説明

電線用鳥害防止具及びその取付方法

【課題】簡単な作業で済み作業能率が向上するばかりか高所作業車が使えない個所でも作業が行なえる電線用鳥害防止具およびその取付方法を提供する。
【解決手段】一対の支持部材2a,2bの内、一方の支持部材に鳥害防止線1が巻回されるリール23を取着し、これから引き出した鳥害防止線1を中間部材3に嵌着される係合キャップ41の通孔43に挿通すると共に他方の支持部材に巻着し、該支持部材に索条51を繋いだ状態で一方の電柱D1寄りの電線Wに一対の支持部材と中間部材3を順に配置し、一方の支持部材を電線に移動不能に固定し、索条を他方の電柱D2側から引き寄せると共にその途中で咬持手段39,43によって鳥害防止線を咬合させ中間部材を該鳥害防止線に固定することにより他方の支持部材と共に中間部材が他の電柱側へ一緒に移動し、他方の支持部材を他方の電柱寄りの電線に移動不能に固定すると共に一方の支持部材に鳥害防止線の端部を巻着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に道路の縁に沿って立設した電柱間に架設される送配電線や電話ケーブル等の電線に取り付けられる電線用鳥害防止具及びその取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の縁に沿って立設した電柱間に架設される送配電線や電話ケーブルといった電線には、烏、鳩、椋鳥等の鳥が飛来して留まり、しかも、留まっている時にしばしば糞を排泄する。このように鳥が糞を排泄すると、該糞がその下方の路を歩いている人の頭や肩に落ちて髪の毛や服を汚したり、駐車してある車の屋根やフロントガラスの上面に落ちて汚すといった所謂鳥の糞害が発生する。このことから、本出願人は、電線にそれぞれ直接取着するようにした電線用鳥害防止具を発明し出願した。更に詳しく説明すると、該電線用鳥害防止具は、「てぐす」と称される鳥害防止線と、該鳥害防止線を止着する複数の係止部材と、からなる。そして、電柱間に架設された電線に電線用鳥害防止具を取着するには、次のようにして行なわれる。
【0003】
すなわち、あらかじめ電線の所定範囲に張設する鳥害防止線の長さと支持部材の個数を決めておき、各支持部材の所定の高さ位置に鳥害防止線を挿通する。ただし、両端部に位置する支持部材にあっては、前記鳥害防止線の端部を同じ高さに取着しておく。次に、作業者が例えば高所作業車のバケットに乗って電線まで上昇し、そこで、電線に沿ってその一側から前記鳥害防止線が取着された支持部材をそれぞれ一個ずつ順に電線を挟むようにして取り付けている。これにより、電線の上方に一定の間隔離しかつ該電線に沿って鳥害防止線が張設される(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−176901号公報(第2−4頁、図1、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に示すような従来の電線用鳥害防止具にあっては、高所作業車を使用して電柱間に架設された電線に沿って多数の支持部材をほぼ等間隔置きに一個ずつ配置すると共にこれら支持部材を挟着することにより電線に取着しており、電線に沿って多くの支持部材をそれぞれ一個ずつ取着しなければならないことから、その取付作業が面倒であって手間や時間が掛かり、作業能率が悪いという改良すべき点が有った。しかも、高所作業車のバケットに乗って電柱間に架設された電線全体に亘り支持部材を取着することになるので、仮に、電柱間に高所作業車が侵入できない個所があると、作業が行なえなくなるという改良点も有る。
【0006】
