説明

電解質液の濃縮方法

【課題】製塩などの際に好適な濃縮方法に関し、極めて小型かつ簡易で安価な装置によって海水などの電解質液を水と水以外とに分離し効率的に濃縮できる方法を実現する。
【解決手段】電解質液の流れる管路Pの外側に、異極同士が対向するように、電解質液の水流方向に所定の長さを持つ磁極M・mを高速移動可能に配設すると共に、両磁極間の水流の下流側において中間寄りの流路と両端寄りの流路とに仕切るための仕切り壁を設けてあるので、両磁極による磁界の作用でイオン化成分が管路内の両端寄りにローレンツ力で移動し、両仕切り壁の外側の流路に流れ込み、残りの純水は両仕切り壁間の流路に流れ込むので、仕切り壁の出口側からは、イオン化成分が濃縮された電解質液と純水とが分離された状態で流出することになり、両仕切り壁の外側から濃縮液を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製塩などの際に好適な濃縮方法に関する。海水を濃縮してから、水分と水分以外とに分離すると、能率的に製塩できる。
【背景技術】
【0002】
本発明の発明者は、海水を細かい霧状に散霧してから温風を加えることで、水分と水分以外とに分離する製塩方法を発明し、実用化している。
しかし広い空間(製塩室)を要する上に、結晶化し製塩室で浮遊している塩分を捕獲する手段が必要である。
この場合、予め海水を充分に濃縮してあると、短時間に効率的に結晶化でき、消費エネルギーも少なくて済む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−118645
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、海水中の塩分やマグネシウムなどのミネラルはイオン化状態にあることに着目し、電磁気的に分離する濃縮方法を開発したが、従来の電磁気的濃縮方法は、特許文献1に記載のように、高温超伝導電磁石や高温超伝導電磁石の磁界周囲に配したメッシュ状、スパイラル状、筒状等に形成された吸着フィルタなどの特殊な装置を用いて磁気分離するため、その装備が高価となる上に、装置が複雑で設置後の維持メンテナンス、定期的な装備交換が必要となり、設置後の運用にコストがかかる。
【0005】
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、極めて簡易で安価な装置によって海水を水と水以外とに分離し濃縮できる装置と方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1は、電解質液が流れる管路の外側に、異極同士が対向するように、電解質液の水流方向に所定の長さを持つ磁極を配設すると共に、両磁極間の水流の下流側において中央寄りを流れる純水の成分の流路と両端寄りを流れる電解質液の流路とに仕切るための仕切り手段を設けてあることを特徴とする濃縮装置である。
このように、電解質液が流れる管路の外側に、異極同士が対向するように、電解質液の水流方向に所定の長さを持つ磁極を配設すると共に、両磁極間の水流の下流側において中央寄りを流れる純水の成分の流路と両端寄りを流れる電解質液の流路とに仕切るための仕切り手段を設けてあるので、両磁極による磁界の作用で、イオン化した電解質液が管路内の両端寄りにローレンツ力で移動して両仕切り壁の外側の流路に流れ込み、イオン化成分の少ない純水は両仕切り壁間の中間の流路に流れ込むので、仕切り壁の出口側からは、イオン化された電解質液の成分と純水とが分離された状態で流出する結果、両仕切り壁の外側の流路からは濃縮液を得ることができる。
【0007】
請求項2は、前記の磁極を発生させるための永久磁石又は電磁石及び/又は電解質液が強制的に互いに逆向きに移動されることを特徴とする請求項1に記載の濃縮装置である。
このように、永久磁石や電解質液を出来るだけ速く互いに逆向きに強制的に移動させると濃縮が効率的に行われる。
【0008】
請求項3は、電解質液が流れる管路の外側に、異極同士が対向するように、電解質液の水流方向に所定の長さを持つ磁極を配設すると共に、両磁極間の水流の下流側において中央寄りを流れる純水の成分の流路と両端寄りを流れる電解質液の流路とに仕切るための仕切り手段を設けてある装置を用いて、
前記両磁極の間を電解質液が通過する際に、イオン化されている成分の流れによって発生する電流と前記両磁極による磁界との相互作用によって、管路内の両端寄りにイオン化成分を集中させて、前記両仕切り壁の両外側にイオン化成分を導き、イオン化成分の少ない純水を前記両仕切り壁間の流路に導くことによって、イオン化成分と純水とを分離することを特徴とする濃縮方法である。
