説明

電線接続用コネクタおよびそれを用いた床暖房接続構造

【課題】鎖錠ばねを操作するために大きな操作力を必要とせず、薄型の電線接続用コネクタを提供する。
【解決手段】ハウジングの接続孔15から圧入した電線60の一端部を接続バネ30で付勢して接続金具に圧接させるとともに、前記接続バネの抜止用爪部32で抜け止めする電線接続用コネクタである。特に、操作レバー40の一端側に設けた回動軸部をハウジング内に回動可能に支持し、前記ハウジングに設けた操作孔を介して前記操作レバーを回動し、その他端部に位置する先端操作部42で前記抜止用爪部32を押圧して弾性変形させることにより、前記電線を前記ハウジングから抜き出し可能としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電線接続用コネクタ、特に、床暖房の配線に適した電線接続用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、床暖房の配線に使用される電線接続用コネクタとしては、例えば、特許文献1の図1,図2および図4に示すように、電線8を外す場合に、解除釦5の上面に突設した操作部51と、ケース2のボディ20に設けた窓25の凹部26との間に、工具9の先端を挿入して回動することにより、前記解除釦5をスライド移動させて鎖錠ばね4の一部を撓ませ、電線8を引き抜いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3291118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の端子台では、工具9の先端を回動させることにより、解除釦5の操作部51を押してスライドさせる必要があるので、前記解除釦5の操作部51の上面とケース2の上とを面一にする必要がある。特に、前記工具9の先端を回動しても破損しないように所定の強度を得ようとすると、前記ケース2のボディ20の肉厚および前記操作部51の高さ寸法を小さくできず、端子台の薄型化が容易でない。
また、前述の端子台では、工具9の回動支点から鎖錠ばね4に対する作用点までの距離が限定されるので、前記鎖錠ばね4を操作するために大きな操作力を必要とするという問題点がある。
本発明に係る電線接続用コネクタは、前記問題点に鑑み、大きな操作力を必要とせず、薄型の電線接続用コネクタおよびそれを用いた床暖房接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電線接続用コネクタは、前記課題を達成すべく、ハウジング内に圧入した電線の一端部を接続バネで付勢して接続金具に圧接させるとともに、前記接続バネの抜止用爪部で抜け止めする電線接続用コネクタであって、
少なくとも1つの操作レバーの一端側に設けた回動軸部を前記ハウジング内に回動可能に支持し、前記ハウジングに設けた操作孔を介して前記操作レバーを回動し、その他端部に位置する先端操作部で前記抜止用爪部を押圧して弾性変形させることにより、前記電線を前記ハウジングから抜き出す構成としてある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来例のように、操作部材の一部を突出させる必要がなく、ハウジング内に操作レバーを埋設できるので、薄型の電線接続用コネクタが得られる。
また、前記ハウジングの操作孔から操作レバーを回動させることにより、その先端操作部で接続バネを操作するので、回動支点である回動軸部から作用点である先端操作部までの支点間距離を大きくでき、小さな操作力で電線を外すことができる。
【0007】
本発明の実施形態としては、回動可能に支持された一対の操作レバーを隣接させて形成した操作用スリットを、ハウジングの操作孔から操作可能に配置した構成としてもよい。
本実施形態によれば、操作孔から操作用スリットを介して一対の操作レバーを同時に操作することにより、2本の電線を同時に抜き取ることができ、より一層、作業性が向上する。
【0008】
本発明の他の実施形態としては、電線の芯線の一端部を接続金具に直接圧接させてもよく、また、電線の芯線の一端部に一体化した接続用ピン端子を接続金具に圧接させてもよい。
本実施形態によれば、接続作業が簡単になり、特に、前記電線の芯線の一端部に接続用ピン端子を一体化すれば、ヨリ線からなる芯線であっても、接続作業および分離作業が容易となり、作業効率が向上する。
【0009】
本発明に係る床暖房接続構造としては、前述の電線接続用コネクタを介して敷設した床暖房用床板を相互に電気接続した構成としてある。
本発明によれば、薄型で配線作業が容易な電線接続用コネクタを使用することにより、現場施工が容易で嵩高くならない床暖房接続構造を得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1A,1Bは本発明に係る電線接続用コネクタの第1実施形態を示す全体斜視図、カバーを外した全体斜視図である。
【図2】図1Aで示した第1実施形態の分解斜視図である。
【図3】図1Aで示した第1実施形態の異なる角度から視た分解斜視図である。
【図4】図4A,4Bは図1で示した電線接続用コネクタの接続方法を説明するための斜視図である。
【図5】図5A,5Bは図1で示した電線接続用コネクタの接続方法を説明するためのカバーを外した状態を示す拡大斜視図である。
