説明

電解コンデンサおよびその製造方法

【課題】小型の電解コンデンサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】電解コンデンサ1は、弁金属で構成され、凹部12を有する陽極素子11と、陽極素子11の外表面の一部に形成されており、陽極素子11と電気的に接続されている陽極用外部導体15と、凹部12の内面と、陽極用外部導体15が形成されていない陽極素子11の外表面に形成されている酸化皮膜13と、酸化皮膜13が形成された凹部12に充填されている電解質14と、電解質14の露出面に電解質14を封止するように形成され、電解質14と電気的に接続されている陰極用外部導体16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化皮膜を備える電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解コンデンサでは、弁金属を正極として用いて、陽極酸化法等によって弁金属表面に形成された酸化皮膜を誘電体として用いる。電解コンデンサの構成として、例えば特許文献1に開示されているものが知られている。特許文献1に開示の電解コンデンサ100は、図4のように、コンデンサ素子110と、リード端子121、122と、外装体123と、を備えている。
【0003】
コンデンサ素子110は、弁金属で構成される陽極素子111と、陽極素子111の外表面に順次形成されている酸化皮膜113と、電解質層114と、陰極用外部導体116a、116bと、陽極素子111と電気的に接続されている陽極用外部導体115と、を備えている。陽極用外部導体115はリード端子121と電気的に接続されており、陰極用外部導体116bはリード端子122と電気的に接続されている。そして、外装体123は、リード端子121および122が露出するようにコンデンサ素子110を外装している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−167230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、電解コンデンサの絶縁性を確保するためには、コンデンサ素子110の外表面を外装体123により被覆する必要があり、外装体123の厚みが一定以上必要となる。そのため、電解コンデンサが大型になるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、小型の電解コンデンサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電解コンデンサは、弁金属で構成され、凹部を有する陽極素子と、前記陽極素子の外表面の一部に形成されており、前記陽極素子と電気的に接続されている陽極用外部導体と、前記凹部の内面と、前記陽極用外部導体が形成されていない前記陽極素子の外表面に形成されている酸化皮膜と、前記酸化皮膜が形成された凹部に充填されている電解質と、前記電解質の露出面に前記電解質を封止するように形成され、前記電解質と電気的に接続されている陰極用外部導体と、を備えることを特徴としている。
【0008】
本発明では、陽極用外部導体が形成されていない陽極素子の外表面にも酸化皮膜が形成されている。そのため、陽極素子の絶縁性が向上し、従来の構成に比べて外装体の厚みを小さくしたり、場合によっては外装体をなくしたりすることができる。したがって、電解コンデンサを小型化することができる。
【0009】
また、本発明に係る電解コンデンサでは、前記陰極用外部導体は、前記陽極素子の外表面上であって、前記酸化皮膜が形成されている部分にも形成されており、前記陽極素子と前記酸化皮膜を介して絶縁されていることが好ましい。
【0010】
かかる場合には、陰極用外部導体が複数の電解質と電気的に接続されている場合に、陽極素子と陰極用外部導体間の絶縁性が向上する。
【0011】
また、本発明に係る電解コンデンサでは、前記陽極素子は柱状であり、前記凹部は前記陽極素子の一方の面から対向する他方の面に向かって形成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る電解コンデンサでは、前記陽極用外部導体は前記他方の面上で前記陽極素子と電気的に接続されていることが好ましい。
【0013】
かかる場合には、陽極用外部導体の形成が容易である。
【0014】
また、本発明に係る電解コンデンサでは、前記陽極素子は直方体形状であり、前記凹部は前記直方体形状の長手方向の両端面のうち一方の端面のみに形成されていることが好ましい。
【0015】
かかる場合には、凹部の内面の面積をより大きくすることができる。
【0016】
また、本発明に係る電解コンデンサでは、前記凹部は柱状であることが好ましい。
【0017】
