電解槽および当該電解槽を備える電解水生成装置
【課題】電解水の精製度をより向上させることのできる電解槽および当該電解槽を備える電解水生成装置を得る。
【解決手段】陰極板2と陽極板3とを、両電極板2、3間に隔膜を介在させることなく対向配置し、陰極板2と陽極板3との間に電気分解される原水の通水路4を形成し、陰極板2に陰極水流出孔22を設けるとともに陽極板3に陽極水流出孔32を設けた。そして、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2、3の背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって突出する噴気孔形状とした。
【解決手段】陰極板2と陽極板3とを、両電極板2、3間に隔膜を介在させることなく対向配置し、陰極板2と陽極板3との間に電気分解される原水の通水路4を形成し、陰極板2に陰極水流出孔22を設けるとともに陽極板3に陽極水流出孔32を設けた。そして、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2、3の背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって突出する噴気孔形状とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解槽および当該電解槽を備える電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、陰極板を中央に配置し、当該陰極板の両側に隔膜を介在させることなく一対の陽極板を対向配置し、それら陰極板と陽極板との間を通水路とした無隔膜型の電解槽が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、通水路の下流側端が陰極水の出口となっており、それぞれの陽極板に形成した開口部が酸性水の流出孔となっている。
【0004】
このように、電解水の流出孔を電極板に設けることで、電解水が層流状態で流れる場合に、電極板に沿って生成された電解水を流出孔から回収できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−339690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、電極板に形成した電解水の流出孔は、通水路に対して垂直に開口するように形成されており、当該流出孔の周縁にはエッジが残っている。そのため、電極板に沿って生成された電解水を流出孔からスムーズに流出させにくく、電解水の精製度が低下してしまうおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、電解水の精製度をより向上させることのできる電解槽および当該電解槽を備える電解水生成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、陰極板と陽極板とを備え、導入した原水を電気分解する電解槽であって、前記陰極板と前記陽極板とを隔膜を介在させることなく対向配置し、前記陰極板と前記陽極板との間に電気分解される原水の通水路を形成し、前記陰極板に陰極水流出孔を設けるとともに前記陽極板に陽極水流出孔を設け、前記陰極水流出孔および前記陽極水流出孔の形状を、前記通水路側からそれぞれの電極板の背面側に向かって滑らかな曲面をもって突出する噴気孔形状としたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、隔膜を介在させることなく陰極板と陽極板とを対向配置した無隔膜型の電解槽において、陰極水流出孔および陽極水流出孔の形状を、通水路側からそれぞれの電極板の背面側に向かって滑らかな曲面をもって突出する噴気孔形状とした。そのため、それぞれの電極板に沿って生成された電解水を、それぞれの流出孔の周縁に設けられる曲面に沿ってスムーズに流出孔から流出させることができる。
【0010】
したがって、通水路を流れる原水の流速が速くなった場合や通水路に導入される原水(例えば水道水)に脈流が生じている場合であっても、陰極水および陽極水を陰極水流出孔および陽極水流出孔からより安定して流出させることが可能となる。その結果、無隔膜型の電解槽であっても、陰極水流出孔および陽極水流出孔から取り出す陰極水および陽極水の精製度をより高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態にかかる電解槽を概略的に示す側断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態にかかる電解槽で用いられる電極板を概略的に示す正面図である。
【図3】図3は、本発明の第2実施形態にかかる電解槽を概略的に示す側断面図である。
【図4】図4は、本発明の第3実施形態にかかる電解槽を概略的に示す側断面図である。
【図5】図5は、本発明の第3実施形態にかかる電解槽で用いられる電極板を概略的に示す正面図である。
【図6】図6は、本発明の第4実施形態にかかる電解槽を概略的に示す側断面図である。
【図7】図7は、本発明の第5実施形態にかかる電極板を概略的に示す正面図である。
【図8】図8は、図7のI−I断面図である。
【図9】図9は、図7に示す電極板の1つの電解水流出孔を拡大して示す説明図である。
【図10】図10は、図7に示す電解水流出孔の変形例を拡大して示す説明図である。
【図11】図11は、本発明の第6実施形態にかかる電極板を概略的に示す正面図である。
【図12】図12は、本発明の第7実施形態にかかる電極板を概略的に示す正面図である。
【図13】図13は、本発明の第8実施形態にかかる電解槽を概略的に示す側断面図である。
【図14】図14は、本発明の第9実施形態にかかる電解水生成装置を概略的に示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下では、浄化部で浄化された浄水についても原水として説明する。すなわち、本発明では、電解槽に導入される水(電解水が生成される前の水)を原水と定義する。
【0013】
また、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
本実施形態にかかる電解槽1は、図1に示すように、マイナス電圧が印加される陰極板(電極板)2と、プラス電圧が印加される陽極板(電極板)3とを備えている。これら両電極板2、3は、チタン材などの耐食性に優れた基材を用いて形成されており、図2に示すように、平板状に形成されている。
【0015】
陰極板2および陽極板3の上端部には、各電極板2、3に電圧を印加するための主電極端子2Tm、3Tmが圧接や溶接等により設けられている。また、陰極板2および陽極板3のそれぞれの基材表面2a,3aには、白金などの良導電材料をメッキまたは焼成した導電被膜(導電材)21、31が形成されている。
【0016】
陰極板2と陽極板3とは、両電極板2、3間に、通常設けられる隔膜などの介在物を存在させることなく所定間隔Sを設けて対向配置されており、両電極板2、3間が電気分解しようとする原水の通水路4となっている。なお、本実施形態では、陰極板2および陽極板3の互いに対向する側を表面2a、3aとして説明する。また、通水路4に導入する原水としては、水道水や井戸水、それらを濾過した浄水などの飲用可能な水が使用される。
【0017】
陰極板2および陽極板3は、合成樹脂で形成された箱状の外装ケース5の内方に収納されている。この陰極板2と陽極板3は、例えば、所定間隔Sを保った状態でそれぞれの外周部をインサート成形することで、直接、またはシール材を介して外装ケース5に固定される。
【0018】
そして、外装ケース5の底面51には、通水路4の下部に通ずる原水の流入口6が設けられる。なお、本実施形態では、通水路4の下流端(上部)が外装ケース5の天面52によって閉塞されている。
【0019】
また、陰極板2の上部(下流部)には、電気分解時に生成された陰極水(アルカリイオン水)を排出する陰極水流出孔22が設けられている。また、陽極板3の上部(下流部)には、電気分解時に生成された陽極水(酸性水)を排出する陽極水流出孔32が設けられている。
【0020】
そして、流入口6から導入された原水は、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32に向かって通水路4を下方から上方へと流れるようになっている。なお、本実施形態では、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を、図2に示すように、横長の矩形状に形成しているが、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状は、矩形状に限定されるものではなく、他の形状となるように形成してもよい。
【0021】
さらに、本実施形態では、両電極板2、3を外装ケース5に収納した状態で、陰極板2の背面2b側および陽極板3の背面3b側における外装ケース5の側面53、54との間に空間部が設けられている。
【0022】
陰極板2の背面2b側の空間部は、陰極水流出孔22から流出した陰極水が導入される陰極側通水路5Aとなっている。この陰極側通水路5Aには、陰極水流出孔22から流出した陰極水が一時的に溜まり、陰極側通水路5Aに溜まった陰極水は陰極水取出口71から取り出される。
【0023】
一方、陽極板3の背面3b側の空間部は、陽極水流出孔32から流出した陽極水が導入される陽極側通水路5Bとなっている。この陽極側通水路5Bには、陽極水流出孔32から流出した陽極水が一時的に溜まり、陽極側通水路5Bに溜まった陽極水は陽極水取出口72から取り出される。
【0024】
本実施形態では、陰極水取出口71は、外装ケース5の側面53の上部に設けられており、陽極水取出口72は、外装ケース5の側面54の上部に設けられている。なお、本実施形態では、電解槽1は、通水路4の中心に対してほぼ左右対称の配置構成となっている。
【0025】
ここで、本実施形態では、図1に示すように、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を、通水路4側からそれぞれの電極板2、3の背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。
【0026】
次に、かかる構成の電解槽1の動作について説明する。
【0027】
まず、流入口6に原水を供給しつつ、陰極板2と陽極板3との間に所定の電圧を印加することで、通水路4を流れる原水を電気分解する。この電気分解により、陰極板2に沿って陰極水が生成され、陽極板3に沿って陽極水が生成される。
【0028】
このとき、陰極板2の表面2aに沿って陰極水が生成され、生成された陰極水は陰極板2の表面2aに沿って下流に流れる。同様に、陽極板3の表面3aに沿って陽極水が生成され、生成された陽極水は陽極板3の表面3aに沿って下流に流れる。そして、陰極板2の表面2aに沿って流れる陰極水は、陰極水流出孔22に到達することで、陰極水流出孔22から陰極側通水路5Aに流出することになる。同様に、陽極板3の表面3aに沿って流れる陽極水は、陽極水流出孔32に到達することで、陽極水流出孔32から陽極側通水路5Bに流出することになる。
【0029】
そして、陰極側通水路5Aに導入された陰極水が陰極水取出口71から取り出される。このとき、導入された陰極水の一部は陰極側通水路5Aに一旦溜められた後陰極水取出口71から取り出される。同様に、陽極側通水路5Bに導入された陽極水が陽極水取出口72から取り出される。このとき、導入された陽極水の一部は陽極側通水路5Bに一旦溜められた後、陽極水取出口72から取り出される。そして、陰極水取出口71から取り出される陰極水(アルカリイオン水)は、例えば、飲用水として用いられる。一方、陽極水取出口72から取り出される陽極水(酸性水)は、廃棄されたり、例えば、電極の逆洗浄時に用いられる洗浄水等他の目的のために用いられたりする。
【0030】
以上説明したように、本実施形態にかかる電解槽1は、隔膜を介在させることなく陰極板2と陽極板3とを対向配置した無隔膜型の電解槽である。そして、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2、3の背面2b、3b側に向かって曲面Rをもって突出する噴気孔形状としている。そのため、それぞれの電極板2、3に沿って生成された電解水(陰極水および陽極水)を、それぞれの流出孔22,32の周縁に設けられる曲面Rに沿ってスムーズに流出孔22,32から流出させることができる。
【0031】
