説明

静止画の仮想移動方法及びその装置

【課題】運動錯視を客観的に創出する方法及びその装置を提案する。
【解決手段】
本発明は、明度の高い仮想移動体(32)を含む静止絵等の被照射面(3)の一部又は全体を発光塗料で描いて発光部(31)とし、その前記発光部(31)に照射する無限リレー回路で点滅する多数のブラックライト(2)を左右又は前後に列設して、ブラックライト(2)を前記仮想移動体(32)の前方から後方へ或いは上方から下方へ順次点灯消灯して前記発光部(31)へ順次スポット照射し、その発光部(31)で囲繞された仮想移動体(32)が左右又は前後に動くように視認させる静止画の仮想移動方法及びその装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、順次点滅するブラックライトを列設し、発光塗料を一部又は全体に塗布した被照射面に前記ブラックライトで次々に所定方向にスポット照射し、この反作用で運動錯視により静止画中の仮想移動体が前記所定方向とは逆方向に動いているように見せる方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雲が流れる月夜において、月をじっと見ていると月が雲と反対方向に動いているように感じる。これは運動錯視といわれる心理学的現象である。
錯視の理論的解明は、まだ不確定で、その現象の発生や現象の客観的表現は、知覚心理学の分野でも研究課題とされている。
【0003】
通常、絵画や壁画にライトを照射するだけであると、見る者はただそこに絵画や壁画が存在するということしか感じることができない。
また、最初から鮮やかな蛍光塗料を前面的に塗った鮮やかな画面(絵)を見ているだけであると、見慣れる(見飽きる)のか、見た瞬間の刺激(新鮮味)はその後減退する。
【0004】
ブラックライトを利用した従来技術の特許文献を以下に記載する。
【特許文献1】特開平7−334103号公報
【特許文献2】特開平5−294099号公報
【特許文献3】特開平10−319887号公報
【特許文献4】特開2000−149606号公報
【特許文献5】特開2005−000598号公報
【特許文献6】特開2005−219385号公報
【0005】
又、携帯電話のモニター画面上の小さなドッドのようなものであれば、錯視実験のような動的感覚を与えることは推察できるが、一定の面積や大きさのある静止画には動的感覚を持たせる方法及びその装置がないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件の発明者は、絵画で描かれた飛行機などが、その静止画のなかで、飛んで動的に見えることはできないかという運動対比の研究を重ね、本発明に至ったものである。
基本的には、その静止画の画面の大半でなにか他の運動を擬似発生させた場合で、その静止画の視野範囲のうち、多くの要素が一定のそろった運動をした場合、そのように動くものとの脳が支配して動的基準の錯誤が発生し、あたかもその静止画の世界は動くものとして認識される心理を開発背景にしている。
【0007】
車の渋滞時に、隣の車体が前進動すると、運転中の自分の車がバックするような印象を受けることがあり、物理的には動いてはいないがそのように感得される。
本発明は、このような現象である運動錯視を客観的に創出する方法及びその装置を提案する。
【0008】
しかし、月の周りに雲が流れても、すべての状況で月が反対方向に動いているようには見えない。
このように、運動錯視には一定の条件を見出し開発することが必要である。
運動の同化という現象があり、要するに他の「動き」に「心理的につられ」て「動いていると視認」するという錯視がある。
【0009】
しかし川の流れに立つ杭は、いつでも動いているように見えるものでもない。
この現象も、客観的な解析がなされているかどうかは不明である。
【0010】
一方いわゆる「ムーンウオーク」といわれる歩行の仕方は、前方に進むスタイルでバックする歩行法で、人間の顔の方向が前方であるという先入観や前進歩行スタイルで歩行方向が決まるという心理をついたところが面白いもので、一種の運動錯視である。
このように各種の運動錯視を用いれば、実際には静止しているものに、方向錯視や、動的視覚感覚を与えることは可能性がある。
【0011】
