説明

電離放射線測定設備におけるベースライン降下の影響を最小化するための方法及び装置

乗物及びコンテナの監視システムにおけるバックグラウンド電離放射線降下の影響を低減するための方法及び装置であり、このバックグラウンド電離放射線降下は、上記乗物若しくはコンテナ又はそれらの変更物の部品からの遮蔽の影響による。本方法は、2つのスペクトルの関心領域内のバックグラウンド放射線の測定値を利用して正規化定数を計算し、それから137Cs及び76Ga等の関係ある電離放射線ソースの存在に対して乗物又はコンテナをテストするときに、上記正規化定数を利用して、同じ関心領域内の測定値を正規化する。上記2つの測定値を減算して正味の差を計算することは、一方のスペクトルの関心領域内の放射線計数の実質的に有効な尺度を提供するものである。上記関心領域は、隣接するか又は重なっていることが好ましく、上記関心領域のスペクトル幅は、上記2つの関心領域内のバックグラウンド遮蔽の影響による放射線計数の減衰が実質的に等しくなるように選択することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
米国政府は本発明の権利を有しており、本発明は、国土安全保障省とヌクセーフ・インコーポレーテッドとの間の契約番号HSHQPA−05−C−0029に準拠している。
【0002】
本発明は、放射線検出設備の領域に関する。より詳細には、本発明は、放射性物質の秘密運搬に対し、人の出入り口及び輸送機関の荷役口を監視するために使用する放射線検出設備に関する。
【背景技術】
【0003】
入り口監視装置や他の大面積検出器等の大きなガンマ放射線機器は、トラックのトレーラー、自動車のトランク、船積みコンテナ、小包、手荷物、所持品、及び類似の品目(以後、まとめて「コンテナ」として言及する)を調べて、何らかの放射性物質がその中にあるかどうかを判定している。また、これらの検出器は、宇宙、空中、及び地球のソースに由来する自然バックグラウンド放射線に反応する。理想的な状況下において、調べるコンテナ内の何らかの放射性物質によって発生する放射能の尺度は、(1)そのコンテナが監視システムの調査空間を占有しているときに上記検出器が見る放射線計数率と、(2)この監視システムが「空」であるときに観測する放射線計数率との間の差から求めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不幸なことに、上記コンテナ若しくはそれを輸送する調べられる乗物、又はその両方が巨大であり、バックグラウンド放射線を見ることから上記検出器を遮蔽してしまうとき、一般的に面倒な影響が生じている。そのような状況において、観測される信号は、上記コンテナ又は乗物内の何らかの放射性物質から検出される放射線と、バックグラウンド放射線からの低減された寄与との合計である。大きな乗物は、実質的に〜30%程度の量だけ、検出されるバックグラウンド放射線を低減することが示されている。上記コンテナ又は乗物から発される放射能の判定は、上記の「占有」と「空」との状態間の差によって求められるので、この巨大な「サンプル」が当該「サンプル」内の放射能から検出される放出のレベルを補正することにより、検出されるバックグラウンド放射線の減少が生じ、不正確な読み取りを引き起こすために、コンテナ又は乗物内にある放射性ソースから発される放射能は、信頼性ある検出をすることができない。この事態は「ベースライン降下」と呼ばれ、入り口監視装置等の大きな放射線測定システムにおいて重大な脆弱性を引き起こすことが示されている。
【0005】
入り口監視装置におけるベースライン降下の上記影響を克服する試みにおいて、幾つかシステムは、様々なスペクトルの「関心領域」における放射線の測定値を使用している。そのような測定値における差は、あるエネルギー閾値より下のガンマ線の総数と、そのエネルギー閾値(最大で上記検出器の最大検出可能エネルギー限界)より上で検出されるガンマ線の総数とを比較するように計算されている。数式1は、ガンマ・スペクトルに対し、このことを示している。
【0006】
【数1】

【0007】
数式1において、Cはスペクトル・チャンネルにおける計数、nは上記エネルギー閾値と調和するよう選択したチャンネルの数、そして「k」は2つの上記関心領域間のバックグラウンド読み取りにおいて予期される差を考慮するように試みる正規化定数である。この技法の適用の例は、38−1,394keVのスペクトル領域(人工エミッタの領域)の全てのチャンネルの内容の合計と、1394−3,026keVのスペクトル領域(自然に生じるガンマ・エミッタからの計数を主に含む領域)の合計とを使用した計算である。これらのスペクトル領域は、関心領域として選択することができる。数式1のROI差は、それから人工のガンマ放射線計数の測定を提供することができるようである。不幸なことに、検出可能な高エネルギーのガンマ線等の様々な因子(例えば、16Nが放出する6.13MeVのガンマ放射線)は、光電ピークより下の広い範囲のエネルギーに影響を与えている。それらのエネルギーは、数式1で使用している上記正規化定数の上記計算に悪影響を与える形で、スペクトルの形状を変化させている。
【0008】
ベースライン降下の上記影響を最小化するために、様々な他の技法が提案されてきたが、それらは一般的に、受け入れ難い制約を有している。従って、必要とされているのは、遮蔽の影響が放射性物質の存在を覆い隠している可能性のある場合に、入り口及び類似の放射線監視システムにおいて、ベースライン降下の上記影響を低減するための改良された方法である。
【発明を解決するための手段】
【0009】
本発明は、環境中の関係ある電離放射線ソースを検出するための方法を提供し、この環境は、上記の検出を妨害するように置かれた可能性あるバックグラウンド電離放射線遮蔽物質を含んでいる。本方法は、各々がスペクトル幅を有する、第1と第2の電離放射線エネルギー関心領域を選択するステップを含んでいる。この第1電離放射線関心領域は、上記関係ある電離放射線ソースからの検出可能な放出を含むよう選択し、この第2電離放射線関心領域は、上記関係ある電離放射線ソースからの実質的な放出を有さないエネルギー範囲を有するように選択している。更なるステップは、上記第1電離放射線エネルギー関心領域内の第1バックグラウンド電離放射線測定値と、上記第2電離放射線エネルギー関心領域内の第2バックグラウンド電離放射線測定値とを取得することを含んでいる。この第1バックグラウンド電離放射線測定値及びこの第2バックグラウンド電離放射線測定値の各々は、上記関係ある電離放射線ソースが実質的にないときに取られるものである。本方法は、上記第2バックグラウンド電離放射線測定値を上記第1バックグラウンド電離放射線測定値に対し正規化して、較正定数を求めるステップと共に続く。
【0010】
本方法は更に、上記第1電離放射線エネルギー関心領域内の第1合計電離放射線測定値と、上記第2電離放射線エネルギー関心領域内の第2合計電離放射線測定値とを取得するステップを含んでいる。この第1合計電離放射線測定値及びこの第2合計電離放射線測定値の各々は、可能性ある関係ある放射性ソースが存在し、上記可能性ある関係ある電離放射線ソースの上記検出を妨害するように置かれた可能性あるバックグラウンド電離放射線遮蔽物質が存在するときに取られる。
