説明

電解水生成装置

【課題】簡単な構造にして電解槽および陰極水吐水管路のスケールを除去することのできる電解水生成装置を得る。
【解決手段】隔膜25で仕切られた陰極室22および陽極室24を有する電解槽2を備え、原水供給部8から電解槽2内に導入された原水を電気分解して、陰極室22で陰極水を生成するとともに、陽極室24で陽極水を生成する電解水生成装置1において、使用時の初期過程において電解槽2で洗浄用陽極水を生成する洗浄水生成手段91を設け、洗浄水生成手段91で生成した洗浄用陽極水を、以前の使用時に陰極水を通水させた陰極水吐水管路6、61に通水してスケールを洗浄するとともに、陰極水吐水管路6、61の吐出口65から外部に吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水などの原水を電気分解して陰極水および陽極水を生成する電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電解水生成装置は、電解用の隔膜で仕切られた陰極室と陽極室を有する電解槽を備えている。そして、陰極室の陰極板に負電位を印加するとともに、陽極室の陽極板に正電位を印加することにより、陰極室に陰極水(アルカリ水)を生成し、陽極室に陽極水(酸性水)を生成するようになっている。
【0003】
ところで、飲用として用いる陰極水を生成する際、陰極室には炭酸カルシウムや水酸化マグネシウムなどのスケール成分が析出することが知られている。このスケール成分は、中性水やアルカリ性水への溶解度が低く、陰極水が触れる壁面に付着することにより電解性能の低下が来されてしまう。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、電解槽の陰極水吐水管路と電解槽への原水供給管路との間に、洗浄液タンクを介在させた閉鎖洗浄液回路を設けるようにした電解水生成装置が開示されている。そして、洗浄液タンク内の洗浄液を電解槽の原水供給管路側から供給した後、陰極水吐水管路から閉鎖洗浄液回路を介して洗浄液タンクへと循環させるようにしている。このように洗浄液を循環させることにより、電解槽および陰極水吐水管路に付着したスケールを洗い流すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−130781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の電解水生成装置にあっては、閉鎖洗浄液回路や洗浄液タンクを設ける必要があり、さらには、洗浄液タンク内の洗浄液を供給し、また、回収するためにポンプや弁機構なども必要となる。このため、電解水生成装置の構造が複雑化するとともに、高価なものになってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、簡単な構造にして電解槽および陰極水吐水管路のスケールを除去することのできる電解水生成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の特徴は、隔膜で仕切られた陰極室および陽極室を有する電解槽を備え、原水供給部から前記電解槽内に導入された原水を電気分解して、前記陰極室で陰極水を生成するとともに、前記陽極室で陽極水を生成する電解水生成装置において、使用時の初期過程において前記電解槽で洗浄用陽極水を生成する洗浄水生成手段を設け、当該洗浄水生成手段で生成した洗浄用陽極水を、以前の使用時に前記陰極水を通水させた陰極水吐水管路に通水してスケールを洗浄するとともに、当該陰極水吐水管路の吐出口から外部に吐出させることを要旨とする。
【0009】
第2の特徴は、前記洗浄水生成手段は、使用時の初期過程において前記陰極室の陰極板に正電位を印加するとともに、前記陽極室の陽極板に負電位を印加する逆電位印加手段であり、前記陰極室で前記洗浄用陽極水を生成することを要旨とする。
【0010】
第3の特徴は、前記陰極室および陽極室への通水量を調節する流量調整手段を設けたことを要旨とする。
【0011】
第4の特徴は、前記電解槽への通水を一時的に停止する通水停止手段を設けたことを要旨とする。
【0012】