そこで、本発明は上記改良点に鑑みなされたもので、簡単な作業で済み作業能率が向上するばかりか高所作業車が使えない個所であっても作業が行なえる電線用鳥害防止具およびその取付方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の電線用鳥害防止具は、鳥害防止線と、電柱間に架設した電線の両端部に取着され前記鳥害防止線を前記電線から一定の高さ位置に張設する一対の支持部材と、前記両支持部材間で前記電線に沿って配置され前記鳥害防止線を支持する1個又は複数個の中間部材と、から構成され、前記一方の支持部材に前記鳥害防止線を巻回して保持するリールを着脱自在に取着し、前記中間部材にはその一端側に前記鳥害防止線に咬合する咬持手段を設けると共に他端側に前記電線が遊嵌される挿通環部を設け、前記リールから引き出される前記鳥害防止線を巻着した前記他方の支持部材に索条を繋いで該他方の支持部材を前記電線に沿って他方へ引き寄せることにより、前記他方の支持部材と共に前記咬持手段によって前記鳥害防止線に咬合した前記中間部材も遊嵌される電線に沿って一緒に移動するようにしたことを特徴とする。
【0008】
この際、前記咬持手段は、前記中間部材の一端側に突設した支承片部に設けられ前記鳥害防止線を支持するV溝と、該支承片部に嵌着する係合キャップに開設され前記鳥害防止線が孔の中心軸線に対して直交する方向から挿通される通孔と、からなることが好ましい。
【0009】
また、本発明の電線用鳥害防止具の取付方法は、一対の支持部材の内、一方の支持部材に前記鳥害防止線を巻回して保持するリールを取着し、前記リールから引き出した前記鳥害防止線を前記中間部材の一端側に嵌着される係合キャップの通孔に挿通すると共に他方の支持部材に巻着し、前記他方の支持部材に索条を繋いだ状態で一方の電柱寄りの電線に一対の支持部材とこれら支持部材間に位置する中間部材を順に配置し、前記一方の支持部材を前記電線に移動不能に固定し、前記索条を他方の電柱側から引き寄せると共にその途中で前記咬持手段によって前記鳥害防止線を咬合させ前記中間部材を該鳥害防止線に固定することにより、他方の支持部材と共に前記中間部材が遊嵌する電線に沿って他の電柱側へ一緒に移動し、前記他方の支持部材を前記他方の電柱寄りの電線に移動不能に固定すると共に前記一方の支持部材に前記鳥害防止線の端部を巻着して、前記鳥害防止線が前記電線から一定の高さ位置に張設されるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電線用鳥害防止具は、鳥害防止線と、電柱間に架設した電線の両端部に取着され鳥害防止線を電線から一定の高さ位置に張設する一対の支持部材と、両支持部材間で電線に沿って配置され鳥害防止線を支持する1個又は複数個の中間部材と、から構成され、一方の支持部材に鳥害防止線を巻回して保持するリールを着脱自在に取着し、中間部材にはその一端側に鳥害防止線に咬合する咬持手段を設けると共に他端側に電線が遊嵌される挿通環部を設けてなる。そして、リールから引き出される鳥害防止線を巻着した他方の支持部材に索条を繋いで該他方の支持部材を電線に沿って他方へ引き寄せることにより、他方の支持部材と共に咬持手段によって鳥害防止線に咬合した中間部材も遊嵌される電線に沿って一緒に移動するようにしたので、他方の電柱側から他方の支持部材を引き寄せるのに伴い中間部材が一方の電柱側から送り込むのみで取り付けられ、作業が簡単であるばかりか作業時間が短縮でき、ひいては作業能率の向上が図られる。しかも、作業は両電柱寄りでのみ行い電柱間では作業を行なう必要がないことから、電柱間に高所作業車が入れないような場所であっても、電線用鳥害防止具を取り付ける作業が行なえるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る電線用鳥害防止具の斜視図。
【図2】(イ)はリールを取着した支持部材の正面図、(ロ)は同右側面図、(ハ)は同平面図。
【図3】(イ)はリールを分解して示す正面断面図、(ロ)は同正面図、(ハ)は同左側面図。
【図4】(イ)は中間部材の正面図、(ロ)は同右正面図。
【図5】係合キャップの拡大斜視図。
【図6】(イ)は係合キャップを分解した状態の中間部材の一部断面正面図、(ロ)は同組み合わせた状態の一部断面正面図、(ハ)は同組み合わせた状態の一部断面右側面図。
【図7】電線用鳥害防止具の取付方法の手順を示す説明図。
【図8】電線用鳥害防止具の取付方法の手順を示す説明図。
【図9】電線用鳥害防止具の取付方法の手順を示す説明図。
