説明

電解質・電極接合体

【課題】中間層にクラックが発生することを回避した電解質・電極接合体を提供する。
【解決手段】主電解質26の各端面に副電解質28a、28bを設け、積層電解質16とする。副電解質28a、28bには、さらに、中間層18、20がそれぞれ積層される。中間層18、20の厚みは0.2〜1μmの範囲内に設定され、中間層18には、略同一高さ(厚み)で形成され、且つ互いに略等間隔で離間した複数個のアノード電極群22が積層される。この電解質・電極接合体10では、アノード側電極12がパターン化されている。中間層20上には、カソード側電極14が単一層として形成されている。主電解質26と副電解質28a、28bの材質としては、Sc23が10mol%添加された安定化ジルコニア、Sc23が6mol%添加された安定化ジルコニアがそれぞれ選定され、各々の厚みは、70〜90μm、10μmに設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質型燃料電池の単位セルを構成する電解質・電極接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解質型燃料電池(以下、SOFCともいう)では、アノード側電極とカソード側電極とで挟まれる電解質として、酸化物イオン(O2-)を伝導可能な固体電解質が採用される。勿論、固体電解質としては、高い酸化物イオン伝導度を示す物質が好ましく、この観点から、Sc23を10〜12mol%程度添加した安定化ZrO2が着目されている。
【0003】
この種の固体電解質を具備する電解質・電極接合体(以下、MEAともいう)は、例えば、前記固体電解質の各端面にアノード側電極、カソード側電極をそれぞれ形成することによって作製される。このMEAは、固体電解質の厚みがアノード側電極及びカソード側電極に比して大きく、MEA全体の強度を担うことから、電解質支持型と指称される。
【0004】
なお、固体電解質とカソード側電極との間には、カソード側電極の構成元素が固体電解質に拡散することを防止するための中間層(反応防止層とも呼称される)が介装されることもある。場合によっては、固体電解質とアノード側電極との間にも中間層が設けられる。この種の中間層の材質としては、Ce1-aa2(XはCeO2のCeサイトに置換された元素を示し、0≦a<1)で表されるセリア系酸化物が採用される。
【0005】
このように構成されるMEAでは、電解質の厚みを小さくするほど酸化物イオンが移動し易くなる。すなわち、内部抵抗が小さいMEA、ひいてはSOFCを構成することができる。しかしながら、この場合、MEAの強度が低下する。上記したように、MEAの強度は、厚みの大きい電解質によって確保されるからである。
【0006】
そこで、特許文献1には、内部抵抗が小さい第1の材質からなる第1電解質層を、強度が大きい第2の材質からなる第2電解質層で挟み、合計厚みを一般的なMEAの電解質に比して小さくすることによって、酸化物イオン伝導度と強度の双方を確保することが提案されている。
【0007】
ところで、特許文献1に記載されたMEAを作製するに際しては、例えば、NiO−YSZのペーストを固体電解質又は中間層上に塗布した後に該ペーストを焼き付け、さらに、NiO−YSZ中のNiOをNiに還元してNi−YSZからなるアノード側電極を形成することがあるが、この還元の最中にアノード側電極が若干収縮する。これに伴って、MEAがアノード側電極側に引っ張られるようにして撓むので、カソード側電極側の中間層やカソード側電極は、比較的大きく撓む。
【0008】
中間層を構成するセリア系酸化物は、脆性が比較的高い。従って、中間層の撓み量が大きい場合、該中間層にクラックが発生する懸念がある。このような事態が生じると、中間層を起点としてクラックが伝播し、MEAが破損に至ることもある。
【0009】
同様の現象が、起動停止に伴う熱応力やレドックス反応によって発生するとも考えられる。
【0010】
カソード側電極における耐破壊性を向上させるには、特許文献2における各提案が有効であるとも考えられる。すなわち、特許文献2では、カソード側電極を分割することが開示されている。このように分割されたカソード側電極では、応力が分割溝によって緩和されるので、破損が進展し難くなる。
【0011】
そして、特許文献3には、カソード側電極を分割したことに伴って有効面積が減少して発電特性が低下することを回避するべく、分割溝の幅寸法を適切に設定することで発電特性を確保することが提案されている。
【0012】
【特許文献1】国際公開第2006/050071号パンフレット
【特許文献2】実開平6−70162号公報
【特許文献3】特開2006−310132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献2、3のいずれにも、中間層にクラックが発生すること自体を回避することについては検討されていない。さらに、可撓性を示す電解質を用いたMEAに中間層を形成する場合、この中間層には、MEAの撓みに対応して変形することが可能であるという特性が求められる。
【0014】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、十分な伝導度と耐破壊性を兼ね備え、しかも、中間層にクラックが発生することが困難な電解質・電極接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成するために、本発明は、アノード側電極とカソード側電極とで電解質を挟んで形成され、前記電解質の厚みが前記アノード側電極及び前記カソード側電極に比して大きな電解質支持型の電解質・電極接合体において、
