静電噴霧装置
【課題】ケーシングの設置スペースを縮小しながら、開閉蓋を容易に開閉できる静電噴霧装置を提供する。
【解決手段】静電噴霧装置(1)には、上端部に開口(14)を有するケーシング(10)と、ケーシング(10)に収容され且つ液体が貯留された貯留部(71)と、貯留部(71)と連通し且つ先端が開口(14)を通じてケーシング(10)の外部に露出するノズル(72)と、貯留部(71)内の液体をノズル(72)の先端に搬送する液体搬送部(40)と、貯留部(71)内の液体に電圧を印加する電圧印加部(50)と、開口(14)を開閉する開閉蓋(13)とが設けられる。ケーシング(10)の上端部には、水平面に対して傾斜し且つ開口(14)を有する傾斜部(11a)が形成され、開閉蓋(13)は、開口(14)の閉鎖位置と開放位置との間を傾斜部(11a)の傾斜面に沿って上下に変位するように構成される。
【解決手段】静電噴霧装置(1)には、上端部に開口(14)を有するケーシング(10)と、ケーシング(10)に収容され且つ液体が貯留された貯留部(71)と、貯留部(71)と連通し且つ先端が開口(14)を通じてケーシング(10)の外部に露出するノズル(72)と、貯留部(71)内の液体をノズル(72)の先端に搬送する液体搬送部(40)と、貯留部(71)内の液体に電圧を印加する電圧印加部(50)と、開口(14)を開閉する開閉蓋(13)とが設けられる。ケーシング(10)の上端部には、水平面に対して傾斜し且つ開口(14)を有する傾斜部(11a)が形成され、開閉蓋(13)は、開口(14)の閉鎖位置と開放位置との間を傾斜部(11a)の傾斜面に沿って上下に変位するように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ノズルの先端に搬送した液体を電界強度を利用して噴霧させる静電噴霧装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、この種の静電噴霧装置が開示されている。静電噴霧装置は、ケーシングと、ケーシング内に収容されて液体が貯留される容器と、この容器と連通するノズルと、ノズルの先端に電圧を印加する電圧印加部とを備えている。特許文献1の静電噴霧装置では、ゼンマイのバネ力によって容器が加圧され、容器内の液体がノズルの先端に搬送される。この状態で、電圧印加部がノズル先端に電圧を印加することで、ノズル先端から液体が噴霧される。ノズル先端から噴霧された液体は、噴霧対象物に対して電気的に誘引され、この噴霧対象物へ供給される。
【0004】
また、特許文献2には、縦長のケーシングの内部に容器や噴霧ノズル等が収容された噴霧装置が開示されている。この噴霧装置では、ケーシングの上端にノズルを覆うための開閉蓋が設けられている。この開閉蓋には、ノズルを外部に露出させるための開口が形成されている。開閉蓋は、ケーシングに対して回動自在に保持されている。開閉蓋は、開口を通じてノズルを外部へ露出させる開放位置とノズルを覆う閉鎖位置との間を変位する。これにより、ユーザは、噴霧装置の使用時にだけ開閉蓋を開放位置として、ノズルを外部へ露出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−155200号公報
【特許文献2】特開2009−168328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような静電噴霧装置は、設置スペースを縮小するためにも、ケーシングを縦長形状とすることが好ましい。一方、このようにケーシングを縦長に形成すると、例えば机等における静電噴霧装置の設置面積が小さくなる。このような状態で、ユーザが開閉蓋を開閉すると、この際にケーシングに作用する力により、ケーシングの位置がずれたり、ケーシングが転倒してしまったりする虞がある。従って、ユーザは、例えば一方の手でケーシングを保持しながら、他方の手で開閉蓋を開閉する必要があり、開閉蓋の開閉操作が煩雑となってしまう。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケーシングの設置スペースを縮小しながら、開閉蓋を容易に開閉できる静電噴霧装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、上端部に開口(14)を有するケーシング(10)と、該ケーシング(10)に収容され且つ液体が貯留された貯留部(71)と、該貯留部(71)と連通し且つ先端が上記開口(14)を通じてケーシング(10)の外部に露出するノズル(72)と、上記貯留部(71)内の液体を上記ノズル(72)の先端に搬送する液体搬送部(40)と、上記貯留部(71)内の液体に電圧を印加する電圧印加部(50)と、上記開口(14)を開閉する開閉蓋(13)とを備えた静電噴霧装置を対象とする。そして、この静電噴霧装置は、上記ケーシング(10)の上端部に、水平面に対して傾斜し且つ上記開口(14)を有する傾斜部(11a)が形成され、上記開閉蓋(13)は、上記開口(14)の閉鎖位置と開放位置との間を上記傾斜部(11a)の傾斜面に沿って上下に変位するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、ケーシング(10)の上端に傾斜部(11a)が形成され、この傾斜部(11a)にノズル(72)を外部へ露出するための開口(14)が形成される。この開口(14)は、開閉蓋(13)によって開閉される。具体的に、ユーザが、開閉蓋(13)を傾斜面に沿って上方又は下方へ動かすことで、開閉蓋(13)がノズル(72)の閉鎖位置と開放位置との間を変位する。開閉蓋(13)が閉鎖位置に変位すると、開口(14)が閉じられ、開閉蓋(13)が開放位置に変位すると、開口(14)が開放される。
【0010】
本発明では、ユーザによって操作される開閉蓋(13)が、傾斜部(11a)の傾斜面に沿うように上下に変位する。このため、開閉蓋(13)の開閉動作に伴ってケーシング(10)に作用する力が、水平方向と鉛直方向とに分散される。従って、ケーシング(10)に作用する水平方向の力は、例えば開閉蓋を水平方向にスライドさせる構成と比べて小さくなる。その結果、ケーシング(10)の位置がずれたり、ケーシング(10)が転倒したりするのを抑制できる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記開閉蓋(13)は、上記開口(14)の閉鎖位置から上方に変位すると上記開口(14)を開放するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、開閉蓋(13)を傾斜部(11a)の傾斜面に沿って上方に変位させることで、ノズル(72)が開口(14)を通じて外部へ露出される。この際、ケーシング(10)に作用する力は、水平方向と鉛直方向とに分散するため、ケーシング(10)に作用する水平方向の力を低減できる。一方、開閉蓋(13)を傾斜部(11a)の傾斜面に沿って下方に変位させることで、ノズル(72)が開閉蓋(13)によって閉塞される。この際には、開閉蓋(13)の自重を利用することができるため、開閉蓋(13)を容易に閉鎖位置に変位させることができる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、上記ケーシング(10)の内部には、装置全体の重心を上記傾斜部(11a)の下端側方向に偏心させるための重心調整部材(53)が設けられていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明では、ケーシング(10)の内部に重心調整部材(53)が設けられる。この重心調整部材(53)により、静電噴霧装置全体の重心が、傾斜部(11a)の下端側方向に偏心する。これにより、開閉蓋(13)を開放させる動作を行う際、ケーシング(10)の転倒を防止できる。
【0015】
より詳細に、開閉蓋(13)を開放位置に変位させる際には、開閉蓋(13)を閉鎖位置に変位させる場合と比較して、ケーシング(10)に作用する力が大きくなる。開閉蓋(13)の開放時には、開閉蓋(13)を自重に抗して上方に変位させる必要があり、ケーシング(10)に対してユーザの力が過剰に作用し易いからである。従って、開閉蓋(13)の開放時には、ケーシング(10)を傾斜部(11a)の上端側方向へ倒すようなモーメントが大きくなり易い。そこで、本発明では、静電噴霧装置全体の重心を、傾斜部(11a)の下端側方向に偏心させている。これにより、開閉蓋(13)の開放時に上記のようなモーメントが作用しても、ケーシング(10)が傾斜部(11a)の上端側方向へ倒れにくくなる。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、上記傾斜部(11a)の近傍に配置され、噴霧動作を実行させる第1位置と該噴霧動作を停止させる第2位置とに切り換わるスイッチ(15)と、該スイッチ(15)を第2位置に向かって付勢する付勢部(19a)とを備え、上記開閉蓋(13)は、上記開口(14)の開放位置に変位すると、上記付勢部(19a)の付勢力に抗して上記スイッチ(15)を第1位置に押し付けるように構成されていることを特徴とする。
【0017】
第4の発明では、傾斜部(11a)の近傍に、静電噴霧装置の噴霧動作をオン/オフさせるためのスイッチ(15)が設けられる。このスイッチ(15)は、付勢部(19a)によって第2位置に向かって付勢されており、この状態では噴霧動作が停止状態となる。この状態から、開閉蓋(13)が開放位置に変位すると、付勢部(19a)の付勢力に抗してスイッチ(15)が第1位置となる。その結果、噴霧動作が実行されてノズル(72)の先端から液体が噴霧される。以上のように、本発明では、開閉蓋(13)を開放位置に変位させてノズル(72)を外部へ露出させると、噴霧動作が自動的に実行される。
【0018】
一方、このように開閉蓋(13)を付勢力に抗して開放位置に変位させる構成では、開閉蓋(13)を開放させる際、ケーシング(10)を傾斜部(11a)の上端側方向へ転倒させるようなモーメントが一層大きくなる。しかしながら、本発明では、上記の重心調整部材(53)によって静電噴霧装置全体の重心が傾斜部(11a)の下端側に寄っているため、ケーシング(10)の転倒を回避できる。
【0019】
第5の発明は、第2乃至第4のいずれか1つの発明において、上記開閉蓋(13)の下端部には、上記開口(14)の閉鎖位置において該開口(14)の内縁部に当接する突起部(13d)が形成されていることを特徴とする。
【0020】