運動の知覚と角度などの形の知覚は、脳の別の場所で行われており、その認識はリンクしていないでばらばらに独立に働くとの研究もあり、この不調和を利用することで、動的基準の錯誤が生じ、動的視覚感覚を提供できる可能性がある。
【0012】
このような状況下で、本発明で解決しようとする課題は、静止画において見る者に動的感覚をあたえる方法及びその装置を提供することである。
動的感覚には、所定の方向への移動感に限らず、上下運動や揺動運動の躍動感も含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
蛍光塗料、発光塗料、蓄光塗料等を塗った発光部は、ブラックライトにあたると鮮明に輝く性質がある。
この性質を利用して発光部にブラックライトをあてると、その箇所が鮮明になって、周囲が暗いときはよく視認できる。
静止画のなかに、主役をおきそれを仮想移動体として動的感覚を与えるために、は、その周囲に動的擬似運動を視認させることが必要である。
絵本類で印刷に蛍光塗料を用いたものがあるが、動的擬似運動がないので静止画は当然動かない。
本発明は、動的擬似運動を視認させるために、多数の発光部或いは一面の発光部で形成された被照射面に、複数個列設して備えたブラックライトを順次点灯し消灯し、リレー点滅させ、その点滅の中に囲繞された静止画仮想移動体に方向性と移動感をもたせ、見る者に動的感覚をあたえる方法及びその装置を提案する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、静止画の中で、運動錯視を感得させ、動いているような視認感覚を見る者に与える効果がある。
「海を航行する船」であれば、船の前進航行の動きを視覚させ、「御神輿の景色」であれば、華やいだ躍動感を視覚させ、静止画でも動的感覚や立体感を醸し出すことができる。
動的感覚には、所定の方向への移動感に限らず、上下運動や揺動運動の躍動感も含まれ、静止画の図柄によっては独特な雰囲気のある動きも感得させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
静止画の仮想移動方法は、仮想移動体(32)を含む静止絵等の被照射面(3)の一部又は全体を発光塗料で描いて発光部(31)とし、その前記発光部(31)に照射する無限リレー回路で点滅する多数のブラックライト(2)(2)(2)・・(2)を左右又は前後に列設して、ブラックライト(2)(2)(2)・・(2)を前記仮想移動体(32)の前方から後方へ或いは上方から下方へ順次点灯消灯して前記発光部(31)へ順次スポット照射し、その発光部(31)で囲繞された仮想移動体(32)が左右又は前後に動くように視認させる静止画の仮想移動方法である。
【0016】
前記ブラックライト(2)(2)(2)・・(2)は、リレー点滅の速度を調節する手段を備え、前記仮想移動体(32)と、発光部(31)とは、視野における面積比が1;0,1〜1:10程度であり、前記仮想移動体は(32)はいずれかの方向に進行可能な形状でかつ発光部(31)より明るい明度をもっている。
前記ブラックライト(2)(2)(2)・・(2)は、発光角度・照射角度を調節できることが好ましい。
【0017】
前記ブラックライト(2)(2)(2)・・(2)のリレー点滅の速度は、1秒ごとに次に移動してゆくリレー速度から、100分の1秒ごとに移動してゆくリレー速度まで任意に調整できるように幅をもっており、少なくとも約0,1秒〜0,7秒の視認可能な点滅速度を選択できるようにしている。
【0018】
このように、移動体の運動錯視には、仮想移動体の方向性のある形状、仮想移動体とそれを囲繞する周囲の点滅移動してゆく発光部の大きさ、およびそのリレー点滅速度が相俟ってはじめて、客観的な動的視認感覚が生じる。
【0019】
静止画の仮想移動装置は以下の通りである。