前記電解質は、荷重が付加された際に撓むことによって前記荷重を緩和する作用を営むものであり、
前記アノード側電極と前記電解質との間、又は前記電解質と前記カソード側電極との間の少なくともいずれか一方に介装された中間層を有し、
前記中間層の厚みが0.2〜1μmの範囲内であることを特徴とする。
【0016】
一般的な電解質・電極接合体では、中間層(反応防止層)の厚みは概ね5μm程度であり、小さくても1μmを超える。これに対し、本発明においては、中間層の厚みが最大でも1μm、具体的には、0.2〜1μmの範囲内に設定される。このような厚みの中間層は剛性が低く、このために可撓性に富む。従って、例えば、アノード側電極を得るべく還元を行った際にアノード側電極が収縮してMEAが撓み、その結果として中間層に応力が作用したとしても、中間層が撓むことによって応力が緩和される。
【0017】
また、セパレータを積層方向に締め付ける積層荷重等のような外部応力がMEAに作用した場合にも、中間層が撓むことによって外部応力が緩和されるので、中間層に脆性破壊が生じることが回避される。
【0018】
以上のように、中間層の厚みを0.2〜1μmに設定することにより、該中間層にクラックが発生することを回避することができるようになる。その結果、中間層を起点としてMEAにクラックが伝播することを回避することもできる。
【0019】
この場合、電解質は、破損するまで付加された荷重を破損するまでの歪量で除すことで求められる歪み率が10000N/m以下であり、且つ破壊エネルギが0.3mJ以上であるものであることが好ましい。なお、歪み率は、後述するタフネス評価試験において、破壊が生じた応力をそのときの歪み量で除した値として求められる。従って、この値が小さいほど可撓性に富むことを表す。また、破壊エネルギの値が大きいほど、耐破壊性が大きいことを意味する。
【0020】
すなわち、この場合、電解質は撓み易く、しかも、破壊が生じ難い。このことから諒解されるように、該電解質は、加わった荷重を緩和する作用を営む。その結果として、電解質・電極接合体を構成する電解質の破壊に至るまでの変形量が著しく大きくなる。すなわち、該電解質は、荷重が加わった際に大きく撓む。このため、破損が起こり難い。
【0021】
なお、中間層の材質の好適な例としては、Ce1-aa2(XはCeO2のCeサイトに置換された元素を示し、0≦a<1)で表されるセリア系酸化物を挙げることができる。この種の中間層は、カソード側電極と電解質との間で元素が拡散することを有効に防止し得る。
【0022】
以上の構成においては、アノード側電極又はカソード側電極の少なくともいずれか一方を、互いに離間して形成された複数個の電極群として構成するようにしてもよい。例えば、アノード側電極を分割電極とした場合、各電極群が、レドックス反応が起こることに伴って発生する内部応力を受けて変形することが大幅に緩和される。このため、電解質・電極接合体が変形することが回避されるので、該電解質・電極接合体とセパレータとの接触が不十分となることが回避される。その結果、集電効率が低下することや反応ガスが不均一に拡散することが有効に回避され、アノード側電極を単一層として形成した場合に比して集電効率が向上するとともに、反応ガスが均一に拡散する。その上、分割溝の面積、換言すれば、電極の有効面積が規定されているので、発電効率が低減することも防止できる。以上のような理由から、発電特性を向上させることができる。
【0023】
また、セパレータを積層方向に締め付ける積層荷重等のような外部応力が電解質・電極接合体に作用したとしても、その外部応力が分割溝によって緩和されるので、電極群が変形することがない。従って、アノード側電極にクラックが発生することや、アノード側電極が積層電解質ないし中間層から剥離することを回避することもできる。
【0024】
一方のカソード側電極を分割電極とした場合においても上記と同様に、外部応力が電解質・電極接合体に作用したとしても、その外部応力が分割溝によって緩和されるので、電極群が変形することがない。従って、カソード側電極にクラックが発生することや、カソード側電極が電解質(又は中間層)から剥離することを回避することができる。
【0025】
また、何らかの要因でカソード側電極に燃料ガスが進入したために該カソード側電極の電極材料の組成に変化が生じたり、中間層が還元したりすることに伴って変形が生じたとしても、その変形分が分割溝によって緩和される。従って、電解質・電極接合体全体が変形することが回避されるので、該電解質・電極接合体が破損することが回避される。
【0026】
なお、一般的な電解質支持型の電解質・電極接合体においては、電極を分割したとしても発電特性が向上することまでは認められない。すなわち、可撓性を示す電解質を採用し、且つ電極を分割することによってはじめて、発電特性を向上させることが可能となる。
【0027】
分割電極を設ける場合には、カソード側電極を構成する電極群同士の間のクリアランスを電極材料で充填したときの端面の面積を100としたとき、前記電極群の端面の面積の総和が90〜99であることが好ましい。電極の有効面積をこのように規定することにより、発電効率が低減することも防止できる。
【0028】
さらに、本発明において、アノード側電極又はカソード側電極の厚みは20μm以下であることが好ましく、1〜5μmであることが一層好ましい。電極の厚みをこのように規定することにより、反応ガスが電極中を略均一に拡散することが容易となる。
【0029】
上記したような可撓性を示す電解質は、例えば、主電解質と、前記主電解質の各端面に接合されて該主電解質よりも厚みが小さい副電解質とを有する積層電解質から構成することができる。
【0030】
なお、主電解質は、副電解質と同一厚みであるとき、該副電解質に比して抵抗が小さな物質であることが好ましい。これにより、十分な酸化物イオン伝導度を確保できる。
