによれば、メタクリル樹脂からなるコーティング層の厚さが87μm以上でかつ126μm以下であるので、コーティング層により電線の色落ちをより確実に防止できる。
請求項4に記載の本発明の電線は、請求項2に記載の電線において、前記コーティング層の厚さが107μm以上でかつ126μm以下であることを特徴としている。
このことによれば、メタクリル樹脂からなるコーティング層の厚さが107μm以上でかつ126μm以下であるので、コーティング層により電線の色落ちをより一層確実に防止できる。
第2の目的を達成するために、請求項5に記載の本発明の電線は、導電性の芯線と、この芯線を被覆しかつ合成樹脂からなる被覆部と、この被覆部の外表面を被覆するコーティング層と、を備えた電線において、前記コーティング層はアクリル樹脂からなりかつこのコーティング層の厚さが45.5μm以上でかつ85μm以下であることを特徴としている。
このことによれば、アクリル樹脂からなるコーティング層の厚さが45.5μm以上でかつ85μm以下であるので、コーティング層により電線の色落ちを確実に防止できる。
本明細書に記したアクリル樹脂とは、アクリル酸及びその誘導体を重合して得られる樹脂である。アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステルなどの重合体及び共重合体が含まれる。これらのうちアクリル酸エステルの重合体は、接着剤、塗料として、メタクリル酸メチルの重合体は、透明性の良い成形材料として広い分野で使用されている。
請求項6に記載の本発明の電線は、請求項5に記載の電線において、前記コーティング層の厚さが59μm以上でかつ85μm以下であることを特徴としている。
このことによれば、アクリル樹脂からなるコーティング層の厚さが59μm以上でかつ85μm以下であるので、コーティング層により電線の色落ちをより確実に防止できる。
請求項7に記載の本発明の電線は、請求項5に記載の電線において、前記コーティング層の厚さが72μm以上でかつ85μm以下であることを特徴としている。
このことによれば、アクリル樹脂からなるコーティング層の厚さが72μm以上でかつ85μm以下であるので、コーティング層により電線の色落ちをより一層確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の第1の実施形態にかかる電線のコーティング装置の構成を示す説明図である。
第2図は、本発明の電線のコーティング装置でコーティング層が形成された電線の斜視図である。
第3図は、第2図中のIII−III線に沿う断面図である。
第4図は、本発明の第2の実施形態にかかる電線のコーティング装置の構成を示す説明図である。
第5図は、第2図に示された電線の被覆部と同じ材質のシート材に形成されたコーティング層の厚さに対する色落ちの度合いの変化を示す説明図である。
第6図は、色落ちの度合いを測定した時の条件などを示す説明図であり、(a)は、第5図に示された色落ちの度合いを測定した時の条件などを模式的に示す説明図であり、(b)は、第5図(a)で用いられたシート材と比較対象のシート材とを示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の第1の実施形態にかかる電線のコーティング装置及び電線を、第1図ないし第3図を参照して説明する。本発明の第1の実施形態にかかる第1図に示す電線のコーティング装置(以下単にコーティング装置と呼ぶ)1は、第2図及び第3図に示す電線2の被覆部3の外表面3aにコーティング層4を形成する。
電線2は、移動体としての自動車などに配索されるワイヤハーネスを構成する。電線2は、第2図及び第3図に示すように、導電性の芯線5と、絶縁性の被覆部3とを備えている。芯線5は、複数の素線が撚られて形成されている。芯線5を構成する素線は、導電性の金属からなる。また、芯線5は、一本の素線から構成されても良い。
被覆部3は、合成樹脂としてのポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride:PVC)からなる。被覆部3は、芯線5を被覆している。芯線5と、この芯線5を被覆する被覆部3とで、電線2は断面形状が丸形に形成されている。被覆部3の外表面3aには、コーティング層4が形成されている。
被覆部3は、少なくとも外表面3aが所望の色に着色されている。被覆部3を構成する合成樹脂に所望の色の着色剤が混入されて、外表面3aが所望の色に着色されても良く。無着色または白などの単色の被覆部3の外表面3aに所望の色の液状の着色材が滴射されるなどして、塗布されて、所望の色に着色されても良い。
これらの色が種々の色に変更されることにより、電線2同士を識別可能としている。前述した色は、ワイヤハーネスの電線2の線種、系統(システム)の識別などを行うために用いられる。即ち、前述した色は、ワイヤハーネスの各電線2の使用目的を示しているとともに、この使用目的を識別するために用いられる。
