説明

電線の止水方法および止水装置

【課題】電線の絶縁被覆内を真空または真空に近い減圧環境下にした後大気圧に戻すことで、芯線および絶縁被覆間と各芯線間とに止水材を無駄なく確実に浸透可能にし、止水材の有効利用ならびに止水材への気泡の混入を防止可能にする。
【解決手段】少なくとも芯線58が露出する一端側の絶縁被覆59を気密箱51内に密閉状態で収納し、気密箱51内の空気を吸引して減圧化した後に、絶縁被覆59の一端に露出する芯線58上に止水材を滴下させ、この芯線58上の止水材を、気密箱51内に大気を導入することにより、気圧差に応じて芯線58および絶縁被覆59間と各芯線58間とにそれぞれ浸透させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁被覆に包まれた複数の芯線間に止水材を浸透させる電線の止水方法および止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁被覆内の複数の芯線間に止水材を浸透させるのに、例えば特許文献1に示されるような止水方法がある。この止水方法は、アース用電線の一方の端末にアース用端子を装着する工程と、車載用電線類の内部線と被覆材との隙間が流動性を有する止水材により外側から覆われた状態にする止水材セット工程と、前記隙間を覆う止水材の周囲のエアを前記被覆材の内側の圧力よりも高い圧力にすることにより当該止水材を前記被覆材の内側に浸透させる加圧工程と、を含む。
【0003】
これらのうちアース用端子装着工程では、図9に示すように、処理側端末16へのアース用端子20の圧着を行うために、まず、前記アース用端子20のバレル22、24が開いた状態で、これらバレル22、24の間にアース電線10の被覆材14が除去された側の端末、すなわち処理側端末16がセットされる。そのセット後に前記導体バレル22およびインシュレーションバレル24を閉じ方向に変形させる処理が行われることにより、これらのバレル22、24がそれぞれ前記内部導体12および被覆材14に圧着固定される。
【0004】
前記止水材セット工程では、前記アース用端子20が装着されたアース用電線10の処理側端末16に、図10に示すような止水材18をセットする。この止水材18は、図略のディスペンサを用いてアース用端子20の導体パネル22とインシュレーションバレル24との間の箇所に滴下され、前記箇所に溜められる。これにより、当該止水材18は、前記処理側端末16における内部導体12と被覆材14との隙間を外側から塞ぐ。
【0005】
前記加圧工程では、前記アース用電線10の両端末のうち前記アース用端子20が装着された側の端末(すなわち前記止水材18がセットされた処理側端末16)を図10に示すような加圧容器30内に入れて密封し、この加圧容器30内に配管40を通じてコンプレッサ42から圧縮エアを供給する。そして、止水材18の滴下を行って、内部導体12と被覆材14との隙間を覆う止水材の周囲のエア圧を被覆材14の内側の圧力よりも高い圧力とすることで、止水材18を被覆材14の内部に浸透させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第07/052693号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の電線の止水方法では、加圧工程において加圧容器30内に供給された圧縮エアが止水材18とともにアース用電線の一端から内部導体12と被覆材との隙間を通過した後、大気側に臨むアース用電線10の他端(開放端)から圧縮エアとともに吐出される。従って、その吐出される止水材をそのアース用電線の開放端で受ける必要があり、受けた止水材を再利用または廃棄の処理をする必要がある。
【0008】
また、加圧容器内で圧縮エアの一部が止水材18内に浸入することにより止水材18内に気泡が発生し、内部導体の芯線間に空隙が発生して、電線内の止水性能の低下を招くなどの不都合があった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、芯線を持つ電線の絶縁被覆内を真空または真空に近い減圧環境下にした後大気圧に戻すことによって、芯線および絶縁被覆間と各芯線間とのそれぞれに硬化性の止水材を無駄なく確実に浸透可能にし、以って止水材の有効利用ならびに止水材への気泡の混入を防止できる電線の止水方法および止水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電線の止水方法および止水装置は、下記(1)〜(5)を特徴としている。
(1) 複数の芯線を包む絶縁被覆内に止水材を浸透させる電線の止水方法であって、
前記絶縁被覆の一端に前記芯線が露出し、かつ前記絶縁被覆の他端が封止された前記電線のうち、少なくとも前記芯線が露出する一端側の前記絶縁被覆を気密箱内に密閉状態で収納する電線収納ステップと、
前記気密箱に設けられた空気吸引口から前記気密箱内の空気を吸引する空気吸引ステップと、
空気の前記吸引後に前記気密箱に設けられた止水材滴下口から前記絶縁被覆の一端に露出する前記芯線上に止水材を滴下させる止水材滴下ステップと、
前記止水材の滴下完了後に前記気密箱に設けられた大気導入口から、前記気密箱内に大気を導入するための大気導入ステップと、