したがって、通水路4を流れる原水の流速が速くなった場合や通水路4に導入される原水(例えば水道水)に脈流が生じている場合であっても、陰極水および陽極水を陰極水流出孔22および陽極水流出孔32からより安定して流出させることが可能となる。その結果、無隔膜型の電解槽1であっても、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から取り出す陰極水および陽極水の精製度をより高めることができるようになる。
【0032】
また、本実施形態によれば、陰極板2の背面2b側および陽極板3の背面3b側に、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から流出した陰極水および陽極水が導入されて一時的に溜まる陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bを設けている。このような陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bは、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から流出した陰極水および陽極水のバッファ容器として機能する。
【0033】
したがって、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bを設けることで、それぞれの電解水の水質をより安定させることができるようになる。
【0034】
例えば、水道水などのように脈動が存在する原水が流入口6から通水路4内に導入された場合、通水路4内の流速が脈動により変化し、通水路4内の流速変化の影響によって電極板2、3で生成される電解水の水質(pH値など)が変動してしまう。このように水質が変動し易い陰極水および陽極水を陰極水取出口71および陽極水取出口72から直接取り出すようにすると、得られる電解水の水質をほぼ一定の状態に維持することが難しい。しかしながら、本実施形態のように、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bを設けることで、異なる水質の電解水は、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bに一旦溜められることになる。このように、異なる水質の電解水を陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bに溜めるようにすれば、それぞれの電解水の水質は、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bに溜まっている間により均一になる。
【0035】
すなわち、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bを設けることで、通水路4を流れる原水の流速が速くなった場合や通水路4に導入される原水(例えば水道水)に脈流が生じている場合であっても、より安定した水質の電解水を得ることができるようになる。
【0036】
また、本実施形態の電解槽1は、陰極板2と陽極板3との間に介在物、つまり、陰極室と陽極室とを仕切る隔膜が存在しない無隔膜型の電解槽であるため、電解槽1の小型化を図ることができる。
【0037】
(第2実施形態)
本実施形態にかかる電解槽1Aは、上記第1実施形態の電解槽1とほぼ同様の構成をしており、マイナス電圧が印加される陰極板(電極板)2と、プラス電圧が印加される陽極板(電極板)3とを備えている。
【0038】
そして、本実施形態にあっても、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2、3の背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。
【0039】
ここで、本実施形態の電解槽1Aが上記第1実施形態の電解槽1と主に異なる点は、陰極側通水路5Aと陽極側通水路5Bとを無くしたことにある。すなわち、本実施形態では、陰極板2の背面2bに外装ケース5の側面53を密接させ、陽極板3の背面3bに外装ケース5の側面54を密接させるようにしている。そして、陰極水流出孔22から流出した陰極水を陰極水取出口71から直接取り出せるように、陰極水流出孔22に陰極水取出口71を連通させている。同様に、陽極水流出孔32から流出した陽極水を陽極水取出口72から直接取り出せるように、陽極水流出孔32に陽極水取出口72を連通させている。
【0040】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態とほぼ同様の作用、効果を奏することができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、陰極水流出孔22に陰極水取出口71を連通させるとともに、陽極水流出孔32に陽極水取出口72を連通させている。そのため、電気分解により生成され、陰極板2の陰極水流出孔22から流出した陰極水を陰極水取出口71から速やかに取り出すことができる。また、電気分解により生成され、陽極板3の陽極水流出孔32から流出した陽極水を陽極水取出口72から速やかに取り出すことができる。
【0042】
また、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bを設けないようにすることで、電解槽1Aの小型化を図ることが可能となる。さらに、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bを設けないようにすることで、電解槽1Aの運転を停止した際に電解水が滞る箇所を無くすことができ、電解槽1Aをより衛生的な状態に保つことができるという利点もある。
【0043】
(第3実施形態)
本実施形態にかかる電解槽1Bは、上記第1実施形態の電解槽1とほぼ同様の構成をしており、マイナス電圧が印加される陰極板(電極板)2と、プラス電圧が印加される陽極板(電極板)3とを備えている。
【0044】
そして、本実施形態にあっても陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、図4に示すように、通水路4側からそれぞれの電極板2、3の背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。
【0045】
また、本実施形態の電解槽1Bには、上記第1実施形態と同様に陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bが設けられている。
【0046】
ここで、本実施形態の電解槽1Bが上記第1実施形態の電解槽1と主に異なる点は、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を、それぞれの電極板2、3のほぼ全域に亘って複数設けたことにある。
【0047】
具体的には、図5に示すように、陰極板2および陽極板3には、それぞれ円形に形成された陰極水流出孔22および陽極水流出孔32が、それぞれの電極板2、3の全域に亘って縦・横方向に整然と複数形成されている。本実施形態では、それぞれの電極板2、3が縦長となる矩形状に形成されており、陰極板2には陰極水流出孔22が、陽極板3には陽極水流出孔32が、それぞれ縦方向に5行、横方向に3列設けられた場合を示している。なお、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32は、縦・横方向に整然と形成する必要はない。また、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状は、円形に限定されるものではない。例えば、横長の矩形状の流出孔を縦に複数形成するなど、電極板の様々な部位に様々な形状の流出孔を形成することができる。
【0048】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態とほぼ同様の作用、効果を奏することができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を、それぞれの電極板2、3のほぼ全域に亘って複数設けている。そのため、陰極板2で生成された陰極水を陰極板2のほぼ全域から流出させることができ、陽極板3で生成された陽極水を陽極板3のほぼ全域から流出させることができる。
【0050】
このように、陰極水および陽極水を電極板2,3のほぼ全域から流出させるようにすることで、陰極板2に沿って生成された陰極水と、陽極板3に沿って生成された陽極水とが、通水路4内で混じり合ってしまうのを抑制することができる。すなわち、陰極板2に沿って生成された陰極水と、陽極板3に沿って生成された陽極水とを、通水路4内で混じり合う前に複数の陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bに流出させることができる。その結果、陰極水と陽極水との分流効果をより一層高めて両電解水の相互拡散を防止することができるようになり、より精製度の高い電解水を得ることができる。
【0051】
また、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を複数設けることで、電極水の全体的な流出量が増加するため、電解時間を短縮させることができる。
【0052】
なお、本実施形態にあっても、上記第2実施形態にかかる電解槽1Aを適用することが可能である。すなわち、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bが設けられていない構造とすることもできる。
【0053】
(第4実施形態)
本実施形態にかかる電解槽1Cは、上記第3実施形態の電解槽1Bとほぼ同様の構成をしており、マイナス電圧が印加される陰極板(電極板)2と、プラス電圧が印加される陽極板(電極板)3とを備えている。
【0054】
また、円形の陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を、それぞれの電極板2、3のほぼ全域に亘って複数設けている。
【0055】
そして、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2、3の背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。
【0056】
また、本実施形態の電解槽1Cにも、上記第3実施形態と同様に陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bが設けられている。
【0057】
ここで、本実施形態の電解槽1Cが上記第3実施形態の電解槽1Bと主に異なる点は、通水路4の下流端に、余剰水を排出する放流口8を設けたことにある。
【0058】
具体的には、上記第3実施形態の電解槽1B(図4参照)では、通水路4の下流端が外装ケース5の天面52によって閉塞されているが、本実施形態では天面52に通水路4に通ずる放流口8が形成されている点が、上記第3実施形態と異なっている。
【0059】
このように、天面52に通水路4に通ずる放流口8を形成することで、流入口6から通水路4内に導入された原水のうち、電気分解されて陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から流出仕切れなかった余剰水が放流口8から外方に排出されることになる。
【0060】
以上の本実施形態によっても、上記第3実施形態とほぼ同様の作用、効果を奏することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、通水路4の下流端に放流口8を設けたため、通水路4内を下流側へと流れる余剰水を最終的に放流口8から排出することができる。その結果、通水路4内の余剰水が下流端で逆流し、電解水が通水路4内で乱れてしまうのを抑制することができ、陰極水と陽極水の相互拡散を抑えてより一層精製度の高い電解水を得ることができるようになる。
【0062】
なお、本実施形態にあっても、上記第1実施形態の電解槽1を適用することが可能である。また、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bの有無に関係なく本実施形態を適用することができる。
【0063】
(第5実施形態)
本実施形態にかかる電極板2A、3Aは、上記第3実施形態の電極板2、3とほぼ同様の構成をしており、円形の陰極水流出孔22および陽極水流出孔32が、それぞれの電極板2A、3Aのほぼ全域に亘って複数設けられている。
【0064】
そして、本実施形態にあっても、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2A、3Aの背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。
【0065】
