説明

電解用電極及び電解用電極の製造方法

【課題】 低電流密度による水の電気分解によって、高効率にてオゾン水を生成することを可能とする電解用電極を提供する。
【解決手段】 オゾン発生用電極1は、基体2と、該基体2の表面に形成され、誘電体を含む表面層4とから構成され、該表面層4には、当該表面層4の表面から内部に連続して延在する孔10が形成されており、この孔10から基体2の表面までの最も近接する箇所における距離は、0より大きく2000nm以下とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用又は民生用電解プロセスに使用される電解用電極及び当該電解用電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オゾンは非常に酸化力が強い物質であり、該オゾンが溶解した水、所謂オゾン水は上下水道や、食品等、又は、半導体デバイス製造プロセス等での洗浄処理への適用など幅広い洗浄殺菌処理での利用が期待されている。オゾン水を生成する方法としては、紫外線照射や放電により発生させたオゾンを水に溶解させる方法や、水の電気分解により水中でオゾンを発生させる方法などが知られている。
【0003】
特許文献1には、紫外線ランプによりオゾンガスを生成するオゾン発生手段と水を貯水するタンクとを備え、生成したオゾンガスをタンク内の水に供給することでオゾン水を生成するオゾン水生成装置が開示されている。また、特許文献2には、水中にオゾンガスを効率よく溶解させるために、放電式のオゾンガス発生装置により生成したオゾンガスと水とをミキシングポンプにより所定の割合で混合するオゾン水生成装置が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記の如き紫外線ランプや放電式によりオゾンガスを発生させてこのオゾンガスを水中に溶解させてなるオゾン水生成方法では、オゾンガス発生装置やオゾンガスを水中に溶解させるための操作などが必要となり装置が複雑化しやすく、また生成したオゾンガスを水中に溶解させる方法であるため所望の濃度のオゾン水を高効率に生成することが困難であるという問題があった。
【0005】
特許文献3には、上記のような問題を解決するための方法として、水の電気分解により水中でオゾンを発生させオゾン水を得る方法が開示されている。係る方法では、多孔質体又は網状体で形成された電極基材と白金族元素の酸化物等を含む電極触媒とを有して構成されるオゾン発生用電極と、このオゾン発生用電極を用いる。
【特許文献1】特開平11−77060号公報
【特許文献2】特開平11−333475号公報
【特許文献3】特開2002−80986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した如き水の電気分解によるオゾン水の生成方法では、白金族元素は標準的なアノード材料であり、有機物を含まない水系溶液中ではほとんど溶解しないという特徴があるが、オゾン発生用電極としてはオゾン発生効率が低く、高効率な電解法によるオゾン水生成を行うことは困難である。また、このような従来のオゾン発生用電極を用いた電解法によるオゾン水生成では、オゾン発生のために高電流密度での電気分解が必要であり、エネルギー消費量や電極寿命に問題がある。
【0007】
そこで、本発明は従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、低電流密度による水の電気分解によって、高効率にてオゾン水を生成することを可能とする電解用電極を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電解用電極は、基体と、この基体の表面に形成されて誘電体を含む表面層とから構成され、該表面層には、当該表面層の表面から内部に連続して延在する孔が形成されており、該孔から基体の表面までの最も近接する箇所における距離は、0より大きく2000nm以下とされていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明の電解用電極は、上記発明において、基体は、導電性基体であることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明の電解用電極は、上記各発明において、表面層に含まれる誘電体は、酸化物であることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明の電解用電極は、上記発明において、酸化物は、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チタン、又は、酸化タングステンであることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明の電解用電極は、上記何れかの発明の電解用電極において、基体には、表面層の内側に位置して、基体の表面に形成され、少なくとも難酸化性の金属、又は、導電性を有する金属酸化物、若しくは、酸化しても導電性を有する金属のいずれかを含む中間層が形成されており、孔から当該中間層までの最も近接する箇所における距離が、0より大きく2000nm以下とされていることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明の電解用電極は、上記発明において、中間層は、貴金属、貴金属を含む合金、若しくは、貴金属酸化物の何れかを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明の電解用電極は、上記