かかる場合には、凹部の形成が容易である。
【0018】
また、本発明は、弁金属で構成され、凹部を有する陽極素子を用意する工程と、前記凹部の内面と、前記陽極素子の外表面に酸化皮膜を形成する工程と、前記酸化皮膜が形成された凹部に電解質を充填する工程と、前記陽極素子の外表面に形成された酸化皮膜の一部を除去して、前記陽極素子を露出させる工程と、前記陽極素子の露出された外表面に、前記陽極素子と電気的に接続されるように陽極用外部導体を形成する工程と、前記電解質の露出面に前記電解質を封止しつつ、前記電解質と電気的に接続されるように陰極用外部導体を形成する工程と、を備える電解コンデンサの製造方法にも向けられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、陽極用外部導体が形成されていない陽極素子の外表面にも酸化皮膜が形成されている。そのため、陽極素子の絶縁性が向上し、従来の構成に比べて外装体の厚みを小さくしたり、場合によっては外装体をなくしたりすることができる。したがって、電解コンデンサを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る電解コンデンサの斜視図および断面図である。
【図2】本発明に係る電解コンデンサの製造工程を示す断面図である。
【図3】本発明に係る電解コンデンサの製造工程を示す断面図である。
【図4】従来の電解コンデンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る電解コンデンサの一例の図である。図1(A)は斜視図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A断面図である。説明のため、図1(A)では陽極用外部導体と陰極用外部導体を省略して図示している。
【0023】
電解コンデンサ1は、陽極素子11と、酸化皮膜13と、電解質14と、陽極用外部導体15と、陰極用外部導体16と、を備えている。
【0024】
陽極素子11は、弁金属で構成されている。弁金属の例としては、例えばタンタル、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ニオブおよびこれらを含む合金が挙げられる。
【0025】
本発明では、陽極素子11は凹部12を有しており、凹部12が電解コンデンサの容量形成部分になる。したがって、凹部12を複数にして凹部12の内面の面積を大きくすれば、静電容量を大きくすることができる。凹部12の大きさや数は、所望の静電容量や陽極素子11の強度が得られるように適宜選択される。
【0026】
本実施形態では、陽極素子11は柱状である。また、柱の高さ方向に垂直に切断した断面は、本実施形態のように四角形だけでなく、多角形や丸や楕円であってもよい。また、柱状とは、陽極素子11が深さ方向に対してテーパー形状または逆テーパー形状であるものも含まれる。
【0027】
複数の凹部12は陽極素子11の一方の面から対向する他方の面に向かって形成されている。そして、凹部12の深さ方向に平行に、複数の凹部12を含むように切断した断面がくし歯状になっている。この場合、陽極素子の凹部の深さと陽極素子の凹部の深さ方向の平行な辺との長さの割合は、0.50以上0.80以下であることが好ましい。0.50未満の場合には、電解コンデンサの静電容量が小さくなるためである。また0.80を超える場合には、陽極素子の強度が確保できないためである。
【0028】
また、本実施形態では、陽極素子11は直方体形状であり、凹部12は直方体形状の陽極素子11の長手方向の両端面のうち、一方の端面のみに形成されている。かかる場合には、凹部12の深さ方向を大きくすることができる。したがって、凹部12の内面の面積をより大きくして、電解コンデンサの静電容量を大きくすることができる。
【0029】
酸化皮膜13は、凹部12の内面に形成されている。また、本発明においては、酸化皮膜13は、陽極用外部導体15が形成されていない陽極素子11の外表面にも形成されている。そのため、陽極素子11の絶縁性が向上し、従来の構成に比べて外装体の厚みを小さくしたり、場合によっては外装体をなくしたりすることができる。したがって、電解コンデンサを小型化することができる。例えば陽極素子11がタンタルで形成されている場合には、酸化皮膜13は例えば五酸化タンタル(Ta25)で構成される。
【0030】
電解質14は、酸化皮膜13が形成された凹部12に充填されている。電解質14は所望の電気伝導性、耐熱性が得られるように適宜選択される。電解質14の例としては、例えばポリチオフェン、ポリピロール等の導電性高分子や、二酸化マンガンが挙げられる。
【0031】
陽極用外部導体15は、陽極素子11の外表面の一部に形成されており、陽極素子11と電気的に接続されている。本実施形態では、陽極用外部導体15は、陽極素子11の凹部12が形成された一方の面と対向する他方の面上で、陽極素子11と電気的に接続されている。