【0011】
本方法は、上記較正定数を適用して上記第2合計電離放射線測定値を正規化し、正規化された第2合計電離放射線測定値を求めるステップと共に続く。本方法は、この正規化された第2合計電離放射線測定値を上記第1合計電離放射線測定値から減算して、上記関係ある電離放射線ソースの存在を指し示すためにそれらの間の正味の差を求めるステップと共に完結する。
【0012】
また提供するものは、バックグラウンド放射線環境において、関係ある電離放射線ソースからの放射線を検出するための放射線分析システムである。本装置は、空間放射線に曝される放射線検出器を有している。この放射線検出器は、少なくとも第1と第2の電離放射線関心領域を検出するように構成されている。この第1電離放射線関心領域は、上記関係ある電離放射線ソースからの検出可能な放出を含み、この第2電離放射線関心領域は、上記関係ある電離放射線ソースからの放出を実質的に除外している。トリガリング・システムを提供する。このトリガリング・システムは、上記関係ある電離放射線ソースからの放射線のない上記バックグラウンド放射線環境を含む空間放射線に上記の検出器が曝されたときに、第1データ取得トリガを発生させるよう構成され、上記バックグラウンド放射線環境及び遮蔽される可能性のある関係ある電離放射線ソースを含む空間放射線に上記の検出器が曝されたときに、第2のデータ取得トリガを発生させるよう構成されている。
【0013】
また備えられるものは、上記放射線検出器及び上記トリガリング・システムと操作可能に通信するデータ取得システムである。このデータ取得システムは、上記トリガリング・システムが上記第1データ取得トリガを発生させた後に、バックグラウンド放射線測定値を上記放射線検出器から取得するよう構成されている。このバックグラウンド放射線測定値のセットは、上記第1電離放射線関心領域内の第1バックグラウンド電離放射線測定値と、上記第2電離放射線関心領域内の第2バックグラウンド電離放射線測定値とを含んでいる。上記データ取得システムは、上記トリガリング・システムが上記第2のデータ取得トリガを発生させた後に、テスト放射線の測定値を上記放射線検出器から取得するよう更に構成されている。このテスト放射線の測定値は、上記第1電離放射線関心領域内の第1合計電離放射線測定値と、上記第2電離放射線関心領域内の第2合計電離放射線測定値とを含んでいる。
【0014】
本放射線分析システムはまた、上記データ取得システムと操作可能に通信するコンピュータを備えている。このコンピュータは、上記第2バックグラウンド電離放射線測定値を上記第1バックグラウンド電離放射線測定値に対し正規化して較正定数を求めるよう構成されている。このコンピュータは更に、この較正定数を適用して上記第2合計電離放射線測定値を正規化し、正規化された第2合計電離放射線測定値を求めるよう構成されている。このコンピュータはまた、この正規化された第2合計電離放射線測定値を上記第1合計電離放射線測定値から減算し、上記関係ある電離放射線ソースの存在を指し示すためにそれらの間の正味の差を求めるよう構成されている。
【0015】
図と共に詳細な説明を参照することにより、様々な利点は明らかである。要素は、詳細をより明確に示すようにスケールしておらず、類似の参照番号は、幾つかの図を通して類似の要素を指し示している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】関心領域の例と共に、オリジナルのバックグラウンド・ガンマ放射線スペクトルと、降下したガンマ放射線スペクトルとのプロットを描写している。
【図2】図1で描写した関心領域の特徴を確認している。
【図3】図1のスペクトルのプロットに重なる関心領域の例を描写している。
【図4】仮想の入り口放射線監視システムにおける2つの検出器からの、時間にわたるグロス計数率を描写している。
【図5】上記仮想の入り口放射線監視システムにおける上記2つの検出器の各々に対する、スペクトルの関心領域内の計数の差を描写しており、当該仮想の入り口放射線監視システムは、図4のデータを報告している。
【図6】方法の実施形態のフローチャートを示している。
【図7】バックグラウンド放射線環境において、関係ある電離放射線ソースからの放出を検出するための装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここに記載することは、ある環境において、関係ある電離放射線ソースを検出するための方法の様々な実施形態であり、上記ある環境は、上記の検出を妨害するよう置かれた可能性あるバックグラウンド電離放射線遮蔽物質を含んでいる。ここに使用するように、関係ある電離放射線ソースという用語は、放射線分析システムにおいて、発見する目標となる物質に言及するものである。関係ある電離放射線ソースの例は、「汚い爆弾」を作成するために使用することのできる137Cs及び76Gaである。バックグラウンド電離放射線遮蔽物質は、自然に生じる(バックグラウンド)放射線を吸収し、反射し、さもなくば放射線検出器によるその受信を混乱させる物質に言及するものである。バックグラウンド放射線遮蔽物質の例は、(1)関係ある電離放射線ソースの輸送に使用する乗物の部品(エンジン・ブロック又は貨物室等)、及び(2)乗物に取り付け、関係ある電離放射線ソースの存在を故意に覆い隠すことのできる大きな金属プレートである。乗物の監視入り口等の放射線検査ステーションの動作において、バックグラウンド放射線遮蔽物質が存在し、関係ある電離放射線ソースの検出を妨害しているかどうかは、しばしば容易には明らかでない。そこで、好適実施形態において、関係ある電離放射線ソースを検出するための方法は、そのような遮蔽物質が存在する場合と、任意の有意な広がりに対して遮蔽物質が存在しない場合との両方の状況に対処できるよう設計している。従って、所望の装置及び方法は、可能性あるバックグラウンド電離放射線遮蔽物質を含む環境に適合することが可能であるべきであり、この可能性あるバックグラウンド電離放射線遮蔽物質は、放射線検出器による関係ある電離放射線ソースの検出を妨害するように置くことができるものである。
【0018】
放射性核種は、それらの最高光電ピークで始まり「ゼロ」まで続く、検出される計数の連続スペクトルを発生させる。自然のソースは普通、人工放射性核種が作り出すものよりも高いエネルギーでの放出を発生させる。人工放射性核種による寄与が変化すると、「低」エネルギースペクトル領域内の計数の「高」エネルギー領域内の計数に対する比は、同様に変化する。この比に基づく差は、グロス計数率よりも良好な、人工放射性核種を指し示すものである。人工ソースが存在するとき、「低」スペクトル領域と(重み付けした)上記の「残りの、高い領域」との間の差は増大するであろう。このことは、警報のトリガとして使用可能である。
【0019】