【0031】
一方、副電解質は、前記主電解質と同一厚みであるとき、該主電解質に比して破壊エネルギが大きな物質であることが好ましい。この場合、十分なタフネスが発現する電解質・電極接合体となるからである。
【0032】
そして、主電解質の厚みが副電解質に比して大きいことが好ましい。これにより、伝導度とタフネスとの均衡が一層良好となる。
【0033】
また、アノード側電極又はカソード側電極の少なくともいずれか一方に集電層を積層する工程を行うようにしてもよい。この場合、例えば、アノード側電極に対して集電層を積層した後にカソード側電極を形成するようにしてもよいし、アノード側電極及びカソード側電極の双方を形成した後にアノード側電極に集電層を積層するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、可撓性を示す電解質を採用して電解質・電極接合体を構成するとともに、中間層の厚みを0.2〜1μmの範囲内に設定するようにしたので、該中間層は、剛性が小さくなり可撓性に富むものとなる。このため、例えば、アノード側電極中に含まれる酸化物を還元するときに電解質・電極接合体が撓む場合や、セパレータを積層方向に締め付ける積層荷重等のような外部応力が加わる場合に、中間層にクラックが発生したり、このクラックを起点として電解質・電極接合体が破損するに至ったりすることを有効に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明に係る電解質・電極接合体につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電解質・電極接合体(MEA)10の概略全体断面説明図である。このMEA10は、アノード側電極12とカソード側電極14との間に積層電解質16が介装されて構成されており、アノード側電極12及びカソード側電極14の双方よりも積層電解質16の厚みが大きい電解質支持型である。なお、アノード側電極12と積層電解質16との間、及びカソード側電極14と積層電解質16との間に、それぞれ、中間層18、20が介装されている例を示している。
【0037】
アノード側電極12の材質としては、好適には、Niと、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)とのサーメットが選定される。又は、Niとスカンジア安定化ジルコニア(SSZ)とのサーメット、Niとイットリウムドープセリア(YDC)とのサーメット、Niとサマリウムドープセリア(SDC)とのサーメット、Niとガトリニウムドープセリア(GDC)とのサーメット等であってもよい。
【0038】
ここで、アノード側電極12は、図1及び図2に示されるように、分割電極として形成されている。すなわち、アノード側電極12は、複数個のアノード電極群22がパターン化されたものとして設けられている。
【0039】
図2に示すように、アノード電極群22の各々は略正6角形状をなし、隣接するアノード電極群22、22間の離間距離、すなわち、分割溝24の幅寸法D1は略同等である。また、図1に示すアノード電極群22の高さ(厚み)方向寸法も略同等であり、好ましくは20μm以下、一層好ましくは1〜5μmに設定されている。
【0040】
アノード側電極12を構成する電極材料、すなわち、上記したようなサーメットで分割溝24を充填した場合、アノード側電極12が単一層状となる。このときのアノード側電極12の端面面積を100としたとき、アノード電極群22の端面面積は90〜99となる。換言すれば、分割溝24は、単一層のアノード側電極12の端面面積を1〜10%低減する量で形成されている。
【0041】
一例を挙げれば、図2に示すように、1個のアノード電極群22における対向する辺同士の距離D2は8mmであり、分割溝24の幅寸法D1は0.3mmである。この場合、図3に示すように、分割溝24を電極材料で充填して形成される単一層のアノード側電極12は、最外のアノード電極群22に外接する外接円Cとして表される。例えば、前記外接円Cの直径が50mmであるとき、該外接円Cの端面面積は1963mm2となる。
【0042】
なお、単一層状のアノード側電極12の端面面積に対するアノード電極群22の端面面積の割合が90未満である場合、アノード側電極12の有効面積が低減するために発電特性を向上させることが容易ではない。また、99を超えるアノード電極群22を作製することは容易ではない。
【0043】
アノード電極群22の各々には、必要に応じ、Niからなる集電層25が積層される。すなわち、集電層25は、アノード側電極12と同一形状にパターン化されている。この集電層25により、集電効果が一層向上する。
【0044】
中間層18は、アノード側電極12に含まれる元素が積層電解質16中に拡散することを防止する役割を果たす。すなわち、中間層18は反応防止層として機能する。
【0045】
中間層18は、好適にはセリア系酸化物からなり、その具体例としては、Sm23ドープCeO2(SDC)、Y23ドープCeO2(YDC)、Gd23ドープCeO2(GDC)、La23ドープCeO2(LDC)が挙げられる。中間層20についても同様である。
【0046】
ここで、従来技術に係るMEAにおける反応防止層の厚みは、一般的には5μm程度であり、最小でも1μmを超える。これに対し、本実施の形態に係るMEA10においては、中間層18の厚みT1は0.2μm以上1μm以下に設定されている。
【0047】
積層電解質16は、Sc23が10mol%添加された安定化ジルコニア(10SSZ)からなる主電解質26が、Sc23が6mol%添加された安定化ジルコニア(6SSZ)からなる副電解質28a、28bに挟まれた形態となっている。すなわち、主電解質26の両端面には副電解質28a、28bが接合されている。
