説明

電縫鋼管製造方法とその製造装置及び電縫鋼管

【課題】液体フラックスや気化フラックスで溶接付き合わせ面を完全にシールドして、溶接部のベネトレータの生成や窒化を抑制し、フラックス機能で溶接付き合わせ部の溶融金属の表面張力低減、清浄化、酸化防止を図り、接合部の拡散接合を促進し、接合強度を向上させる。また、鋼管内面の溶接ビードを確実に除去する。
【解決手段】気化フラックス塗布用の噴射ノズルや液体フラックス塗布用の塗布器を配設して付き合わせ面に液体フラックス膜を形成し溶接付き合わせ面を酸化防止する。液体フラックスは1600℃までフラックス機能を発揮でき、しかも表面張力低減、正常化作用、酸化防止機能を有するのでベネトレータの生成がなく拡散接合に近い高強度の電縫鋼管を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電縫鋼管溶接接合における溶接性を改善し溶接欠陥を減少させ溶接信頼性を向上させるものである。高入熱やアップセット(部材を突き合わせ、適当な温度になった時溶接接合する際の加圧力)量不足で溶接部に発生するベネトレータ(残存酸化物)の発生低減やベネトレータ排出機能を向上し接合強度の高い電縫鋼管を製造するために発明されたものである。
【背景技術】
【0002】
電縫鋼管溶接には、電気抵抗溶接法(高周波抵抗溶接法、低周波抵抗溶接法)、鍛接法(連続式鍛接法)、アーク溶接法(サブマージアーク法)がある。高周波溶接法には接触通電法、誘導通電法がある。低周波溶接法には接触通電法がある。また鋼管はJIS規格にて、一般構造用炭素鋼鋼管(JIS G 3444)、機械構造用炭素鋼鋼管(JIS G 3445)、機械構造用炭素鋼鋼管(JIS G 3441)、一般構造用角型鋼管(JIS G 3446)、自動車構造用電気抵抗溶接炭素鋼鋼管(JIS G 3472)などがある。本発明は鋼板を管状に成形して鋼板端部の突き合わせ面を溶接して製造する全ての電縫鋼管製造方法及び材質に適用できるものである。
【0003】
一般的には電縫鋼管の製造においては電気抵抗溶接法が多用されている。電気抵抗溶接法には高周波抵抗溶接法と低周波抵抗溶接法があるが、電縫鋼管製造開始時は、50〜400Hzの低周波電流を通電する方式が先に普及した。しかしながら、高速域での未溶接部が発生し高速化に限界が生じたため次第に200〜450kHzの高周波抵抗溶接法に置き換わってきた。電縫鋼管の高周波抵抗溶接機は炭素鋼を中心とする大気中での連続溶接が主であり制御技術の進歩により現在ではほぼ完全に自動化され鋼管溶接専用機として広く普及している。
【0004】
電縫鋼管溶接法では成形後の素材板縁部がV型となるため収束部に高周波電流が集中することから誘導加熱が多用され、スクイズロールにて一定の圧力を突き合わせ面にかけることで素材板が圧着し溶接が完了する。連続的な圧接による接合の安定性は、ロールにより管状に成形される鋼管断面形状、突き合わせ面形状(I開先、V開先など)、溶接入熱、スクイズロールの圧下量(アップセット量)に左右される。電縫鋼管の製造工程においては、材質、寸法、季節による温度変化などの条件を考慮しながらラインを微調整し、溶接欠陥の発生を最小限に抑えるようにしているが、窒素やアルゴンなどのシールドガスで大気を遮断するだけでは不十分であり無酸化での溶接は実現できないことから、コールドウェルド(未溶接部)、コメ粒状のベネトレータ(残存酸化物)、溶け落ち(溶接入熱過大)、ラップビード(溶接部の段付き)、フッククラックラミネーション(素材の偏析によるクラック)などの原因となっていた。
【0005】
現状の高周波電縫鋼管製造装置においては、溶接部を大気から遮断するための方法として一般的にアルゴンや窒素をシールドガスとして使用している。しかしながら、アルゴンを溶接部に噴射することはコスト的に高くつくため窒素ガスを溶接接合部に100〜200リットル/min程度噴射している。また、溶接接合部の約1m程度前方で約3%のホウ酸水(H3BO3、水には最大3%程度しか溶解しない)を溶接面に霧状に噴射しフラックスの代用としている場合もある。ホウ酸は180〜800℃と高範囲の温度領域でフラックスとして酸化防止機能を有しているが、鉄の溶融温度1550℃領域では殆どフラックスとしての効果はない。現状の電縫鋼管の溶接を改善するには1600℃までは酸化防止できるフラックス機能が必要である。
【0006】
また、電縫鋼管素材として軟鋼、高張力鋼、低合金鋼などの炭素含有材に100〜200リットル/minの窒素ガスの噴射は窒化に繋がる問題や完全に空気を遮断できない問題がある。電縫鋼管の製造では、電気加熱手段を用いて付き合わせ面を加熱しながら連続的にスクイズロールで圧力を加えて圧接接合するのであるが、接合途中の突き合わせ面は単なる液相状態でなく液相、半溶融相、固相の混合状態である。このような3種共存状態のところにシールドガスの窒素ガスが入り込むことになり溶接部の窒化を促進したり空気中の酸素が侵入したりして酸化物を形成していた。また空気の侵入を完全に遮断することは不可能であった。特にハイマンガン材やハイクロム材などの高合金鋼の場合、溶接部にベネトレータと称する酸化介在物が残存しやすく、溶接部の品質を著しく悪化させる原因となっている。
