説明

電線ドラム

【課題】 ブロー成形法による凹状リブ補強中空二重壁構造を有するプラスチックス製薄肉軽量の組立式メンテナンスフリーの電線ドラムを提供する。
【解決手段】 電線ドラム1は、それぞれブロー成形法で成形された、プラスチック製の一対の半円筒状の中空二重壁構造をもった胴半体を組み合わせた円筒状胴部2−1、2−2と、一対の中空二重壁構造をもった円盤状の鍔部3−1、3−2とから構成される。円盤状鍔部3−1、3−2には所定間隔で補強のための内側に凹状のリブ5−1、5−2、・・・が設けられ、胴部と鍔部は複数本の組立用ボルトを用いて連結固定されている。組立用ボルトの外径線は円筒状胴部表面の外径線に内接した状態で配設され、電線あるいはケーブルを巻き取った際の締め付け力に対する円筒状胴部2−1、2−2への補強を兼ねている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線やケーブルを巻き取る電線ドラムに関し、プラスチックスからなる胴部及び鍔部からなる組立式メンテナンスフリーの電線ドラムである。
【背景技術】
【0002】
従来、木材製の電線ドラムが使用されてきたが、近年自然環境の破壊防止、森林保護の観点からプラスチック製の電線ドラムに切り替わって来た。プラスチックスは木材に比べて耐用年数が長く、かつ破損或いは耐用回数が過ぎてもプラスチックス廃材として再溶融、ペレット化して再び使用することができるメリットがある。
【0003】
従来のプラスチックス製の電線ドラムは、電線やケーブルを巻き付ける筒状の胴部と胴部の両端に設けられた側面鍔部とから構成されている。胴部及び鍔部の各部材は射出成形により製造され、胴部は一体の円筒状胴部或いは一対の半円筒状の胴半体を組み合わせた円筒状胴部からなり、また側面鍔部は一体の円盤状の鍔部或いは扇状に分割して成形された部品を組み合わせて円盤状にした鍔部から構成されている。一体成形では構造は簡単化できるが、大型の成形機並びに金型が必要となりコスト高となる。また分割成形すれば成形時に使用する成形機並びに金型は小型のもので良いが、成形部品の組立に際して結合部の補強に複雑な補強板等を使用する必要がある。
【0004】
また胴部及び鍔部を構成する壁部の断面構造はいずれもソリッドであり、かなりの重量となる。そこで軽量化の目的から薄肉とする提案もなされ開発されているが、この場合は補強のための非常に複雑な補強構造を採用しており、例えば、特開2003−212441公報或いは特開2003−54843公報に記載の鍔部は、補強のための細かいリブを円盤の外側に円盤と一体に成型して強度を増した構成としている。この方法では成型用金型費用が高くなり、またドラムの組み立て作業性が悪くなり、電線或いはケーブルの巻き取り作業等に際してこのリブ突起部に引っ掛けて作業者が怪我をしたり或いは電線或いはケーブルの外被を損傷したり、更には使用中にこのリブの部分にゴミ・土砂等が付着、堆積しやすく、再使用時の清掃などに非常に手間がかかるといった問題がある。
【特許文献1】特開2003−212441公報
【特許文献2】特開2003−54843公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラスチックス製の電線ドラムの採用により、自然環境の破壊防止、木材不使用による森林保護、リサイクル性の向上等の目的は達成できたが、前記射出成形による電線ドラムの各種問題点、特に分割成形部品の組立時の接合部分の強度低下に対する補強構造、全体の軽量化のための薄肉化による強度低下防止のための複雑な構造等による部品点数の増加、組立作業性の低下、使用中のリブ部分へのゴミ・土砂等の付着・堆積、製造コストの割高等の問題がある。
【0006】
本発明の目的は、プラスチックス製の電線ドラムの胴部及び鍔部の各部品をブロー成形法を用いて中空二重壁構造に成形することにより前記問題点を解決した電線ドラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に掛かる電線ドラムは、プラスチックス製の一対の半円筒状の中空二重壁構造をもった胴半体を組み合わせた円筒状胴部或いは一体構造の円筒体からなる円筒状胴部と、プラスチックス製の一対の中空二重壁構造をもった円盤状の鍔部とから構成される。この円盤状鍔部には所定間隔で補強のための内側に凹状のリブが設けられており、胴部と鍔部の組立は複数本の組立用ボルトを用いて連結固定することを特徴とする。このように円盤状の鍔部を凹状のリブで補強した中空二重壁構造とすることにより、従来のソリッド構造のものに比べて、より軽量化することが可能となり、使用するプラスチックス量が少なくて良く省資源化が達成できる。また鍔部の表面に従来のような突起状のリブがなく、非常に滑らかな構造となっているため電線やケーブルの巻き取り或いは取り外し時に、作業者が怪我をしたり、電線やケーブルの外被を損傷することがなく、また使用中における凹状リブ部分へのごみや土砂の付着、堆積による汚れも少なく、仮に付着したとしても表面が滑らかな丸みを帯びた状態であるため清掃除去が容易であり、繰り返し使用時における清掃も効率的に簡単に行える。
【0008】
更に電線ドラムを構成する部品数が少ないため、部品の数量管理、品質管理等が容易となり、また構造も簡単なため組立、解体も非常に簡単にでき、特に使用済み後解体することにより保管スペースが狭くて良く、運搬・輸送も嵩ばらずに効率良く行うことができる。