発明において、貴金属は、白金であることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、上記請求項5乃至請求項7の発明の電解用電極の製造方法であって、基体の表面に中間層構成材を塗布した後、熱処理して基体の表面に中間層を形成する第1のステップと、該第1のステップ後、中間層の表面に表面層構成材を塗布した後、酸化性雰囲気中で熱処理して、中間層の表面に表面層を形成する第2のステップを含むことを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明は、上記発明において、第2のステップにおける熱処理は、第1のステップにおける熱処理よりも高温にて実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電解用電極によれば、基体と、この基体の表面に形成されて誘電体を含む表面層とから構成され、該表面層には、当該表面層の表面から内部に連続して延在する孔が形成されており、該孔から基体の表面までの最も近接する箇所における距離は、0より大きく2000nm以下とされていることから、当該電解用電極により電気分解を行うことで、低電流密度にて効率的にオゾンを生成することができる。
【0018】
特に孔から基体の表面までの最も近接する箇所における距離は、0より大きく2000nm以下とされていることから、孔から基体表面までに位置する表面層内の不純物準位を介して、若しくは、Fowler−Nordheimトンネルにより電子が電極内部に移動できる。これにより、アノードにおける電極反応において、フェルミ準位よりバンドギャップの半分程度高いエネルギーレベルにある伝導体の底付近の空の準位が電解質から電子を受け取ることができ、より高いエネルギーレベルで電子の移動を生起させることで、より低い電流密度において効率的にオゾンを生成することができる。
【0019】
請求項2の発明の電解用電極によれば、上記発明において、基体は、導電性基体であるため、上記発明における表面層内を移動した電子により、電極反応を生起することができる。これにより、効率的にオゾンを生成することができる。
【0020】
また、請求項3の発明によれば、上記各発明において、表面層に含まれる誘電体は、酸化物、特に、請求項4の発明の如く酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チタン、又は、酸化タングステンとすることで、低電流密度において、より一層効果的にオゾンを発生させることができる。
【0021】
また、請求項5の発明によれば、上記各発明において、基体には、表面層の内側に位置して、基体の表面に形成され、少なくとも難酸化性の金属、又は、導電性を有する金属酸化物、若しくは、酸化しても導電性を有する金属のいずれかを含む中間層が形成されているため、当該電極により電解を行った場合において、当該中間層が酸化し不動態化する不都合を回避することができる。これにより、電極の耐久性を向上させることができる。また、基体全体を当該中間層を構成する材料にて構成する場合に比して、生産コストの低廉化を図ることができると共に、係る場合においても、同様に効率的にオゾンを生成することができる。
【0022】
また、上記において、孔から当該中間層までの最も近接する箇所における距離が、0より大きく2000nm以下とされているため、上述の如く効果的に電子が表面層内を移動することが可能となる。そのため、表面層の表面において、高いエネルギーレベルで電極反応を生起することができる。これにより、より低い電流密度において効率的にオゾンを生成することができるようになる。
【0023】
請求項6の発明によれば、中間層は、貴金属、貴金属を含む合金、若しくは、貴金属酸化物の何れか、特に、請求項7の発明の如き白金を含むことにより、当該電極により電気分解を行うことで、より一層、効率的にオゾンを生成することができるようになる。
【0024】
請求項8の発明によれば、上記請求項5乃至請求項7の発明の電解用電極の製造にあたり、基体の表面に中間層構成材を塗布した後、熱処理して基体の表面に中間層を形成する第1のステップと、該第1のステップ後、中間層の表面に表面層構成材を塗布した後、酸化性雰囲気中で熱処理して、中間層の表面に表面層を形成する第2のステップを含むため、基体の表面に適切な厚さ、適切な量で、面内均一性良く中間層を形成することができると共に、密着性の高い中間層を形成することができる。
【0025】
また、電極に必要な耐久性にあわせた中間層の厚さを容易に得ることができるため、中間層構成材の使用量を適量にすることができ、無駄な使用を低減することができる。
【0026】
更に、中間層の表面に適切な厚さ、適切な量で、面内均一性良く表面層を形成することができると共に、密着性の高い表面層を形成することができる。
【0027】
請求項9の発明によれば、第2のステップにおける熱処理は、第1のステップにおける熱処理よりも高温にて実行することから、表面層を結晶化することができるようになる。当該表面層を結晶化することで、内部応力が大きくなり、表面層に孔、所謂クラックを形成することができる。
【0028】