【0007】
ベネトレータ低減のために、特開平8−112678号広報では、素管の継ぎ目両エッジ部を高周波抵抗溶接により加熱し、この加熱された両エッジ部をスクイズロールによりアップセット溶接するに際し、この溶接部の局部のみを覆うシールドカバーを取り付けて、シールドガスによりシールドして溶接するシールド装置が提案されている。
【0008】
また、鋼管内面には溶接ビードが残存するので除去する必要がある。特開平5−253732号広報において、切削バイトを回転式として稼働率を向上させる方法が提案されている。
【0009】
本発明者は、特開2011−088180号広報「溶接用フラックスと溶接方法」で、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、B、C、N、O、Si、P、S、Zn、Seなどの原子の内少なくとも2種類以上の原子が結合してできている電解質をアルコールやアセトンの溶媒に溶解して生成した液体フラックスを溶接部分に塗布して溶接する溶接方法や前記液体フラックスを気化せしめた気化フラックスをシールドガスや複数のシールドガスを混合した混合シールドガスと混合して生成した複合シールドガスを溶接部分に噴射しながら溶接する方法を発明した。特願2010−200494号広報「蝋付け用フラックス及び蝋付け法」で、前記液体フラックスを気化装置に充填し、プロパン(C3H6)やアセチレン(C2H2)などの燃焼ガスを吹き込んで気化せしめて前記気化フラックスとして、蝋付け炉のバーナーに導き、前記蝋付け炉を加熱しながら前記気化フラックスを吹き込んで蝋付けする蝋付け方法を発明した。特願2010−206271号広報「フィンチューブの製造方法」で、フィンとチューブを高周波抵抗溶接してフィンチューブを製造する方法において、気化装置に前記液体フラックスを充填し、前記気化装置に気体を吹き込んで前記液体フラックスを気化せしめて、気化フラックスを生成し、該気化フラックスを溶接部に噴射ながら前記フィンと前記チューブを溶接するフィンチューブ製造方法を発明した。特開2011−098367号広報「溶接肉盛り用フラックスと溶接肉盛法」で、液体フラックスの溶質を適宜析出せしめて生成した析出フラックスに接種剤を混入してゲル状フラックスとして、該ゲル状フラックスを溶接母材に塗布した後に前記ゲル状フラックスの溶媒を乾燥もしくは燃焼させて固形フラックスとして肉盛り母材に固定した後に、該固形フラックスの上から前記肉盛り母材に溶接する方法や帯電シールドガス中で溶接する方法を発明した。
【0010】
本発明者は、特開2009−090368号広報「ガス切断用気化フラックス」で、ロウ付けなどに使用するフラックスを適宜混合して前処理した混合フラックスを、アルコールやアセトンなどの溶媒に8〜25重量%混合して、超臨界装置内において温度300〜400℃、圧力34.3〜44.1MPaで溶解し液体フラックスとし、該液体フラックスに気体を吹き込んで気化させるガス切断用気化フラックスを発明した。特開2009−233741号広報「液体フラックス気化装置」で、ロウ付け及びガス切断などに使用するフラックスをアルコールやアセトンあるいはこれらを混合した液体に溶解した液体フラックス中に、アセチレンやプロパンなどの燃焼ガスを吹き込んで、前記液体フラックスを気化せしめて気化フラックスを生成する液体フラックス気化装置において、周りに複数の回転筒用ネオジ磁石が配設してある回転筒を設け、該回転筒を毎分60〜200回、回転させながら前記気化フラックスを通過せしめて、該気化フラックスを取り出す液体フラックス気化装置を発明した。特開2009−297782号広報「液体フラックスの製造方法及びその装置」で、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、B、C、N、O、Si、P、S、Cl、Zn、Seなどの原子の内、少なくとも2種類以上の原子が結合してできている電解質をアルコールやアセトンなどの溶媒中で磁場をかけるとともに、該溶媒を攪拌しながら溶解する液体フラックスの製造方法を発明した。特開2010−100441号広報「液体フラックスの製造方法と製造装置及び液体フラックス」で、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、B、C、N、O、Si、P、S、Znなどの原子の内、少なくとも2種類以上の原子が結合してできている電解質をアルコールなどの溶媒を入れた容器中で、磁場をかけるとともに該溶媒を回転しながら溶解する液体フラックスの製造方法において、溶媒中に電極を挿入し電圧を付加するとともにパルス電圧を付加する液体フラックス製造方法を発明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献01】特開平8−112678号広報
【特許文献02】特開平5−253732号広報
【特許文献03】特開2009−090368号広報「ガス切断用気化フラックス」
【特許文献04】特開2009−233741号広報「液体フラックス気化装置」
【特許文献05】特開2009−297782号広報「液体フラックスの製造方法及びその装置」
