説明

静電容量センサ及びそれを用いた車両用近接センサ

【課題】検出電極からの発生するノイズによる他の電子機器の影響を抑制することができる静電容量センサ及びそれを用いた車両用近接センサを提供する。
【解決手段】本静電容量センサ1は、人体が近接又は接触する導電体であり、且つ静電容量を充電する充電信号が繰り返し供給される複数の検出電極3a…と、各検出電極に対して、他の各検出電極と異なる時刻に充電信号を供給する充放電手段5と、各検出電極の静電容量の変化を検出する容量検出手段22と、容量検出手段の結果を基に人体の近接又は接触の判定を行う近接判定手段24と、を備え、各検出電極から放射される高周波ノイズが平均化されていることを特徴とする。これにより、複数の検出電極に同時に充電信号を供給させずに、充電信号が重複する期間を減少させることによって、充電信号により検出電極から生じる高周波ノイズの強度変動をより低減させて平均化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の近接又は接触を検出する静電容量センサ及びそれを用いた車両用近接センサに関する。更に、詳しくは、検出電極からの発生するノイズによる他の電子機器の影響を抑制することができる静電容量センサ及びそれを用いた車両用近接センサに関する。本静電容量センサ及びそれを用いた車両用近接センサは、近接センサ及びタッチセンサとして用いられる。特に車載用の近接センサ及びタッチセンサとして用いられる。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に、近接センサ及びタッチセンサ(以下、近接センサとする。)の利用が増えてきている。
このような近接センサの一種として、人体が近接又は接触する検出電極を備え、人体による浮遊容量又は接地(大地)との間の静電容量の変化を計測することにより人体の近接又は接触を検知する静電容量センサが知られている。このような静電容量センサにおいては、検出電極に生じる静電容量を充放電させることによって電圧や電荷量を計測したり、検出回路のインピーダンスの変化等を利用させたりすることによって静電容量の変化が検出されている。しかし、人体の近接又は接触によって生じる静電容量の変化は微小な値であり、一度の充電又は放電によって精度よく静電容量を計測することは困難であるため、充放電を繰り返すことによって計測精度を向上させるのが一般的である。
例えば、スイッチドキャパシタ方式により検出電極に所定周波数の所定電圧を所定の周期で印加して、微小な静電容量によって生じる電圧値を積分して測定する微小静電容量の測定方法が開示されている(特許文献1を参照)。また、既知のコンデンサとスイッチ手段を備え、人体等によって生じる未知のコンデンサを繰り返し充放電させ、電荷を既知のコンデンサに集積させることによって精度よく計測する電荷移動式キャパシタンス測定回路が知られている(特許文献2を参照)。
静電容量の変化の検出を行うために発振回路でパルス信号を生成して電極に出力するが、検出用の電極がアンテナとして機能し、発振回路のパルス信号が高周波として漏れ出て、周囲に放射する。
このような高周波の放射は、車内の他の電子回路に対するノイズ源となるため、放射を制限した方が好ましい。
【0003】
また、静電容量の検出精度を向上させるため、センサの電極の構成を工夫したものが知られている。例えば、1対の差動電極に位相の反転した充放電を繰り返し行い、差動電極の見かけ上の浮遊容量の和を求めることによってノイズの影響を除去する近接検出装置が開示されている(特許文献3を参照)。
更に、液晶表示パネル等の他のノイズ源とタッチセンサパネルとを重ねて設けたタッチパネルの制御装置であり、液晶表示パネルから発せられるノイズによりタッチセンサパネルに支障が出ないように、液晶表示の駆動タイミングに応じたタッチセンサの位置読み込みタイミングの変更を行う制御装置が開示されている(特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−194025号公報
【特許文献2】特表2002−530680号公報
【特許文献3】特開2008−292446号公報
【特許文献4】特開平9−128146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1〜3のスイッチドキャパシタ方式等の静電容量センサでは、人体等が近接又は接触する検出電極に繰り返し充放電を行い、その充放電特性を累積して静電容量を計測するため、検出電極から周囲環境に充放電による高周波ノイズが放射される。例えば、検出電極の充放電の繰り返し時間が約7μsであれば、ほぼ140kHzを中心とする周波数領域だけでなく広い周波数範囲で高周波ノイズが放射される。この高周波ノイズによる静電容量センサが周囲の電子機器の動作に影響を及ぼす電磁妨害(EMI、Electro Magnetic Interference)が生じないように工夫する必要がある。一般には、装置から外部に放出される高周波ノイズを低減するために、当該装置を金属等のケースによって密閉するような方法がある。しかし、静電容量センサの場合、人体が近接又は接近を検出するための検出電極は外部に開放される必要があるため、電極部を電磁的にシールドする対策は困難である。また、検出電極の充放電の電流量等を単純に調節する場合は、静電容量センサの近接検出精度も影響する。