このクラックが分岐と結合を複雑に繰り返すことで、孔から中間層までの最も近接する箇所における距離が、0より大きく2000nm以下とされるクラックを形成することが可能となる。そのため、孔から基体の表面までの距離が、0より大きく2000nm以下とされていることから、得られる電極により電気分解を行うことで、孔から基体表面までに位置する表面層内の不純物準位を介して、若しくは、Fowler−Nordheimトンネルにより電子が電極内部に移動できる。これにより、アノードにおける電極反応において、フェルミ準位よりバンドギャップの半分程度高いエネルギーレベルにある伝導体の底付近の空の準位が電解質から電子を受け取ることができ、より高いエネルギーレベルで電子の移動を生起させることで、より低い電流密度において効率的にオゾンを生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明の電解用電極の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の電解用電極の一例としてのオゾン発生用電極1の平面図、図2は同オゾン発生用電極1のA−A概略断面拡大図である。
【0030】
図1に示すようにオゾン発生用電極1は、基体2と、当該基体2の表面に形成される中間層3と、当該中間層3の表面に形成される表面層4とから構成される。
【0031】
本発明において基体2は、導電性材料として、例えば、白金(Pt)若しくは、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)などのバルブ金属やこれらバルブ金属2種以上の合金、或いはシリコン(Si)などにより構成される。コストや加工性、耐食性などを考慮した場合にはチタンが好適に用いられる。
【0032】
中間層3は、酸化し難い金属、又は、酸化しても導電性をもつ金属酸化物、若しくは、酸化しても導電性を有する金属として、例えば、白金族元素としての、白金、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、金(Au)、或いは、銀(Ag)、又は、貴金属酸化物として、酸化イリジウム、酸化パラジウム、又は、酸化ルテニウム、酸化物超伝導体などにより構成される。本実施例では、中間層3は、白金により構成するものとする。尚、上記基体2を白金にて構成する場合には、基体2の表面も当然に白金にて構成されるため、当該中間層3を格別に構成する必要はない。ただし、係る基体2を白金にて構成した場合には、コストの高騰を招くことから、工業的には、当該基体2を低廉な材料にて構成し、当該基体2の表面に貴金属等で構成される中間層3を形成することが好ましい。
【0033】
また、表面層4は、前記中間層3を被覆するように当該中間層3と共に、誘電体により基体2の表面に層状に形成される。表面層4を構成する誘電体としては、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ニオブなどが用いられる。尚、図2に示す如く本発明のオゾン発生用電極1における表面層4は前記誘電体のみで構成しても良いが、図3に示すように誘電体以外に前記中間層3に用いられたものと同様な白金5等の貴金属又は貴金属酸化物を含むものであっても良いものとする。
【0034】
また、表面層4は、チタン酸バリウム(BaTiO3)等のペロブスカイト型酸化物に代表されるような2種類以上の金属元素を含む酸化物や、酸化チタンと酸化タンタルのように結晶構造が異なる2種類以上の酸化物の混合体であってもよく、この場合にもこれらの酸化物の他に上記貴金属又は貴金属酸化物を含むものも用いることができる。
【0035】
ここで酸化タンタルとは、結晶性のTaO、Ta25や、このような酸化物に多少の酸素欠損が生じたTaO1-X、Ta25-X、及び不定形(アモルファス状)のTaOX等、タンタルと酸素が化合した物質全般を示すものである。また酸化アルミニウムとはAl23、AlOX等、酸化チタンとはTiO2、Ti23、TiOx等、酸化タングステンとはWO3、WOx等を示すものである。尚、上記表面層4を形成する誘電体としては、他に、Na2O、NaOx、MgO、MgOx、SiO2、SiOx、K2O、KOx、CaO、CaOx、Sc23、ScOx、V25、VOx、CrO2、CrOx、Mn34、MnOx、Fe23、FeOx、CoO、CoOx、NiO、NiOx、CuO、CuOx、ZnO、ZnOx、GaO、GaOx、GeO2、GeOx、Rb23、RbOx、SrO、SrOx、Y23、YOx、ZrO2、ZrOx、Nb25、NbOx、MoO3、MoOx、In23、InOx、SnO2、SnOx、Sb25、SbOx、Cs25、CsOx、BaO、BaOx、La23、LaOx、CeO2、CeOx、PrO2、PrOx、Nd23、NdOx、Pm23、PmOx、Sm23、SmOx、Eu23、EuOx、Gd23、GdOx、Tb23、TbOx、Dy23、DyOx、Ho23、HoOx、Er23、ErOx、Tm23、TmOx、Yb23、YbOx、Lu23、LuOx、HfO2、HfOx、PbO2、PbOx、Bi23、BiOx等が適用可能である。
【実施例1】
【0036】
次に、本発明の電解用電極の製造方法について図4のフローチャート図を参照して説明する。この製造方法は、導電性基体2の表面に中間層3を被覆形成し、更にこの中間層3の表面に表面層4を被覆形成するものである。
【0037】
先ずはじめに、厚さ1mm、長さ80mm、幅20mmのチタン板を導電性基体2として用いて、この導電性基体2の表面(長さ80mm、幅20mmとした面)を紙ヤスリにより研磨する(ステップS1)。尚、本実施例のオゾン発生用電極1では、導電性基体2表面の片側のみに中間層3及び表面層4を被覆して、この表面層4を対極に対向させて電解の反応面として使用するが、例えばバイポーラ式の電解装置などに本発明のオゾン発生用電極1を用いる場合には、導電性基体2表面の両面、あるいは、導電性基体2の全面に中間層3及び表面層4を形成させることも可能であり、この場合には、上記導電性基体2の表面の研磨及び以下で説明するエッチング、熱処理等の製造工程は導電性基体2の両面、あるいは全面に対して行うものとする。