【0048】
この場合、主電解質26の厚みは70〜90μm程度に設定され、且つ副電解質28a、28bの各厚みは10μmに設定されている。すなわち、積層電解質16の厚みは90〜110μm程度であり、電解質支持型のMEAにおける電解質の一般的な厚みが200μm程度であるのに対しておよそ半分程度である。
【0049】
主電解質26の材質である10SSZと、副電解質28a、28bの材質である6SSZとを用いて同一厚みの層を形成すると、10SSZからなる層は、6SSZからなる層に比して抵抗が小さい。換言すれば、優れた酸化物イオン伝導を示す。
【0050】
なお、積層電解質16全体としての面積抵抗率は0.40Ωcm2未満であることが好ましく、0.10〜0.35Ωcm2であることが一層好ましい。例えば、700℃における積層電解質16全体の面積抵抗率を0.23Ωcm2程度とする場合、主電解質26、副電解質28a、28bにおける面積抵抗率を、それぞれ、0.17Ωcm2、0.06Ωcm2程度に設定すればよい。
【0051】
ここで、面積抵抗率は、電解質の抵抗値を1cm×1cmの大きさにおける抵抗値に換算して規格化したものである。抵抗値は、電解質に所定面積の白金電極を設けた後に該電解質のインピーダンスを測定することによって求めることができる。すなわち、実際の電解質の抵抗値は、電解質の面積抵抗率を該電解質の実面積で除したものと同等となる。面積抵抗率は、必要に応じ、発電によるIR損等から算出することもできる。
【0052】
一方、6SSZからなる層は、10SSZからなる層に比して高強度を示す。すなわち、積層電解質16における副電解質28a、28bは、積層電解質16に耐破壊性をもたらす補強層として機能する。
【0053】
さらに、この積層電解質16では、10SSZからなる主電解質26及び6SSZからなる副電解質28a、28bを上記した厚みに設定したため、後述するタフネス評価試験を行った場合、破壊エネルギが0.3mJ以上、場合によっては1mJ以上となる。
【0054】
すなわち、該積層電解質16は、優れたタフネスを示すため、破壊に至るまでの撓み量が著しく大きい。すなわち、該積層電解質16は、荷重が加わった際に大きく撓むことによって荷重を緩和する。このため、該積層電解質16に破損が起こり難くなる。
【0055】
ここで、材料の強度とタフネス(破損のし難さ)との関係につき説明する。上記したように、SOFCを構成する電解質(セラミックス)には強度に優れることが希求される。この希求に対応するべく、従来は、応力−歪み曲線から求められるように、絶対的な破壊強度を向上させることが重要視されている。
【0056】
電解質に求められる絶対的な破壊強度は、特開2005−322547号公報に記載されているように、JIS R 1601に基づく3点曲げ試験によって測定される3点曲げ強度で示されるのが通例である。そして、実際のMEAにおいて、この3点曲げ強度が劣っている場合には、例えば、電解質の膜厚を大きくすることで該電解質が破壊に至ることを防止することがある。しかしながら、電解質の膜厚を大きくすることは、電解質の抵抗の増加、ひいては燃料電池の内部抵抗の増加を招くことになり、好ましい手法ではない。
【0057】
また、上記したように、そもそも、JIS R 1601に基づく3点曲げ試験は、実際のMEAにおける電解質の寸法と大きく相違する試料を用いるものであり、電解質ないしMEAとしての強度を正確に評価することができない。
【0058】
以上から諒解されるように、3点曲げ試験による3点曲げ強度の評価のみでは、電解質の強度を規定するのに十分ではない。そこで、本発明においては、以下に説明するタフネスによって電解質を評価するものとする。
【0059】
すなわち、電解質の膜厚を実際に用いるMEAにおける電解質の膜厚と同様とし、それ以外はJIS R 1601に準拠して強度の測定を行う。このようにして測定された荷重−歪み線図の一例を、図4に直線Bとして示す。
【0060】
MEAの強度のみを考慮した場合、一般的には、MEAが変形することを防止するべく、図4中に直線Aで示すように大荷重を付加した際に撓み始める電解質が用いられる。このような高剛性の電解質は、耐荷重を超えると急激に破損に至る。すなわち、脆性を示す。一方、図4の直線Bで示される電解質は、荷重が付加されると自ら撓み、これにより荷重を緩和する。
【0061】
電解質に対して任意の荷重を加えた際に当該電解質が破壊に至るか否かは、当該電解質が如何なる程度破壊エネルギを蓄積し得るかによる。すなわち、多くの破壊エネルギを蓄積し得る電解質は破損し難く、一方、破壊エネルギを蓄積し得ない電解質は破損し易い。この点に関し、図4を参照して説明する。
【0062】
図4において、直線A、該直線Aから横軸に向かって垂下した直線L1及び横軸で形成される三角形の面積と、直線B、該直線Bから横軸に向かって垂下した直線L2及び横軸で形成される三角形の面積は、互いに同一である。すなわち、この図4では、破壊エネルギが互いに同一となるように直線A、Bが引かれている。なお、直線A、Bは、破壊に至るまでの荷重及び歪みを順次プロットすることで求められる。
【0063】
そして、直線Aと直線Bを対比して容易に諒解されるように、直線Bでは歪み量が大きく、同一の応力下では直線Aに比して変形量が大きい。すなわち、直線Bの場合、変形することによって破壊エネルギを蓄積することができる。このために荷重が付加されると大きく変形し、これにより、荷重を緩和することができる。その結果、破壊強度が小さくても破壊が起こり難く、優れたタフネスを示す電解質となる。
【0064】