図1は、入り口監視装置等の大きな検出システムにより測定されるであろうような、モデルのバックグラウンド・ガンマ放射線スペクトルを図解している。プロット10は、X軸14に関するガンマ放射線エネルギーの関数として、Y軸12に関する放射線計数を描写している。2つのスペクトル―「オリジナル」バックグラウンド・スペクトル16と、上記の入り口における巨大な物体により生じ得る「降下した」スペクトル18とを示している。プロット10は、ガンマ放射線のバックグラウンド降下を描写しているが、類似の現象は、バックグラウンド放射線として存在する任意の電離放射線で生じている。バックグラウンド・ガンマ放射線低下は、任意の電離放射線のバックグラウンド降下の例として、ここに使用している。
【0020】
警報レベルを設定するための標準的な技法に基づき、遮蔽によってガンマ放射線が減衰する放射性ソースを検出するために、(ソース+遮蔽されたバックグラウンド)マイナス(オリジナルのバックグラウンド)におけるガンマソースからの寄与は、上記の警報をトリガするために所定レベルを超えなければならない。バックグラウンド・スペクトルは遮蔽により降下しているので、上記関係ある電離放射線ソースからの上記のガンマ放射線の寄与は、上記の警報レベルとベースライン降下による計数の損失との両方を超えなければならない。このことは、所望のものよりもはるかに高い効果的警報条件を導いている。例えば、非常に効果的な遮蔽は、上記「ソース+遮蔽されたバックグラウンド」からの総計数を、上記「オリジナルのバックグラウンド」よりも低く低減することが可能であり、それによって放射性ソースをこれらの標準的手段が検出不可能な状態にしている。
【0021】
ここに開示する様々な実施形態に従い、図1に描写したスペクトルの幾つかの特性は、ある定めた特徴(「関心領域」[ROI])と組み合わせて、より効果的な警報を提供することができる。図1において、6つのROIを定めている:ROI(1)20、ROI(2)22、ROI(3)24、ROI(4)26、ROI(5)28、及びROI(6)30である。ROIの各々は、2つのROI境界によって定められる電離放射線スペクトル「帯域」を表している。例えば、ROI(1)20は、Y軸12(ROI境界として作用している)とROI境界32とによって定めている。ROI(2)22は、ROI境界32とROI境界34とによって定めている。あるROIの2つのROI境界の間の間隔(keVで測定される)を、そのROIの「スペクトル幅」と称することにする。あるROIのスペクトル幅は、特定のエネルギー範囲をカバーしている。例えばROI(4)26は、約600keVから約1200KeVまでのエネルギー範囲をカバーしており、従って1200−600=600keVのスペクトル幅を有している。ROI(5)28は、約1200keVから約2400keVまでのエネルギー範囲をカバーしており、従って2400−1200=1200keVのスペクトル幅を有している。
【0022】
再び図1を参照すると、2つのスペクトル、即ちバックグラウンド・スペクトル16と降下したスペクトル18との間の差は、エネルギーが増大するにつれ減少していることに注意されたい。即ち、バックグラウンド・スペクトル16と降下したスペクトル18とのプロットは、エネルギー・レベルが増大するにつれ、次第に互いに接近してゆく。このことは、遮蔽が、より低いエネルギーのガンマ放射線をより高いエネルギーのガンマ放射線よりも効果的に減衰させるために生じるものである。また、図1に示している6つのROI(即ち、ROI(1)20、ROI(2)22、ROI(3)24、ROI(4)26、ROI(5)28、及びROI(6)30)に対し、任意の単一のROI内の計数の合計は、上記の遮蔽の影響によってスペクトルが降下する結果として、バックグラウンド・スペクトル16から降下したスペクトル18に減少していることに注意されたい。
【0023】
図2は、放射線検出設備において、降下したバックグラウンド・スペクトルの影響を補償するために使用できる更なる有用な特徴を図解している。ROI(1)20内の降下したスペクトル18における降下した計数50は、オリジナルのバックグラウンド・スペクトル16におけるバックグラウンド計数52よりも小さいが、降下したスペクトル18のROI(2)22内の降下した計数54はまた、オリジナルのバックグラウンド・スペクトル16におけるバックグラウンド計数56と比較して下方に追跡する傾向があることに注意されたい。そのためROI(2)22は、ROI(1)20に対する効果的なバックグラウンドとして使用できる。同じように、ROI(3)24内の降下した計数58は、降下したスペクトル18において、オリジナルのバックグラウンド・スペクトル16におけるオリジナルのバックグラウンド計数60よりも小さく、ROI(4)26内の降下したスペクトル18における降下した計数62は、オリジナルのバックグラウンド・スペクトル16におけるオリジナルのバックグラウンド計数64よりも小さく、またROI(5)28内の降下したスペクトル18における降下した計数66は、オリジナルのバックグラウンド・スペクトル16におけるオリジナルのバックグラウンド計数68よりも小さい。また、高エネルギーROI(6)30において、降下したスペクトル18の計数はバックグラウンド・スペクトル16の計数よりも少ないが、その差を認めるのは困難な可能性がある。
【0024】
ROI(1)20及びROI(2)22内のオリジナルのバックグラウンド計数52及び56のそれぞれは、数式2に従い、ソースが存在しないときに、それらの差の率がゼロとなるようにスケールすることができる。
【0025】
【数2】

【0026】
ΣROI(1)の項は、バックグラウンド・スペクトル16のROI(1)20内のオリジナルのバックグラウンド計数52の総和に言及するものである。ΣROI(2)の項は、バックグラウンド・スペクトル16のROI(2)22内のバックグラウンド計数56の総和に言及するものである。tの項は、時間間隔である。数式3が示すように、定数cは、ガンマ・ソースが存在せず、入り口内に巨大な物体若しくは乗物が存在しないときに、バックグラウンド・データから求めることができる。
【0027】
【数3】

【0028】
下付き文字「bkgd」は、定数cがオリジナルのバックグラウンド・スペクトル16を使用して計算されることを強調するために使用していることに注意されたい。また、計数する時間間隔を数式3から省いていることに注意されたい。
【0029】
一般的に、数式4は任意の2つのROI(例えば、ROI(i)とROI(i+1))に対して適用している。
【0030】
【数4】

【0031】
ここで、cは数式5で定めている。
【0032】
【数5】

【0033】
