説明

電解処理用カソードおよび電解槽

【課題】セレン酸イオン、テルル酸イオン、亜セレン酸イオン、亜テルル酸イオンの全て、ないしいずれかを0.1〜1.0mg/Lの濃度で含む廃水を、全セレン濃度、全テルル濃度が0.1mg/L以下になるまで確実に処理し、洗浄等によって性能が劣化しない継続性を有する電解処理用カソードおよび電解槽を提供する。
【解決手段】水中に含まれるセレン酸イオン、亜セレン酸イオン、テルル酸イオン、亜テルル酸イオンのうち少なくともいずれか1種以上を、金属酸化物半導体をカソードとして用いる電気分解により0価の固体元素の形態に還元して析出させ、水中からセレン及び/またはテルルを分離回収する水の電解処理にカソード2またはアノードとして用いられる電極であって、表面積/体積の比が、40 cm2/cm3以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃水(排水)や汚染地下水などの水から、セレン酸イオンやテルル酸イオン、亜セレン酸イオン、亜テルル酸イオンを分離回収する水の電解処理に用いられるカソードおよびそのカソードを備えた電解槽に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン等の金属酸化物半導体カソードを用いた電解によって、セレン酸イオン、テルル酸イオンを、0価の分子状セレンないし金属テルルまで還元し析出することは、特許文献1に開示されている。この方法は、高い電流効率で、1mg/L以下の濃度までセレン、テルルの分離を可能としており、省エネルギーに長けた技術である。
【0003】
しかし、電気分解反応は電極表面でのみ進行する反応であり、セレン酸イオン、テルル酸イオンなどの濃度が低下すると、それらイオンの電極表面への拡散による移動速度が極端に低くなるため、電流効率も極端に低くなり、実質的に反応は止まってしまう。また、これらの反応でセレン、テルルなどは固体の微粒子として析出したり、電極表面に付着して析出したりするため、これらにより電極の表面の形状が変わり、電極の性能低下が起こる。この影響を局限するためには、酸化チタンカソードに平板電極を用いざるを得なかった。しかし、平板電極を備えた電解槽を用いると、セレン、テルルの全濃度1mg/L以下まで電解することはできるが、安定して処理可能な濃度は0.2〜0.5mg/Lまでが限界であり、セレンの排出基準値である0.1mg/L以下まで安定して電解処理することはできなかった。そのため、これら廃水の酸化チタンカソードによる電解処理技術は、中間処理技術としてしか使用することができなかった。
【0004】
また、電解処理においては、処理に伴い電極の表面にセレン、テルルが析出する他に、それ以外の異物等も付着して汚れを生じ、それにより電極の表面の活性が低下し、電解処理の効率を低下させる。この対処として、所定の管理基準により電極の洗浄等を行えば良いが、その際に、洗浄が容易であること、洗浄後の繰り返し使用によっても処理能力が劣化しないこと等の継続性が、工業上肝要であり求められていた。
【0005】
【特許文献1】特許第2979087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、セレン酸イオン、テルル酸イオン、亜セレン酸イオン、亜テルル酸イオンの全て、ないしいずれかを0.1〜1.0mg/Lの濃度で含む廃水を、全セレン濃度、全テルル濃度が0.1mg/L以下になるまで確実に処理し、洗浄等によって性能が劣化しない継続性を有する電解処理用カソードおよび電解槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するため、本発明は、水中に含まれるセレン酸イオン、亜セレン酸イオン、テルル酸イオン、亜テルル酸イオンのうち少なくともいずれか1種以上を、金属酸化物半導体をカソードとして用いる電気分解により0価の固体元素の形態に還元して析出させ、水中からセレン及び/またはテルルを分離回収する水の電解処理に用いられるカソードであって、表面積/体積の比が、40cm2/cm3以上であることを特徴とする、電解処理用カソードを提供する。これにより、電極表面において水とイオンの拡散が改善され、水中のセレンまたはテルルを0.1mg/L以下の極めて低い濃度まで電解還元可能となる。カソードは、メッシュ状、エキスパンド状、または複数の細孔を設けた構造を有するものでも良い。
【0008】
さらに、同じ幾何形状を有する平板電極に対して1.4倍以上の表面積/体積の比をもち、全表面が金属酸化物半導体で覆われていることが好ましい。
【0009】
さらに、板状または板状部材を折り曲げた形状であることが好ましい。このような形状のカソードとすれば、電解槽から取りだして、析出したセレン、テルルによる汚染を洗浄することや、その後乾燥することが容易である。