【0038】
また、上記導電性基体2の表面の研磨は当該導電性基体2の表面に形成されている酸化皮膜を削除できれば良いものであり、紙ヤスリによる方法だけでなく、サンドブラスト等同様の効果が得られる方法ならば、他の方法であっても良いものとする。
【0039】
次に、表面を研磨した導電性基体2の有機溶剤、本実施例ではアセトンにより脱脂し(ステップS2)、その後、濃度200g/lの熱シュウ酸水溶液により所定の面粗さとなるまで、本実施例では3時間のエッチングを実行する(ステップS3)。尚、前記熱シュウ酸水溶液の代わりとして例えば熱硫酸、フッ酸などを用いても良い。
【0040】
エッチングにより表面が粗面化された上記導電性基体2に、先ず中間層3を形成する。本実施例のオゾン発生用電極1では白金により中間層3を形成するため、イソプロピルアルコールとエチレングリコールモノエチルエーテルの混合比がそれぞれ4:1となるように調整した溶媒に、白金濃度が50g/lとなる量の六塩化白金酸六水和物を溶解させて、中間層構成材とする。
【0041】
そして、前記導電性基体2の表面に前記中間層構成材を図示しないヘラを用いて均一に塗布する(ステップS4)。尚、この中間層構成材の塗布方法としては上記の如きヘラで塗る方法以外にも、前記中間層構成材を図示しないスプレーにて導電性基体2上に塗布する方法、或いは、前記中間層構成材を図示しない容器内に収容し、この容器内に導電性基体2を浸漬する方法、更には、導電性基体2を回転させて遠心力により前記中間層構成材を塗布する方法(スピンコート)等で行っても良い。
【0042】
上記導電性基体2の表面に中間層構成材が付着した導電性基体2を、次に室温にて10分間乾燥し(ステップS5)、その後、+150℃〜+250℃の温度範囲、好適には+220℃にて10分間の熱処理を行う(ステップS6)。更には、+400℃〜+550℃の温度範囲、好適には+500℃にて10分間の熱処理を実施する(ステップS7)。これにより、前記溶媒成分等が蒸発し、導電性基体2の表面には白金で構成される中間層3が形成される。
【0043】
そして、上記中間層3が形成された導電性基体2を室温にて10分間冷却し(ステップS8)、その後、図4に示すように、再び中間層構成材の塗布(ステップS4)、室温乾燥(ステップS5)、+220℃での熱処理(ステップS6)、+500℃での熱処理(ステップS7)、室温冷却(ステップS8)の工程を、中間層3の厚さが所定の厚さとなるまで繰り返す(ステップS9)。尚、本実施例のオゾン発生用電極1では中間層3の厚さが平均約100nmとなるように、上記工程を20回繰り返し行うものとする。
【0044】
このように中間層3の作製工程を複数回繰り返すことにより、一度で大量の中間層構成材を導電性基体2の表面に構成させた場合に比べて、導電性基体2上に適切な厚さ、適切な量で、面内均一性も良く白金を被覆させることができるようになる。また、密着性の高い中間層3を形成することができるようになり、電極の耐久性を向上させることができるようになる。また、電極に必要な耐久性にあわせた中間層3の厚さを容易に得ることができるため、貴金属又は貴金属酸化物の使用量を適量とすることができ、無駄な貴金属及び貴金属酸化物の使用を低減することができるようになる。
【0045】
その後、上記導電性基体2の表面に形成した中間層3の表面に、誘電体により構成された表面層4を形成する。本実施例のオゾン発生用電極1では誘電体である酸化タンタルにより表面層4を形成させるため、酢酸nブチルとジメチルフォルムアミドの混合比がそれぞれ95:5となるように調整した溶媒に、タンタル濃度が1.45mol/lとなる量のタンタルエトキシドを溶解させたものを表面層構成材とする。
【0046】
尚、上述した如く表面層4は誘電体以外にも前記中間層3に用いられる如き貴金属又は貴金属酸化物を含むものであっても良いものである。この場合、例えば貴金属として白金を用いる場合には、上述した如きイソプロピルアルコールとエチレングリコールモノエチルエーテルの混合比がそれぞれ4:1となるように調整した溶媒に、上記中間層構成材に用いたものと同様な六塩化白金酸六水和物と前記タンタルエトキシドとを、白金及びタンタルの濃度の合計が1.45mol/lとなるように溶解させる。また、この白金及びタンタルの混合比は、後述するが、表面層4内部における酸化タンタルと白金との構成比のうち、タンタルの含有率が75mol%以上、残り部分は白金となるようにすることがオゾン発生用電極としては望ましい。尚、上記表面層4には上記タンタルと白金の他、酸素が含まれているが、以下本発明におけるタンタルの含有率とは、表面層4において酸素を除いたタンタルと白金との合計量に対してのタンタルが占める割合(mol%)であるものとする。
【0047】
そして、上述した中間層3を形成するための中間層構成材の塗布方法と同様にヘラを用いて前記表面層構成材の塗布を行い、前記導電性基体2の表面上に形成した中間層3の表面に上記表面層構成材を均一に塗布する(S10)。尚、この表面層構成材の塗布においても、中間層構成材の塗布の場合と同様に、ヘラで塗る方法以外にも、表面層構成材を図示しないスプレーにて塗布する方法、或いは表面層構成材を図示しない容器内に収容し、この容器内に導電性基体2を浸漬する方法、更には導電性基体2を回転させて遠心力により前記中間層構成材の塗布する方法などで行っても良い。
【0048】
このように中間層3の表面に表面層構成材が付着した導電性基体2には、上述した中間層3形成のための作製工程とほぼ同様な作製工程により表面層4の形成が行われる。