【図6】図6A,6Bは本発明に係る電線接続用コネクタの第2実施形態に使用される接続用ピン端子を示す斜視図である。
【図7】図7A,7Bは床暖房接続構造を説明するための平面図、床暖房用床板の裏面斜視図である。
【図8】図8Aは床暖房用床板を縦方向に接続する場合を示す斜視図であり、図8Bは床暖房用床板を横方向に接続する場合を示す斜視図である。
【図9】図9Aは本発明に係る第3実施形態を示す電線接続用コネクタの斜視図、図9Bは前記電線接続用コネクタを床暖房用床板に接続した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る電線接続用コネクタの第1実施形態を、図1ないし図5の添付図面に従って説明する。
本実施形態に係る電線接続用コネクタ1は、大略、図2に示すように、ベース10と、接続金具20と、接続バネ30と、操作レバー40と、カバー50とからなり、同一軸心上に配置した一対の電線60を2組、電気接続するものである。なお、前記ベース10と前記カバー50とでハウジングが構成される。
【0012】
前記ベース10は、その上面中央部に突設した台座部11の両側に所定の間隔を空けて側壁部12,12を平行に並設してある。そして、前記台座部11には、その略中央部に後述する操作レバー40を回動可能に支持するための4つ軸孔13を設けてある。さらに、前記側壁部12の外側面には係合用爪部14を突設してある。
【0013】
前記接続金具20は、図2および図3に示すように、前記台座部11と前記側壁部12との間に収納可能な床面積を有し、その上面内側縁部に接続部21を切り起こしてある一方、その上面外側縁部に一対の平面略L字形状の位置決め部22,22を切り起こしてある。前記位置決め部22は後述する接続バネ30を係止して位置決めする。そして、前記接続金具20は、前記ベース10の台座部11と側壁部12との間に嵌合して組み付けられる。
【0014】
前記接続バネ30は、後述する電線60の芯線61を付勢する押圧部31と、前記電線60の芯線61に係止して抜け止めする抜止用爪部32とからなり、前記接続金具20に組み付けることにより、前記位置決め部22で位置決めされる。
なお、前記接続金具20と前記接続バネ30とは、同一の板状導電性バネ材を打ち抜いて一体に形成してもよいことは勿論である。
【0015】
操作レバー40は、平面略L字形状であり、その一端部に回動軸部41を突設してある一方、その他端部を先端操作部42としてある。そして、前記回動軸部41を前記ベース10の軸孔13にそれぞれ挿入して回動可能に組み付けることにより、先端操作部42が前記接続バネ30の抜止用爪部32に当接可能となる一方、隣接する一対の操作レバー40,40の間に操作用スリット43が形成される(図1)。
【0016】
カバー50は、前記ベース10を被覆可能な平面形状を有し、その中央部に一対の操作孔51,51を設けてある一方、その下面両側縁部に前記ベース10の係合用爪部14に係合可能な弾性係合部52を突設してある。
【0017】
そして、前記ベース10の台座部11と側壁部12との間に接続金具20、接続バネ30を順次、組み付けて位置決めする。さらに、前記台座部11の軸孔13に操作レバー40の回動軸部41を挿入して回動可能に支持する。ついで、前記ベース10の係合用爪部14に前記カバー50の弾性係合部52を係合して組み付けることにより、接続孔15(図1A)が形成されるとともに、隣接する一対の操作レバー40,40の間に形成された操作用スリット43が前記カバー50の操作孔51から目視可能となる。
【0018】
前記電線接続用コネクタ1を介して電線60を接続する場合には、電線60の芯線61を前記接続孔15に挿入し、接続バネ30の押圧部31および抜止爪部32を弾性変形させて圧入する。これにより、電線60を接続金具20の接続部21に圧接させて電気接続できるとともに、接続バネ30の抜止用爪部32が電線60の芯線61に係止し、抜け止めする。
一方、前記電線60を外す場合には、前記操作孔51から目視できる操作用スリット43に、例えば、図4に示すように、ドライバー62の先端部を挿入して回動する。これにより、前記操作レバー40が回動軸部41を支点として回動し、その先端操作部42が接続バネ30の抜止用爪部32を押圧して弾性変形させ、係止状態を解除することにより、電線60を抜き出すことができる。
【0019】
本実施形態では、ドライバー62の先端部を一対の操作レバー40,40間の操作用スリット43に挿入して回動することにより、一対の抜止用爪部32,32を同時に解除でき、2本の電線60を同時に抜き取ることができるので、作業性が良い。
また、前記ドライバー62を回動させた後は、作業者がドライバー62から手を離しても、その状態が保持されるので、作業しやすい電線接続用コネクタ1が得られる。
【0020】
なお、電線60は、その芯線61を直接、接続金具20に電気接続する場合に限らず、図6に示すように、接続用ピン端子62にヨリ線からなる芯線61をカシメ固定し、前記電線接続用コネクタ1に電気接続してもよい(第2実施形態)。
また、電線60は1本ずつ接続する場合に限らず、例えば、2本の電線を並べてユニット化し、2本の電線を同時に接離すれば、作業性がより一層向上するという利点がある。
【0021】
次に、前記電線接続用コネクタ1を使用した床暖房接続構造を、図7および図8に基づいて説明する。