【0009】
中空二重壁構造の円筒状胴部及び円盤状鍔部の成形は、真空成形法を用いて薄板から内壁部及び外壁部をそれぞれ成形して、これを合わせて製造することも可能であるが、生産性、経済性等から本発明では公知のブロー成形法を使用して行い、円盤状鍔部の補強のための凹状リブは二重壁部の成形と同時に形成することを特徴としている。凹状リブは所定間隔で中空壁二重構造の外壁を内側に反対の内壁に達するまで窪ませ、くぼみの先端と内壁を融着させた構造か、或いは外壁及び内壁の対称位置で同時に内側に凹状に窪ませ、くぼみの先端同士を融着させた構造があるが、薄肉軽量化の観点から後者の方が好適である。凹状リブの配置、形状、大きさ及び数は要求される強度に応じて増減できる。例えば、配置は多重同心円形状、螺旋渦巻状などが選択でき、リブの形状はU字状、V字状などが選択できる。
【0010】
電線ドラムを組み立てる際に用いる組立用ボルトは、電線ドラムの大きさに応じて本数を設定し、取付位置に対応する円筒状胴部の表面部をボルトの外径線が円筒状胴部の外径線と丁度内接する深さにV字状に窪ませて長さ方向に溝を形成して、ボルトをこの溝に填め込む状態で取付・固定する。ボルトの外径線が円筒状胴部の外径線と丁度内接する状態とすることにより、巻き取り電線或いはケーブルの締め付け圧力に対する円筒状胴部への補強を兼ねることが可能となる。大型電線ドラムにおいては、組立用ボルトの本数を電線ドラムの大きさに応じて多く配置するが、更に円盤状鍔部との接触表面の強度を補うために、円盤状鍔部の表面に組立用ボルトの取付円周に沿ってリング状の補強板(図面省略)を挿入することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプラスチックス製電線ドラムは、ブロー成形法による中空二重壁構造からなるため以下に記載するような効果が得られる。
【0012】
内側に凹状のリブで補強された二重壁構造からなるため、より薄肉壁とすることができ、軽量化の達成、省資源への貢献が達成でき、また軽量であるため取り扱い作業性が改善される。
【0013】
ブロー成形法により成形された電線ドラムは、表面が滑らかで角がなく丸みを帯びているため、取り扱い作業中に引っ掛けて作業者が傷つくことがなく、また巻き取り電線或いはケーブルも角部に引っ掛けて外皮を損傷することが軽減される。また、表面に突起等の出っ張りがなく、凹状リブは形状が滑らかなため、電線ドラムの使用中にゴミや土砂等の付着、堆積が少なく、またこの凹状リブ部にゴミや土砂が付着しても簡単に清掃除去することができる。
【0014】
電線ドラムを構成する部品数が少なく、部品の軽量化とも相俟って組み立て作業が簡単で、素早く行うことができ、作業性を向上することができる。
また、電線ドラムの繰り返し使用中に損傷があった場合、各部品は損傷した当該の部品のみ交換すれば良く、全体として電線ドラムの使用回転率を向上できる。
【0015】
電線ドラムが使用済みになった際、簡単に分解できるので、分解して部品別に保管管理することができ、繰り返し使用のための各部品の品質管理も非常にやりやすくなる。また。特に二分割円筒状胴部の場合は嵩張ることがないため、保管場所が狭くて良く、運搬、輸送の場合も積載効率が更に良くなる。
【0016】
電線ドラムを組み立てる際に用いる組立用ボルトは、電線ドラムの大きさに応じて本数を設定するが、ボルトの外径線が円筒状胴部の外径線と丁度内接する状態とすることにより、巻き取り電線或いはケーブルの締め付け圧力に対する円筒状胴部への補強を兼ねることが可能となる。
【0017】
ブロー成形に使用する成形金型は、各部の構成が簡単であるため金型費用が削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。使用するプラスチックスはリサイクル性の観点からポリプロピレン(PP)、またはポリエチレン(PE)が好ましい。プラスチックスは新しい樹脂、再生樹脂或いはこれらの混合品等いずれも使用でき、また目的により他種の樹脂との混合も可能であるが、本発明はこれに限定するものではない。
【0019】
図1及び図2は、本発明の実施の形態の第1例を示すものである。電線ドラム1は、2分割組立方式の円筒状胴部2−1、2−2とこの胴部2を挟持する一対の円盤状鍔部3−1、3−2及び組立用ボルト4−1、4−2、4−3、4−4から構成される。また5−1、5−2、・・・は補強のための凹状リブの配置を示す。
【0020】
第2図は円筒状胴部及び円盤状鍔部の中空二重壁構造、並びに両者の組立状態を示す断面図である。断面図からも分かるように、凹状リブは円盤状鍔部の中空二重壁の対称位置で外壁及び内壁の両面から凹状に内側に窪まされ、丁度二重壁の中央部において窪みの先端部で融着された構造となっている例である。この構成により薄肉でも使用上充分な強度が得られ、軽量化及び省資源が達成できる。
【0021】
更に、ブロー成形法による成形のため角部が鋭角とならず、丸みを帯びて形成できるため、取り扱い作業中引っ掛けて作業者が傷を受けることが少なく安全である。また電線やケーブルの巻き取り等の作業中に電線やケーブルを引っ掛けて外被を損傷することも低減できる。一方ブロー成形に使用する成形金型は、各部の構成が簡単であるため金型費用が削減できる。