【特許文献06】特開2010−100441号広報「液体フラックスの製造方法と製造装置及び液体フラックス」
【特許文献07】特開2011−088180号広報「溶接用フラックスと溶接方法」
【特許文献08】特開2011−098367号広報「溶接肉盛り用フラックスと溶接肉盛法」
【特許文献09】特願2010−200494号広報「蝋付け用フラックス及び蝋付け法」
【特許文献10】特願2010−206271号広報「フィンチューブの製造方法」
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献01】チューブフォーミング(第11回配布)、日本塑性学会編、コロナ社
【非特許文献02】ロール成形(第1回配布)、日本塑性学会編、コロナ社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題を次に示す。(1)液体フラックスや気化フラックスで溶接付き合わせ面を完全にシールドして溶接部のベネトレータの生成や窒化を抑制する。(2)フラックス機能で溶接付き合わせ部の溶融金属の表面張力低減、清浄化、酸化防止を図り、接合部の拡散接合を促進し、接合強度を向上させる。(3)鋼管内面の溶接ビードを確実に除去する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、鋼板を管状に成形加工しつつ、前記鋼板の突き合わせ面を連続して溶接し鋼管を形成し、該鋼管の内側には切削バイトが配設され前記鋼管の内側溶接ビードを切削可能にしている電縫鋼管の製造方法において、液体フラックスを気化器に充填し、該気化器にイナートガスを吹き込んで前記液体フラックスを気化せしめて生成した気化フラックスを前記突き合わせ面に噴射する噴射ノズルを配設し、もしくは、前記液体フラックスを前記突き合わせ面に塗布する塗布器を配設し、もしくは、前記噴射ノズルと前記塗布器を同時に配設し、前記付き合わせ面に気化フラックスや液体フラックスを塗布して溶接する電縫鋼管製造方法である。
【0015】
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、前記噴射ノズルは、前記鋼管の軸方向に平行に前記鋼管の内側もしくは外側に配設され前記突き合わせ面に対向する開口を有する筒形状であり、前記噴射ノズルと対向する鋼管の反対側には、前記噴射ノズルから噴射された前記気化フラックスを遮蔽する遮蔽カバーを配設した電縫鋼管製造方法である。
【0016】
第3の解決手段は特許請求項3に示すように、前記切削バイトは前記溶接ビードの進行方向に少なくとも2基以上配設し、かつ前記切削バイトの取り付け位置は前記溶接ビードに対して、下流側切削バイトを上流側切削バイトよりも近接して配設している電縫鋼管製造方法である。
【0017】
第4の解決手段は特許請求項4に示すように、前記鋼板を管状に成形加工しつつ、前記鋼板の前記突き合わせ面を連続して溶接し前記鋼管を形成し、該鋼管の内側には前記切削バイトが配設され前記鋼管の内側溶接ビードを切削可能にしている前記電縫鋼管の製造方法において、前記気化フラックスの前記噴射ノズルを配設し、もしくは、前記液体フラックスの前記塗布器を配設し、もしくは、前記噴射ノズルと前記塗布器を同時に配設した電縫鋼管製造装置である。
【0018】
第5の解決手段は特許請求項5に示すように、 請求項1又は請求項2又は請求項3記載の電縫鋼管製造法及び請求項4記載の電縫鋼管製造装置によって製造したことを特徴とする電縫鋼管である。
【発明の効果】
【0019】
第1の手段による効果は以下である。(1)塗布した液体フラックスや噴射した気化フラックスの成分がアルコールなどの溶媒と一緒に蒸発し、溶接直前の加熱された突き合わせ面にフラックス結晶としてガラス状に固く張り付くので、常温から溶融直前の最大1600℃までの広範囲の温度領域において突き合わせ面の酸化を防止できる。(2)溶接部の溶融金属の表面張力を低減し流動性向上、清浄化作用、酸化防止作用により、ベネトレータのない溶接強度の高い接合ができる。
【0020】
第2の手段による効果は以下である。(1)噴射ノズルは筒形状になっており突き合わせ面に沿って配設されているので溶接部そのもの及び溶接直前の部分まで気化フラックスでシールできるのでシール効果が大きい。(2)遮蔽カバーにより気化フラックスの飛散を低減しシール効果を高めることができる。
【0021】
第3の手段による効果は以下である。(1)切削バイトを複数設けているので溶接ビードの切削残がなくなり手入れが不要となる。(2)切削バイトの寿命が延びる。(3)切削バイトを複数かつ溶接ビードに対して高さを違えて配設することで切削屑が短くなり鋼管内部から除去しやすくなる。
【0022】
第4の手段による効果は、付き合わせ面に液体フラックスや気化フラックスを塗布できるので溶接強度の高い電縫鋼管を製造できる電縫鋼管製造装置を提供できることである。
【0023】
第5の手段による効果は、溶接部の溶融金属の表面張力を低減し流動性向上、清浄化作用、酸化防止作用により、ベネトレータのない溶接強度の高い電縫鋼管を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】は電縫鋼管製造装置の平面図の部分断面図である。