更に、特許文献4の静電容量センサは、検出電極自身から発せられるノイズについては、検討されていなかった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、検出電極からのノイズ発生を抑制することができる静電容量センサ及びそれを用いた車両用近接センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.人体の近接又は接触を静電容量の変化により検出する静電容量センサであって、人体が近接又は接触する導電体であり、且つ前記静電容量を充電する充電信号が繰り返し供給される複数の検出電極と、各前記検出電極に対して、他の各前記検出電極と異なる時刻に前記充電信号を供給する充放電手段と、各前記検出電極の静電容量の変化を検出する容量検出手段と、前記容量検出手段の結果を基に人体の近接又は接触の判定を行う近接判定手段と、を備え、各前記検出電極から放射される高周波ノイズが平均化されていることを特徴とする静電容量センサ。
2.前記充電信号はパルス信号であり、各前記検出電極に充電信号が供給される期間は、他の各検出電極に充電信号が供給される期間と重複しない上記1.記載の静電容量センサ。
3.各前記検出電極は、1つの検出盤の面上に配列されている上記2.記載の静電容量センサ。
4.車両に搭載される近接センサであって、上記1.乃至3のいずれかに記載の静電容量センサを備えることを特徴とする車両用近接センサ。
【発明の効果】
【0007】
本静電容量センサによれば、複数の検出電極に同時に充電信号を供給させずに、充電信号が重複する期間を減少させることによって、充電信号により検出電極から生じる高周波ノイズの強度変動をより低減させて平均化させることができる。このため、他の電子機器において、本静電容量センサに対するノイズ対策の手段を検討しやすくすることができ、ノイズ強度の変動による影響を及ぼしにくくすることができる。
【0008】
充電信号がパルス信号であり、各前記検出電極に充電信号が供給される期間が、他の各検出電極に充電信号が供給される期間と重複しない場合は、換言すると両期間が異なる場合は、高周波ノイズの強度が常に充電信号1つ分の強度となるため、検出電極から生じる高周波ノイズの強度を低い一定値に平均化させることができ、他の電子機器にノイズ強度の変動による影響を及ぼしにくくすることができる。
検出電極が検出盤の一面に配列される場合は、高周波ノイズの発生源を1箇所のより狭い範囲に集中させることによって、充電信号の供給の有無に伴う高周波電界の強度を本静電容量センサとの距離や角度等の位置関係により変化することなく平均化させることができ、他の電子機器に対するノイズ強度の変動による影響を及ぼしにくくすることができる。
本車両用近接センサによれば、検出電極から放射される高周波ノイズのレベルが平均化されている近接センサを各種車載装置のスイッチ等として用いることができ、周囲の車載電子装置におけるノイズ対策の手段を検討しやすくすることができ、ノイズ強度の変動による影響を及ぼしにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本静電容量センサの構成を説明するための模式図である。
【図2】検出盤に検出電極を配設した状態を説明するための模式平面図である。
【図3】検出盤に検出電極を配設した状態を説明するための模式側面図である。
【図4】4つの検出電極に対して順に充電信号を供給したときのパルス信号(3a)〜(3d)と、供給により発生する電界の強度(9)を説明するための模式図である。
【図5】3つの検出電極に対して順に一部重複して充電信号を供給したときのパルス信号と、供給により発生する電界の強度を説明するための模式図である。
【図6】3つの検出電極に対して同時に充電信号を供給したときのパルス信号と、供給により発生する電界の強度を説明するための模式図である。
【図7】充放電手段の構成例を説明するための模式図である。
【図8】6つの検出電極を具備する本発明の静電容量センサから放射される高周波ノイズの強度を、従来例と比較して実測した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜8を参照しながら本発明の静電容量センサ及びそれを用いた車両用近接センサを詳しく説明する。