このように、電解質液が流れる管路の外側に、異極同士が対向するように、電解質液の水流方向に所定の長さを持つ磁極を配設すると共に、両磁極間の水流の下流側において中央寄りを流れる純水の成分の流路と両端寄りを流れる電解質液の流路とに仕切るための仕切り壁を設けた装置を用いて、管路内に電解質液を供給し流すと、両磁極による磁界の作用でイオン化成分が管路内の両端寄りにローレンツ力で移動し、両仕切り壁の外側の流路に流れ込み、残りの純水は両仕切り壁間の流路に流れ込むので、仕切り壁の出口側からは、イオン化成分である電解質液と純水とが分離された状態で流出することになり、両仕切り壁の外側から濃縮液を得ることができる。
従って、特殊で複雑・高価な装置を必要とせず、簡素で安価な装置で海水その他の電解質液の濃縮が可能となる。また、電解質液の水流の状態で濃縮できるので大きな濃縮空間を要せず、加熱も要しないのでエネルギーも節減できる。
【0009】
請求項4は、前記の磁極を発生させるための永久磁石又は電磁石及び/又は電解質液を強制的に互いに逆向きに移動させることを特徴とする請求項3に記載の濃縮方法である。
このように、永久磁石や電解質液を出来るだけ速く互いに逆向きに強制的に移動させると濃縮が効率的に行われる。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によると、電解質液が流れる管路の外側に、異極同士が対向するように、電解質液の水流方向に所定の長さを持つ磁極を配設すると共に、両磁極間の水流の下流側において中央寄りを流れる純水の成分の流路と両端寄りを流れる電解質液の流路とに仕切るための仕切り壁を設けた装置を用いて、管路内に電解質液を供給し流すと、両磁極による磁界の作用でイオン化成分が管路内の両端寄りにローレンツ力で移動して両仕切り壁の外側の流路に流れ込み、残りの純水は両仕切り壁間の中間の流路に流れ込むので、仕切り壁の出口側からは、イオン化成分が濃縮された電解質液と純水とが分離された状態で流出することになり、両仕切り壁の外側から濃縮液を得ることができる。また、前記の磁極を発生させるための永久磁石や電解質液を出来るだけ速く互いに逆向きに強制的に移動させると濃縮が効率的に行われる。
従って、特殊で高価な装置を必要とせず、簡素で安価な装置で海水その他の電解質液の濃縮が可能となる。また、電解質液の水流の状態で濃縮できるので大きな濃縮空間を要せず、加熱も要しないのでエネルギーも節減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による濃縮装置の基本原理を説明するC−C水平断面図である。
【図2】管路の磁石領域より上流側を示すA−A縦断面図である。
【図3】管路の磁石領域の下流側を示すB−B縦断面図である。
【図4】図1の磁石付き管路の左側面図である。
【図5】永久磁石板をキャタピラー状に周回するように、かつ管路を挟むように配置しか実施形態である。
【図6】すべての部位が、直線移動するか所と同じ面内で移動する実施形態である。
【図7】図6の実施形態の側面図である。
【図8】永久磁石板が単独で回転する実施形態であって、各永久磁石板の間隔を密にできるように回転円板を互い違いに配置してある。
【図9】図8の実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明による濃縮装置と濃縮方法が実際上どのように具体化されるか実施形態を詳述する。図1は本発明による濃縮方法を実施する濃縮装置の基本原理を示す図で、図2C−C位置の水平断面図である。Pは海水などの電解質液の流れを生じさせるための管路であり、図の右側が上流、左側が下流とする。海水流は、公知の水ポンプで発生させることができる。
この管路Pの外側に、磁場を発生させるための長さLの磁石M・mを、水流に沿って水流を挟むように対向配置してある。この管路P中において、磁石M・mの長さLより上流側を示すと、図2のように単一の空間であるのに対し、磁石M・mの長さLの範囲内における下流側を示すと、図3のように、左側流路、中間流路、右側流路のように、三つの流路1、2、3に仕切られている。W1は、左側流路1と中間流路2間を仕切る仕切り壁であり、W2は、中間流路2と右側流路3間を仕切る仕切り壁である。
図4は、図2、図3の構造の左側面図である。
【0013】
図2、図3からも明らかなように、図1の管路Pの下側に永久磁石Mを、また上側に永久磁石mを配設し、管路P内の水流を挟むように異極N・S同士を対向させてある。管路P中の海水流に、より強い磁場が作用できるように、永久磁石M・mは、管路Pにできるだけ近づける方がよい。なお、永久磁石M・mを管路Pの内側に配設することも可能であり、内外両側に配置してもよい。
