説明

電荷輸送材料

【課題】電荷輸送能に優れた側鎖にフルオレン残基を有する新しいタイプのポリマーを利用する電荷輸送材料を提供する。
【解決手段】式:


(式中、RaおよびRbは芳香環Arに結合している電子供与性基;AおよびBは電気伝導性を発現し得る構造単位)で示される構造単位を30〜100モル%有するポリマーを含む電荷輸送材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側鎖にフルオレン残基を有し電荷(ホール)輸送能を有するポリマーを含む電荷輸送材料、および新規な電荷輸送能を有するポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
側鎖にフルオレン残基を有するポリマーの中にはスタッキング螺旋構造をもち、そのフルオレン残基のπ共役電子の特性によって電荷輸送能を有するものがあることは知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1のポリマーはポリエステルであり、ポリエステルとすることにより、安定性が良好な電荷移動錯体を形成するとされている。
【0004】
また、側鎖にフルオレン残基を有するポリマーとしては、ジベンゾフルベン骨格をもつ熱分解性のポリマー(特許文献2)、HPLC用光学活性固定相や偏光吸収・発光材料として有用な耐溶剤性に優れるポリマー(特許文献3)が知られている。
【0005】
しかし特許文献2は光学活性にのみ焦点が絞られ、特許文献3では熱分解性にのみ焦点が絞られており、電気的特性については全く示唆すらない。
【0006】
【特許文献1】国際公開第03/095519号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/102039号パンフレット
【特許文献3】国際公開第03/095523号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電荷輸送能に優れた側鎖にフルオレン残基を有する新しいタイプのポリマーを利用する電荷輸送材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、式(1):
−(M)−(N)−
[式中、構造単位Mは、式(M):
【0009】
【化1】

(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、いずれも水素原子または有機基;Arは芳香環;RaおよびRbは同じかまたは異なり、いずれも芳香環Arに結合している電子供与性基;AおよびBは同じかまたは異なり、いずれも電気伝導性を発現し得る構造単位;Xは単結合、−(CH2p−(pは正の整数)、−CH=CH−、2価の芳香族基、ヘテロ原子またはヘテロ原子を含む有機基;mは0〜1000の整数;nは0〜1000の整数;ただし、m+nは1以上)で示される構造単位、
構造単位Nは構造単位Mを与える単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位、
かつ構造単位Mを30〜100モル%および構造単位Nを0〜70モル%含む]で示される電荷輸送能を有するポリマーを含む電荷輸送材料に関する。
【0010】
前記−(A)m−および−(B)n−の少なくとも1つが、電荷輸送能を有する部位、なかでもオリゴフラン基、ポリフラン基、オリゴチオフェン基、ポリチオフェン基、オリゴピロール基、ポリピロール基、オリゴフルオレン基、ポリフルオレン基およびそれらの置換誘導体よりなる群から選択された芳香族π共役系化合物残基であることが、導電率が高い点から好ましい。
【0011】
前記電子供与性基RaおよびRbの少なくとも1つが、水素原子、アルキル基、−OH(もしくはその塩)、メルカプト基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基であることが、製造上の簡便性の点から好ましい。
【0012】
前記構造単位Mが、式(M1):
【0013】
【化2】

(式中、R1、R2、Ra、Rb、A、B、mおよびnは式(M)と同じ;qおよびrは同じかまたは異なり、いずれも1〜4の整数)で示されるフルオレン構造単位M1であるとき、製造上の簡便性の点で好ましい。
【0014】
なお、式(2):
−(M1)−(N)−
[式中、構造単位M1は、式(M1):
【0015】
【化3】

(式中、R1、R2、Ra、Rb、A、B、mおよびnは式(M)と同じ;qおよびrは同じかまたは異なり、いずれも1〜4の整数)で示されるフルオレン構造単位M1;
構造単位Nは構造単位M1を与える単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位、
かつ構造単位M1を30〜100モル%および構造単位Nを0〜70モル%含む]で示される電荷輸送能を有するポリマーは、文献未記載の新規ポリマーである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電荷(ホール)輸送能が向上し、かつ溶媒溶解性などが改善された電荷輸送材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の電荷輸送材料に用いるポリマーは、式(1):
−(M)−(N)− (1)
[式中、構造単位Mは、式(M):
【0018】
【化4】