少なくとも一方向から内部を視認することができる中空立体である本体部(1)に、内部壁面に船が海を航行している等の絵、図柄、立体形状、景色、模様等の被照射面(3)を設け、前記本体部(1)の内部壁面の絵等の被照射面(3)は蛍光塗料を一部又は全体に塗布した数個所の発光部(31)を有し、発光部(31)は蛍光塗料を塗布した要所の発光部(31)及びその周囲に多数の発光部(31)を配してなり、中空立体の本体部(1)の内部床面をライトカバー(11)として、前記発光部(31)に照射する白色スポットライト(20)設けるとともに前記各発光部(31)にスポット照射するブラックライト(2)(2)(2)・・を多数個列設し、前記ブラックライト(2)は照射する箇所を速度調節摘み(5)で速度調整自在にリレー回路で順次点滅をするするように回路構成し、前記各ブラックライト(2)は被照射面(3)に合わせてそれぞれ照射方向を定めて、前記各発光部(31)付近に照射して、蛍光反射によって発光部(31)を順次視認強調するものであって、前記本体部(1)の前面には透明板(25)を設け、前記本体部(1)前面から前記被照射面(3)の間に空間を設けて奥行きを感得させて立体感を与えながら被照射面(3)に動的視覚を感得させるブラックライトを用いて動的視覚を与える静止画の仮想移動装置である。
【0020】
このように、前記発光部(31)に無限リレー回路で点滅スポット照射する多数の前記ブラックライト(2)(2)(2)・・(2)を左右又は前後に列設して、順次照射し、その発光部(31)で囲繞された仮想移動体(32)が左右又は前後に動くように視認させる。
【0021】
装置の電源スイッチ(4)は、電池、家庭用電源、太陽光電池のソーラーパネル(22)等を電源とし、ON、OFFのスイッチ、又は点滅速度或いは点滅方向の切替えのON1、ON2とOFFからなるスイッチを設け、本体部(1)に音スイッチ(7)、タイマースイッチ(9)、物体が近づくことのセンサー(10a)、前記センサー(10a)によって作動するセンサースイッチ(10)を設けてもよい。
【0022】
本体部前面の透明板(25)は、UVカットフィルム(26)を貼付することにより、紫外線等の被曝対策になり蛍光塗料の劣化を防ぎ、長期間蛍光効果を持続することができる。
【0023】
被照射面(3)の中で、蛍光塗料で塗布された絵画部分等は塗布された箇所=各発光部(31)のみがブラックライト(2)の照射に反応する性質があるため、ブラックライト(2)で照射された場合蛍光塗料を塗布した箇所=各発光部(31)が浮かび上がる。
しかもその周囲は薄暗く視認上、よく注意喚起ができる。
【0024】
そして、本体部(1)の前面から発光部(31)までの間に空間を設け、その間に設けられている内部床面=ライトカバー(11)に前景を描くことにより奥行きを感得させて立体感をだすこともできる。
この奥行きは、ブラックライト(2)のスポットライトの照射メガホン形を投影するので入射角度維持に必要な空間である。
【0025】
この環境の中で、発光部(31)が移動点滅して流れてゆくような視認を与え、
その反対心理或いは感覚として仮想移動体が反対方向に移動してゆく運動錯視が生じることになる。
【0026】
絵などを表した被照射面(3)においては、画紙に通常絵の具や顔料で描いた箇所と、ブラックライト(2)の照射で鮮明に浮き出る少量の蛍光塗料で描いた箇所と、少量の蛍光塗料で描いた箇所の一部をマスキングして強調したい部分を多量の蛍光塗料で重ね塗りして描いた箇所とがある場合、ブラックライト(2)の照射に反応しない部分、照射に反応し少し浮かび上がる部分、照射に反応し鮮明に浮かび上がる部分を表現することができ、これらの使い分けでより一層実物感をださせることが可能となる。
【0027】
複数備え付けたブラックライト(2)を、順次照射箇所を変えるように所定速度で移動点滅させることにより、発光部(31)の蛍光塗料で塗布した部分がブラックライト(2)の点滅に順次反応し、そこに視点を移動させながらも、白色スポットライト照射や明度が高い要所の仮想移動体(32)が視覚に残り、通常顔料で描いた箇所と蛍光塗料で描いた箇所の視覚差及び、発光部(31)の移動感により見る者に、要所の発光部である仮想移動体(32)及び絵全体に動的感覚を持たせることが可能になる。
【0028】
つまり、ブラックライト(2)を、要所の発光部である仮想移動体(32)の移動を錯視させる方向と逆方向に順次点滅させ、発光部(31)の蛍光塗料で塗布した箇所をブラックライト(2)の照射で反応させ浮き出させることにより、要所の発光部(31)をはじめとして描かれた絵などに移動感・立体感・躍動感をもたせることができるのである。
【0029】
また、今まで漠然と見ていた平均的な絵の中の一部が、新しく現れる蛍光色の変化により、鮮やかさ、華やかさ、輝き、が強調され、次に現れる色彩の期待感の様なものが加わって、「動的感覚」「躍動感」「強調された鮮やかさ」「華やかさ」が出る。