を有し、
前記大気導入口から前記気密箱内に大気を導入した際に、前記芯線上に滴下された止水材を、前記芯線と絶縁被覆の間、および各芯線間に浸透させること。
(2) 上記(1)の構成の電線の止水方法であって、
前記止水材の滴下を、アース用端子をカシメ固定した前記絶縁被覆の一端に露出する前記芯線上に行うこと。
(3) 上記(1)の構成の電線の止水方法であって、
前記絶縁被覆の他端から露出する芯線を、該芯線端にカシメ固定されたハーネス接続端子とともに、電線端末密封箱に収納すること。
(4) 上記(1)の構成の電線の止水方法であって、
前記絶縁被覆の他端を、該絶縁被覆の他端から露出する芯線端とともに密封材で被覆すること。
(5) 複数の芯線を包む絶縁被覆内に止水材を浸透させる電線の止水装置であって、
前記絶縁被覆の一端に前記芯線が露出し、かつ前記絶縁被覆の他端が封止された前記電線のうち、少なくとも前記芯線が露出する一端側の前記絶縁被覆を密閉状態で収納可能な気密箱と、
前記気密箱に設けられ、前記気密箱内の空気を吸引するための空気吸引口と、
前記気密箱に設けられ、止水材を前記絶縁被覆の一端に露出する前記芯線上に滴下させるための止水材滴下口と、
前記気密箱に設けられ、前記気密箱内に大気を導入するための大気導入口と、
を備え、
前記大気導入口から気密箱内に大気を導入した際に、前記芯線上に滴下された止水材が、前記芯線と絶縁被覆の間、および各芯線間に浸透すること。
【0011】
上記(1)の止水方法および上記(5)の止水装置によれば、他端が封止された電線の少なくとも一端部を気密箱内に収納し、この気密箱内の空気を空気吸引口を通じて脱気することにより、この気密箱内に臨む電線の前記絶縁被覆の一端からこの絶縁被覆内の空気の脱気を行う。この脱気により気密箱内および絶縁被覆内部が真空またはこれに近い低圧環境下に減圧される。この状態において、前記電線の一端で絶縁被覆から露出する芯線上に硬化性の液状止水材を滴下させる。また、この止水材の滴下後、前記気密箱の大気導入口を開放すると、この大気導入口を通じて大気が減圧状態にある気密箱内および絶縁被覆内に、前記減圧レベルに応じた容量および速さで、前記一端の芯線および絶縁被覆間と各芯線間とに滲み込むように流入する。このため、前記滴下された所定量の止水材をすべて止水目的に利用でき、廃棄などによる浪費を回避することができる。また、大気は止水材を前記各空隙内に押し込むように作用し、止水材への空気の混入を抑えることができる。
また、上記(2)の止水方法によれば、絶縁被覆の一端に露出した芯線にアース用端子がカシメ固定された電線に対しても、そのカシメ固定される芯線上に止水材を滴下させることで、この端子付近の絶縁被覆および芯線間と、各芯線間への止水材の滲み込みを可能にする。従って、止水材の硬化後は、水に晒され易いアース用端子から電線内への水の浸入を確実に回避することができる。
また、上記(3)の止水方法によれば、電線の絶縁被覆の他端およびこの他端から露出する芯線を、電線端末密封箱によって封止状態にすることができ、前記絶縁被覆内の空気の吸引および止水材の浸入を、ハーネス接続端子を付けたまま確実に実施することができる。
さらに、上記(4)の止水方法によれば、電線の絶縁被覆の他端およびこの他端から露出する芯線を、密封材によって封止状態にすることができ、前記絶縁被覆内の空気の吸引および止水材の浸入を、密封材を付けたまま確実に実施することができる。この密封材は、芯線に対する電子部品等の接続の際に取り外される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、絶縁被覆内を真空または真空に近い減圧状態にした後大気圧に戻すことで、芯線および絶縁被覆間と各芯線間とに硬化性の止水材を無駄なく確実に浸透可能にし、以って止水材の有効利用ならびに止水材への気泡の混入を防止することができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る電線の止水装置の第1の実施形態を概念的に示す断面図である。
【図2】図1に示す止水装置による止水手順を示す説明図である。
【図3】図1に示す第1の実施形態の応用例を示す断面図である。
【図4】図3に示す止水装置による止水手順を示す説明図である。
【図5】本発明に係る電線の止水装置の第2の実施形態を概念的に示す断面図である。
【図6】図5に示す止水装置による止水手順を示す説明図である。
【図7】図5に示す第2の実施形態の応用例を示す断面図である。
【図8】図7に示す止水装置による止水手順を示す説明図である。
【図9】従来のアース用端子とアース電線との嵌着構造を示す正面図である。
【図10】図9に示すアース電線の止水材浸透方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係る電線の止水装置の第1の実施形態を概念的に示す断面図である。図2は、図1に示す止水装置による止水手順を示す説明図である。図3は、図1に示す第1の実施形態の応用例を示す断面図である。図4は図3に示す止水装置による止水手順を示す説明図である。図5は、本発明に係る電線の止水装置の第2の実施形態を概念的に示す断面図である。図6は、図5に示す止水装置による止水手順を示す説明図である。図7は、図5に示す第2の実施形態の応用例を示す断面図である。図8は図7に示す止水装置による止水手順を示す説明図である。