上記ROIのための最も好適な範囲は、「低」ガンマ線エネルギー(例えば、0−100keV)においての遮蔽物質によるガンマ放射線の減衰が、「高」ガンマ線エネルギー(例えば、1000−3000keV)においてよりも大きいことに注意することによって求めることができる。隣接したROIの計数率に関する遮蔽の影響を等しくさせ、それによって各々のROI内の上記計数率を同じ量だけ低減させることが望ましい。そのような状況において、2つのROIにおける放射線計数の間の差は、調べる「サンプル」(例えば、関係ある電離放射線ソースを運ぶ可能性のある乗物又は他のコンテナ)内に(もしあれば)存在する放射能にのみ反映し、なぜなら上記ROI内の計数率に対する寄与は、ベースライン降下のため、等しい割合だけ減少するからである。隣接したROIの計数率に関する上記の遮蔽の影響は、異なるスペクトル幅を有するROIエネルギー範囲を思慮深く定めることにより、等しくすることができる。例えば、再び図2を参照すると、ROI(2)22のスペクトル幅72は、ROI(1)20のスペクトル幅72よりも広くなっている。特に、スペクトル幅72及び70は、降下した計数50を差し引いたオリジナルのバックグラウンド計数52が、降下した計数54を差し引いたバックグラウンド計数56に等しくなるように選んでいる。同じように、ROI(3)のスペクトル幅74は、降下した計数54を差し引いたオリジナルのバックグラウンド計数55が、降下した計数58を差し引いたオリジナルのバックグラウンド計数60に等しくなるように選択できる。また、スペクトル幅76及び78は、降下した計数62を差し引いたオリジナルのバックグラウンド計数64が、降下した計数66を差し引いたオリジナルのバックグラウンド計数68に等しくなるように思慮深く選ぶことができる。
【0034】
要約すると、ROIの構成を最適化するために、ROIのスペクトル幅は、エネルギーが増大すると共に増大すべきである。このことは、ガンマ・エネルギーが増大するにつれ上記の減衰の影響は減少し、関心事である放射性ソースの大半のガンマ放出はより低いエネルギーにおいてであり、また(典型的な)スペクトル・チャンネルあたりの計数の数はエネルギーが増大すると共に減少するからである。また、幾つかの実施形態において、ROIは隣接するか又は重なるかのどちらかであることが望ましい。このことは、上記ROIを、2つの構成のうちの1つにおいて定めることを意味している:(1)より低いエネルギーのROIの上方のエネルギー限界は、より高いエネルギーのROIの下方のエネルギー限界と実質的に同じエネルギー・レベルであるか、又は(2)より低いエネルギーのROIの上方のエネルギー限界は、より上方のエネルギーのROIの下方のエネルギー限界よりわずかに高い。ROI構成(1)は図2において図解しており、ROI境界32はROI(1)20の上方の境界であり、またROI(2)22の下方の境界である。同じように、ROI境界34はROI(2)22の上方の境界であり、またROI(3)24の下方の境界である。また、ROI境界80はROI(4)26の上方の境界であり、またROI(5)28の下方の境界である。隣接するか又は重なるかのどちらかであるROIは、境界を接するROIであるといえる。境界を接するROIを有する主な利点は、関係ある放射性ソースに関連するROIの近辺におけるエネルギーが完全に考慮されることである。
【0035】
図3は、ROIに対して先に記載した「構成(2)」を図解しており、より低いエネルギーのROIの上方のエネルギー限界は、より上方のエネルギーのROIの下方のエネルギー限界よりもわずかに高いエネルギー・レベルである。図3において、2つの新たなROI、ROI(7)86及びROI(8)88を定めている。ROI(7)86の上方のエネルギー限界はROI境界90であり、ROI(8)88の下方のエネルギー限界はROI境界92である。ROI境界90は、ROI境界92よりわずかに高いエネルギー・レベル限界である。ROI(7)86及びROI(8)88は重なっているものの、これら2つの放射線エネルギー関心領域は、異なる電離放射線スペクトル帯域を実質的に含んでいる。重なるROIは、もしこの重なりが小さい方のスペクトル帯域のスペクトル幅(keVで)の約50%よりも小さい場合、実質的に異なる電離放射線スペクトル帯を含むものと考えられる。特定のシステムにおいて、全て若しくは幾つかのROIは重なることができるか、又はROIは重ならないことができる。全ての領域に重なる1つのROIを確立することができ、そのようなROI内の放射線の測定値(計数)は、合計計数率を確立するために使用できる。2つ以上のROIが確立している場合の幾つかの実施形態において、例えばROI(1)とROI(2)、次にROI(2)とROI(3)というように、対をなすROIを使用して、計算は隣接領域を通して進むことができる。
【0036】
表1は、放射線監視入り口のための、ここに記載した様々な実施形態の特徴を示していおり、この放射背監視入り口は、関係ある可能性ある放射性ソースに対するコンテナ(例えば、乗物)の検査をするよう構成されたものである。
【0037】
【表1】

【0038】
特定の実施形態においては、放射線スペクトルにおいて2つの関心領域、ROI(1)及びROI(2)を定めている。ROI(1)は、光電ピーク、コンプトン相互作用、又は関係ある電離放射線ソース「S」から検出される他の放出を含むように選んでいる。ROI(2)は、上記関係ある電離放射線ソースからの放射線放出の上側に収まるエネルギー範囲を有するよう選んでいる。その結果として、ソースSが放出する放射線は、ROI(1)内の計数率を増大させるが、ROI(2)内の計数率に影響を与えない。
【0039】
バックグラウンド放射線(のみ)の2つの測定値(B及びB)は、可能性ある放射性ソースの存在、又はこれら測定値に影響を及ぼす何らかの遮蔽の影響なく、ROI(1)及びROI(2)にわたって取られる。較正定数「c」は、B−cB=0となるよう計算する。この条件において、定数cによってBはBに対し「正規化された」といえる。これらの条件は、表1の行(I)に示している。
【0040】
次に、乗物が上記入り口にあるときに、再び2つの測定値が取られ、一方はROI(1)にわたるものであり、もう一方はROI(2)にわたるものである。これら測定値は、「総電離放射線」を表し、それらがバックグラウンド電離放射線と関係ある電離放射線ソース「S」からの何らかの放射線との両方を含むことを意味している。ベースライン降下が起きていない理想的なケース(表1の行IIに示している)に対しては、上記乗物によるバックグラウンドの減衰は存在しない。ROI(1)内の測定値は、上記可能性ある放射性ソースからの、ソースSによってROI(1)に寄与する何らかの計数(S)+ROI(1)内のバックグラウンド放射線のための寄与Bを含んでおり、(S+B)のROI(1)への総寄与を与えている。同じように、測定値はROI(2)にわたって取られ、定数cによって正規化され、その測定値はc・(S+B)となる。ROI(1)内の計数率と、ROI(2)内のそれとの間の差は、数式6として定めている。
【0041】
【数6】

【0042】
先に定めた定数cは、ROI(1)及びROI(2)内のバックグラウンド計数率に関係し、(B−c・B)=0となる。更にまた、ROI(2)は、可能性あるソースSからの放出はROI(1)に(Sとして)寄与するが、ROI(2)への寄与をなさない(即ち、S=0)ように選択した。数式6におけるこれらの値の代入は、数式7をもたらす。
【0043】
【数7】

【0044】
従って、ベースライン降下が起きていない場合のケースにおいて、ROI(2)内の正規化された放射線計数をROI(1)内の放射線計数から減算することは、放射線計数Sをもたらしており、この放射線計数Sは、関係ある可能性ある放射性ソース「S」に起因するROI(1)内の放射線計数に等しい。機器類の不正確さ及び通常の環境変動性は、ソースSが存在しないときでさえも、小さいがゼロではない放射線計数Sを引き起こす可能性がある。ROI(1)内の計数率とROI(2)内のそれとの間の正味の差の大きさが、ソース「S」の存在を指し示すかどうかを求めるために、統計的解析及び閾値制限等の様々な技法を使用することができる。
