説明

電線保護具およびその構成部品

【課題】電線の周囲を覆う電線保護具の構成部品が型抜き方向と平行な対向面を含むものであっても、アンダーカット部を生じさせずに当該構成部品を成形可能とする技術を提供する。
【解決手段】電線保護具10を構成する本体部材11には、両端部が本体部材11の外壁面に着設され、蓋部材12と対向される対向面A1,A2と直交する方向に貫通する爪受け入れ口を形成する枠状の爪受け部3が形成される。本体部材11に形成される爪受け部3のうち、本体部材11を成形する際の型抜き方向T11と平行な対向面A2における連結に用いられる特定爪受け部300は、一方の着設位置と他方の着設位置とが、型抜き方向T11からみてずれた位置とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の周囲を覆う電線保護具およびその構成部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、電線(あるいは、複数の電線を束ねた電線束)の周囲を覆う電線保護具(プロテクタ)を備えることが多い。電線は、電線保護具で覆われることにより、振動又は可動部の動きに応じて周囲の部材との接触することがなくなり、耐久性が高まる。
【0003】
電線保護具は、例えば図9に示すように、電線90を挿通可能な樋状の部材(本体部材)91に蓋部材92を被せて筒状にすることにより形成される。蓋部材92には例えば爪部93が形成されており、この爪部93が、本体部材91に形成された爪受部94に抜け防止状態で挿入されることによって(具体的には、閉じた枠状に形成される爪受部94の枠内部に爪部93が挿通されるとともに、爪部93の先端に形成された突起931が爪受部94に引っ掛かることによって)、爪部93が爪受け94に抜け防止状態に挿入される。これによって、蓋部材92が本体部材91に固定され、電線90の周囲を覆う筒体が形成されることになる。
【0004】
ところで、電線保護具を形成する各構成部品は、一方向抜き金型(例えば、上下抜き金型)を用いて成型されることが多い。例えば図9の本体部材91に着目すると、金型の抜き方向(以下、単に「型抜き方向」という)が、溝の開口面(すなわち、本体部材91における、蓋部材92と対向する面であり、以下「対向面」という)と直交する方向AR901である場合、アンダーカット部は生じない。したがって、この場合、本体部材91は、一方向抜き金型を用いて比較的容易に成形される。しかしながら、型抜き方向が、本体部材91の対向面と平行な方向AR902である場合、アンダーカット部Qが生じてしまう。したがって、金型にスライド機構を設ける等の工夫が必要となり、本体部材91の成形に手間とコストがかかってくる。
【0005】
アンダーカット部を生じさせない工夫として、例えば特許文献1には、プロテクタの使用状態において互いに直交するように配置されることになる壁部同士をヒンジ連結し、両方の壁部を同一平面に配置した状態で成型する構成が開示されている。この構成によると、成型時に、各壁部に形成されるアンカーを、金型の型抜き方向に対してアンダーカットがなくなるような姿勢におくことが可能となるため、アンダーカットなしでプロテクタを成形することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−38027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示の技術によると、電線保護具の壁部同士がヒンジ連結されるので、組み立て作業が必要になってくる。また、電線保護具の形状が複雑になると(例えば、枝分かれ形状等となると)対応できないという問題もある。また、金型サイズが大きくなるという問題もある。