【0030】
さらにリレー点滅速度を変える機構(タイマーIC スイープサイクル)と速度調節摘みを設けることにより、ブラックライト(2)の順次点滅の速度に変化を付けることができる。
この点滅速度の調整が、見る者の感性にマッチした状態では、要所の発光部である仮想移動体(32)が動いて見えるのである。
【0031】
例えば設置されてある絵が航空機の場合、雲=各発光部(31)を蛍光塗料で塗りブラックライト(2)の順次点滅速度を速めに調節すると飛行機の移動速度が速く見える。
描かれている絵が船(要所の発光部)の場合、船に白色スポットライト(20)を当て、一方ブラックライト(2)で、船の前方にある雲から、後方にある波や雲(周囲の発光部)へと、ブラックライト(2)の順次点滅速度を遅めに調節すると、船がゆっくり移動しているように感じることができ、より実物に近い表現が可能である。
仮想移動体(32)の動きは、面積、ブラックライトの数、リレー速度の設定
のほか、絵の構図によっても左右され、さらには絵全体の明るさと仮想移動体(32)のバランスによっても影響される。
【0032】
さらには、発光強弱摘みを設けることにより、ブラックライト(2)の発光の強弱を調節することが可能になり、例えば、設置されている絵が「夜景の景色」の場合は発光を弱めに調節し、設置されている絵が「朝日が昇る景色」のような絵であれば発光を強めに調節し、より本物に近い表現が可能である。
【0033】
音スイッチ(7)は、あらかじめ登録しておいた音や曲を鳴らすための手段を備えており、絵や主役の発光部にあわせたものを登録しておくとより効果的になる。
ブラックライト(2)の点滅に合わせて、飛行機の爆音や船の遠近警笛音を流すことになる。
【0034】
タイマースイッチ(9)は、スイッチを押し設定時間がくると電源スイッチを自動的にON、OFFにする機能である。
【0035】
センサースイッチ(10)は、スイッチを押すとブラックライトの順次点滅が止まりセンサー(10a)が作動し、人などが近づいた際に感知してブラックライト(2)が順次点滅し始める手段を備えている。
【0036】
本発明により、ブラックライトにより次々と変化する絵が、次々と新しい刺激を呼び起こすことが可能となる。
【0037】
本発明で使用するブラックライト(2)は、小型の紫外線LED(発光ダイオード)である。
機能は、ブラックライト蛍光ランプと同じである。
ブラックライト蛍光ランプとは可視光線をカットする濃い青色のフィルターガラスを使用したガラス管内壁に近紫外線放射蛍光体を塗布したライトである。
ブラックライト(2)は、専門分野では近紫外線による励起発光を利用した検査、低波長域特有の屈折率を利用した検査等に使用されている。
一般的な用途は、暗いところで蛍光塗料を反応させ鮮明に浮き出させるため、ディスプレイ、広告などで使用されている。
拡散されにくい比較的暗いライトで、や被照射物や被照射面(3)を照らし、励起発光するものである。
【0038】
このブラックライト(2)を、間隔をおいて複数個備えて、各ブラックライト(2)を順次点滅させて、注意喚起箇所を照射移動させて、要所の発光部(31)に動的印象を与えるのである。
紫外線LED(発光ダイオード)は、ピンポイントのビーム状照射ができる。
【0039】
本発明の被照射面(3)に塗布する発光塗料は、ルミノペースト、マジックルミノペイント、アクリルガッシュ等があり、水性と油性がある。
ブラックライトの照射に反応するのであれば蛍光塗料・蓄光塗料の種類等は問わない。市販のものでは、ターナー(登録商標)やリキテックス(登録商標)がある。
【実施例1】
【0040】
ここで、静止画の仮想移動方法の実施例について説明する。
図1は、本発明に係る静止画の仮想移動方法の原理説明図である。
スポットライト(20)で明度の高い仮想移動体(32)を含む静止絵等の被照射面(3)の一部又は全体を発光塗料で描いて発光部(31)とし、その前記発光部(31)に照射する無限リレー回路で点滅する多数のブラックライト(2)(2)(2)・・(2)を左右に列設して、ブラックライト(2)(2)(2)・・(2)を前記仮想移動体(32)の前方から後方へ順次点灯消灯して前記発光部(31)へ順次スポット照射し、その発光部(31)で囲繞された仮想移動体(32)が前方に動くように視認させる静止画の仮想移動方法を示している。
