説明

静電容量型センサ

【課題】小さい荷重を検出可能で、誘電層がへたりにくい静電容量型センサを提供することを課題とする。
【解決手段】静電容量型センサ1は、発泡体U製であって、表面および裏面のうち少なくとも一方に開口する複数の凹部20を有し、表裏方向に弾性変形可能な誘電層2と、誘電層2の表側に配置される複数の表側電極01X〜16Xと、誘電層2の裏側に配置される複数の裏側電極01Y〜16Yと、表側または裏側から見て、表側電極01X〜16Xと裏側電極01Y〜16Yとが重複する部分に配置される複数の検出部A0101〜A1616と、を備え、表側または裏側から見て、単一の検出部A0101〜A1616に占める複数の凹部20の面積の割合は、全ての検出部A0101〜A1616において略同じであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体製の誘電層を備える静電容量型センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1、2に開示されているように、静電容量型センサの誘電層としては、樹脂やエラストマーや発泡体などが用いられる。静電容量型センサにより小さい荷重を検出する場合、誘電層の、荷重入力方向のばね定数(=荷重変化量/変形量。以下、「ばね定数」と略称する。)は小さい方が好ましい。このため、ばね定数の小さい発泡体が、小荷重検出用の誘電層として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−43881号公報
【特許文献2】特開2010−223953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2の段落[0006]に開示されているように、発泡体製の誘電層には、荷重除力後に、圧縮永久歪みが残りやすい。つまり、発泡体製の誘電層は、へたりやすい。このため、耐久性が低い。
【0005】
ここで、誘電層をへたりにくくするためには、発泡体の密度を高くすればよい。しかしながら、発泡体の密度を高くすると、誘電層の硬度も高くなる。このため、結果として、誘電層のばね定数が大きくなってしまう。したがって、小さい荷重を検出しにくくなる。
【0006】
本発明の静電容量型センサは、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、小さい荷重を検出可能で、誘電層がへたりにくい静電容量型センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するため、本発明の静電容量型センサは、発泡体製であって、表面および裏面のうち少なくとも一方に開口する複数の凹部を有し、表裏方向に弾性変形可能な誘電層と、該誘電層の表側に配置される複数の表側電極と、該誘電層の裏側に配置される複数の裏側電極と、表側または裏側から見て、該表側電極と該裏側電極とが重複する部分に配置される複数の検出部と、を備え、表側または裏側から見て、単一の該検出部に占める複数の該凹部の面積の割合は、全ての該検出部において略同じであることを特徴とする。ここで、「凹部」には、発泡成形時に形成される発泡体のセル(空孔)は含まれない。
【0008】
本発明の静電容量型センサの誘電層には複数の凹部が配置されている。このため、発泡体の密度が高く、誘電層の硬度が高い場合であっても、凹部を配置することにより、誘電層つまり検出部のばね定数を小さくすることができる。すなわち、発泡体の密度を上げたことによるばね定数の増加分を、誘電層に凹部を配置することにより、相殺できる。
【0009】
したがって、本発明の静電容量型センサの誘電層と同じ発泡体製であって、本発明の静電容量型センサの誘電層よりも硬度が低く、かつ凹部が形成されていない誘電層を備える静電容量型センサと比較して、同等の小荷重を検出することができる。ただし、勿論、誘電層の密度、凹部を適宜調整することにより、大荷重を検出することも可能である。また、誘電層の密度が高い分、誘電層をへたりにくくすることができる。このため、誘電層の耐久性を高くすることができる。
【0010】
また、表側または裏側から見て、単一の検出部全面に占める、複数の凹部の総面積の割合は、全ての検出部において、一定である。このため、全ての検出部のばね定数を揃えることができる。したがって、複数の検出部間において、検出感度がばらつくのを抑制することができる。
【0011】