【図10】電線用鳥害防止具を取り付けた状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電線用鳥害防止具及びその取付方法の最良の実施の形態について説明する。図1は本発明に係る電線用鳥害防止具の斜視図である。該電線用鳥害防止具Aは、鳥害防止線1と、後記する電柱D1,D2間に架設される電線Wの両端部に取着され前記鳥害防止線1を電線Wから一定の高さ位置に張設する一対の支持部材2a,2bと、両支持部材2a,2b間で電線Wに沿って配置され鳥害防止線1を支持する中間部材3と、から構成される。次に、これら構成部品について詳しく説明する。
【0013】
鳥害防止線1は、絶縁性の細線からなるフッ素系またはナイロン系の合成樹脂材により形成され、例えば通常の電柱D1,D2間に張設できる長さを有する。そして、該鳥害防止線1は、後記するリール23に巻回して保持される。
【0014】
支持部材2a,2bは、絶縁性の高い硬質剛性樹脂材からなり同じ形状をなす。図2に示すように、支持部材2a,2bは、本体部4と、該本体部4の一側である上面に突設され鳥害防止線1を巻回するための巻杆部5と、からなる。本体部4は、真っ直ぐな主幹6の上下両端に水平上腕部7、水平下腕部8をそれぞれ同方向へ突出させた側面コ形状に形成されている。水平上腕部7は下面が凹弧状7aに形成され、介装される電線Wの一側面に圧接する第一握持部9が設けられると共にその先端部に前記主幹6と平行に配置される下向きの突出片10が垂設されている。また、前記水平下腕部8に、前記第一握持部9に対応位置して上下方向に螺子孔11が貫設されている。
【0015】
前記螺子孔11に、下からねじ棒12が螺入される。該ねじ棒12は本体部4と同質の材質からなり、螺締または螺緩により主幹6と平行に進退動するようになっている。該ねじ棒12の一端であって水平下腕部8より下方に、下面で開口する円筒形状の係止体13が一体に設けられている。該係止体13の周側面には、下端縁が開口する一対のT型の係止溝14が対向位置して形成されている。これは後記する遠隔操作棒の先端部を係脱自在に係合させて、ねじ棒12を螺締または螺緩できるようにするためである。
【0016】
一方、前記ねじ棒12の他端であって前記水平下腕部8より上方に、第一握持部9と対向位置して電線Wの他側面に圧接する第二握持部15が取着されている。該第二握持部15の上面も、凹弧状15aに形成されている。そして、該第一握持部9と第二握持部15との間が電線挟着部16とされる。前記第二握持部15の内側両側端に、主幹6を挟むようにしてその両側外面に摺接する案内片17,17が突設されている。水平上腕部7には、後記する索条である紐51を挿通するための係留孔18が開設されている。この索条としては、他にロープ、細幅のテープが使用できる。
【0017】
巻杆部5は、前記上方の水平上腕部7の平坦な上面から上方へ突設している。そして、その対向する両側面に、高さを違えて前記鳥害防止線1を差し込んで巻回するための一対の掛止溝19,19が設けられる。各掛止溝19は鳥害防止線1の外径寸法より僅かに狭い溝幅を有しており側面L字状に形成され、いずれも側端面で開放されている。また、各掛止溝19の途中の内側面には、鳥害防止線1の戻り防止用の爪片20が突設されている。
【0018】
本体部4の主幹6の外側面に、平板状の張出板部21が一体に突設されている。この張出板部21は鳥害防止線1を巻回したリール23を取着するためのものであり、該張出板部21の両側面にこれら側面から突出しかつ主幹6と平行な突条22が設けられている。また、張出板部21の上下両端面は、外側縁が円弧状21aとなるように切り欠かれている。
【0019】
一方の支持部材2aに取着されるリール23は、図3に示すように円筒状のリールケース23aと、該リールケース23aに内装されるリール本体23bと、からなる。リールケース23aは、一側面が開放する円筒状に形成され底壁24aの中心に開放側へ突出する支持軸25が突設されている。該支持軸25の先端面には、ねじ孔26が穿設されている。また、リールケース23aの周壁24bの所定位置に、巻回された鳥害防止線1を外部へ引き出すための導出孔27が開設されている。リールケース23aの底壁24aの裏面中央には、前記支持部材2aの張出板部21が挿入され該支持部材2aに着脱自在に取り付けるための保持枠28が設けられている。該保持枠28は、内部に前記張出板部21と突条22が嵌入する十字溝29が穿設される。この十字溝29は、下端面のみが外部と連通し上端部が閉塞されている。