床暖房用床板70(71,72)は、図7Bに示すように、その裏面の両側端部に形成した配線用凹所80を裏板90で部分的に被覆してある。前記配線用凹所80は、その両側面にそれぞれ連通する配線溝81,82と、その一端面に連通する配線溝83とを備えている。また、前記裏板90に設けた略L字形状の切り欠き部91は、その一端側に落とし込み用開口部92を形成してある一方、その他端縁部を切り通してある。そして、前記配線用凹所80内には、2本の電線60,60が引き出されている。
【0022】
次に、図8Aに示すように、暖房用床板70,71を縦方向に接続する場合には、前記床暖房用床板70,71から引き出した前記電線60の芯線61を電線接続用コネクタ1の接続孔15にそれぞれ挿入する。そして、接続バネ30の押圧部31を弾性変形させることにより、電線60を接続金具20の接続部21に圧接させて電気接続する。さらに、裏板90の落とし込み用開口部92から前記電線接続用コネクタ1を落とし込んだ後、側方にスライド移動させて抜け止めする。ついで、上方側に位置する床暖房用床板71を反転させ、その雄実部84を下方側に位置する床暖房用床板70の雌実部85に嵌合して接合一体化することにより、接続作業が完了する。以後、同様な接続作業を行う。
【0023】
また、図8Bに示すように、暖房用床板71,72を横方向に接続する場合には、前述の説明と同様、前記床暖房用床板71,72から引き出した前記電線60の芯線61を電線接続用コネクタ1の接続孔15にそれぞれ挿入する。そして、接続バネ30の押圧部31を弾性変形させることにより、接続金具20の接続部21に圧接させて電気接続する。さらに、裏板90の落とし込み用開口部92から前記電線接続用コネクタ1を落とし込んだ後、側方にスライド移動させて抜け止めする。ついで、上方側に位置する床暖房用床板72を反転させ、その雌実部85を下方側に位置する暖房用床板71の雄実部84に嵌合して接合一体化することにより、接続作業が完了する。以後、同様な接続作業を行う。
【0024】
さらに、図9A,9Bに示す第3実施形態のように、電線接続用コネクタ1に2対の電線60および1対のアース線64を接続してもよい。アース線64の接続構造としては、例えば、特許第4214244号に示す係合体を介し、電線接続用コネクタ1のアース線用接続孔16から接続してもよいことは勿論である。
【0025】
なお、操作レバー40は、前述のように略L字形状である必要なく、例えば、略三角形であってもよい。また、前記操作レバー40の回動軸部41は上下一対、かつ、同一軸心上に突設し、その上下端部を前記ベース10および前記カバー50で回動可能に支持してもよい。特に、カバー50で前記操作レバー40を回動可能に支持する場合には、軸孔は貫通孔であってもよく、また、単なる凹部であってもよい。
【0026】
また、少なくとも前記カバー50は透明であれば、接続状態を目視で確認でき、接続信頼性が向上するという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る電線接続用コネクタは、前述の床暖房接続構造に限らず、他の電線接続構造に適用できること勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1:電線接続用コネクタ
10:ベース
11:台座部
12:側壁部
13:軸孔
15:接続孔
16:アース線用接続孔
20:接続金具
21:接続部
22:位置決め部
30:接続バネ
31:押圧部
32:抜止用爪部
40:操作レバー
41:回動軸部
42:先端操作部
43:操作用スリット
50:カバー
51:操作孔
60:電線
61:芯線
62:ドライバー
63:接続用ピン端子
64:アース線
70,71,72:床暖房用床板
80:配線用凹所
81,82,83:配線溝
90:裏板
91:切り欠き部
92:落とし込み用開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に圧入した電線の一端部を接続バネで付勢して接続金具に圧接させるとともに、前記接続バネの抜止用爪部で抜け止めする電線接続用コネクタであって、
少なくとも1つの操作レバーの一端側に設けた回動軸部を前記ハウジング内に回動可能に支持し、前記ハウジングに設けた操作孔を介して前記操作レバーを回動し、その他端部に位置する先端操作部で前記抜止用爪部を押圧して弾性変形させることにより、前記電線を前記ハウジングから抜き出すことを特徴とする電線接続用コネクタ。
【請求項2】
回動可能に支持された一対の操作レバーを隣接させて形成した操作用スリットを、ハウジングの操作孔から操作可能に配置したことを特徴とする請求項1に記載の電線接続用コネクタ。
【請求項3】
電線の芯線の一端部を接続金具に直接圧接させたことを特徴とする請求項1または2に記載の電線接続用コネクタ。
【請求項4】
電線の芯線の一端部に一体化した接続用ピン端子を接続金具に圧接させたことを特徴とする請求項1または2に記載の電線接続用コネクタ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電線接続用コネクタを介して敷設した床暖房用床板を相互に電気接続したことを特徴とする床暖房接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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