また、例えば、誘電層が中実の(凹部を有しない)ゴム製の場合、ゴムのポアソン比は0.5である。このため、荷重が入力される際、誘電層は、荷重入力方向に圧縮変形する分、荷重入力方向に対して交差する方向(以下、「交差方法」と称す。)に、膨出しやすい。したがって、誘電層の変形が、誘電層に表裏方向に当接する部材(例えば、表側電極、裏側電極、表側電極固定用の基材、裏側電極固定用の基材など)により規制されやすい。
【0012】
これに対して、本発明の静電容量型センサの誘電層は発泡体製である。このため、荷重が入力される際、誘電層は、荷重入力方向に圧縮変形する分、交差方向に膨出しにくい。すなわち、当該膨出分を発泡体のセル(空孔)が消費するため、誘電層の密度は上がるものの、交差方向に膨出しにくい。したがって、誘電層の変形が、誘電層に表裏方向に当接する部材(例えば、表側電極、裏側電極、表側電極固定用の基材、裏側電極固定用の基材など)により規制されにくい。
【0013】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記検出部において、前記誘電層は、複数の前記表側電極および複数の前記裏側電極に、直接または間接的に固定されない構成とする方がよい。ここで、「検出部において」とは、検出部以外の部分においては、誘電層が、表側電極および裏側電極に、直接または間接的に固定されていてもよいことをいう。また、「間接的に固定されている」とは、表側電極固定用の基材、裏側電極固定用の基材などに、誘電層が固定されていることをいう。
【0014】
検出部において誘電層が固定されていると、荷重が入力される場合、交差方向の誘電層の弾性変形が、固定の相手側の部材(例えば、表側電極、裏側電極、表側電極固定用の基材、裏側電極固定用の基材など)に規制されてしまう。また、表側電極などの表側(荷重入力側)の部材に誘電層が固定されている場合と、裏側電極などの裏側(荷重伝達側)の部材に誘電層が固定されている場合とで、静電容量型センサの荷重検出特性が変わってしまう。つまり、荷重検出特性に方向性が発現してしまう。なお、特許文献2の静電容量型センサの場合、誘電層を構成する柱部は、負極側絶縁層の上面に印刷されている。このため、荷重検出特性に方向性が発現してしまう。
【0015】
この点、本構成によると、検出部において誘電層が表側電極、裏側電極に固定されていない。このため、交差方向の誘電層の弾性変形が、表側電極、裏側電極に規制されにくい。また、静電容量型センサの荷重検出特性に方向性が発現しにくい。
【0016】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記凹部は、非加熱状態で前記発泡体を打ち抜くことにより形成される貫通孔である構成とする方がよい。本構成によると、発泡体を部分的に加熱し溶融させて凹部を形成する場合と比較して、発泡体が変質しにくい。このため、誘電層全体に亘って、特性がばらつきにくい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、小さい荷重を検出可能で、誘電層がへたりにくい静電容量型センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施形態の静電容量型センサの斜視分解図である。
【図2】同静電容量型センサの上面透過図である。
【図3】図2のIII−III方向断面図である。
【図4】図2の円IV内の拡大図である。
【図5】第二実施形態の静電容量型センサの前後方向断面図である。
【図6】同静電容量型センサの誘電層の製造方法に用いる金型の前後方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の静電容量型センサの実施の形態について説明する。
【0020】
<第一実施形態>
[静電容量型センサの構成]
まず、本実施形態の静電容量型センサの構成について説明する。図1に、本実施形態の静電容量型センサの斜視分解図を示す。図2に、本実施形態の静電容量型センサの上面透過図を示す。図3に、図2のIII−III方向断面図を示す。なお、図1においては、表側基材3を透過して示す。また、表側配線用コネクタ5、裏側配線用コネクタ6、表側配線01x〜16x、裏側配線01y〜16yを省略して示す。また、図2においては、検出部A0101〜A1616にハッチングを施して示す。
【0021】
図1〜図3に示すように、本実施形態の静電容量型センサ1は、誘電層2と、表側電極01X〜16Xと、裏側電極01Y〜16Yと、表側配線01x〜16xと、裏側配線01y〜16yと、表側基材3と、裏側基材4と、表側配線用コネクタ5と、裏側配線用コネクタ6と、制御装置7と、を備えている。なお、後述する検出部A0101〜A1616の符号「A○○△△」中、上二桁の「○○」は、表側電極01X〜16Xに対応している。下二桁の「△△」は、裏側電極01Y〜16Yに対応している。
