説明

電解水処理装置用の電極

【課題】 有機物を多く含む水及び無機物を多く含む水を同時に浄化可能とする。
【解決手段】 アルミニウムからなる円筒状の第2電極(負極)の周りに、空隙部13を介してステンレスからなる4メッシュの第2電極9(正極)を配置する。これにより、第2電極9により外側で発生したフロック等が、第1電極7の周囲に流れ込むことを第2電極9により阻止できるので、無機化合物の分解能力が低下してしまうことを抑制できるとともに、オゾンの発生量が低下してしまうことを抑制して有機化合物の分解能力が低下してしまうことも抑制できる。したがって、有機物を多く含む水及び無機物を多く含む排水を簡単な構成にて同時に浄化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界を作用させて水を浄化する電解水処理装置に用いられる電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1及び2に示されるように、通常、有機系排水を処理方法と無機系排水の処理方法とは異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−81157号公報
【特許文献1】特開2008−246372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記点に鑑み、有機物を多く含む水及び無機物を多く含む水を同時に処理可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、電界を作用させて水を浄化する電解水処理装置に用いられる電極であって、金属製の第1電極(7)と、第1電極(7)と空隙部(13)を介して対向配置され、第1電極(7)より高い電位が印加される第2電極(9)とを備え、第2電極(9)のうち第1電極(7)と面する部位の総表面積は、第1電極(7)のうち第2電極(9)と面する部位の総表面積より小さく、さらに、第2電極(9)は、浄化対象の水が通過可能な貫通穴(9A)を有する網目状に形成されていることを特徴とする。
【0006】
これにより、請求項1に記載の発明では、第2電極(9)により外側で発生したフロック等が、第1電極(7)側に流れ込むことを第2電極(9)により阻止できるので、フロック等が第1電極(7)の表面に堆積していくことを抑制できる。このため、第1電極(7)にフロック等が付着してしまうことを防止できるので、無機化合物の分解能力が低下してしまうことを抑制できる。
【0007】
また、第1電極(7)にフロック等が付着してしまうことを防止できるので、オゾンの発生量が低下してしまうことを防止でき、有機化合物の分解能力が低下してしまうことを抑制できる。
【0008】
したがって、本実施形態では、有機物を多く含む水及び無機物を多く含む排水を簡単な構成にて同時に浄化することができ得る。
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る電解水処理装置1の概念図ある。
【図2】(a)は本発明の実施形態に係る電解水処理装置用の電極の斜視図であり、(b)は本発明の実施形態に係る電解水処理装置用の電極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
1.電解水処理装置用の電極の構造
図1は、本発明に係る電解水処理装置1の概念図であり、処理対象となる排水が貯留される排水タンク3内の水面下に本発明の実施形態に係る電解水処理装置用の電極(以下、処理用電極という。)5が配置される。
【0011】
この処理用電極5は、図2(a)及び図2(b)に示すように、円筒状に形成された金属製の第1電極7、第1電極7の外周面7Aを囲むように第1電極7と同軸状に配置された網状の第2電極9、及び第1電極7の長手方向両端側に設けられて両電極7、9を保持する絶縁材料(本実施形態では、塩化ビニル)から保持プレート11等から構成されている。
【0012】
そして、第1電極7は、第2電極9よりイオン化し易い金属(本実施形態では、アルミニウム)製であり、第2電極9は耐食性に優れた導電材料(本実施生態では、SUS304)製である。
【0013】
また、第2電極9のうち第1電極7と面する部位の総表面積は、第1電極7のうち第2電極9と面する部位の総表面積より小さくなっており、かつ、第2電極9は、浄化対象の排水が通過可能な貫通穴9Aを有する網目(メッシュ)状に形成されている。
【0014】
具体的には、第1電極7のうち第2電極9と面する部位は、穴等が無い円周面であるのに対して、第2電極9は、直径が2mmの線状部材を網状として矩形状の貫通穴9Aを形成した4メッシュの網状部材である。なお、「4メッシュ」とは、1平方インチ当たり、4つの正方形状の貫通穴9Aが設けられていることを意味する。
【0015】
また、第1電極7と第2電極9とは空隙部13を介して対向配置されており、第1電極7と第2電極9との空隙部距離Δは略5mmであり、貫通穴9Aの一辺の長さは、略0.5インチである。
【0016】
そして、第2電極9を正極とし、第1電極7を負極として、両電極7、9間に20A〜40Aの電流が流れるように電圧が印加される。
2.本実施形態に係る電解水処理装置用の電極の特徴
