説明

電解槽を備えた水質浄化装置

【課題】 窒素化合物を含有する水を電気分解し、その窒素化合物を気体窒素に変換し、除去する電解槽を備えた水質浄化装置並びに窒素化合物又は/及び有機化合物を含有する水に通電し、その窒素化合物を気体窒素に変換し、且つ、有機物を分解脱色する電解槽を備えた水質浄化装置を提供する。
【解決手段】窒素化合物を含有する水を電気分解し、その窒素化合物を窒素ガスに変換し、除去する電解槽Cを備えた水質浄化装置であって、その電解槽C内の水Wに多数の半導体性片(例えば二酸化チタン片)を浸漬させ、その水Wを電気分解することによって、その各半導体性片が電解槽C中で分極し、その各半導体性片の表面でも電気分解反応が生起するよう構成されており、しかもその半導体性片が真性半導体よりなるか、又は真性半導体を含んでいる。なお、Aはアノード、Kはカソード、Eは直流電源、Mは隔膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素化合物を含有する水を電気分解し、その窒素化合物を気体窒素に変換し、除去する電解槽を備えた水質浄化装置、並びに窒素化合物又は/及び有機化合物を含有する水に通電し、その窒素化合物を気体窒素に変換し、且つ、有機物を分解脱色する電解槽を備えた水質浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来廃水(排水)中の窒素分除去は一般に、図14に示すような、硝化菌、脱窒菌等による微生物処理一般によっている。それによれば、廃水Z1中のアンモニア等の窒素分は先ず硝化槽Z2に導入され、空気の吹き込みによる酸化性雰囲気下で好気性細菌である硝化菌によって硝酸態窒素に酸化される。その窒素は次いで脱窒槽Z3で空気が遮断された還元性雰囲気下で嫌気性細菌である脱窒菌によって単体の窒素に還元され、大気中に放出される。なお、Z4は浄化された排水であって、さらに必要に応じて脱燐処理され、河川等に放流される。以上のように、脱窒には好気性、嫌気性の二つの槽が必要であり、且つ反応が細菌によるため速度が著しく低く、装置が著しく大きくなるうえに、煩わしい微生物管理、微生物の増殖による廃棄物処理の必要などの問題点がある。また、廃水中の有機物も活性汚泥などの微生物処理によって浄化排水可能であるが、排水の着色、微生物管理の煩わしさ、増量した微生物汚泥の処理の必要などの問題点がある。
【0003】
その他電解槽を備えた水質浄化装置についての提案が幾つかなされている(例えば特許文献1乃至6及び非特許文献1,2)これはいずれも以下の反応によって窒素化合物を最終的には窒素ガス又はアンモニアに変換し、気相に放出するものである。
【0004】
窒素化合物を含む水を電気分解すると、アノードではアンモニア(含尿素)が酸化され、窒素ガスが発生する。すなわち、化学式1で表される。
【0005】
【化1】