【0049】
即ち、上記中間層3の表面に表面層構成材が付着された導電性基体2を、室温にて10分間乾燥し(ステップS11)、その後、+150℃〜+250℃の温度範囲、好適には+220℃にて10分間の熱処理を行う(ステップS12)。そして、この表面層4の作製においては、次に中間層3の熱処理よりも高温となる+600℃〜+700℃の温度範囲、好適には+660℃にて10分間の熱処理を行う(ステップS13)。これにより、導電性基体2の表面に形成された中間層3の更に表面に酸化タンタル、又は酸化タンタル及び白金により構成される表面層4が形成される。
【0050】
そして、上記表面層4が形成された導電性基体2を室温にて10分間の冷却し(ステップS14)、その後、図4に示すように再び表面層構成材の塗布、室温乾燥、+220℃での熱処理、+660℃での熱処理、室温冷却の工程を、表面層4の厚さが所定の厚さとなるまで繰り返す(ステップS15)。本実施例のオゾン発生用電極1では表面層4の厚さが所定の厚さとなるように、上記工程を15回行うことで、導電性基体2の表面に形成された中間層3の表面に更に表面層4が形成され、これにより本発明のオゾン発生用電極1が作製される。
【0051】
尚、本実施例においては、上記表面層4の+660℃で行う熱処理において、最終の15回目の熱処理に要する時間を30分間とする(ステップS16)。これにより、作製されたオゾン発生用電極1の表面への前記溶媒の残留や、中間層3及び表面層4の熱処理の不足、熱処理むら等を防止することができるようになる。
【0052】
また、オゾン発生用電極1は、上述の如く表面層4の作製工程を複数回繰り返すことにより、上記中間層3の作製工程の場合と同様に、一度で大量の表面層構成材を中間層3の表面に構成させた場合に比べて、適切な厚さ、適切な量で、面内均一性良くタンタルを被覆させることができるようになる。また、密着性の高い表面層4を形成することができるようになり、電極の耐久性を更に向上させることができる。
【0053】
更に本実施例におけるオゾン発生用電極1の製造方法では、中間層3の熱処理温度(+500℃)よりも表面層4の熱処理温度(+660℃)を高く設定することにより、表面層4を構成する酸化タンタルを結晶化することができるようになる。このように酸化タンタルが結晶化すると表面層4における内部応力が大きくなり、表面層4に孔10、所謂クラックが形成される。尚、上述した如く表面層4は中間層3の表面に複数回繰り返し塗布、形成されているため、前記孔10は、表面層4内を多数のクラックが分岐と結合を複雑に繰り返しながら構成されている。
【0054】
また、本実施例のオゾン発生用電極1では、中間層3を上述した如き複数回の中間層構成材塗布にて構成すると共に、中間層3及び表面層4を上記した如き熱処理温度により形成しているため、前記孔10は、表面層4を貫通して中間層3との界面までは到達しているものもあるが、導電性基体2までは到達せず、導電性基体2が電解中に侵食されるような不都合を回避することができる。
【0055】
特に、孔10によっては、図2の右から2つ目に示されるように、表面層4に形成される孔10の一端が、中間層3にまで到達せず、これら中間層3と孔10の一端との距離、即ち、最も中間層3に近接する位置における距離が0より大きく2000nm以下とされているものがある。尚、図5は当該オゾン発生用電極1のSEM写真であり、図6は当該孔10に注目したTEM写真である。
【0056】
図5のSEM写真は、白色にて示されている層が本発明における表面層4であり、当該表面層4の下側に接触して形成される濃い灰色に示されている層が中間層3である。更に、当該中間層3の下側に接触して形成される薄い灰色に示されている層が基体2である。これによると、表面層4には、複数のクラック、孔10が形成されていることが分かる。いずれの孔10も、深さや形状は、均一なものではないが、中間層3側に位置する端部は、上述した如く表面層4を貫通して、更には、中間層3をも貫通して、導電性基体2にまで到達しているものではない。
【0057】
特に、本発明において注目される孔10は、一端が中間層3にまで到達しておらず、当該一端と中間層3との距離が0より大きく2000nm以下とされているものであり、これについては、図6のTEM写真を参考に説明する。
【0058】
ここに示される孔10は、最表面における孔径が約0.67μmであり、当該断面には、略L字状に示されている。図6は、断面図であるため、孔10の全体的な形状を把握することは困難であるが、クラックとして形成される孔10は、多数の分岐と結合を複雑に繰り返しながら構成されているため、不連続に見える孔であっても、別の角度から見ることによって、当該孔10は、連続して形成されているものであり、表面層4の表面から内部に連続して延在している。この孔10中間層3側の一端は、中間層3との距離が約0.5μmである位置まで形成されていることがわかる。
【0059】
次に、上記実施例において製造されたオゾン発生用電極1を用いた電解によるオゾン発生について図7を参照して説明する。図7は本実施例のオゾン発生用電極1を適用したオゾン水生成装置20の概略説明図である。オゾン水生成装置20は、処理槽21と、上述した如きアノードとしてのオゾン発生用電極1と、カソードとしての電極22と、陽イオン交換膜24と、電極1、22に直流電流を印加する電源25とから構成される。また、この処理槽21内には、電解質溶液としての模擬水道水23が貯溜される。
【0060】