【図2】は電縫鋼管製造装置の横断面図である。
【図3】は噴射ノズルの断面図である。
【図4】は切削バイトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を図1、図2、図3、図4に基づいて説明する。
【0026】
第1の解決手段を特許請求項1及び図1、図2、図3、図4に基づいて説明する。鋼板11を管状に成形加工しつつ、前記鋼板11の突き合わせ面11aを連続して溶接し鋼管10を形成し、該鋼管10の内側には切削バイト60が配設され前記鋼管10の内側溶接ビード10aを切削可能にしている電縫鋼管10の製造方法において、液体フラックス30を気化器41に充填し、該気化器41にイナートガスを吹き込んで前記液体フラックス30を気化せしめて生成した気化フラックスを前記突き合わせ面11aに噴射する噴射ノズル40を配設し、もしくは、前記液体フラックス30を前記突き合わせ面11aに塗布する塗布器50を配設し、もしくは、前記噴射ノズル40と前記塗布器50を同時に配設し、前記付き合わせ面11aに気化フラックスや液体フラックスを塗布して溶接する電縫鋼管10の製造方法である。
【0027】
電縫鋼管製造法は各種あるが、例えば、高周波電縫鋼管製造方法においては、高周波加熱装置12で鋼板の突合せ面11aを加熱しスクイズロール13で圧着して接合している。本発明はこのように鋼板11を管状に成形しつつ、突合せ面11aを高周波加熱装置12などの電気エネルギーで加熱し圧接接合する電縫鋼管10の製造方法に適用することができる。
【0028】
図1や図2に示すように、切削バイト60や噴射ノズル40や塗布器50は電縫鋼管10内側に搖動固定される搖動台車20に取り付けることができる。一般に搖動台車20は電縫鋼管10下部内面に転接する下ロール21と、電縫鋼管10上部内面に転接する上ロール22を備え、電縫鋼管10の軸方向に固定化される。
【0029】
噴射ノズル40は鋼管10の内側や外側に取り付け可能である。噴射ノズル40により突き付き合わせ面11aに気化フラックスを正確に噴射できるようにする。気化フラックスの噴射量は20〜40リットル/minが適切である。20リットル/min以下であるとフラックス機能や大気遮断機能が不足する。40リットル/minより多いとフラックス効果がサチュレートしてしまう。気化フラックスはネオジ磁石42などを配設して磁界をかけた気化装置41に充填した液体フラックス30に窒素やアルゴンなどのイナートガスを吹き込んで生成し、配管43にて噴射ノズル40に導いている。噴射ノズル40は搖動台車20に取り付けてもよいが搖動台車20がない場合は単独で設置してもよい。
【0030】
塗布器50はロール51の外周に溝50aを形成して液体フラックス30を溝50a内に貯留できるようにする。塗布器50よりも高い位置に配設したタンク52に液体フラックス30を充填し、液体フラックス30の塗布状況を観察しながら調整弁53で液体フラックス30の流量を調整する。液体フラックス30は配管54にて塗布器50に導いている。ロール51にフェルトなどの液体フラックス30を吸収しやすい素材を巻きつけて塗布してもよい。また、塗布器50は付き合わせ面11aに液体フラックス30を塗布できればよく、例えばノズル(図示せず)で吹き付けるような方法でも可能である。図1、図2のように塗布器50は搖動台車20に取り付けてもよいが、鋼板11のスリット直後に塗布することにより付き合わせ面11aを大気から遮断できるので、付き合わせ面11aの酸化を防止する効果がある。塗布器50は付き合わせ面11aにあらかじめフラックス膜を形成して加熱時の酸化防止を図る意味から噴射ノズル40よりも前方に取り付けるのがよい。
【0031】
気化フラックスの噴射ノズル40と液体フラックス30の塗布器50は単独に配設してもフラックス機能を発揮できるが、両方を併設することにより相乗効果が生まれる。気化フラックスを噴射ノズル40から噴射する場合、気化フラックスにはシールドガスが含まれているので溶接部分を大気から遮断できる効果がある。また、液体フラックス30を塗布器50により塗布すると突き合わせ面11aに濃度の高いフラックス成分を厚く塗布できるのでフラックスの機能を効果的に発揮できる。
【0032】
切削バイト60は図1、図2、図4に示すように付き合わせ面11aを加熱接合した際に鋼管10の内側に形成されるビード10a(溶接の盛り上がり)を切削するために配設される。切削バイト60は搖動台車20に取り付けるのがよい。
【0033】