【0016】
第1の実施形態の止水装置は、密閉空間を形成する気密箱51と、この気密箱51の内外に連通するように設けられた空気吸引口52と、同じく気密箱51の内外に連通するように設けられた、止水材を滴下するための止水材滴下口53と、同じく気密箱51の内外に連通するように設けられた、大気を気密箱内に導入するための大気導入口54と、を含んで構成される。
【0017】
これらのうち、前記気密箱51は、例えば合成樹脂の成形品として構成され、内部に後述の電線57を出し入れ可能な構成となっている。この気密箱51は、容器部分とこの容器部分に被せる蓋部分とをシール材を介して相互に結合および結合解除可能に構成されている。これらの容器部分や蓋部分は、気密箱51の内部が真空または真空に近い圧力に減圧されることによっても、変形や破損、あるいは空気漏れを生じない厚みおよび強度に作られている。
【0018】
空気吸引口52は、気密箱51の内外に貫通するパイプ等により構成され、そのパイプ等の外端にはチューブ等を介して真空ポンプ等(図示しない)が接続されている。なお、真空ポンプは気密箱51内の圧力検出値に基づき指定値(設定値)に制御する制御手段等を併せ持つ。
【0019】
止水材滴下口(止水材滴下ノズル)53は、気密箱51の内外に貫通するように構成され、その止水材滴下口53の外端には例えばチューブ等を介して止水材供給タンクが接続されている。止水材はポンプなどを用いて止水材供給タンク等から止水材滴下口53へ供給される。
【0020】
前記止水材としては、滴下直後の初期状態では流動性を有し、硬化後は柔軟で弾性を持ち、シール特性の良好なものが望ましい。例えば、自然硬化特性や光硬化特性を持つシリコン樹脂、あるいはエポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ポリブタジエンのアクリレートのような多官能性モノマー等を用いることができる。本実施形態では、後述のように、気密箱51内が負圧から大気圧に変化するときに、芯線上に滴下された止水材を各芯線間に浸透させることが必要であり、このために前述のように止水材は流動性を持つことが必要になる。
【0021】
大気導入口54は、気密箱51の内外に貫通する貫通孔やパイプ等により構成され、そのパイプ等の外端には給気ポンプや給気栓等が接続されている。給気栓は、これを開放することで減圧状態の気密箱内を大気圧に変えることができる。また、給気ポンプは、減圧状態の気密箱51内の圧力を所定の速さで負圧から大気圧方向に給気制御することができる。
【0022】
次にこのように構成された止水装置による止水方法を、図2(a)〜図2(e)を参照して説明する。ここでは、この止水方法を一端にアース用端子55が、他端にハーネス用接続端子56がそれぞれカシメ固定された電線57に適用した場合について述べる。
【0023】
まず、前記アース用端子55およびハーネス接続端子56を持つ前記電線57を、気密箱51内に収納する。この気密箱51内では、この電線57とともに各端子55、56が略真直ぐに、かつ移動や回動したりガタ付いたりしないように支持する。そして、アース用端子55の接続部において、電線57の一端を止水材滴下口53の直下に位置させる。この電線57は内部導体である複数本の芯線58と、これらの芯線58の周囲を包むように被覆された絶縁被覆59とを有する。この電線57の一端では、絶縁被覆59が所定長だけ除去されて、芯線58の一部(端部)が露出している。
【0024】
また、アース用端子55は、金属板を折り曲げて成形され、ボディアースに接続されるアース接続部60と、導体側バレル61と、絶縁側バレル62とを一体に有する。導体側バレル61は芯線58をカシメ固定し、絶縁側バレル62は絶縁被覆59端をカシメ固定している。そして両バレル61、62間に露出する芯線58の直上に、前記止水材滴下口53が臨んでいる。
【0025】
一方、ハーネス用接続端子56は、他の電線との接続のためにアース用端子55とは異なる形態を有する。このハーネス用接続端子56が持つバレルおよびこのバレルによる芯線58および絶縁被覆59のカシメ固定は、アース用端子55の場合と略同一であるため、その重複する説明を省略する。また、ハーネス用接続端子56は、絶縁被覆59の他端部とともに、この絶縁被覆59の他端部に密嵌された電線端末密封箱63内に収納されている。従って、この電線57の絶縁被覆59の他端部は、通気不可能に封止されている。
【0026】
次に、前記のようにして両端にアース用端子55およびハーネス用接続端子56を持つ電線57を収納した気密箱51内の空気を、真空ポンプの駆動によって空気吸引口52から吸引する。図2(a)はこの空気吸引動作を示す。このとき、止水材滴下口53と大気導入口54を閉じておき、止水材の滴下および気密箱51内への大気の導入を停止しておく。前記空気の吸引によって、気密箱51内は減圧され、更に電線57の絶縁被覆59内もアース用端子55側の一端から吸気されて減圧していく。この減圧工程によって気密箱51内および絶縁被覆59内が真空またはこの真空に近い減圧レべルに達し、このとき前記空気の吸引動作を停止する。