外表面3aに塗布される着色材とは、色材(工業用有機物質)が水またはその他の溶媒に溶解、分散した液状物質である。有機物質としては、染料、顔料(大部分は有機物であり、合成品)があり、時には染料が顔料として、顔料が染料として用いられることがある。より具体的な例として、本明細書でいう着色材とは、着色液と塗料との双方を示している。
着色液とは、溶媒中に染料が溶けているもの又は分散しているものを示しており、塗料とは、分散液中に顔料が分散しているものを示している。このため、着色液で電線2の外表面3aを着色すると、染料が被覆部3内にしみ込み、塗料で電線2の外表面3aを着色すると、顔料が被覆部3内にしみ込むことなく外表面3aに接着する。即ち、本明細書でいう電線2の外表面3aを着色するとは、電線2の外表面3aの全体又は一部を染料で染めることと、電線2の外表面3aの全体又は一部に顔料を塗ることとを示している。
また、前記溶媒と分散液は、電線2の被覆部3を構成する合成樹脂と親和性のあるものが望ましい。この場合、染料が被覆部3内に確実にしみ込んだり、顔料が被覆部3の外表面3aに確実に接着することとなる。
さらに、滴射とは、液状の着色材が、液滴の状態即ち滴の状態で、一定量電線2の外表面3aに向かって付勢されて打ち出されることを示している。
コーティング層4は、メタクリル樹脂からなる。図示例では、コーティング層4は、ポリメタクリル酸メチル(Polymethylmethacrylate:PMMA)からなる。本明細書に記したメタクリル樹脂とは、メタクリル酸又はメタクリル酸エステルを重合して得られる樹脂である。特に、メタクリル酸メチル重合体は透明性、耐候性の点ですべてのプラスチックの中で最も優れ、建築、照明、看板、雑貨、その他の工業部品に広く用いられている。また、各種メタクリル酸エステル、例えばメタクリル酸エチル、n−ブチル、iso−ブチル、ヘキシル、ラウリルなどは、塗料、接着剤、繊維や皮革及び紙の仕上げ用として需要が伸びている。更にメタクリル酸を共重合してカボキシル基をポリマーに導入すると、接着性の向上、水溶性、架橋性などの特性が付与されるので広く行われている。
コーティング層4は、全周に亘って、電線2の被覆部3を被覆している。コーティング層4の厚さT(第3図に示す)は、均一である。コーティング層4の厚さTは、68μm以上でかつ126μm以下である。このため、電線2と、この電線2の被覆部3の外表面3aに形成されたコーティング層4とで、これらの断面形状が丸形に形成されている。
前述した構成の電線2は、外表面3aにコーティング層4が形成されている。このため、時間の経過とともに被覆部3を構成するPVC内の可塑剤が電線2の外表面3aから外部に移行することを防止できる。したがって、電線2は、被覆部3の劣化を防止でき、時間の経過とともに機械的な強度などが低下することを防止できる。
さらに、外表面3aにコーティング層4が形成されているため、時間の経過とともに、前述した着色剤または着色材が電線2の外表面3aから外部に移行することを防止できる。したがって、電線2は、被覆部3の外表面3aを着色した着色剤または着色材が落ちすることを防止できる。則ち、電線2は、外表面3aの色落ちを防止できる。
コーティング装置1は、第1図に示すように、収容槽10と、案内手段としての案内機構11と、を備えている。収容槽10は、下ケース12と上ケース13とを備えている。下ケース12は、上方に開口部を有する箱状に形成されている。上ケース13は、下方に開口部を有する箱状に形成されている。下ケース12と上ケース13とは、開口部が互いに相対した状態で互いに取り付けられる。下ケース12と上ケース13との間は、水密(液密)に保たれる。互いに取り付けられると下ケース12と上ケース13の外壁は、互いに連続する。互いに取り付けられると下ケース12と上ケース13の内側の空間が密閉される。こうして、収容槽10は、内側の空間が密閉される。
収容槽10は、メタクリル樹脂と、このメタクリル樹脂を溶かす溶媒とからなるコーティング液Cを収容する。図示例では、メタクリル樹脂としてPMMAを用いている。また、溶媒として、周知のアルコール、多価アルコール、ケトン、エステルを用いることができる。溶媒として、常温で蒸発するものが望ましい。図示例では、溶媒としてケトンの一例としてのアセトンを用いている。
案内機構11は、一対のスキージ14,15と、複数のローラ16とを備えている。スキージ14,15は、前述したケース12,13の互いに相対する周壁に取り付けられている。スキージ14,15は、収容槽10内のコーティング液Cの液面の上方に配されている。
一対のスキージ14,15のうち第1図中左側の一方のスキージ14は、収容槽10外から電線2を収容槽10内に導く。一方のスキージ14には、電線2を通すことの出来る孔17が設けられている。孔17は、勿論、一方のスキージ14を貫通しており、平面形状が丸形に形成されている。孔17の内径は、電線2の外径と等しい。また、孔17内に電線2が通されると、スキージ14と電線2との間は水密(液密)となる。このため、孔17内に電線2を通すと、一方のスキージ14と電線2との間から収容槽10内のコーティング液Cが収容槽10外に漏れることを防止する。