第5の特徴は、前記洗浄用陽極水の水質を検知する水質検知手段と、当該水質検知手段で検知した水質に基づいて前記洗浄用陽極水のpH値を調整する制御手段とを設けたことを要旨とする。
【0013】
第6の特徴は、前記陰極水吐水管路の吐出口から吐出される前記洗浄用陽極水が飲用不可であることを警告する警告手段を設けたことを要旨とする。
【0014】
第7の特徴は、前記陰極水吐水管路の吐出口は、飲用口となる第1の吐出口と、当該第1の吐出口とは別に設けられて排出口となる第2の吐出口とを備えており、前記第2の吐出口から前記洗浄用陽極水を吐出するようにしたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、洗浄水生成手段によって使用時の初期過程において電解槽で洗浄用陽極水を生成し、この洗浄用陽極水を以前の使用時に陰極水を通水させた陰極水吐水管路に通水するようにしている。これにより、通水した洗浄用陽極水によって以前の使用時に陰極水吐水管路に付着したスケールを洗浄することができる。また、このスケールを除去した洗浄用陽極水を陰極水吐水管路の吐出口から外部に排出させるだけなので、簡単な構造にして電解槽および陰極水吐水管路のスケールを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる電解水生成装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態にかかる電解水生成装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態にかかる電解水生成装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明の第4実施形態にかかる電解水生成装置を示す概略構成図である。
【図5】本発明の第5実施形態にかかる電解水生成装置を示す概略構成図である。
【図6】本発明の第6実施形態にかかる電解水生成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態にかかる電解水生成装置1を示した図である。本実施形態の電解水生成装置1は、電解槽2や浄化部3および各種配管がケース4内に収納されて構成されている。電解槽2は、陰極板21を内包した陰極室22と陽極板23を内包した陽極室24とが電解用の隔膜25で仕切られて構成される。このとき、陰極板21と陽極板23とは、隔膜25を挟んで相互に対向した位置関係にある。
【0019】
電解槽2には、原水供給部としての蛇口8から原水導入管5を介して水道水や井戸水などの原水が導入される。この原水導入管5は、電解槽2の上流側で二股状に分岐されており、一方の分岐管51は、陰極室22の入口22aに連通して原水を陰極室22に供給する。そして、他方の分岐管52は、陽極室24の入口24aに連通して原水を陽極室24に供給するようになっている。このとき、各分岐管51、52にはドレン管51a、52aが分岐されている。これらドレン管51a、52aには、図示省略したドレンバルブがそれぞれ設けられており、電解槽2のメンテナンス時などに陰極室22および陽極室24内の水を排水できるようにしている。
【0020】
このように電解槽2内に原水が導入された状態で、陰極板21に負電位を印加し、陽極板23に正電位を印加することにより、導入された原水が槽内で電気分解される。すると、陰極室22内に陰極水(アルカリ水)が生成されるとともに、陽極室24内に陽極水(酸性水)が生成される。
【0021】
すなわち、陰極室22内では、水の電気分解による水素の生成とOH−イオンの生成が行なわれるため、陰極室22内の水はアルカリ性となる。陽極室24内では、水の電気分解による酸素の生成とH+イオンの生成が行なわれるため、陽極室24内の水は酸性となる。
【0022】
生成された陰極室22内の陰極水は、陰極室22の出口22bに連通する陰極水吐水管路としての陰極水供給管6と吐水管61を介してケース4の外部に取り出される。また、陽極室24内の陽極水は、陽極室24の出口24bに連通する陽極水吐水管路としての陽極水排水管7を介してケース4の外部に取り出される。陰極水供給管6から供給される陰極水は飲用として用いられる一方、陽極水排水管7から排水される陽極水は他の目的に用いられたり廃棄されたりする。
【0023】