ここで、本実施形態の電極板2A、3Aが上記第3実施形態の電極板2、3と主に異なる点は、導電被膜(導電材)21S、31Sを、電極板2A、3Aにおける陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲を含む所定範囲のみに限定して設けたことにある。すなわち、本実施形態では、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲の所定範囲に限定して導電被膜(導電材)21S、31Sを設けている。
【0066】
具体的には、図8に示すように、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲に、それぞれの流出孔22、32の開口径D1よりも大きな被膜径D2をもって同心状に導電被膜21S、31Sを設けている。
【0067】
このとき、D1とD2の関係が、D2≦3×D1となるように導電被膜21S、31Sを設けることが好ましい。こうすれば、導電被膜21S、31S近傍で陰極水および陽極水を生成することができるため、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から流出されない陰極水および陽極水の量を少なくすることができる。なお、図9では、D2=3×D1となる(D2が最大となる)ように導電被膜21S、31Sを設けた場合を例示している。
【0068】
以上の本実施形態によっても、上記第3実施形態とほぼ同様の作用、効果を奏することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、電極板2、3における陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲を含む所定範囲のみに限定して導電被膜21S、31Sを設けている。このように、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲の所定範囲に限定して導電被膜(導電材)21S、31Sを設けることで、それぞれの流出孔22、32を通過しようとする瞬間の原水が電気分解されるようになる。その結果、陰極水と陽極水とが混じり合ってしまうのをより一層抑制することができるようになる。
【0070】
つまり、導電被膜21、31を電極板2A、3Aの全面に設けた場合には、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から離れた部分でも原水が電気分解されて陰極水と陽極水が生成されてしまう。このため、陰極水と陽極水は陰極水流出孔22および陽極水流出孔32に到達する前に互いに混じり合う可能性が高まることになる。
【0071】
これに対して、本実施形態では、導電被膜21Sにより陰極水流出孔22の近傍で積極的に陰極水が生成され、また、導電被膜31Sにより陽極水流出孔32の近傍で積極的に陽極水が生成されることとなる。そのため、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の近傍で生成された陰極水および陽極水の大半は、生成されるとすぐに陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から流出されることとなる。その結果、陰極水と陽極水が混じり合う場を少なくすることができる。
【0072】
このように、電極板2、3における陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲を含む所定範囲のみに限定して導電被膜21S、31Sを設けることで、陰極水と陽極水の分流を促進して電極水が相互に拡散してしまうのを抑制することができる。その結果、より精製度の高い電解水を得ることができる。なお、導電被膜21S、31Sには白金などの高価な貴金属が用いられているが、本実施形態によれば、高価な導電被膜21S、31Sの使用量を削減することができるため、コスト削減を図ることができる。
【0073】
なお、本実施形態にあっても、上記第1実施形態の電解槽1を適用することが可能である。また、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bの有無に関係なく本実施形態を適用することができる。
【0074】
ところで、本実施形態では、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32が円形である場合を例示したが、流出孔22、32の形状はこれに限定されるものではなく、様々な形状とすることができる。
【0075】
例えば、図10に示すように、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、ほぼ楕円形である陰極水流出孔22および陽極水流出孔32としてもよい。この場合、短軸方向の開口径D1と被膜径D2との関係が、D2≦3×D1となるように導電被膜21S、31Sを設けることが好ましい。なお、図10では、D2=3×D1となる(D2が最大となる)ように導電被膜21S、31Sを設けた場合を例示しており、上述した円形の陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の場合と同様の機能を有している。
【0076】
(第6実施形態)
本実施形態にかかる電極板2B、3Bは、上記第5実施形態の電極板2A、3Aとほぼ同様の構成をしており、円形の陰極水流出孔22および陽極水流出孔32が、それぞれの電極板2B、3Bのほぼ全域に亘って複数設けられている。
【0077】
そして、本実施形態にあっても、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2B、3Bの背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。
【0078】
さらに、導電被膜(導電材)21S、31Sを、電極板2B、3Bにおける陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲を含む所定範囲のみに限定して設けている。
【0079】
ここで、本実施形態が上記第5実施形態と主に異なる点は、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲に設けた個々の導電被膜21S、31Sを、導電配線23、33を介して主電極端子2Tm、3Tmと電気的に接続したことにある。
【0080】
導電配線23、33は、導電被膜21S、31Sと同様に、白金などの良導電材料をメッキまたは焼成することで陰極板2Bおよび陽極板3Bのそれぞれの基材表面2a,3aに設けられる。本実施形態では、導電配線23、33は、陰極板2Bおよび陽極板3Bに印加する電圧を十分に供給できる幅を持った細い帯状に設けられ、個々の導電被膜21S、31Sをそれぞれ直列に接続するようにしている。
【0081】
すなわち、本実施形態では、個々の導電被膜21S、31Sは、図11に示すように接続されている。具体的には、まず、4行3列に配列された導電被膜21S、31Sを、導電配線23、33によって最上部の3列を直列接続する。その後、次の行の3列に垂直に下ってそれら3列の導電被膜21S、31Sを直列接続する。かかる工程を順次行うことで、導電被膜21S、31Sが導電配線23、33によって直列接続され、導電配線23、33は全体としてクランク状に配線されることとなる。このとき、最上部の3列の導電被膜21S、31Sのうち接続始端部の導電被膜21S、31Sは、導電配線23、33によって主電極端子2Tm、3Tmに接続される。
【0082】
以上の本実施形態によっても、上記第3実施形態とほぼ同様の作用、効果を奏することができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲に設けた個々の導電被膜21S、31Sを、導電配線23、33を介して主電極端子2Tm、3Tmと電気的に接続している。このように、導電被膜21S、31Sを、導電配線23、33を介して主電極端子2Tm、3Tmと電気的に接続させることで、主電極端子21、31に入力された電圧を、導電配線23、33を介して個々の導電被膜21S、31Sに印加することができる。
【0084】
つまり、上記第5実施形態(図7参照)の場合には、主電極端子2Tm、3Tmに入力された電圧は、電極板2A、3Aの一般部分を介して個々の導電被膜21S、31Sに印加されるため、電気抵抗によるロスが発生する。これに対し、本実施形態では、導電配線23、33を設けているため、より小さい電気抵抗で個々の導電被膜21S、31Sに電圧印加することができ、上記第5実施形態の構成と比べて電解効率を高めることができる。
【0085】
また、導電配線23、34は、個々の導電被膜21S、32Sを直列に接続しているため、並列に接続する場合に比べて導電配線23、34の長さを短くすることができ、コストの削減を図ることができる。
【0086】
なお、本実施形態にあっても、上記第1実施形態の電解槽1を適用することが可能である。また、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bの有無に関係なく本実施形態を適用することができる。
【0087】
(第7実施形態)
本実施形態にかかる電極板2C、3Cは、上記第6実施形態の電極板2B、3Bとほぼ同様の構成をしており、円形の陰極水流出孔22および陽極水流出孔32が、それぞれの電極板2B、3Bのほぼ全域に亘って複数設けられている。
【0088】
そして、本実施形態にあっても、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2C、3Cの背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。
【0089】
さらに、導電被膜(導電材)21S、31Sを、電極板2C、3Cにおける陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲を含む所定範囲のみに限定して設けている。
【0090】
そして、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲に設けた個々の導電被膜21S、31Sを、導電配線23、33を介して主電極端子2Tm、3Tmと電気的に接続している。
【0091】
ここで、本実施形態が上記第6実施形態と主に異なる点は、電極板2C、3Cに、主電極端子2Tm、3Tm以外に、導電配線23、33に接続されない副電極端子2Ts、3Tsを設けたことにある。
【0092】
このように、副電極端子2Ts、3Tsを設けることで、生成したい電解レベル(例えばpH値)に応じて、主電極端子2Tm、3Tmと副電極端子2Ts、3Tsとを切り換えて個々の導電被膜21S、31Sに電圧印加できるようにしている。
【0093】
すなわち、主電極端子2Tm、3Tmに電圧を入力すれば、電気抵抗の少ない導電配線23、33を介して個々の導電被膜21S、31Sに電圧を印加することができる。一方、副電極端子2Ts、3Tsに電圧を入力すれば、電気抵抗が大きな電極板2C、3Cの基材を介して個々の導電被膜21S、31Sに電圧を印加することができる。
【0094】
このように、本実施形態では、主電極端子2Tm、3Tmと副電極端子2Ts、3Tsのいずれか一方を選択して電圧を入力させるようにすることで、導電被膜21S、31Sに電圧印加する電気抵抗を変化させることができるようにしている。具体的には、電気抵抗が小さくなる主電極端子2Tm、3Tmに電圧を入力すれば、個々の導電被膜21S、31Sの電解性能を高めることができる。一方、電気抵抗が大きくなる副電極端子2Ts、3Tsに電圧を入力すれば、個々の導電被膜21S、31Sの電解性能を低下させることができる。
【0095】
このように、電極板2C、3Cに、主電極端子2Tm、3Tm以外に、導電配線23、33に接続されない副電極端子2Ts、3Tsを設けることで、主電極端子2Tm、3Tmと副電極端子2Ts、3Tsとの切り換えを以下のように制御することができる。
【0096】
例えば、通常使用の場合、主電極端子2Tm、3Tmを用いて、生成される陰極水(アルカリ水)のpH値が中性領域(例えばpH7.0〜8.5)となるように制御する。そして、原水の水質などにより、電解効率が高い主電極端子2Tm、3Tmを用いるとpH値が8.5を超えてしまい中性領域で安定させることが困難な場合には、主電極端子2Tm、3Tmと副電極端子2Ts、3Tsとの切り換えを行う。このように、電解効率の低い副電極端子2Ts、3Tsに切り替えることで、通常使用(主電極端子2Tm、3Tmを用いた場合)では中性領域で安定させることが困難な場合であっても、比較的容易にpH値が中性領域となるように制御することが可能となる。
【0097】
以上、説明したように、本実施形態では、電解性能が比較的高い主電極端子2Tm、3Tmと、電解性能が比較的低い副電極端子2Ts、3Tsとを切り替えて電解制御できるようにしたため、電解水の制御態様の範囲を広げて利便性を拡大することができる。