第1図中右側の他方のスキージ15は、収容槽10内の電線2を収容槽10外に導く。他方のスキージ15には、電線2を通すことの出来る孔18が設けられている。孔18は、勿論、他方のスキージ15を貫通しており、平面形状が丸形に形成されている。孔18の内径は、電線2の外径と、コーティング層4の所望の厚さTを2倍した値との和と等しい。また、孔18内に外表面3aにコーティング液Cが付着した電線2が通されると、所望の厚さT以上のコーティング液Cを電線2の被覆部3の外表面3aから除去する。
こうして、他方のスキージ15は、電線2の外表面3aに付着した余分なコーティング液Cを除去する。また、孔18内に電線2を通すと、他方のスキージ15と電線2との間から収容槽10内のコーティング液Cが収容槽10外に漏れることを防止する。スキージ14,15が収容槽10内のコーティング液Cの液面の上方に配され、かつ前述したように孔17,18の内径が形成されることにより、案内機構11は、収容槽10外にコーティング液Cが漏れることを防止する構成となっている。
また、前述した一対のスキージ14,15は、エチレン−プロピレン−ジエン三次元重合体(Ethylene−Propylene−Diene Methylene Linkage:EPDM)、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどの合成ゴムからなる。
ローラ16は、図示例では、三つ設けられている。これらのローラ16は、収容槽10内に収容されており、一方のスキージ14から他方のスキージ15に向かう方向に沿って並べられている。これらのローラ16は、収容槽10内に回転自在に支持されている。これらのローラ16の回転中心は、互いに平行であるとともに、一方のスキージ14から他方のスキージ15に向かう方向に対して直交している。
三つのローラ16のうち両端(即ち一対のスキージ14,15寄りに位置する)二つのローラ16(以下符号16aで示す)は、収容槽10内のコーティング液Cの液面Sより上方に位置している。このため、ローラ16aには、コーティング液Cが付着しない。また、三つのローラ16のうち中央に位置する一つのローラ16(以下符号16bで示す)は、一部が収容槽10内のコーティング液Cに漬かっている。勿論、前記ローラ16bには、コーティング液Cが付着する。
前述した三つのローラ16a,16bは、互いに同期して第1図中の矢印M1,M2,M3に沿って回転することにより、一方のスキージ14の孔17から収容槽10内に導かれた電線2を他方のスキージ15に向かって移動させる。このとき、電線2を、前記二つのローラ16aの上方に通し、中央のローラ16bの下方に通す。こうすることで、ローラ16a,16bは、一方のスキージ14の孔17を通して収容槽10内に導かれた電線2を収容槽10内のコーティング液Cに漬けた後、他方のスキージ15の孔18を通して収容槽10外に導く。
前述した構成の案内機構11は、一方のスキージ14の孔17から電線2を収容槽10内に導く。そして、ローラ16a,16bなどによって、収容槽10内に通された電線2をコーティング液Cに漬ける。案内機構11は、コーティング液Cに漬けられた電線2を他方のスキージ15の孔18を通して収容槽10外に導く。
そして、一対のスキージ14,15の孔17,18の内径が前述したように形成されることにより、案内機構11は、電線2の外表面3aに付着した余分なコーティング液Cを他方のスキージ15で除去するとともに、収容槽10外に前記コーティング液Cが漏れることを防止する。こうして、コーティング装置1は、68μm以上でかつ126μm以下の厚さTにコーティング層4を成形する。
前述した構成のコーティング装置1を用いて、電線2の外表面3aにコーティング層4を形成する際には、一方のスキージ14の孔17を通して電線2を収容槽10内に導く。そして、電線2を、一方のスキージ14寄りのローラ16aの上方に通した後、ローラ16bの下方に通して前記他方のスキージ15寄りのローラ16aの上方に通す。そして、電線2を他方のスキージ15の孔18を通して、収容槽10外まで導く。
その後、収容槽10内にコーティング液Cを収容する。このとき、中央のローラ16bの一部がコーティング液Cに漬けられ、かつ他のローラ16aがコーティング液Cの液面Sから離れた状態とする。そして、ローラ16a,16bを同期して、第1図中の矢印M1,M2,M3に沿って回転する。電線2を一方のスキージ14の孔17を通して収容槽10内に導いて、収容槽10内のコーティング液Cに漬けた後、他方のスキージ15の孔18を通して収容槽10外に導く。こうして、電線2の外表面3aにコーティング層4を形成する。
本実施形態によれば、メタクリル樹脂とこのメタクリル樹脂を溶かす溶媒とからなるコーティング液Cを収容する収容槽10が密閉されている。また、電線2を収容槽10内に導いてコーティング液Cに漬けた後、収容槽10外に導く案内機構11が、収容槽10外にコーティング液Cが漏れることを防止する。このため、コーティング液Cが、収容槽10内に閉じ込められることとなる。