【0027】
この空気の吸引動作が停止した場合には、図2(b)に示すように、空気吸引口52を閉じ、続いて止水材滴下口53を開く。この場合には、図2(c)に示すように止水材供給タンクから液状の止水材64を気密箱51内の滴下位置、つまりバレル61、62間の芯線58上に滴下させる。このため、その芯線58上には止水材64が一時的に盛られた状態で滞留し、当初は僅かの量の止水材64がアース用端子55付近の芯線58および絶縁被覆59間や各芯線58間に滲み込むことになる。
【0028】
前記止水材64が芯線58上に予め計算された量滴下された後は、その止水材滴下口53を図2(d)に示すように閉じ、それ以上の止水材64の滴下を停止し、続いて大気導入口54を開く。これにより大気導入口54から気密箱51内に外気(大気)が一気に、または制御された所定量ずつ入り込む。このため気密箱51内は所定の負圧状態から大気圧状態に変化し、電線57の絶縁被覆59内もその一端(開口端)側から大気圧状態に変化する。この負圧から大気圧状態への圧力変化によってアース用端子55側で絶縁被覆59から露出する芯線58上の止水材64は、前記圧力変化を受けて絶縁被覆59内の前記他端側(負圧側)へ一瞬引き込まれる(吸い込まれる)。
【0029】
この止水材64の引き込み動作時には、止水材64は芯線58および絶縁被覆59間と、各芯線58間とに滲み込みながら、絶縁被覆59内の前記他端側へ流れ込む。そして止水材64が図2(e)に示すように、所定の滲み込み量または滲み込み位置に達した場合に、気密箱51内への吸気を停止し、大気導入口54を閉じ、所定時間放置する。これにより、止水材64は次第に硬化し、柔らかい弾性のシール材となる。このため硬化した止水材64がある位置では、芯線58および絶縁被覆59間と各芯線58間では、水の移動が規制される。従って、アース用端子55側から絶縁被覆59内を通ってハーネス用端子56側へ水が漏れる惧れはない。
【0030】
これにより、ハーネス用端子56部分の腐食、絶縁劣化、漏電などを未然に回避することができる。また、絶縁被覆59の一端から各芯線58間に滲み込ませた止水材64は、他端から漏れ出ることがない。このため止水材64の滴下量の適正値を予め決めておくことで、止水材64の必要以上の浪費を回避できる。また、止水材64に対して強制的に給気を行うことがないため、止水材64に気泡が混入する惧れはない。
【0031】
図3は、電線57の他端に取り付けられた電線端末密封箱63を、気密箱51外へ配置した例を示す。この例では、電線端末密封箱63が設けられる部位の電線57を気密箱51の一側壁に貫通させる必要があり、このためこの側壁に設けた貫通孔51aとこの貫通孔51aに貫通させる電線57との間にシール材65が介在される。この例は、アース端子55およびハーネス用接続端子56を含む電線57の全長が気密箱51のサイズ(長さ)より大きい場合に好適であり、気密箱51内からの吸気、芯線58上への止水材64の滴下および気密箱51内への大気導入の各動作が、前記同様に順次実施される。
【0032】
図4(a)〜図4(d)はこの例における止水工程を示す。止水材64による止水処理は、図2(a)〜図2(d)について述べた場合と略同様の止水工程となる。この場合においては、ハーネス用接続端子56を密封する電線端末密封箱63が気密箱51の外にあっても、電線57の他端部で絶縁被覆59がその電線端末密封箱63によって塞がれている。このため、前記空気吸引ステップにおける絶縁被覆59内の減圧および大気導入ステップにおける絶縁被覆59内への止水材64の浸透動作が前記同様に実施される。
【0033】
まず、前記アース用端子55を持つ電線57を、気密箱51内に収納する。電線端末密封箱63は前述のように気密箱51の外に出す。この気密箱51内では、アース用端子55および電線57が略真直ぐにかつ移動や回動しないように支持する。また、アース用端子55の接続部において、電線57の一端を止水材滴下口53の直下に位置させる。この電線57は内部導体である複数本の芯線58と、これらの芯線58を包むように被覆された絶縁被覆59とを有する。この電線57の一端では、絶縁被覆59が所定長だけ除去されて、芯線58の一部(端部)が所定長分露出している。
【0034】
また、アース用端子55は、金属板を折り曲げて成形され、ボディアースに接続されるアース接続部60と、導体側バレル61と、絶縁側バレル62とを一体に有する。導体側バレル61は芯線58をカシメ固定し、絶縁側バレル62は絶縁被覆59端をカシメ固定している。そして両バレル61、62間に露出する芯線58の直上に、前記止水材滴下口53が臨んでいる。
【0035】
一方、ハーネス用接続端子56は、他の電線との接続のためにアース用端子55とは異なる形態を有するが、気密箱51の外に配置される。このハーネス用接続端子56のバレルおよびこのバレルによる芯線58および絶縁被覆59のカシメ固定は、アース用端子55の場合と略同一であるため、その重複する説明を省略する。また、ハーネス用接続端子56は、絶縁被覆59の他端部とともに、この絶縁被覆59の他端部に密嵌された電線端末密封箱63内に収納されている。従って、この電線57の絶縁被覆59の他端部は、通気不可能に封止されている。
【0036】