【0022】
この2分割型円筒状胴部の電線ドラムは比較的大型のものに好適に使用でき、特に使用後、解体しての保管や運搬、輸送に好適である。また一部損傷してもその部品のみ交換することで再使用が可能であり、全体としての電線ドラムの使用効率を向上することができる。
【0023】
図3及び図4は円筒状胴部を一体成形した本発明の実施の形態の第2例を示すものであり、比較的小型の電線ドラムに好適である。構成が簡単であるため組立作業等の作業性並びに部品管理等の効率が更に向上する。
【0024】
図5及び図6は組立用ボルトの円筒状胴部への装着状態を示した本発明の実施の形態の第5例を示す断面図である。電線ドラムを組み立てる際に用いる組立用ボルトは、電線ドラムの大きさに応じて本数を設定する。本例では4本で構成し、図6のように取付位置に対応する円筒状胴部の表面部をボルトの外径線6が円筒状胴部表面の外径線7と丁度内接する深さにV字状に窪ませて長さ方向に溝8を形成して、ボルトをこの溝に填め込む状態で取付、固定する。ボルトの外径線6が円筒状胴部表面の外径線7と丁度内接する状態とすることにより、巻き取り電線或いはケーブルの締め付け圧力に対する円筒状胴部への補強を兼ねることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に掛かる電線ドラムの実施の形態の第1例の二分割円筒状胴部の場合の部品構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した電線ドラムの組立状態における正面断面図である。
【図3】本発明に掛かる電線ドラムの実施の形態の第2例の一体型円筒状胴部の場合の部品構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示した電線ドラムの組立状態における正面断面図である。
【図5】本発明に掛かる電線ドラムの実施の形態の第1例及び第2例の組立用ボルトの取付状態を示す円筒状胴部の断面図を示す。
【図6】図5に示したA部の詳細断面図である。組立用ボルトの外径線は円筒状胴部表面の外径線に内接するように配置される。
【符号の説明】
【0026】
1 電線ドラム
2 一体型の円筒状胴部
2−1、2−2 二分割型の半円筒胴部
3−1、3−2 円盤状鍔部
4−1、4−2、4−3、4−4 組立用ボルト
5−1、5−2、・・・ 凹状リブ
6 組立用ボルトの外径線
7 円筒状胴部表面の外径線
8 組立用ボルト填め込み用V字状溝
9 内壁
10 外壁
11 端壁
12 圧縮溶着部
13 溶着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線或いはケーブルを巻き付けるための円筒状胴部と、プラスチックス製の一対の中空二重壁構造をもった円盤状の鍔部とから構成され、円盤状鍔部には一対の内壁及び外壁をもち、この内壁及び外壁からその部分に対応する壁に凹状のリブが設けられ、その先端部は溶着され、かつ内壁及び外壁の端壁は圧着・溶着により一体化され、胴部と鍔部の組立は複数本の組立用ボルトを用いて連結固定することを特徴とする電線ドラム。
【請求項2】
前記円筒状胴部はプラスチックス製の一対の半円筒状の中空二重構造をもった胴半体を組み合わせた円筒体からなることを特徴とする請求項1に記載する電線ドラム。
【請求項3】
前記円筒状胴部はプラスチックス製の一体構造の円筒体からなることを特徴とする請求項1に記載する電線ドラム。
【請求項4】
前記円筒状胴部および前記一対の半円筒体を組み合わせた円筒状胴部並びに前記内側に凹状のリブを有する円盤状鍔部はブロー成形により中空壁二重構造としたことを特徴とする請求項1、2または3に記載する電線ドラム。
【請求項5】
前記円盤状鍔部の凹状リブは所定間隔で中空壁二重構造の外壁を内側に反対の内壁に達するまで凹状に窪ませ、くぼみの先端と内壁を融着させるか、或いは外壁及び内壁の対称位置で同時に内側に凹状に窪ませ、くぼみの先端同士を融着させた構造からなり、前記円盤状鍔部のブロー成形時に同時に形成させることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載する電線ドラム。
【請求項6】
前記円筒状胴部および前記円盤状鍔部を連結固定する前記組立用ボルトの取付位置外径は、前記円筒状胴部の表面を所定位置で長さ方向にV字状に窪ませて溝を形成し、前記円筒状胴部の外径と同じ位置に内接するように配置することを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載する電線ドラム。
【請求項7】
前記円盤状鍔部の前記組立用ボルトの取付位置相当の円周部にリング状の補強板を用いることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6に記載する電線ドラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−69689(P2006−69689A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252061(P2004−252061)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】