陰極水供給管6は、ケース4の上面に設置された中継部62を介して吐水管61に接続されている。この吐水管61はケース4の外側を下方に向かって配管され、陰極水はその吐水管61の吐出口65から取り出される。
【0024】
一方、上述した原水導入管5は、上流側端部がケース4の外側に引き出されて、蛇口8に取り付けられた水切替器81に接続されている。そして、この水切替器81のレバー82の操作で、蛇口8から流出する水を電解水生成装置1に取り込むことができるようになっている。
【0025】
また、原水導入管5の途中に上述した浄化部3が配設されており、この浄化部3で浄化された原水が各分岐管51、52へと供給される。本実施形態の浄化部3は、前段(上流側)に活性炭収納部31を収納し、後段(下流側)に中空糸膜収納部32を収納した構造となっているが、特にこれに限ることなく原水を浄化する機能を有していればよい。
【0026】
電解槽2の陰極板21および陽極板23への通電は、図示省略した操作パネルの各種信号が入力される制御手段としての制御回路9によって制御されており、通常の制御では陰極板21に負電位を印加し、陽極板23に正電位を印加する。
【0027】
ここで、本実施形態では、電解水生成装置1を使用する際に、本使用時(使用時)の初期過程において洗浄モードを所定時間(例えば、10秒)実行するようになっている。この洗浄モードでは、電解槽3で洗浄用陽極水を生成し、この洗浄用陽極水を洗浄水として以前の使用時に陰極水を通水させた陰極水供給管6に通水するようにしている。
【0028】
本実施形態では、洗浄用陽極水を生成する洗浄水生成手段として逆電位印加手段が設けられている。この逆電位印加手段は、制御回路9に組み込まれる逆電位印加回路91によって構成されており、洗浄モードが設定されると、内蔵されたタイマーによって所定時間だけ陰極板21および陽極板23に印加する電位の極性を逆にするようになっている。なお、図中、2点鎖線は配線を示し、また、逆電位印加回路91は、図中太実線が通常の通水モードでの電位供給状態、太破線が洗浄モードでの電位供給状態を示し、このことは以下の各図においても同様とする。
【0029】
すなわち、逆電位印加回路91は、本使用時の初期過程において本来負電位が印加される陰極板21に正電位を印加する一方で、本来正電位が印加される陽極板23に負電位を印加するものである。これにより、本来の電解槽2の用い方とは異なり、陰極室22に陽極水が生成され、陽極室24に陰極水が生成されることになり、その陰極室22で生成された陽極水を洗浄用陽極水として用いることになる。
【0030】
そして、生成した洗浄用陽極水を、以前の使用時に陰極水を通水させた陰極水供給管6に上記所定時間だけ通水するようになっており、その洗浄用陽極水は、陰極水供給管6および吐水管61を通って吐出口65から排出される。なお、洗浄モードの実行時間は10秒に限ることは無く、以前の使用時に陰極水供給管6に付着したスケールを効率良く洗浄できる時間に設定されればよい。
【0031】
このように、本実施形態では、本使用時に洗浄モードが実行されると、本来は陰極水を生成する陰極室22に、逆電位印加回路91によって陽極水を生成させることができ、この陽極水を洗浄用陽極水として陰極水供給管6に通水する。すると、以前の陰極水の通水により陰極水供給管6に付着したスケールが洗浄用陽極水によって洗浄されて除去される。勿論、所定時間(10秒)実行される洗浄モードが終了した後は通常の通水モードに戻り、陰極室22で陰極水が生成されるとともに、陽極室24で陽極水が生成され、そして、吐水管61から陰極水が吐水されることになる。
【0032】
以上、説明してきたように、本実施形態の電解水生成装置1によれば、使用時の初期過程では、逆電位印加手段としての逆電位印加回路91によって陰極室22に洗浄用陽極水を生成できる。そして、この洗浄用陽極水が陰極水供給管6へと流通することにより、陰極水供給管6および吐水管61に付着したスケールを洗浄できる。そして、このスケールを除去した洗浄用陽極水を吐水管61の吐出口65から外部に排出させるだけなので、簡単な構造にして電解槽2および陰極水吐水管路(陰極水供給管6、吐水管61)のスケールを除去することができる。
【0033】