第5の発明では、開閉蓋(13)の下端部に突起部(13d)が形成される。開閉蓋(13)が自重によって開口(14)の閉鎖位置に変位すると、この突起部(13d)が開口(14)の内縁部に当接する。その結果、開閉蓋(13)を開口(14)の閉鎖位置に確実に保持できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、開閉蓋(13)を傾斜部(11a)の傾斜面に沿って上下に変位させる構造としているので、開閉蓋(13)の開閉時にケーシング(10)に作用する水平方向の力を低減できる。従って、ユーザが、ケーシング(10)を保持せずに開閉蓋(13)を片手で開閉させても、ケーシング(10)の位置が水平方向にずれたり、ケーシング(10)が転倒したりするのを回避できる。その結果、ユーザは開閉蓋(13)を簡便に開閉させることができる。また、このようにしてケーシング(10)の設置状態が安定すると、ケーシング(10)を更に縦長として設置スペースを縮小できる。
【0022】
第2の発明によれば、開閉蓋(13)を上方に変位させて開閉蓋(13)を開放位置とする際、ケーシング(10)の位置がずれたり転倒したりするのを回避できる。また、開閉蓋(13)を閉鎖位置に変位させる際には、開閉蓋(13)の自重を利用してスムーズに開閉蓋(13)を変位させることができる。
【0023】
第3の発明によれば、静電噴霧装置全体の自重を傾斜部(11a)の下端側寄りにずらしているため、開閉蓋(13)を開放させる際、ケーシング(10)が傾斜部(11a)の上端側に向かって転倒してしまうのを確実に回避できる。
【0024】
第4の発明によれば、開閉蓋(13)の開閉操作に連動して噴霧動作を自動的に実行/停止させることができる。第5の発明によれば、開閉蓋(13)の突起部(13d)を開口(14)の内縁部に当接させることで、開閉蓋(13)を閉鎖位置に確実に保持できる。また、ユーザは、この突起部(13d)を指で押し引きしながら開閉蓋(13)をスライドさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施形態に係る静電噴霧装置の全体を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態に係る静電噴霧装置を示す縦断面図である。
【図3】図3は、実施形態に係る静電噴霧装置のシステム構成を示す図である。
【図4】図4は、実施形態に係る静電噴霧装置の上部を示す斜視図である。
【図5】図5は、実施形態に係る静電噴霧装置のトップカバーの内部構造を示す図である。
【図6】図6は、実施形態に係る静電噴霧装置の内部構造を示す斜視図である。
【図7】図7は、実施形態に係る搬送ユニットの構成を示す図である。
【図8】図8は、実施形態に係る噴霧カートリッジを示す縦断面図である。
【図9】図9は、実施形態に係る噴霧カートリッジの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1〜図3に示すように、本実施形態の静電噴霧装置(1)は、事務所等の卓上に設置され、噴霧させる溶液に正、又は負極性の電荷を付与し、ユーザに対して噴霧させるものである。尚、この噴霧させる溶液はヒアルロン酸等を含んだ液体であって、本発明に係る液体を構成している。この静電噴霧装置(1)は、ケーシング(10)と、該ケーシングに着脱自在に装着される噴霧カートリッジ(70)と、ケーシング(10)内に収容される搬送ユニット(40)と、溶液に対して電圧を印加する高電圧電源ユニット(50)と、電源となるアダプタ(2)と、静電噴霧装置(1)の運転制御を行うコントローラ(60)とを備えている。
【0028】
上記ケーシング(10)は、縦長に形成された有底円筒状の部材である。ケーシング(10)は、側方部を形成するデザインカバー(10a)と、底部を形成する底カバー(10b)と、上部を形成するトップカバー(11)とから構成されている。尚、本実施形態では、溶液の噴霧方向を前面側とし、噴霧方向の背後方向を背面側としている。
【0029】
上記トップカバー(11)には、噴霧カートリッジ(70)のノズル(72)を露出させるための噴霧開口部(14)と、該噴霧開口部(14)を開閉するシャッタ(13)とが設けられている。トップカバー(11)及びその近傍の詳細構造については後述する。
【0030】
上記トップカバー(11)とデザインカバー(10a)との間には、周方向に亘って帯状の対向電極(12)が設けられている。この対向電極(12)は、ノズル(72)の先端との間で電界を発生させるためのものである。本実施形態の静電噴霧装置(1)は、ノズル(72)の先端の電荷を帯びた溶液と対向電極(12)の間の電位差で発生する電界によってノズル(72)の先端から吐出される溶液を糸状に絞り込んで液糸(リガメント)を形成している。
【0031】
図6に示すように、上記デザインカバー(10a)の背面側には、上部機械室(28)に対応する高さ位置に、噴霧カートリッジ(70)を着脱させるための背面開口部(16)が形成されている。背面開口部(16)は略矩形状に形成され、その周縁部にはデザインカバー(10a)に着脱自在なリアカバー(17)が取り付けられている。
【0032】
上記ケーシング(10)は、その内部に下側ベース(21)と上側ベース(22)と仕切板(23)とを備えている。まず、下側ベース(21)はケーシング(10)内の底部寄りに設けられている。また、上側ベース(22)はケーシング(10)の長手方向の概ね中央に設けられている。各ベース(21,22)は、水平方向に延びてケーシング(10)内を上下に区画している。また、上記仕切板(23)は、下側ベース(21)と上側ベース(22)との間に亘って設けられ、ケーシング(10)の内部における、下側ベース(21)と上側ベース(22)との間の空間を前後に区画している。
【0033】
上記下側ベース(21)と上側ベース(22)との間には、中央機械室(24)が区画されている。そして、中央機械室(24)は、上述した仕切板(23)により、前面側の第1中央機械室(25)と背面側の第2中央機械室(26)とに区画されている。また、下側ベース(21)の下方に下部機械室(27)が区画され、上側ベース(22)の上方に上部機械室(28)が区画されている。
【0034】
上記下部機械室(27)には、温湿度センサ(29)と、人検知センサ(30)と、USB基板(31)とが収容されている。
【0035】
上記温湿度センサ(29)は、静電噴霧装置(1)の設置された部屋の温湿度を検知するセンサである。この温湿度センサ(29)は、コントローラ(60)に接続され、検知した温湿度データは随時、コントローラ(60)に送られている。
【0036】
上記人検知センサ(30)は、静電噴霧装置(1)の噴霧対象となるユーザの有無を検知するためのものである。人検知センサ(30)は、例えば焦電型赤外線センサに構成されている。人検知センサ(30)は、下部機械室(27)内の前面側に収容されている。そして、人検知センサ(30)は、そのセンサ面をケーシング(10)の開口を介して前面側の斜め上方向を向くように配置されている。また、人検知センサ(30)のセンサ面の下半分は、マスク部材でマスクされている。これにより、検知範囲が静電噴霧装置(1)の前面側の上部に限定され、人の有無の検知精度を向上させることができる。人検知センサ(30)は、コントローラ(60)に接続され、検知データは随時、コントローラ(60)に送られている。
【0037】
上記USB基板(31)は、USB(ユニバーサル・シリアル・バス、以下同じ)のコネクタ(3)が挿入されるものである。このUSB基板(31)は、下部機械室(27)の底部に配置されている。USB基板(31)には、USBのコネクタ(3)が接続される接続部(32)を備えている。
【0038】
本実施形態に係る静電噴霧装置(1)は、家庭用の交流電源(いわゆるコンセント)から供給される100Vの交流電圧を、アダプタ(2)で5Vの直流電圧に変換し、これを搬送ユニット(40)や高電圧電源ユニット(50)の電源として使用している。具体的には、アダプタ(2)と静電噴霧装置(1)とは、USBケーブルを介してUSBのコネクタ(3)が接続部(32)に挿入されることで接続されている。尚、静電噴霧装置(1)の電源としては上記アダプタ(2)に限られず、例えばパソコン等のUSBや自動車中のシガーソケット等を電源としてもよい。
【0039】
上記搬送ユニット(40)は、図3及び図7に示すように、後述する噴霧カートリッジ(70)のタンク(71)内に空気を送り込むことで、空気圧によってタンク(71)内の溶液を押し出すためのものであって、本発明に係る液体搬送部を構成している。上記搬送ユニット(40)は、エアポンプ(41)と圧力センサ(43)と空気管(42)とを備えている。
【0040】
上記エアポンプ(41)は、タンク(71)内に空気を送り込むためポンプである。エアポンプ(41)は、ダイアフラムポンプで構成され、下部機械室(27)内に収容されている。下部機械室(27)内では、エアポンプ(41)は下側ベース(21)の下部にポンプホルダ(図示なし)によって固定されている。
【0041】
上記空気管(42)は、エアポンプ(41)の空気をタンク(71)内に送るためのものである。空気管(42)は、下部機械室(27)から上部機械室(28)まで延びるチューブに構成されている。空気管(42)は、一端がエアポンプ(41)に接続され、他端がタンク(71)の吸入口(79)に接続されている。
【0042】
上記圧力センサ(43)は、エアポンプ(41)から送られる空気の圧力(空気圧)を検出するものである。圧力センサ(43)は、第2中央機械室(26)内に収容された制御基板(61)に設けられ、空気管(42)を流れる空気の圧力を検出するように構成されている。また、圧力センサ(43)はコントローラ(60)に接続されており、検知した圧力データは随時、コントローラ(60)に送られる。
【0043】
上記高電圧電源ユニット(50)は、図3に示すように、電極部材(84)を介してタンク(71)内の溶液に正、又は負極性の高電圧を印加するための電圧印加部を構成している。この高電圧電源ユニット(50)は、出力部(51)と接地部(55)とを備えている。
【0044】
上記出力部(51)は、上記アダプタ(2)から供給された電圧(+5V)を高電圧に昇圧して出力させるためのものである。この出力部(51)は、第1中央機械室(25)内に収容された基板(52)上にトランジスタ(図示なし)、トランス(53)、及びダイオード等の電子機器を備えて構成されている。そして、出力部(51)は、アダプタ(2)から供給された電圧(+5V)を+3kVから+5kVの間、又は−4kVから−7kVの間の高電圧に昇圧させる。なお、トランス(53)は、ケーシング(10)の軸心よりも静電噴霧装置(1)の前側寄りに位置している。このトランス(53)は、静電噴霧装置(1)の全体の重心を前側寄りに偏心させるための重心調整部材を兼ねている。そして、出力部(51)は、その出力端子に高圧ライン(54)の他端が接続され、高圧ライン(54)及び電極部材(84)を介してタンク(71)内の溶液に高電圧が印加されるよう構成されている。尚、出力部(51)は出力させる電圧の極性を切換可能に構成されている。上記接地部(55)は、接地され、出力部(51)に対するグランドを構成している。接地部(55)は、接地ライン(56)を介して対向電極(12)に接続されている。