数箇所の発光部(31)が、順次ブラックライト(2)で次々に位置を変えて浮き上がって視認され、視覚が後方へと流れて行くことで、仮想移動体(32)が前方に進むように視覚される。
そしてこの場合、移動する方向が暗示される仮想移動体(32)の形状と、発光部(31)の面積度、発光部(31)の点滅移動速度が、見る者の感性に合致するときに、その動的視認感覚は客観的な心理現象となる。
【0041】
図2は、本発明に係る静止画の仮想移動方法を示すもので、仮想移動体(32)を戦艦大和とした原理説明図である。
船のように、進行が暗示される形状は、より確かに移動視認感覚が生じる。
【0042】
図3は、本発明に係る静止画の仮想移動方法を示す説明図であり、発光部(31)が、雲や波であることで、更に全体の流れが自然で、移動する感覚に違和感が生じないで、運動錯視が生じることを示している。
る。
【0043】
図4は、雲や波を示す発光部(31)の一連の移動による仮想移動体(32)の動きを示すもので、左から右へ、雲へブラックライト(2)のスポットでリレー点滅させた状態を示す説明図である。
無限リレーで点滅を繰り返すので仮想移動体(32)はどんどん前進してゆくように感得される。
【0044】
図7は、本発明に係る静止画の仮想移動方法の実施例1においてブラックライトの左端が点灯している状態を示す拡大説明図である。
実際は、スポット的に照射できるので、例えば雲が同じ形状であると次の位置での照射ではその雲が移動してゆくように見える。このときには、仮想移動体(32)には白色スポットライト(20)を照射して視認から漏れないようにしている。
【0045】
図8は、同じく実施例1において左端から3番目が点灯している状態を示す説明図である。このときは、白色スポットライト(20)を照射しないでもよい。
図9は、同じく実施例1において左端から5番目が点灯している状態を示す説明図である。雲が移動して行くのと反対に船が前進してゆく。
【0046】
静止画の仮想移動方法は、常時視認できる明度の高い仮想移動体(32)の周囲に蛍光塗料・発光塗料で描いた発光部(31)を配置し、位置の異なる発光部(31)に、無限リレー回路で点滅する多数のブラックライト(2)(2)(2)・・(2)で順次照射して、その発光部(31)で囲繞された仮想移動体(32)が前に動くように視認させるものである。
【0047】
前記ブラックライト(2)(2)(2)・・(2)は、リレー点滅の速度を調節する手段を備えている。
【0048】
又、一方と他方の視認に極端な差があると、運動錯視は起こりにくい。
前記仮想移動体(32)と発光部(31)とは、視野における面積比が1;0,1〜1:10程度までは両者視認が可能である。
好ましくは面積比で1;0,2〜1:5位がよい。
被照射面のテーマにより面積比も自由に変更可能である。
【0049】
前記仮想移動体(32)の形状は、いずれかの方向に進行可能な形状であるという心理的同感を形成している。
【0050】
仮想移動体(32)は見る者に移動しているように見せたい主要部分である。
被照射面(3)はブラックライト(2)の照射があたる面であり、前記被照射面(3)の一部又は全体を発光塗料で描いた部分を発光部(31)としている。
換言すれば、ブラックライト(2)の照射ビームで、発光部(31)が表現されるということになる。
【0051】
複数列設されているブラックライト(2)(2)(2)・・(2)は、電源を入れることによりブラックライトが順次点滅していき、無限リレー回路で右端のブラックライト(2)の点滅が終わったら左端のブラックライト(2)がまた点滅することを繰り返す。
発光角度・照射角度が調節可能であるため調節し、照射したい箇所のみに照射する。
【0052】
仮想移動体(32)は、発光部(31)で囲繞される。
囲繞とはすっかり回りを囲まれている様子を指すが、発光部(31)で囲繞された仮想移動体(32)は、一部のみが囲まれているものでもよく、発光部(31)と仮想移動体(32)の関係により、周囲にあるという意味であり、見る者に仮想移動体(32)が矢印方向に進んでいるような感覚を与えられれば特に囲繞の意味を限定はしない。
【0053】
仮想移動体(32)の進行方向は限定されず、また仮想移動体(32)は、周囲より明るい明度をもっている。
明度は色の鮮やかさの度合いであり、このコントラストでも錯視による効果があり見る者に動的感覚を与える要素になる。