また、洗浄用陽極水を、陰極水供給管6および吐水管61の全域に亘って行き渡らせることができるため、陰極水が流通する経路の広範囲に亘ってスケールを洗浄することができ、スケールによる経路の閉塞を抑制することができる。
【0034】
さらにまた、本実施形態では、洗浄水生成手段が電解槽2への通電制御を行う制御回路9に逆電位印加回路91を組み込んで構成されているので、洗浄水生成手段の構造をより簡素化できる。これにより、装置の大型化を防止し、かつ、価格の上昇を抑えることができる。
【0035】
なお、本実施形態では、洗浄水生成手段は、陰極板21および陽極板23に印加する電位の極性を逆にする構成としたが、これに限ることなく、本来、陽極室24に生成される陽極水を洗浄用陽極水として用いることもできる。この場合は、例えば、陽極室24の出口24bと陰極水供給管6とを連通するバイパス通路を設けるとともに、連通部に電磁三方弁を設け、使用時に所定時間だけ電磁三方弁が陽極室24の出口24bと陰極水供給管6とを連通するように開弁させればよい。
【0036】
[第2実施形態]
図2は、本発明の第2実施形態を示した図であり、上記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
【0037】
本実施形態の電解水生成装置1Aが上記第1実施形態と主に異なる点は、洗浄用陽極水の生成にあたって、陰極室22と陽極室24への通水量を調節する流量調整手段としての第1および第2の水量調整弁10、11を設けたことにある。
【0038】
具体的には、図2に示すように、本実施形態では第1の水量調整弁10が、二股状に分岐された一方の分岐管51の途中に設けられているとともに、第2の水量調整弁11が、他方の分岐管52の途中に設けられている。これら第1および第2の水量調整弁10、11は電磁弁で構成されており、本使用時の初期過程において洗浄モードが設定されると、制御回路9によってそれぞれの開度が制御されるようになっている。これにより、分岐管51、52のそれぞれの通水量、つまり、陰極室22および陽極室24への供給水量をそれぞれ制御できるようにしている。
【0039】
電解水生成装置1Aでは、一般的にアルカリ性の陰極水を飲用や調理に用いることを主目的としているため、その流水の比率は、陰極水:陽極水=2:1〜19:1程度として設定され、陰極水の吐水量が陽極水の排水量よりも多くなっている。例えば、吐水量と排水量の総和を2L/minとすると、陰極水:陽極水=2:1とした場合に陰極水は1.3L/minとなり、陰極水:陽極水=19:1とした場合に陰極水は1.9L/minとなる。このように、比率によって約1.5倍ほど水量が異なる場合がある。
【0040】
本使用時の前に、例えば10秒間の洗浄モードを設けるようにした場合、本使用時の条件と同じ水量比であれば、洗浄用陽極水は洗浄時に生成される陰極水よりも多くなる。しかしながら、洗浄用陽極水は陰極水供給管6を洗浄できれば足りるので、必ずしも洗浄用陽極水の水量を多くする必要はない。これに加えて、水道水などの原水中には炭酸イオンなどの緩衝成分が含まれるため、水量が多い場合には電解時にpHの低下率が悪く、洗浄用陽極水として不適となる場合が発生する。そのため、単位時間当たりに印加する電位量が同じ場合は、水量が少ないほど電解pHの変化が大きくなるため、洗浄用陽極水の生成水量は少ない方が好ましい。
【0041】
したがって、第1および第2の水量調整弁10、11の開度をそれぞれ制御することにより、陰極室22および陽極室24への通水量を個別に調整し、陰極水と陽極水の水量を調整することができる。これにより、本来、電解槽2で生成される陰極水と陽極水の割合を、陰極水が少なくなる方向に変化させることにより、洗浄モードで陰極室22で生成される洗浄用陽極水の水量を減少させてpHを下げる(酸性度大)ことができる。
【0042】
例えば、本使用時で陰極水:陽極水=16:1である場合を、陰極水:陽極水=4:1に調整することにより、洗浄モードで生成される洗浄用陽極水のpHをより酸性側にでき、スケールの洗浄をより効率良く行うことができる。よって、電解時に陰極室22と陽極室24への通水量を調整することにより、隔膜25での陰極水と陽極水の混じりを調整させたり、単位時間に電解を受ける水量を減少させたりでき、これにより電解効率を変化させることができる。