本実施の形態では、上記した三角形の面積をタフネス(破損のし難さ)を示す指標とし、破壊エネルギとして定義すると同時に、破壊エネルギ測定時の撓み量も規定するものとする。
【0065】
以上のように、評価に際して従来から採用されているJIS R 1601に基づく絶対的な機械強度によって電解質の強度を規定するよりも、実際のMEAの膜厚に則した厚みの試料を用いて破壊エネルギという観点から評価を行うことにより、一層優れた電解質の構造設計を行うことが可能となる。
【0066】
例えば、10SSZからなる厚み100μmの層を設けた場合、上記のようにして破壊エネルギを求めると0.1mJ程度となる。10SSZの厚みを200μm、250μmと大きくしても、破壊エネルギは0.3mJ、0.4mJと僅かな向上が認められるにすぎない。しかも、厚みの上昇に伴って面積抵抗率も上昇してしまう。
【0067】
また、6SSZからなる厚み80μmの層を設けた場合、破壊エネルギは0.4mJ前後であるが、10SSZからなる上記層(厚み100μm)に比して厚みが20μm小さくなっているにも関わらず、面積抵抗率が約0.20Ωcm2も上昇する。すなわち、伝導性能が不十分である。
【0068】
これに対し、10SSZからなる主電解質26と6SSZからなる副電解質28a、28bの各厚みを80μm、合計20μmに設定した場合、歪み率が10000N/m以下となる一方、破壊エネルギが1.2mJと著しく大きくなる。しかも、その面積抵抗率は互いに略同等である。すなわち、積層電解質16とすることによって、伝導度と破損のし難さ(タフネス)の双方の均衡を図ることができる。
【0069】
なお、副電解質28a、28bの材質を4SSZ、5SSZに代替した場合であっても、破壊エネルギが1.3mJ、1.0mJで且つ面積抵抗率が0.40Ωcm2未満であり、伝導度とタフネスの双方が均衡した積層電解質16を構成することができる。
【0070】
以上から諒解されるように、本実施の形態では、副電解質28a、28bは、酸化物イオン伝導体として機能し得る程度の高い酸化物イオン伝導度を示す。
【0071】
副電解質28b上に積層された中間層20は、カソード側電極14に含まれる元素が積層電解質16中に拡散することを防止するための反応防止層である。この中間層20の厚みT2も、前記中間層18の厚みT1と同様に0.2〜1μmの範囲内に設定される。
【0072】
なお、中間層18、20の厚みが1μmを超える場合、例えば、MEA10が撓んだ際に該中間層18、20にクラックが発生し易くなる傾向がある。仮に中間層18、20にクラックが発生した場合、このクラックがMEA10全体に伝播してしまう。一方、中間層18、20の厚みが0.2μmよりも小さいと、上記した反応防止層としての役割を果たすことが困難となる。
【0073】
中間層20上には、カソード側電極14が積層される。該カソード側電極14の好適な材質としては、La−Co−O系ペロブスカイト型酸化物、La−Sr−Co−O(LSC)系ペロブスカイト型酸化物、La−Sr−Co−Fe−O(LSCF)系ペロブスカイト型酸化物、Ba−Sr−Co−Fe−O系ペロブスカイト型酸化物の群中から選択されるいずれか1種や、これらのペロブスカイト型酸化物中の1種に対して酸化物イオン伝導体を混合した混合物が挙げられる。なお、酸化物イオン伝導体の具体例としては、SDC、YDC、GDC、LDCを挙げることができる。
【0074】
図1から諒解されるように、この場合、カソード側電極14は単一層として形成されている。そして、このカソード側電極14上には、必要に応じ、図1に示すように、ランタンストロンチウムコバルタイト(LSC)等からなる集電層34が単一層として設けられる。これにより、MEA10が構成されている。
【0075】
第1実施形態に係るMEA10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
【0076】
このMEA10は、以下のようにして製造することができる。なお、以下においては、アノード側電極12、中間層18、20、及びカソード側電極14の材質として、Ni−YSZ、SDC、ペロブスカイト型酸化物を選定した場合を例に挙げて説明する。
【0077】
先ず、積層電解質16を設ける。すなわち、図5に示すように、10SSZの粉末をバインダとともに溶媒に添加してスラリーとする。このスラリーをシート成形によって主電解質シート体とする。この主電解質シート体の厚みは、後述する焼成処理後の厚みが70〜90μm程度となるように設定される。同様にして、焼成処理後の厚みが10μm程度となる6SSZ製の副電解質シート体を作製する。
【0078】
このようにシート体を設ける場合、厚みを制御することが容易であるという利点がある。すなわち、寸法精度が良好な積層電解質16を容易に得ることができる。
【0079】
次に、図6に示すように、主電解質シート体の各端面に副電解質シート体(補強層シート)を熱圧着した後、焼成処理を施すことで接合する。焼成温度は、例えば、1500℃とすればよい。これにより、10SSZからなる主電解質26の厚みが70〜90μm程度、6SSZからなる各副電解質28a、28bの厚みが合計で20μm程度である積層電解質16が得られる。主電解質26及び副電解質28a、28bの厚みがこのように設定されているので、積層電解質16では、例えば、面積抵抗率が0.23Ωcm2、歪み率が10000N/m以下(スパン40mm)、破壊エネルギが0.3mJ以上となる。
【0080】
また、6SSZ単体からなる電解質を用いる場合と積層電解質16を用いる場合とを比較すると、双方の抵抗が同一である場合、積層電解質16の方が厚みを大きく設定することができる。このように積層電解質16の厚みを大きく設定した場合、MEA10を挟持するセパレータ同士が接触して短絡することを防止する効果がある。また、温度領域によって問題となっていた電子伝導性の増大に伴う燃料電池の起電力低下を防止するという効果も期待される。