(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、いずれも水素原子または有機基;Arは芳香環;RaおよびRbは同じかまたは異なり、いずれも芳香環Arに結合している電子供与性基;AおよびBは同じかまたは異なり、いずれも電気伝導性を発現し得る構造単位;Xは単結合、−(CH2p−(pは正の整数)、−CH=CH−、2価の芳香族基、ヘテロ原子またはヘテロ原子を含む有機基;mは0〜1000の整数;nは0〜1000の整数;ただし、m+nは1以上)で示される構造単位、
構造単位Nは構造単位Mを与える単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位、
かつ構造単位Mを30〜100モル%および構造単位Nを0〜70モル%含む]で示される電荷輸送能を有するポリマーである。
【0019】
構造単位Mの式(M)において、R1およびR2は同じかまたは異なり、いずれも水素原子または有機基である。
【0020】
有機基としては、たとえばアルキル基、芳香族基、シアノ基、エステル基などが、製造上の簡便性、溶剤溶解性向上の点から好ましい。特にアルキル基が溶剤溶解性を向上させる点で好ましい。アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等の炭素数1〜30のものが好ましい。好ましくは炭素数3以上のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数6以上のアルキル基である。
【0021】
また、Arは芳香環であり、炭素原子のみから構成された芳香環(炭素系芳香環)でも、環の構成原子としてヘテロ原子を含んだ芳香環(異項環系芳香環)でもよい。
【0022】
好ましい炭素系芳香環としては、4〜14個の炭素原子からなる芳香環が例示でき、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、フェナントレン環が上げられる。特に化合物の安定性、合成が容易な点に優れることから6員環が好ましい。2つのArは異なっていてもよいが、同じものの方が合成が容易な点から好ましい。
【0023】
また異項環系芳香環としては、たとえばピリジン環、ビピリジン環、フェナントロリン環、キノリン環、イソキノリン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環などが例示できる。
【0024】
RaおよびRbは同じかまたは異なり、いずれも芳香環Arに結合している電子供与性基である。電子供与性基は、水素原子などの電子供与性原子であってもよく、その場合化合物の安定性、製造の容易性の点から水素原子が好ましい。
【0025】
またRaおよびRbは電子供与性の窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含む原子団または有機基Ra1およびRb1であってもよい。その場合、Ra1およびRb1はそれぞれ2個以上でもよく、その場合Ra1およびRb1の各々はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0026】
電子供与性基Ra1およびRb1の好ましいものとしては、−OH(もしくはその塩)、メルカプト基、アミノ基などの電子供与性原子団;アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基などの電子供与性有機基があげられ、製造が容易である点から、特にアルキル基、−OH(もしくはその塩)、メルカプト基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基が好ましい。
【0027】
アルキル基としては、製造が容易である点で、炭素数1〜20のものが好ましい。
【0028】
具体的には、たとえばメチル、エチル、n−オクチル、n−ドデシル等の直鎖アルキル基;i−プロピル、tert−ブチル、iso−デシルなどの分岐アルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシルなどの環状アルキル基などがあげられ、特に溶剤溶解性が良好なことから、炭素数1〜10の直鎖アルキル基、分岐アルキル基などが好ましい。
【0029】
−OHの塩としては、本発明において特に制限はないが、1価のカチオンであればよく、アルカリ金属塩が好ましく、より好ましくはナトリウム塩もしくはカリウム塩である。
【0030】
アルコキシ基としては、製造が容易である点で、炭素数1〜20のものが好ましい。
【0031】
具体的には、たとえばメトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ノルマルブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、ノルマルオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ノルマルデシルオキシ基、ノルマルドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−フェノキシエトキシ基、ネオペンチルオキシ基、2−(2,5−ジ−ターシャリーアミルフェノキシ)エトキシ基、2−ベンゾイルオキシエトキシ基、メトキシカルボニルメチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、ブトキシカルボニルエチルオキシ基、または2−イソプロピルオキシエチルオキシ基などがあげられ、特に溶剤溶解性が良好なことから、総炭素数1〜16のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、ノルマルオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基、ネオペンチルオキシ基がより好ましい。
【0032】
アリールオキシ基としては、置換基を有していても無置換でもよく製造が容易である点から、総炭素数6〜20のアリールオキシ基が好ましく、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、または2−クロロフェノキシ基が好ましい。
【0033】
この中でも、溶剤溶解性向上の点から総炭素数6〜8のアリールオキシ基が特に好ましく、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基が特に好ましい。
【0034】
ヘテロ環オキシ基としては、製造が容易である点から、ピリジルオキシ基、ピリミジルオキシ基、インドリルオキシ基、ベンゾチアゾリルオキシ基、ベンズイミダゾリルオキシ基、フリルオキシ基、チエニルオキシ基、ピラゾリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基などが好ましい。特に溶剤溶解性が良好なことからピリジルオキシ基、ピリミジルオキシ基が好ましい。
【0035】
アルキルチオ基としては製造が容易である点から、炭素数1〜18のものが好ましい。
【0036】
具体的には、たとえばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基、テトラデシルチオ基、オクタデシルチオ基などがあげられ、特に溶剤溶解性が良好なことから、炭素数1〜12のアルキルチオ基がよく、ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基が好ましい。
【0037】
アリールチオ基としては、製造が容易である点から、フェニルチオ基、トリルチオ基、ビフェニルチオ基、ナフチルチオ基、ベンジルチオ基、トリチルチオ基などが好ましい。特に溶剤溶解性が良好なことから、フェニルチオ基、トリルチオ基などが好ましい。