【0045】
上記のバックグラウンド放射線を減衰する乗物内にある関係ある電離放射線ソース「S」からの放射線の測定値は、表1の行(III)に要約している。これらの測定値は「総電離放射線」を表しており、ROI(1)へのS+B−Aの総合的な寄与に対し、上記の可能性ある放射性ソースからのROI(1)内の何らかの放射線(S)+ROI(1)内のバックグラウンド放射線(B)−ROI(1)内のバックグラウンド放射線の何らかの減衰(A)をそれらが含むことを意味しており、この何らかの減衰(A)は、上記乗物からの遮蔽に起因している。同じように、測定値はROI(2)にわたって取られ、その測定値はS+B−Aである。これら2つの測定値は、定数cを使用して正規化され減算され、そして多少の代数的操作を伴うと、その結果は数式8となる。
【0046】
【数8】

【0047】
(B−c・B)の項は、較正定数c(その項を強制的にゼロにする)の先の計算のために、ゼロと評価される。A及びAはそれぞれ、放射線減衰の性質のために、B及びBの割合である。例えば、上記乗物による遮蔽が上記バックグラウンドを10%だけ低減させた場合、A=0.1・Bであり、A=0.1・Bである。この例において、(A−c・A)の項は0.1・(B−c・B)に等しい。(B−c・B)の項はゼロなので、上記減衰の大きさは無関係である。
【0048】
ゼロと評価されたこれらの項の上記のバックグラウンド差及び上記の減衰差の両方と共に、このことは、(S−c・S)≒Sのままにし、なぜなら、この場合も同様に、上記可能性あるソースSからの放出はROI(1)に対して(Sとして)寄与するが、S≒0なので)ROI(2)に対して寄与をなさないように、ROI(2)を選択したからである。従って、ベースライン降下が起きている場合のケースにおいて、ROI(2)内の正規化された放射線計数をROI(1)内の放射線計数から減算することは、関係ある可能性ある放射性ソース「S」に起因する放射線計数≒Sをもたらす。即ち、上記の計算された差は、ROI(1)内の放射線計数に対する値をもたらし、この値はバックグラウンド減衰のないときに測定したものと実質的に同一である。
【0049】
エネルギーが増大するにつれ放射線減衰は減少するので、等しい減衰は近似であることに注意されたい。特定の実施形態において、ROI範囲は、ROI(1)及びROI(2)内の上記減衰が近似的に等しくなるように選択している。更なるROIを定めた場合、例えばROI(3)に対する範囲は、ROI(2)及びROI(3)内の上記減衰が近似的に等しくなるように選択することができる。上記ROIエネルギー範囲幅を各々の領域内の平均エネルギーに対して好ましくは変動させる理由は、低エネルギーでの減衰の変化がより急速なことである。また、全ての放射線ソースに対し、エネルギーに対しての検出される計数率はエネルギーが増大するにつれ一般的に減少するために、エネルギーが増大するにつれ上記ROI幅を増大させることは測定値の統計を改善しており、上記ROI幅を増大させることは、全てのROI内の計数率を、大きさにおいてより近づけている。
【0050】
入り口監視装置を通過する137Csのソースを含んだ大きな乗物を考慮することによって、実施形態に対する更なる洞察を認めることができる。137Csは、662keVでガンマ放射線を放出する。上記の巨大な乗物は、入り口の検出器からバックグラウンド放射線を遮蔽し、この入り口の検出器が観測する[バックグラウンド+乗物]の計数率を低減させる。上記の乗物内に隠れた137Csのソースによる被検出放射線は、バックグラウンドのソースによる被検出放射線に加算されるが、上記の乗物が実質的なバックグラウンド遮蔽を生じさせている場合、この遮蔽されたバックグラウンド及び137Csのソースからの放射線計数の合計は、空の(遮蔽されていない)入り口から観測されるそれよりも小さい可能性がある。従って、合計計数率を調べることは、バックグラウンド電離放射線降下のため、上記乗物内の何らかの放射線ソースの存在を指し示さず、無効な監視の出来事を引き起こす可能性がある。
【0051】
そのような出来事を克服するため、第1のものは500−800keVのエネルギー範囲をカバーし、隣接した上方のものは800−1400keVのエネルギー範囲をカバーする、2つのROIを定めることができる。上記の乗物による遮蔽は、両方のROI内の上記の計数率の減少を生じさせることが予期されていた。しかし、上記137Csのソースからの放射線は、上記第1ROI、(500−800keV)に対する計数にのみ寄与し、上記隣接した上方のROI(800−1400keV)に対しては寄与しない。そのため、正規化し、上記の予期される減衰の影響を考慮した後の上記第1と第2のROI間の差は、上記の乗物による遮蔽のため上記の総バックグラウンド計数率が低減しているにもかかわらず、137Csの放射線ソースの存在を指し示している。
【0052】
この方法は、中解像度(例えば、NaI(TI)、CsI(Na))と低解像度(プラスティック・シンチレータ)の両方の検出器に対して効果的である。中解像度のスペクトルは適当なROI内の放射線ソース光電ピーク(137Csに対して662keV)からの寄与を含んでいる一方、低解像度検出器のスペクトルは「コンプトン端」を含んでおり、光電ピーク・エネルギー(例えば、137Csに対して662keV)で始まりエネルギーが減少するにつれて「古典的な」上記コンプトン端のエネルギー(137Csに対して476keV)まで上昇する計数が上記ROIに追加される。ここで上記の寄与は、上記スペクトルにおいて記録する最小のエネルギーまで近似的に一定で下がってゆく。
【0053】
特別なケースは、中解像度検出器に対する最高エネルギー範囲ROIに適用できる。最高エネルギーROIにおいてのみ観測するであろうガンマ放射線を放出する放射線ソースは、前述した差の方法によって監視することは不可能であり、なぜなら最高エネルギー範囲ROIの上方のエネルギー側で隣接するROIが存在しないからである。上記検出器の解像度が、ガンマ・エミッタに最高エネルギー範囲ROI内の光電ピークを発生させる場合、このROIと、隣接する下方のエネルギー範囲ROIとの間の差は、これらソースからのガンマ放射線を指し示すものとして使用することができる。上記スペクトルにおいてその出力がはっきりとした光電ピークを作り出さない低解像度検出器では、この方法の実用性は低減する。