【0032】
陰極用外部導体16は、電解質14の凹部12からの露出面に形成され、電解質14と電気的に接続されている。本実施形態では、陰極用外部導体16は陽極素子11の凹部12が形成された一方の面上で、電解質14と電気的に接続されている。
【0033】
また、陰極用外部導体16は陽極素子11の外表面上であって、酸化皮膜13が形成されている部分にも形成されており、陰極用外部導体16は陽極素子11と酸化皮膜13を介して絶縁されている。陰極用外部導体16が複数の電解質14と電気的に接続されている場合には、陽極素子11の絶縁性が向上する。
【0034】
陽極用外部導体15と陰極用外部導体16の例としては、例えば陽極素子11に近い位置から銀、ニッケル、すずの順で構成される三層構造が挙げられる。銀層は、陽極素子11や電解質14との導電性を確保するために用いられる。またニッケル層は、実装時のはんだとの接合性向上および実装時の耐熱性の確保のために用いられる。すず層は、はんだ濡れ性の確保とニッケル層の酸化防止のために用いられる。
【0035】
本発明に係る電解コンデンサの製造方法は、一例として以下のように製造される。図2と図3は、本発明に係る電解コンデンサの製造方法の工程を示す断面図である。
【0036】
最初に、図2(A)のように、弁金属で構成され、凹部12を有する陽極素子11を用意する。凹部12は例えば直方体形状の陽極素子11にエッチング法やレーザー加工法で形成される。あらかじめ凹部12を有する陽極素子11を成形してもよい。また、凹部12の形成後に、例えばエッチング法により、凹部12の内面を拡面化してもよい。凹部12の内面の表面積を増大させることで、電解コンデンサの静電容量が増大するためである。
【0037】
次に、図2(B)のように、凹部12の内面と、陽極素子11の外表面に酸化皮膜13を形成する。酸化皮膜13は、例えば陽極酸化法により形成される。
【0038】
次に、図2(C)のように、酸化皮膜13が形成された凹部12に、電解質14を充填する。例えば電解質14がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の場合には、まず、3,4−エチレンジオキシチオフェンを含むエチレングリコール溶液(以下溶液1)を塗布する。その後、過硫酸アンモニウムとアントラキノン2スルホン酸ナトリウム(以下溶液2)を塗布する。溶液1に塗布した後に溶液2を塗布する操作を複数回繰り返すことにより、凹部12にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)で構成される電解質14を充填する。
【0039】
次に、図3(D)のように、陽極素子11の外表面に形成された酸化皮膜13の一部を除去して、陽極素子11を露出させる。酸化皮膜13の除去は、例えば研磨により行う。
【0040】
次に、図3(E)のように、陽極素子11の露出された外表面に、陽極素子11と電気的に接続されるように陽極用外部導体15を形成する。次に、電解質14の凹部12からの露出面に、電解質14を封止しつつ電解質14と電気的に接続されるように陰極用外部導体16を形成する。陽極用外部導体15と陰極用外部導体16を同時に形成してもよい。
【0041】
陰極用外部導体16は、陽極素子11の外表面上であって、酸化皮膜13が形成されている部分にも形成されており、陰極用外部導体16は陽極素子11と酸化皮膜13を介して絶縁されている。かかる構成では、陽極素子11の絶縁性が向上する。
【0042】
陽極用外部導体15と陰極用外部導体16は、例えば銀、ニッケル、すずの順で構成される三層構造の場合、銀層は例えば銀を含むペーストを塗布して、その後に乾燥して形成する。また、ニッケル層及びすず層は例えばめっき法で形成する。なお、陽極用外部導体15と陰極用外部導体16は、塗布法やめっき法以外にも、例えばリードフレームを金属ペーストを用いて接合して形成したり、スパッタリング法や蒸着法により形成することができる。
【0043】
(実験例)
凹部を有し、陽極素子の外表面に酸化皮膜が形成されている電解コンデンサと、従来の構成のコンデンサの静電容量を比較した。具体的には、弁金属がTaで構成されている陽極素子において、条件1~3の電解コンデンサの容量体積率を計算した。容量体積率は、電解コンデンサの静電容量をコンデンサ全体の体積で除した値である。なお、比誘電率は25、膜厚は20nmとして計算した。
【0044】
(1)条件1
条件1は、直方体形状の陽極素子のWT面に複数の凹部を形成する場合を想定した。具体的には、長さ(L)×幅(W)×高さ(T)=7.2×4.3×2.0mmの陽極素子を想定する。そして、陽極素子のWT面の一方の面に、長さ(L)方向に、開口面の寸法が2.3×0.4mmで、深さが5.2mmの直方体形状の凹部を0.2mm間隔で3個形成して、陽極素子の外表面に酸化皮膜を形成する場合を想定した。