【0038】
ヘテロ環チオ基としては、製造が容易である点から、ピリジルチオ基、ピリミジルチオ基、インドリルチオ基、ベンゾチアゾリルチオ基、ベンズイミダゾリルチオ基、フリルチオ基、チエニルチオ基、ピラゾリルチオ基、イミダゾリルチオ基などが好ましい。特に溶剤溶解性が良好なことから、ピリジルチオ基、ピリミジルチオ基が好ましい。
【0039】
アルキルアミノ基としては、製造が容易である点から、炭素数1〜44のものが好ましい。
【0040】
具体的には、ジアルキルアミノ基、シクロアルキルアミノ基があげられ、ジアルキルアミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基またはジヘキシルアミノ基などのアルキル基の炭素数がそれぞれ独立して1〜22のものがよい。またシクロアルキルアミノ基としてはシクロプロピルメチルアミノ基、シクロペンチルメチルアミノ基、シクロヘキシルメチルアミノ基、シクロヘプチルメチルアミノ基などがあげられ、特に溶媒溶解性が良好なことから、アルキル基の炭素数がそれぞれ独立して1〜6であるジアルキルアミノ基が好ましい。
【0041】
アリールアミノ基としては、製造が容易な点から、炭素数1〜10のモノアリールアミノ基、2個の水素原子がアリール基で置換されてなるアミノ基を含むジアリールアミノ基などが好ましい。
【0042】
具体的には、たとえばモノアリールアミノ基としてはアニリノ、N−フェニル−N−エチルアミノ、1−インドリニルなどがあげられ、ジアリールアミノ基としては、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(ビフェニリル)アミノ基、N,N−ジ(テルフェニリル)アミノ基、N−フェニルN−ビフェニリルアミノ基、N−フェニルN−テルフェニリルアミノ基、N−ビフェニリルN−テルフェニリルアミノ基、N,N−ジナフチルアミノ基、N−フェニルN−ナフチルアミノ基、N−ビフェニリルN−ナフチルアミノ基、N−テルフェニリルN−ナフチルアミノ基、N−メチルフェニル−N−ビフェニリルアミノ基、N−メチルフェニル−N−ナフチルアミノ基、N−メチルフェニル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジ(メチルフェニル)アミノ基などがあげられ、特に溶剤溶解性が良好なことから、アニリノ、N−フェニル−N−エチルアミノ、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(ビフェニリル)アミノ基、N,N−ジ(テルフェニリル)アミノ基、N−フェニルN−ビフェニリルアミノ基が好ましい。
【0043】
またヘテロ環アミノ基としては、製造が容易である点から、ピリジルアミノ基、ベンゾトリアゾール−5−イルアミノ基などが好ましい。
【0044】
電子供与性基Ra1およびRb1はいずれか一方でもよいが、製造が容易である点から、Ra1およびRb1を共に有することが好ましい。電子供与性基Ra1およびRb1を置換させる場合の個数としては、芳香環Arの構成炭素原子数や電子供与性基の種類、電子供与性基の炭素数などによって異なるが、芳香環Arに結合している水素原子の1〜8個、さらには1〜6個とすることが、製造が容易な点から好ましい。たとえば芳香環Arが炭素原子のみからなる6員環の場合、RaおよびRbはすべて水素原子であってもよい。また電子供与性基Ra1およびRb1を置換させる場合の合計個数は、1〜4個、さらには1〜2個とすることが、製造が容易である点から好ましい。
【0045】
本発明の特徴は、スタッキング螺旋構造のフルオレン残基におけるπ共役電子の特性(RaおよびRb)によって電荷輸送能の特性を向上させるだけでなく、−(A)m−および−(B)n−の少なくとも1つで電荷輸送能を付与することにもある。
【0046】
電荷輸送能を有する部位としては芳香族π共役系化合物残基が好ましく、なかでもオリゴフラン基、ポリフラン基、オリゴチオフェン基、ポリチオフェン基、オリゴピロール基、ポリピロール基、オリゴフルオレン基、ポリフルオレン基およびそれらの置換誘導体が好適に例示できる。
【0047】
芳香族π共役系化合物の置換誘導体としては、前記RaおよびRbで示した各種の基で置換されているものが好ましく例示できる。この場合、芳香環Arに置換しているRaまたはRbと芳香族π共役系化合物の置換基は同じでも異なっていてもよい。
【0048】
さらに、芳香族π共役系化合物残基において、それを構成する芳香族π共役系化合物は同じでも異なっていてもよい。
【0049】
オリゴまたはポリフラン基およびその置換誘導体としては、フラン環の3位、4位のいずれかまたはその両方が電子供与性基Ra1もしくはRb1で置換されていてもよいフラン環またはその誘導体の重合により形成されたポリマーもしくはオリゴマーであり、重合末端ではフラン環の5位もRa1もしくはRb1で置換されていてもよいオリゴマーまたはポリマーであってもよい。
【0050】
置換基としての電子供与性基Ra1およびRb1としては、前記したものが好ましい例と共に例示できる。
【0051】
オリゴまたはポリチオフェン基およびその置換誘導体としては、チオフェン環の3位、4位のいずれかまたはその両方が電子供与性基Ra1もしくはRb1で置換されていてもよいチオフェン環またはその誘導体の重合により形成されたポリマーもしくはオリゴマーであり、重合末端ではチオフェン環の5位もRa1もしくはRb1で置換されていてもよいオリゴマーまたはポリマーであってもよい。
【0052】
置換基としての電子供与性基Ra1およびRb1としては、前記したものが好ましい例と共に例示できる。
【0053】
オリゴまたはポリピロール基およびその置換誘導体としては、ピロール環の3位、4位のいずれかまたはその両方が電子供与性基Ra1もしくはRb1で置換されていてもよいピロール環またはその誘導体の重合により形成されたポリマーもしくはオリゴマーであり、重合末端ではピロール環の5位もRa1もしくはRb1で置換されていてもよいオリゴマーまたはポリマーであってもよい。
【0054】
置換基としての電子供与性基Ra1およびRb1としては、前記したものが好ましい例と共に例示できる。
【0055】
オリゴまたはポリフルオレン基およびその置換誘導体としては、フルオレン環の9位、9’位のいずれかまたはその両方が電子供与性基Ra1もしくはRb1で置換されていてもよいフルオレン環またはその誘導体の重合により形成されされたポリマーもしくはオリゴマーであり、重合末端ではフルオレン環の2位もしくは7位(それ以外は水素原子)もRa1もしくはRb1で置換されていてもよいオリゴマーまたはポリマーであってもよい。
【0056】
置換基としての電子供与性基Ra1およびRb1としては、前記したものが好ましい例と共に例示できる。
【0057】
mは0〜1000の整数である。好ましくは1〜600、特に1〜100が好ましい。nは0〜1000の整数である。好ましくは1〜600、特に1〜100が好ましい。mとnは同じでも異なっていてもよいが、m+nは1以上である。
【0058】
Xは単結合、−(CH2p−(pは正の整数、好ましくは1〜4)、−CH=CH−、2価の炭化水素系芳香族基、ヘテロ原子またはヘテロ原子を含む2価の有機基である。2価の炭化水素系芳香族基としては、たとえばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレンなどがあげられる。ヘテロ原子としては、O、S、N、Seなどがあげられ、ヘテロ原子を含む2価の有機基としては、たとえば−NR−(Rはアルキル基、アリール基、ヘテロ環)、−O−、−S-、−Se−などが例示できる。
【0059】
これらのうち、製造が容易である点から単結合、−O−、−S―が好ましい。
【0060】
式(M)で表される構造単位Mのうち、Arが炭素原子の6員環で、Xが単結合である式(M1):
【0061】
【化5】