以下の例は、仮想の入り口監視テストで測定したスペクトルの事後分析を示しており、上記入り口を通過するステーク・ベッド・トラック内に76Gaのソースがあるものとしている。上記の想定したスペクトルは、最初に単純なグロス計数率(検出されるガンマ放射線の全てのエネルギーでの合計)を使用して調べている。検出対時間の2つの例のプロットを図4に示している。プロット100は、X軸104に関する約30秒の経過時間に対し、Y軸102に関してプロットされる想定したグロス計数率のプロットを示している。時間期間106は、上記のトラックが上記の入り口に入る前の間隔を表し、時間期間108は、上記のトラックが上記の入り口内にある間の「占有間隔」を表し、及び時間間隔110は、上記のトラックが上記の入り口を去った後の時間期間を表している。プロット112は、地上2.5から5mの視野をカバーする「上部ガンマ検出器」からの想定した総計数(0−3000keV)を示し、プロット114は、地上0から2.5mの視野をカバーする「下部ガンマ検出器」からの想定した総計数(0−3000keV)を示している。ベースライン降下116及び118は、上記のトラックのエンジンが上記の入り口を通過するとき、占有時間期間108の始まりで、プロット112及び114それぞれに対して見ることができる。即ち、想定したグロス計数率は、上記の放射線ソースを持つ上記の乗物が上記の入り口に進入したとき、最初は率において減少を示している。しかし、上記のトラックによる遮蔽のために「占有している」と占有していない」と間の率の差が低減したもかかわらず、76Gaのソースは、有意な放射能を含んでいるので、プロット112及び114それぞれの領域120及び122に指し示されているように、検出される計数率は結局、「空の」入り口に対し観測される率よりも大きく増大することが予期される。
【0054】
図5のグラフ130は、上記下方ガンマ検出器及び上方ガンマ検出器それぞれからの想定したデータを表すプロット132及び134を示しており、これらプロット132及び134は、上記のトラック及びソースが上記の入り口を通過するときの、両方の検出器に対する2つの隣接したROI間の差のプロットを示している。ROI間の正味の差はY軸136に関して、対して時間は図4で使用したのと同じX軸104を使用してプロットしているが、約40秒間の想定したデータを示している。上記のトラックが上記の入り口に入る前の時間期間106の間、両方の検出器に対する想定した正味の差の計数は、実質的にゼロのまわりに集中している。更にまた、上記プロットの領域138が指し示しているように、上記のトラックが上記の入り口に入るとき、上記のトラックによる遮蔽からの影響は見込まれていない。しかし、領域140が示すように、上記の放射線ソースが上記の入り口に入った直後、ROIの正味の差において、統計的には有意な増大が見込まれており、ここに記載した方法の利点を示している。統計的分析技法の使用に加え、(1)ピークの検出される正味の差に基づいて警報レベルを設定すること、(2)時間/率アルゴリズムを使用すること、及び(3)検出器「投票」等の他の技法を使用して、上記の正味差の測定値が上記関係ある電離放射線ソース(このケースでは76Ga)の存在を指し示しているかを判定することができる。
【0055】
図6は、関係ある電離放射線ソースの検出の方法の一実施形態を記載するために提供する、フローチャート150を示している。ステップ152において、第1と第2の電離放射線関心領域を選択する。上記第1電離放射線関心領域は、関係ある電離放射線ソースからの検出可能な放出を含むように選択し、上記第2電離放射線関心領域は、上記関係ある電離放射線ソースからの検出可能な放出を実質的に排除するように選択している。ステップ154において、上記第1電離放射線エネルギー関心領域内の第1バックグラウンド電離放射線測定値を取得し、また、上記第2電離放射線エネルギー関心領域内の第2バックグラウンド電離放射線測定値を取得する。ステップ156において、上記第2バックグラウンド電離放射線測定値を上記第1バックグラウンド電離放射線測定値に対し正規化する較正定数を導き出す。それからステップ158において、上記第1電離放射線エネルギー関心領域内の第1合計電離放射線測定値を取得し、また、上記第2電離放射線エネルギー関心領域内の第2合計電離放射線測定値を取得する。ステップ156からの上記較正定数は、ステップ160において、上記第2合計電離放射線測定値を正規化して、正規化された第2合計電離放射線測定値を求めるために使用し、それからステップ162において、この正規化された第2合計電離放射線測定値は、上記第1電離放射線測定値から減算されてそれらの間の正味の差を求め、上記関係ある電離放射線ソースの存在を指し示す。
【0056】
図7は、装置の実施形態の機械的な回路図を図解している。そこに描写しているのは、バックグラウンド放射線環境において、関係ある電離放射線ソースからの放射線を検出するための放射線分析システム200である。放射線分析システム200は、空間放射線に曝される放射線検出器210を備えている。空間放射線という用語は、放射線分析システム200の少なくとも付近の部分における放射線に言及するものである。空間放射線は、自然バックグラウンド放射線と、人工エミッタからの放射線との両方を含んでいる。放射線検出器210は、少なくとも第1と第2のROIを検出するよう構成され、この第1電離放射線関心領域は、上記関係ある電離放射線ソースからの検出可能な放出を含み、この第2電離放射線関心領域は、上記関係ある電離放射線ソースからの実質的な放出を除外している。
【0057】
放射線分析システム200はまた、トリガリング・システム220を備えている。上記空間放射線において上記関係ある電離放射線ソースからの放射線が含まれないことを確実にするよう、放射線分析システム200を取り巻く環境が制御されるときに放射線検出器210が上記バックグラウンド放射線環境を含む空間放射線に曝されると、トリガリング・システム220は第1のデータ取得トリガを発生させる。即ち、この第1のデータ取得トリガは、放射線分析システム200の周りの空間の一部におけるバックグラウンド放射線のみを測定する目的で作動する。トリガリング・システム220はまた、上記の検出器が上記バックグラウンド放射線環境及び遮蔽される可能性のある関係ある電離放射線ソースを含む空間放射線に曝されたときに、第2のデータ取得トリガを発生させるように構成されている。即ち、この第2のデータ取得トリガは、何らかの上記の関係ある放射線ソースの物質の存在に対し、放射線分析システム200の周りの空間のその一部をテストする目的のために作動する。トリガリング・システム220は、手動で若しくは自動で、又は手動又は自動のイベントの組合せによって作動できる。
【0058】
放射線分析システム200は更に、放射線検出器210及びトリガリング・システム220と操作可能に通信するデータ取得システム230を備えている。用語「操作可能に通信する」は、直接間接を問わず1以上の中間要素を介して、2つの要素間で適切な信号を直接的又は間接的に通信することに言及していることを理解されたい。データ取得システム230は、トリガリング・システム220が上記第1のデータ取得トリガを発生させた後に、上記放射線検出器からバックグラウンド放射線測定値のセットを取得するよう構成されている。このバックグラウンド放射線測定値のセットは、上記第1電離放射線関心領域内の第1バックグラウンド電離放射線測定値と、上記第2電離放射線関心領域内の第2バックグラウンド電離放射線測定値とを含んでいる。データ取得システム230は更に、上記トリガリング・システムが上記第2のデータ取得トリガを発生させた後に、放射線検出器210からテスト放射線の測定値を取得するよう構成されている。このテスト放射線の測定値は、上記第1電離放射線関心領域内の第1合計電離放射線測定値と、上記第2電離放射線関心領域内の第2合計電離放射線測定値とを含んでいる。合計電離放射線測定値という用語は、バックグラウンド電離放射線及び関係ある電離放射線ソースからの何らかの放射線を含んでおり、この関係ある電離放射線ソースは、放射線検出器210によって測定される空間放射線に寄与する可能性のあるものである。典型的に、データ取得システム230はスペクトル分析器を組み込んでおり、放射線検出器210からの信号を解釈し、上記第1バックグラウンド電離放射線測定値、上記第2バックグラウンド電離放射線測定値、上記第1合計電離放射線測定値、及び上記第2合計電離放射線測定値を導き出している。