仮想移動体(32)は、常識的に進行や動きができると認識できる形態が採用される。船、自動車、新幹線、ロケット、走る人、御神輿などは、動きが想定できて好ましい。
【0054】
図7〜図9においては、メガホン形にブラックライト(2)が照射しているように描いているが、実際にはその中でも雲=発光部(31)の部分が強く蛍光発光している。ブラックライト(2)のビーム形状も調節できる。
そして、ブラックライト(2)を順次点滅移動させることにより、発光部(31)が蛍光発光しながら移動して行く錯視が起こり、戦艦大和が動いているような視覚感覚を生み出している。
【0055】
ライトカバー(11)にも波が描かれており、仮想移動体(32)=戦艦大和(32)の下部の波=発光部(31)の照射後退により、戦艦大和(32)の前進を感得させる。
静止画の仮想移動方法の実施例1では、前記ブラックライト(2)は照射方向に合うように床面=ライトカバー(11)にそれぞれ孔を形成して半分埋設している。
照射方向を確定し、かつ見る者に奥行き立体感をあたえている。
【0056】
前記ブラックライト(2)は、前記各発光部(31)に対し、入射角度を10度〜45度に設定しており、スポット投影に適する限界角度を維持して設けられる。
なお、仮想移動体(32)=戦艦大和=主役に対しては、電源スイッチ(4)を入れたときにその仮想移動体(32)のみを常時照射する白色スポットライト(20)を設けることも可能である。
【実施例2】
【0057】
次に静止画の仮想移動装置について説明する。
本発明にかかる静止画の仮想移動方法を適用した装置を実施例2として説明する。
図5は、本発明に係る静止画の仮想移動装置の実施例2を示すもので、前方右上方からみた斜視図である。
図6は、本発明に係る静止画の仮想移動装置の実施例2を示すもので、背部右上方からみた斜視図である。
図10は、本発明に係る静止画の仮想移動装置の実施例2を示す一部切開図である。
【0058】
静止画の仮想移動装置は、少なくとも一方向から内部を視認することができる内部がある程度暗くなる中空立体である本体部(1)に設けられる。
【0059】
内部壁面に船が海を航行している等の絵、図柄、立体形状、景色、模様等の被照射面(3)を設け、前記本体部(1)の内部壁面の絵等の被照射面(3)は蛍光塗料を一部又は全体に塗布した数個所の発光部(31)を有し、発光部(31)は蛍光塗料を塗布した要所の発光部である仮想移動体(32)及びその周囲に多数の発光部(31)を配してなり、中空立体の本体部(1)の内部床面をライトカバー(11)として、前記発光部(31)に照射する白色スポットライト(20)設けるとともに前記各発光部(31)にスポット照射するブラックライト(2)(2)(2)・・を多数個列設している。
【0060】
前記ブラックライト(2)は照射する箇所を速度調節摘み(5)で速度調整自在に無限リレー回路で順次点滅をするするように回路構成し、前記各ブラックライト(2)は被照射面(3)に合わせてそれぞれ照射方向を定めて、前記各発光部(31)付近に照射して、蛍光反射によって発光部(31)を順次視認強調する。
ブラックライトの発光角度・照射角度を調節可能にすることで、発光部(31)にスポット照射することもでき、全体的に照射することもできる。
【0061】
前記本体部(1)の前面にはUVカットフィルムを貼った透明板(25)を設け、前記本体部(1)前面から前記被照射面(3)の間に空間を設けて奥行きを感得させて立体感を与えながら、仮想移動体(32)をして動的視覚を感得させる。
【0062】
装置の電源スイッチ(4)は、ON、OFFのスイッチ、又は点滅速度或いは点滅方向の切替えのON1、ON2とOFFからなるスイッチを設け、本体部(1)に音スイッチ(7)、タイマースイッチ(9)、物体が近づくことのセンサー(10a)、前記センサー(10a)によって作動するセンサースイッチ(10)を設けている。
【0063】
装置の電源は、電池、家庭用電源、太陽光電池(ソーラーパネル)ほか限定されない。
屋外に設置されるようなディスプレイであれば、本体部の上部にソーラーパネル(22)を設け電気供給切替スイッチ(24)を設けることで省エネ化することも可能である。
更に本体部(1)を容器部と蓋部とに開閉可能にする構成も提案する。
【0064】