【0045】
上記コントローラ(60)は、図3に示すように、静電噴霧装置(1)の噴霧動作を制御するものである。コントローラ(60)は、第2中央機械室(26)に収容された制御基板(61)上に電源制御部(62)と搬送制御部(63)とを備えている。そして、コントローラ(60)には、圧力センサ(43)、人検知センサ(30)、温湿度センサ(29)、及び動作スイッチ(15)が接続されている。
【0046】
上記電源制御部(62)は、高電圧電源ユニット(50)から出力される電圧を制御するためのものである。具体的に、電源制御部(62)には、圧力センサ(43)、温湿度センサ(29)、及び人検知センサ(30)の検知データが入力される。そして、電源制御部(62)は、各検知データに基づいて出力部(51)から出力される高電圧を調節する。
【0047】
上記搬送制御部(63)は、搬送ユニット(40)の溶液の搬送力を制御するためのものである。具体的に、搬送制御部(63)には、圧力センサ(43)、温湿度センサ(29)、及び人検知センサ(30)の検知データが入力される。そして、搬送制御部(63)は、各検知データに基づいてエアポンプ(41)から送られる空気の圧力を調節する。
【0048】
上記噴霧カートリッジ(70)は、図8及び図9に示すように、貯留した溶液に電荷を付与して噴霧させるためのものである。この噴霧カートリッジ(70)は、タンク(71)と電極部材(84)とノズル(72)とノズルベース(74)と把手部(86)とで構成され、各構成部材は、分離不能(不可分)に一体形成されている。すなわち、タンク(71)内の溶液が少なくなったり、無くなった場合は、全ての構成部材が同時に交換される。
【0049】
上記タンク(71)は、溶液を内部に貯留するための容器であって、本発明に係る貯留部を構成している。具体的に、タンク(71)は、略矩形状の箱体に形成されて噴霧カートリッジ(70)の下部を構成している。このタンク(71)は、その底部が背面側に向かって下方に傾斜する底板(71b)に形成されている。このため、タンク(71)は背面側に最深部が形成される。これにより、ケーシング(10)の転倒した場合にも、タンク(71)内の溶液は再び最深部に集まる。
【0050】
上記ノズルベース(74)は、ノズル(72)を保持するための部材である。ノズルベース(74)は、略円筒状に形成され、タンク(71)の首部材(71a)を介してタンク(71)と一体に形成されている。上記ノズルベース(74)は、内側凹部(75)と外側凹部(82)とが形成されている。
【0051】
上記内側凹部(75)は、ノズルベース(74)の内側端に形成された凹部である。内側凹部(75)は、底部の中央に軸方向の内側に突出した保持部(77)が形成されている。保持部(77)には、ノズル(72)が挿通される貫通孔(78)が形成されている。そして、保持部(77)の周囲には、チャンバ(81)が取り付けられている。このチャンバ(81)は、内側凹部(75)の内壁(76)と保持部(77)との間の隙間(85)の一部を埋めるものであって、本発明に係るスペーサ部材を構成している。上記隙間(85)の一部をチャンバ(81)が埋めることで、タンク(71)内の溶液が隙間(85)に侵入するのを防止している。また、内側凹部(75)の内壁(76)には、空気管(42)の他端が接続される吸入口(79)が形成されている。この吸入口(79)は本発明に係る空気口を構成している。
【0052】
上記外側凹部(82)は、ノズルベース(74)の外側端に形成された凹部である。外側凹部(82)の内壁(83)は、ノズル(72)の露出部(72b)を覆うように形成されている。そして、外側凹部(82)の底部には、貫通孔(78)と連通する開口が形成されている。尚、この内壁(83)は、本発明に係る包囲部材を構成している。
【0053】
上記外側凹部(82)は、その内壁(83)がノズル(72)の先端と一定の距離を保つことで、ノズル(72)の露出部(72b)の周りに空気層を形成している。この空気層は絶縁材として機能し、これによって、ノズル(72)の先端に安定した電界が形成される。そして、ノズル(72)の先端は外側凹部(82)の内壁(83)の先端から突出するように形成されている。
【0054】
上記ノズル(72)は、柔軟な樹脂製の細管状に形成されたノズルである。ノズル(72)は外径が0.3mmから0.4mmの間に形成され、内径が0.1mmから0.2mmの間で形成されている。ノズル(72)は、ノズルベース(74)の貫通孔(78)に挿通されて取り付けられ、先端が外側凹部(82)の内壁(83)の先端より突出して外部に開口する一方、基端側(72a)は、タンク(71)内の最深部の近傍まで延びて溶液に連通している。このノズル(72)の基端側(72a)は、本発明に係るノズル延伸部を構成している。このノズル(72)の基端側(72a)がタンク(71)内の最深部まで延びることでタンク(71)内の溶液を最後まで使用することができる。
【0055】
上記電極部材(84)は、金属製の棒状に形成された部材である。電極部材(84)は、一端がタンク(71)内の底部に挿通されて溶液内に浸漬されている。また、電極部材(84)の他端は、タンク(71)の外部まで延びて配置され、高圧ライン(54)の一端が接続されている。つまり、電極部材(84)は、高電圧電源ユニット(50)の出力部(51)と電気的に接続され、タンク(71)内の溶液に高電圧を印加するように構成されている。
【0056】
以上のように、噴霧カートリッジ(70)は、エアポンプ(41)の空気によってタンク(71)内の溶液をノズル(72)へ搬送する一方、タンク(71)内の溶液に高電圧を印加してノズル(72)の先端に電界を形成することで、ノズル(72)の先端から溶液を連続して霧状に噴射している。この噴霧カートリッジ(70)は、タンク(71)内の溶液が無くなるか、少なくなると交換される。噴霧カートリッジ(70)を取り出す際は、静電噴霧装置(1)を停止し、ケーシング(10)からリアカバー(17)を取り外し、カートリッジホルダ(70a)ごと噴霧カートリッジ(70)を取り出す。噴霧カートリッジ(70)を取り付ける際は、カートリッジホルダ(70a)に噴霧カートリッジ(70)を取り付けた状態で背面開口部(16)から上部機械室(28)内に収容してケーシング(10)に取り付ける。
【0057】
〈トップカバー及びその近傍の詳細構造について〉
上記トップカバー(11)、及びその近傍の詳細構造について、図4及び図5を参照しながら説明する。トップカバー(11)は、ケーシング(10)の上端に形成されてデザインカバー(10a)の上部の開口端を閉塞している。トップカバー(11)の上面には、背面側から前面側に向かって徐々に下方へ傾斜する傾斜部(11a)が形成されている。つまり、傾斜部(11a)は、仮想水平面に対して斜めに傾斜している。
【0058】
傾斜部(11a)には、ノズル(72)をケーシング(10)の外部に露出させるための噴霧開口部(14)が形成されている。噴霧開口部(14)は、傾斜部(11a)のうち前端側(上端側)に近接している。噴霧開口部(14)は、略正円形状の開口を形成している。
【0059】
トップカバー(11)には、噴霧開口部(14)を開閉する開閉蓋としてのシャッタ(13)が設けられている。シャッタ(13)は、略板状に形成されて、トップカバー(11)内の案内溝(18)に進退自在に保持されている。シャッタ(13)は、略円板状のシャッタ本体(13a)と、該シャッタ本体(13a)の両側の側端に形成される一対のガイド板(13b)と、シャッタ本体(13a)の背面側端部(上方側端部)に形成される突片部(13c)とを有している。シャッタ本体(13a)は、噴霧開口部(14)よりもやや大径となり、噴霧開口部(14)を閉塞可能に形成されている。一対のガイド板(13b)は、案内溝(18)に沿うように前後(上下)に進退自在に構成されている。また、シャッタ本体(13a)の上面の前端部(下端部)には、上方に突出する突起部(13d)が形成されている。突起部(13d)は、シャッタ(13)のスライド方向と直交する方向に延びる縦長且つ上下に扁平な略楕円柱状に形成されている。
【0060】
シャッタ(13)は、噴霧開口部(14)を閉じる閉鎖位置と、噴霧開口部(14)を開放する開放位置との間をスライド自在に構成されている。具体的に、シャッタ(13)は、傾斜部(11a)の傾斜面に沿うように前後方向(上下方向)に変位するように構成されている。シャッタ(13)が下方に変位して閉鎖位置(図5の破線で示す位置)になると、噴霧開口部(14)がシャッタ本体(13a)によって閉塞される。この際、突起部(13d)が、噴霧開口部(14)の内縁の前端部(下端部)と当接する。逆に、シャッタ(13)が上方に変位して開放位置(図5の実線で示す位置)になると、噴霧開口部(14)が開放されてノズル(72)の先端がケーシング(10)の外部に露出される。
【0061】
トップカバー(11)の内部には、動作スイッチ(15)と、該動作スイッチ(15)を付勢するスイッチ付勢部(15a)と、シャッタ(13)を保持するためのシャッタ保持部(19)とを備えている。
【0062】
動作スイッチ(15)は、閉鎖位置のシャッタ(13)の背面側に対応する位置に設けられている。動作スイッチ(15)は、静電噴霧装置(1)の噴霧動作の実行/停止を切り換えるための切換機構である。動作スイッチ(15)は、噴霧動作を実行させるON位置(第1位置)と、噴霧動作を停止させるOFF位置(第2位置)とに切り換わるように構成されている。スイッチ付勢部(15a)は、動作スイッチ(15)を第2位置に付勢するものである。スイッチ付勢部(15a)は、動作スイッチ(15)の下側に設けられている。スイッチ付勢部(15a)は、ばね等の弾性部材で構成されている。シャッタ保持部(19)は、閉鎖位置に変位したシャッタ(13)を、その自重に抗して保持するものである。本実施形態のシャッタ保持部(19)は、閉鎖位置のシャッタ(13)を上方に向かって付勢する板ばね部で構成されている。
【0063】
−運転動作−
上記本実施形態の静電噴霧装置(1)の噴霧動作について説明する。この静電噴霧装置(1)では、溶液が液糸(リガメント)状態で噴出され、液滴に分裂し、拡散されてユーザに到達する。この静電噴霧装置(1)は、噴霧カートリッジ(70)がケーシング(10)内に収容された状態で運転可能な状態となる。
【0064】