次に、このようにアース用端子55を持つ電線57を収納した気密箱51内の空気を、真空ポンプの駆動によって空気吸引口52から吸引する。図4(a)はこの気密箱51内の空気吸引動作を示す。このとき、止水材滴下口53と大気導入口54を閉じておき、止水材の滴下および気密箱51内への大気の導入を停止しておく。前記空気の吸引によって、気密箱51内は減圧され、更に電線57の絶縁被覆59内もアース用端子55側の一端から吸気されて減圧されていく。この減圧工程によって気密箱51内および絶縁被覆59内が真空または真空に近い所定の減圧レベルに達したとき、前記空気の吸引動作を停止する。
【0037】
この空気の吸引動作が停止した場合には、図4(b)に示すように、空気吸引口52を閉じ、続いて止水材滴下口53を開く。このときは、図4(c)に示すように止水材供給タンクから液状の止水材64を気密箱51内の滴下位置、つまりバレル61、62間の芯線58上に滴下させる。このため、その芯線58上には止水材64が一時的に盛られた状態で滞留し、僅かの量の止水材64がアース用端子55付近の芯線58および絶縁被覆59間や各芯線58間に滲み込もうとする。
【0038】
前記止水材64が芯線58上に予め計算された量滴下された後は、その止水材滴下口53を図4(d)に示すように閉じ、それ以上の止水材64の滴下を停止する。続いて大気導入口54を図4(e)に示すように開く。これにより大気導入口54から気密箱51内に外気(大気)が一気に、または制御された所定量ずつ入り込む。このため気密箱51内は所定の負圧状態から大気圧状態に変化し、電線57の絶縁被覆59内もその一端(開口端)側から大気圧状態に変化する。この負圧から大気圧状態への圧力変化によってアース用端子55側で絶縁被覆59から露出する芯線58上の止水材64が、前記圧力変化を受けて絶縁被覆59内の前記他端側へ一瞬引き込まれる。
【0039】
この止水材64の引き込み動作時には、止水材64は芯線58および絶縁被覆59間と、各芯線58間とに滲み込みながら、絶縁被覆59内の前記他端側へ流れ込む。そして止水材64が所定の滲み込み量または滲み込み位置に達した場合に、気密箱51内への吸気を停止し、大気導入口54を閉じ、所定時間放置する。これにより、止水材64は次第に硬化し、柔らかい弾性のシール材となる。このため硬化した止水材64がある位置では、芯線58および絶縁被覆59間と各芯線58間での水の移動が規制される。従って、アース用端子55側から絶縁被覆59内を通って気密箱51外のハーネス用端子56側へ水が漏れる惧れはない。
【0040】
これにより、ハーネス用端子56部分の腐食、絶縁劣化、漏電などを未然に回避することができる。また、絶縁被覆59の一端から各芯線58間に滲み込ませた止水材64は、他端から漏れ出ることがない。このため止水材64の滴下量の適正値を予め決めておくことで、止水材64の必要以上の浪費を回避できる。また、止水材に対して強制的に給気を行うことがないため、止水材64内に気泡が混入する惧れはない。
【0041】
図5および図6は、電線の止水装置の第2の実施形態を示す。この第2の実施形態の止水装置は、密閉空間を形成する気密箱51と、この気密箱51の内外に連通するように設けられた空気吸引口52と、同じく気密箱51の内外に連通するように設けられた、止水材を滴下するための止水材滴下口53と、同じく気密箱51の内外に連通するように設けられた、大気を気密箱内に導入するための大気導入口54と、を含んで構成される。
【0042】
これらのうち、前記気密箱51は、例えば合成樹脂の成形品として構成され、内部に後述の電線57を出し入れ可能な構成になっている。この気密箱51は、容器部分とこの容器部分に被せる蓋部分とをシール材を介して相互に結合および結合解除可能になっている。これらの容器部分や蓋部分は、気密箱51の内部が真空または真空に近い圧力に減圧されることによっても、変形や破損、あるいは空気漏れを生じない厚みおよび強度に作られている。
【0043】
空気吸引口52は、気密箱51の内外に貫通するパイプ等により構成され、そのパイプ等の外端にはチューブ等を介して真空ポンプ等(図示しない)が接続されている。なお、真空ポンプは気密箱51内の圧力検出値に基づき指定値(設定値)に制御する制御手段等を併せ持つ。
【0044】
止水材滴下口(止水材滴下ノズル)53は、気密箱51の内外に貫通するように構成され、その止水材滴下口53の外端には例えばチューブ等を介して止水材供給タンクが接続されている。止水材はポンプなどを用いて止水材供給タンク等から止水材滴下口53へ供給される。
【0045】
前記止水材としては、滴下直後の初期状態では流動性を有し、硬化後は柔軟で弾性を持ち、シール特性の良好なものが望ましい。例えば、自然硬化特性や光硬化特性を持つシリコン樹脂、あるいはエポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ポリブタジエのアクリレートのような多官能性モノマー等を用いることができる。本実施形態では、後述のように、気密箱51内が負圧から大気圧に変化するときに、芯線上に滴下された止水材を各芯線間に浸透させることが必要であり、このために前述のように止水材は流動性を持つことが必要になる。
【0046】