したがって、コーティング液Cの溶媒が蒸発して収容槽10外に出ることを防止できる。したがって、溶媒を排気する排気装置などが必要ないとともに、収容槽10中のコーティング液Cの濃度を一定に保つ機構などが必要ない。したがって、コーティング装置1自体の小型化と低コスト化を図ることができるとともに、電線2の低コスト化を図ることができる。
さらに、前述した電線2のメタクリル樹脂からなるコーティング層4の厚さTが68μm以上でかつ126μm以下であるので、コーティング層4により電線2の色落ちを確実に防止できる。特に、自動車用の電線2では、コーティング層4がメタクリル樹脂からなりかつ前述した厚さTに形成されているので、長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることを防止できる。
次に、本発明の第2の実施形態にかかる電線のコーティング装置(以下単にコーティング装置と呼ぶ)を、第4図を参照して説明する。本実施形態においても、コーティング装置20は、前述した第1の実施形態で説明した第2図に示す電線2の外表面3aにコーティング層4を形成する。本実施形態においても、コーティング層4は、メタクリル樹脂からなり、厚さTが68μm以上でかつ126μm以下に形成されている。
コーティング装置20は、第4図に示すように、収容槽21と、案内手段としての一対のスキージ部材22,23とを備えている。収容槽21は、一対のケース部材24を備えている。ケース部材24は、一つの壁25と、この壁25の外縁に連なる複数の周壁26とを備えて箱状に形成されている。複数の周壁26の前記一つの壁25から離れた側の縁は、開口部27を形成している。このように、ケース部材24は、一方向に開口部27を有する箱状に形成されている。一対のケース部材24は、開口部27が互いに間隔をあけて相対した状態で配される。
また、第4図中上方に位置する一方のケース部材24には、配管28が連結している。配管28は、一対のケース部材24間にコーティング液Cを導く。コーティング液Cは、前述した第1の実施形態と同様に、メタクリル樹脂と、このメタクリル樹脂を溶かす溶媒とからなる。
前述した構成の収容槽21は、一対のケース部材24に後述するように一対のスキージ部材22,23が取り付けられて、ケース部材24とスキージ部材22,23とで囲まれる空間が密閉される。そして、収容槽21は、前記配管28を通して供給されるコーティング液Cを前記空間内に収容するとともに、該コーティング液Cが前記空間内から外部に漏れることを防止する。
一対のスキージ部材22,23は、収容槽21内に収容されている。一対のスキージ部材22,23のうち一方のスキージ部材22は、円錐台状に形成されている。一方のスキージ部材22は、底面が、一対のケース部材24の互いに相対する周壁26の内面に重ねられた格好で、これら一対のケース部材24の双方に取り付けられている。一方のスキージ部材22と一対のケース部材24との間は、水密(液密)となっている。また、一方のスキージ部材22の中央には、孔29が設けられている。孔29は、勿論、スキージ部材22を貫通している。
孔29は、平面形状が丸形に形成されている。孔29の内径は、電線2の外径と略等しい。一方のスキージ部材22が一対のケース部材24に取り付けられると、孔29は、これら一対のケース部材24の内外を連通している。孔29は、内側に電線2を通すことができる。また、孔29内に電線2が通されると、スキージ部材22と電線2との間は水密(液密)となる。このため、孔29内に電線2を通すと、一方のスキージ部材22と電線2との間から収容槽21内のコーティング液Cが収容槽21外に漏れることを防止する。
他方のスキージ部材23は、円盤状に形成されている。他方のスキージ部材23は、外縁から中央に向かうにしたがって徐々に厚さTが薄くなるように形成されている。他方のスキージ部材23の外縁は、一対のケース部材24双方の一つの壁25の内面に固定される。他方のスキージ部材23と、一対のケース部材24との間は、水密(液密)となっている。
また、他方のスキージ部材23の中央には、孔30が形成されている。孔30は、平面形状が丸形に形成されている。また、孔30は、一方のスキージ部材22の孔29と相対する。孔30の内径は、電線2の外径と、コーティング層4の厚さTの2倍の値との和に等しい。他方のスキージ部材23が一対のケース部材24に取り付けられると、孔30は、これら一対のケース部材24の内外を連通している。また、孔30内に外表面3aにコーティング液Cが付着した電線2が通されると、所望の厚さT以上のコーティング液Cを電線2の被覆部3の外表面3aから除去する。
こうして、他方のスキージ部材23は、電線2の外表面3aに付着した余分なコーティング液Cを除去する。また、孔30内に電線2を通すと、他方のスキージ部材23と電線2との間から収容槽21内のコーティング液Cが収容槽21外に漏れることを防止する。前述したように孔29,30の内径が形成されることにより、一対のスキージ部材22,23は、収容槽21外にコーティング液Cが漏れることを防止する構成となっている。こうして、コーティング装置20は、68μm以上でかつ126μm以下の厚さTにコーティング層4を成形する。