【0020】
リール本体23bは、前記リールケース23a内に遊嵌する大きさの円筒体からなり、外周面の両側縁に沿って鳥害防止線1がリール本体23bから外れないように環状鍔30が周設されている。中心部には、前記リールケース23aの支持軸25が遊嵌される軸通孔31が開設される。軸通孔31に支持軸25を遊嵌してリール本体23bをリールケース23a内に装填し、鍔付き螺子32をねじ孔26に螺締することによりリール本体23bがリールケース23aに回転自在に内装される。そして、リール本体23bに巻回された鳥害防止線1の端部を前記導出孔27から外部へ引き出して引っ張ることにより、リール本体23bが回転してリール23から鳥害防止線1が引き出せるようになっている。
【0021】
中間部材3は、ABS樹脂材により形成され、図4乃至6に示すように一端側すなわち上端側に一対の平行な支承片部33,33と同じく平行な係止片部34,34とが設けられる。これらは、次に説明する他端側すなわち下端側に伸び並設される短片部35と長片部36とを一体に連結する連絡片部37の外側面すなわち上面に突設されている。一対の支承片部33,33は短片部35と長片部36を含む面と平行な面内に位置しかつ係止片部34の厚み分離し対向して平行に配置され、その間の両外側に両支承片部33,33と直交するようにし係止片部34,34が対向して配置されている。よって、一対の支承片部33,33と一対の係止片部34,34とに囲われるようにして、上下に長い直方体形状の空洞部38が形成される。両支承片部33,33の先端縁すなわち上端縁に、短片部35と長片部36とを含む面と平行な面内でV字状となる所定深さのV溝39,39が凹設される。一方、一対の係止片部34,34の外側面には、他端側すなわち下端側を向く係合爪40,40が設けられている。
【0022】
前記一対の支承片部33,33と係止片部34,34に、上方から係合キャップ41が嵌着される。該係合キャップ41も、ABS樹脂材により成形され外観が略四角錐体形状をなし、底面すなわち下端面が開口する空洞状に形成される。そして、対向位置しかつ内周面が両支承片部33,33の外周面と摺接する一対の第一周壁部42a,42aに、ほぼ中央上部に位置して鳥害防止線1を挿通する通孔43,43が水平かつ一直線状に並ぶようにして開設されている。また、内側面が前記両係止片部34,34の外周面と摺接する一対の第二周壁部42b,42bの上部に、両第一周壁部42a,42a間に亘り開口する切欠開口44,44が設けられている。各切欠開口44の下端縁に、該各切欠開口44下部を一部覆うようにして上方へ延びる掛止片部45,45が一体に設けられる。これら掛止片部45,45の先端に、前記係止片部34,34の外周面の係合爪40,40が係合することになる。
【0023】
前記通孔43はその一側が切り欠かれて外部と連通しており、その切欠部46を介して前記鳥害防止線1を孔の軸線に対して直交する方向から通孔43に出入自在に挿通できるようになっている。係合キャップ41の天壁部47の内面に、底面側へ突出しかつその下端面が通孔43の上端面と合致する押込杆部48が設けられている。よって、両支承片部33,33と係止片部34,34に係合キャップ41を浅く嵌着させた状態で、切欠部46を介して通孔43に鳥害防止線1を挿通することができる。しかも、係合キャップ41を深く係合させることにより、鳥害防止線1が押込杆部48に押されて両支承片部33,33のV溝39,39の奥端に介入し、中間部材3が鳥害防止線1に固定されるようになっている。
【0024】
前記連結片部37の両側から並設される短片部35と長片部36との間の間隔は、その間に電線Wが遊嵌される寸法に設定されており、長片部36から該長片部36に対しほぼ直交状に配置されかつ短片部35側へ延設する外れ止め片49が設けられている。これにより、短・長片部35,36と外れ止め片49とにより囲まれるようにして挿通環部50が形成される。そして、短片部35を外側へ広げ、該短片部35と外れ止め片49の先端との間から電線Wを挿通環部50に遊嵌することができるようになっている。また、挿通環部50に電線Wを遊嵌した状態では、外れ止め片49が邪魔して電線Wが挿通環部50から勝手に抜け出ないようになっている。しかも、該電線Wに中間部材3が吊り下げられたとき、電線Wにより中間部材3がその上部で支持されるので、中間部材3の重心が電線Wよりも下方位置にある。よって、多少風雨で中間部材3が煽られても、該中間部材3が上下逆さになることはない。