本発明の静電容量センサは、図1に例示するように、人体の近接又は接触を静電容量Cxの変化により検出する静電容量センサであって、静電容量を充電する充電信号が繰り返し供給される複数の検出電極3a、3b…と、各検出電極に対して、他の各検出電極と異なる時刻に充電信号を供給する充放電手段5と、検出電極の静電容量の変化を検出する容量検出手段22と、容量検出手段の結果を基に人体の近接又は接触の判定を行う近接判定手段24と、を備えることを特徴とする。
本静電容量センサは、各種機器・装置7(例えば、発光器、表示パネル、空調装置及び座席の調整装置等)と接続し、人体の近接又は接触状態と判定した場合には、その判定又は判定による動作をさせるための近接検出信号を近接判定手段から出力するように構成することができる。特に、自動車等の車両に設け、乗員による各種機器・装置の操作に好適に用いることができる。
【0011】
前記「検出電極」は、その表面に人体が近接又は接触するように配設される導電体であればよく、その形状、大きさ及び構造等は特に問わない。例えば、材質も特に問わず、金属の他、炭素繊維等の導電材により伝導性を具備する導電布等が使用されてもよい。
尚、検出電極への人体の「近接」とは、掌や手指を検出電極の表面に近付ける形態の他、検出電極の表面を覆う絶縁物を介して人体が接触する形態も含むものとする。また、「接触」とは検出電極の表面に直接人体が接触する形態をいうものとする。
前記「検出盤」は、検出電極を配設する対象であって、その形態及び形状は特に問わない。この例として、各種操作を行うためのスイッチとして検出電極を配列する操作板、人体の近接を検知するセンサとして用いるセンサ素子体等を挙げることができる。
更に、複数の検出電極の配設する場所は任意に選択することができ、1つの検出盤等の任意の配設対象に対して全ての検出電極を配設してもよいし、複数の検出盤に対して検出電極を分散させて設けてもよい。このうち、1つの検出盤の面上に配列することが好ましい。更に、1つの検出盤の面上に検出電極を2以上配列することが好ましい。この検出盤の大きさは、特に問わないが、通常800mm角以内、特に600mm角以内、更に好ましくは500mm角以内が好ましい。検出電極の配設がまばらであると検出電極から発生する高周波ノイズもまばらに発生し、その強度が位置関係によって変化するため好ましくないからである。
また、検出電極の配列は任意に選択することができ、通常、近接センサとして必要とされる目的の形態に配列される。この例として図2及び3に例示するように、任意の数の検出電極3a〜3eを一列に検出盤4に配設することを挙げることができる。また、検出電極を2列以上に分けて配設してもよいし、上下左右の4箇所に十字状に配列したり、円周に沿って配設したりする等を例示することができる。
【0012】
前記「充放電手段」は、検出電極と電気的に接続され、静電容量Cxを繰り返して充放電させるための充電電圧(充電信号)を検出電極に印加するように構成される。充放電手段の構成は特に限定されず、公知の技術を用いることができる。また、充電信号の振幅、周波数も特に限定されない。例えば、基準電位(0V)と電源電圧(Vcc)との範囲内で変化し、周波数が数kHz〜数百kHzのパルス状の充電信号が挙げられる。
また、充放電手段は、一の検出電極に対して他の各検出電極と異なる時刻に充電信号を供給することができればよく、充電信号の供給する順番は任意に選択することができる。例えば、図6に示すように、各検出電極3a〜3cに同時刻に充電信号6が出力される場合、高周波電界の強度が充電信号の3つ分の強度となり、無出力のときと比べて高周波電界の強度変化が大きくなるため、特定の周波数においてノイズの強度が大きくなり、他の電子機器のノイズ対策が、様々な強度のノイズに対応する必要が生じるために難しくなる。
【0013】
一方、例えば、図5に示すように、一の検出電極3aに対して他の各検出電極3b、3cと異なる時刻に充電信号を供給することができれば、一部信号が重複する期間があっても、充電信号6a〜6cによって発生する高周波電界のうち、充電信号の2つ分以上の強度の期間9bが、充電信号の1つ分の強度の期間9aよりも短くすることができ、全体としては強度を抑制し、且つ同時に出力される図5に比べて強度を平均化することができる。この「平均化」は、輻射ノイズ等の強度が大きく変動しないことをいい、例えば、500kHz〜1.7MHzの帯域において、ある周波数の信号レベル(dBm)が±5%Hzの周波数の信号レベルと比べて10dBm以内(特に好ましくは5dBm以内)とすることができる。
また、充電信号がパルス状である場合は、各検出電極の充電信号が他の各検出電極の充電信号と重畳することがないことが好ましい。充電信号の全て又は一部が他の充電信号に重畳すると検出電極から生じる高周波電界の強さが1つ分の充電信号の強さを越え、高周波ノイズが強くなるからである。図4に示すように、1列に配列されている4つの検出電極3a〜3dに対して順に充電信号6a〜6dを供給すると、高周波電界の強度が1つ分の充電信号の強さを越えることがなく、より好ましい。