【0008】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電線の周囲を覆う電線保護具(具体的には、一対の構成部品が互いの対向面を突き合わせた状態で連結されることによって構成される電線保護具)の構成部品が、型抜き方向と平行な対向面を含むものであっても、アンダーカット部を生じさせずに当該構成部品を成形可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る発明は、第1構成部品と第2構成部品とが互いの対向面を突き合わせた状態で連結されることによって構成される、電線の周囲を覆う電線保護具であって、前記第1構成部品が、対向面から突出するように形成される爪部、を備え、前記第2構成部品が、外壁面に両端部が着設され、前記対向面と直交する方向に貫通する爪受け入れ口を形成する枠状の爪受け部、を備え、前記爪受け部のうち、前記第2構成部品を成形する際の型抜き方向と平行な対向面における連結に用いられるものを特定爪受け部として、前記特定爪受け部の一方の着設位置と他方の着設位置とが、前記型抜き方向からみてずれた位置とされる。
【0010】
第2の態様に係る発明は、第1の態様に係る電線保護具であって、前記特定爪受け部が、前記一方の着設位置と前記他方の着設位置とのそれぞれから、前記外壁面の法線方向に沿って延びる一対の脚部と、前記一対の脚部の間に架け渡され、前記外壁面の面方向に沿って延びる天板部と、を備える。
【0011】
第3の態様に係る発明は、第2の態様に係る電線保護具であって、前記天板部が、端部において前記一対の脚部の一方と連なり、前記対向面と平行に延びる第1天板部分と、前記第1天板部分に連なり、前記対向面と非平行に延びて、端部において前記一対の脚部の他方と連なる第2天板部分と、を備える。
【0012】
第4の態様に係る発明は、第2または第3の態様に係る電線保護具であって、前記第1構成部品が、前記爪部のうち、前記特定爪受け部と対になって連結に用いられる爪部を特定爪部として、前記特定爪部の隣に形成され、その両端部が前記対向面から突出するように互いに平行に延びる一対の突起部を形成するU字状突起部、を備え、前記特定爪部が前記特定爪受け部の前記爪受け入れ口に挿入された状態において、前記U字状突起部が形成する前記一対の突起部の一方が前記天板部と前記外壁面との間に挿入され、前記一方の突起部と他方の突起部との間に前記天板部が挟み込まれた状態とされる。
【0013】
第5の態様に係る発明は、対向面を別の構成部品の対向面と突き合わせた状態で前記別の構成部品と連結されることによって、電線の周囲を覆う電線保護具を構成する、電線保護具の構成部品であって、外壁面に両端部が着設され、前記対向面と直交する方向に貫通する爪受け入れ口を形成する枠状の爪受け部、を備え、前記爪受け部のうち、前記構成部品を成形する際の型抜き方向と平行な対向面における連結に用いられるものを特定爪受け部として、前記特定爪受け部の一方の着設位置と他方の着設位置とが、前記型抜き方向からみてずれた位置とされる。
【発明の効果】
【0014】
第1〜第5の態様に係る発明によると、電線保護具の構成部品において、型抜き方向と平行な対向面における連結に用いられる爪受け部の両端部の着設位置が、型抜き方向からみてずれた位置に配置される。この構成によると、型抜き方向と平行な対向面を含む構成部品を、アンダーカット部を生じさせずに成形することができる。
【0015】
特に、第3の態様に係る発明によると、型抜き方向と平行な対向面における連結に用いられる爪受け部が、対向面と平行に延びる第1天板部分と対向面と非平行に延びる第2天板部分とを備える折れ曲がった形状の天板部の両端に、一対の脚部が設けられる構成とされる。この構成によると、第1天板部分に爪部を引っ掛けることができるので、爪部を簡易かつ確実に爪受け部に引っ掛けることができる。
【0016】
特に、第4の態様に係る発明によると、型抜き方向と平行な対向面における連結に用いられる爪受け部の爪受け入れ口に爪部が挿入された状態において、天板部と外壁面との間にU字状突起部が形成する一対の突起部の一方が挿入され、一対の突起部の間に天板部が挟み込まれた状態とされる。この構成によると、U字状突起部によって、爪受け部の天板部が外壁面と交差する方向へ揺動しないように固定され、その結果、爪部が爪受け部から外れてしまうといった事態が未然に防止されるとともに、爪受け部の破損も生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ワイヤハーネスの斜視図である。
【図2】本体部材の斜視図である。
【図3】蓋部材の斜視図である。
【図4】特定爪受け部の斜視図である。
【図5】特定爪受け部の平面図である。
【図6】特定爪受け部の側面図である。
【図7】特定爪部の斜視図である。