(式中、R1、R2、Ra、Rb、A、B、mおよびnは式(M)と同じ;qおよびrは同じかまたは異なり、いずれも1〜4の整数)で示されるフルオレン構造単位M1であることが、製造が容易である点で好ましい。
【0062】
構造単位Mの具体例としては、つぎのものがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
式:
【化6】

などがあげられる。
【0064】
構造単位Nはエチレン性不飽和基含有単量体に由来する構造単位(ただし、構造単位Mは除く)であり、任意の単位である。
【0065】
具体的には、つぎの構造単位が例示できる。
(1)オレフィン単位
具体的には、たとえばエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ペンテン、1−テトラデセン、ノルボルネン、シクロペンテン、スチレンなどがあげられる。
(2)含フッ素オレフィン単位
具体的には、たとえばフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレンなどがあげられる。
(3)(メタ)アクリレート単位
具体的には、たとえばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、エトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルアクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、ヒドロキシプロピルアクリレートなどがあげられる。
(4)含フッ素(メタ)アクリレート単位
具体的には、たとえば一般式CH2=CRCOO(CH2n(CF2mX(XはHまたはF;nは0〜2の整数;mは1〜8の整数;RはH、CH3、FまたはCF3)などがあげられる。
【0066】
これらのうち、溶剤溶解性を向上させる点からはメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、CH2=CRCOO(CH2n(CF2mXなどが好ましい。
【0067】
式(1)で示されるポリマーは、構造単位M単独(100モル%)で構成されていてもよい。構造単位Nと共重合体を構成する場合は、良好な電子輸送能を獲得するためには構造単位Mは30モル%以上必要である。好ましい構造単位Mの割合は40モル%以上、さらには70モル%以上、特に90モル%以上である。
【0068】
なお、式(2):
−(M1)−(N)− (2)
(式中、構造単位M1およびNは前記式(M1)と同じ;構造単位M1を30〜100モル%および構造単位Nを0〜70モル%含む)で示されるポリマーは、文献未記載の新規なポリマーである。
【0069】
式(1)および(2)で示されるポリマーは、たとえばつぎの方法で製造することができる。
【0070】
式(m):
【化7】

(式中、R1、Ar、Ra、Rb、A、B、X、mおよびnは式(M)と同じ)で示される単量体(m)を単独重合するか、単量体(m)と共重合可能な単量体(n)とを共重合することにより製造することができる。
【0071】
重合方法は、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法などが採用でき、重合条件はこれまで公知の条件から選択すればよい。
【0072】
また、Ra、Rb、A、Bを有していない単量体を(共)重合しておき、得られた(共)重合体にRa、Rb、A、Bを導入してもよい。
【0073】
単量体(m)は、ヨウ素または臭素化されたAr部位にRa、Rb、A、Bを反応により導入することによって製造することができる。
【0074】
式(1)および式(2)で示されるポリマーの数平均分子量としては、350〜100000であり、さらには700〜5000が好ましい。また、ガラス転移温度Tgとしては、50℃以上、好ましくは100℃以上である。Tgが低すぎると使用温度で構造変化が起こりやすくなる傾向にある。
【0075】
本発明の電荷輸送材料は、溶剤に溶解または分散させコーティング法、たとえばスピンコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、グラビアコート、インクジェットなどの公知の塗装方法が採用可能であり、なかでも薄膜を効率よく形成する方法として、スピンコート法、グラビアコート法などが好ましく、特にスピンコートが好ましく、これらの方法により基材や層に塗布することにより製造できる。
【0076】
本発明の電荷輸送材料は安定して電荷輸送(ホール)できるので、光学、電気光学または電子デバイスに利用することができ、例えば液晶ディスプレイ、光学膜、薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ用の有機電界効果トランジスタ(FETまたはOFET)、およびRFIDタグなどの集積回路デバイス、フラットパネルディスプレイにおける電子発光デバイス、および光起電およびセンサーデバイスに利用できる。
【実施例】
【0077】
つぎに本発明を実施例などに基づいて具体的に説明するが、本発明はかかる例のみに限定されるものではない。
【0078】
なお、本明細書で使用している特性値は、つぎの方法で測定したものである。
1H−NMR測定(500MHz))
機種名:JEOL ECP500(日本電子(株)製)
測定溶媒:重クロロホルム(濃度4.00×10-3M)
(SEC(GPC)測定(直鎖ポリスチレン換算))
機種名:(株)日立製作所製のHitachi L−7100(ポンプ)、L−7420UV 検出器(254nm)、L−7490 RI検出器
カラム名:(株)東ソー製のG6000HHrおよびG3000HHr
展開溶媒:THF
(吸収スペクトル測定)
機種名:JASCO V−550(日本分光(株)製)
溶媒:THF
(蛍光スペクトル測定)
機種名:JASCO FP−777(日本分光(株)製)
励起光:365nm
溶媒:THF
【0079】
合成例1[モノマー(BT−DBF)の合成]
【化8】