【0006】
なお、化学式2、化学式3の反応も並行して生起する。
【0007】
【化2】

【0008】
【化3】

【0009】
また、カソードでは硝酸態窒素が還元され、窒素ガスが発生する。すなわち、化学式4で表される。
【0010】
【化4】

【0011】
なお、この反応の途中に次の化学式5、化学式6、化学式7、化学式8が生起する。
【0012】
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【0013】
特許文献1では、処理水を光触媒(例えば二酸化チタン)に接触させつつ、その処理水に紫外線を照射して、処理水中の窒素化合物を酸化し、硝酸イオンに変換した後、その処理水中の硝酸イオンを電解還元して窒素ガス又はアンモニアに変換し、気相に放出することが記されている。しかしながら、光触媒への紫外線照射に当たって、水溶液では自然光(太陽光)の利用が困難であり、紫外光源使用による電気エネルギーの消費、触媒表面の汚染による効率の低下等なお多くの課題が残っており、実施した場合その効果が十分発揮されるか疑問がある。
【0014】
特許文献2乃至4は、電極の一方が導電性ダイヤモンドよりなるか、又は電極間に導電性ダイヤモンド粒子、それを分散固定した中実板状体のいずれかを介在させたものであって、特許文献1のような紫外線照射は不要であるが、窒素化合物除去に有効だと称せられる導電性ダイヤモンドの製造には高温高圧合成又は化学蒸着(CVD)、さらにイオン注入等を必要とし、製造条件が過酷且つ煩雑であって、多大のコストを要すると言う問題点がある。
【0015】
その他特許文献6には、グラファイトシリカ粉末と二酸化チタン粉末との混合物の成形体からなる有機物の分解剤等が提案されているが、電気分解について触れられていない。
【特許文献1】特開2001−029944号公報
【特許文献2】特開2004−237165号公報
【特許文献3】特開2004−321963号公報
【特許文献4】特開2005−186032号公報
【特許文献5】特開2005−272908号公報
【特許文献6】特開2005−288381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上のことから、本発明は、上記した従来技術の欠点を除くために、紫外線照射が不要で、半導体性片として安価な材料を採用した、電解槽を備えた水質浄化装置、並びに半導体特性及び触媒特性を有する焼成多孔体を採用し、窒素化合物の分解だけでなく、有機物をも分解脱色することが可能な、電解槽を備えた水質浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達するために、請求項1の発明の発明は、電解槽を備えた水質浄化装置であって、窒素化合物を含有する水を電解処理し、その窒素化合物を気体窒素に変換し、除去することが可能に、その電解槽内の水に多数の半導体性片を浸漬させ、その水を電解処理することによって、その各半導体性片が電解槽中で分極し、その各半導体性片の表面でも電気分解反応が生起するよう構成されており、しかもその半導体性片が真性半導体よりなるか、又は真性半導体を含んでいる。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1の発明の構成に加えて、前記多数の半導体性片が、水中に浮遊しているか又は層状に静置されている。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1の発明の構成に加えて、前記多数の半導体性片が、水中に浸漬された、少なくとも1個の、格子状又は中実板状の非導電性支持体に支持されている。
なお、格子状には、多数の孔をあけた状態も含まれる。
【0020】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明の構成に加えて、前記真性半導体は、同一電解槽において、一方の極で水素、他方の極で酸素を、同時発生可能なものである。
【0021】
請求項5の発明は、請求項4の発明の構成に加えて、前記真性半導体が二酸化チタンである。
【0022】
請求項6の発明は、電解槽内の窒素化合物又は/及び有機物を含む水に多数の半導体特性及び触媒特性を有する焼成多孔体粒子を浸漬させており、その焼成多孔体粒子は、電極間に通電しなくても、窒素化合物又は/及び有機物を含む水を還元又は酸化し、窒素化合物は分解し、有機物は分解脱色する作用を有するが、通電するとその通電するとその作用をさらに増大させる、電解槽を備えた水質浄化装置である。
【0023】
請求項7の発明は、請求項6の発明の構成に加えて、前記多数の焼成多孔体粒子が水中に充填または分散されている。
【0024】