噴霧動作が実行されると、エアポンプ(41)は空気管(42)からタンク(71)内に空気を導入する。タンク(71)内では、空気圧が高くなり、タンク(71)内の溶液が空気に押されてノズル(72)の基端側(72a)から内部に流入する。そして、ノズル(72)の内部に流入した溶液はノズル(72)の先端まで搬送される。同時に、コントローラ(60)の電源制御部(62)は、高電圧電源ユニット(50)の出力部(51)から高電圧を出力する。高電圧は、電極部材(84)を介してタンク(71)内の溶液に印加される。
【0065】
ノズル(72)の先端では、電荷を帯びた溶液と対向電極(12)との間に電位差が生じ、電界が発生する。ノズル(72)の先端の溶液は、電界に引っ張られて液糸(リガメント)状態で噴出され、その後、概ね数十μmから300μm程度の大きさの液滴に分裂する。溶液には電荷が付与されているため、分裂によって互いに斥力が生じて液滴は拡散する。拡散した液滴は、グランドとなるユーザに向かって飛散し、ユーザの顔面に付着する。
【0066】
また、コントローラ(60)は、人検知センサ(30)からの検知データに基づいて噴霧動作を制御することもできる。具体的には、人検知センサ(30)がユーザの無しを検知すると、電源制御部(62)は、高電圧の出力を停止する一方、搬送制御部(63)は、エアポンプ(41)の駆動を停止する。さらに、再び人検知センサ(30)がユーザの有りを検知すると、電源制御部(62)は、高電圧の出力を開始する一方、搬送制御部(63)は、エアポンプ(41)の駆動を開始することができる。これによって、ユーザがいない状況での無駄な噴霧を確実に防止することができる。
【0067】
また、コントローラ(60)は、温湿度センサ(29)の検知データに基づいて適切な噴霧動作に制御することもできる。具体的には、部屋の温湿度状態に応じて、噴霧における液糸(リガメント)の形成条件は異なる。ところが、温湿度センサ(29)の検知データに基づいて、電源制御部(62)が高電圧の出力値を調節し、搬送制御部(63)がエアポンプ(41)の空気圧を調節することで適切な液糸(リガメント)を形成することができる。
【0068】
−シャッタの開閉操作−
次いで、静電噴霧装置(1)の使用時におけるシャッタ(13)の開閉操作について説明する。
【0069】
静電噴霧装置(1)は、縦長状のケーシング(10)が机等に設置された状態で使用される。本実施形態の静電噴霧装置(1)では、ユーザがケーシング(10)を保持することなく、片手のみでシャッタ(13)を開閉できるように構成されている。
【0070】
具体的に、静電噴霧装置(1)を使用する際には、ユーザが、閉鎖位置のシャッタ(13)の突起部(13d)に片方の手の指を押し当てる。この状態から、ユーザはシャッタ(13)を傾斜部(11a)に沿うように斜め上方へ押し込む。これにより、シャッタ(13)は、傾斜部(11a)に沿って斜め上方へスライドし、開放位置(図5の実線で示す位置)に変位する。
【0071】
このように、閉鎖位置のシャッタ(13)を開放位置へ変位させる際には、ケーシング(10)に対してユーザの力が作用してしまう。ケーシング(10)は、設置スペースの縮小化を図るために縦長に形成されているため、仮にユーザがケーシング(10)を保持しないと、ケーシング(10)の位置がずれたり、ケーシング(10)が転倒してしまう虞がある。
【0072】
しかしながら、本実施形態における噴霧開口部(14)の開放操作時には、シャッタ(13)が傾斜部(11a)に沿うように斜め上方に変位するため、ケーシング(10)に作用する水平方向の力が小さくなる。シャッタ(13)を開放させる際の斜め上方の力は、水平方向の成分と鉛直方向の成分とに分散されるためである。従って、開放操作時において、ケーシング(10)の位置がずれたり、ケーシング(10)が転倒してしまうことが防止される。
【0073】
更に、本実施形態では、トランス(53)によって静電噴霧装置(1)の重心が前側寄りに偏心している。つまり、静電噴霧装置(1)の重心は、シャッタ(13)を開放させる方向と逆側に寄っている。このため、シャッタ(13)の開放時にケーシング(10)にモーメントが作用しても、ケーシング(10)が背面側に向かって転倒してしまうことを確実に防止することができる。
【0074】
シャッタ(13)が開放位置に変位すると、スイッチ付勢部(15a)の付勢力に抗して動作スイッチ(15)がON位置に切り換えられる。その結果、上述した噴霧動作が実行される。また、シャッタ(13)を開放位置に変位させると、シャッタ保持部(19)がシャッタ(13)をそのままの状態に保持する。よって、シャッタ(13)が自重によって閉鎖位置側に滑り降りてしまうことも防止できる。
【0075】
静電噴霧装置(1)の使用をやめる際には、ユーザが、開放位置のシャッタ(13)の突起部(13d)に片方の手の指を押し当てる。この状態から、ユーザはシャッタ(13)を傾斜部(11a)に沿うように斜め下方へ引き込む。これにより、シャッタ保持部(19)によるシャッタ(13)の保持が解除され、シャッタ(13)は、傾斜部(11a)に沿って斜め下方へスライドする。また、シャッタ(13)による動作スイッチ(15)の押圧が解除されると、動作スイッチ(15)はスイッチ付勢部(15a)の付勢力に従いOFF位置に切り換わる。その結果、噴霧動作が停止される。
【0076】
シャッタ保持部(19)によるシャッタ(13)の保持が解除された後には、シャッタ(13)は自重によって斜め下方に滑り落ちていく。このため、ユーザがシャッタ(13)に過剰な力を作用させなくても、シャッタ(13)は閉鎖位置へと変位する。シャッタ(13)が閉鎖位置に至ると、突起部(13d)が噴霧開口部(14)の内縁部に当接する。従って、シャッタ(13)が閉鎖位置に確実に保持される。
【0077】
以上のように、実施形態における噴霧開口部(14)の閉鎖操作時においても、シャッタ(13)が傾斜部(11a)に沿うように斜め下方に変位するため、ケーシング(10)に作用する水平方向の力が小さくなる。従って、閉鎖操作時においても、ケーシング(10)の位置がずれたり、ケーシング(10)が転倒してしまうことが抑制される。
【0078】
また、閉鎖操作時には、シャッタ(13)が自重によって自然に閉鎖位置に滑るため、ケーシング(10)に対して前側方向に過剰な力が作用することもない。従って、トランス(53)をケーシング(10)の前側寄りに位置させても、閉鎖操作時にケーシング(10)が前側に転倒することはない。
【0079】
−実施形態の効果−
実施形態によれば、シャッタ(13)を傾斜部(11a)の傾斜面に沿って上下に変位させる構造としているので、シャッタ(13)の開閉時にケーシング(10)に作用する水平方向の力を低減できる。従って、ユーザが、ケーシング(10)を保持せずにシャッタ(13)を片手で開閉させても、ケーシング(10)の位置が水平方向にずれたり、ケーシング(10)が転倒したりするのを回避できる。また、ケーシング(10)の安定化を図ることで、ケーシング(10)を縦長に形成することができ、静電噴霧装置(1)の設置スペースを縮小できる。
【0080】
また、ケーシング(10)の内部では、トランス(53)を傾斜部(11a)の前面寄りに配置することで、静電噴霧装置(1)の全体の重心を傾斜部(11a)の下端側方向に偏心させている。このため、シャッタ(13)を片手で開放位置に変位させる際、ケーシング(10)が後方側へ転倒してしまうのを確実に防止できる。
【0081】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0082】
上記実施形態は、シャッタ(13)を斜め上方寄りに変位させると噴霧開口部(14)が開放され、シャッタ(13)を斜め下方寄りに変位させると噴霧開口部(14)が閉鎖される構成としている。しかしながら、例えば噴霧開口部(14)を傾斜部(11a)の上方寄りに形成し、シャッタ(13)を斜め上方に変位させると噴霧開口部(14)が閉鎖され、シャッタ(13)を斜め下方に変位させると噴霧開口部(14)が開放されるようにしてもよい。
【0083】
上記実施形態では、トランス(53)が重心調整部材を兼ねているが、重心調整部材はこれに限らず、他の部材を用いて静電噴霧装置(10)の重心を調整するようにしてもよい。
【0084】
上記実施形態では、噴霧させる溶液としてヒアルロン酸を含んだ溶液を用いたが、本発明は、それに限られず、例えば温泉水やテアニンの水溶液を用いてもよい。その他、カテキンやプロアントシアニジン等の抗酸化剤の水溶液を用いてもよい。
【0085】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上説明したように、本発明は、静電噴霧装置について有用である。
【符号の説明】
【0087】
10 ケーシング
11a 傾斜部
13 シャッタ(開閉蓋)
13d 突起部
14 噴霧開口部(開口)
15 動作スイッチ(スイッチ)
15a スイッチ付勢部(付勢部)
40 搬送ユニット(液体搬送部)
50 高電圧電源ユニット(電圧印加部)
53 トランス(重心調整部材)
71 タンク
72 ノズル
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ノズルの先端に搬送した液体を電界強度を利用して噴霧させる静電噴霧装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、この種の静電噴霧装置が開示されている。静電噴霧装置は、ケーシングと、ケーシング内に収容されて液体が貯留される容器と、この容器と連通するノズルと、ノズルの先端に電圧を印加する電圧印加部とを備えている。特許文献1の静電噴霧装置では、ゼンマイのバネ力によって容器が加圧され、容器内の液体がノズルの先端に搬送される。この状態で、電圧印加部がノズル先端に電圧を印加することで、ノズル先端から液体が噴霧される。ノズル先端から噴霧された液体は、噴霧対象物に対して電気的に誘引され、この噴霧対象物へ供給される。
【0004】
また、特許文献2には、縦長のケーシングの内部に容器や噴霧ノズル等が収容された噴霧装置が開示されている。この噴霧装置では、ケーシングの上端にノズルを覆うための開閉蓋が設けられている。この開閉蓋には、ノズルを外部に露出させるための開口が形成されている。開閉蓋は、ケーシングに対して回動自在に保持されている。開閉蓋は、開口を通じてノズルを外部へ露出させる開放位置とノズルを覆う閉鎖位置との間を変位する。これにより、ユーザは、噴霧装置の使用時にだけ開閉蓋を開放位置として、ノズルを外部へ露出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−155200号公報