前述した構成の一対のスキージ部材22,23は、一方のスキージ部材22の孔29を通して電線2を収容槽21内に導く。導いた電線2を前記空間内のコーティング液Cに漬けた後、他方のスキージ部材23の孔30を通して、収容槽21外に導く。さらに、前述したスキージ部材22,23は、少なくとも孔29,30の内面がダイヤモンド又はセラミックスからなる。このため、孔29,30内に電線2を通しても、一対のスキージ部材22,23は摩耗しにくい。
前述した構成のコーティング装置20を用いて、電線2の外表面3aにコーティング層4を形成する際には、一方のスキージ部材22の孔29を通して電線2を収容槽21内に導く。そして、電線2を、他方のスキージ部材23の孔30を通して、収容槽21外に導く。
その後、配管28を通して、収容槽21内の空間にコーティング液Cを供給する。このとき、空間内をコーティング液Cで満たす。そして、電線2を矢印Nに沿って、一方のスキージ部材22から他方のスキージ部材23に向かって移動する。電線2を一方のスキージ部材22の孔29を通して収容槽21内に導いて、収容槽21内のコーティング液Cに漬けた後、他方のスキージ部材23の孔30を通して収容槽21外に導く。こうして、電線2の外表面3aにコーティング層4を形成する。
本実施形態によれば、メタクリル樹脂とこのメタクリル樹脂を溶かす溶媒とからなるコーティング液Cを収容する収容槽21が密閉されている。また、電線2を収容槽21内に導いてコーティング液Cに漬けた後、収容槽21外に導く一対のスキージ部材22,23が、収容槽21外にコーティング液Cが漏れることを防止する。このため、コーティング液Cが、収容槽21内に閉じ込められることとなる。
したがって、コーティング液Cの溶媒が蒸発して収容槽21外に出ることを防止できる。したがって、溶媒を排気する排気装置などが必要ないとともに、収容槽21中のコーティング液Cの濃度を一定に保つ機構などが必要ない。したがって、コーティング装置20自体の小型化と低コスト化を図ることができるとともに、電線2の低コスト化を図ることができる。
さらに、本実施形態においても、前述した電線2のメタクリル樹脂からなるコーティング層4の厚さTが68μm以上でかつ126μm以下であるので、コーティング層4により電線2の色落ちを確実に防止できる。特に、自動車用の電線2では、コーティング層4がメタクリル樹脂からなりかつ前述した厚さTに形成されているので、長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることを防止できる。
前述した第1及び第2の実施形態では、収容槽10,21内に収容したコーティング液Cがメタクリル樹脂とこのメタクリル樹脂を溶かす溶媒とからなり、コーティング層4がメタクリル樹脂からなる。しかしながら、本発明では、収容槽10,21内に収容したコーティング液Cをアクリル樹脂とこのアクリル樹脂を溶かす溶媒とから構成して、コーティング層4をアクリル樹脂から構成しても良い。
コーティング層4をアクリル樹脂から構成する際には、厚さTを45.5μm以上でかつ85μm以下とする。このとき、スキージ14,15の孔17,18の内径及びスキージ部材22,23の孔29,30の内径は、コーティング層4の厚さTを45.5μm以上でかつ85μm以下とする寸法となっている。
コーティング液Cをアクリル樹脂とこのアクリル樹脂を溶かす溶媒とから構成して、コーティング層4をアクリル樹脂から構成して、コーティング層4の厚さTを45.5μm以上でかつ85μm以下とした場合は、コーティング層4により電線2の色落ちを確実に防止できる。特に、自動車用の電線2では、コーティング層4がアクリル樹脂からなりかつ前述した厚さTに形成されているので、長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることを防止できる。
次に、本発明の発明者らは、本発明の電線2のコーティング層4の効果を確認するために、厚さTの異なるコーティング層4を複数形成した。これら複数のコーティング層4は、電線2の被覆部3と同じ材質からなりかつ電線2の同様に外表面3aが着色されたシート材100a(第6図に示す)の外表面に形成した。本発明品1及び本発明品2として、メタクリル樹脂又はアクリル樹脂からなるコーティング層4の厚さTが異なるシート材100aを複数用意した。さらに、比較例として、シート材100aと同じ材質でかつ同じ色に着色されているとともに、コーティング層4が形成されていないシート材を用意した。
こうして、第5図中に実線で示すコーティング層4がメタクリル樹脂としてのメタクリル樹脂系PMMAからなる本発明品1と、第5図中に実線で示すコーティング層4がアクリル樹脂としてのPMMAと同様にアクリル樹脂及びメタクリル樹脂系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマーならびにコーポリマーを使用した熱可塑性アクリルビーズレジンからなる本発明品2と、第5図中に二点鎖線で示すコーティング層4が形成されていない比較例とを用いた。