請求項8の発明は、請求項7の発明の構成に加えて、前記多数の焼成多孔体粒子が、陰極又は陽極に接触して充填されているか、もしくは接触可能な状態で分散されているが、その対極には接触しないように少なくとも1個の透水性の隔壁で分離されている。
【0025】
請求項9の発明は、請求項6乃至8のいずれかの発明の構成に加えて、前記の焼成多孔体粒子が少なくともグラファイトシリカと二酸化チタンとを含むハイブリッド焼成多孔体である。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明によれば、電解槽内の水に多数の半導体性片を浸漬させ、両電極間に電圧を印加すると、その電極間に生じる電場によって、各半導体片が分極し、それぞれ互いに隣り合う半導体片との間をイオンが移動し、その間の水を電気分解するため、関与する半導体片の数(総面積)の分だけ電気分解の効率が高くなる。また、その半導体性片は、天然又は工業的にも容易に得られる真性半導体よりなるため、上述の導電性ダイヤモンド等に比較して著しく安価であって、装置の経済性に著しく増大する。
【0027】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、半導体性片は小さければ小さい程攪拌によって水中に容易に分散浮遊可能になり、また、径が比較的大きければ、高密度の充填層になり、いずれも電極のみに比較して、電極として実質的に機能する面積が著しく増大するため、バイパス等若干のロスはあるものの、電気分解の効率が著しく高くなる。
【0028】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、請求項2の位置・間隔が絶えず変化する流動層や位置・間隔が固定されているとは言え、半導体性片同士が互いに接触している充填層とは異なり、互いに離間した非導電性支持体に分散支持された半導体性片間やそれと離間した電極A,Kとの間をイオンが移動し、電気分解が進行するため、電流のバイパス路の生成が防止され、装置の電気分解効率が著しく向上する。
【0029】
請求項4の発明によって、請求項1乃至3のいずれかの発明の効果を最大限に発揮することが可能である。
【0030】
請求項5の発明によれば、請求項4の発明の効果二酸化チタンは、無害であって、容易に確保可能であり、極めて安価である。
【0031】
請求項6の発明によれば、非通電時でも窒素酸化物の気体窒素への還元や例えば微生物処理された畜産場排水、染料排水等の脱色作用は認められるが、通電によって還元電位又は酸化電位が高くなり、還元力又は酸化力(前記脱色作用)がさらに増大する。
【0032】
請求項7の発明によれば、請求項6の発明の効果に加えて、窒素化合物あるいは有機化合物を含む水との接触面積が著しく増大するため上記反応効率が高くなる。
【0033】
請求項8の発明によれば、請求項7の発明の効果に加えて、還元又は酸化によって生成した物質が、対極での電気化学反応によって再酸化または再還元されることが防止され、反応効率がさらに向上する。
【0034】
請求項9の発明によれば、請求項7又は8の発明の効果に加えて、 高温で焼成されていて、安定であって水への成分の溶出がなく、管理・保守が極めて簡単で、半永久的に使用できる。また、再焼成することによって再利用可能な機能材料でもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明を実施するための最良の形態のうち、先ず半導体性片を使用したものについて説明する。
【実施例1】
【0036】
装置について図1によって説明すると、Cは円筒形の電解槽、A,Kはいずれも電解槽Cに同心の円筒形のアノード,カソードであって、前者には酸化白金族系の不溶性電極(DSA電極)、後者には水素化電圧の低い鉄電極を用いている。
【0037】
その他、Eは直流電源、Mは素焼、イオン交換膜等よりなる隔膜であって、アノードAを包囲する共に、電解槽1をアノード室aとカソード室kに2分している。印加電圧は3〜10Vならば電気分解が生起するが、4Vあたりが最もよい。
【0038】
そのうえ、電解槽C内の窒素化合物を含む水Wには真性半導体よりなる二酸化チタン粒子を浸漬する。その結晶構造にはアナターゼ型、ルチル型があり、いずれでもよいが、前者が好ましい。この真性半導体としては、二酸化チタンTiOの他に、同一電解槽で一方の極で窒素含有イオンから窒素ガスを、他方の極で酸素を、同時発生することが可能なもの、すなわち、
伝導帯電位が、カソードでの反応に対する値(例えばPH7で0.421VSHE)以下であり、価電子帯電位が、アノードでの反応に対する値(例えばPH7で0.804VSHE)以上である。
【0039】
アノードでの反応式を要約すると化学式9である。詳細は化学式10で表される。
【0040】
【化9】