液体フラックス30は、特開2009−297782号広報「液体フラックスの製造方法及びその装置」、特開2010−100441号広報「液体フラックスの製造方法と製造装置及び液体フラックス」、特開2011−088180号広報「溶接用フラックスと溶接方法」、特開2011−098367号広報「溶接肉盛り用フラックスと溶接肉盛法」などの特許に開示している方法により製造した。気化フラックスは、特開2009−090368号広報「ガス切断用気化フラックス」、特開2009−233741号広報「液体フラックス気化装置」などに開示している気化装置70を使用して生成した。液体フラックス30は、アルコールやアセトンを溶媒として電解質化合物(無機化合物)を強磁場中で撹拌し溶解することにより生成している。無機化合物の原子はまず分子状になっているため特定の強さの磁場中で回転することでアルコールの起電力が流れることでプラスイオンとマイナスイオンにイオン化する。一種のメッキの逆で分子は原子となる。原子に連続して磁場よりエネルギーを印加されるため原子は励起状態となる。各原子間の軌道は安定しようとしてプラス(+)になったりマイナス(−)になったりして(2)、(8)、(8)の電子軌道で安定する。溶解を進めるには安定した原子の電子軌道をさらに高いエネルギー軌道に移動(遷移)させる必要がある。高温高圧にして化合物を溶解して液体フラックス30を生成する方法もあるが、高温高圧で溶解した液体フラックス30の化合物は、一旦溶解しても通常の温度、圧力に戻るとその溶液の最大溶解度以上に溶融している化合物は再結晶化して析出してしまう。本発明で使用する液体フラックス30は常温常圧で溶解しているため最大溶解度以上の濃度でも再結晶は起こらない。例えば、市販されているホウ酸(H3BO3)水は25℃で5.7%濃度であるが、特開2009−297782号広報「液体フラックスの製造方法及びその装置」や特開2010−100441号広報「液体フラックスの製造方法と製造装置及び液体フラックス」による液体フラックス製造装置により生成すると35%濃度を生成できる。
【0034】
気化フラックスは気化装置41に充填した液体フラックス30に窒素やアルゴンなどのイナートガスを吹き込んでバブリングし、液体フラックス30を気化させることにより生成する。従って気化フラックスは液体フラックス30の溶媒であるアルコールや電解質の元素やイナートガスが混合したものである。気化装置41はネオジ磁石42を配設した容器であり、磁界中で液体フラックス30をバグリングすることにより気化した気化フラックスを帯電させて配管43や噴射ノズル40に再結晶しないようにしたものである。
【0035】
従来、電縫鋼管10接合工程では付き合わせ面11aにイナートガスである窒素ガスやアルゴンガスなどを100〜200リットル/minの範囲で吹き付けて大気を遮断して溶接しているが、完全に大気を遮断できないのでベネトレータが残存し品質低下を招いていた。また、イナートガスに窒素を使用している場合は溶接部の溶融金属に窒素が侵入し溶融金属表面を窒素リッチにして硬化させてしまう問題があった。本発明では、窒素やアルゴンガスなどを従来の吹き付け量の1/4〜1/5即ち20〜40リットル/min程度を気化装置41に充填した液体フラックス30に吹き込んで気化フラックスとして噴射ノズル40にて溶接部に噴射する。噴射ノズル40は筒状体で円柱、三角柱、四角柱などいろいろな形態をとることが可能であり、鋼板端部の突き合わせ面11aに的確に気化フラックスを噴射できればよい。噴射ノズルには複数の貫通孔40aやスリット(図示せず)などを設ける。気化フラックスは吹き込んだ窒素やアルゴンなどのイナートガスによりアルコールなどの溶媒や液体フラックス30の成分が蒸発したものである。従って気化フラックスはイナートガス、アルコールなどの溶媒、液体フラックス中の溶解成分の混合体となっている。この気化フラックスをスクイズロール13で加圧している溶接直前の突き合わせ面11aに噴射ノズル40から噴射することで、加熱された突き合わせ面11aにガラス状のフラックス膜として張り付き付き最大1600℃の温度領域まで突き合わせ面11aが酸化されるのを防ぐ。さらに溶接時は、突き合わせ面11aにガラス状に張り付いたフラックスが溶融金属の表面張力低減機能、清浄化機能、酸化防止機能を発現し電縫鋼管10の最大の溶接欠陥であるベネトレータの生成を低減する。液体フラックス30に入っているケイ素(Si)はMn/Siの比率をアップするため酸化防止とベネトレータの生成防止に効果がある。また、生成されたベネトレータは表面張力低減効果とスクイズロール13の圧下により溶接金属外に押し出されるので溶接部のベネトレータは減少し溶接強度が向上する。
【0036】
突き合わせ面11aに塗布器50により液体フラックス30を塗布することで、突き合わせ面11aに液体フラックス30が膜状に張り付く。突き合わせ面11aに膜状に張り付いた液体フラックス30は溶接直前に加熱され際にガラス状膜となりさらに強固に突き合わせ面11aに張り付く。液体フラックス30塗布によるガラス状膜は気化フラックスによるガラス状膜よりも厚くしかも含有するフラックス成分も濃度が高いのでフラックス機能をより効果的に発揮できる。突き合わせ面11aの加熱から溶接までの液体フラックス30の役割は上述した気化フラックスと同様である。塗布器50にて突き合わせ面11aに液体フラックス30を塗布する方法は各種あるが適正な量を確実に塗布できればよく構造や方法はいずれでもよい。
【0037】