本実施形態では、第1電極7を構成する金属材料(アルミニウム)がイオン化し、排水中の水酸基と反応して水酸化アルミニウムとなってフロック(小さな固まり)が発生し易いので、排水に含まれる無機化合物の分解浄化を促進する。
【0017】
このとき、第1電極7にフロック等の汚れが付着すると、無機化合物の分解能力が低下していくが、本実施形態では、第2電極9を網目状として、第2電極9のうち第1電極7と面する部位の総表面積を、第1電極7のうち第2電極9と面する部位の総表面積より小さくしているので、第2電極9により外側で発生したフロック等が、第1電極7の周囲に流れ込むことが第2電極9により阻まれる。
【0018】
さらに、第1電極7の表面が円筒面状の曲面となっているので、フロック等が第1電極7に到達しても第1電極7の表面に付着し続け難く、フロック等が第1電極7の表面に堆積していくことはない。したがって、第1電極7にフロック等が付着してしまうことを防止できるので、無機化合物の分解能力が低下してしまうことを抑制できる。
【0019】
また、有機化合物を分解浄化するには、オゾンにより有機化合物を強制酸化させることが望ましいが、本実施形態では、排水中の水が電気分解される際に発生するオゾンにより有機化合物を強制酸化させるので、有機化合物を分解浄化することができる。
【0020】
このとき、第1電極7にフロック等の汚れが付着すると、オゾンの発生量が低下して有機化合物の分解能力が低下するが、本実施形態では、前述したように、第1電極7にフロック等が付着してしまうことを防止できるので、有機化合物の分解能力が低下してしまうことを抑制できる。
【0021】
以上により、本実施形態では、有機物を多く含む水及び無機物を多く含む排水を簡単な構成にて同時に浄化することができる。
なお、排水中に空気又は酸素を注入しながら処理用電極5に通電すれば、にオゾンの発生量を更に増大させることができるので、有機化合物の分解能力を更に向上させることが可能である。
【0022】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、第2電極9を矩形状の貫通穴9Aを有する4メッシュの網状部材としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、線状の部材を第1電極7周りに螺旋状に配置する、又は板材に多数の貫通穴9Aを設けて網目状とする等してもよい。このとき、貫通穴9Aの形状は矩形状に限定されない。
【0023】
また、第1電極7の形状は、円筒又は円柱状に限定されるものではなく、角筒状又は平板状としてもよい。
また、第2電極9よりイオン化し易い金属にて第1電極7を構成し、耐食性に優れた導電材料にて第2電極9を構成すればよいので、具体的な材質は、上述の実施形態に示されたものに限定されない。
【0024】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0025】
1…電解水処理装置、7…第1電極、9…第2電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界を作用させて水を浄化する電解水処理装置に用いられる電極であって、
金属製の第1電極と、
前記第1電極と空隙部を介して対向配置され、前記第1電極より高い電位が印加される第2電極とを備え、
前記第2電極のうち前記第1電極と面する部位の総表面積は、前記第1電極のうち前記第2電極と面する部位の総表面積より小さく、
さらに、前記第2電極は、浄化対象の水が通過可能な貫通穴を有する網目状に形成されていることを特徴とする電解水処理装置用の電極。
【請求項2】
前記第1電極は、円柱状又は円筒状に形成され、
前記第2電極は、前記第1電極の外周面を囲むように前記第1電極と同軸状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電解水処理装置用の電極、
【請求項3】
前記第1電極と前記第2電極との空隙部距離は、略5mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解水処理装置用の電極。
【請求項4】
前記第2電極は、矩形状の貫通穴を有する4メッシュの網状部材であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電解水処理装置用の電極。
【請求項5】
前記第1電極は、前記第2電極よりイオン化し易い金属製であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に電解水処理装置用の電極。
【請求項6】
前記第1電極は、アルミニウム製であり、前記第2電極はステンレス製であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に電解水処理装置用の電極。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−224511(P2011−224511A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98976(P2010−98976)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(506426948)中部ウエリング株式会社 (5)
【Fターム(参考)】