【0043】
本実施形態では、原水に含まれる炭酸イオンなどの緩衝成分が原因で洗浄用陽極水のpHが下がりにくい場合に特に効果があり、pHが変化しにくい陽極水のpHを効率良く低下させることができる。
【0044】
勿論、本実施形態では、所定時間(10秒)実行される洗浄モードが終了した後は通常の通水モードに戻り、陰極室22で陰極水が生成されるとともに、陽極室24で陽極水が生成される。
【0045】
以上、説明してきたように、本実施形態の電解水生成装置1Aによれば、洗浄用陽極水を生成する際に、第1および第2の水量調整弁10、11を設けて陰極室22および陽極室24への供給水量を制御するようにしている。これにより、使用時の初期過程における洗浄モードで電解槽2によって生成される洗浄用陽極水のpHを下げる(酸性度大)方向に変化させて、陰極水供給管6の洗浄効果をより高めることができる。
【0046】
[第3実施形態]
図3は、本発明の第3実施形態を示した図であり、上記第1および第2実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
【0047】
本実施形態の電解水生成装置1Bが上記第1実施形態と主に異なる点は、洗浄用陽極水の生成にあたって、電解槽2への通水を一時的に停止する通水停止手段としての通水停止弁12を設けたことにある。すなわち、流水状態で電気分解する場合は通水電解となり、通水停止状態で電気分解する場合は貯水電解となる。そして、通水電解の前段階で貯水電解することにより、洗浄用陽極水のpHをより酸性化させるようにしたものである。
【0048】
通水停止弁12は、本実施形態では電磁弁で構成されており、原水導入管5の浄化部3と分岐管51、52との間の途中に配設されている。そして、本使用時の初期過程において洗浄モードが設定されると、制御回路9によって閉弁されて原水導入管5を所定時間遮断するようになっている。本実施形態では、この通水停止弁12による原水導入管5の遮断時間は10秒としている。
【0049】
したがって、このように原水導入管5が遮断されると、電解槽2への原水供給が停止され、この状態で陰極板21に正電位を印加し、陽極板23に負電位を印加することにより、陰極室22で洗浄用陽極水が貯水電解される。このように貯水電解することにより、陰極室22で生成される洗浄用陽極水のpHはより低い値(酸性度大)となる。勿論、この貯水電解を実行する際には、電解槽2内に原水が溜められた状態にあることはいうまでもない。
【0050】
次に、通水停止弁12の上記遮断時間(10秒)が経過すると、通水停止弁12は開弁されて原水導入管5を連通させて通水電解が行われる。本実施形態では、通水電解を実行する所定時間は10秒としている。勿論、この場合の貯水電解および通水電解は、逆電位印加回路91によって陰極板21に正電位、陽極板23に負電位を印加するようになっている。したがって、通水停止弁12が開弁されて電解槽2に通水する間にも、陰極板21に継続して正電位を印加するとともに、陽極板23に負電位を印加して、陰極室22で洗浄用陽極水を生成するようになっている。
【0051】
そして、通水電解に移行した状態では、貯水電解で生成された洗浄用陽極水と、通水電解で生成された洗浄用陽極水とが混合した状態で陰極室22から陰極水供給管6へと供給される。このとき、通水電解と貯水電解とが混合された洗浄用陽極水は、通水電解のみで生成された洗浄用陽極水と比較して酸性度が大きくなっている。
【0052】
したがって、このように酸性度が大きくなった洗浄用陽極水が陰極水供給管6に供給されることにより、スケールをより効率良く洗浄して除去することができる。また、本実施形態にあっても、原水に含まれる炭酸イオンなどの緩衝成分が原因で洗浄用陽極水のpHが下がりにくい場合に特に効果がある。
【0053】
なお、本実施形態では、貯水電解と通水電解とを合わせて洗浄モードが所定時間(10秒+10秒)実行されるが、その洗浄モードが終了した後は通常の通水モードに戻り、陰極室22で陰極水が生成され、かつ、陽極室24で陽極水が生成される。
【0054】