【化10】

【0041】
また、カソードでの反応式は化学式11で表される。
【0042】
【化11】

【0043】
SiC,GaS,CdS,SiTiO,CdSe,MoS,Fe,WOも使用できる。しかも電気分解に当たっては、紫外線の照射は不要であるが、真性半導体よりなる二酸化チタン粒子が水中に分散浮遊するよう攪拌機Rで攪拌する必要がある。
【0044】
窒素化合物を含む水Wとして硝酸ナトリウム60ppmを含む水を使用し、印加電圧、電解時間、二酸化チタン濃度の影響を調べた。その結果を整理したもの、印加電圧−分解率を、それぞれ表1及び図2に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
これから、いずれの場合の分解率も印加電圧の増加に伴って増加し、また、二酸化チタン粒子を用いた場合は、アナターゼ型、ルチル型のいずれも、用いない場合に比較して、分解率は著しく高いことが認められる。その他、表2に示すように、二酸化チタン粒子を用いない場合、印加電圧が変化しても電流効率は100%未満であるのに対して、二酸化チタン粒子を用いた場合、印加電圧が大きくなると電流効率が100%を超える。これは二酸化チタン粒子表面での分極現象によるものと推定される。
【0047】
【表2】

【0048】
さらに幾つかの実施態様について説明すると、図3は連続式のものの一例を示したものであって、電解槽Cを隔膜Mで二分すると共に、電気分解に当たっては、窒素化合物を含む水Wは先ずアノード室aの底から供給し、そのアノード室aの上部から抽出された水Wをカソード室kの底に供給するよう、配管した。なお、二酸化チタン粒子は、アノード室a,カソード室kのいずれにも充填したが、そのいずれか一方にでもよい。また、その径が小さい場合は、供給される水によって流動化し、水W中に分散浮遊し、また径が大きい場合は、流動化せず、層状に静止したままであるが、そのいずれであってもよい。
【0049】
作用について説明すると、アノードA及び各二酸化チタン粒子の+側ではアンモニア(含尿素)が酸化され、窒素ガスが発生する。すなわち、化学式12で表される。
【0050】
【化12】

【0051】
なお、化学式13、化学式14も並行して生起する。
【0052】
【化13】

【化14】

【0053】
また、カソードK及び各二酸化チタン粒子の−側では硝酸態窒素が還元され、窒素ガスが発生する。すなわち、化学式15で表される。
【0054】
【化15】