【図8】特定爪部が特定爪受け部に抜け防止状態で挿入されている状態を示す図である。
【図9】従来の電線保護具の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。本発明の実施形態に係るワイヤハーネスは、例えば、自動車などの車両に搭載され、バッテリ又はインバータ回路などの電力供給源と電装機器との間、又は複数の電装機器相互間を接続する。
【0019】
<1.ワイヤハーネス>
本発明の実施形態に係る電線保護具10を備えるワイヤハーネス1について、図1を参照しながら説明する。図1は、ワイヤハーネス1の斜視図である。
【0020】
ワイヤハーネス1は、1本又は複数本の電線9と、電線保護具10とを備える。なお、図1において、電線9は仮想線(二点鎖線)により示されている。
【0021】
<1−1.電線>
電線9は、導線が絶縁被覆によって覆われたケーブルであり、例えば、丸ケーブル又はフラットケーブルなどである。また、電線9は、幹線から枝線が延びる分岐構造を有しており、各端部には、コネクタ(図示省略)等が設けられている。電線9は、その分岐構造を含む部分の周囲に電線保護具10が取り付けられることにより、周囲に存在する物体との接触による破損が防がれる。
【0022】
<1−2.電線保護具>
電線保護具10は、電線9の分岐構造を含む部分の周囲を覆う分岐した筒体を形成する用具であり、本体部材11と蓋部材12とが、電線9を間に挟み込んだ状態で、互いの対向面を突き合わせた状態で連結されることによって構成される。本体部材11および蓋部材12のそれぞれは、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの樹脂からなる一体成形部材である。
【0023】
<1−2−1.本体部材11>
本体部材11について、図2を参照しながら具体的に説明する。図2は、本体部材11の斜視図である。
【0024】
本体部材11は、内側に電線9が挿入される溝を形成する部材である。本体部材11は、第1の方向に沿う溝を形成する半角筒状の部材(主半筒部)111と、主半筒部111に着設され、第1方向と直交する第2方向に沿う溝を形成する半角筒状の部材(分岐半筒部)112とを備える。主半筒部111により形成される溝の開口面A1、および分岐半筒部112により形成される溝の開口面A2のそれぞれが、蓋部材12により塞がれることによって、分岐した筒体(具体的には、第1方向に延在するとともに、第2方向に分岐した分岐部を有する筒体)、すなわち、電線保護具10が形成される(図1参照)。つまり、開口面A1、および、これと直交する開口面A2が、本体部材11の対向面を構成する。
【0025】
主半筒部111の半筒体の周方向に沿う端部位置、および分岐半筒部112の半筒体の周方向に沿う端部位置には、蓋部材12との連結に供される部材である爪受け部3が形成される。爪受け部3は、本体部材11の外壁面に両端部が着設され、対向面A1,A2(すなわち、溝の開口面)と直交する方向に貫通する爪受け入れ口30を形成する枠状の部材とされる。後述する「爪部2」が爪受け部3の爪受け入れ口30に抜け防止状態に挿入されることによって、本体部材11に対して蓋部材12が固定されることになる(図1参照)。
【0026】
<1−2−2.蓋部材12>
本体部材11について、図3を参照しながら具体的に説明する。図3は、蓋部材12の斜視図である。
【0027】
蓋部材12は、本体部材11の溝の開口面を覆う部材である。蓋部材12は、第1の方向に沿って配設された板状の部材(主蓋部)121と、主蓋部121に着設され、第1方向と直交する第2方向に沿って配設された板状の部材(分岐蓋部)122とを備える。主蓋部121の一方の主面(図3で下側を向いている面)B1が本体部材11の主半筒部111により形成される溝の開口面A1を塞ぐとともに、分岐蓋部122の一方の主面(図3で手前側に向いている面)B2が本体部材11の分岐半筒部112により形成される溝の開口面A2を塞ぐことによって、分岐した筒体、すなわち、電線保護具10が形成される(図1参照)。つまり、主蓋部121の一方の主面B1、および、分岐蓋部122の一方の主面B2が、蓋部材12の対向面を構成する。以下において、蓋部材12の対向面B1,B2と本体部材11の対向面A1,A2とがそれぞれ突き合わされて、本体部材11の溝の開口面が蓋部材12により覆われた状態を「突き合わせ状態」という。