【0059】
放射線分析システム200はまた、データ取得システム230と操作可能に通信するコンピュータ240を備えている。コンピュータ240は、上記第2バックグラウンド電離放射線測定値を上記第1バックグラウンド電離放射線測定値に対し正規化して、較正定数を求めるよう構成されている。また、コンピュータ240は、上記較正定数を適用して上記第2合計電離放射線測定値を正規化し、正規化された第2合計電離放射線測定値を求めるよう構成されており、コンピュータ240は、上記正規化された第2合計電離放射線測定値を第1合計電離放射線測定値から減算してその間の正味の差を求め、上記関係ある電離放射線ソースが存在するかどうかを指し示すように構成されている。コンピュータ240は更に、警報の作動化を保証する信頼水準で、この正味の差が上記関係ある電離放射線ソースの存在を指し示すのかどうかを分析するよう構成することができる。
【0060】
本発明の実施形態の先の記載は、説明及び解説を目的として提示してきたものである。それらは網羅的であることを意図したものではなく、また、開示した正確な形態に本発明を制限することを意図したものではない。上の教示の観点から、変更又は変形が可能であることは明らかである。上記の実施形態は、本発明の原理及びその実際的な適用の最良の説明を提供し、それによって、予期された特定の使用に適するように、様々な実施形態においてそして様々な変更を伴って当業者が本発明を利用することが可能であるようにすることを目指して、選び、記載したものである。全てのそのような変更及び変形は、公平に、合法的に、公正に権利付与される広さに従って解釈されたとき、追加の請求項によって決定される本発明の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境中の関係ある電離放射線ソースを検出するための方法であって、前記環境は、前記検出を妨害するよう置かれた可能性あるバックグラウンド電離放射線遮蔽物質を含み、
(a) 少なくとも第1と第2の電離放射線エネルギー関心領域を選択するステップであって、
前記第1と第2の電離放射線エネルギー関心領域の各々は、あるスペクトル幅を有し、
前記第1電離放射線関心領域は、前記関係ある電離放射線ソースからの検出可能な放出を含むように選択し、
前記第2電離放射線関心領域は、前記関係ある電離放射線ソースからの実質的な放出を有さないエネルギー範囲を有するように選択した、
ステップと、
(b) 前記第1電離放射線エネルギー関心領域内の第1バックグラウンド電離放射線測定値と、前記第2電離放射線エネルギー関心領域内の第2バックグラウンド電離放射線測定値とを取得するステップであって、前記第1バックグラウンド電離放射線測定値及び前記第2バックグラウンド電離放射線測定値の各々は、前記関係ある電離放射線ソースが実質的にないときに取られる、ステップと、
(c) 前記第2バックグラウンド電離放射線測定値を前記第1バックグラウンド電離放射線測定値に対し正規化して、較正定数を求めるステップと、
(d) 前記第1電離放射線エネルギー関心領域内の第1合計電離放射線測定値と、前記第2電離放射線エネルギー関心領域内の第2合計電離放射線測定値とを取得するステップであって、前記第1合計電離放射線測定値及び前記第2合計電離放射線測定値の各々は、可能性ある関係ある放射性ソースが存在し、且つ前記可能性ある関係ある電離放射線ソースの前記検出を妨害するように置かれた可能性あるバックグラウンド電離放射線遮蔽物質が存在するときに取られる、ステップと、
(e) 前記較正定数を適用して前記第2合計電離放射線測定値を正規化し、正規化された第2合計電離放射線測定値を求めるステップと、
(f) 前記正規化された第2合計電離放射線測定値を前記第1合計電離放射線測定値から減算して、前記関係ある電離放射線ソースの存在を指し示すためにそれらの間の正味の差を求めるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記関係ある電離放射線ソースの実質的に放射線ソース光電ピークで前記関係ある電離放射線ソースからの検出可能な放出を含むように、前記第1電離放射線関心領域を選択した、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記関係ある電離放射線ソースに対する実質的にコンプトン端で前記関係ある電離放射線ソースからの検出可能な放出を含むように、前記第1電離放射線関心領域を選択した、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1電離放射線関心領域が、前記第2電離放射線関心領域を占めるエネルギーより低いエネルギーを実質的に含むように、前記第1と第2の電離放射線エネルギー関心領域を更に選択した、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2電離放射線関心領域が、前記第1電離放射線関心領域の前記スペクトル幅よりも大きいスペクトル幅を有するように、前記第1電離放射線エネルギー関心領域の前記スペクトル幅を更に選択した、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1電離放射線関心領域及び前記第2電離放射線関心領域は、境界を接するように選択した、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記関係ある電離放射線ソースの実質的に放射線ソース光電ピークで前記関係ある電離放射線ソースからの検出可能な放出を含むように、前記第1電離放射線関心領域を選択した、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記関係ある電離放射線に対する実質的にコンプトン端で前記関係ある電離放射線ソース検出可能な放出を含むように、前記第1電離放射線関心領域を選択した、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1電離放射線関心領域が、前記第2電離放射線関心領域を占めるエネルギーより低いエネルギーを実質的に含むように、前記第1と前記第2の電離放射線エネルギー関心領域を更に選択した、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