長さLの永久磁石M・mの領域において、下側の永久磁石Mと上側の永久磁石mとで発生する磁場中をイオン化された各種ミネラルを含む電解質液が流れると、ローレンツ力が作用して、イオン化粒子を有するミネラルは、図3のように管路P中において左向きと右向きの力を受ける。すなわち、マイナスイオンとプラスイオンとは逆向きの力を受けるので、マイナスイオンに荷電している電解質液は、左側に移動して、左側の仕切り壁W1より左側の左側流路1中に流れ込み、プラスイオンに荷電している電解質液は、右側に移動して、右側の仕切り壁W2より右側の流路3中に流れ込む。
【0014】
従って、左側の流路1中と右側の流路3中に流れ込んだ海水は、荷電したミネラル分の多い海水、すなわち濃縮された海水となり、イオン化粒子の少ない純水成分は、ローレンツ力を受けないので、中間の流路2中に流れ込むことになる。
そのため、3分割の流路1、2、3の出口側からは、マイナスイオンに荷電したミネラルを多く含んだ海水と、プラスイオンに荷電したミネラルを多く含んだ海水と、荷電粒子成分の少ない純水とに分離された状態となって流出することになり、左側の流路1と右側の流路3からは濃縮海水が得られることになる。
別の実施形態として、永久磁石M・mを管路Pの左側と右側に設けると共に、3分割流路1、2、3を上下と中間のように、上下方向に3分割することもできる。
永久磁石M・m間の磁場中で、電解質液の海水が移動した時に発生するローレンツ力は、フレミングの左手の法則によって、親指の方向となる。
なお、図2のように、磁石M・mより上流側のA−A位置では、磁界の影響を受けないので、マイナスイオンに荷電したミネラルとプラスイオンに荷電したミネラルとが混在していて、通常の海水の状態であることは言うまでもない。
【0015】
以上のように本発明によると、中間の流路2からは純水が得られるので、海水の淡水化処理装置として利用することもできる。
また、左側流路1から流出するマイナスイオン液と右側流路3から流出するプラスイオン液を合流させなければ、いくら濃度を濃くしても結晶化の条件である相手方逆イオンが存在しないから結晶化しない。従って、濃度を高めても結晶化しないから、より高い濃度が得られる。
適当な濃度になったマイナスイオン液とプラスイオン液を混合すると、その時点での過飽和同士が化合して結晶化する。従って、それを順次繰り返すと、海水中に溶けているイオンを、目的に応じて取り出す事が出来る。
【0016】
本発明装置において、濃縮度を上げるには、図1の磁石M・mの長さLと管路Pをより長くして磁界の及ぶ範囲を長くしてもよいし、左側流路1から流出したマイナスイオン液と右側流路3から流出したプラスイオン液を、再度図1の管路Pに右端から流入させることによって、濃縮処理を繰り返してもよい。あるいは、磁界の強度を高めたり、管路P内の電解質液の流速をより速くしてもよい。流速を速くするには、管路Pの右端を上にして立てて電解質液を落下させるとより効率的である。
以上の実施形態における管路Pは四角管になっているが、管路Pの断面形状は任意である。磁場を発生させるために、2個の永久磁石M・mを図示したが、一端にN極が他端にS極が有るU字状の永久磁石を代用してもよい。電磁石でも磁界を発生できることは勿論である。また、超伝導電磁石なども利用可能である。
実施形態として、海水の濃縮を例示したが、荷電粒子を含む電解質液であれば、海水以外の濃縮にも適用できることは言うまでもない。
【0017】
以上の実施形態では製造速度が遅く能率的でない場合は、図5以下のように磁石や電解質液を出来るだけ速く強制的に移動させることが適している。図5は、永久磁石板M…・m…をキャタピラー(登録商標)状にエンドレスに連結して前後の駆動輪4・5で矢印方向に周回するように、かつ管路Pを挟むように配置してある。
このような配置にすると、ちょうど図1〜図4における電解質液の流れの方向と逆方向に永久磁石板M…・m…が移動しているので、ローレンツ力が強くなり効率的に濃縮を行うことができる。
【0018】
図5の永久磁石板M…・m …は、その直線移動するか所のみで同一面内を移動し、前後では立体運動するのに対し、図6、図7の永久磁石板M…・m…は、すべての部位が、直線移動するか所と同じ面内で移動する。従って、各永久磁石板M…・m…は、内端のみが連結され、前後の駆動輪6・7の部位では放射状を向いている。図5〜図7の直線移動する領域における各永久磁石板M …・m…の間隔は実装密度を上げる上では密にした方がよい。
図6・図7のように前後2か所で電解質液の管路Pを挟むと、2本の管路Pで濃縮できる。また、図5〜図7の永久磁石板M…・m…の空いている部位に別の管路Pを配置すれば、濃縮管路を更に増やすことができる。