大気導入口54は、気密箱51の内外に貫通する貫通孔やパイプ等により構成され、そのパイプ等の外端には給気ポンプや給気栓等が接続されている。給気栓は、これを開放することで減圧状態の気密箱内を大気圧に変えることができる。また、給気ポンプは、減圧状態の気密箱51内の圧力を所定の速さで負圧から大気圧方向に給気制御することができる。
【0047】
次にこのように構成された止水装置による止水方法を、図6(a)〜図6(e)を参照して具体的に説明する。ここでは、一端にアース用端子55がカシメ固定され、他端に密封栓などの密封材66が装着された電線57に適用する場合について述べる。
【0048】
まず、前記アース用端子55および密封材66を持つ前記電線57を、気密箱51内に収納する。この気密箱51内では、電線57とともにアース端子55および密封材66が略真直ぐにかつ移動や回動しないように支持する。そして、アース用端子55の接続部において、電線57の一端を止水材滴下口53の直下に位置させる。この電線57は内部導体である複数本の芯線58と、これらの芯線58の周囲を包む絶縁被覆59とを有する。この電線57の一端では、絶縁被覆59が所定長だけ除去されて、芯線58の一部(端部)が露出している。
【0049】
また、アース用端子55は、金属板を折り曲げて成形され、ボディアースに接続されるアース接続部60と、導体側バレル61と、絶縁側バレル62とを一体に有する。導体側バレル61は芯線58をカシメ固定し、絶縁側バレル62は絶縁被覆59端をカシメ固定している。そして両バレル61、62間に露出する芯線58の直上に、前記止水材滴下口53が臨んでいる。
【0050】
一方、密封材66には電線57の他端である絶縁被覆59の端部付近を覆うゴム栓キャップや接着材が用いられ、この絶縁被覆59の端部から容易に脱落しないように、かつ気密的にその端部開口を閉塞する。この密封材66は絶縁被覆59の他端部とともに、気密箱51内に収納されている。
【0051】
次に、前記のようにして両端にアース用端子55および密封材66を持つ電線57を収納した気密箱51内の空気を、空気吸引口52を開いた状態にして、真空ポンプの駆動によって吸引する。図6(a)はこの気密箱51内の空気吸引動作を示す。このとき、止水材滴下口53と大気導入口54を閉じておき、止水材の滴下および気密箱51内への大気の導入を停止しておく。前記空気の吸引によって、気密箱51内は減圧され、更に電線57の絶縁被覆59内もアース用端子55側の一端から吸気されて減圧していく。この減圧工程によって気密箱51内および絶縁被覆59内が真空またはこの真空に近い減圧レベルに達し、このとき前記空気の吸引動作を停止する。
【0052】
この空気の吸引動作が停止した場合には、図6(b)に示すように空気吸引口52を閉じ、続いて止水材滴下口53を開き、図6(c)に示すように止水材供給タンクから液状の止水材64を気密箱51内の滴下位置、つまりバレル61、62間の芯線58上に滴下させる。このため、その芯線58上には止水材64が一時的に盛られた状態で滞留し、当初は、僅かの量の止水材64がアース用端子55付近の芯線58および絶縁被覆59間や各芯線58間に滲み込み可能な状態になる。
【0053】
前記止水材64が芯線58上に予め決められた量滴下された後は、その止水材滴下口53を図6(d)に示すように閉じ、それ以上の止水材64の滴下を停止し、続いて大気導入口54を図6(e)に示すように開く。これにより大気導入口54から気密箱51内に外気(大気)が一気に、または制御された所定量ずつ入り込む。このため気密箱51内は所定の負圧状態から大気圧状態に変化し、電線57の絶縁被覆59内もその一端(開口端)側から大気圧状態に変化する。この負圧から大気圧状態への圧力変化によってアース用端子55側で絶縁被覆59から露出する芯線58上の止水材64は、前記圧力変化を受けて絶縁被覆59内の前記他端側(負圧側)へ一瞬引き込まれる。
【0054】
この止水材64の引き込み動作時には、止水材64は芯線58および絶縁被覆59間と、各芯線58間とに滲み込みながら、絶縁被覆59内の前記他端側へ流れ込む。そして止水材64が所定の滲み込み量または滲み込み位置に達した場合に、気密箱51内への吸気を停止し、大気導入口54を閉じ、所定時間放置する。これにより、止水材64は次第に硬化し、柔らかい弾性のシール材となる。このため硬化した止水材64がある位置では、芯線58および絶縁被覆59間と各芯線58間では、水の移動が規制される。従って、アース用端子55側から絶縁被覆59内を通って密封材66の外へ水が漏れる惧れがない。
【0055】
これにより、密封材66除去後に露出する芯線に接続される各種電子部品の腐食、絶縁劣化、漏電などを未然に回避することができる。また、絶縁被覆59の一端から各芯線58間に滲み込ませた止水材64は、他端から漏れ出ることがない。このため止水材64の滴下量の適正値を予め決めておくことで、止水材64の必要以上の浪費を回避できる。また、止水材64に対して強制的に給気を接触させないため、止水材64に気泡が混入する惧れがない。
【0056】