【0028】
主蓋部121の幅方向に沿う端部位置、および分岐蓋部122の幅方向に沿う端部位置であって、突き合わせ状態において、本体部材11に形成された爪受け部3と対応する位置には、本体部材11との連結に供される部材である爪部2が形成される。爪部2は、対向面B1,B2から突出するように形成される。具体的には、爪部2は、対向面B1,B2に対して突出して形成される挿入部21と、挿入部21の先端に形成された突起部22とを備える。突き合わせ状態において、爪受け部3の爪受け入れ口30に爪部2の挿入部21が挿通されるとともに、挿入部21に形成された突起部22が爪受け部3に引っ掛かった状態とされる(図1参照)。これによって、爪部2が爪受け部3に抜け防止状態に挿入され、本体部材11に対して蓋部材12が固定される。
【0029】
<2.特定の連結部>
本体部材11、蓋部材12のそれぞれは、一方向抜き金型を用いて成形される。この実施形態においては、本体部材11は、対向面A1と直交する方向T11(図2)に沿って型抜きされることによって成形されるものとする。また、蓋部材12は、対向面B1と直交する方向T12(図3)に沿って型抜きされることによって成形されるものとする。
【0030】
型抜き方向が対向面A1と直交する方向T11とされる場合、本体部材11の対向面A2は、型抜き方向と平行となる。本体部材11に形成される爪受け部3のうち、型抜き方向と平行な対向面A2における連結に用いられるものを、以下「特定爪受け部300」という。また、蓋部材12に形成される爪部2のうち、特定爪受け部300と対になって連結に用いられる爪部2を、以下「特定爪部200」という。
【0031】
<2−1.特定爪受け部300>
特定爪受け部300の構成について、図4〜図6を参照しながら説明する。図4は、特定爪受け部300の斜視図である。図5は、特定爪受け部300の平面図(図4の矢印K1方向から見た図)である。図6は、特定爪受け部300の側面図(図4の矢印K2方向から見た図)である。
【0032】
特定爪受け部300は、本体部材11の外壁面110に両端部が着設され(着設位置301,302)、対向面A2と直交する方向に貫通する爪受け入れ口30を形成する枠状の部材である。具体的には、特定爪受け部300は、着設位置301,302のそれぞれから外壁面110の法線方向に沿って延びる一対の脚部31,32の間に、外壁面110の面方向に沿って延びる天板部33が架け渡された構成とされる。この構成においては、外壁面110、一対の脚部31,32、および天板部33により取り囲まれた空間が、爪受け入れ口30として機能する。また、天板部33の側面であって、対向面A2とは反対側の側面は、爪部2の突起部22に当接して爪部2の抜けを防止する係止面として機能する。
【0033】
ここで、特定爪受け部300においては、特定爪受け部300の一方の着設位置301と他方の着設位置302とが、型抜き方向T11からみてずれた位置とされる。つまり、一対の脚部31,32は、型抜き方向T11からみて重ならないように延びる。この構成によると、アンダーカット部を生じさせずに特定爪受け部300を形成することができる。
【0034】
ここで、天板部33は、図示されるように、一対の脚部31,32を結ぶ、平面視にて折れ曲がり形状の部材とすることが特に好ましい。具体的には、例えば、天板部33は、端部において脚部31と連なり、対向面A2と平行に延びる第1天板部分331と、第1天板部分331に連なり、対向面A2と非平行(好ましくは、直交する方向)に延びて、端部において脚部32と連なる第2天板部分332と、を備えることが特に好ましい。この構成においては、第1天板部分331における、対向面A2とは反対側の側面3310が、爪部2の突起部22に当接して爪部2の抜けを防止する係止面として機能するところ、この係止面が対向面A2と平行に延びる面となるので、特定爪受け部300に対して、爪部2(具体的には、特定爪部200)を簡易かつ確実に引っ掛けることができる。
【0035】
<2−2.特定爪部200>
特定爪部200の構成について、図7、図8を参照しながら説明する。図7は、特定爪部200の斜視図である。図8は、特定爪部200と特定爪受け部300に抜け防止状態で挿入されている状態を示す図である。