【0098】
なお、本実施形態にあっても、上記第1実施形態の電解槽1を適用することが可能である。また、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bの有無に関係なく本実施形態を適用することができる。
【0099】
(第8実施形態)
本実施形態にかかる電解槽1Dは、上記第4実施形態の電解槽1Cとほぼ同様の構成をしており、マイナス電圧が印加される陰極板(電極板)2と、プラス電圧が印加される陽極板(電極板)3とを備えている。
【0100】
また、円形の陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を、それぞれの電極板2、3のほぼ全域に亘って複数設けている。
【0101】
また、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2、3の背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。そして、本実施形態の電解槽1Dにも、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bが設けられており、通水路4の下流端には、余剰水を排出する放流口8が設けられている。なお、陰極側通水路5Aの陰極水取出口71および陽極側通水路5Bの陽極水取出口72は、通水路4の下流部(図13中上方)に対応した部位に設けられている。
【0102】
ここで、本実施形態の電解槽1Dが上記第4実施形態の電解槽1Cと主に異なる点は、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bを、それぞれの下流部容積Q2、P2を上流部容積Q1、P1よりも大きくしたことにある。
【0103】
具体的には、本実施形態の電解槽1Dは、図13に示すように、対向配置した陰極板2と陽極板3とを傾斜させて、それらの間隔Sが上流側となる下部で広い間隔S1となり、下流側となる上部で狭い間隔S2(S1>S2)となるようにしている。これにより、箱状に形成された外装ケース5内で、電極板2、3の背面2b、3b側に設けられた陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bの容積が上流部と下流部とで異なるようになる。
【0104】
すなわち、陰極側通水路5Aの上流部(図13中下部)の容積をQ1、下流部(図13中上部)の容積をQ2とすると、陰極側通水路5Aの全体容積は上流から下流に向かってQ1からQ2(Q1<Q2)へと連続的に増大することとなる。また、陽極側通水路5Bの上流部(図13中下部)の容積をP1、下流部(図13中上部)の容積をP2とすると、陽極側通水路5Bの全体容積は上流から下流に向かってP1からP2(P1<P2)へと連続的に増大することとなる。なお、本実施形態では、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bは通水路4の中心に対してほぼ左右対称となっている。
【0105】
また、流入口6は、原水を取り入れる上流側から通水路4に至る下流側が滑らかに拡幅するように逆台形状に形成されている。このように、逆台形状に形成することで流入口6から通水路4に原水をスムーズに流入させることができる。
【0106】
以上の本実施形態によっても、上記第4実施形態とほぼ同様の作用、効果を奏することができる。
【0107】
ところで、上述したように、電極板2、3に、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を各電極板2、3のほぼ全域に亘って複数設けることで、生成された陰極水と陽極水とが混ざり合うのを抑制することができる。ところが、陰極側通水路5Aに溜められた陰極水および陽極側通水路5Bに溜められた陽極水の濃度は、下流側となる上部に行くほど高くなるため濃度勾配が生じてしまう。そして、この濃度勾配が著しい場合には、新たに濃度勾配による拡散作用が生じてしまい、陰極水と陽極水とが相互に混ざり合ってしまうおそれがある。
【0108】
しかしながら、本実施形態では、濃度が高くなる陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bの下流部の容積Q2、P2を、上流部の容積Q1、P1よりも広くしているため、濃度勾配を緩和することができ、拡散作用を抑制することができる。これにより、陰極水と陽極水とが相互に混ざり合うのを抑制することができ、陰極水取出口71および陽極水取出口72からは精製度の高い電解水を取り出すことができる。
【0109】
なお、本実施形態にあっても、上記第3実施形態の電解槽1Bを適用することが可能である。また、上記第5実施形態の電極板2A、3A、第6実施形態の電極板2B、3Bおよび第7実施形態の電極板2C、3Cを用いた電解槽にあっても本実施形態を適用することが可能である。
【0110】
(第9実施形態)
図14は、本実施形態にかかる電解水生成装置100を示しており、この電解水生成装置100は、上記第1から第8実施形態のいずれか1つの電解槽を用いて構成されている。なお、図14では、上記第4実施形態の電解槽1Cを用いた電解水生成装置100を例示している。
【0111】
本実施形態の電解水生成装置100は、水道管101から供給される水道水を原水として導入する導入管102を有しており、この導入管102が電解槽1Cの流入口6に接続されている。また、電解槽1Cの陰極水取出口71に接続される吐水管103と、陽極水取出口72に接続される廃棄管104と、放流口8に接続される放流管105とを有している。この廃棄管104と放流管105とは排水管106で合流して外方に廃棄されるようになっている。
【0112】
導入管102には、上流側から順に蛇口などの水栓110と、浄水カートリッジ111と、積算流量計112と、カルシウム添加筒113とが配置されている。水栓110は電解水生成装置100のケース120の外方に位置しており、この水栓110の開閉により原水が導入または停止されるようになっている。浄水カートリッジ111、積算流量計112およびカルシウム添加筒113は、ケース120の内方に収納されている。浄水カートリッジ111は、活性炭や中空糸膜あるいは濾過膜などが内蔵されており、導入された原水を浄化するものである。積算流量計112は、導入管102を通過する原水流量を計測し、その計測データを制御手段であるコントローラ130に送るようになっている。カルシウム添加筒113は、電解槽1Cに供給する原水にカルシウム成分を添加するようになっている。
【0113】
吐水管103は、電解槽1Cの陰極水取出口71から流出したアルカリ水を、飲用としてケース120の外方に取り出すようになっている。また、廃棄管104は、電解槽1Cの陽極水取出口72から流出した酸性水を取り出し、放流管105は、電解槽1Cの放流口8から流出した余剰水を取り出すようになっている。そして、取り出した酸性水および余剰水を、排水管106を介してケース120の外方に廃棄するようになっている。
【0114】
コントローラ130は、ケース120の内方に収納されており、コンセント131から電源部132を介して電力が供給される。そして、コントローラ130からは電解槽1Cに内蔵した電極板2、3の主電極端子22、32に、制御した電圧を出力するようになっている。また、コントローラ130には操作表示部133が電気的に接続されており、電解水生成装置100の動作状態を監視したり、電解水生成装置100に対する動作設定を行うことができるようになっている。
【0115】
かかる構成の電解水生成装置100では、水栓110を開弁することにより水道管101の原水は導入管102に導入され、まず、浄水カートリッジ111で濾過される。その後、積算流量計112を通過して流量計測された後にカルシウム添加筒113でカルシムが所定量添加されて、流入口6から電解槽1Cの通水路4に導入される。
【0116】
コントローラ130から出力される制御電圧が陰極板2および陽極板3の主電極端子2Tm、3Tmに入力されることで、通水路4に導入された原水が電気分解され、陰極水(アルカリイオン水)が陰極水取出口71から吐出管103を経由して取り出される。一方、電解槽1Cで電気分解された陽極水(酸性水)は、陽極水取出口72から廃棄管104に取り出された後、排水管106から廃棄される。また、放流口8から放出された余剰水は放流管105に取り出された後、上記陽極水と一緒に排水管106から廃棄される。
【0117】
以上説明したように、本実施形態の電解水生成装置100では、上記第4実施形態の電解槽1Cを用いている。すなわち、本実施形態の電解水生成装置100を用いることで、電解槽1Cが有する機能を享受して精製度の高いアルカリ水を得ることができる。また、本実施形態の電解槽1Cは無隔膜型であるため、電解槽1Cの小型化を図ることができ、ひいては、電解水生成装置100の小型化を図ることが可能となる。さらに、無隔膜型の電解槽1Cを用いることで構成の簡素化を図ることができる。また、隔膜を使用していないため電解水生成装置100の寿命を延ばすことができる。
【0118】
なお、上記第1〜第3実施形態および第8実施形態の電解槽1,1A,1B,1Dのうちいずれかを本実施形態の電解水生成装置100に用いることもできる。この場合、それぞれの電解槽1、1A、1B、1Dが有する機能を享受することができる。
【0119】
また、上記第5〜第7実施形態の電極板2A,3A、2B,3B、2C,3Cのうちいずれか1組を用いた電解槽を用いるようにしてもよい。この場合、それぞれの電極板2A,3A、2B,3B、2C,3Cが有する機能を享受することができる。
【0120】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0121】
例えば、電極板や浄化部、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0122】
1、1A、1B、1C、1D 電解槽
2、2A、2B、2C 電極板(陰極板)
2b 陰極板の背面
21、21S 導電被膜
22 陰極水流出孔
23 導電配線
2Tm 主電極端子
2Ts 副電極端子
3、3A、3B、3C 電極板(陽極板)
3b 陽極板の背面
31、31S 導電被膜
32 陽極水流出孔
33 導電配線
3Tm 主電極端子
3Ts 副電極端子
4 通水路
5A 陰極側通水路
5B 陽極側通水路
71 陰極水取出口
72 陽極水取出口
8 放流口
10 電解水生成装置
R 曲面
Q1、P1 上流部容積
Q2、P2 下流部容積
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解槽および当該電解槽を備える電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、陰極板を中央に配置し、当該陰極板の両側に隔膜を介在させることなく一対の陽極板を対向配置し、それら陰極板と陽極板との間を通水路とした無隔膜型の電解槽が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、通水路の下流側端が陰極水の出口となっており、それぞれの陽極板に形成した開口部が酸性水の流出孔となっている。
【0004】
このように、電解水の流出孔を電極板に設けることで、電解水が層流状態で流れる場合に、電極板に沿って生成された電解水を流出孔から回収できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−339690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、電極板に形成した電解水の流出孔は、通水路に対して垂直に開口するように形成されており、当該流出孔の周縁にはエッジが残っている。そのため、電極板に沿って生成された電解水を流出孔からスムーズに流出させにくく、電解水の精製度が低下してしまうおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、電解水の精製度をより向上させることのできる電解槽および当該電解槽を備える電解水生成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、陰極板と陽極板とを備え、導入した原水を電気分解する電解槽であって、前記陰極板と前記陽極板とを隔膜を介在させることなく対向配置し、前記陰極板と前記陽極板との間に電気分解される原水の通水路を形成し、前記陰極板に陰極水流出孔を設けるとともに前記陽極板に陽極水流出孔を設け、前記陰極水流出孔および前記陽極水流出孔の形状を、前記通水路側からそれぞれの電極板の背面側に向かって滑らかな曲面をもって突出する噴気孔形状としたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、隔膜を介在させることなく陰極板と陽極板とを対向配置した無隔膜型の電解槽において、陰極水流出孔および陽極水流出孔の形状を、通水路側からそれぞれの電極板の背面側に向かって滑らかな曲面をもって突出する噴気孔形状とした。そのため、それぞれの電極板に沿って生成された電解水を、それぞれの流出孔の周縁に設けられる曲面に沿ってスムーズに流出孔から流出させることができる。