以上、説明してきたように、本実施形態の電解水生成装置1Bによれば、電解槽2への通水を一時的に停止する通水停止弁12を設け、通水電解の前段階で貯水電解するようにしている。したがって、貯水電解で生成された洗浄用陽極水と、通水電解で生成された洗浄用陽極水とを混合して、より酸性度の大きな洗浄用陽極水を陰極水供給管6に供給できるため、スケールをより効率良く洗浄して除去することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、通水停止弁12は制御回路9により電気的に開閉制御する場合を説明したが、これに限ることなく、例えば水切替器81のレバー82の操作に連動して機械的に開閉できるようにしてもよい。
【0056】
[第4実施形態]
図4は、本発明の第4実施形態を示した図であり、上記第1〜第3実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
【0057】
本実施形態の電解水生成装置1Cが上記第1実施形態と主に異なる点は、洗浄用陽極水の水質を検知する水質検知手段としてのpHセンサ13と、このpHセンサ13で検知した水質に基づいて洗浄用陽極水のpH値を調整する制御回路9とを設けたことにある。すなわち、洗浄用陽極水の水質をモニタリングして、洗浄用陽極水のpH値を調整するようにしたことにある。
【0058】
pHセンサ13は、本実施形態では陰極水供給管6の途中に設けられており、陰極室22で生成されて出口22bから吐出される洗浄用陽極水のpHを測定するようになっている。そして、pHセンサ13の測定結果は制御手段としての制御回路9に送られ、洗浄用陽極水のpH値がスケールを洗浄するのに十分な酸性度を有しているかどうかが判断される。この判断結果から洗浄用陽極水の酸性度がスケールを洗浄するのに十分でないと判断された場合は、本実施形態では陰極板21および陽極板23に印加する電解電位を制御するようにしている。つまり、電解電位を高くすることにより、電気分解される洗浄用陽極水の酸性度を大きくすることができる。
【0059】
また、洗浄用陽極水のpH値の調整は、電解電位の制御以外に、上記第2実施形態で述べたように、通水量を調整してもよく、また、上記第3実施形態で述べたように、通水の一時停止時間を調整してもよい。さらに、これら以外にも洗浄用陽極水のpH値を調整する手段があれば、それを用いることもできる。
【0060】
なお、洗浄用陽極水のpHがスケールの洗浄が可能な値であっても、過剰に電解されて酸性度が大き過ぎるpH値となった場合には、電解槽2の内部や流路にダメージを与える恐れがあるため、逆に酸性度を小さくするように制御することも可能である。
【0061】
以上、説明してきたように、本実施形態の電解水生成装置1Cによれば、洗浄用陽極水の水質をモニタリングして、洗浄用陽極水のpH値を調整するようにしたので、洗浄用陽極水のpHを、より適正な値に緻密に制御できる。これにより、陰極水供給管6に付着したスケールの除去性能をより高めることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、pHセンサ13を陰極水供給管6の途中に設けるようにしたが、これに限定されず、例えば電解槽2の陰極室22に設けるようにしてもよい。
【0063】
[第5実施形態]
図5は、本発明の第5実施形態を示した図であり、上記第1〜第4実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
【0064】
本実施形態の電解水生成装置1Dが上記第1実施形態と主に異なる点は、陰極水吐水管路としての吐水管61の吐出口65から吐出される洗浄用陽極水が飲用不可であることを警告する警告手段としての警告表示パネル14を設けたことにある。
【0065】
すなわち、電解槽2で生成された洗浄用陽極水は、本来、陰極水を吐出するための陰極水供給管6および吐水管61を通って排出されるため、使用者にとっては吐水管61から流出する水が陰極水か洗浄用陽極水か間違い易くなる。
【0066】
警告表示パネル14は、ケース4の外側面に露出して使用者が容易に視認できる位置に設けられており、制御回路9から出力される警告信号により動作して、本実施形態では表示パネル14に洗浄中の文字を表示すようにしている。このとき、制御回路9は、本使用時の初期過程において電解槽2で洗浄用陽極水を生成する制御を行っており、例えばその洗浄用陽極水を生成する信号(例えば、逆電位を印加する信号)を用いて警告信号とすることができる。