SUS系電縫鋼管10は規定の鋼管径に合わせて幅広の圧延材11をスリッター(図示せず)にて切断し即溶接するため突き合わせ面11aは酸化する暇もなく溶接されるが、切断両小口部は不動態膜が酸洗により作られているため電縫鋼管10のように圧接する場合はスクイズロール13の微調整を正確にしていても微振動などで突き合わせ面の上下ずれが発生する場合がある。この際、不動態膜の巻き込みはコールドウェルの原因となるため欠陥が発生する。そのため気化フラックスだけでは溶接部の酸化を防ぎきれない場合もあるので、あらかじめ突き合わせ面11aに液体フラックス30を塗布する方法が効果的である。鋼板11の両端を鋼管径に合わせて裁断した直後に液体フラックス30を塗布するのが最良である。電縫鋼管10として曲げる途中のV字形状を形成している状態で、突き合わせ面11aに塗布器50で液体フラックス30を塗布する。電縫鋼管10は加熱圧着であるが液体フラックス30もしくは気化フラックスが付き合わせ面11aに塗布されているため、付き合わせ面11aにはフラックス膜が形成され大気と遮断されているので無酸化状態下での液相拡散接合に近い形で圧着接合することができる。突き合わせ面11aと突き合わせ面11aの中央部にフラックスが挟まれるような状態になり、1500〜1600℃の高温下で急激に圧縮力をかけることになるのでHIP溶接に近い溶接が具現化できる。そのため液体フラックス30や気化フラックスを塗布することは一種の拡散接合である。
【0038】
液体フラックス30の元素成分は一部化合物化するが大部分は元素として単独溶解しているため常温から1800℃までの各温度領域での酸化防止をする。例えば、ケイフッ化カリウム(K2SiF6)はまずKFとSiF4に分解する。K2SiF6→KF+SiF4。さらにSiF4はSiO2とF4に分解する。SiF4→SiO2+F4。K2SiF6は常温から1800℃領域までフラックスとして作用することができる。突き合わせ面11aに塗布された液体フラックス30や噴射された気化フラックスはフラックス膜として突き合わせ面11aに付着しているが、ホウ素は大気中の酸素と結び付き酸化ホウ素(B2O3)となり溶接直前の熱で突き合わせ面にガラス状に強力に張り付き、スクイズロール13で強力に圧着を受けた際に上下方向に押し出されながら溶融金属の無酸化状態を維持する。そのためベネトレータはほとんど出ない。
【0039】
本発明の液体フラックス30や気化フラックスは鋼材の溶接はもちろんガス溶断にも応用可能であるが、溶接も溶断も溶断部や溶接部の酸化反応をいかに抑制するかにかかっている。従来一般的に使用されている液体状のフラックス30としては3%のホウ酸水があるが耐熱温度範囲が180〜800℃のため800〜1600±50℃領域における溶接部の酸化防止はできていなかった。本発明で使用する液体フラックス30は1600℃付近の高温域においてもフラックス機能を発揮できるように電解質化合物をアルコールやアセトンに溶解していることから、鋼管10の溶接温度領域で溶接部の酸化防止が可能である。以下に液体フラックス30の電解質化合物の耐熱温度の例を示す。ホウ砂(Na2B4O):741〜1575℃、フッ化カリウム(KF):860〜1505℃、フッ化ナトリウム(NaF):995〜1705℃、ホウ酸(H3BO3):180〜800℃、ケイフッ化カリウム(K2SiF6):750℃、四フッ化ケイ素(SiF4):1800℃である。即ちこのように高温で機能を発揮できる電解質化合物を溶解した液体フラックス30を溶接面に塗布したり、気化フラックスとして吹き付けたりすることで常温から溶接温度までの幅広い温度領域でフラックス機能を発揮させることができる。そのためフラックスが溶接部の表面張力低減、清浄化、酸化防止機能を発現するのでベネトレータの低減が可能となる。
【0040】
本発明の電縫鋼管10用の液体フラックス30や気化フラックスは最大の特長としてフラックスとして必要なホウ素、フッ素、カリウム、ナトリウムなどの複数の元素を含有し、とりわけフッ化物を使いながらPH7の中性であるということである。従来液体状のフラックスとして使用されている液体ホウ酸(H3BO3)はフラックスとしての元素はホウ素のみであり、濃度も約3%濃度と薄くしかもPH5の弱酸であり腐食性があり溶接後は洗浄などの手間が必要であった。また、液体ホウ酸の耐熱温度は800℃であり高温領域でのフラックス機能は発揮できなかった。フラックスとして表面張力低減、清浄作用、酸化防止作用を発揮するにはフッ素のようなハロゲンが必要である。一般にハロゲンが入ると酸性の化合物を作るためPH7の液体フラックスにするために、ケイフッ化ナトリウム(Na2SiF6)やケイフッ化カリウム(K2SiF6)をアルカリ調整剤として用いている。また、かつこれらの化合物をいれることでSiリッチとなり、Mn/SiのSi消耗を防ぐため溶接部の機械的強度保持につながっている。従来の窒素ガス(100〜200リットル/min)だけのシールドでは溶接部の窒化と強冷却のため接合部の硬度アップにはなるものの脆化に繋がる問題があった。
【0041】