【0081】
次に、中間層18が必要である場合、図7に示すように、積層電解質16の一端面にSDCのペーストを塗布する。そして、積層電解質16の残余の一端面にSDCのペーストを塗布した後、焼き付けを行うことによって中間層18、20を設ける。なお、一端面にSDCのペーストを塗布した後に焼き付けを行って中間層18を形成し、さらに、他端面にSDCのペーストを塗布した後に焼き付けを行って中間層20を形成するようにしてもよい。
【0082】
勿論、ペーストを塗布する際には、焼き付け後の中間層18、20の厚みが1μm以下となるように塗布厚みを設定する。
【0083】
次に、例えば、予めパターンが形成されたスクリーンを用いてスクリーン印刷を行うことによって、NiO−YSZからなるペーストを中間層18上に塗布する。その後、焼き付けを行えば、NiO−YSZからなるアノード電極群22が所定のパターンで形成される。
【0084】
次に、スクリーン印刷を行うことによって、上記した各種のペロブスカイト型酸化物等のペーストを中間層20上に塗布する。その後、焼き付けを行えば、カソード側電極14が形成される。その後、必要に応じ、アノード側電極12及びカソード側電極14の各外方に集電層25、34を設ける。この中の集電層25は、アノード側電極12と同一パターンとして設けられる。
【0085】
次に、前記アノード電極群22を構成するNiO−YSZに対して初期還元処理を施し、NiOをNiに変化させる。これに伴ってNi−YSZからなるアノード電極群22(アノード側電極12)が得られ、その結果、MEA10が発電可能となる。
【0086】
NiOがNiに還元されるときには、アノード側電極12が収縮を起こす。この収縮に伴い、図8に模式的に示すように、MEA10がアノード側電極12側に引っ張られるように若干撓む。
【0087】
この際、積層電解質16は上記したように撓み易い特性を有するので、この撓みに容易に追従する。従って、積層電解質16が破損する懸念はない。
【0088】
一方、SDC、GDC、LDC、YDC等のセリア系酸化物からなる層は、そもそも、脆性が比較的高い。このため、中間層18、20(上記の例においてはSDC)の厚みが大きい場合、該中間層18、20にクラックが発生する懸念がある。このような事態が生じると、中間層18、20を起点としてクラックが伝播し、MEA10が破損する一因となる。
【0089】
しかしながら、本実施の形態においては、中間層18、20の厚みが1μm以下に設定されている。このように厚みが小さい中間層18、20は、厚みが大きい場合よりも剛性が小さく、このため、可撓性に富む。すなわち、本実施の形態において、中間層18、20は、積層電解質16の変形に追従して容易に変形する。
【0090】
従って、MEA10がアノード側電極12側に引っ張られるように撓み、このために中間層18、20に応力が作用したとしても、これら中間層18、20が撓むことによって応力が緩和される。このように応力が緩和される結果、中間層18、20にクラックが発生することを回避することができる。勿論、中間層18、20に発生したクラックが伝播してMEA10が破損に至る懸念も払拭し得る。
【0091】
すなわち、本実施の形態によれば、脆性が比較的高い材質からなる中間層18、20を介在したMEA10を構成したとしても、該中間層18、20は、MEA10が撓む際に発生する応力を容易に緩和し得る。このため、中間層18、20は、MEA10の撓みに容易に追従して変形することが可能である。
【0092】
このようにして作製されたMEA10が1組のセパレータで挟まれることにより、単位セルが構成される。さらに、この単位セルが所定数積層され、これにより、燃料電池が構成される。
【0093】
この燃料電池を運転するに際しては、該燃料電池を所定温度に上昇させた後、各単位セルのアノード側電極12に水素を含む燃料ガスが供給されるとともに、カソード側電極14に酸素を含む酸化剤ガスが供給される。カソード側電極14では酸素の電離反応が起こり、これにより生じた酸化物イオンが積層電解質16を介してアノード側電極12側に移動する。
【0094】
上記したように、積層電解質16全体としての面積抵抗率は0.23Ωcm2程度であり、従って、酸化物イオンは、該積層電解質16内を極めて容易に移動する。すなわち、SOFCは内部抵抗が小さく、このために発電特性が優れる。
【0095】
また、発電に伴ってMEA10を構成するアノード側電極12がレドックス反応に伴って発生した応力を受けたり、積層電解質16が熱応力を受けたりすることによって、図8に示すようにMEA10が撓むことがあるが、本実施の形態においては、歪み率が10000N/m以下(スパン40mm)、破壊エネルギが0.3mJ以上を示す積層電解質16を採用している。このため、積層電解質16に破損が生じ難い。
【0096】
さらに、中間層18、20の厚みが0.2〜1μmの範囲内に設定されているので、これら中間層18、20は、MEA10が撓むことに伴って容易に変形する。このため、中間層18、20がクラック(破壊)の起点となることがなく、従って、クラックがMEA10に伝播することで該MEA10が破損することも回避される。
【0097】
アノード電極群22の端面面積は、アノード側電極12を単一層として形成した場合の各端面面積に比して小さい。すなわち、電極として機能する有効面積が小さい。しかしながら、上記したように、アノード電極群22同士の間に分割溝24を設けることによって集電効率が向上するとともに反応ガスが均一に拡散するようになるので、SOFCとしての発電特性を向上させることができる。