本考案の実施例2に示す本体部(1)は横幅約43cm、高さ約30cm、奥行き約10cmで構成し、ブラックライトを15個設置している。
因みに図3に示す装置は、横幅約17cm、高さ約12cm、奥行き約6cmで構成しブラックライト(2)を6個設置している。
【0065】
リレー速度については、リレー点滅速度を変える機構(タイマーIC、スイープサイクル)を設け、速度調節摘み(5)を設けることにより、設置された発光部(31)にあわせブラックライト(2)の照射速度を変更することが可能である。速度調節摘み(5)は左右にひねることにより、遅速の速度調節ができる。
【0066】
実施例2の、2列のブラックライト(2)は、間隔狭く配置しているが、使用するブラックライト(2)を絵柄によっては変更設定できるほか、緻密な移動で、運動錯視を強く感得させることができる。
発光強弱摘み(6)を設けることにより、設置された発光部(31)にあわせブラックライト(2)の照射強弱を変更することが可能である。
発光強弱摘み(6)は左右にひねることにより発光の強弱調節ができる。
【0067】
音スイッチ(7)は1回押すと音や曲が鳴るようになり、もう一度押すと音が止まるようになっており、電源スイッチをOFFにした場合も音が止まる。
電源スイッチをOFFにした場合、次に電源スイッチが入ったときに音スイッチ(7)を押せば音や曲が鳴るようになっている。
【0068】
タイマースイッチ(9)は、スイッチを押し設定時間がくると電源スイッチを自動的にOFFにする機能である。
タイマースイッチ(9)が一度押されるとカウントをはじめ、もう一度押すとタイマー機能が止まりリセットされ、電源スイッチをOFFにしたときもタイマー機能が止まりリセットされる。
【0069】
センサースイッチ(10)は、スイッチを押すとブラックライト(2)の点滅が止まりセンサー(10a)が作動し、人などが近づいた際にセンサー(10a)が感知してブラックライト(2)が点滅する手段を備えている。
もう一度スイッチを押すとセンサーが止まり、ブラックライトが再び点滅する。
センサーは赤外線、熱、音等のセンサーを使用できる。
以上のような、発光強弱や音発生の機能、タイマー、各種センサーは、商業的なディスプレイの場合は付加価値がある。
【0070】
発光部(31)には蛍光塗料で波・雲の一部を塗布し、船の先頭部分に蛍光塗料を塗布し、波と雲の後退移動照射によって、見る者に戦艦大和が前進しているように動的感覚をあたえることができる。
【0071】
前面は、合成樹脂製の透明板(25)を設けている。
透明板(25)にUVカットフィルム(26)を貼ることにより、紫外線をカットし蛍光塗料の劣化を防止することができる。
【0072】
被照射面(3)である左右サイドの壁面をミラー板(鏡面)とすることにより、テーマによっては動的感覚に加えて幻想的な光景を見る者に与えることができる。
【0073】
以上の実施例はあくまで一例であり使用されるすべての部分で、寸法、素材、色などはこれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の静止画の仮想移動方法及びその装置は、ブラックライトを複数設置し順次点滅させ発光塗料で塗布した被照射面を照射することにより、見る者に静止画仮想移動体が動いているような動的感覚をあたえるものである。
仮想体験ができるもので、装飾 広告 遊戯 教育の分野で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る静止画の仮想移動方法を示す原理説明図である。
【図2】本発明に係る静止画の仮想移動方法を示すもので、仮想移動体を戦艦大和とした原理説明図である。
【図3】本発明に係る静止画の仮想移動方法の実施例1を示す説明図である。
【図4】本発明に係る静止画の仮想移動方法の実施例1を示すもので、雲や波を示す発光部の一連の移動による仮想移動体の動的視認を示すもので、左から右へ、雲へブラックライトのスポットでリレー点滅させた状態を示す説明図である。
【図5】本発明に係る静止画の仮想移動装置の実施例2を示すもので、前方右上方からみた斜視図である。
【図6】本発明に係る静止画の仮想移動装置の実施例2を示すもので、背部右上方からみた斜視図である。
【図7】本発明に係る静止画の仮想移動方法の実施例1においてブラックライトの左端が点灯している状態を示す説明図である。