【0045】
(2)条件2
条件2は、直方体形状の陽極素子のLW面に複数の凹部を形成する場合を想定した。具体的には、長さ(L)×幅(W)×高さ(T)=7.2×4.3×2.0mmの陽極素子を想定する。そして、陽極素子のLT面の一方の面に、幅(W)方向に、開口面の寸法が5.2×0.4mmで、深さが2.3mmの直方体形状の凹部を0.2mm間隔で3個形成して、陽極素子の外表面に酸化皮膜を形成する場合を想定した。
【0046】
(3)条件3
条件3は、陽極素子の外表面に凹部を形成せずに酸化皮膜を形成する場合を想定した。具体的には長さ(L)×幅(W)×高さ(T)=4.5×1.5×1.0mmの陽極素子の外表面に酸化皮膜を形成する場合を想定する。そして、陽極素子を外装体で覆うことで、長さ(L)×幅(W)×高さ(T)=7.2×4.3×2.0mmの電解コンデンサを作製する場合を想定した。
【0047】
各条件について、容量体積率を計算した。表1に結果を示す。
【0048】
【表1】

【0049】
凹部を有し、陽極素子の外表面に酸化皮膜が形成されている条件1、条件2では、容量体積率はどちらも20μF/mm3となり、条件3の11μF/mm3に比べて大きい結果となった。なお、条件1と条件2の容量体積率は同等であるが、条件2は陽極と陰極の間の距離が小さくなり、陽極と陰極の対向している部分の電極の幅が大きくなる条件であるため、等価直列インダクタンス(ESL)が小さくなる利点を有する。
【符号の説明】
【0050】
1 電解コンデンサ
11 陽極素子
12 凹部
13 酸化皮膜
14 電解質
15 陽極用外部導体
16 陰極用外部導体
100 電解コンデンサ
110 コンデンサ素子
111 陽極素子
113 酸化皮膜
114 電解質
115 陽極用外部導体
116a、116b 陰極用外部導体
121、122 リード端子
123 外装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁金属で構成され、凹部を有する陽極素子と、
前記陽極素子の外表面の一部に形成されており、前記陽極素子と電気的に接続されている陽極用外部導体と、
前記凹部の内面と、前記陽極用外部導体が形成されていない前記陽極素子の外表面に形成されている酸化皮膜と、
前記酸化皮膜が形成された凹部に充填されている電解質と、
前記電解質の露出面に前記電解質を封止するように形成され、前記電解質と電気的に接続されている陰極用外部導体と、
を備える電解コンデンサ。
【請求項2】
前記陰極用外部導体は、前記陽極素子の外表面上であって、前記酸化皮膜が形成されている部分にも形成されており、前記陽極素子と前記酸化皮膜を介して絶縁されている、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記陽極素子は柱状であり、前記凹部は前記陽極素子の一方の面から対向する他方の面に向かって形成されている、請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記陽極用外部導体は前記他方の面上で前記陽極素子と電気的に接続されている、請求項3に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記陽極素子は直方体形状であり、前記凹部は前記直方体形状の長手方向の両端面のうち一方の端面のみに形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記凹部は柱状である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
弁金属で構成され、凹部を有する陽極素子を用意する工程と、
前記凹部の内面と、前記陽極素子の外表面に酸化皮膜を形成する工程と、
前記酸化皮膜が形成された凹部に電解質を充填する工程と、
前記陽極素子の外表面に形成された酸化皮膜の一部を除去して、前記陽極素子を露出させる工程と、
前記陽極素子の露出された外表面に、前記陽極素子と電気的に接続されるように陽極用外部導体を形成する工程と、
前記電解質の露出面に、前記電解質を封止しつつ前記電解質と電気的に接続されるように陰極用外部導体を形成する工程と、
を備える、電解コンデンサの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−243864(P2011−243864A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116518(P2010−116518)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)