オゾン発生用電極1は、上述した如き製造方法により作製したものである。オゾン水生成装置20にて用いるオゾン発生用電極1は、上記表面層4におけるタンタルの含有率が0mol%、10mol%、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%、60mol%、70mol%、75mol%、80mol%、85mol%、90mol%、95mol%、99mol%、100mol%のもの、計15種類であり、これらオゾン発生用電極1のそれぞれをアノードとして用いた場合のオゾン発生量を測定することにより、前記15種類のオゾン発生用電極1の評価を行うものとした。尚、上記15種類のオゾン発生用電極1の表面層4における酸化タンタル以外の部分は、上述したとおり白金及び酸素により構成されている。
【0061】
他方、カソードとしての電極22には白金を用いるが、これ以外にもチタン基体表面に白金を焼成した不溶性電極や白金−イリジウム系の電解用電極やカーボン電極などにより構成されてもよい。
【0062】
陽イオン交換膜24は、過酸化水素のような酸化剤に耐久性を有するフッ素樹脂系の膜により構成される。代表的な陽イオン交換膜として、デュポン社製の商品名Nafion115、117、315、350等のパーフルオロスルフォン酸系の膜があり、本実施例においても陽イオン交換膜24として、Nafionを使用するものとする。
【0063】
また、本実施例において電解処理される電解質溶液は、水道水を模擬した水溶液であり、この模擬水道水23の成分組成は、Na+が5.75ppm、Ca2+が10.02ppm、Mg2+が6.08ppm、K+が0.98ppm、Cl-が17.75ppm、SO42-が24.5ppm、CO32-が16.5ppmである。
【0064】
以上の構成により、処理槽21内に模擬水道水23を上記陽イオン交換膜24にて仕切られるアノード側及びカソード側に水温15℃にてそれぞれ150mlずつ、合計300ml貯溜すると共に、オゾン発生用電極1及び電極22をそれぞれ上記アノード側の模擬水道水中及びカソード側の模擬水道水中に、陽イオン交換膜24を挟んで浸漬させる。尚、本実施例におけるオゾン発生用電極1及び電極22の面積は80mm×20mm(浸漬部40mm×20mm)、電極間距離は10mmとする。そして、電源25により150mA、電流密度18.8mA/cm2の定電流がオゾン発生用電極1及び電極22に印加される。
【0065】
尚、本実施例ではオゾン発生用電極1によるオゾン発生量は、上記条件にて1分間電解後の模擬水道水23中のオゾン濃度を比色法を用いて測定する。
【0066】
次に、図8を用いて本実施例のオゾン発生用電極1における表面層4の酸化タンタルの含有率に対するオゾン発生量につき説明する。図8は本実施例における上記15種類のオゾン発生用電極の上記同一条件下でのそれぞれのオゾン発生用電極1のオゾン発生量を示している。この図8における縦軸はオゾン発生量(mg/l)であり、横軸はオゾン発生用電極1の表面層4におけるタンタルの含有率を示している。
【0067】
この図8から分かるように、オゾン発生用電極1の表面層4におけるタンタルの含有率が70mol%未満の場合にはオゾン発生量はごく微量であるが、タンタルの含有率が70mol%以上の場合に急激にオゾン発生量が増加した。実験結果では、同含有率が70mol%にて0.06mg/l、同含有率が75mol%にて0.15mg/l、同含有率が80mol%にて0.38mg/l、同含有率が85mol%にて0.26mg/l、同含有率が90mol%にて0.27mg/l、同含有率が95mol%にて0.19mg/l、同含有率が99mol%にて0.33mg/l、同含有率が100mol%にて0.50mg/lのオゾン発生量を示した。尚、同含有率が0mol%の場合、即ちオゾン発生用電極1の表面層4を全て白金にて形成した場合には、本実施例の条件においてオゾン発生は認められなかった。
【0068】
以上から、前記タンタルの含有率が80mol%以上の場合には、オゾン発生量はほぼ飽和傾向となっているが、同含有率が100mol%の場合には最も高いオゾン発生量を示した。
【0069】
また、オゾン発生用電極1の表面層4において、誘電体を構成するタンタルの含有率が70mol%以上、特に80mol%以上の場合にオゾン発生量が高く、特に前記含有率が100mol%の場合に最も高いオゾン発生量を示したことから、本実施例におけるオゾン発生用電極1の表面層4における酸化タンタルが、オゾン発生に大きく影響しており、オゾン発生量を増加させていることがわかる。
【0070】
尚、通常、本実施例の上記タンタルの含有率が100mol%の場合のように、電極表面を全て誘電体のみで被覆する場合には、電極としての導電性が得られないことになるが、酸化タンタルにより構成される表面層4に形成された孔10と中間層3との距離が上述如く例えば0.5μm程度と比較的薄いために、当該表面層4中の不純物準位を介して、或いは、Fowler−Nordheimトンネルにより電子が導電性材料にて構成される中間層3にまで移動することで、電極としての導電性が得られると考えられる。
【0071】
通常、金属電極をオゾン発生用電極として使用した場合、アノードにおける電極反応が、フェルミ準位直上の空の準位が電解質から電子を受け取ることにより生起する。これに対し、本発明のように、中間層3までの距離が所定の距離となるように形成された孔10を有する表面層4を備えたオゾン発生用電極1を使用した場合、フェルミ準位よりバンドギャップの半分程度高いエネルギーレベルにある伝導体の底付近の空の準位が電解質から電子を受け取ることにより生起する。
【0072】