鋼管素材11を化学成分により分類すると炭素量の0.5%程度以下の普通鋼鋼管、炭素鋼にCr、Moを添加して強度、靱性を強化した合金鋼鋼管、Cr、Niを添加して耐食性を強化したステンレス鋼鋼管に種別されるが液体フラックス30や気化フラックスは含有成分の配合を変えるだけで全ての鋼種に対して対応可能である。即ち鋼種に応じてフラックス機能を効果的に発揮できる成分設計が可能である。しかも液体フラックス30はPH7の中性なので場合によっては鋼管10内の洗浄の手間を省くことが可能である。例として、一般構造用炭素鋼鋼管(JIS G 3444)の溶接用として生成した液体フラックス30の成分を示す。電解質化合物として、ホウ砂(Na2B4O7)、ホウ酸(H3BO3)、フッ化カリウム(KBF4)、酸性フッ化カリウム(KHF4)をメタノール(CH3OH)溶媒中で20%濃度、中性(PH7)に作ったものである。含有元素割合(合計100%)は、Na:8.375%、K:5.408%、B:17.200%、H:2.517%、O:59.233%、F:7.267%である。このような元素割合で生成した液体フラックス30は常温から1800℃までの広い温度範囲でフラックス機能を果たすことができるので、この液体フラックス30を突き合わせ面11aに塗布したり、イナートガスで気化せしめて気化フラックスとして溶接面に噴射したりすることで溶接部のベネトレータを低減できる。
【0042】
SUS電縫鋼管10溶接用として突き合わせ面11aに噴射する気化フラックスは、例えば、液体フラックス30としてホウ酸(H3BO3)、ホウ砂(Na2B4O7)、酸性フッ化カリウム(KHF4)、ホウフッ化カリウム(KBF4)をアルコールの溶媒に磁界をかけながら溶解したものである。PH7、濃度20%程度としている。それぞれの化合物のフラックスとして機能する温度領域は、ホウ酸:180〜800℃、ホウ砂:741〜1575℃、酸性フッ化カリウム:225〜1500℃、ホウフッ化カリウム:530〜1500℃である。含有元素割合は次のようになる。Na:4.423%、K:8.948%、B:12.095%、H:4.096%、O:58.728%、F:11.710%である。従って、SUS鋼管用の気化フラックスは常温から最大1575℃の温度範囲でフラックス機能を発揮する。
【0043】
SUS用の突き合わせ面に塗布する液体フラックス30)は、ホウ酸、ホウ砂、フッ化カリウムをアルコール溶媒に磁界をかけながら溶解したものである。液体フラックス30の含有元素割合は次のようになる。Na:6.031%、K:11.216%、B:11.501%、H:4.241%、O:61.561%、F:5.450%である。従って、SUS鋼管用の溶接液体フラック30も常温から1575℃の温度範囲でフラックス機能を発揮する。液体フラックス30と気化フラックスを組み合わせて使用することによりSUSの不動態膜の巻き込みを防止することができる。塗布用の液体フラックス30と気化フラックス用の液体フラックス30はもちろんお互い両方に使用可能である。
【0044】
手棒溶接や半自動アーク溶接などにおいても、フラックスの塩基度(CaO/SiO2)を上げることで強度や耐力アップに繋がるがいずれにしてもフラックスの機能は溶融金属の大気遮断による酸化防止や表面張力低減や清浄化や脱酸機能である。液体フラックス30や気化フラックス中にはNa、Kなどのアルカリ金属も入っているため表面張力低減、清浄化、脱酸、酸化防止の役目をすることができる。フラックス中の基本元素はホウ素(B)であるが、ホウ素は酸化ホウ素(B2O3)となって常温から1500℃の幅広い温度領域において突き合わせ面11aに張り付き、特に溶接直前の加熱による高温領域ではガラス状膜となって突き合わせ面を大気から遮断し酸化を防止する。
【0045】
第2の解決手段を特許請求項2及び図1、図2、図3に基づいて説明する。前記噴射ノズル40は、前記鋼管10の軸方向に平行に前記鋼管10の内側もしくは外側に配設され前記突き合わせ面11aに対向する開口40aを有する筒形状であり、前記噴射ノズル40と対向する鋼管10の反対側には、前記噴射ノズル40から噴射された前記気化フラックスを遮蔽する遮蔽カバー41を配設した電縫鋼管10の製造方法である。
【0046】
噴射ノズル40は、突き合わせ面11a同士が構成するV字形状の開口に対して、溶接部から上流側200〜300mm程度の範囲に噴射する。噴射量は20〜40リットル/min程度である。噴射ノズル40を鋼管10内側に配設した場合は、遮蔽カバー44は鋼管10外側に設ける。噴射ノズル40を鋼管10外側に配設した場合は、遮蔽カバー44は鋼管内側に設けることになる。噴射ノズル40には付き合わせ面に向けた開口40aを設けている。開口40aは複数の貫通孔やスリットがよく気化フラックスが付き合わせ面11aにきちんと当たるようにする。噴射ノズル40は筒形状で、円柱、楕円柱、三角柱、四角柱などがあるが所定の突き合わせ面11aに均等に気化フラックスを噴射できればよい。
【0047】
第3の解決手段を特許請求項3及び図1、図2、図4に基づいて説明する。前記切削バイト60は前記溶接ビード10aの進行方向に少なくとも2基以上配設し、かつ前記切削バイト60の取り付け位置は前記溶接ビード10aに対して、下流側切削バイト60を上流側切削バイト60よりも近接して配設している電縫鋼管10の製造装置である。
【0048】