【0080】
(1)2−(2,2’−ビチオフェン−5−イル)−9−フルオレノン(2-(2,2’-bithiophen-5-yl)-9-fluorenone)の合成
フレームドライおよび窒素置換した200mlの3つ口フラスコに2,2’−ビチオフェン10.26g(61.8mmol)を入れた。ここに溶媒THF80ml、TMEDA9.33ml(61.8mmol)を入れ、氷浴で0℃まで冷やした)。次に1.57Mのn−BuLi/ヘキサン39.36ml(61.8mmol)を加え、室温に戻し2時間撹拌した(これを反応液1−1とする)。別途用意した300mlの還流管を備えた3つ口フラスコに、塩化亜鉛12.11g(74.16mmol)を入れ、真空にしてヒートガンであぶりながら乾燥した。窒素下に戻した後、THF50mlを加えた。その後、反応液1−1をゆっくり加えた。1時間還流撹拌し、室温まで冷ました(不均一橙色;これを反応液1−2とする)。フレームドライおよび窒素置換した500mlの3つ口フラスコに、2−ブロモフルオレノン(2-bromofluorenone)8.0g(10.9mmol)、Pd(PPh3446.2mg(0.040mmol)を入れた。ここにTHF0.5mlを入れ、室温で反応液1−2を加えた。12時間加熱還流後、反応を停止し、不溶部を吸引ろ過した。可溶部を飽和食塩水で洗浄後、溶媒を留去し、橙色粉末を得た。得られた粉末を水とメタノール、へキサンで洗浄した。クロロホルムでカラムクロマトグラフィーを行い、黄色の固体5.64g(収率53.0%)を得た。
【0081】
このものを1H−NMR分析し、2−(2,2’−ビチオフェン−5−イル)−9−フルオレノンであることを確認した。
1H-NMR (500 MHZ, CDCl3, ppm) δ7.90 (m, 2H), 7.82 (m, 2H), 7.63 (m,3H), 7.48 (d,1H), 7.42 (d, 1H), 7.38 (d, 1H), 7.33 (d, 1H), 7.12 (dd, 1H).
【0082】
(2)2−(2,2’−ビチオフェン−5−イル)−9−メチル−9−フルオレノール(2-(2,2’-bithiophen-5-yl)-9-methyl-9-fluorenol)の合成
フレームドライおよび窒素置換した2Lの3つ口フラスコに2−(2,2’−ビチオフェン−5−イル)−9−フルオレノンを6.30g(18.3mmol)入れた。再び真空にした後、窒素下に戻した。THF790mlを入れ、氷浴で0℃に冷やした。CH3MgBr30.5ml(91.5mmol)を入れ、0℃のまま4時間撹拌した。メタノール、1N−HCl水溶液を少しずつ加え、反応を停止した。ジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥し、黄色の粉末の精製前の残渣を得た。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、オレンジ色の固体6.4gを得た(収率99.7%)。
【0083】
このものを1H−NMR分析し、2−(2,2’−ビチオフェン−5−イル)−9−メチル−9−フルオレノールであることを確認した。
1H-NMR (500 MHZ, CDCl3, ppm) δ7.88 (s, 1H), 7.75 (m, 2H), 7.69 (dd, 1H), 7.59 (d, 1H), 7.45 (dd, 1H), 7.34 (m, 4H), 7.12 (m, 1H).
【0084】
(3)2−(2,2’−ビチオフェン−5−イル)ジベンゾフルベン(2-(2,2-bithiophen-5-yl)dibenzofluvene)(BT−DBF)の合成
100mlの2つ口フラスコに2−(2,2’−ビチオフェン−5−イル)−9−メチル−9−フルオレノール1.00g(2.77mmol)を入れ、窒素雰囲気にした。ここに窒素バブリングしたベンゼン20ml、クロロホルム20mlを入れた。オイルバス(60℃)で加熱し、p-トルエンスルホン酸水和物(p−TsOH)0.264g(1.39mmol)を入れた。5分間還流撹拌し、反応を停止した。飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去し、黄色粉末を0.93g得た(収率97.6%)。
【0085】
このものを1H−NMR分析し、2−(2,2’−ビチオフェン−5−イル)ジベンゾフルベンであることを確認した。
1H-NMR (500 MHZ, CDCl3, ppm) δ7.95 (s, 1H), 7.75 (d, 1H), 7.70 (d, 2H), 7.64 (d, 1H), 7.27 (t, 1H), 7.26 (m, 2H), 7.23 (m, 2H), 7.19 (d,1H), 7.05 (m, 1H), 6.15 (d, 2H).
【0086】
実施例1[ポリ(BT−DBF)の製造]
【化9】