【特許文献2】特開2009−168328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような静電噴霧装置は、設置スペースを縮小するためにも、ケーシングを縦長形状とすることが好ましい。一方、このようにケーシングを縦長に形成すると、例えば机等における静電噴霧装置の設置面積が小さくなる。このような状態で、ユーザが開閉蓋を開閉すると、この際にケーシングに作用する力により、ケーシングの位置がずれたり、ケーシングが転倒してしまったりする虞がある。従って、ユーザは、例えば一方の手でケーシングを保持しながら、他方の手で開閉蓋を開閉する必要があり、開閉蓋の開閉操作が煩雑となってしまう。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケーシングの設置スペースを縮小しながら、開閉蓋を容易に開閉できる静電噴霧装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、上端部に開口(14)を有するケーシング(10)と、該ケーシング(10)に収容され且つ液体が貯留された貯留部(71)と、該貯留部(71)と連通し且つ先端が上記開口(14)を通じてケーシング(10)の外部に露出するノズル(72)と、上記貯留部(71)内の液体を上記ノズル(72)の先端に搬送する液体搬送部(40)と、上記貯留部(71)内の液体に電圧を印加する電圧印加部(50)と、上記開口(14)を開閉する開閉蓋(13)とを備えた静電噴霧装置を対象とする。そして、この静電噴霧装置は、上記ケーシング(10)の上端部に、水平面に対して傾斜し且つ上記開口(14)を有する傾斜部(11a)が形成され、上記開閉蓋(13)は、上記開口(14)の閉鎖位置と開放位置との間を上記傾斜部(11a)の傾斜面に沿って上下に変位するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、ケーシング(10)の上端に傾斜部(11a)が形成され、この傾斜部(11a)にノズル(72)を外部へ露出するための開口(14)が形成される。この開口(14)は、開閉蓋(13)によって開閉される。具体的に、ユーザが、開閉蓋(13)を傾斜面に沿って上方又は下方へ動かすことで、開閉蓋(13)がノズル(72)の閉鎖位置と開放位置との間を変位する。開閉蓋(13)が閉鎖位置に変位すると、開口(14)が閉じられ、開閉蓋(13)が開放位置に変位すると、開口(14)が開放される。
【0010】
本発明では、ユーザによって操作される開閉蓋(13)が、傾斜部(11a)の傾斜面に沿うように上下に変位する。このため、開閉蓋(13)の開閉動作に伴ってケーシング(10)に作用する力が、水平方向と鉛直方向とに分散される。従って、ケーシング(10)に作用する水平方向の力は、例えば開閉蓋を水平方向にスライドさせる構成と比べて小さくなる。その結果、ケーシング(10)の位置がずれたり、ケーシング(10)が転倒したりするのを抑制できる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記開閉蓋(13)は、上記開口(14)の閉鎖位置から上方に変位すると上記開口(14)を開放するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、開閉蓋(13)を傾斜部(11a)の傾斜面に沿って上方に変位させることで、ノズル(72)が開口(14)を通じて外部へ露出される。この際、ケーシング(10)に作用する力は、水平方向と鉛直方向とに分散するため、ケーシング(10)に作用する水平方向の力を低減できる。一方、開閉蓋(13)を傾斜部(11a)の傾斜面に沿って下方に変位させることで、ノズル(72)が開閉蓋(13)によって閉塞される。この際には、開閉蓋(13)の自重を利用することができるため、開閉蓋(13)を容易に閉鎖位置に変位させることができる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、上記ケーシング(10)の内部には、装置全体の重心を上記傾斜部(11a)の下端側方向に偏心させるための重心調整部材(53)が設けられていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明では、ケーシング(10)の内部に重心調整部材(53)が設けられる。この重心調整部材(53)により、静電噴霧装置全体の重心が、傾斜部(11a)の下端側方向に偏心する。これにより、開閉蓋(13)を開放させる動作を行う際、ケーシング(10)の転倒を防止できる。
【0015】
より詳細に、開閉蓋(13)を開放位置に変位させる際には、開閉蓋(13)を閉鎖位置に変位させる場合と比較して、ケーシング(10)に作用する力が大きくなる。開閉蓋(13)の開放時には、開閉蓋(13)を自重に抗して上方に変位させる必要があり、ケーシング(10)に対してユーザの力が過剰に作用し易いからである。従って、開閉蓋(13)の開放時には、ケーシング(10)を傾斜部(11a)の上端側方向へ倒すようなモーメントが大きくなり易い。そこで、本発明では、静電噴霧装置全体の重心を、傾斜部(11a)の下端側方向に偏心させている。これにより、開閉蓋(13)の開放時に上記のようなモーメントが作用しても、ケーシング(10)が傾斜部(11a)の上端側方向へ倒れにくくなる。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、上記傾斜部(11a)の近傍に配置され、噴霧動作を実行させる第1位置と該噴霧動作を停止させる第2位置とに切り換わるスイッチ(15)と、該スイッチ(15)を第2位置に向かって付勢する付勢部(19a)とを備え、上記開閉蓋(13)は、上記開口(14)の開放位置に変位すると、上記付勢部(19a)の付勢力に抗して上記スイッチ(15)を第1位置に押し付けるように構成されていることを特徴とする。
【0017】
第4の発明では、傾斜部(11a)の近傍に、静電噴霧装置の噴霧動作をオン/オフさせるためのスイッチ(15)が設けられる。このスイッチ(15)は、付勢部(19a)によって第2位置に向かって付勢されており、この状態では噴霧動作が停止状態となる。この状態から、開閉蓋(13)が開放位置に変位すると、付勢部(19a)の付勢力に抗してスイッチ(15)が第1位置となる。その結果、噴霧動作が実行されてノズル(72)の先端から液体が噴霧される。以上のように、本発明では、開閉蓋(13)を開放位置に変位させてノズル(72)を外部へ露出させると、噴霧動作が自動的に実行される。
【0018】
一方、このように開閉蓋(13)を付勢力に抗して開放位置に変位させる構成では、開閉蓋(13)を開放させる際、ケーシング(10)を傾斜部(11a)の上端側方向へ転倒させるようなモーメントが一層大きくなる。しかしながら、本発明では、上記の重心調整部材(53)によって静電噴霧装置全体の重心が傾斜部(11a)の下端側に寄っているため、ケーシング(10)の転倒を回避できる。
【0019】
第5の発明は、第2乃至第4のいずれか1つの発明において、上記開閉蓋(13)の下端部には、上記開口(14)の閉鎖位置において該開口(14)の内縁部に当接する突起部(13d)が形成されていることを特徴とする。
【0020】
第5の発明では、開閉蓋(13)の下端部に突起部(13d)が形成される。開閉蓋(13)が自重によって開口(14)の閉鎖位置に変位すると、この突起部(13d)が開口(14)の内縁部に当接する。その結果、開閉蓋(13)を開口(14)の閉鎖位置に確実に保持できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、開閉蓋(13)を傾斜部(11a)の傾斜面に沿って上下に変位させる構造としているので、開閉蓋(13)の開閉時にケーシング(10)に作用する水平方向の力を低減できる。従って、ユーザが、ケーシング(10)を保持せずに開閉蓋(13)を片手で開閉させても、ケーシング(10)の位置が水平方向にずれたり、ケーシング(10)が転倒したりするのを回避できる。その結果、ユーザは開閉蓋(13)を簡便に開閉させることができる。また、このようにしてケーシング(10)の設置状態が安定すると、ケーシング(10)を更に縦長として設置スペースを縮小できる。
【0022】
第2の発明によれば、開閉蓋(13)を上方に変位させて開閉蓋(13)を開放位置とする際、ケーシング(10)の位置がずれたり転倒したりするのを回避できる。また、開閉蓋(13)を閉鎖位置に変位させる際には、開閉蓋(13)の自重を利用してスムーズに開閉蓋(13)を変位させることができる。
【0023】
第3の発明によれば、静電噴霧装置全体の自重を傾斜部(11a)の下端側寄りにずらしているため、開閉蓋(13)を開放させる際、ケーシング(10)が傾斜部(11a)の上端側に向かって転倒してしまうのを確実に回避できる。
【0024】
第4の発明によれば、開閉蓋(13)の開閉操作に連動して噴霧動作を自動的に実行/停止させることができる。第5の発明によれば、開閉蓋(13)の突起部(13d)を開口(14)の内縁部に当接させることで、開閉蓋(13)を閉鎖位置に確実に保持できる。また、ユーザは、この突起部(13d)を指で押し引きしながら開閉蓋(13)をスライドさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施形態に係る静電噴霧装置の全体を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態に係る静電噴霧装置を示す縦断面図である。
【図3】図3は、実施形態に係る静電噴霧装置のシステム構成を示す図である。
【図4】図4は、実施形態に係る静電噴霧装置の上部を示す斜視図である。
【図5】図5は、実施形態に係る静電噴霧装置のトップカバーの内部構造を示す図である。
【図6】図6は、実施形態に係る静電噴霧装置の内部構造を示す斜視図である。
【図7】図7は、実施形態に係る搬送ユニットの構成を示す図である。
【図8】図8は、実施形態に係る噴霧カートリッジを示す縦断面図である。
【図9】図9は、実施形態に係る噴霧カートリッジの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1〜図3に示すように、本実施形態の静電噴霧装置(1)は、事務所等の卓上に設置され、噴霧させる溶液に正、又は負極性の電荷を付与し、ユーザに対して噴霧させるものである。尚、この噴霧させる溶液はヒアルロン酸等を含んだ液体であって、本発明に係る液体を構成している。この静電噴霧装置(1)は、ケーシング(10)と、該ケーシングに着脱自在に装着される噴霧カートリッジ(70)と、ケーシング(10)内に収容される搬送ユニット(40)と、溶液に対して電圧を印加する高電圧電源ユニット(50)と、電源となるアダプタ(2)と、静電噴霧装置(1)の運転制御を行うコントローラ(60)とを備えている。