【0055】
なお、この反応の途中に次の化学式16、化学式17、化学式18、化学式19が生じる。
【0056】
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【0057】
以上のように、電極A,K面だけでなく、電解槽C全体でアンモニア等は酸化され、NO,NOは還元されていずれも窒素ガスとなって気相に放出され、窒素化合物は除去される。しかも、電解槽Cが二分されない場合は、完全混合流れに近く、排出される水W中の窒素分の残余濃度が依然として高いのに対して、二分されたため、電解槽C内の水Wはアノード室a、カソード室kの順に流れ、押し出し流れに近付き、前者で除去された分だけ、後者へ供給される水Wの窒素化合物の濃度が低下し、後者内の電気分解の進行によって、排出される水W中の窒素分の残余濃度は著しく低下する。
【0058】
図4は別の実施態様を示したものであって、Sは多数の二酸化チタン片pを固定支持する、少なくとも一体の、格子状又は中実板状の非導電性支持体であって、例えば非導電性のプラスチックやセラミックスよりなり、具体的には以下のように構成されている。すなわち、各二酸化チタン片pが非導電性支持体Sを横断(貫通)するよう、その全面にわたって適当な密度に分散配置されたものであって、その各二酸化チタン片pのいずれか一方の端(図では左端)が前記支持体Sの一方の側(図では左側)に露出すると共に、他方の端(図では右端)も他方の側(図では右側)に露出している。なお、前記非導電性支持体Sは、両電極A,K間に平行且つ、電極A,Kのいずれか又は隣り合う非導電性支持体Sと適当な間隔で配列されている。なお、多数の二酸化チタン片pを支持する非導電性支持体として、上述のような不透水性の板だけでなく、透水性の膜でもよく、この場合は一部露出の必要はなく、片全体がその膜内に埋没していてもよい。
【0059】
作用について説明すると、両電極A,Kに直流電源Eによって電圧を印加すると、その電極A,K間に生じる電場によって、複数の非導電性支持体Sに支持された多数の二酸化チタン片pはそれぞれ分極する。そのため、位置・間隔が変化せず、固定された、互いに隣り合う非導電性支持体S同士の間やそれと電極A,Kのいずれかとの間を安定してイオンが移動し、電気分解が進行する。従って電解槽C内に多数の二酸化チタン片pを高密度に配置しても、電流のバイパス路が生成することなく、上述のように多数の二酸化チタン片pが流動層や充填層を形成する場合に比較して電気分解の効率が著しく高い。
【実施例2】
【0060】
図5,図7に示すように、長方形の電解槽Cに電極A,Kを配置し、両者間には、グラファィトシリカとシラス、二酸化チタンを混合し、球状に成形し、焼成した二酸化チタン含有ペレットPaを充填した。なお、図7の場合、隔膜Mで電解槽Cを2分し、そのうちのカソード室kにのみ前記ペレットPaを充填した。また、電極A,Kには、図5の場合、Pt電極とイリジウムTi表面に被覆したDSA電極の2種を、図7の場合、後者のDSA電極のみをそれぞれ使用した。以上のように構成した装置で、硝酸ナトリウムをそれぞれの図5場合は20ppm、図7の場合は11ppmを含む水Wを印加電圧12Vで電気分解した結果はそれぞれ図6,8の通りである。これからも電極の種類に関係なく、二酸化チタン含有ペレットPaが硝酸イオンの分解除去に極めて有効であることが認められる。
【0061】
次に電極間に通電しなくても、窒素化合物又は/及び有機物を含む水を還元又は酸化し、窒素化合物は分解し、有機物は分解脱色する作用を有する焼成多孔体粒子を使用すると、通電によって還元電位又は酸化電位が高くなり、還元力又は酸化力がさらに増大することについて説明する。
【実施例3】
【0062】
図5と同様の長方形の電解槽Cを使用し、二酸化チタン粒子に替えて、半導体特性及び触媒特性を有する焼成多孔体粒子である、後述のハイブリッド焼成多孔体Pbを充填した。なお、電極A,Kにはそれぞれ、チタンにイリジウムを表面被覆した網状のDSA電極と,ステンレスの網状電極と,を使用した。また、ハイブリッド焼成多孔体Pbとして、核にはグラファイトシリカとシラス、殻にはシラスと二酸化チタン、表皮には二酸化チタンからなる球状の三層焼成多孔体(特許文献6参照)を使用した。
【0063】
その効果確認のため、水中に含まれる有機物には色素ローダミンBを採用し、その褪色効果について調査した。なお、比較のために、非通電の場合、ハイブリッド焼成多孔体Pbを使用せず、通電した場合についても同様の測定を実施した、その結果は図9(褪色の時間的推移),図10(4時間後の着色状態)の通りであって、ハイブリッド焼成多孔体Pbを充填し、通電すると明らかに褪色効果が著しく向上していることが認められた。
【実施例4】
【0064】
さらに図11に示すように、鉛直方向に長い流動層式電解層Cを使用して上水用の地下水を連続処理し、電流は30mA一定にし、流速を変化させた場合の硝酸態窒素の減少を測定した。なお、Puはポンプ、Taはタンクであって、硝酸態窒素の分析は、携帯用多項目迅速水質分析計 DR/2400(セントラル科学)を使用して、分析法8171の比色分析法に従った。その結果は図12に示すように、流速が小さいほど硝酸態窒素の減少が大きく、流速が120ml/minを超えると硝酸態窒素の分解は殆ど進まないことが明らかとなった。
【0065】
図13は同じくハイブリッド焼成多孔体Pbを充填した連続式の電解槽Cの他の例を示したものであって、電解槽Cにその下部から水を導入するよう構成してある。なお、硝酸態窒素の還元分解の場合は、再酸化されないように両側の陽極A近くに隔壁Mを設置し、ハイブリッド焼成多孔体Pbは中央の陰極Kに接触させる。陽極Aには電極材料からイオンが溶出しないようにDSA電極を設置し、陰極Kにはステンレス網状電極を使用し、一定電流を流す。
【0066】
作用について説明すると、このハイブリッド焼成多孔体は元々硝酸態窒素に対する還元力をもっていて、負電位を加えるとその還元力が増大する。すなわち、還元力の増加は、化学式20に示される。
【0067】
【化20】