【0010】
また、金属酸化物を構成する金属単体、ないしその金属を含む合金を、前記板状または板状部材を折り曲げた形状に加工した後、電解液中で電解酸化させて表面に金属酸化物半導体を形成させることが好ましい。さらには、前記金属酸化物が酸化チタンであり、導電性の基材の上に酸化チタン膜の層を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、前記カソード、アノード、電極保持機構を有し、前記カソードおよび前記アノードを、電極を分解ないし変形することなしに別々に取り出して洗浄可能であることを特徴とする電解槽が提供される。また、前記電極の表面積/電解槽容量の比が、0.4cm2/cm3以上であることが望ましい。
【0012】
さらに、電解槽内に均一に対流を起こさせる攪拌手段を有することが望ましい。前記攪拌手段は、不活性ガスのバブリングでも良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、セレンあるいはテルルを低濃度まで確実に効率よく電解処理することが可能となる。更に、一定時間の電解によりカソードに汚れが溜まり電解効率が低下したところで、カソードを取り出して水洗してカソードの活性を復活させることにより、繰り返し使用しても分離の処理性能は劣化しないので、継続的な水処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明にかかる電解槽1の一例を示す。上方が開放された電解槽1は、片面に平板状の酸化チタンカソード3を有し、その対向面に、同面積の白金電極(アノード)4を有する。側面は合成樹脂等の絶縁材料により構成される。更に、電解槽1内に、エキスパンドメタル状のカソード2が挿入される。カソード2は、図1の例では2枚であるが、これに限るものではない。また、1枚のエキスパンドメタル状の板材を折り曲げて形成してもよい。更に、メッシュ状や多数の細孔を有する板状であっても構わない。カソード2は、白金電極4と短絡を生じないように、表面にスペーサ5を取り付けて電解槽1内に挿入される。この電解槽1内に、セレン等を含む廃水を入れて、電解処理が行われる。
【0016】
エキスパンドメタル状のカソード2は、電解槽1から取り出して水洗することが容易なように、例えば、幾何形状が平板状のカソード2を1枚そのまま、あるいは複数枚を平行にまとめて固定し、絶縁体からなるスペーサ5を適宜配置して電解槽1に挿入する。これにより、白金電極4と短絡が生じることなく、容易に取り出して洗浄できる。
【0017】
更に、アルゴンや窒素ガスなどの不活性ガスでバブリングを行って、電解槽1内の被処理液10を攪拌する。電解槽1内を効率よく均一に攪拌できるように、不活性ガスバブリング用の配管7が配置される。配管7は、図1および図2に示すように、先端部7aが電解槽1の底面上の全幅にわたって配置される。先端部7aには、例えば10mmまたはそれ以下の間隔で直径0.1〜0.2mmの細孔が形成され、その細孔から不活性ガスが吹き出す。先端部7aの先端は塞がれている。配管7には、ニードル弁およびストップ弁等を備えた弁部8が設けられ、不活性ガスの供給が制御される。なお、不活性ガスによるバブリングの代わりに電解槽の液を循環させてもよい。
【0018】
本発明における処理の対象となる水は、セレン酸イオン、亜セレン酸イオン、テルル酸イオン、亜テルル酸イオンのいずれか1種以上を含むものであり、鉱工業における工程廃水等の中間廃水、最終廃水、及び、汚染された地下水等に適用することが可能である。これらの水に、電解の障害となる程度の固形不純物がある場合は、ろ過その他の固液分離操作によりあらかじめ固形分を除去し、金属イオンが含まれる場合には既存の廃水処理操作によりあらかじめ除去しておけばよい。本発明は、セレン等が10mg/L以下の低濃度の場合に特に好適である。イオンの濃度が低く、電気伝導度が十分でない場合は、硫酸ナトリウムなどの支持電解質を適宜加えればよい。溶液のpHは2.5から3の間が望ましいので、適宜酸ないしアルカリを添加して調整する。
【0019】
本発明では、金属酸化物半導体をカソードとして用いるが、これは、特許文献1に開示されている方法により、電極表面を半導体で被覆し、半導体電極を形成すれば良い。半導体材料としては、セレン酸イオン、亜セレン酸イオン、テルル酸イオン、亜テルル酸イオンの還元に最も効果的な酸化チタンが特に好ましい。しかも、酸化チタンは耐蝕性、耐久性に優れ、繰り返し利用が可能である。酸化チタンを基材(例えばチタン材)に積層する際には、その積層の厚さが、電極から電解液に通電する際の電気抵抗を無視し得る程度であることが望ましい。
【0020】