【0098】
すなわち、本実施の形態によれば、積層電解質16の厚みを90〜110μmと極めて小さくしながらも荷重や外乱を緩和可能で、しかも、SOFCとしての発電特性を向上し得るMEA10を構成することができる。このことは、発電特性及び耐久性に優れたSOFCを設けることができることを意味する。
【0099】
次に、本発明に係る別の実施形態につき説明する。
【0100】
図9は、第2実施形態に係るMEA40の概略全体断面説明図である。このMEA40は、アノード側電極12が分割されることなく単一層として形成されたものである。この場合においても、中間層18、20の厚みが0.2〜1μmに設定されているので、該中間層18、20を起点としてクラックがMEA40に伝播すること、ひいてはMEAが破損することを回避することができる。
【0101】
また、中間層18、20を設ける必要は特にない。すなわち、例えば、図10に第3実施形態として示すように、アノード側電極12を単一層で形成するとともに該アノード側電極12側の中間層18を割愛し、カソード側電極14側の中間層20のみとしてMEA42を構成するようにしてもよい。
【0102】
勿論、図11に第4実施形態として示すように、例えば、アノード側電極12を分割電極として形成するとともに、アノード側電極12側の中間層18を割愛してMEA44を構成するようにしてもよい。
【0103】
第2実施形態〜第4実施形態のいずれにおいても、アノード側電極12、カソード側電極14、中間層20の材質として上記したものを好適に使用することができる。
【0104】
なお、上記した実施の形態においては、主電解質26、副電解質28a、28bとして10SSZ、6SSZを選定し且つ各々の厚みを70〜90μm、10μmに設定するようにしているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、積層電解質16の厚み、面積抵抗率は、それぞれ、200μm未満、0.40Ωcm2未満であることが好適であるが、特にこれに限定されるものではない。
【0105】
また、アノード側電極12、カソード側電極14の各材質も特に限定されるものではなく、SOFCのアノード側電極12、カソード側電極14として採用可能な物質であればよい。
【0106】
さらに、上記の製造方法は、シート体を作製する場合を例示して説明しているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、任意の公知手法で主電解質26を設けた後、プリント、CVD法ないしPVD法等による製膜、スピンコーティング等によるコーティング、ディップ等によって副電解質28a、28bを設けるようにしてもよい。
【0107】
さらにまた、カソード側電極14のみを分割電極としてもよく、アノード側電極12及びカソード側電極14の双方を分割電極とするようにしてもよい。いずれの場合においても、アノード電極群22(又はカソード電極群)は、上記のように正6角形状のものに限定されるものではなく、図12に示すように、同心円状に設けられた円環形状層50であってもよい。又は、図13に示すように、扇形形状に分割された層52であってもよいし、図14に示すように、格子状に分割された層54であってもよい。
【実施例】
【0108】
図5〜図7のフローに従い、10SSZからなる80μmの主電解質が6SSZからなる10μmの副電解質で挟まれた積層電解質を作製した。さらに、積層電解質の一端面にNiO−YSZからなる単一層(アノード側電極)を設けた。
【0109】
その一方で、前記積層電解質の他端面にGDCからなる中間層を形成した後、該中間層上にLSCFの単一層(厚み5μm)からなるカソード側電極を形成し、図10に示される形態のMEAを作製した。さらに、反応ガスを流通させる溝が設けられたセパレータで前記MEAを挟んで単位セルを構成した。これを実施例1とする。
【0110】
また、NiO−YSZからなる略正6角形状の電極群を形成してアノード側電極としたことを除いては実施例1と同様にして、図11に示される形態のMEAを作製した。これを実施例2とする。
【0111】
なお、前記電極群において、厚みは5μm、対向する一辺同士の離間距離は8mm、分割溝の幅寸法は0.3mmであった。また、最外に位置する電極群に外接する外接円の直径は50mm、端面面積は1963mm2であった。すなわち、電極群の端面面積は、前記外接円Cの端面面積の93%であった。
【0112】
比較のため、両中間層の厚みを1.5μmとしたことを除いては実施例1と同一構成の単位セルを構成した。これを比較例1とする。
【0113】
以上のようにして得られた実施例1、2及び比較例1のMEAを700℃に昇温した後、アノード側電極に対して水素を10cc/cm2・分の流量で一挙に供給し、急速に還元させたときにMEAに破壊が生じるか否かを評価する初期急速還元試験を行った。この試験により、アノード側電極の還元によって生じる応力に対するMEAの耐破壊特性を評価することができる。
【0114】
結果を、図15に併せて示す。この図15に示すように、この過程の最中ないし終了した後、実施例1、2及び比較例1の各MEAに破損が生じていることは認められなかった。すなわち、これらのMEAは、初期還元性能が良好であった。一方、比較例1のMEAには、還元過程の終了後にクラックが発生していた。
【0115】
この結果から、中間層の厚みを小さくすることにより該中間層が応力を緩和し得るようになり、このために破損が生じ難いMEAを構成し得るようになることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】第1実施形態に係る電解質・電極接合体(MEA)の概略全体断面説明図である。