【0087】
10mlのアンプル管をフレームドライ、窒素下にした後、0.076MのBT−DBFのTHF溶液1.92mlを入れた。ここにTHF0.27mlを入れた。アンプルを−78℃で約10分間冷やし、別途調製した0.1Mのn−BuLiを開始剤として0.73ml加えた。41.5時間後、メタノール約0.1mlを入れ、反応を停止した。約50mlのメタノールに注いだ後、メタノールとTHFで溶媒分別を行った。得られたポリマーをSEC(GPC)分析により分子量分析したところ、数平均分子量で2.2×103であった。また1H−NMR分析により、重合部位であるビニル基由来のプロトンのピーク(6.15ppm)が消失し、重合末端のプロトンとメチレン鎖由来のプロトンのピーク(1〜4ppm付近)が出現し、重合反応によりポリ(BT−DBF)が生成していることを確認した(図1参照)。
【0088】
合成例2[モノマー(EHBT−DBF)の合成]
【化10】

【0089】
(1)5−(2−エチルへキシル)−2,2’−ビチオフェン(5-(2-ethylhexyl)-2,2’-bithiophene)の合成
フレームドライおよび窒素置換した1Lのナス形フラスコに2,2’−ビチオフェン7.55g(45.4mmol)を入れた。ここに溶媒THF444mlを入れ、DBU33.9ml(22.7mmol)を加えた。−70℃まで冷やし、1.61Mのn−BuLi/ヘキサン0.38ml(0.612mmol)を加え、−70℃を保ったまま30分間撹拌し、ついで室温に戻して1時間撹拌した。−15℃に上げ、1−ブロモ−2−エチルヘキサン16.15ml(90.8mmol)を加えた。すぐに室温に戻し18時間撹拌した。塩化アンモニウムで反応を停止し、水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:1)で精製し、淡黄色油状物6.33gを得た(収率50.1%)。
【0090】
このものを1H−NMR分析し、5−(2−エチルへキシル)−2,2’−ビチオフェンであることを確認した。
1H-NMR (500 MHZ, CDCl3, ppm) δ7.16 (d, 1H), 7.10 (d, 1H), 6.99 (m, 2H), 6.65 (d, 1H), 2.75 (d, 2H), 1.40 (m, 9H), 0.85 (m, 6H).
【0091】
(2)5−トリブチルスタンニル−5’−(2−エチルヘキシル)−2,2’−ビチオフェン(5-tributylstannyl-5’-(2-ethylhexyl)-2,2’-bithiophene)の合成
フレームドライおよび窒素置換した300mlの2つ口フラスコに上記(1)で得た5−(2−エチルへキシル)−2,2’−ビチオフェンを6.2g(22.3mmol)、THFを120ml入れた。次に1.60Mのn−BuLi/ヘキサン15.3ml(24.5mmol)を0℃で加え、1時間撹拌した。Bu3SnClを6.65ml(24.5mmol)入れ、室温で20時間撹拌した。塩化アンモニウムで反応を停止し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去し、茶色油状物13.0gを得た(収率>99%)。
【0092】
このものを1H−NMR分析し、5−トリブチルスタンニル−5’−(2−エチルヘキシル)−2,2’−ビチオフェンであることを確認した。
1H-NMR (500 MHZ, CDCl3, ppm) δ7.23 (d, 1H), 7.05 (d, 1H), 6.95 (d, 1H), 6.65 (d, 1H), 2.27 (d, 2H), 1.40 (m, 9H), 0.90 (m, 6H).
【0093】
(3)2,7−ビス(5’−エチルヘキシル−5,2’−ビチオフェン−2−イル)−9−フルオレノン(2,7-bis(5’-ethylhexyl-5,2’-bithiophen-2-yl)-9-fluorenone)の合成
フレームドライおよび窒素置換した200mlの2つ口フラスコに乾燥CHCl3で溶かした上記(2)で製造した5−トリブチルスタンニル−5’−(2−エチルヘキシル)−2,2’−ビチオフェン12.1g(21.2mmol)を入れた。再び真空状態にして溶媒を留去した後、窒素下にして乾燥トルエンを75.5ml入れた(これを反応液2−1とする)。フレームドライおよび窒素置換した還流管を備えた300mlの2つ口フラスコに2,7−ジブロモフルオレノン2.39g(7.07mmol)、Pd(PPh3)4817mg(0.707mmol)を入れた。ここにトルエン75.5mlと反応液2−1を加えた。110℃で17時間還流撹拌した。塩化アンモニウム水溶液で反応を停止し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去し、赤色粉末4.46gを得た(収率86.1%)。
【0094】
このものを1H−NMR分析し、2,7−ビス(5’−エチルヘキシル−5,2’−ビチオフェン−2−イル)−9−フルオレノンであることを確認した。
1H-NMR (500 MHZ, CDCl3, ppm) δ7.89 (s, 2H), 7.68 (dd, 2H), 7.51 (d,1H), 7.28 (d, 2H), 7.08 (d, 2H), 7.03 (d, 2H), 6.69 (d, 2H), 2.75 (d, 4H), 1.60 (m, 2H), 1.36 (m, 16H), 0.91 (m, 12H).
【0095】
(4)2,7−ビス(5’−エチルヘキシル−5,2’−ビチオフェン−2−イル)−9−メチル−9−フルオレノール(2,7-Bis(5’-ethylhexyl-5,2’-bithiophen-2-yl)-9-metyl-9-fluorenol)の合成
フレームドライ、窒素置換した500mlの3つ口フラスコに上記(3)で合成した2,7−ビス(5’−エチルヘキシル−5,2’−ビチオフェン−2−イル)−9−フルオレノンを2.0g(2.73mmol)入れた。再び真空にした後、窒素下に戻したTHF333mlを入れ、氷浴で0℃に冷やした。3.3MのCH3MgBr/ジエチルエーテル4.57ml(13.7mmol)を入れ、0℃のまま4時間撹拌した。メタノール、HClを少しずつ加え、反応を停止した。ジエチルエーテルで抽出し、水、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥した。メタノール、ヘキサンで溶媒分別を行い、オレンジ色の固体を1.79g得た(収率98.4%)。