【0010】
したがって、通水路を流れる原水の流速が速くなった場合や通水路に導入される原水(例えば水道水)に脈流が生じている場合であっても、陰極水および陽極水を陰極水流出孔および陽極水流出孔からより安定して流出させることが可能となる。その結果、無隔膜型の電解槽であっても、陰極水流出孔および陽極水流出孔から取り出す陰極水および陽極水の精製度をより高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態にかかる電解槽を概略的に示す側断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態にかかる電解槽で用いられる電極板を概略的に示す正面図である。
【図3】図3は、本発明の第2実施形態にかかる電解槽を概略的に示す側断面図である。
【図4】図4は、本発明の第3実施形態にかかる電解槽を概略的に示す側断面図である。
【図5】図5は、本発明の第3実施形態にかかる電解槽で用いられる電極板を概略的に示す正面図である。
【図6】図6は、本発明の第4実施形態にかかる電解槽を概略的に示す側断面図である。
【図7】図7は、本発明の第5実施形態にかかる電極板を概略的に示す正面図である。
【図8】図8は、図7のI−I断面図である。
【図9】図9は、図7に示す電極板の1つの電解水流出孔を拡大して示す説明図である。
【図10】図10は、図7に示す電解水流出孔の変形例を拡大して示す説明図である。
【図11】図11は、本発明の第6実施形態にかかる電極板を概略的に示す正面図である。
【図12】図12は、本発明の第7実施形態にかかる電極板を概略的に示す正面図である。
【図13】図13は、本発明の第8実施形態にかかる電解槽を概略的に示す側断面図である。
【図14】図14は、本発明の第9実施形態にかかる電解水生成装置を概略的に示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下では、浄化部で浄化された浄水についても原水として説明する。すなわち、本発明では、電解槽に導入される水(電解水が生成される前の水)を原水と定義する。
【0013】
また、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
本実施形態にかかる電解槽1は、図1に示すように、マイナス電圧が印加される陰極板(電極板)2と、プラス電圧が印加される陽極板(電極板)3とを備えている。これら両電極板2、3は、チタン材などの耐食性に優れた基材を用いて形成されており、図2に示すように、平板状に形成されている。
【0015】
陰極板2および陽極板3の上端部には、各電極板2、3に電圧を印加するための主電極端子2Tm、3Tmが圧接や溶接等により設けられている。また、陰極板2および陽極板3のそれぞれの基材表面2a,3aには、白金などの良導電材料をメッキまたは焼成した導電被膜(導電材)21、31が形成されている。
【0016】
陰極板2と陽極板3とは、両電極板2、3間に、通常設けられる隔膜などの介在物を存在させることなく所定間隔Sを設けて対向配置されており、両電極板2、3間が電気分解しようとする原水の通水路4となっている。なお、本実施形態では、陰極板2および陽極板3の互いに対向する側を表面2a、3aとして説明する。また、通水路4に導入する原水としては、水道水や井戸水、それらを濾過した浄水などの飲用可能な水が使用される。
【0017】
陰極板2および陽極板3は、合成樹脂で形成された箱状の外装ケース5の内方に収納されている。この陰極板2と陽極板3は、例えば、所定間隔Sを保った状態でそれぞれの外周部をインサート成形することで、直接、またはシール材を介して外装ケース5に固定される。
【0018】
そして、外装ケース5の底面51には、通水路4の下部に通ずる原水の流入口6が設けられる。なお、本実施形態では、通水路4の下流端(上部)が外装ケース5の天面52によって閉塞されている。
【0019】
また、陰極板2の上部(下流部)には、電気分解時に生成された陰極水(アルカリイオン水)を排出する陰極水流出孔22が設けられている。また、陽極板3の上部(下流部)には、電気分解時に生成された陽極水(酸性水)を排出する陽極水流出孔32が設けられている。
【0020】
そして、流入口6から導入された原水は、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32に向かって通水路4を下方から上方へと流れるようになっている。なお、本実施形態では、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を、図2に示すように、横長の矩形状に形成しているが、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状は、矩形状に限定されるものではなく、他の形状となるように形成してもよい。
【0021】
さらに、本実施形態では、両電極板2、3を外装ケース5に収納した状態で、陰極板2の背面2b側および陽極板3の背面3b側における外装ケース5の側面53、54との間に空間部が設けられている。
【0022】
陰極板2の背面2b側の空間部は、陰極水流出孔22から流出した陰極水が導入される陰極側通水路5Aとなっている。この陰極側通水路5Aには、陰極水流出孔22から流出した陰極水が一時的に溜まり、陰極側通水路5Aに溜まった陰極水は陰極水取出口71から取り出される。
【0023】
一方、陽極板3の背面3b側の空間部は、陽極水流出孔32から流出した陽極水が導入される陽極側通水路5Bとなっている。この陽極側通水路5Bには、陽極水流出孔32から流出した陽極水が一時的に溜まり、陽極側通水路5Bに溜まった陽極水は陽極水取出口72から取り出される。
【0024】
本実施形態では、陰極水取出口71は、外装ケース5の側面53の上部に設けられており、陽極水取出口72は、外装ケース5の側面54の上部に設けられている。なお、本実施形態では、電解槽1は、通水路4の中心に対してほぼ左右対称の配置構成となっている。
【0025】
ここで、本実施形態では、図1に示すように、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を、通水路4側からそれぞれの電極板2、3の背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。
【0026】
次に、かかる構成の電解槽1の動作について説明する。
【0027】
まず、流入口6に原水を供給しつつ、陰極板2と陽極板3との間に所定の電圧を印加することで、通水路4を流れる原水を電気分解する。この電気分解により、陰極板2に沿って陰極水が生成され、陽極板3に沿って陽極水が生成される。
【0028】
このとき、陰極板2の表面2aに沿って陰極水が生成され、生成された陰極水は陰極板2の表面2aに沿って下流に流れる。同様に、陽極板3の表面3aに沿って陽極水が生成され、生成された陽極水は陽極板3の表面3aに沿って下流に流れる。そして、陰極板2の表面2aに沿って流れる陰極水は、陰極水流出孔22に到達することで、陰極水流出孔22から陰極側通水路5Aに流出することになる。同様に、陽極板3の表面3aに沿って流れる陽極水は、陽極水流出孔32に到達することで、陽極水流出孔32から陽極側通水路5Bに流出することになる。
【0029】
そして、陰極側通水路5Aに導入された陰極水が陰極水取出口71から取り出される。このとき、導入された陰極水の一部は陰極側通水路5Aに一旦溜められた後陰極水取出口71から取り出される。同様に、陽極側通水路5Bに導入された陽極水が陽極水取出口72から取り出される。このとき、導入された陽極水の一部は陽極側通水路5Bに一旦溜められた後、陽極水取出口72から取り出される。そして、陰極水取出口71から取り出される陰極水(アルカリイオン水)は、例えば、飲用水として用いられる。一方、陽極水取出口72から取り出される陽極水(酸性水)は、廃棄されたり、例えば、電極の逆洗浄時に用いられる洗浄水等他の目的のために用いられたりする。
【0030】
以上説明したように、本実施形態にかかる電解槽1は、隔膜を介在させることなく陰極板2と陽極板3とを対向配置した無隔膜型の電解槽である。そして、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2、3の背面2b、3b側に向かって曲面Rをもって突出する噴気孔形状としている。そのため、それぞれの電極板2、3に沿って生成された電解水(陰極水および陽極水)を、それぞれの流出孔22,32の周縁に設けられる曲面Rに沿ってスムーズに流出孔22,32から流出させることができる。
【0031】
したがって、通水路4を流れる原水の流速が速くなった場合や通水路4に導入される原水(例えば水道水)に脈流が生じている場合であっても、陰極水および陽極水を陰極水流出孔22および陽極水流出孔32からより安定して流出させることが可能となる。その結果、無隔膜型の電解槽1であっても、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から取り出す陰極水および陽極水の精製度をより高めることができるようになる。
【0032】
また、本実施形態によれば、陰極板2の背面2b側および陽極板3の背面3b側に、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から流出した陰極水および陽極水が導入されて一時的に溜まる陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bを設けている。このような陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bは、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から流出した陰極水および陽極水のバッファ容器として機能する。
【0033】
したがって、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bを設けることで、それぞれの電解水の水質をより安定させることができるようになる。
【0034】
例えば、水道水などのように脈動が存在する原水が流入口6から通水路4内に導入された場合、通水路4内の流速が脈動により変化し、通水路4内の流速変化の影響によって電極板2、3で生成される電解水の水質(pH値など)が変動してしまう。このように水質が変動し易い陰極水および陽極水を陰極水取出口71および陽極水取出口72から直接取り出すようにすると、得られる電解水の水質をほぼ一定の状態に維持することが難しい。しかしながら、本実施形態のように、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bを設けることで、異なる水質の電解水は、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bに一旦溜められることになる。このように、異なる水質の電解水を陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bに溜めるようにすれば、それぞれの電解水の水質は、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bに溜まっている間により均一になる。
【0035】
すなわち、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bを設けることで、通水路4を流れる原水の流速が速くなった場合や通水路4に導入される原水(例えば水道水)に脈流が生じている場合であっても、より安定した水質の電解水を得ることができるようになる。
【0036】
また、本実施形態の電解槽1は、陰極板2と陽極板3との間に介在物、つまり、陰極室と陽極室とを仕切る隔膜が存在しない無隔膜型の電解槽であるため、電解槽1の小型化を図ることができる。
【0037】
(第2実施形態)
本実施形態にかかる電解槽1Aは、上記第1実施形態の電解槽1とほぼ同様の構成をしており、マイナス電圧が印加される陰極板(電極板)2と、プラス電圧が印加される陽極板(電極板)3とを備えている。
【0038】
そして、本実施形態にあっても、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2、3の背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。