【0025】
本発明に係る電線用鳥害防止具Aは上記構成からなり、次にその取付方法について説明する。まず、あらかじめ一方の支持部材2a、複数(この場合は3個)の中間部材3、他方の支持部材2bの順に並べる。そして、保持枠28の十字溝29に張出板部21の突条22を挿通して、鳥害防止線1が巻回されたリール23を一方の支持部材2aに取着する。また、リールケース23aの導出孔27から引き出される鳥害防止線1を、3個の中間部材3における係合キャップ41の通孔43に切欠部46を介して挿通させる。この際、両支承片部33,33と両係止片部34,34に係合キャップ41が被せられるが、該係合キャップ41は緩く嵌着されている。よって、通孔43内に挿通された鳥害防止線1が自在に進退できるようになっている。鳥害防止線1の先端部は、他方の電柱D2側の他方の支持部材2bの巻杆部5の掛止溝19に挿通されて巻回される。また、該他方の支持部材2bの係留孔18に、紐51を挿通して係留させる。この紐51の長さは、少なくとも両電柱D1,D2間の長さ寸法よりも長く設定される。
【0026】
このようにして、セットされた一対の支持部材2a,2bと3個の中間部材3を携えて、作業者が例えば高所作業車のバケット(図示せず。)に乗り込み一方の電柱D1寄りの電線W位置まで上がる。そこで、各支持部材2a,2bのねじ棒12を緩めて、第一握持部9と第二握持部15との間隔を電線Wの外径寸法よりも広げておく。そして、図7に示すように別途用意した遠隔操作棒(図示せず。)の先端を係止体13内に差し込み、一方の支持部材2aを遠隔操作棒の先端に支持した状態で第一・第二握持部9,15間に一方の電柱D1寄りの電線Wを介在させる。今度は、遠隔操作棒を回転しねじ棒12を螺子締めし、巻杆部5が上方を向くようにして該支持部材2aを電線Wに固定する。他方の支持部材2bも電線Wに取着するが、第一・第二握持部9,15間の間隔は電線Wの外径寸法よりも少し広くしておき、該支持部材2bが電線Wに沿って移動できるようにしておく。
【0027】
また、各中間部材3は、同じく先端が挟着できる遠隔操作棒(図示せず。)を用い、長片部36を挟んで電線Wの上方から短片部35と長片部36とを含む面が電線Wの中心軸線に対して直交するように配置し、短片部35と外れ止め片部49の先端部との間に電線Wの上面をあてがった状態で、長片部36を下方へ引き下げる。これにより、短片部35が電線Wにより押し広げられ、自然と挿通環部50内に電線Wが遊嵌される。これら中間部材3も電線Wに沿って移動可能である。
【0028】
次に、他の作業者が他方の電柱D2寄りに紐51を運び、同じように高所作業車のバケットに乗り込み、他方の電柱D2寄りの電線W位置まで上がる。そして、図8に示すように他方の電柱D2側から紐51をゆっくり引き寄せる。これにより、他方の支持部材2bが矢視の如く他方の電柱D2側へ移動すると共に、一方の電柱D1側の支持部材2に取着されたリール23から鳥害防止線1が引き出される。この間、一方の電柱D1寄りの作業者が、適宜間隔を置いて中間部材3の係合キャップ41を押し込み、該係合キャップ41を鳥害防止線1に噛み込ませて中間部材3を鳥害防止線1に固定させる。これにより、前記他の電柱D2側の支持部材2と共に中間部材3までもが電線Wに沿って芋ずる式に移動することになる。
【0029】
このようにして、図9に示すように中間部材3を鳥害防止線1の適宜位置に順次固定すると共に他方の支持部材2bが他方の電柱D2寄りに位置した状態で、該他方の支持部材2bにおける係止体13に遠隔操作棒の先端を差し込む。そして、遠隔操作棒を回転させることによりねじ棒12を螺子締し、第一・第二握持部9,15間で他方の電柱D2よりの電線Wを挟着して他方の支持部材2bを電線Wに固定する。この際、巻杆部5は上方を向いている。
【0030】