【0096】
このものを1H−NMR分析し、2,7−ビス(5’−エチルヘキシル−5,2’−ビチオフェン−2−イル)−9−メチル−9−フルオレノールであることを確認した。
1H-NMR (500 MHZ, CDCl3, ppm) δ7.80 (s, 2H), 7.61 (m, 4H), 7.28 (d, 2H), 7.10 (d, 2H), 7.03 (d, 2H), 6.69 (d, 2H), 2.75 (d, 4H), 1.21 (m, 18H), 0.91 (m, 12H).
【0097】
(5)2,7−ビス(5’−エチルヘキシル−5,2’−ビチオフェン−2−イル)ジベンゾフルベン(2,7-Bis(5’-ethylhexyl-5,2’-bithiophen-2-yl)dibenzofluvene)(EHBT−DBF)の合成
5mlの2つ口フラスコに上記(4)で合成した2,7−ビス(5’−エチルヘキシル−5,2’−ビチオフェン−2−イル)−9−メチル−9−フルオレノール11.6mg(0.0155mmol)を入れ、窒素下にした。ここに窒素バブリングしたベンゼン3ml、クロロホルム3mlを入れた。60℃のオイルバスで約5分間加熱し、素早くp−トルエンスルホン酸水和物1.47mg(0.00775mmol)を入れた。5時間還流撹拌した後、すぐに氷浴で冷やし、反応を停止した。蒸留水で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去し、黄色粉末13.1mgを得た(収率>99%)。
【0098】
このものを1H−NMR分析し、2,7−ビス(5’−エチルヘキシル−5,2’−ビチオフェン−2−イル)ジベンゾフルベンであることを確認した。
1H-NMR (500 MHZ, CDCl3, ppm) δ7.93 (s, 2H), 7.67 (d, 2H), 7.63 (d, 2H), 7.28 (d, 2H), 7.11 (d, 2H), 7.03 (d, 2H), 6.69 (d, 2H), 6.20 (s, 2H), 2.75 (d, 4H), 1.68 (m, 2H), 1.32 (m, 16H), 0.91 (m, 24H).
【0099】
実施例2[ポリ(EHBT−DBF)の製造]
10mlのアンプル管をフレームドライおよび窒素雰囲気下にした後、0.0684Mの合成例2の(5)で合成した2,7−ビス(5’−エチルヘキシル−5,2’−ビチオフェン−2−イル)ジベンゾフルベン(EHBT−DBF)溶液0.60mlを入れた。ここにTHF0.0158mlを入れた。アンプルを−78℃で約10分間冷やし、1.59Mのn−BuLiを0.205ml加えた。68時間後に0.1mlのメタノールを加え、反応を停止した。ついで30mlのメタノールに注ぎ、メタノール、へキサンで溶媒分別を行った。得られたポリマーをSEC(GPC)分析により分子量分析したところ、数平均分子量で1.33×104であった。また1H−NMR分析により、重合部位であるビニル基由来のプロトンのピーク(6.20ppm)が消失し、重合末端のプロトンとメチレン鎖由来のプロトンのピーク(0.5〜3ppm付近)が出現し、重合反応によりポリ(EHBT−DBF)が生成していることを確認した(図2参照)。
【0100】
実施例3[ポリ(EHBT−DBF)の構造解析]
実施例2で製造したポリ(EHBT−DBF)をTHFに濃度1.99×10-5Mとなるように溶解した。ついでその溶液を光路長1cmの石英セルに導入し、吸収スペクトルの測定を行い、図3に示すスペクトルを得た(実線)。
【0101】
図3に示すポリ(EHBT−DBF)の吸収スペクトルには、同様の手法(濃度1.68×10-5M)で吸収スペクトルを測定したモノマー単位モデルの2,7−ビス(5’−エチルヘキシル−5,2’−ビチオフェン−2−イル)−9−メチル−9−フルオレノール(合成例2の(4)で合成したもの。破線)に比べて明らかな淡色効果が見られた。
【0102】
実施例2で製造したポリ(EHBT−DBF)をTHFに濃度1.99×10-6Mとなるように溶解した。ついでその溶液を光路長1cmの石英セルに導入し、365nmの励起光を用いて蛍光スペクトルの測定を行い、図4に示すスペクトルを得た(実線)。
【0103】
同様の手法(濃度1.35×10-6M)で蛍光スペクトルを測定した、モノマー単位モデルの2,7−ビス(5’−エチルヘキシル−5,2’−ビチオフェン−2−イル)−9−メチル−9−フルオレノール(合成例2の(4)で合成したもの。破線)が400〜450nmを中心とするモノマー発光を示したのに対し、ポリ(EHBT−DBF)は500nm付近を中心とするエキシマー発光を示した。
【0104】
実施例2で製造したポリ(EHBT−DBF)の1H−NMRスペクトルでは、モノマーである2,7−ビス(5’−エチルヘキシル−5,2’−ビチオフェン−2−イル)ジベンゾフルベンの芳香環のプロトンを示すピーク(7.93ppm〜6.69ppm)に対して、ポリ(EHBT−DBF)の芳香環のプロトンを示すピーク(図2参照)が高磁場シフトしていることが確認された。
【0105】
以上の結果は、ポリ(EHBT−DBF)が、電荷輸送を起しやすい芳香環間でのπ−スタック構造を有することを示す。
【0106】
同様の結果が、実施例1で製造したポリ(BT−DBF)においても観測された。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】ポリ(BT−DBF)の1H−NMRスペクトルチャートである。
【図2】ポリ(EHBT−DBF)の1H−NMRスペクトルチャートである。
【図3】実施例3で測定した2,7−ビス(5’−エチルヘキシル−5,2’−ビチオフェン−2−イル)−9−メチル−9−フルオレノールとポリ(EHBT−DBF)の吸収スペクトルチャートである。
【図4】実施例3で測定した2,7−ビス(5’−エチルヘキシル−5,2’−ビチオフェン−2−イル)−9−メチル−9−フルオレノールとポリ(EHBT−DBF)の蛍光スペクトルチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
−(M)−(N)−
[式中、構造単位Mは、式(M):
【化1】