カソード(陰極)は、金属の基材により所定の形状を成形した後に、電解酸化により半導体層(n型)を形成しても良いし、金属などの十分な導電性を有する基材を所定の形状に加工した後、表面に塗布焼成、スパッタ、真空蒸着その他の方法で半導体層を加工して形成しても良い。表面積/体積の比が40cm2/cm3以下であり、同じ平板電極に対して表面積/体積の比が1.0倍に近いと、電極表面における水およびイオンの拡散の改善が不十分で、水中のセレンまたはテルルを0.1mg/L以下まで除去することは出来ない。したがって、カソード電極の形状は、表面積/体積の比が、40cm2/cm3以上であるようにすればよい。また、同じ幾何形状を有する平板に対して1.4倍以上であれば、さらに好ましい。この条件を満たし、容易に入手できる電極基材として、例えばエキスパンドメタルを用いれば、強度もあり繰り返しの使用に耐えうる。
【0021】
カソード2の電極面積/電解液量の比が0.4cm2/cm3以上となる大きさのカソード2を電解槽1に入れ、不活性ガスによるバブリングをしつつ電解を行うことにより、低濃度まで効率よく電解することが可能となる。バブリングは、電解槽1中の液を攪拌し、カソード2とセレン等の接触確率を向上させる他、電極の清浄も兼ね、電極の活性を維持する効果もある。従って、バブリングは、電極に対して均一に攪拌されるように行われるのが好ましい。
【0022】
上記の本発明により、水からのセレン、テルルの分離を極めて低濃度の0.1mg/L以下まで処理可能とし、さらに、この電解槽1の使用に伴う電極の付着物による性能劣化を抑制し、長期間にわたり継続的な使用を可能とした。即ち、本発明により、対象水の出所を問わない水処理が達成できた。本発明により得られたセレン、テルル濃度が極めて低い液体は、所定の条件を満たせば安価に排水可能であり、種々の産業において利用可能である。なお、本発明にかかる電解条件で、カソード電流密度が極めて低い条件であっても、セレン等の電解析出、液からの除去を可能としており、従来の電解反応とは異なっている。
【0023】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0024】
例えば、メッシュ状またはエキスパンド状の板材をらせん構造の一体型カソードに成形し、底のある円筒の内側に白金を塗布してアノードとした電解槽に、セパレータを介してカソードを挿入して固定しても良い。あるいは、図3(A)に示すように、エキスパンド状またはメッシュ状の板材により、攪拌翼12を有するタービン状のカソード11を形成し、このカソード11を回転させて被処理液を攪拌しながら電解を行ってもよい。この場合には、図1に示したバブリング用の配管7を設ける必要がない。また、図3(B)に示すように、エキスパンド状またはメッシュ状の板材により、羽根14を有するカソード13を形成し、上下方向に振動させたり、軸15を中心として回転方向に僅かに振動させることにより、被処理液に乱流を発生させても良い。また、らせん構造の一体型カソードの場合には、回転させて攪拌しても良い。この場合、極めて遅い回転でも十分な攪拌効果が得られる。さらに、攪拌方法として、図1に示す平板状のカソード2に振動発信器を接合し、上下に振動させても良い。
【0025】
本発明において、電解にかかるシステムは、上記電解槽および電極以外に、直流電流整流器、電流計、通電にかかる制御装置、被処理液を搬送するポンプおよび貯留タンク、その他安全装置等が備えられる。電流は、直流、パルス波形等によって通電制御しても良い。
【実施例1】
【0026】
全表面積1865cm2の2枚のエキスパンド状カソード2を、図1に示すように、面積2000cm2の平板状酸化チタンカソード3および同面積の白金電極(アノード)4を有する容量2Lの電解槽1に、白金電極4と短絡を生じないようエキスパンド状カソード2にスペーサ5を付けて挿入し、電解槽1内に全セレン濃度0.25mg/Lのモデル廃水を2.0L入れて電解を行った。この電解槽1の電極の表面積/電解液量の比は2.8cm2/cm3である。また、このとき挿入したエキスパンド状カソード2の表面積/体積の比は96.5cm2/cm3である。同じ幾何寸法を有する平板電極の表面積/体積の比は66.7cm2/cm3なので、表面積/体積比の倍率は1.45倍となる。なお、エキスパンド状カソード2の酸化チタン層による電気抵抗の増加は、無視できるほど小さかった。
【0027】