本実験では、第6図(a)に示すように、シート材100aまたはコーティング層4が形成されていない着色されたシート材を、無着色でかつコーティング層4が形成されていないとともに被覆部3と同じ材質からなるシート材100cと重ねる。これらのシート材100a,100cをガラスなどからなる一対の部材101間に挟んで、シート材100a,100cが互いに近づく方向に圧力P(例えば140kgf/cm)を加えた。
そして、圧力Pを加えた状態で80℃に加熱された室内などに24時間放置した。24時間放置した後に、シート材100cの外表面の色と、シート材100cと同様に無着色のシート材100bの外表面の色とを比較した。そして、シート材100aまたはコーティング層4が形成されていない着色されたシート材の色落ち則ちシート100a又はコーティング層4が形成されていないシート材からシート材100cに移った(移行した)色の度合いを測定した。結果を第5図に示す。
第5図の縦軸の色差(ΔE)とは、本発明品1及び本発明品2では、比較対象としてのシート材100b(第6図(b)に示す)を基準として、第6図(a)に示す条件で24時間経過したシート材100aのコーティング層4下の着色材がシート材100cに移った(移行した)色の度合いを示している。則ち、比較対象としてのシート材100b(第6図(b)に示す)を基準として、第6図(a)に示す条件で24時間経過したシート材100aのコーティング層4下の着色材が外表面から落ちた度合い(以下色落ちと呼ぶ)を示している。
さらに、比較例では、比較対象としてのシート材100bを基準として、第6図(a)に示す条件で24時間経過したコーティング層4が形成されていないシート材の着色材がシート材100cに移った(移行した)色の度合いを示している。則ち、比較対象としてのシート材100bを基準として、第6図(a)に示す条件で24時間経過したコーティング層4が形成されていないシート材の着色材が外表面から落ちた度合い(以下色落ちと呼ぶ)を示している。なお、シート材100bは、シート材100cと同様に無着色でコーティング層4が形成されていないとともに被覆部3と同じ材質からなり前述した加圧及び加熱などが施されていないものである。
第5図では、色差(ΔE)が大きくなる即ち色落ちが大きくなると、着色材が外表面からより落ちることとなって、コーティング層4の効果が小さくなることを示している。また、色差(ΔE)が小さくなる即ち色落ちが小さくなると、着色材が外表面から落ちにくくなって、コーティング層4の効果が大きくなることを示している。
第5図中に二点鎖線で示す比較例では、色差(ΔE)が65となっている。このため、色差(ΔE)が65を越えると、コーティング層4を形成していないものより色落ちが大きくなることを示している。このため、色差(ΔE)が65を越えると、コーティング層4の効果が全くないことを示している。
第5図によると、本発明品1では、コーティング層4の厚さTが68μm以上でかつ126μm以下となるとなると、色差(ΔE)が30を下回ることが明らかとなった。このため、コーティング層4の厚さTが68μm以上でかつ126μm以下であると、コーティング層4が設けられていないものに比較して色差(ΔE)則ち色落ちの度合いが約半分以下となることが明らかとなった。
また、本発明品1では、コーティング層4の厚さTが87μm以上でかつ126μm以下となるとなると、色差(ΔE)が20を下回ることが明らかとなった。このため、コーティング層4の厚さTが87μm以上でかつ126μm以下であると、コーティング層4が設けられていないものに比較して色差(ΔE)則ち色落ちの度合いが約3分の1以下となることが明らかとなった。
さらに、本発明品1では、コーティング層4の厚さTが107μm以上でかつ126μm以下となるとなると、色差(ΔE)が10を下回ることが明らかとなった。このため、コーティング層4の厚さTが107μm以上でかつ126μm以下であると、コーティング層4が設けられていないものに比較して色差(ΔE)則ち色落ちの度合いが約6分の1以下となることが明らかとなった。
第5図によると、本発明品2では、コーティング層4の厚さTが45.5μm以上でかつ85μm以下となるとなると、色差(ΔE)が30を下回ることが明らかとなった。このため、コーティング層4の厚さTが45.5μm以上でかつ85μm以下であると、コーティング層4が設けられていないものに比較して色差(ΔE)則ち色落ちの度合いが約半分以下となることが明らかとなった。
また、本発明品1では、コーティング層4の厚さTが59μm以上でかつ85μm以下となるとなると、色差(ΔE)が20を下回ることが明らかとなった。このため、コーティング層4の厚さTが59μm以上でかつ85μm以下であると、コーティング層4が設けられていないものに比較して色差(ΔE)則ち色落ちの度合いが約3分の1以下となることが明らかとなった。