そのため、本発明におけるオゾン発生用電極1を使用した場合、白金電極を使用した場合に比して、より高いエネルギーレベルでの電子の移動が起こって電極反応を生起するためにオゾンの発生効率が上昇するものと考えられる。
【0073】
これにより、当該オゾン発生用電極1の孔10から中間層3の表面までの距離を0より大きく2000nm以下とすることで、低電流密度であっても高効率にてオゾンを発生させることが可能となる電極を得ることができる。
【0074】
また、本実施例のオゾン発生用電極1は、上述の如き深さ寸法を有する孔10以外にも、中間層3に到達している孔10も形成されていることから、この孔10が電流の経路となり、表面層4の下方に形成され貴金属又は貴金属酸化物からなる中間層3を介して電気が流れ、これによっても、電極として機能する。
【0075】
またこのようなオゾン発生用電極1は、上記の如き表面層4における電流の経路たる孔10を介して中間層3の前記孔10と連接する表面部分の僅かな面積上で電子の授受が行われるので、中間層3における前記孔10と連接する部分の白金の電流密度が上昇し、更には表面層4の前記孔10周囲の酸化タンタルの触媒作用により、少ない入力電流でもオゾン発生量が高くなるものと考えられる。
【0076】
尚、本実施例のオゾン発生用電極1の製造方法にて説明した中間層構成材及び表面層構成材に用いた溶媒は、それぞれイソプロピルアルコールとエチレングリコールモノエチルエーテルの混合比がそれぞれ4:1となるように調整した溶媒及び酢酸nブチルとジメチルフォルムアミドの混合比がそれぞれ95:5となるように調整した溶媒としたが、上記中間層3及び表面層4を構成するための六塩化白金酸六水和物及びタンタルエトキシドを溶解可能な溶媒ならばこれに限られるものではなく、更に前記塩化白金酸六水和物及びタンタルエトキシドについても、本発明のオゾン発生用電極1を構成可能なものであればこれに限られず、その使用量についても必要に応じて増減させることができる。
【0077】
また、本実施例では、基体2をチタンにより構成しているため、表面層4に形成される孔10から中間層3までの距離を0より大きく2000nm以下としているが、例えば、基体2を、中間層3と同様の材料、例えば白金などにより構成する場合には、格別に中間層3を構成する必要がないことから、係る場合には、表面層4に形成される孔10から基体2までの距離を0より大きく2000nm以下とすることで、本実施例と同様の効果が得られる。
【実施例2】
【0078】
次に本発明の他の実施例について説明する。本実施例におけるオゾン発生用電極1は、上記実施例1と比較した場合、上記実施例1における表面層4において酸化タンタルの代わりに、酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化タングステンを用いる点が相違する。
【0079】
尚、上記実施例1では、酸化タンタルにより表面層4を形成させるため、酢酸nブチルとジメチルフォルムアミドの混合比がそれぞれ95:5となるように調整した溶媒に、タンタル濃度が1.45mol/lとなる量のタンタルエトキシドを溶解させたものを表面層構成材とした。これに対して、本実施例では酸化アルミニウムにより表面層4を形成させる場合には、酢酸イソアミルを溶媒として、この溶媒中にアルミニウム(Al)を含む有機金属を溶解させたものを表面構成材とする。また酸化チタンにより表面層4を形成させる場合には、酢酸nブチルを溶媒として、この溶媒中チタン(Ti)を含む有機金属を溶解させたものを表面構成材とする。更に酸化タングステン(W)により表面層4を形成させる場合には、キシレンと酢酸nブチルの混合物を溶媒として、この溶媒中にWを含む有機金属を溶解させたものを表面構成材とする。
【0080】
また、上記実施例1におけるオゾン発生用電極1の製造方法では、中間層3の表面に表面層構成材が付着された導電性基体2を室温にて10分間乾燥し、その後+220℃にて10分間の熱処理を行い、次に+660℃にて10分間の熱処理を行い、更にこのような工程を15回繰り返し行うものとしたが、本実施例では、中間層3の表面に表面層構成材が付着された導電性基体2を室温にて10分間乾燥し、その後+220℃にて10分間の熱処理を行い、次に+600℃又は+650℃にて10分間の熱処理(以下、表面層熱処理、とする)を行うと共に、このような工程を20回繰り返し行うものとする。
【0081】
次に、本実施例のオゾン発生用電極1を用いた電解によるオゾン発生について説明する。この場合にもオゾン発生用電極1が相違する以外は、上記実施例1におけるオゾン発生に関する説明と同様である。
【0082】
本実施例では、オゾン発生用電極1として、中間層3の表面に上記各表面層構成材が付着された3種類の導電性基体2における上記表面層熱処理を、+600℃又は+650℃にて行ったものを用いて評価を行うものとした。尚、本実施例のオゾン発生用電極1の表面層4において、酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化タングステンの含有率は各100mol%である。
【0083】
図9に本実施例における各オゾン発生用電極1のオゾン発生量を示す。図9は、本実施例における上記3種類(表面層4として、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タングステン)のオゾン発生用電極1について、酸化アルミニウム及び酸化チタンでは上記表面層熱処理での温度が+600℃及び+650℃のもの、酸化タングステンでは上記表面層熱処理での温度が+600℃のものの、同一条件下でのそれぞれのオゾン発生用電極1のオゾン発生量を示している。
【0084】