【0028】
上記ケーシング(10)は、縦長に形成された有底円筒状の部材である。ケーシング(10)は、側方部を形成するデザインカバー(10a)と、底部を形成する底カバー(10b)と、上部を形成するトップカバー(11)とから構成されている。尚、本実施形態では、溶液の噴霧方向を前面側とし、噴霧方向の背後方向を背面側としている。
【0029】
上記トップカバー(11)には、噴霧カートリッジ(70)のノズル(72)を露出させるための噴霧開口部(14)と、該噴霧開口部(14)を開閉するシャッタ(13)とが設けられている。トップカバー(11)及びその近傍の詳細構造については後述する。
【0030】
上記トップカバー(11)とデザインカバー(10a)との間には、周方向に亘って帯状の対向電極(12)が設けられている。この対向電極(12)は、ノズル(72)の先端との間で電界を発生させるためのものである。本実施形態の静電噴霧装置(1)は、ノズル(72)の先端の電荷を帯びた溶液と対向電極(12)の間の電位差で発生する電界によってノズル(72)の先端から吐出される溶液を糸状に絞り込んで液糸(リガメント)を形成している。
【0031】
図6に示すように、上記デザインカバー(10a)の背面側には、上部機械室(28)に対応する高さ位置に、噴霧カートリッジ(70)を着脱させるための背面開口部(16)が形成されている。背面開口部(16)は略矩形状に形成され、その周縁部にはデザインカバー(10a)に着脱自在なリアカバー(17)が取り付けられている。
【0032】
上記ケーシング(10)は、その内部に下側ベース(21)と上側ベース(22)と仕切板(23)とを備えている。まず、下側ベース(21)はケーシング(10)内の底部寄りに設けられている。また、上側ベース(22)はケーシング(10)の長手方向の概ね中央に設けられている。各ベース(21,22)は、水平方向に延びてケーシング(10)内を上下に区画している。また、上記仕切板(23)は、下側ベース(21)と上側ベース(22)との間に亘って設けられ、ケーシング(10)の内部における、下側ベース(21)と上側ベース(22)との間の空間を前後に区画している。
【0033】
上記下側ベース(21)と上側ベース(22)との間には、中央機械室(24)が区画されている。そして、中央機械室(24)は、上述した仕切板(23)により、前面側の第1中央機械室(25)と背面側の第2中央機械室(26)とに区画されている。また、下側ベース(21)の下方に下部機械室(27)が区画され、上側ベース(22)の上方に上部機械室(28)が区画されている。
【0034】
上記下部機械室(27)には、温湿度センサ(29)と、人検知センサ(30)と、USB基板(31)とが収容されている。
【0035】
上記温湿度センサ(29)は、静電噴霧装置(1)の設置された部屋の温湿度を検知するセンサである。この温湿度センサ(29)は、コントローラ(60)に接続され、検知した温湿度データは随時、コントローラ(60)に送られている。
【0036】
上記人検知センサ(30)は、静電噴霧装置(1)の噴霧対象となるユーザの有無を検知するためのものである。人検知センサ(30)は、例えば焦電型赤外線センサに構成されている。人検知センサ(30)は、下部機械室(27)内の前面側に収容されている。そして、人検知センサ(30)は、そのセンサ面をケーシング(10)の開口を介して前面側の斜め上方向を向くように配置されている。また、人検知センサ(30)のセンサ面の下半分は、マスク部材でマスクされている。これにより、検知範囲が静電噴霧装置(1)の前面側の上部に限定され、人の有無の検知精度を向上させることができる。人検知センサ(30)は、コントローラ(60)に接続され、検知データは随時、コントローラ(60)に送られている。
【0037】
上記USB基板(31)は、USB(ユニバーサル・シリアル・バス、以下同じ)のコネクタ(3)が挿入されるものである。このUSB基板(31)は、下部機械室(27)の底部に配置されている。USB基板(31)には、USBのコネクタ(3)が接続される接続部(32)を備えている。
【0038】
本実施形態に係る静電噴霧装置(1)は、家庭用の交流電源(いわゆるコンセント)から供給される100Vの交流電圧を、アダプタ(2)で5Vの直流電圧に変換し、これを搬送ユニット(40)や高電圧電源ユニット(50)の電源として使用している。具体的には、アダプタ(2)と静電噴霧装置(1)とは、USBケーブルを介してUSBのコネクタ(3)が接続部(32)に挿入されることで接続されている。尚、静電噴霧装置(1)の電源としては上記アダプタ(2)に限られず、例えばパソコン等のUSBや自動車中のシガーソケット等を電源としてもよい。
【0039】
上記搬送ユニット(40)は、図3及び図7に示すように、後述する噴霧カートリッジ(70)のタンク(71)内に空気を送り込むことで、空気圧によってタンク(71)内の溶液を押し出すためのものであって、本発明に係る液体搬送部を構成している。上記搬送ユニット(40)は、エアポンプ(41)と圧力センサ(43)と空気管(42)とを備えている。
【0040】
上記エアポンプ(41)は、タンク(71)内に空気を送り込むためポンプである。エアポンプ(41)は、ダイアフラムポンプで構成され、下部機械室(27)内に収容されている。下部機械室(27)内では、エアポンプ(41)は下側ベース(21)の下部にポンプホルダ(図示なし)によって固定されている。
【0041】
上記空気管(42)は、エアポンプ(41)の空気をタンク(71)内に送るためのものである。空気管(42)は、下部機械室(27)から上部機械室(28)まで延びるチューブに構成されている。空気管(42)は、一端がエアポンプ(41)に接続され、他端がタンク(71)の吸入口(79)に接続されている。
【0042】
上記圧力センサ(43)は、エアポンプ(41)から送られる空気の圧力(空気圧)を検出するものである。圧力センサ(43)は、第2中央機械室(26)内に収容された制御基板(61)に設けられ、空気管(42)を流れる空気の圧力を検出するように構成されている。また、圧力センサ(43)はコントローラ(60)に接続されており、検知した圧力データは随時、コントローラ(60)に送られる。
【0043】
上記高電圧電源ユニット(50)は、図3に示すように、電極部材(84)を介してタンク(71)内の溶液に正、又は負極性の高電圧を印加するための電圧印加部を構成している。この高電圧電源ユニット(50)は、出力部(51)と接地部(55)とを備えている。
【0044】
上記出力部(51)は、上記アダプタ(2)から供給された電圧(+5V)を高電圧に昇圧して出力させるためのものである。この出力部(51)は、第1中央機械室(25)内に収容された基板(52)上にトランジスタ(図示なし)、トランス(53)、及びダイオード等の電子機器を備えて構成されている。そして、出力部(51)は、アダプタ(2)から供給された電圧(+5V)を+3kVから+5kVの間、又は−4kVから−7kVの間の高電圧に昇圧させる。なお、トランス(53)は、ケーシング(10)の軸心よりも静電噴霧装置(1)の前側寄りに位置している。このトランス(53)は、静電噴霧装置(1)の全体の重心を前側寄りに偏心させるための重心調整部材を兼ねている。そして、出力部(51)は、その出力端子に高圧ライン(54)の他端が接続され、高圧ライン(54)及び電極部材(84)を介してタンク(71)内の溶液に高電圧が印加されるよう構成されている。尚、出力部(51)は出力させる電圧の極性を切換可能に構成されている。上記接地部(55)は、接地され、出力部(51)に対するグランドを構成している。接地部(55)は、接地ライン(56)を介して対向電極(12)に接続されている。
【0045】
上記コントローラ(60)は、図3に示すように、静電噴霧装置(1)の噴霧動作を制御するものである。コントローラ(60)は、第2中央機械室(26)に収容された制御基板(61)上に電源制御部(62)と搬送制御部(63)とを備えている。そして、コントローラ(60)には、圧力センサ(43)、人検知センサ(30)、温湿度センサ(29)、及び動作スイッチ(15)が接続されている。
【0046】
上記電源制御部(62)は、高電圧電源ユニット(50)から出力される電圧を制御するためのものである。具体的に、電源制御部(62)には、圧力センサ(43)、温湿度センサ(29)、及び人検知センサ(30)の検知データが入力される。そして、電源制御部(62)は、各検知データに基づいて出力部(51)から出力される高電圧を調節する。
【0047】
上記搬送制御部(63)は、搬送ユニット(40)の溶液の搬送力を制御するためのものである。具体的に、搬送制御部(63)には、圧力センサ(43)、温湿度センサ(29)、及び人検知センサ(30)の検知データが入力される。そして、搬送制御部(63)は、各検知データに基づいてエアポンプ(41)から送られる空気の圧力を調節する。
【0048】
上記噴霧カートリッジ(70)は、図8及び図9に示すように、貯留した溶液に電荷を付与して噴霧させるためのものである。この噴霧カートリッジ(70)は、タンク(71)と電極部材(84)とノズル(72)とノズルベース(74)と把手部(86)とで構成され、各構成部材は、分離不能(不可分)に一体形成されている。すなわち、タンク(71)内の溶液が少なくなったり、無くなった場合は、全ての構成部材が同時に交換される。
【0049】
上記タンク(71)は、溶液を内部に貯留するための容器であって、本発明に係る貯留部を構成している。具体的に、タンク(71)は、略矩形状の箱体に形成されて噴霧カートリッジ(70)の下部を構成している。このタンク(71)は、その底部が背面側に向かって下方に傾斜する底板(71b)に形成されている。このため、タンク(71)は背面側に最深部が形成される。これにより、ケーシング(10)の転倒した場合にも、タンク(71)内の溶液は再び最深部に集まる。
【0050】
上記ノズルベース(74)は、ノズル(72)を保持するための部材である。ノズルベース(74)は、略円筒状に形成され、タンク(71)の首部材(71a)を介してタンク(71)と一体に形成されている。上記ノズルベース(74)は、内側凹部(75)と外側凹部(82)とが形成されている。
【0051】