図7は、密封材66を気密箱51の外へ配置した例を示す。この例では、密封材66が設けられる部位の電線57を気密箱51の一側壁に貫通させる必要がある。このため、電線57の貫通孔51aとこの貫通孔51aに貫通させる電線57との間にシール材65が介在される。この例は、アース端子55および密封材66を含む電線57の全長が気密箱51のサイズより大きい場合に好適であり、気密箱51内からの吸気、芯線58上への止水材64の滴下および気密箱51内への大気導入の各動作が前記同様に順次実施される。
【0057】
図8(a)〜図8(d)はこの例における止水工程を示す。
この場合においては、電線57の他端、つまり絶縁被覆59の他端を密封する密封材66が気密箱51の外にあっても、電線57の他端部で絶縁被覆59がその密封材66によって塞がれている。このため、前記空気吸引ステップにおける絶縁被覆59内の減圧および大気導入ステップにおける絶縁被覆59内への止水材64の浸透動作が前記同様に実施される。
【0058】
まず、前記アース用端子55を持つ電線57を、気密箱51内に収納する。密封材66を含む電線57の他端部は前述のように気密箱51の外に出す。この気密箱51内では、アース用端子55を有する電線57が略真直ぐにかつ移動や回動しないように支持させる。また、芯線58とアース用端子55の接続部を止水材滴下口53の直下に位置させる。この電線57は内部導体である複数本の芯線58と、これらの芯線58を包むように被覆された絶縁被覆59とを有する。この電線57の一端では、絶縁被覆59が所定長だけ除去されて、芯線58が一部露出している。
【0059】
また、アース用端子55は、金属板を折り曲げて成形され、ボディアースに接続されるアース接続部60と、導体側バレル61と、絶縁側バレル62とを一体に有する。導体側バレル61は芯線58をカシメ固定し、絶縁側バレル62は絶縁被覆59端をカシメ固定している。そして両バレル61、62間に露出する芯線58の直上に、前記止水材滴下口53が臨んでいる。
【0060】
一方、電線57の他端を封止する密封材66は、止水処理後に分離されて他の電子部品等の取り付けに利用されるが、止水工程では気密箱51の外に図示のように配置される。この電線57の絶縁被覆59の他端部は、前記密封材66によって通気不可能にされている。
【0061】
次に、このようにアース用端子55を持つ電線57を収納した気密箱51内の空気を、真空ポンプの駆動によって空気吸引口52から吸引する。図8(a)はこの気密箱51内の空気吸引動作を示す。このとき、止水材滴下口53と大気導入口54を閉じておき、止水材64の滴下および気密箱51内への大気の導入を停止しておく。前記空気の吸引によって、気密箱51内は減圧され、更に電線57の絶縁被覆59内もアース用端子55側の一端から吸気されて減圧されていく。この減圧工程によって気密箱51内および絶縁被覆59内が真空または真空に近い所定の減圧レベルに達すると、前記空気の吸引動作が停止する。
【0062】
この空気の吸引動作が停止すると、図8(b)に示すように、空気吸引口52を閉じ、続いて止水材滴下口53を開く。このときは、図8(c)に示すように止水材供給タンクから液状の止水材64を気密箱51内の滴下位置、つまりバレル61、62間の芯線58上に滴下させる。このため、芯線58上には止水材64が一時的に盛られた状態で滞留し、僅かの量の止水材64がアース用端子55付近の芯線58および絶縁被覆59間や各芯線58間に滲み込み可能な状態になる。
【0063】
前記止水材64が芯線58上に予め計算された量滴下された後は、その止水材滴下口53を図8(d)に示すように閉じ、それ以上の止水材64の滴下を停止し、続いて大気導入口54を図8(e)に示すように開く。これにより大気導入口54から気密箱51内に外気(大気)が一気に、または制御された所定量ずつ供給される。このため気密箱51内は所定の負圧状態から大気圧状態に変化し、電線57の絶縁被覆59内もその一端(開口端)側から大気圧状態に変化する。この負圧から大気圧状態への圧力変化によってアース用端子55側で絶縁被覆59から露出する芯線58上の止水材64が、前記圧力変化を受けて絶縁被覆59内の前記他端側へ一瞬引き込まれる。
【0064】
この止水材64の引き込み動作時には、止水材64は芯線58および絶縁被覆59間と、各芯線58間とに滲み込みながら、絶縁被覆59内の前記他端側、つまり密封材66側へ流れ込む。そして止水材64が所定の滲み込み量または滲み込み位置に達したとき、気密箱51内への給気を停止し、大気導入口54を閉じ、所定時間放置する。これにより、止水材64は次第に硬化し、柔らかい弾性のシール材となる。このため硬化した止水材64がある位置では、芯線58および絶縁被覆59間と各芯線58間での水の移動が規制される。従って、アース用端子55側から絶縁被覆59内を通って気密箱51外の電線57の他端から水が漏れる惧れはない。
【0065】
この結果、密封材66を取り外した後に露出する芯線58端に接続される電子部品等にアース用端子側から絶縁被覆内を水が伝わるなどして、この電子部品等を腐食や絶縁劣化させたり、漏電させたりすることを未然に回避することができる。また、絶縁被覆59の一端から各芯線58間に滲み込ませた止水材64は、他端から漏れ出ることがない。このため止水材64の滴下量の適正値を予め決めておくことで、止水材64の必要以上の浪費を削減することができる。また、止水材64に対して強制的に圧縮空気を作用させることがないので、止水材64内に気泡が混入する惧れもない。