【図2】図1のMEAを構成するカソード側電極の平面図である。
【図3】図1のアノード側電極を構成する電極群の一具体例における平面図である。
【図4】本実施の形態におけるタフネス及び破壊エネルギの概念を説明するためのグラフである。
【図5】図1に示す積層電解質の主電解質となるシート体を得るまでのフローチャートである。
【図6】図5に示すシート体を用いて積層電解質を得るまでのフローチャートである。
【図7】図6に示す積層電解質を用いてMEAを得るまでのフローチャートである。
【図8】MEAが撓んだ状態を示す概略全体断面図である。
【図9】第2実施形態に係る電解質・電極接合体(MEA)の概略全体断面説明図である。
【図10】第3実施形態に係る電解質・電極接合体(MEA)の概略全体断面説明図である。
【図11】第4実施形態に係る電解質・電極接合体(MEA)の概略全体断面説明図である。
【図12】電極群の別の一具体例における平面図である。
【図13】電極群のまた別の一具体例における平面図である。
【図14】電極群のさらに別の一具体例における平面図である。
【図15】実施例1、2及び比較例1の各MEAにおける諸特性を示す図表である。
【符号の説明】
【0117】
10、40、42、44…電解質・電極接合体(MEA)
12…アノード側電極 14…カソード側電極
16…積層電解質 18、20…中間層
22…アノード電極群 24…分割溝
25、34…集電層 26…主電解質
28a、28b…副電解質 50、52、54…層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード側電極とカソード側電極とで電解質を挟んで形成され、前記電解質の厚みが前記アノード側電極及び前記カソード側電極に比して大きな電解質支持型の電解質・電極接合体において、
前記電解質は、荷重が付加された際に撓むことによって前記荷重を緩和する作用を営むものであり、
前記アノード側電極と前記電解質との間、又は前記電解質と前記カソード側電極との間の少なくともいずれか一方に介装された中間層を有し、
前記中間層の厚みが0.2〜1μmの範囲内であることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項2】
請求項1記載の電解質・電極接合体において、前記電解質は、破損するまで付加された荷重を破損するまでの歪量で除すことで求められる歪み率が10000N/m以下であり、且つ破壊エネルギが0.3mJ以上であることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電解質・電極接合体において、前記中間層がCe1-aa2(XはCeO2のCeサイトに置換された元素を示し、0≦a<1)で表されるセリア系酸化物からなることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解質・電極接合体において、前記アノード側電極又は前記カソード側電極の少なくともいずれか一方が、互いに離間して形成された複数個の電極群からなることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項5】
請求項4記載の電解質・電極接合体において、前記電極群同士の間のクリアランスを電極材料で充填したときの端面の面積を100としたとき、前記電極群の端面の面積の総和が90〜99であることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解質・電極接合体において、前記アノード側電極又は前記カソード側電極の厚みが20μm以下であることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項7】
請求項6記載の電解質・電極接合体において、前記アノード側電極又は前記カソード側電極の厚みが5μm以下であることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電解質・電極接合体において、前記電解質は、主電解質と、前記主電解質の各端面に接合されて該主電解質よりも厚みが小さい副電解質とを有する積層電解質からなることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項9】
請求項8記載の電解質・電極接合体において、前記主電解質は、前記副電解質と同一厚みであるとき、該副電解質に比して抵抗が小さな物質であることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項10】
請求項8記載の電解質・電極接合体において、前記副電解質は、前記主電解質と同一厚みであるとき、該主電解質に比して破壊エネルギが大きな物質であることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項11】
請求項10記載の電解質・電極接合体において、前記主電解質の厚みが前記副電解質に比して大きいことを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の電解質・電極接合体において、前記アノード側電極又は前記カソード側電極の少なくともいずれか一方に集電層が積層されたことを特徴とする電解質・電極接合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−27350(P2010−27350A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186369(P2008−186369)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】