上記内側凹部(75)は、ノズルベース(74)の内側端に形成された凹部である。内側凹部(75)は、底部の中央に軸方向の内側に突出した保持部(77)が形成されている。保持部(77)には、ノズル(72)が挿通される貫通孔(78)が形成されている。そして、保持部(77)の周囲には、チャンバ(81)が取り付けられている。このチャンバ(81)は、内側凹部(75)の内壁(76)と保持部(77)との間の隙間(85)の一部を埋めるものであって、本発明に係るスペーサ部材を構成している。上記隙間(85)の一部をチャンバ(81)が埋めることで、タンク(71)内の溶液が隙間(85)に侵入するのを防止している。また、内側凹部(75)の内壁(76)には、空気管(42)の他端が接続される吸入口(79)が形成されている。この吸入口(79)は本発明に係る空気口を構成している。
【0052】
上記外側凹部(82)は、ノズルベース(74)の外側端に形成された凹部である。外側凹部(82)の内壁(83)は、ノズル(72)の露出部(72b)を覆うように形成されている。そして、外側凹部(82)の底部には、貫通孔(78)と連通する開口が形成されている。尚、この内壁(83)は、本発明に係る包囲部材を構成している。
【0053】
上記外側凹部(82)は、その内壁(83)がノズル(72)の先端と一定の距離を保つことで、ノズル(72)の露出部(72b)の周りに空気層を形成している。この空気層は絶縁材として機能し、これによって、ノズル(72)の先端に安定した電界が形成される。そして、ノズル(72)の先端は外側凹部(82)の内壁(83)の先端から突出するように形成されている。
【0054】
上記ノズル(72)は、柔軟な樹脂製の細管状に形成されたノズルである。ノズル(72)は外径が0.3mmから0.4mmの間に形成され、内径が0.1mmから0.2mmの間で形成されている。ノズル(72)は、ノズルベース(74)の貫通孔(78)に挿通されて取り付けられ、先端が外側凹部(82)の内壁(83)の先端より突出して外部に開口する一方、基端側(72a)は、タンク(71)内の最深部の近傍まで延びて溶液に連通している。このノズル(72)の基端側(72a)は、本発明に係るノズル延伸部を構成している。このノズル(72)の基端側(72a)がタンク(71)内の最深部まで延びることでタンク(71)内の溶液を最後まで使用することができる。
【0055】
上記電極部材(84)は、金属製の棒状に形成された部材である。電極部材(84)は、一端がタンク(71)内の底部に挿通されて溶液内に浸漬されている。また、電極部材(84)の他端は、タンク(71)の外部まで延びて配置され、高圧ライン(54)の一端が接続されている。つまり、電極部材(84)は、高電圧電源ユニット(50)の出力部(51)と電気的に接続され、タンク(71)内の溶液に高電圧を印加するように構成されている。
【0056】
以上のように、噴霧カートリッジ(70)は、エアポンプ(41)の空気によってタンク(71)内の溶液をノズル(72)へ搬送する一方、タンク(71)内の溶液に高電圧を印加してノズル(72)の先端に電界を形成することで、ノズル(72)の先端から溶液を連続して霧状に噴射している。この噴霧カートリッジ(70)は、タンク(71)内の溶液が無くなるか、少なくなると交換される。噴霧カートリッジ(70)を取り出す際は、静電噴霧装置(1)を停止し、ケーシング(10)からリアカバー(17)を取り外し、カートリッジホルダ(70a)ごと噴霧カートリッジ(70)を取り出す。噴霧カートリッジ(70)を取り付ける際は、カートリッジホルダ(70a)に噴霧カートリッジ(70)を取り付けた状態で背面開口部(16)から上部機械室(28)内に収容してケーシング(10)に取り付ける。
【0057】
〈トップカバー及びその近傍の詳細構造について〉
上記トップカバー(11)、及びその近傍の詳細構造について、図4及び図5を参照しながら説明する。トップカバー(11)は、ケーシング(10)の上端に形成されてデザインカバー(10a)の上部の開口端を閉塞している。トップカバー(11)の上面には、背面側から前面側に向かって徐々に下方へ傾斜する傾斜部(11a)が形成されている。つまり、傾斜部(11a)は、仮想水平面に対して斜めに傾斜している。
【0058】
傾斜部(11a)には、ノズル(72)をケーシング(10)の外部に露出させるための噴霧開口部(14)が形成されている。噴霧開口部(14)は、傾斜部(11a)のうち前端側(上端側)に近接している。噴霧開口部(14)は、略正円形状の開口を形成している。
【0059】
トップカバー(11)には、噴霧開口部(14)を開閉する開閉蓋としてのシャッタ(13)が設けられている。シャッタ(13)は、略板状に形成されて、トップカバー(11)内の案内溝(18)に進退自在に保持されている。シャッタ(13)は、略円板状のシャッタ本体(13a)と、該シャッタ本体(13a)の両側の側端に形成される一対のガイド板(13b)と、シャッタ本体(13a)の背面側端部(上方側端部)に形成される突片部(13c)とを有している。シャッタ本体(13a)は、噴霧開口部(14)よりもやや大径となり、噴霧開口部(14)を閉塞可能に形成されている。一対のガイド板(13b)は、案内溝(18)に沿うように前後(上下)に進退自在に構成されている。また、シャッタ本体(13a)の上面の前端部(下端部)には、上方に突出する突起部(13d)が形成されている。突起部(13d)は、シャッタ(13)のスライド方向と直交する方向に延びる縦長且つ上下に扁平な略楕円柱状に形成されている。
【0060】
シャッタ(13)は、噴霧開口部(14)を閉じる閉鎖位置と、噴霧開口部(14)を開放する開放位置との間をスライド自在に構成されている。具体的に、シャッタ(13)は、傾斜部(11a)の傾斜面に沿うように前後方向(上下方向)に変位するように構成されている。シャッタ(13)が下方に変位して閉鎖位置(図5の破線で示す位置)になると、噴霧開口部(14)がシャッタ本体(13a)によって閉塞される。この際、突起部(13d)が、噴霧開口部(14)の内縁の前端部(下端部)と当接する。逆に、シャッタ(13)が上方に変位して開放位置(図5の実線で示す位置)になると、噴霧開口部(14)が開放されてノズル(72)の先端がケーシング(10)の外部に露出される。
【0061】
トップカバー(11)の内部には、動作スイッチ(15)と、該動作スイッチ(15)を付勢するスイッチ付勢部(15a)と、シャッタ(13)を保持するためのシャッタ保持部(19)とを備えている。
【0062】
動作スイッチ(15)は、閉鎖位置のシャッタ(13)の背面側に対応する位置に設けられている。動作スイッチ(15)は、静電噴霧装置(1)の噴霧動作の実行/停止を切り換えるための切換機構である。動作スイッチ(15)は、噴霧動作を実行させるON位置(第1位置)と、噴霧動作を停止させるOFF位置(第2位置)とに切り換わるように構成されている。スイッチ付勢部(15a)は、動作スイッチ(15)を第2位置に付勢するものである。スイッチ付勢部(15a)は、動作スイッチ(15)の下側に設けられている。スイッチ付勢部(15a)は、ばね等の弾性部材で構成されている。シャッタ保持部(19)は、閉鎖位置に変位したシャッタ(13)を、その自重に抗して保持するものである。本実施形態のシャッタ保持部(19)は、閉鎖位置のシャッタ(13)を上方に向かって付勢する板ばね部で構成されている。
【0063】
−運転動作−
上記本実施形態の静電噴霧装置(1)の噴霧動作について説明する。この静電噴霧装置(1)では、溶液が液糸(リガメント)状態で噴出され、液滴に分裂し、拡散されてユーザに到達する。この静電噴霧装置(1)は、噴霧カートリッジ(70)がケーシング(10)内に収容された状態で運転可能な状態となる。
【0064】
噴霧動作が実行されると、エアポンプ(41)は空気管(42)からタンク(71)内に空気を導入する。タンク(71)内では、空気圧が高くなり、タンク(71)内の溶液が空気に押されてノズル(72)の基端側(72a)から内部に流入する。そして、ノズル(72)の内部に流入した溶液はノズル(72)の先端まで搬送される。同時に、コントローラ(60)の電源制御部(62)は、高電圧電源ユニット(50)の出力部(51)から高電圧を出力する。高電圧は、電極部材(84)を介してタンク(71)内の溶液に印加される。
【0065】
ノズル(72)の先端では、電荷を帯びた溶液と対向電極(12)との間に電位差が生じ、電界が発生する。ノズル(72)の先端の溶液は、電界に引っ張られて液糸(リガメント)状態で噴出され、その後、概ね数十μmから300μm程度の大きさの液滴に分裂する。溶液には電荷が付与されているため、分裂によって互いに斥力が生じて液滴は拡散する。拡散した液滴は、グランドとなるユーザに向かって飛散し、ユーザの顔面に付着する。
【0066】
また、コントローラ(60)は、人検知センサ(30)からの検知データに基づいて噴霧動作を制御することもできる。具体的には、人検知センサ(30)がユーザの無しを検知すると、電源制御部(62)は、高電圧の出力を停止する一方、搬送制御部(63)は、エアポンプ(41)の駆動を停止する。さらに、再び人検知センサ(30)がユーザの有りを検知すると、電源制御部(62)は、高電圧の出力を開始する一方、搬送制御部(63)は、エアポンプ(41)の駆動を開始することができる。これによって、ユーザがいない状況での無駄な噴霧を確実に防止することができる。
【0067】
また、コントローラ(60)は、温湿度センサ(29)の検知データに基づいて適切な噴霧動作に制御することもできる。具体的には、部屋の温湿度状態に応じて、噴霧における液糸(リガメント)の形成条件は異なる。ところが、温湿度センサ(29)の検知データに基づいて、電源制御部(62)が高電圧の出力値を調節し、搬送制御部(63)がエアポンプ(41)の空気圧を調節することで適切な液糸(リガメント)を形成することができる。
【0068】
−シャッタの開閉操作−
次いで、静電噴霧装置(1)の使用時におけるシャッタ(13)の開閉操作について説明する。
【0069】
静電噴霧装置(1)は、縦長状のケーシング(10)が机等に設置された状態で使用される。本実施形態の静電噴霧装置(1)では、ユーザがケーシング(10)を保持することなく、片手のみでシャッタ(13)を開閉できるように構成されている。
【0070】
具体的に、静電噴霧装置(1)を使用する際には、ユーザが、閉鎖位置のシャッタ(13)の突起部(13d)に片方の手の指を押し当てる。この状態から、ユーザはシャッタ(13)を傾斜部(11a)に沿うように斜め上方へ押し込む。これにより、シャッタ(13)は、傾斜部(11a)に沿って斜め上方へスライドし、開放位置(図5の実線で示す位置)に変位する。
【0071】
このように、閉鎖位置のシャッタ(13)を開放位置へ変位させる際には、ケーシング(10)に対してユーザの力が作用してしまう。ケーシング(10)は、設置スペースの縮小化を図るために縦長に形成されているため、仮にユーザがケーシング(10)を保持しないと、ケーシング(10)の位置がずれたり、ケーシング(10)が転倒してしまう虞がある。
【0072】