【0039】
ここで、本実施形態の電解槽1Aが上記第1実施形態の電解槽1と主に異なる点は、陰極側通水路5Aと陽極側通水路5Bとを無くしたことにある。すなわち、本実施形態では、陰極板2の背面2bに外装ケース5の側面53を密接させ、陽極板3の背面3bに外装ケース5の側面54を密接させるようにしている。そして、陰極水流出孔22から流出した陰極水を陰極水取出口71から直接取り出せるように、陰極水流出孔22に陰極水取出口71を連通させている。同様に、陽極水流出孔32から流出した陽極水を陽極水取出口72から直接取り出せるように、陽極水流出孔32に陽極水取出口72を連通させている。
【0040】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態とほぼ同様の作用、効果を奏することができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、陰極水流出孔22に陰極水取出口71を連通させるとともに、陽極水流出孔32に陽極水取出口72を連通させている。そのため、電気分解により生成され、陰極板2の陰極水流出孔22から流出した陰極水を陰極水取出口71から速やかに取り出すことができる。また、電気分解により生成され、陽極板3の陽極水流出孔32から流出した陽極水を陽極水取出口72から速やかに取り出すことができる。
【0042】
また、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bを設けないようにすることで、電解槽1Aの小型化を図ることが可能となる。さらに、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bを設けないようにすることで、電解槽1Aの運転を停止した際に電解水が滞る箇所を無くすことができ、電解槽1Aをより衛生的な状態に保つことができるという利点もある。
【0043】
(第3実施形態)
本実施形態にかかる電解槽1Bは、上記第1実施形態の電解槽1とほぼ同様の構成をしており、マイナス電圧が印加される陰極板(電極板)2と、プラス電圧が印加される陽極板(電極板)3とを備えている。
【0044】
そして、本実施形態にあっても陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、図4に示すように、通水路4側からそれぞれの電極板2、3の背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。
【0045】
また、本実施形態の電解槽1Bには、上記第1実施形態と同様に陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bが設けられている。
【0046】
ここで、本実施形態の電解槽1Bが上記第1実施形態の電解槽1と主に異なる点は、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を、それぞれの電極板2、3のほぼ全域に亘って複数設けたことにある。
【0047】
具体的には、図5に示すように、陰極板2および陽極板3には、それぞれ円形に形成された陰極水流出孔22および陽極水流出孔32が、それぞれの電極板2、3の全域に亘って縦・横方向に整然と複数形成されている。本実施形態では、それぞれの電極板2、3が縦長となる矩形状に形成されており、陰極板2には陰極水流出孔22が、陽極板3には陽極水流出孔32が、それぞれ縦方向に5行、横方向に3列設けられた場合を示している。なお、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32は、縦・横方向に整然と形成する必要はない。また、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状は、円形に限定されるものではない。例えば、横長の矩形状の流出孔を縦に複数形成するなど、電極板の様々な部位に様々な形状の流出孔を形成することができる。
【0048】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態とほぼ同様の作用、効果を奏することができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を、それぞれの電極板2、3のほぼ全域に亘って複数設けている。そのため、陰極板2で生成された陰極水を陰極板2のほぼ全域から流出させることができ、陽極板3で生成された陽極水を陽極板3のほぼ全域から流出させることができる。
【0050】
このように、陰極水および陽極水を電極板2,3のほぼ全域から流出させるようにすることで、陰極板2に沿って生成された陰極水と、陽極板3に沿って生成された陽極水とが、通水路4内で混じり合ってしまうのを抑制することができる。すなわち、陰極板2に沿って生成された陰極水と、陽極板3に沿って生成された陽極水とを、通水路4内で混じり合う前に複数の陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bに流出させることができる。その結果、陰極水と陽極水との分流効果をより一層高めて両電解水の相互拡散を防止することができるようになり、より精製度の高い電解水を得ることができる。
【0051】
また、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を複数設けることで、電極水の全体的な流出量が増加するため、電解時間を短縮させることができる。
【0052】
なお、本実施形態にあっても、上記第2実施形態にかかる電解槽1Aを適用することが可能である。すなわち、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bが設けられていない構造とすることもできる。
【0053】
(第4実施形態)
本実施形態にかかる電解槽1Cは、上記第3実施形態の電解槽1Bとほぼ同様の構成をしており、マイナス電圧が印加される陰極板(電極板)2と、プラス電圧が印加される陽極板(電極板)3とを備えている。
【0054】
また、円形の陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を、それぞれの電極板2、3のほぼ全域に亘って複数設けている。
【0055】
そして、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2、3の背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。
【0056】
また、本実施形態の電解槽1Cにも、上記第3実施形態と同様に陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bが設けられている。
【0057】
ここで、本実施形態の電解槽1Cが上記第3実施形態の電解槽1Bと主に異なる点は、通水路4の下流端に、余剰水を排出する放流口8を設けたことにある。
【0058】
具体的には、上記第3実施形態の電解槽1B(図4参照)では、通水路4の下流端が外装ケース5の天面52によって閉塞されているが、本実施形態では天面52に通水路4に通ずる放流口8が形成されている点が、上記第3実施形態と異なっている。
【0059】
このように、天面52に通水路4に通ずる放流口8を形成することで、流入口6から通水路4内に導入された原水のうち、電気分解されて陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から流出仕切れなかった余剰水が放流口8から外方に排出されることになる。
【0060】
以上の本実施形態によっても、上記第3実施形態とほぼ同様の作用、効果を奏することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、通水路4の下流端に放流口8を設けたため、通水路4内を下流側へと流れる余剰水を最終的に放流口8から排出することができる。その結果、通水路4内の余剰水が下流端で逆流し、電解水が通水路4内で乱れてしまうのを抑制することができ、陰極水と陽極水の相互拡散を抑えてより一層精製度の高い電解水を得ることができるようになる。
【0062】
なお、本実施形態にあっても、上記第1実施形態の電解槽1を適用することが可能である。また、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bの有無に関係なく本実施形態を適用することができる。
【0063】
(第5実施形態)
本実施形態にかかる電極板2A、3Aは、上記第3実施形態の電極板2、3とほぼ同様の構成をしており、円形の陰極水流出孔22および陽極水流出孔32が、それぞれの電極板2A、3Aのほぼ全域に亘って複数設けられている。
【0064】
そして、本実施形態にあっても、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2A、3Aの背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。
【0065】
ここで、本実施形態の電極板2A、3Aが上記第3実施形態の電極板2、3と主に異なる点は、導電被膜(導電材)21S、31Sを、電極板2A、3Aにおける陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲を含む所定範囲のみに限定して設けたことにある。すなわち、本実施形態では、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲の所定範囲に限定して導電被膜(導電材)21S、31Sを設けている。
【0066】
具体的には、図8に示すように、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲に、それぞれの流出孔22、32の開口径D1よりも大きな被膜径D2をもって同心状に導電被膜21S、31Sを設けている。
【0067】
このとき、D1とD2の関係が、D2≦3×D1となるように導電被膜21S、31Sを設けることが好ましい。こうすれば、導電被膜21S、31S近傍で陰極水および陽極水を生成することができるため、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から流出されない陰極水および陽極水の量を少なくすることができる。なお、図9では、D2=3×D1となる(D2が最大となる)ように導電被膜21S、31Sを設けた場合を例示している。
【0068】
以上の本実施形態によっても、上記第3実施形態とほぼ同様の作用、効果を奏することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、電極板2、3における陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲を含む所定範囲のみに限定して導電被膜21S、31Sを設けている。このように、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲の所定範囲に限定して導電被膜(導電材)21S、31Sを設けることで、それぞれの流出孔22、32を通過しようとする瞬間の原水が電気分解されるようになる。その結果、陰極水と陽極水とが混じり合ってしまうのをより一層抑制することができるようになる。
【0070】
つまり、導電被膜21、31を電極板2A、3Aの全面に設けた場合には、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から離れた部分でも原水が電気分解されて陰極水と陽極水が生成されてしまう。このため、陰極水と陽極水は陰極水流出孔22および陽極水流出孔32に到達する前に互いに混じり合う可能性が高まることになる。
【0071】
これに対して、本実施形態では、導電被膜21Sにより陰極水流出孔22の近傍で積極的に陰極水が生成され、また、導電被膜31Sにより陽極水流出孔32の近傍で積極的に陽極水が生成されることとなる。そのため、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の近傍で生成された陰極水および陽極水の大半は、生成されるとすぐに陰極水流出孔22および陽極水流出孔32から流出されることとなる。その結果、陰極水と陽極水が混じり合う場を少なくすることができる。
【0072】
このように、電極板2、3における陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲を含む所定範囲のみに限定して導電被膜21S、31Sを設けることで、陰極水と陽極水の分流を促進して電極水が相互に拡散してしまうのを抑制することができる。その結果、より精製度の高い電解水を得ることができる。なお、導電被膜21S、31Sには白金などの高価な貴金属が用いられているが、本実施形態によれば、高価な導電被膜21S、31Sの使用量を削減することができるため、コスト削減を図ることができる。