攪拌と溶存酸素除去のため、電解槽1の底に配置した配管7から窒素ガスバブリングを行いつつ全電流0.2Aで2時間電解を行い、残留セレン濃度およびセレン濃度の減少量を測定した。この実験を繰り返し実施した結果を図4に示す。1回目および2回目の電解処理では、ろ過後のろ液中の全セレン濃度は0.04mg/Lまで下がった。その後、徐々に残留セレン濃度が増加し、セレンの減少量が低下してきたが、10回目までの電解処理では、セレン濃度は全て0.1mg/L以下となった。その後、11回目から残留セレン濃度が0.1mg/L前後まで上昇したが、エキスパンド状カソード2を引き出して水洗、乾燥した後の14回目以降、再び安定して0.1mg/L以下まで電解できるようになり、水洗直後には0.05mg/Lと極めて低濃度までの電解が達成された。このように、カソードの表面積/体積の比を40cm2/cm3以上とすること、または同じ幾何寸法とした場合の体積との表面積/体積比の倍率を1.4倍以上とすることで、残留セレン濃度が大きく減少することがわかった。
【実施例2】
【0028】
図5に示すように、面積2000cm2の2枚の平板状の酸化チタンカソード23と、1枚のエキスパンド状白金電極(アノード)24を有する容量3.6Lの電解槽21に、セレン濃度11.4mg/Lの実廃水を入れて電解処理し、その電解液を再度同じ構造の別の電解槽21に入れて電解処理した。また、実廃水を電解槽21で1回電解処理した後に、その電解液を、実施例1に示した図1の電解槽1で電解処理した。これらの結果を表1に示す。図5の電解槽21の電極面積/電解液量の比は、1.11cm2/cm3である。
【0029】
【表1】

【0030】
セレン濃度が10mg/L以上から1mg/L以下までは、平板状の酸化チタンカソード23のみで十分に電解処理できた。しかし、同じ電流及び電解時間で、セレン濃度が1mg/mL以下まで下がった電解液を平板状の酸化チタンカソード23で電解処理しても、残留濃度は0.1mg/L付近に留まった。実質的には、2〜3割の確率で0.1mg/L以下まで電解できる場合もあるが、それ以外は、残留濃度が0.1mg/L以上となった。それに対して、実施例1に示す電解槽1では、前述の図4の結果および表1に示す通り、安定して0.1mg/L以下まで電解処理でき、0.039mg/Lと極めて低濃度までの電解処理が行われることもあった。
【0031】
尚、表1では、(5)〜(7)の試験時の方が、(1)〜(4)の試験時よりも電解電流値が大きいが、(1)、(2)の試験結果を見ると、(3)、(4)の試験時と同じ電流値及び電解時間でも、セレン濃度が10mg/L以上減少していることから、残留セレン濃度が高いのは、流れた電気量が不足しているためではないことがわかる。即ち、平板状のカソードでは、電極面積/電解液量が大きくても、セレン濃度が低くなると、安定した電解処理が困難となることがわかった。
【実施例3】
【0032】
図6に示すように、深さD=50cm、幅W=45cm、奥行きd=25cmのステンレス製容器からなる電解槽31に、エキスパンド状の酸化チタンで形成された面積2430cm2のカソード15枚と1700cm2のカソード1枚を入れ、対極として、目の粗いエキスパンドメタルに白金を塗布焼成して製作した白金電極(アノード)34を4枚入れた。この電解槽31に、全セレン濃度0.25mg/Lのモデル廃水を入れ、窒素ガスバブリングを行いつつ全電流2Aの電流で電解を行った。このときの電流密度は0.053mA/cm2である。また、この電解槽の電極の表面積/電解液量は、0.83cm2/cm3である。1時間ごとに溶液をサンプリングしてろ過し、ろ液中の全セレン濃度を測定した。結果を図7に示す。3時間以上の電解処理で、全セレン濃度が0.1mg/L以下まで下がった。更に、それ以降も極めて低濃度な0.05mg/L以下まで下がった。本実施例は、実施例2で示した平板状カソードを用いた電解槽21よりも電極面積/電解液量が小さいにもかかわらず、エキスパンド状カソード32を用いることにより、セレン濃度を低濃度まで安定して電解処理することが可能であった。
【実施例4】
【0033】
図8に示すように、内径B=134mm、高さH=250mmのチタン製の円筒容器の内面に白金を塗布焼成した容器を電解槽41兼アノードとし、その中に、幅が180mm、長さが580mm、元の板材の厚さが0.3mm、表面積が1200cm2、表面積/体積の比が97cm2/cm3のエキスバンドメタルをらせん形に巻いて成形したカソード42を装入した。電解槽41の底部には、複数の細孔を開けたポリエチレンチューブ43をらせん状に巻いて配置し、窒素ガスにより電解槽41内を攪拌した。この電解槽41には電解液が3.0L入り、このときの電極面積/電解液量は0.40cm2/cm3になる。この条件で、電流0.1ないし0.2A、2ないし1時間電解した結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