しかしながら、本実施形態における噴霧開口部(14)の開放操作時には、シャッタ(13)が傾斜部(11a)に沿うように斜め上方に変位するため、ケーシング(10)に作用する水平方向の力が小さくなる。シャッタ(13)を開放させる際の斜め上方の力は、水平方向の成分と鉛直方向の成分とに分散されるためである。従って、開放操作時において、ケーシング(10)の位置がずれたり、ケーシング(10)が転倒してしまうことが防止される。
【0073】
更に、本実施形態では、トランス(53)によって静電噴霧装置(1)の重心が前側寄りに偏心している。つまり、静電噴霧装置(1)の重心は、シャッタ(13)を開放させる方向と逆側に寄っている。このため、シャッタ(13)の開放時にケーシング(10)にモーメントが作用しても、ケーシング(10)が背面側に向かって転倒してしまうことを確実に防止することができる。
【0074】
シャッタ(13)が開放位置に変位すると、スイッチ付勢部(15a)の付勢力に抗して動作スイッチ(15)がON位置に切り換えられる。その結果、上述した噴霧動作が実行される。また、シャッタ(13)を開放位置に変位させると、シャッタ保持部(19)がシャッタ(13)をそのままの状態に保持する。よって、シャッタ(13)が自重によって閉鎖位置側に滑り降りてしまうことも防止できる。
【0075】
静電噴霧装置(1)の使用をやめる際には、ユーザが、開放位置のシャッタ(13)の突起部(13d)に片方の手の指を押し当てる。この状態から、ユーザはシャッタ(13)を傾斜部(11a)に沿うように斜め下方へ引き込む。これにより、シャッタ保持部(19)によるシャッタ(13)の保持が解除され、シャッタ(13)は、傾斜部(11a)に沿って斜め下方へスライドする。また、シャッタ(13)による動作スイッチ(15)の押圧が解除されると、動作スイッチ(15)はスイッチ付勢部(15a)の付勢力に従いOFF位置に切り換わる。その結果、噴霧動作が停止される。
【0076】
シャッタ保持部(19)によるシャッタ(13)の保持が解除された後には、シャッタ(13)は自重によって斜め下方に滑り落ちていく。このため、ユーザがシャッタ(13)に過剰な力を作用させなくても、シャッタ(13)は閉鎖位置へと変位する。シャッタ(13)が閉鎖位置に至ると、突起部(13d)が噴霧開口部(14)の内縁部に当接する。従って、シャッタ(13)が閉鎖位置に確実に保持される。
【0077】
以上のように、実施形態における噴霧開口部(14)の閉鎖操作時においても、シャッタ(13)が傾斜部(11a)に沿うように斜め下方に変位するため、ケーシング(10)に作用する水平方向の力が小さくなる。従って、閉鎖操作時においても、ケーシング(10)の位置がずれたり、ケーシング(10)が転倒してしまうことが抑制される。
【0078】
また、閉鎖操作時には、シャッタ(13)が自重によって自然に閉鎖位置に滑るため、ケーシング(10)に対して前側方向に過剰な力が作用することもない。従って、トランス(53)をケーシング(10)の前側寄りに位置させても、閉鎖操作時にケーシング(10)が前側に転倒することはない。
【0079】
−実施形態の効果−
実施形態によれば、シャッタ(13)を傾斜部(11a)の傾斜面に沿って上下に変位させる構造としているので、シャッタ(13)の開閉時にケーシング(10)に作用する水平方向の力を低減できる。従って、ユーザが、ケーシング(10)を保持せずにシャッタ(13)を片手で開閉させても、ケーシング(10)の位置が水平方向にずれたり、ケーシング(10)が転倒したりするのを回避できる。また、ケーシング(10)の安定化を図ることで、ケーシング(10)を縦長に形成することができ、静電噴霧装置(1)の設置スペースを縮小できる。
【0080】
また、ケーシング(10)の内部では、トランス(53)を傾斜部(11a)の前面寄りに配置することで、静電噴霧装置(1)の全体の重心を傾斜部(11a)の下端側方向に偏心させている。このため、シャッタ(13)を片手で開放位置に変位させる際、ケーシング(10)が後方側へ転倒してしまうのを確実に防止できる。
【0081】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0082】
上記実施形態は、シャッタ(13)を斜め上方寄りに変位させると噴霧開口部(14)が開放され、シャッタ(13)を斜め下方寄りに変位させると噴霧開口部(14)が閉鎖される構成としている。しかしながら、例えば噴霧開口部(14)を傾斜部(11a)の上方寄りに形成し、シャッタ(13)を斜め上方に変位させると噴霧開口部(14)が閉鎖され、シャッタ(13)を斜め下方に変位させると噴霧開口部(14)が開放されるようにしてもよい。
【0083】
上記実施形態では、トランス(53)が重心調整部材を兼ねているが、重心調整部材はこれに限らず、他の部材を用いて静電噴霧装置(10)の重心を調整するようにしてもよい。
【0084】
上記実施形態では、噴霧させる溶液としてヒアルロン酸を含んだ溶液を用いたが、本発明は、それに限られず、例えば温泉水やテアニンの水溶液を用いてもよい。その他、カテキンやプロアントシアニジン等の抗酸化剤の水溶液を用いてもよい。
【0085】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上説明したように、本発明は、静電噴霧装置について有用である。
【符号の説明】
【0087】
10 ケーシング
11a 傾斜部
13 シャッタ(開閉蓋)
13d 突起部
14 噴霧開口部(開口)
15 動作スイッチ(スイッチ)
15a スイッチ付勢部(付勢部)
40 搬送ユニット(液体搬送部)
50 高電圧電源ユニット(電圧印加部)
53 トランス(重心調整部材)
71 タンク
72 ノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に開口(14)を有するケーシング(10)と、該ケーシング(10)に収容され且つ液体が貯留された貯留部(71)と、該貯留部(71)と連通し且つ先端が上記開口(14)を通じてケーシング(10)の外部に露出するノズル(72)と、上記貯留部(71)内の液体を上記ノズル(72)の先端に搬送する液体搬送部(40)と、上記貯留部(71)内の液体に電圧を印加する電圧印加部(50)と、上記開口(14)を開閉する開閉蓋(13)とを備えた静電噴霧装置であって、
上記ケーシング(10)の上端部には、水平面に対して傾斜し且つ上記開口(14)を有する傾斜部(11a)が形成され、
上記開閉蓋(13)は、上記開口(14)の閉鎖位置と開放位置との間を上記傾斜部(11a)の傾斜面に沿って上下に変位するように構成されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記開閉蓋(13)は、上記開口(14)の閉鎖位置から上方に変位すると上記開口(14)を開放するように構成されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記ケーシング(10)の内部には、装置全体の重心を上記傾斜部(11a)の下端側方向に偏心させるための重心調整部材(53)が設けられていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記傾斜部(11a)の近傍に配置され、噴霧動作を実行させる第1位置と該噴霧動作を停止させる第2位置とに切り換わるスイッチ(15)と、
上記スイッチ(15)を第2位置に向かって付勢する付勢部(19a)とを備え、
上記開閉蓋(13)は、上記開口(14)の開放位置に変位すると、上記付勢部(19a)の付勢力に抗して上記スイッチ(15)を第1位置に押し付けるように構成されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1つにおいて、
上記開閉蓋(13)の下端部には、上記開口(14)の閉鎖位置において該開口(14)の内縁部に当接する突起部(13d)が形成されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項1】
上端部に開口(14)を有するケーシング(10)と、該ケーシング(10)に収容され且つ液体が貯留された貯留部(71)と、該貯留部(71)と連通し且つ先端が上記開口(14)を通じてケーシング(10)の外部に露出するノズル(72)と、上記貯留部(71)内の液体を上記ノズル(72)の先端に搬送する液体搬送部(40)と、上記貯留部(71)内の液体に電圧を印加する電圧印加部(50)と、上記開口(14)を開閉する開閉蓋(13)とを備えた静電噴霧装置であって、
上記ケーシング(10)の上端部には、水平面に対して傾斜し且つ上記開口(14)を有する傾斜部(11a)が形成され、
上記開閉蓋(13)は、上記開口(14)の閉鎖位置と開放位置との間を上記傾斜部(11a)の傾斜面に沿って上下に変位するように構成されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記開閉蓋(13)は、上記開口(14)の閉鎖位置から上方に変位すると上記開口(14)を開放するように構成されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記ケーシング(10)の内部には、装置全体の重心を上記傾斜部(11a)の下端側方向に偏心させるための重心調整部材(53)が設けられていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記傾斜部(11a)の近傍に配置され、噴霧動作を実行させる第1位置と該噴霧動作を停止させる第2位置とに切り換わるスイッチ(15)と、
上記スイッチ(15)を第2位置に向かって付勢する付勢部(19a)とを備え、
上記開閉蓋(13)は、上記開口(14)の開放位置に変位すると、上記付勢部(19a)の付勢力に抗して上記スイッチ(15)を第1位置に押し付けるように構成されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1つにおいて、
上記開閉蓋(13)の下端部には、上記開口(14)の閉鎖位置において該開口(14)の内縁部に当接する突起部(13d)が形成されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−86169(P2012−86169A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235805(P2010−235805)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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