さらに、本発明品1では、コーティング層4の厚さTが72μm以上でかつ85μm以下となるとなると、色差(ΔE)が10を下回ることが明らかとなった。このため、コーティング層4の厚さTが72μm以上でかつ85μm以下であると、コーティング層4が設けられていないものに比較して色差(ΔE)則ち色落ちの度合いが約6分の1以下となることが明らかとなった。
このため、前述した第1及び第2の実施形態では、メタクリル樹脂からなるコーティング層4の厚さTを68μm以上でかつ126μm以下としている。このため、コーティング層4により電線2の色落ちを確実に防止できることが明らかとなった。特に、自動車用の電線2では長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることを防止できることが明らかとなった。
また、前述した第1及び第2の実施形態では、アクリル樹脂からなるコーティング層4の厚さTを45.5μm以上でかつ85μm以下としている。このため、コーティング層4により電線2の色落ちを確実に防止できることが明らかとなった。特に、自動車用の電線2では長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることを防止できることが明らかとなった。
前述した第1及び第2の実施形態では、メタクリル樹脂からなるコーティング層4の厚さTを68μm以上でかつ126μm以下としている。しかしながら、本発明では、メタクリル樹脂からなるコーティング層4の厚さTを87μm以上でかつ126μm以下としても良い。
この場合、第5図に示すように、色差(ΔE)が20を越えないこととなって、コーティング層4により電線2の色落ちをより確実に防止できることが明らかとなった。特に、自動車用の電線2では長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることをより防止できることが明らかとなった。
さらに、本発明では、メタクリル樹脂からなるコーティング層4の厚さTを107μm以上でかつ126μm以下としても良い。この場合、第5図に示すように、色差(ΔE)が10を越えないこととなって、コーティング層4により電線2の色落ちをより一層確実に防止できることが明らかとなった。特に、自動車用の電線2では長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることをより一層確実に防止できることが明らかとなった。
また、前述した第1及び第2の実施形態では、アクリル樹脂からなるコーティング層4の厚さTを45.5μm以上でかつ85μm以下としている。しかしながら、本発明では、アクリル樹脂からなるコーティング層4の厚さTを59μm以上でかつ85μm以下としても良い。
この場合、第5図に示すように、色差(ΔE)が20を越えないこととなって、コーティング層4により電線2の色落ちをより確実に防止できることが明らかとなった。特に、自動車用の電線2では長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることをより防止できることが明らかとなった。
また、本発明では、アクリル樹脂からなるコーティング層4の厚さTを72μm以上でかつ85μm以下としても良い。この場合、第5図に示すように、色差(ΔE)が10を越えないこととなって、コーティング層4により電線2の色落ちをより一層確実に防止できることが明らかとなった。特に、自動車用の電線2では長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることをより一層確実に防止できることが明らかとなった。
さらに、前述した実施形態では、自動車に配索されるワイヤハーネスを構成する電線2に関して記載している。しかしながら本発明の製造装置1で製造される電線2を自動車に限らず、ポータブルコンピュータなどの各種の電子機器や各種の電気機械に用いても良いことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
以上説明したように請求項1に記載の本発明は、メタクリル樹脂又はアクリル樹脂と、メタクリル樹脂又はアクリル樹脂を溶かす溶媒とからなるコーティング液を収容する収容槽が密閉されている。また、電線を収容槽内に導いてコーティング液に漬けた後、収容槽外に導く案内手段が、収容槽外にコーティング液が漏れることを防止する。このため、コーティング液が、収容槽内に閉じ込められることとなる。
したがって、コーティング液の溶媒が蒸発して収容槽外に出ることを防止できる。したがって、溶媒を排気する排気装置などが必要ないとともに、収容槽中のコーティング液の濃度を一定に保つ機構などが必要ない。したがって、電線のコーティング装置自体の小型化と低コスト化を図ることができるとともに、電線の低コスト化を図ることができる。