切削バイトは搖動台車に取り付けるのがよい。搖動台車に取り付け用穴20aを設け、切削バイト60を挿入方式にして簡単に着脱できるようにする。図4に示すように切削バイト60を3基(60a、60b、60c)取り付けた場合の取り付け高さは鋼管10の進行方向に対して、後方になるにつれて徐々に鋼管10に近接するように取り付ける。切削バイト60a、60b、60cのビード切削量はそれぞれa1、a2、a3である。切削バイト60bのビード10aの切削量を3基の切削バイト60に分担させることで切削バイト60の刃の摩耗を低減させ、ビード10aがきれいに除去できる。また、切削バイト60の刃を鋼管10の進行方向に対して最大15°程度傾けることによりビード10aの切削性が向上するとともに切削屑が連続的につながることがないので切削屑の処理が容易になる。
【0049】
第4の解決手段は特許請求項4に示すように、前記鋼板11を管状に成形加工しつつ、前記鋼板11の前記突き合わせ面11aを連続して溶接し前記鋼管20を形成し、該鋼管10の内側には前記切削バイト60が配設され前記鋼管10の内側溶接ビード10aを切削可能にしている前記電縫鋼管10の製造方法において、前記気化フラックスの前記噴射ノズル40を配設し、もしくは、前記液体フラックス30の前記塗布器50を配設し、もしくは、前記噴射ノズル40と前記塗布器50を同時に配設した電縫鋼管製造装置70である。
【0050】
気化フラックスを噴射する噴射ノズル40や液体フラックス30を塗布する塗布器50を配設することにより、付き合わせ面11aに気化フラックスや液体フラックス30を塗布することができるので、ベネトレータが減少し付き合わせ面の接合力を高めることができる。
【0051】
第5の解決手段は特許請求項5に示すように、請求項1又は請求項2又は請求項3記載の電縫鋼管製造法及び請求項4記載の電縫鋼管製造装置70によって製造した電縫鋼管10である。
【0052】
請求項1又は請求項2又は請求項3の方法で製造及び請求項4の電縫鋼管製造装置で製造した電縫鋼管10は、液体フラックス30や気化フラックスのフラックス機能により溶接部に生じるベネトレータが減少し、拡散接合に近い溶接接合となるので接合強度が向上する。
【符号の説明】
【0053】
10:電縫鋼管(鋼管)
10a:溶接ビード
11:鋼板
11a:付き合わせ面
12:高周波加熱装置
13:スクイズロール
20:搖動台車
21:下ロール
22:上ロール
30:液体フラックス
40:噴射ノズル
40a:開口
41:気化器
42:ネオジ磁石
43:配管
50:塗布器
50a:溝
51:ロール
52:タンク
53:調整弁
54:配管
60:切削バイト
60a:切削バイト
60b:切削バイト
60c:切削バイト
70:電縫鋼管製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を管状に成形加工しつつ、前記鋼板の突き合わせ面を連続して溶接し鋼管を形成し、該鋼管の内側には切削バイトが配設され前記鋼管の内側溶接ビードを切削可能にしている電縫鋼管の製造方法において、液体フラックスを気化器に充填し、該気化器にイナートガスを吹き込んで前記液体フラックスを気化せしめて生成した気化フラックスを前記突き合わせ面に噴射する噴射ノズルを配設し、もしくは、前記液体フラックスを前記突き合わせ面に塗布する塗布器を配設し、もしくは、前記噴射ノズルと前記塗布器を同時に配設し、前記付き合わせ面に気化フラックスや液体フラックスを塗布して溶接することを特徴とする電縫鋼管製造方法。
【請求項2】
前記噴射ノズルは、前記鋼管の軸方向に平行に前記鋼管の内側もしくは外側に配設され前記突き合わせ面に対向する開口を有する筒形状であり、前記噴射ノズルと対向する鋼管の反対側には、前記噴射ノズルから噴射された前記気化フラックスを遮蔽する遮蔽カバーを配設したことを特徴とする請求項1記載の電縫鋼管製造方法。
【請求項3】
前記切削バイトは前記溶接ビードの進行方向に少なくとも2基以上配設し、かつ前記切削バイトの取り付け位置は前記溶接ビードに対して、下流側切削バイトを上流側切削バイトよりも近接して配設していることを特徴とする請求項1記載の電縫鋼管製造方法。
【請求項4】
前記鋼板を管状に成形加工しつつ、前記鋼板の前記突き合わせ面を連続して溶接し前記鋼管を形成し、該鋼管の内側には前記切削バイトが配設され前記鋼管の内側溶接ビードを切削可能にしている前記電縫鋼管の製造方法において、前記気化フラックスの前記噴射ノズルを配設し、もしくは、前記液体フラックスの前記塗布器を配設し、もしくは、前記噴射ノズルと前記塗布器を同時に配設したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の電縫鋼管製造装置。
【請求項5】
前記付き合わせ面に前記気化フラックスや前記液体フラックスを塗布して接合したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の前記電縫鋼管製造方法及び請求項4記載の前記電縫鋼管製造装置で製造したことを特徴とする電縫鋼管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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