【0014】
前記「容量検出手段」の構成は特に限定されず、例えば、静電容量の端子間電圧の計測回路や、静電容量の変化を周波数変化に変換する回路等を用いて、検出電極の静電容量の変化を検出することができる。
前記「近接判定手段」の構成も特に限定されず、容量検出手段によって得られた計測値を基に演算、比較等の処理を行って、人体の近接又は接触を判定するように構成することができる。
【0015】
充放電手段、容量検出手段及び近接判定手段の制御処理は、ハードウェア及びソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適には、図示しないCPU、メモリ(ROM、RAM等)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、周辺回路を備えることにより構成することができる。更に、デジタル信号プロセッサ、プログラム可能な論理回路、ゲートアレーその他の論理回路が用いられて構成されてもよい。また、充放電手段、容量検出手段及び近接判定手段は一体の近接検出部として構成されていてもよい。
【0016】
次に、本静電容量センサ及びこれを用いた車両用近接センサの具体的な回路構成例を参照しつつ、その動作について説明する。
本静電容量センサ1及びこれを用いた車両用近接センサは、乗用車等の車両に搭載され、人体の近接又は接触を検知して、車載の電子制御される機器装置の操作を行うための近接センサであって、検出電極から周囲に放射される高周波ノイズを低減及び強度の平均化をすることができる近接センサである。
図1に示すように、本静電容量センサ1は、図2及び3に示すように機能別に配列されている複数の検出電極3a〜3fを備える検出盤4、並びに近接検出部2を備える。
検出盤4は、樹脂板であり、ドアの内側やダッシュボード等に嵌め込まれて操作パネルとして使用される。
近接検出部2は、検出盤4の裏側やETCの近辺等の任意の場所に配設され、充放電手段5、容量検出手段22及び近接判定手段24を備える。それぞれの構成及び作用については前述の通りである。
【0017】
本車両用近接センサは、近接判定手段24を機器装置7と接続し、それらに人体の近接又は接触を示す近接検出信号を出力するように構成することができる。これにより人体の近接又は接触の状態と判定した場合には、対応する機器装置7を制御することができる。
機器装置7としては、自動車内の照明、加飾パネル、表示パネル、空調装置、着座判定装置等に例示される各種車載電子機器・装置を挙げることができる。
【0018】
静電容量センサ1の充放電手段の構成例を図7に示す。尚、本発明は、複数の検出電極と、他の各検出電極と異なる時刻に充電信号を供給する充放電手段と、を備える点を特徴とするものであるため、充放電手段や容量検出手段等の構成は任意とすることができる。また、図7の充放電手段5は、一般的なスイッチドキャパシタ方式の構成を例示するにすぎず、ハードウェア及びソフトウェアのいずれによって任意の構成で実現することができる。
【0019】
充放電手段5は、複数の検出電極3a、3b…に充電信号を供給する手段であり、既知の静電容量C1a、1b…、スイッチ手段SW1a、1b…及びSW2a、2b…を備え、検出電極3a、3b…を介して未知の静電容量Cxを繰り返し充放電させる。また、スイッチSW1a、1b…は、シフトレジスタやソフトウェア等の任意の手段によって、スイッチSW1a、1b…を順次開閉制御するスイッチSW1によって開閉制御される。同様に、スイッチSW2a、2b…は、これらを順次開閉制御するスイッチSW2によって開閉制御される。また、スイッチSW1a及びSW2aは同時にオンとされることはない。
【0020】
次に、検出電極3aについての1周期分の充放電について説明する。最初に、静電容量Cx及び静電容量C1aが放電される(図示省略)。そしてSW1aをオン(閉)、SW2aをオフ(開)にすると、電源Vccによって静電容量Cxが充電される(ステップ1a)。次に、SW1aをオフ、SW2aをオンにすると、静電容量の値に応じた静電容量Cxの電荷の一部が静電容量C1aに移動する(ステップ2a)。再びステップ1aの状態とすると、静電容量Cxが電源Vccによって充電されるとともに、静電容量C1aの電荷は保持される。すなわち、ステップ1aとステップ2aを繰り返して実行すれば、静電容量Cxの充放電が繰り返され、静電容量C1aに電荷が蓄積されることとなる。このステップ1aとステップ2aの繰り返しによって、検出電極3aに印加される充電信号は、図4(3a)に示すように変化する。
【0021】