請求項2に記載の本発明は、メタクリル樹脂からなるコーティング層の厚さが68μm以上でかつ126μm以下であるので、コーティング層により電線の色落ちを確実に防止できる。特に、自動車用の電線では、コーティング層がメタクリル樹脂からなりかつ前述した厚さに形成されているので、長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることを防止できる。
請求項3に記載の本発明は、メタクリル樹脂からなるコーティング層の厚さが87μm以上でかつ126μm以下であるので、コーティング層により電線の色落ちをより確実に防止できる。特に、自動車用の電線では、コーティング層がメタクリル樹脂からなりかつ前述した厚さに形成されているので、長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることをより防止できる。
請求項4に記載の本発明は、メタクリル樹脂からなるコーティング層の厚さが107μm以上でかつ126μm以下であるので、コーティング層により電線の色落ちをより一層確実に防止できる。特に、自動車用の電線では、コーティング層がメタクリル樹脂からなりかつ前述した厚さに形成されているので、長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることをより一層防止できる。
請求項5に記載の本発明は、アクリル樹脂からなるコーティング層の厚さが45.5μm以上でかつ85μm以下であるので、コーティング層により電線の色落ちを確実に防止できる。特に、自動車用の電線では、コーティング層がアクリル樹脂からなりかつ前述した厚さに形成されているので、長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることを防止できる。
請求項6に記載の本発明は、アクリル樹脂からなるコーティング層の厚さが59μm以上でかつ85μm以下であるので、コーティング層により電線の色落ちをより確実に防止できる。特に、自動車用の電線では、コーティング層がアクリル樹脂からなりかつ前述した厚さに形成されているので、長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることをより防止できる。
請求項7に記載の本発明は、アクリル樹脂からなるコーティング層の厚さが72μm以上でかつ85μm以下であるので、コーティング層により電線の色落ちをより一層確実に防止できる。特に、自動車用の電線では、コーティング層がアクリル樹脂からなりかつ前述した厚さに形成されているので、長期間に亘り過酷な環境化で用いられても、色落ちすることをより一層防止できる。
【図1】

【図3】

【図2】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の合成樹脂からなる被覆部の外表面をメタクリル樹脂またはアクリル樹脂で被覆する電線のコーティング装置において、
密閉されかつメタクリル樹脂またはアクリル樹脂と、メタクリル樹脂またはアクリル樹脂を溶かす溶媒とからなるコーティング液を収容する収容槽と、
前記収容槽内に前記電線を通して前記コーティング液中に前記電線を漬けるとともに、コーティング液中に漬けられた電線を前記収容槽外に導く案内手段と、を備え、
前記案内手段は、前記電線の外表面に付着した余分なコーティング液を除去し、かつ前記収容槽外に前記コーティング液が漏れることを防止する構成となっていることを特徴とする電線のコーティング装置。
【請求項2】
導電性の芯線と、この芯線を被覆しかつ合成樹脂からなる被覆部と、この被覆部の外表面を被覆するコーティング層と、を備えた電線において、
前記コーティング層はメタクリル樹脂からなりかつこのコーティング層の厚さが68μm以上でかつ126μm以下であることを特徴とする電線。
【請求項3】
前記コーティング層の厚さが87μm以上でかつ126μm以下であることを特徴とする請求項2記載の電線。
【請求項4】
前記コーティング層の厚さが107μm以上でかつ126μm以下であることを特徴とする請求項2記載の電線。
【請求項5】
導電性の芯線と、この芯線を被覆しかつ合成樹脂からなる被覆部と、この被覆部の外表面を被覆するコーティング層と、を備えた電線において、
前記コーティング層はアクリル樹脂からなりかつこのコーティング層の厚さが45.5μm以上でかつ85μm以下であることを特徴とする電線。
【請求項6】
前記コーティング層の厚さが59μm以上でかつ85μm以下であることを特徴とする請求項5記載の電線。
【請求項7】
前記コーティング層の厚さが72μm以上でかつ85μm以下であることを特徴とする請求項5記載の電線。

【国際公開番号】WO2004/061870
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564519(P2004−564519)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016707
【国際出願日】平成15年12月25日(2003.12.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】