【0073】
なお、本実施形態にあっても、上記第1実施形態の電解槽1を適用することが可能である。また、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bの有無に関係なく本実施形態を適用することができる。
【0074】
ところで、本実施形態では、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32が円形である場合を例示したが、流出孔22、32の形状はこれに限定されるものではなく、様々な形状とすることができる。
【0075】
例えば、図10に示すように、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、ほぼ楕円形である陰極水流出孔22および陽極水流出孔32としてもよい。この場合、短軸方向の開口径D1と被膜径D2との関係が、D2≦3×D1となるように導電被膜21S、31Sを設けることが好ましい。なお、図10では、D2=3×D1となる(D2が最大となる)ように導電被膜21S、31Sを設けた場合を例示しており、上述した円形の陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の場合と同様の機能を有している。
【0076】
(第6実施形態)
本実施形態にかかる電極板2B、3Bは、上記第5実施形態の電極板2A、3Aとほぼ同様の構成をしており、円形の陰極水流出孔22および陽極水流出孔32が、それぞれの電極板2B、3Bのほぼ全域に亘って複数設けられている。
【0077】
そして、本実施形態にあっても、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2B、3Bの背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。
【0078】
さらに、導電被膜(導電材)21S、31Sを、電極板2B、3Bにおける陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲を含む所定範囲のみに限定して設けている。
【0079】
ここで、本実施形態が上記第5実施形態と主に異なる点は、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲に設けた個々の導電被膜21S、31Sを、導電配線23、33を介して主電極端子2Tm、3Tmと電気的に接続したことにある。
【0080】
導電配線23、33は、導電被膜21S、31Sと同様に、白金などの良導電材料をメッキまたは焼成することで陰極板2Bおよび陽極板3Bのそれぞれの基材表面2a,3aに設けられる。本実施形態では、導電配線23、33は、陰極板2Bおよび陽極板3Bに印加する電圧を十分に供給できる幅を持った細い帯状に設けられ、個々の導電被膜21S、31Sをそれぞれ直列に接続するようにしている。
【0081】
すなわち、本実施形態では、個々の導電被膜21S、31Sは、図11に示すように接続されている。具体的には、まず、4行3列に配列された導電被膜21S、31Sを、導電配線23、33によって最上部の3列を直列接続する。その後、次の行の3列に垂直に下ってそれら3列の導電被膜21S、31Sを直列接続する。かかる工程を順次行うことで、導電被膜21S、31Sが導電配線23、33によって直列接続され、導電配線23、33は全体としてクランク状に配線されることとなる。このとき、最上部の3列の導電被膜21S、31Sのうち接続始端部の導電被膜21S、31Sは、導電配線23、33によって主電極端子2Tm、3Tmに接続される。
【0082】
以上の本実施形態によっても、上記第3実施形態とほぼ同様の作用、効果を奏することができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲に設けた個々の導電被膜21S、31Sを、導電配線23、33を介して主電極端子2Tm、3Tmと電気的に接続している。このように、導電被膜21S、31Sを、導電配線23、33を介して主電極端子2Tm、3Tmと電気的に接続させることで、主電極端子21、31に入力された電圧を、導電配線23、33を介して個々の導電被膜21S、31Sに印加することができる。
【0084】
つまり、上記第5実施形態(図7参照)の場合には、主電極端子2Tm、3Tmに入力された電圧は、電極板2A、3Aの一般部分を介して個々の導電被膜21S、31Sに印加されるため、電気抵抗によるロスが発生する。これに対し、本実施形態では、導電配線23、33を設けているため、より小さい電気抵抗で個々の導電被膜21S、31Sに電圧印加することができ、上記第5実施形態の構成と比べて電解効率を高めることができる。
【0085】
また、導電配線23、34は、個々の導電被膜21S、32Sを直列に接続しているため、並列に接続する場合に比べて導電配線23、34の長さを短くすることができ、コストの削減を図ることができる。
【0086】
なお、本実施形態にあっても、上記第1実施形態の電解槽1を適用することが可能である。また、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bの有無に関係なく本実施形態を適用することができる。
【0087】
(第7実施形態)
本実施形態にかかる電極板2C、3Cは、上記第6実施形態の電極板2B、3Bとほぼ同様の構成をしており、円形の陰極水流出孔22および陽極水流出孔32が、それぞれの電極板2B、3Bのほぼ全域に亘って複数設けられている。
【0088】
そして、本実施形態にあっても、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2C、3Cの背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。
【0089】
さらに、導電被膜(導電材)21S、31Sを、電極板2C、3Cにおける陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲を含む所定範囲のみに限定して設けている。
【0090】
そして、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の周囲に設けた個々の導電被膜21S、31Sを、導電配線23、33を介して主電極端子2Tm、3Tmと電気的に接続している。
【0091】
ここで、本実施形態が上記第6実施形態と主に異なる点は、電極板2C、3Cに、主電極端子2Tm、3Tm以外に、導電配線23、33に接続されない副電極端子2Ts、3Tsを設けたことにある。
【0092】
このように、副電極端子2Ts、3Tsを設けることで、生成したい電解レベル(例えばpH値)に応じて、主電極端子2Tm、3Tmと副電極端子2Ts、3Tsとを切り換えて個々の導電被膜21S、31Sに電圧印加できるようにしている。
【0093】
すなわち、主電極端子2Tm、3Tmに電圧を入力すれば、電気抵抗の少ない導電配線23、33を介して個々の導電被膜21S、31Sに電圧を印加することができる。一方、副電極端子2Ts、3Tsに電圧を入力すれば、電気抵抗が大きな電極板2C、3Cの基材を介して個々の導電被膜21S、31Sに電圧を印加することができる。
【0094】
このように、本実施形態では、主電極端子2Tm、3Tmと副電極端子2Ts、3Tsのいずれか一方を選択して電圧を入力させるようにすることで、導電被膜21S、31Sに電圧印加する電気抵抗を変化させることができるようにしている。具体的には、電気抵抗が小さくなる主電極端子2Tm、3Tmに電圧を入力すれば、個々の導電被膜21S、31Sの電解性能を高めることができる。一方、電気抵抗が大きくなる副電極端子2Ts、3Tsに電圧を入力すれば、個々の導電被膜21S、31Sの電解性能を低下させることができる。
【0095】
このように、電極板2C、3Cに、主電極端子2Tm、3Tm以外に、導電配線23、33に接続されない副電極端子2Ts、3Tsを設けることで、主電極端子2Tm、3Tmと副電極端子2Ts、3Tsとの切り換えを以下のように制御することができる。
【0096】
例えば、通常使用の場合、主電極端子2Tm、3Tmを用いて、生成される陰極水(アルカリ水)のpH値が中性領域(例えばpH7.0〜8.5)となるように制御する。そして、原水の水質などにより、電解効率が高い主電極端子2Tm、3Tmを用いるとpH値が8.5を超えてしまい中性領域で安定させることが困難な場合には、主電極端子2Tm、3Tmと副電極端子2Ts、3Tsとの切り換えを行う。このように、電解効率の低い副電極端子2Ts、3Tsに切り替えることで、通常使用(主電極端子2Tm、3Tmを用いた場合)では中性領域で安定させることが困難な場合であっても、比較的容易にpH値が中性領域となるように制御することが可能となる。
【0097】
以上、説明したように、本実施形態では、電解性能が比較的高い主電極端子2Tm、3Tmと、電解性能が比較的低い副電極端子2Ts、3Tsとを切り替えて電解制御できるようにしたため、電解水の制御態様の範囲を広げて利便性を拡大することができる。
【0098】
なお、本実施形態にあっても、上記第1実施形態の電解槽1を適用することが可能である。また、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bの有無に関係なく本実施形態を適用することができる。
【0099】
(第8実施形態)
本実施形態にかかる電解槽1Dは、上記第4実施形態の電解槽1Cとほぼ同様の構成をしており、マイナス電圧が印加される陰極板(電極板)2と、プラス電圧が印加される陽極板(電極板)3とを備えている。
【0100】
また、円形の陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を、それぞれの電極板2、3のほぼ全域に亘って複数設けている。
【0101】
また、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32の形状を、通水路4側からそれぞれの電極板2、3の背面2b、3b側に向かって滑らかな曲面Rをもって所定量突出する噴気孔形状としている。そして、本実施形態の電解槽1Dにも、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bが設けられており、通水路4の下流端には、余剰水を排出する放流口8が設けられている。なお、陰極側通水路5Aの陰極水取出口71および陽極側通水路5Bの陽極水取出口72は、通水路4の下流部(図13中上方)に対応した部位に設けられている。
【0102】
ここで、本実施形態の電解槽1Dが上記第4実施形態の電解槽1Cと主に異なる点は、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bを、それぞれの下流部容積Q2、P2を上流部容積Q1、P1よりも大きくしたことにある。
【0103】
具体的には、本実施形態の電解槽1Dは、図13に示すように、対向配置した陰極板2と陽極板3とを傾斜させて、それらの間隔Sが上流側となる下部で広い間隔S1となり、下流側となる上部で狭い間隔S2(S1>S2)となるようにしている。これにより、箱状に形成された外装ケース5内で、電極板2、3の背面2b、3b側に設けられた陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bの容積が上流部と下流部とで異なるようになる。
【0104】
すなわち、陰極側通水路5Aの上流部(図13中下部)の容積をQ1、下流部(図13中上部)の容積をQ2とすると、陰極側通水路5Aの全体容積は上流から下流に向かってQ1からQ2(Q1<Q2)へと連続的に増大することとなる。また、陽極側通水路5Bの上流部(図13中下部)の容積をP1、下流部(図13中上部)の容積をP2とすると、陽極側通水路5Bの全体容積は上流から下流に向かってP1からP2(P1<P2)へと連続的に増大することとなる。なお、本実施形態では、陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bは通水路4の中心に対してほぼ左右対称となっている。
【0105】
また、流入口6は、原水を取り入れる上流側から通水路4に至る下流側が滑らかに拡幅するように逆台形状に形成されている。このように、逆台形状に形成することで流入口6から通水路4に原水をスムーズに流入させることができる。
【0106】
以上の本実施形態によっても、上記第4実施形態とほぼ同様の作用、効果を奏することができる。
【0107】