【0036】
特定爪部200は、上述したとおり、対向面B2に対して突出して形成される挿入部21と、挿入部21の先端に形成された突起部22とを備える。突き合わせ状態においては、図8に示されるように、特定爪受け部300の爪受け入れ口30に特定爪部200の挿入部21が挿通されるとともに、挿入部21に形成された突起部22が特定爪受け部300に引っ掛かった状態とされる。これによって、特定爪部200が特定爪受け部300に抜け防止状態に挿入される。
【0037】
特定爪部200の隣には、U字状突起部4が形成される。U字状突起部4は、その両端部が対向面B2から突出するように互いに平行に延びる一対の突起部を形成する。具体的には、U字状突起部4は、一端が蓋部材12の側面に着設され、対向面B2から突出するように形成される第1突起部41と、第1突起部41の着設端から対向面B2に沿う方向に立ち上がり、途中で折れ曲がって第1突起部41と平行な方向に延びる第2突起部42とを備える。突き合わせ状態においては、上述したとおり、特定爪部200が特定爪受け部300の爪受け入れ口30に挿入される。この状態において、図8に示されるように、天板部33と外壁面110との間にU字状突起部4の第1突起部41が挿入され、第1突起部41と第2突起部42との間に天板部33(具体的には、第1天板部分331と第2天板部分332との連結部分(つまり、天板部33の折れ曲がり部分)M(図4))が挟み込まれた状態とされる。
【0038】
天板部33が、平面視L字状に形成される場合、天板部33の折れ曲がり部分Mは、裏面側において脚部に支持されていない。したがって、この折れ曲がり部分Mは、外壁面110と直交する方向に沿って揺動しやすくなる。折れ曲がり部分Mが揺動すると、特定爪受け部300の破損を招く可能性があり、特に、折れ曲がり部分Mが外壁面110から離れる方向に揺動してしまうと、爪受け入れ口30に挿入された特定爪部200が外れてしまうおそれがある。この実施形態においては、特定爪部200が特定爪受け部300の爪受け入れ口30に挿入された状態において、U字状突起部4が、天板部33の折れ曲がり部分Mを外壁面110と直交する方向に沿う両側から挟み込む。したがって、特定爪受け部300の天板部33(特に、折れ曲がり部分M)が揺動しないように固定される。これによって、特定爪受け部300の破損が生じにくくなるとともに、特定爪部200が特定爪受け部300から外れてしまう、といった事態が未然に防止される。
【0039】
<3.効果>
上記の実施形態によると、本体部材11において、型抜き方向T11と平行な対向面A2における連結に用いられる特定爪受け部300の両端部の着設位置301,302が、型抜き方向T11からみてずれた位置に配置される。この構成によると、型抜き方向T11と平行な対向面A2を含む構成部品である本体部材11を、アンダーカット部を生じさせずに成形することができる。
【0040】
特に、上記の実施形態において、特定爪受け部300が、対向面A2と平行に延びる第1天板部分331と対向面A2と非平行に延びる第2天板部分332とを備える折れ曲がった形状の天板部33の両端に、一対の脚部31,32が設けられる構成とされると、第1天板部分331に特定爪部200を引っ掛けることができるので、特定爪部200を簡易かつ確実に特定爪受け部300に引っ掛けることができる。
【0041】
特に、上記の実施形態によると、特定爪受け部300の爪受け入れ口30に特定爪部200が挿入された状態において、天板部33と外壁面110との間にU字状突起部4が形成する一対の突起部41,42の一方が挿入され、一対の突起部41,42の間に天板部33が挟み込まれた状態とされる。この構成によると、U字状突起部4によって、特定爪受け部300の天板部33が外壁面110と交差する方向へ揺動しないように固定され、その結果、特定爪部200が特定爪受け部300から外れてしまうといった事態が未然に防止されるとともに、特定爪部200の破損も生じにくくなる。
【0042】
<4.変形例>
上記の実施形態においては、本体部材11に爪受け部3が、蓋部材12に爪部2がそれぞれ形成されるものとしたが、本体部材11に爪部2が、蓋部材12に爪受け部3がそれぞれ形成されてもよい。
【0043】