この図9から、表面層4として酸化アルミニウムを用いた場合には、上記表面層熱処理での温度が+600℃では0.20mg/l、同+650℃では0.25mg/lのオゾン発生量を示した。また表面層4として酸化チタンを用いた場合には、上記表面層熱処理での温度が+600℃では0.15mg/l、同+650℃では0.13mg/lのオゾン発生量を示した。更に表面層4として酸化タングステンを用いた場合には、上記表面層熱処理での温度が+600℃では0.50mg/lのオゾン発生量を示した。
【0085】
更に、本実施例においても上記実施例1と同様、中間層構成材及び表面層構成材に用いる溶媒と、この溶媒中に溶解させるAl、Ti及びWについては、本発明のオゾン発生用電極1を構成可能なものであればこれに限られるものではない。
【0086】
以上詳述した如く、本発明に係るオゾン発生用電極1により模擬水道水を電解することにより、格別に電流値を上昇させることなくオゾンを発生させることができるため、電解により容易にオゾン発生を行うことができると共に、容易にオゾン水を生成することができる。
【0087】
また、上記各実施例ではカソードとして上述の如き不溶性電極を用いたが、カソードにも本発明に係るオゾン発生用電極1を用いることも可能である。この場合には、両極ともオゾン発生用電極1で構成されることから、アノードとカソードの極性を切り替えても良く、このような極性切り替えを実施することで、各電極表面に付着した汚濁物質等が剥離され、電極表面がリフレッシュされることにより、より一層オゾン発生効率が向上するようになる。
【0088】
尚、上記各実施例におけるオゾン発生用電極1の表面層4に形成される孔10は、上記各実施例ではオゾン発生用電極1の作製における熱処理により、クラックとして形成されたものであるとしたが、これに限らず、例えば機械等を使用した物理的な加工により形成したものであっても良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明のオゾン発生用電極の平面図である。
【図2】図1のA−A概略断面拡大図である。
【図3】他の実施例としての図1のA−A概略断面拡大図である。
【図4】本発明のオゾン発生用電極の製造方法のフローチャート図である。
【図5】オゾン発生用電極のSEM写真図である。
【図6】オゾン発生用電極のTEM写真である。
【図7】オゾン水生成装置の概略図である。
【図8】図7のオゾン水生成装置における実施例の電解用電極の表面層に含まれるタンタルの含有率ごとのオゾン発生量を示す図である。
【図9】他の実施例のオゾン発生用電極におけるオゾン発生量を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1 オゾン発生用電極
2 基体
3 中間層
4 表面層
5 白金
20 オゾン水生成装置
21 処理槽
22 電極
23 模擬水道水
24 陽イオン交換膜
25 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、この基体の表面に形成されて誘電体を含む表面層とから構成され、
該表面層には、当該表面層の表面から内部に連続して延在する孔が形成されており、該孔から前記基体の表面までの最も近接する箇所における距離は、0より大きく2000nm以下とされていることを特徴とする電解用電極。
【請求項2】
前記基体は、導電性基体であることを特徴とする請求項1に記載の電解用電極。
【請求項3】
前記表面層に含まれる前記誘電体は、酸化物であることを特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載の電解用電極。
【請求項4】
前記酸化物は、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チタン、又は、酸化タングステンであることを特徴とする請求項3に記載の電解用電極。
【請求項5】
前記基体には、前記表面層の内側に位置して、前記基体の表面に形成され、少なくとも難酸化性の金属、又は、導電性を有する金属酸化物、若しくは、酸化しても導電性を有する金属のいずれかを含む中間層が形成されており、
前記孔から当該中間層までの最も近接する箇所における距離が、0より大きく2000nm以下とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電解用電極。
【請求項6】
前記中間層は、貴金属、貴金属を含む合金、若しくは、貴金属酸化物の何れかを含むことを特徴とする請求項5に記載の電解用電極。
【請求項7】
前記貴金属は、白金であることを特徴とする請求項6に記載の電解用電極。
【請求項8】
前記基体の表面に中間層構成材を塗布した後、熱処理して前記基体の表面に前記中間層を形成する第1のステップと、
該第1のステップ後、前記中間層の表面に表面層構成材を塗布した後、酸化性雰囲気中で熱処理して、前記中間層の表面に前記表面層を形成する第2のステップを含むことを特徴とする請求項5乃至請求項7に記載の電解用電極の製造方法。
【請求項9】
前記第2のステップにおける熱処理は、前記第1のステップにおける熱処理よりも高温にて実行することを特徴とする請求項8に記載の電解用電極の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−46129(P2007−46129A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233535(P2005−233535)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】