【0066】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、絶縁被覆59の一端に芯線58が露出し、かつ絶縁被覆59の他端が封止された電線57のうち、少なくとも芯線58が露出する一端側の絶縁被覆59を気密箱51内に密閉状態で収納し、この気密箱51に設けられた空気吸引口52から気密箱51内の空気を吸引し、この空気の吸引後に止水材滴下口53から絶縁被覆59の一端に露出する芯線58上に止水材64を滴下させ、止水材64の滴下完了後に気密箱51に設けられた大気導入口54から気密箱51内に大気を導入して、その大気導入口54から気密箱51内に大気を導入した際に、芯線58上に滴下された止水材64、芯線58および絶縁被覆59間と各芯線58間とにそれぞれ浸透させている。
【0067】
これにより、芯線58を持つ電線57の絶縁被覆59内を真空または真空に近い減圧環境下にした後大気圧に戻すことによって、芯線58および絶縁被覆59間と各芯線58間のそれぞれに硬化性の止水材64を無駄なく確実に浸透可能にし、以って止水材64の有効利用ならびに止水材64への気泡の混入を防止できる
【0068】
また、止水材64の滴下を、アース用端子55をカシメ固定した絶縁被覆59の一端に露出する芯線58上に行うことで、気密箱51内への大気の導入時にこの芯線58の一端上に滴下した止水材64を、電線57の絶縁被覆内に向かって効率的に浸透させることができる。
【0069】
さらに、絶縁被覆59の他端から露出する芯線58を、この芯線58端にカシメ固定されたハーネス接続端子56とともに、電線端末密封箱63に収納している。これにより、電線57の絶縁被覆59の他端およびこの他端から露出する芯線58を、電線端末密封箱63によって封止状態にすることができ、絶縁被覆59内の空気の吸引および止水材64の浸入を、ハーネス接続端子56を付けたまま確実に実施することができる。
【0070】
また、絶縁被覆59の他端を、この絶縁被覆59の他端から露出する芯線58端とともに密封材66で被覆することで、電線57の絶縁被覆59の他端およびこの他端から露出する芯線58を、密封材66によって封止状態にすることができ、前記絶縁被覆59内の空気の吸引および止水材64の浸入を、密封材66を付けたまま確実に実施することができる。
【符号の説明】
【0071】
51 気密箱
52 空気吸引口
53 止水材滴下口
54 大気導入口
55 アース用端子
56 ハーネス用接続端子
57 電線
58 芯線
59 絶縁被覆
60 アース接続部
61 導体側バレル
62 絶縁側バレル
63 電線端末密封箱
64 止水材
65 シール材
66 密封材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の芯線を包む絶縁被覆内に止水材を浸透させる電線の止水方法であって、
前記絶縁被覆の一端に前記芯線が露出し、かつ前記絶縁被覆の他端が封止された前記電線のうち、少なくとも前記芯線が露出する一端側の前記絶縁被覆を気密箱内に密閉状態で収納する電線収納ステップと、
前記気密箱に設けられた空気吸引口から前記気密箱内の空気を吸引する空気吸引ステップと、
空気の前記吸引後に前記気密箱に設けられた止水材滴下口から前記絶縁被覆の一端に露出する前記芯線上に止水材を滴下させる止水材滴下ステップと、
前記止水材の滴下完了後に前記気密箱に設けられた大気導入口から、前記気密箱内に大気を導入するための大気導入ステップと、
を有し、
前記大気導入口から前記気密箱内に大気を導入した際に、前記芯線上に滴下された止水材を、前記芯線と絶縁被覆の間、および各芯線間に浸透させることを特徴とする電線の止水方法。
【請求項2】
前記止水材の滴下を、アース用端子をカシメ固定した前記絶縁被覆の一端に露出する前記芯線上に行うことを特徴とする請求項1に記載の電線の止水方法。
【請求項3】
前記絶縁被覆の他端から露出する芯線を、該芯線端にカシメ固定されたハーネス接続端子とともに、電線端末密封箱に収納することを特徴とする請求項1に記載の電線の止水方法。
【請求項4】
前記絶縁被覆の他端を、該絶縁被覆の他端から露出する芯線端とともに密封材で被覆することを特徴とする請求項1に記載の電線の止水方法。
【請求項5】
複数の芯線を包む絶縁被覆内に止水材を浸透させる電線の止水装置であって、
前記絶縁被覆の一端に前記芯線が露出し、かつ前記絶縁被覆の他端が封止された前記電線のうち、少なくとも前記芯線が露出する一端側の前記絶縁被覆を密閉状態で収納可能な気密箱と、
前記気密箱に設けられ、前記気密箱内の空気を吸引するための空気吸引口と、
前記気密箱に設けられ、止水材を前記絶縁被覆の一端に露出する前記芯線上に滴下させるための止水材滴下口と、
前記気密箱に設けられ、前記気密箱内に大気を導入するための大気導入口と、
を備え、
前記大気導入口から気密箱内に大気を導入した際に、前記芯線上に滴下された止水材が、前記芯線と絶縁被覆の間、および各芯線間に浸透することを特徴とする電線の止水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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