ところで、上述したように、電極板2、3に、陰極水流出孔22および陽極水流出孔32を各電極板2、3のほぼ全域に亘って複数設けることで、生成された陰極水と陽極水とが混ざり合うのを抑制することができる。ところが、陰極側通水路5Aに溜められた陰極水および陽極側通水路5Bに溜められた陽極水の濃度は、下流側となる上部に行くほど高くなるため濃度勾配が生じてしまう。そして、この濃度勾配が著しい場合には、新たに濃度勾配による拡散作用が生じてしまい、陰極水と陽極水とが相互に混ざり合ってしまうおそれがある。
【0108】
しかしながら、本実施形態では、濃度が高くなる陰極側通水路5Aおよび陽極側通水路5Bの下流部の容積Q2、P2を、上流部の容積Q1、P1よりも広くしているため、濃度勾配を緩和することができ、拡散作用を抑制することができる。これにより、陰極水と陽極水とが相互に混ざり合うのを抑制することができ、陰極水取出口71および陽極水取出口72からは精製度の高い電解水を取り出すことができる。
【0109】
なお、本実施形態にあっても、上記第3実施形態の電解槽1Bを適用することが可能である。また、上記第5実施形態の電極板2A、3A、第6実施形態の電極板2B、3Bおよび第7実施形態の電極板2C、3Cを用いた電解槽にあっても本実施形態を適用することが可能である。
【0110】
(第9実施形態)
図14は、本実施形態にかかる電解水生成装置100を示しており、この電解水生成装置100は、上記第1から第8実施形態のいずれか1つの電解槽を用いて構成されている。なお、図14では、上記第4実施形態の電解槽1Cを用いた電解水生成装置100を例示している。
【0111】
本実施形態の電解水生成装置100は、水道管101から供給される水道水を原水として導入する導入管102を有しており、この導入管102が電解槽1Cの流入口6に接続されている。また、電解槽1Cの陰極水取出口71に接続される吐水管103と、陽極水取出口72に接続される廃棄管104と、放流口8に接続される放流管105とを有している。この廃棄管104と放流管105とは排水管106で合流して外方に廃棄されるようになっている。
【0112】
導入管102には、上流側から順に蛇口などの水栓110と、浄水カートリッジ111と、積算流量計112と、カルシウム添加筒113とが配置されている。水栓110は電解水生成装置100のケース120の外方に位置しており、この水栓110の開閉により原水が導入または停止されるようになっている。浄水カートリッジ111、積算流量計112およびカルシウム添加筒113は、ケース120の内方に収納されている。浄水カートリッジ111は、活性炭や中空糸膜あるいは濾過膜などが内蔵されており、導入された原水を浄化するものである。積算流量計112は、導入管102を通過する原水流量を計測し、その計測データを制御手段であるコントローラ130に送るようになっている。カルシウム添加筒113は、電解槽1Cに供給する原水にカルシウム成分を添加するようになっている。
【0113】
吐水管103は、電解槽1Cの陰極水取出口71から流出したアルカリ水を、飲用としてケース120の外方に取り出すようになっている。また、廃棄管104は、電解槽1Cの陽極水取出口72から流出した酸性水を取り出し、放流管105は、電解槽1Cの放流口8から流出した余剰水を取り出すようになっている。そして、取り出した酸性水および余剰水を、排水管106を介してケース120の外方に廃棄するようになっている。
【0114】
コントローラ130は、ケース120の内方に収納されており、コンセント131から電源部132を介して電力が供給される。そして、コントローラ130からは電解槽1Cに内蔵した電極板2、3の主電極端子22、32に、制御した電圧を出力するようになっている。また、コントローラ130には操作表示部133が電気的に接続されており、電解水生成装置100の動作状態を監視したり、電解水生成装置100に対する動作設定を行うことができるようになっている。
【0115】
かかる構成の電解水生成装置100では、水栓110を開弁することにより水道管101の原水は導入管102に導入され、まず、浄水カートリッジ111で濾過される。その後、積算流量計112を通過して流量計測された後にカルシウム添加筒113でカルシムが所定量添加されて、流入口6から電解槽1Cの通水路4に導入される。
【0116】
コントローラ130から出力される制御電圧が陰極板2および陽極板3の主電極端子2Tm、3Tmに入力されることで、通水路4に導入された原水が電気分解され、陰極水(アルカリイオン水)が陰極水取出口71から吐出管103を経由して取り出される。一方、電解槽1Cで電気分解された陽極水(酸性水)は、陽極水取出口72から廃棄管104に取り出された後、排水管106から廃棄される。また、放流口8から放出された余剰水は放流管105に取り出された後、上記陽極水と一緒に排水管106から廃棄される。
【0117】
以上説明したように、本実施形態の電解水生成装置100では、上記第4実施形態の電解槽1Cを用いている。すなわち、本実施形態の電解水生成装置100を用いることで、電解槽1Cが有する機能を享受して精製度の高いアルカリ水を得ることができる。また、本実施形態の電解槽1Cは無隔膜型であるため、電解槽1Cの小型化を図ることができ、ひいては、電解水生成装置100の小型化を図ることが可能となる。さらに、無隔膜型の電解槽1Cを用いることで構成の簡素化を図ることができる。また、隔膜を使用していないため電解水生成装置100の寿命を延ばすことができる。
【0118】
なお、上記第1〜第3実施形態および第8実施形態の電解槽1,1A,1B,1Dのうちいずれかを本実施形態の電解水生成装置100に用いることもできる。この場合、それぞれの電解槽1、1A、1B、1Dが有する機能を享受することができる。
【0119】
また、上記第5〜第7実施形態の電極板2A,3A、2B,3B、2C,3Cのうちいずれか1組を用いた電解槽を用いるようにしてもよい。この場合、それぞれの電極板2A,3A、2B,3B、2C,3Cが有する機能を享受することができる。
【0120】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0121】
例えば、電極板や浄化部、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0122】
1、1A、1B、1C、1D 電解槽
2、2A、2B、2C 電極板(陰極板)
2b 陰極板の背面
21、21S 導電被膜
22 陰極水流出孔
23 導電配線
2Tm 主電極端子
2Ts 副電極端子
3、3A、3B、3C 電極板(陽極板)
3b 陽極板の背面
31、31S 導電被膜
32 陽極水流出孔
33 導電配線
3Tm 主電極端子
3Ts 副電極端子
4 通水路
5A 陰極側通水路
5B 陽極側通水路
71 陰極水取出口
72 陽極水取出口
8 放流口
10 電解水生成装置
R 曲面
Q1、P1 上流部容積
Q2、P2 下流部容積
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極板と陽極板とを備え、導入した原水を電気分解する電解槽であって、
前記陰極板と前記陽極板とを隔膜を介在させることなく対向配置し、
前記陰極板と前記陽極板との間に電気分解される原水の通水路を形成し、
前記陰極板に陰極水流出孔を設けるとともに前記陽極板に陽極水流出孔を設け、
前記陰極水流出孔および前記陽極水流出孔の形状を、前記通水路側からそれぞれの電極板の背面側に向かって滑らかな曲面をもって突出する噴気孔形状としたことを特徴とする電解槽。
【請求項2】
前記陰極板の背面側に前記陰極水流出孔から流出した陰極水が導入される陰極側通水路を設けるとともに、前記陽極板の背面側に前記陽極水流出孔から流出した陽極水が導入される陽極側通水路を設け、
前記陰極側通水路に陰極水取出口を設けるとともに、前記陽極側通水路に陽極水取出口を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電解槽。
【請求項3】
前記陰極水流出孔に陰極水取出口を連通するとともに、前記陽極水流出孔に陽極水取出口を連通したことを特徴とする請求項1に記載の電解槽。
【請求項4】
前記陰極水流出孔および前記陽極水流出孔を、それぞれの電極板に複数設けたことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の電解槽。
【請求項5】
前記通水路の下流端に、余剰水を排出する放流口を設けたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の電解槽。
【請求項6】
前記陰極板および前記陽極板における前記陰極水流出孔および前記陽極水流出孔の周囲を含む所定範囲のみに導電材を設けたことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の電解槽。
【請求項7】
前記陰極水流出孔の周囲に設けた導電材および前記陽極水流出孔の周囲に設けた導電材を、それぞれ導電配線を介して電極板の主電極端子と電気的に接続したことを特徴とする請求項6に記載の電解槽。
【請求項8】
前記陰極板および前記陽極板に、前記導電配線に接続されない副電極端子を設けたことを特徴とする請求項7に記載の電解槽。
【請求項9】
前記陰極側通水路の下流側容積を上流側容積よりも大きくするとともに、前記陽極側通水路の下流側容積を上流側容積よりも大きくしたことを特徴とする請求項4〜8のうちいずれか1項に記載の電解槽。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の電解槽を備えることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項1】
陰極板と陽極板とを備え、導入した原水を電気分解する電解槽であって、
前記陰極板と前記陽極板とを隔膜を介在させることなく対向配置し、
前記陰極板と前記陽極板との間に電気分解される原水の通水路を形成し、
前記陰極板に陰極水流出孔を設けるとともに前記陽極板に陽極水流出孔を設け、
前記陰極水流出孔および前記陽極水流出孔の形状を、前記通水路側からそれぞれの電極板の背面側に向かって滑らかな曲面をもって突出する噴気孔形状としたことを特徴とする電解槽。
【請求項2】
前記陰極板の背面側に前記陰極水流出孔から流出した陰極水が導入される陰極側通水路を設けるとともに、前記陽極板の背面側に前記陽極水流出孔から流出した陽極水が導入される陽極側通水路を設け、
前記陰極側通水路に陰極水取出口を設けるとともに、前記陽極側通水路に陽極水取出口を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電解槽。
【請求項3】
前記陰極水流出孔に陰極水取出口を連通するとともに、前記陽極水流出孔に陽極水取出口を連通したことを特徴とする請求項1に記載の電解槽。
【請求項4】
前記陰極水流出孔および前記陽極水流出孔を、それぞれの電極板に複数設けたことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の電解槽。
【請求項5】
前記通水路の下流端に、余剰水を排出する放流口を設けたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の電解槽。
【請求項6】
前記陰極板および前記陽極板における前記陰極水流出孔および前記陽極水流出孔の周囲を含む所定範囲のみに導電材を設けたことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の電解槽。
【請求項7】
前記陰極水流出孔の周囲に設けた導電材および前記陽極水流出孔の周囲に設けた導電材を、それぞれ導電配線を介して電極板の主電極端子と電気的に接続したことを特徴とする請求項6に記載の電解槽。
【請求項8】
前記陰極板および前記陽極板に、前記導電配線に接続されない副電極端子を設けたことを特徴とする請求項7に記載の電解槽。
【請求項9】
前記陰極側通水路の下流側容積を上流側容積よりも大きくするとともに、前記陽極側通水路の下流側容積を上流側容積よりも大きくしたことを特徴とする請求項4〜8のうちいずれか1項に記載の電解槽。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の電解槽を備えることを特徴とする電解水生成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−179569(P2012−179569A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44987(P2011−44987)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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