【0019】
図5〜図7は、四角い永久磁石板M…・m…がキャタピラー状に周回運動するのに対し、図8・図9の実施形態は、永久磁石板M…・m…が単独で回転している。ただし、各永久磁石板M…・m…を単独で回転運動させると、キャタピラー状に連結する場合に比べて各永久磁石板M…・m…の間隔を密に出来ないので、図8に示すように回転円板8…を互い違いに配置してある。
そして、隣接する回転円板8…の下側に管路Pを配置すると共に図9に示すように前記管路Pの下側にも、永久磁石からなる回転円板8…を配置することは言うまでもない。
【0020】
永久磁石を強制的に同じ方向に移動させる実施形態を説明したが、電解質液を出来るだけ速く強制的に移動させるには、電解質液を水ポンプで加圧及び又は吸引するのがよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上のように、本発明によると、濃縮される電解質液の流を挟むように異極同士を対向配置し、かつ流れの方向に所定の長さを設けると共に、両磁極間の水流の下流側において左右と中間の三つの流路に仕切る仕切り壁を設けることによって、ローレンツ力で磁場と直角方向に移動される荷電粒子成分は左右の流路に導かれ、荷電粒子成分を含まない純水は中間の流路に導かれるため、簡素で小型の装置によって海水などの濃縮が可能となる。この場合、永久磁石や電解質液を出来るだけ速く強制的に移動させると濃縮が効率的に行われる。
以上のような本発明を利用すると、中間の流路から純水が得られるので、高価な逆浸透膜を使用しなくても、淡水化処理による飲料水や農業用水の確保が安価で容易になる。
また、プラスイオン液とマイナスイオン液を混合すると過飽和になったNaClが結晶化する。これを除いた液に窒素N、リン酸P、カリKを追加すれば、理想的な総合肥料が安価に得ることができる。
海水中には、地球上に存在する全ての鉱物が溶け込んでいる。例えば、リチウム電池に使われるリチウムも海水には溶けている。従って、本発明によって海水を容易に濃縮できれば、回収効率が極端に上がるので、四方を海に囲まれた日本は、レアーメタルの一大産出国になると考えられる。
【符号の説明】
【0022】
P 海水(電解質液)を流す管路
M・m 永久磁石
1 左側の流路
2 中間の流路
3 右側の流路
W1 左側流路と中間流路間の仕切り壁
W2 中間流路と右側流路間の仕切り壁
M 管路Pの下側の永久磁石
m 管路Pの上側の永久磁石
4・5 前後の駆動輪
6・7 前後の駆動輪
8 永久磁石からなる回転円板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質液が流れる管路の外側に、異極同士が対向するように、電解質液の水流方向に所定の長さを持つ磁極を配設すると共に、両磁極間の水流の下流側において中央寄りを流れる純水の成分の流路と両端寄りを流れる電解質液の流路とに仕切るための仕切り手段を設けてあることを特徴とする濃縮装置。
【請求項2】
前記の磁極を発生させるための永久磁石又は電磁石及び/又は電解質液が強制的に互いに逆向きに移動されることを特徴とする請求項1に記載の濃縮装置。
【請求項3】
電解質液が流れる管路の外側に、異極同士が対向するように、電解質液の水流方向に所定の長さを持つ磁極を配設すると共に、両磁極間の水流の下流側において中央寄りを流れる純水の成分の流路と両端寄りを流れる電解質液の流路とに仕切るための仕切り手段を設けてある装置を用いて、
前記両磁極の間を電解質液が通過する際に、イオン化されている成分の流れによって発生する電流と前記両磁極による磁界との相互作用によって、管路内の両端寄りにイオン化成分を集中させて、前記両仕切り壁の両外側にイオン化成分を導き、イオン化成分の少ない純水を前記両仕切り壁間の流路に導くことによって、イオン化成分と純水とを分離することを特徴とする濃縮方法。
【請求項4】
前記の磁極を発生させるための永久磁石又は電磁石及び/又は電解質液を強制的に互いに逆向きに移動させることを特徴とする請求項3に記載の濃縮方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−240323(P2011−240323A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207236(P2010−207236)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(596124014)
【出願人】(500425563)株式会社ぬちまーす (5)
【Fターム(参考)】