これに対し、一方の支持部材2aにあっては、鳥害防止線1が巻回してあったリール23を取り外すと共に鳥害防止線1を少し残す。そして、他方の電柱D2側の支持部材2bとの間で強く張った状態で、一方の支持部材2aの巻杆部5に鳥害防止線1を掛止溝19に挿通して巻回ししっかりと固定する。そして、図10に示すように鳥害防止線1の取付作業が終了する。これら一連の作業は、電線Wが活線状態であっても行なえる。
【0031】
これにより、電線Wの上方でありかつ該電線Wに沿って所定高さ位置に鳥害防止線1が張設される。使用に当たっては、鳥害防止線1が電線Wから一定の距離離して平行に張設されてバリヤーとなることから、飛来した鳥が接触するとびっくりして逃げるので、鳥が電線Wに留まるのが防止される。よって、鳥が電線Wに留まって引き起こされる糞害が防止できる。
【0032】
各中間部材3は、電線Wが短片部35、長片部36との間の挿通環部50に遊嵌され、しかも、電線Wよりも上方へ突出している支承片部33や係止片部34よりも、電線Wの下方に延設される短片部35、長片部36の寸法が6〜7倍ほど長いことから、各中間部材3の重心が電線Wの下方に位置することになる。よって、強い風が吹いて各中間部材3が電線Wに対して傾いたとしても、風が弱まればその重心の作用により自然と支承片部33、停止片部34が電線Wのほぼ上方に位置するところで停止する。よって、鳥害の防止効果が低下するようなことはない。
【符号の説明】
【0033】
1 鳥害防止線
2a 支持部材
2b 支持部材
3 中間部材
23 リール
33 支承片部
39 咬持手段(V溝)
41 係合キャップ
43 咬持手段(通孔)
50 挿通環部
51 索条(紐)
A 電線用鳥害防止具
D1 電柱
D2 電柱
W 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥害防止線と、電柱間に架設した電線の両端部に取着され前記鳥害防止線を前記電線から一定の高さ位置に張設する一対の支持部材と、前記両支持部材間で前記電線に沿って配置され前記鳥害防止線を支持する1個又は複数個の中間部材と、から構成され、
前記一方の支持部材に前記鳥害防止線を巻回して保持するリールを着脱自在に取着し、前記中間部材にはその一端側に前記鳥害防止線に咬合する咬持手段を設けると共に他端側に前記電線が遊嵌される挿通環部を設け、
前記リールから引き出される前記鳥害防止線を巻着した前記他方の支持部材に索条を繋いで該他方の支持部材を前記電線に沿って他方へ引き寄せることにより、前記他方の支持部材と共に前記咬持手段によって前記鳥害防止線に咬合した前記中間部材も遊嵌される電線に沿って一緒に移動するようにしたことを特徴とする電線用鳥害防止具。
【請求項2】
前記咬持手段は前記中間部材の一端側に突設した支承片部に設けられ前記鳥害防止線を支持するV溝と該支承片部に嵌着する係合キャップに開設され前記鳥害防止線が孔の中心軸線に対して直交する方向から挿通される通孔とからなる請求項1記載の電線用鳥害防止具。
【請求項3】
一対の支持部材の内、一方の支持部材に前記鳥害防止線を巻回して保持するリールを取着し、前記リールから引き出した前記鳥害防止線を前記中間部材の一端側に嵌着される係合キャップの通孔に挿通すると共に他方の支持部材に巻着し、前記他方の支持部材に索条を繋いだ状態で一方の電柱寄りの電線に一対の支持部材とこれら支持部材間に位置する中間部材を順に配置し、前記一方の支持部材を前記電線に移動不能に固定し、
前記索条を他方の電柱側から引き寄せると共にその途中で前記咬持手段によって前記鳥害防止線を咬合させ前記中間部材を該鳥害防止線に固定することにより、他方の支持部材と共に前記中間部材が遊嵌する電線に沿って他の電柱側へ一緒に移動し、前記他方の支持部材を前記他方の電柱寄りの電線に移動不能に固定すると共に前記一方の支持部材に前記鳥害防止線の端部を巻着して、前記鳥害防止線が前記電線から一定の高さ位置に張設されるようにしたことを特徴とする電線用鳥害防止具の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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