【図8】同じく実施例1において左端から3番目が点灯している状態を示す説明図である。
【図9】同じく実施例1において左端から5番目が点灯している状態を示す説明図である。
【図10】本発明に係る静止画の仮想移動装置の実施例2を示す一部切開図である。
【符号の説明】
【0076】
1 本体部
2 ブラックライト
20 白色スポットライト
3 被照射面
30 台座
31 発光部
32 仮想移動体〔船:戦艦大和〕
4 電源スイッチ
5 速度調節摘み
6 発光強弱摘み
7 音スイッチ
9 タイマースイッチ
10 センサースイッチ
10a センサー
11 ライトカバー
22 ソーラーパネル
23 取付孔
24 電気供給切替スイッチ
25 透明板
26 UVカットフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想移動体(32)を含む静止絵等の被照射面(3)の一部又は全体を発光塗料で描いて発光部(31)とし、その前記発光部(31)に照射する無限リレー回路で点滅する多数のブラックライト(2)(2)(2)・・(2)を左右又は前後に列設して、ブラックライト(2)(2)(2)・・(2)を前記仮想移動体(32)の前方から後方へ或いは上方から下方へ順次点灯消灯して前記発光部(31)へ順次スポット照射し、その発光部(31)で囲繞された仮想移動体(32)が左右又は前後に動くように視認させる静止画の仮想移動方法。
【請求項2】
前記ブラックライト(2)(2)(2)・・(2)は、順次点灯し消灯するリレー点滅の速度を調節する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の静止画の仮想移動方法。
【請求項3】
前記仮想移動体(32)と、各発光部(31)とは、視野における面積比が1;0,2〜1:5であり、前記仮想移動体は(32)はいずれかの方向に進行可能な形状でかつ発光部(31)より明るい明度をもっていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の静止画の仮想移動方法。
【請求項4】
前記ブラックライト(2)(2)(2)・・(2)は、発光角度・照射角度を調節できることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の静止画の仮想移動方法。
【請求項5】
リレー点滅の速度は、1秒ごとに次に移動してゆくリレー速度から、100分の1秒ごとに移動してゆくリレー速度まで任意に調整できるように幅をもっており、少なくとも約0,1秒〜0,7秒の視認可能な点滅速度を選択できるようにしていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の静止画の仮想移動方法。
【請求項6】
内部を視認することができる中空立体である本体部(1)に、被照射面(3)を設け、前記本体部(1)の内部壁面の被照射面(3)は蛍光塗料を一部又は全体に塗布した数個所の発光部(31)を有し、発光部(31)は蛍光塗料を塗布した要所の発光部(31)及びその周囲に多数の発光部(31)を配してなり、前記要所の発光部(31)に照射する白色スポットライト(20)設けるとともに前記各発光部(31)にスポット照射するブラックライト(2)(2)(2)・・を多数個列設し、前記ブラックライト(2)は照射する箇所を速度調整自在にリレー回路で順次点滅をするするように回路構成し、前記各ブラックライト(2)は被照射面(3)に合わせてそれぞれ照射方向を定めて、前記各発光部(31)に照射して、蛍光反射によって発光部(31)を順次視認強調するものであって、前記本体部(1)の前面には透明板(25)を設け、被照射面(3)に動的視覚を感得させることを特徴とするブラックライトを用いて動的視覚を与える静止画の仮想移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−213286(P2008−213286A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53564(P2007−53564)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(502384071)
【出願人】(507071501)
【Fターム(参考)】