【0068】
ここで、G0はもともと触媒の活性点が持っていた還元のGibbsエネルギーである。ここに負電圧Eを加えることによってnFEだけGibbsエネルギーが減少してその還元力が増大し、それによって上記充填槽の最上部付近から横溢する通過水を上水あるいは精製水として使用することが可能となる。なお、有機物の酸化分解の場合には、正電位Eを加えることによってGibbsエネルギーが高くなって、酸化力が増大し、それによって上述のように有機物の分解脱色が一段と促進される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の、電解槽への浸漬粒子として二酸化チタン粒子を用いた例を示す断面図である。
【図2】図1の装置によって得られた印加電圧−分解率の関係を示すグラフある。
【図3】連続処理装置の1例を示す断面図である。
【図4】中実板状の非導電性支持体に二酸化チタン粒子を固定した1例を示す断面図である。
【図5】二酸化チタン含有粒子を用いた1例を示す断面図である。
【図6】図5の装置によって得られた残留硝酸イオンの減少経過を示すグラフである。
【図7】電解槽内に隔壁を設けた1例を示す断面図である。
【図8】図7の装置によって得られた残留硝酸イオンの減少経過を示すグラフである。
【図9】多数のハイブリッド焼成多孔体粒子を用いた場合の有機化合物の褪色推移の示す断面図である。
【図10】図9によって得られた、他の手段との褪色状態の比較を示す写真である。
【図11】電解槽内に隔壁を設けた他の1例を示す断面図である。
【図12】図11の装置を用いて連続処理して得られた、水の流速と窒素残存率との関係を示すグラフである。
【図13】電解槽内に隔壁を設けた他の1例を示す断面図である。
【図14】従来例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0070】
A アノード
a アノード室
C 電解槽
E 直流電源
K カソード
k カソード室
M 隔膜
P 二酸化チタンペレット
pa 二酸化チタン含有ペレット
Pb ハイブリッド焼成多孔体
Pu ポンプ
S 非導電性支持体
Ta タンク
W 水
Z1 廃水
Z2 硝化槽
Z3 脱窒槽
Z4 排水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素化合物を含有する水を電気分解し、その窒素化合物を気体窒素に変換し、除去する電解槽を備えた水質浄化装置であって、
その電解槽内の水に多数の半導体性片を浸漬させ、その水を電気分解することによって、その各半導体性片が電解槽中で分極し、その各半導体性片の表面でも電気分解反応が生起するよう構成されており、しかもその半導体性片が真性半導体よりなるか、又は真性半導体を含んでいる
ことを特徴とする、電解槽を備えた水質浄化装置。
【請求項2】
前記多数の半導体性片が、水中に浮遊しているか又は層状に静置されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の電解槽を備えた水質浄化装置。
【請求項3】
前記多数の半導体性片が、水中に浸漬された、少なくとも1個の、格子状又は中実板状の非導電性支持体に支持されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の電解槽を備えた水質浄化装置。
【請求項4】
前記真性半導体は、同一電解槽で一方の極で窒素含有イオンから窒素ガスを、他方の極で酸素を、同時発生することが可能なものである
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の電解槽を備えた水質浄化装置。
【請求項5】
前記真性半導体が二酸化チタンである
ことを特徴とする、請求項4に記載の電解槽を備えた水質浄化装置。
【請求項6】
電解槽内の窒素化合物又は/及び有機物を含む水に多数の半導体特性及び触媒特性を有する焼成多孔体粒子を浸漬させており、その焼成多孔体粒子は、電極間に通電しなくても、窒素化合物又は/及び有機物を含む水を還元又は酸化し、窒素化合物は分解し、有機物は分解脱色する作用を有するが、通電するとその作用をさらに増大させる
ことを特徴とする電解槽を備えた水質浄化装置。
【請求項7】
前記多数の焼成多孔体粒子が水中に充填または分散されている
ことを特徴とする、請求項6に記載の電解槽を備えた水質浄化装置。
【請求項8】
前記多数の焼成多孔体粒子が、陰極又は陽極に接触して充填されているか、もしくは接触可能な状態で分散されているが、その対極には接触しないように少なくとも1個の透水性の隔壁で分離されている
ことを特徴とする、請求項7に記載の電解槽を備えた水質浄化装置。
【請求項9】
前記の焼成多孔体粒子が少なくともグラファイトシリカと二酸化チタンとを含むハイブリッド焼成多孔体である
ことを特徴とする、請求項6乃至8のいずれかに記載の電解槽を備えた水質浄化装置

【図2】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図14】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−252985(P2007−252985A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77433(P2006−77433)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000236104)MHIソリューションテクノロジーズ株式会社 (33)
【出願人】(504134944)株式会社 サタコンサルタンツ (2)
【Fターム(参考)】