記第2電離放射線関心領域が、前記第1電離放射線関心領域の前記スペクトル幅より大きいスペクトル幅を有するように、前記第1電離放射線エネルギー関心領域の前記スペクトル幅を更に選択した、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記第1電離放射線関心領域内の前記可能性あるバックグラウンド放射線遮蔽物資から予期される減衰が、前記第2電離放射線関心領域内の前記可能性あるバックグラウンド放射線遮蔽物質から予期される減衰と大体等しくなるように、前記第1と前記第2の電離放射線エネルギー関心領域を選択した、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記関係ある電離放射線ソースの放射線ソース光電ピークで前記関係ある電離放射線ソースからの検出可能な放出を含むように、前記第1電離放射線関心領域を選択した、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記関係ある電離放射線ソースに対する実質的にコンプトン端で前記関係ある電離放射線ソースからの検出可能な放出を含むように、前記第1電離放射線関心領域を選択した、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1電離放射線関心領域が、前記第2電離放射線関心領域を占めるエネルギーより低いエネルギーを実質的に含むように、前記第1及び前記第2の電離放射線エネルギー関心領域を更に選択した、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第2電離放射線関心領域が、前記第1電離放射線関心領域の前記スペクトル幅よりも大きいスペクトル幅を有するように、前記第1電離放射線エネルギー関心領域の前記スペクトル幅を更に選択した、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1電離放射線関心領域内の前記可能性あるバックグラウンド放射線遮蔽物質から予期される減衰が、前記第2電離放射線関心領域内の前記可能性あるバックグラウンド放射線遮蔽物質から予期される減衰と大体等しいように、前記第1及び前記第2の電離放射線エネルギー関心領域を選択した、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記関係ある電離放射線ソースの実質的に放射線ソース光電ピークで前記関係ある電離放射線ソースからの検出可能な放出を含むように、前記第1電離放射線関心領域を選択した、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記関係ある電離放射線ソースに対する実質的にコンプトン端で前記関係ある電離放射線ソースからの検出可能な放出を含むように、前記第1電離放射線関心領域を選択した、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1電離放射線関心領域が、前記第2電離放射線関心領域を占めるエネルギーより低いエネルギーを実質的に含むように、前記第1及び前記第2の電離放射線エネルギー関心領域を更に選択した、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第2電離放射線関心領域が、前記第1電離放射線関心領域の前記スペクトル幅より大きいスペクトル幅を有するように、前記第1電離放射線エネルギー関心領域の前記スペクトル幅を更に選択した、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
バックグラウンド放射線環境において、関係ある電離放射線ソースからの放射線を検出するための放射線分析システムであって、
空間放射線に曝され、少なくとも第1と第2の電離放射線関心領域を検出するように構成された放射線検出器であって、前記第1電離放射線関心領域は前記関係ある電離放射線ソースからの検出可能な放出を含み、前記第2電離放射線関心領域は前記関係ある電離放射線ソースからの放出を実質的に除外した、前記放射線検出器と、
前記関係ある電離放射線ソースからの放射線のない前記バックグラウンド放射線環境を含む空間放射線に前記検出器が曝されたときに、第1のデータ取得トリガを発生させるよう構成され、前記バックグラウンド放射線環境及び遮蔽される可能性のある関係ある電離放射線ソースを含む空間放射線に前記検出器が曝されたときに、第2のデータ取得トリガを発生させるよう構成されたトリガリング・システムと、
前記放射線検出器及び前記トリガリング・システムと操作可能に通信するデータ取得システムであって、
前記データ取得システムは、前記トリガリング・システムが前記第1のデータ取得トリガを発生させた後に、バックグラウンド放射線測定値を前記放射線検出器から取得するよう構成され、前記バックグラウンド放射線測定値は、前記第1電離放射線関心領域内の第1バックグラウンド電離放射線測定値と、前記第2電離放射線関心領域内の第2バックグラウンド電離放射線測定値とを含み、
前記データ取得システムは、前記トリガリング・システムが前記第2のデータ取得トリガを発生させた後に、テスト放射線の測定値を前記放射線検出器から取得するよう更に構成され、前記テスト放射線の測定値は、前記第1電離放射線関心領域内の第1合計電離放射線測定値と、前記第2電離放射線関心領域内の第2合計電離放射線測定値とを含む、
前記データ取得システムと、
前記データ取得システムと操作可能に通信するコンピュータであって、前記コンピュータは、前記第2バックグラウンド電離放射線測定値を前記第1バックグラウンド電離放射線測定値に対し正規化して較正定数を求めるよう構成され、前記較正定数を適用して前記第2合計電離放射線測定値を正規化し、正規化された第2合計電離放射線測定値を求めるよう構成され、前記正規化された第2合計電離放射線測定値を前記第1合計電離放射線測定値から減算し、前記関係ある電離放射線ソースの存在を指し示すためにそれらの間の正味の差を求めるよう構成された、前記コンピュータと
を備えた放射線分析システム。
【請求項22】
前記放射線検出器は、中解像度放射線検出器を備えた、請求項21に記載の放射線分析システム。
【請求項23】
前記放射線検出器は、低解像度放射線検出器を備えた、請求項21に記載の放射線分析システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2009−541776(P2009−541776A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518432(P2009−518432)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/070613
【国際公開番号】WO2008/060707
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(509000415)ヌクセーフ・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】