更に、検出電極3b以降においても検出電極3aと同様に充放電を繰り返し、最後の検出電極(図4においては4つ目の検出電極3d)の1回の充放電が終わった後は、最初の検出電極3aの充放電に戻る。また、検出電極3a、3b…は、図4(3a)〜(3d)に示すように、スイッチSW1a及びSW2aにより、充電信号6a〜6dが重複しないように順次充電信号6a〜6dが供給される。これにより、検出電極3a、3b…から放出される高周波電界は、図4(9)に示すようにその強度が充電信号の1分の強度を略常時出力するように扱うことができ、強度が平均化されていると見なすことができる。
【0022】
次に、本発明の静電容量センサの効果を確認するため、6つの検出電極を備える静電容量センサを使用して、1周期につき、各検出電極に順次の1/6周期分の期間の充電信号を供給する本発明の構成と、1周期の1/6周期分の期間の充電信号を同時に各検出電極に供給する比較例と、の輻射ノイズを計測した。
測定に用いた検出電極3a〜3fは、図2及び3に示した10mm角の正方形の平板形状の金属であり、検出電極3a〜3fの間隙がそれぞれ10mmとなるように1列に配列させた。また、検出電極3の充電パルス信号の周期は約7μs(周波数:約140kHz)である。
上記構成により、電極面から垂直方向(同3のZ方向)に1m離れた点における高周波信号のレベル、すなわち電極部から放射される輻射ノイズの受信レベルをアクティブアンテナで受信し、測定した。
【0023】
測定された輻射ノイズの受信レベル(ピーク値)を図8に示す。横軸は周波数、縦軸は信号レベルを示している。測定は、周波数100〜160kHz及び500kHz〜1.7MHzの範囲で行った。100〜160kHzの帯域は、自動車の場合、スマートエントリーシステム等に使用されている。また、500kHz〜1.7MHzの帯域は、中波放送の周波数に対応する。
図8において、本構成による測定値は下段で、比較例の測定値は上段で示されている。同図から、比較例と比べて本構成による輻射ノイズは、平均して約10dB低く抑えられていることが分かる。更に、比較例は、特定の周波数の強度が周辺の周波数に比べて約5dB〜約10dB低下する略弧形状が連続するスペクトルであるが、本構成は、比較例と比べて連続して強度が変化しており、平均化されていることが分かる。
前記結果によって、本発明の静電容量センサは、検出電極からの高周波ノイズの放射の低減及び平均化に効果があることは明らかである。
【0024】
尚、本発明においては、前記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。例えば、前記実施例では、矩形波状の充電信号を例示したが、波形はこれに限定されるものではなく、正弦波、三角波及びこれらの合成波等とすることができる。また、前記実施例では、0Vから所定の電圧値の範囲で変化するパルス信号を例示したが、これに限らず、充電信号は交流信号等であってもよい。
また、本車両用近接センサは、車両に搭載される近接センサであるが、用途はこれに限定されず、例えば、産業用機械や家庭用電気製品等に用いられる近接センサに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1;静電容量センサ、2;近接検出部、22;容量検出手段、24;近接判定手段、3、3a〜3f;検出電極、4;検出盤、5;充放電手段、7;機器装置、Cx;未知の静電容量、9;高周波ノイズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の近接又は接触を静電容量の変化により検出する静電容量センサであって、
人体が近接又は接触する導電体であり、且つ前記静電容量を充電する充電信号が繰り返し供給される複数の検出電極と、
各前記検出電極に対して、他の各前記検出電極と異なる時刻に前記充電信号を供給する充放電手段と、
各前記検出電極の静電容量の変化を検出する容量検出手段と、
前記容量検出手段の結果を基に人体の近接又は接触の判定を行う近接判定手段と、を備え、
各前記検出電極から放射される高周波ノイズが平均化されていることを特徴とする静電容量センサ。
【請求項2】
前記充電信号はパルス信号であり、各前記検出電極に充電信号が供給される期間は、他の各検出電極に充電信号が供給される期間と重複しない請求項1記載の静電容量センサ。
【請求項3】
各前記検出電極は、1つの検出盤の面上に配列されている請求項2記載の静電容量センサ。
【請求項4】
車両に搭載される近接センサであって、請求項1乃至3のいずれかに記載の静電容量センサを備えることを特徴とする車両用近接センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−7528(P2011−7528A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149106(P2009−149106)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(306026810)株式会社アネブル (3)
【Fターム(参考)】