【0067】
なお、警告手段は、表示パネル14以外にも、警告ランプや警報ブザーなどの使用者に洗浄モードを告知できる手段であってもよい。また、上記第4実施形態で示したpHセンサ13用い、このpHセンサ13で検知した水質に基づいて警告手段の警告時間を調整するのようにしてもよい。
【0068】
以上、説明してきたように、本実施形態の電解水生成装置1Dによれば、洗浄用陽極水を陰極水供給管6に通水する際に、この陰極水供給管6の吐水が飲用不可であることを警告手段14によって警告できる。これにより、使用者が誤って洗浄用陽極水を用いるのを効果的に抑え、洗浄用陽極水が飲用や調理用として利用されてしまうのを防止できる。
【0069】
ところで、本使用時に洗浄モードが所定時間実行された後は、通常の通水モードに移行するため、吐水管61からは洗浄モード時の洗浄用陽極水と通水モード時の陰極水とが連続して排出されることになる。そのため、本実施形態のように警告手段を設けた場合は、通水モードに移行すると同時に警告手段による警告が解消されるため、使用者は吐水管61から流出する水が洗浄用陽極水から陰極水に替わったことを簡単に知ることができる。
【0070】
なお、本実施形態では特徴部分を上記第1実施形態に適用した場合を説明したが、上記第2〜第4実施形態にあっても適用することができる。
【0071】
[第6実施形態]
図6は、本発明の第6実施形態を示した図であり、上記第1〜第5実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
【0072】
本実施形態の電解水生成装置1Eが上記第1実施形態と主に異なる点は、陰極水供給管6に排水管15を接続して設け、この排水管15から洗浄後の洗浄用陽極水を排水するようにしたことにある。すなわち、陰極水吐水管路の吐出口65が、飲用口となる第1の吐出口65aと、この第1の吐出口65aとは別に設けられて排出口となる第2の吐出口65bとを備えており、この第2の吐出口65bから洗浄用陽極水を吐出するようにしたことにある。
【0073】
排水管15は、図6に示すように、本実施形態では陰極水供給管6の途中から分岐されて、その下流側(排水側)端を陽極室24のドレン管52aに連通させている。このとき、陰極水供給管6と排水管15との分岐部には、切替弁16が設けられている。この切替弁16は電磁三方弁で構成されており、制御回路9から出力される切替信号により動作する。
【0074】
また、切替弁16は、通常は、排水管15側を遮断して陰極水供給管6を連通する状態となっており、本使用時の初期過程で洗浄モードが設定されると、所定時間だけ陰極水供給管6の上流側を排水管15に連通させるようにしている。
【0075】
本実施形態は、上記第1実施形態に限ることなく、上記第2〜第4実施形態にあっても適用することができ、排水管15に連通させる所定時間は、陰極室22で洗浄用陽極水を生成する時間に設定される。つまり、第1、第2、第4実施形態では所定時間が10秒に設定され、第3実施形態では所定時間が20秒に設定される。
【0076】
したがって、本使用時の初期段階で陰極室22に洗浄用陽極水が生成されると、切替弁16が作動して、陰極室22の出口22bから排水される洗浄用陽極水を陰極水供給管6から排水管15へと案内する。これにより、洗浄用陽極水は、排水管15からドレン管52aに流入し、このドレン管52aの第2の吐出口65bからケース4の外部に吐出される。
【0077】
勿論、洗浄モードが終了して通常の通水モードに替わると、切替弁16は陰極水供給管6を連通する側に切り替わり、陰極水を吐水管61から吐水できるようになる。
【0078】
以上、説明してきたように、本実施形態の電解水生成装置1Eによれば、飲用口となる第1の吐出口65aとは別の第2の吐出口65bを設け、この第2の吐出口65bから洗浄用陽極水を排水するようにしている。これにより、使用者が間違えて洗浄用陽極水を飲用や調理に用いてしまうのを無くすことができる。
【0079】