また、上記の実施形態において、主半筒部111、および分岐半筒部112は、いずれも、半角筒状の部材であるとしたが、これら各部111,112は、内側に電線9が挿入される溝を形成する半筒状の部材であれば他の形状の部材であってもよく、例えば、半円筒状、あるいは、半楕円筒状の部材であってもよい。
【0044】
また、上記の実施形態においては、溝が形成された本体部材11の開口面に蓋部材12を被せることによって電線保護具10を形成していたが、電線保護具10は、半筒状の構成部品を溝の開口面同士を対向させて連結することによって形成してもよい。
【0045】
また、上記の実施形態においては、特定爪部200の隣にU字状突起部4を形成する構成としたが、U字状突起部4は必ずしも形成されなくともよい。ただし、U字状突起部4を形成すれば、上述したとおり、特定爪部200が特定爪受け部300から外れにくくなる等の効果を得られる。
【符号の説明】
【0046】
1 ワイヤハーネス
2 爪部
3 爪受け部
10 電線保護具
11 本体部材
12 蓋部材
4 U字状突起部
31,32 脚部
33 天板部
200 特定爪部
300 特定爪受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構成部品と第2構成部品とが互いの対向面を突き合わせた状態で連結されることによって構成される、電線の周囲を覆う電線保護具であって、
前記第1構成部品が、
対向面から突出するように形成される爪部、
を備え、
前記第2構成部品が、
外壁面に両端部が着設され、前記対向面と直交する方向に貫通する爪受け入れ口を形成する枠状の爪受け部、
を備え、
前記爪受け部のうち、前記第2構成部品を成形する際の型抜き方向と平行な対向面における連結に用いられるものを特定爪受け部として、前記特定爪受け部の一方の着設位置と他方の着設位置とが、前記型抜き方向からみてずれた位置とされる、電線保護具。
【請求項2】
請求項1に記載の電線保護具であって、
前記特定爪受け部が、
前記一方の着設位置と前記他方の着設位置とのそれぞれから、前記外壁面の法線方向に沿って延びる一対の脚部と、
前記一対の脚部の間に架け渡され、前記外壁面の面方向に沿って延びる天板部と、
を備える、電線保護具。
【請求項3】
請求項2に記載の電線保護具であって、
前記天板部が、
端部において前記一対の脚部の一方と連なり、前記対向面と平行に延びる第1天板部分と、
前記第1天板部分に連なり、前記対向面と非平行に延びて、端部において前記一対の脚部の他方と連なる第2天板部分と、
を備える、電線保護具。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電線保護具であって、
前記第1構成部品が、
前記爪部のうち、前記特定爪受け部と対になって連結に用いられる爪部を特定爪部として、前記特定爪部の隣に形成され、その両端部が前記対向面から突出するように互いに平行に延びる一対の突起部を形成するU字状突起部、
を備え、
前記特定爪部が前記特定爪受け部の前記爪受け入れ口に挿入された状態において、前記U字状突起部が形成する前記一対の突起部の一方が前記天板部と前記外壁面との間に挿入され、前記一方の突起部と他方の突起部との間に前記天板部が挟み込まれた状態とされる、電線保護具。
【請求項5】
対向面を別の構成部品の対向面と突き合わせた状態で前記別の構成部品と連結されることによって、電線の周囲を覆う電線保護具を構成する、電線保護具の構成部品であって、
外壁面に両端部が着設され、前記対向面と直交する方向に貫通する爪受け入れ口を形成する枠状の爪受け部、
を備え、
前記爪受け部のうち、前記構成部品を成形する際の型抜き方向と平行な対向面における連結に用いられるものを特定爪受け部として、前記特定爪受け部の一方の着設位置と他方の着設位置とが、前記型抜き方向からみてずれた位置とされる、電線保護具の構成部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−228086(P2012−228086A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94134(P2011−94134)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】