(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、いずれも水素原子または有機基;Arは芳香環;RaおよびRbは同じかまたは異なり、いずれも芳香環Arに結合している電子供与性基;AおよびBは同じかまたは異なり、いずれも電気伝導性を発現し得る構造単位;Xは単結合、−(CH2p−(pは正の整数)、−CH=CH−、2価の芳香族基、ヘテロ原子またはヘテロ原子を含む有機基;mは0〜1000の整数;nは0〜1000の整数;ただし、m+nは1以上)で示される構造単位、
構造単位Nは構造単位Mを与える単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位、
かつ構造単位Mを30〜100モル%および構造単位Nを0〜70モル%含む]で示される電荷輸送能を有するポリマーを含む電荷輸送材料。
【請求項2】
前記−(A)m−および−(B)n−の少なくとも1つが、電荷輸送能を有する部位である請求項1記載の電荷輸送材料。
【請求項3】
前記−(A)m−および−(B)n−の少なくとも1つが、オリゴフラン基、ポリフラン基、オリゴチオフェン基、ポリチオフェン基、オリゴピロール基、ポリピロール基、オリゴフルオレン基、ポリフルオレン基およびそれらの置換誘導体よりなる群から選択された芳香族π共役系化合物残基である請求項1または2記載の電荷輸送材料。
【請求項4】
前記RaおよびRbが水素原子である請求項1〜3のいずれかに記載の電荷輸送材料。
【請求項5】
前記RaおよびRbの少なくとも1つが、アルキル基、−OHもしくはその塩、メルカプト基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基である請求項1〜3のいずれかに記載の電荷輸送材料。
【請求項6】
前記構造単位Mが、式(M1):
【化2】

(式中、R1、R2、Ra、Rb、A、B、mおよびnは式(M)と同じ;qおよびrは同じかまたは異なり、いずれも1〜4の整数)で示されるフルオレン構造単位M1である請求項1〜5のいずれかに記載の電荷輸送材料。
【請求項7】
式(2):
−(M1)−(N)−
[式中、構造単位M1は、式(M1):
【化3】

(式中、R1、R2、Ra、Rb、A、B、mおよびnは式(M)と同じ;qおよびrは同じかまたは異なり、いずれも1〜4の整数)で示されるフルオレン構造単位M1;
構造単位Nは構造単位M1を与える単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位、
かつ構造単位M1を30〜100モル%および構造単位Nを0〜70モル%含む]で示される電荷輸送能を有するポリマー。
【請求項8】
前記−(A)m−および−(B)n−の少なくとも1つが、電荷輸送能を有する部位である請求項7記載のポリマー。
【請求項9】
前記−(A)m−および−(B)n−の少なくとも1つが、オリゴフラン基、ポリフラン基、オリゴチオフェン基、ポリチオフェン基、オリゴピロール基、ポリピロール基、オリゴフルオレン基、ポリフルオレン基およびそれらの置換誘導体よりなる群から選択された芳香族π共役系化合物残基である請求項7または8記載のポリマー。
【請求項10】
前記RaおよびRbの少なくとも1つが、水素原子、アルキル基、−OHもしくはその塩、メルカプト基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基である請求項7〜9のいずれかに記載のポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−302729(P2007−302729A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130021(P2006−130021)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】