なお、本実施形態では、陰極水供給管6の途中に排水管15が接続して設けられているため、切替弁16よりも下流側の陰極水供給管6および吐水管61を洗浄用陽極水によって洗浄することができなくなる。しかしながら、陰極室22の出口22bから吐出される洗浄用陽極水は、一般的には陰極水供給管6の上流側でスケールが付きやすく(濃度が高いため)、下流側に進むにつれてスケールが次第に付きにくくなると考えられる。よって、主に陰極水供給管6の上流側となる切替弁16よりも上流側の陰極水供給管6を洗浄できるので、本実施形態にあってもスケールの除去効果を得ることができると考えられる。
【0080】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0081】
例えば、上記各実施形態において、陰極水吐水管路に存在するスケールが除去されたかどうかを検知する検出手段を設けるようにしてもよい。この場合、例えば吐出口から吐出される洗浄用陽極水のカルシウム濃度を検出したり、陰極水吐水管路に光を照射して光の透過量を検出したりすることで、スケールの除去を検知することができる。
【符号の説明】
【0082】
1、1A、1B、1C、1D、1E 電解水生成装置
2 電解槽
6 陰極水供給管(陰極水吐水管路)
8 蛇口(原水供給部)
9 制御回路(制御手段)
10、11 水量調整弁(流量調整手段)
12 通水停止弁(通水停止手段)
13 pHセンサ(水質検知手段)
14 表示パネル(警告手段)
21 陰極板
22 陰極室
23 陽極板
24 陽極室
25 隔膜
61 吐水管(陰極水吐水管路)
65 吐出口
65a 第1の吐出口
65b 第2の吐出口
91 逆電位印加回路(洗浄水作成手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔膜で仕切られた陰極室および陽極室を有する電解槽を備え、原水供給部から前記電解槽内に導入された原水を電気分解して、前記陰極室で陰極水を生成するとともに、前記陽極室で陽極水を生成する電解水生成装置において、
使用時の初期過程において前記電解槽で洗浄用陽極水を生成する洗浄水生成手段を設け、当該洗浄水生成手段で生成した洗浄用陽極水を、以前の使用時に前記陰極水を通水させた陰極水吐水管路に通水してスケールを洗浄するとともに、当該陰極水吐水管路の吐出口から外部に吐出させることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
前記洗浄水生成手段は、使用時の初期過程において前記陰極室の陰極板に正電位を印加するとともに、前記陽極室の陽極板に負電位を印加する逆電位印加手段であり、
前記陰極室で前記洗浄用陽極水を生成することを特徴とする請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記陰極室および陽極室への通水量を調節する流量調整手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記電解槽への通水を一時的に停止する通水停止手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記洗浄用陽極水の水質を検知する水質検知手段と、当該水質検知手段で検知した水質に基づいて前記洗浄用陽極水のpH値を調整する制御手段とを設けたことを特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項に記載の電解水生成装置。
【請求項6】
前記陰極水吐水管路の吐出口から吐出される前記洗浄用陽極水が飲用不可であることを警告する警告手段を設けたことを特徴とする請求項1〜5のうち何れか1項に記載の電解水生成装置。
【請求項7】
前記陰極水吐水管路の吐出口は、飲用口となる第1の吐出口と、当該第1の吐出口とは別に設けられて排出口となる第2の吐出口とを備えており、
前記第2の吐出口から前記洗浄用陽極水を吐出するようにしたことを特徴とする請求項1〜5のうち何れか1項に記載の電解水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−66828(P2013−66828A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205815(P2011−205815)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】