図8の電解槽41においては、残留セレン濃度が0.1mg/L以下まで下がる場合もあるが、0.1mg/L以下まで低下しない場合も見られた。このことより、体積に対して表面積の大きなカソードを用いても、電極面積/電解液量が0.40cm2/cm3以下の場合には、残留セレン濃度にばらつきがあり、安定して0.1mg/L以下まで電解できないことがわかった。即ち、電極面積/電解液量は、少なくとも0.40cm2/cm3以上に設計することが望ましいことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、セレン酸イオンやテルル酸イオン、亜セレン酸イオン、亜テルル酸イオンを含む産業廃水や汚染地下水などの水から、これらを分離回収する水の電解処理用カソードおよび電解槽に適用できる。その他の重金属を含む水の電解にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明にかかる電解槽の例を示す斜視図。
【図2】図1の電解槽の縦断面図。
【図3】本発明にかかるカソードの他の形状例を示す正面図。
【図4】実施例1による電解処理の結果を示すグラフ。
【図5】実施例2で用いた電解槽を示す斜視図。
【図6】実施例3で用いた電解槽を示す斜視図。
【図7】実施例3による電解処理の結果を示すグラフ。
【図8】実施例4で用いた電解槽を示す斜視図。
【符号の説明】
【0038】
1,21,31,41 電解槽
2,32,42 エキスパンド状カソード
3,23 酸化チタンカソード
4,24,34 白金電極
5 スペーサ
7 配管
10 被処理液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に含まれるセレン酸イオン、亜セレン酸イオン、テルル酸イオン、亜テルル酸イオンのうち少なくともいずれか1種以上を、金属酸化物半導体をカソードとして用いる電気分解により0価の固体元素の形態に還元して析出させ、水中からセレン及び/またはテルルを分離回収する水の電解処理に用いられるカソードであって、
表面積/体積の比が、40cm2/cm3以上であることを特徴とする、電解処理用カソード。
【請求項2】
メッシュ状、エキスパンド状、または複数の細孔を設けた構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の電解処理用カソード。
【請求項3】
同じ幾何形状を有する平板電極に対して1.4倍以上の表面積/体積の比をもち、全表面が金属酸化物半導体で覆われていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電解処理用カソード。
【請求項4】
板状または板状部材を折り曲げた形状であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電解処理用カソード。
【請求項5】
金属酸化物を構成する金属単体、ないしその金属を含む合金を、板状または板状部材を折り曲げた形状に加工した後、電解液中で電解酸化させて表面に金属酸化物半導体を形成させたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の電解処理用カソード。
【請求項6】
前記金属酸化物が酸化チタンであり、導電性の基材の上に酸化チタン膜の層を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の電解処理用カソード。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のカソード、アノード、および電極保持機構を有し、前記カソードおよび前記アノードを、電極を分解ないし変形することなく別々に取り出して洗浄可能であることを特徴とする、電解槽。
【請求項8】
前記電極の表面積/電解槽容量の比が、0.4cm2/cm3以上であることを特徴とする、請求項7に記載の電解槽。
【請求項9】
前記電解槽内に均一に対流を起こさせる攪拌手段を有することを特徴とする、請求項7および8に記載の電解槽。
【請求項10】
前記攪拌手段が、不活性ガスのバブリングであることを特徴とする、請求項9に記載の電解槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−127068(P2009−127068A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301233(P2007−301233)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(306024148)公立大学法人秋田県立大学 (74)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【Fターム(参考)】