【0022】
誘電層2は、ウレタン発泡体製であって、四角形板状を呈している。ウレタン発泡体は、本発明の「発泡体」の概念に含まれる。誘電層2には、全面的に多数の貫通孔20が配置されている。貫通孔20は、断面円形を呈している。貫通孔20は、非加熱状態でウレタン発泡体を打ち抜くことにより形成されている。貫通孔20は、上下方向(表裏方向)に誘電層2を貫通している。
【0023】
表側基材3は、ゴム製であって、四角形板状を呈している。表側基材3は、誘電層2の上方(表側)に積層されている。裏側基材4は、ゴム製であって、四角形板状を呈している。裏側基材4は、誘電層2の下方(裏側)に積層されている。
【0024】
図3に示すように、表側基材3の外縁と裏側基材4の外縁とは、後述する表側配線用コネクタ5の接続部分、裏側配線用コネクタ6の接続部分を除いて、接合されている。すなわち、表側基材3と裏側基材4とは、袋状に貼り合わされている。誘電層2は、当該袋内に収容されている。誘電層2の上面四隅は、表側基材3の下面四隅に、スポット的に接着されている。また、誘電層2の下面四隅は、裏側基材4の上面四隅に、スポット的に接着されている。このように、誘電層2は、表側基材3および裏側基材4に、使用時にシワがよらないように、位置決めされている。ただし、誘電層2は、四隅が接着された状態で、表側基材3および裏側基材4に対して、水平方向(前後左右方向)に弾性変形可能である。
【0025】
表側電極01X〜16Xは、表側基材3の下面に、合計16本配置されている。表側電極01X〜16Xは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。表側電極01X〜16Xは、各々、帯状を呈している。表側電極01X〜16Xは、各々、左右方向に延在している。表側電極01X〜16Xは、前後方向に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。
【0026】
表側配線01x〜16xは、表側基材3の下面に、合計16本配置されている。表側配線01x〜16xは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。表側配線01x〜16xは、各々、線状を呈している。表側配線用コネクタ5は、表側基材3および裏側基材4の左辺中央に配置されている。表側配線01x〜16xは、各々、表側電極01X〜16Xの左端と、表側配線用コネクタ5と、を接続している。
【0027】
裏側電極01Y〜16Yは、裏側基材4の上面に、合計16本配置されている。裏側電極01Y〜16Yは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。裏側電極01Y〜16Yは、各々、帯状を呈している。裏側電極01Y〜16Yは、各々、前後方向に延在している。裏側電極01Y〜16Yは、左右方向に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。このように、表側電極01X〜16Xと裏側電極01Y〜16Yとは、上方または下方から見て、互いに直交する格子状に配置されている。
【0028】
裏側配線01y〜16yは、裏側基材4の上面に、合計16本配置されている。裏側配線01y〜16yは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。裏側配線01y〜16yは、各々、線状を呈している。裏側配線用コネクタ6は、表側基材3および裏側基材4の左前隅に配置されている。裏側配線01y〜16yは、各々、裏側電極01Y〜16Yの前端と、裏側配線用コネクタ6と、を接続している。
【0029】
検出部A0101〜A1616は、図2にハッチングで示すように、表側電極01X〜16Xと、裏側電極01Y〜16Yと、が上下方向に交差する部分(重複する部分)に配置されている。検出部A0101〜A1616は、各々、表側電極01X〜16Xの一部と、裏側電極01Y〜16Yの一部と、誘電層2の一部と、を備えている。検出部A0101〜A1616は、合計256個(=16個×16個)配置されている。検出部A0101〜A1616は、誘電層2の略全面に亘って、均等に配置されている。
【0030】
図4に、図2の円IV内の拡大図を示す。図4に示すように、検出部A0116(具体的には検出部A0116を構成する誘電層2の一部)には、多数の貫通孔20が配置されている。上方または下方から見て、単一の検出部A0116全面に占める、多数の貫通孔20の総面積は、全ての検出部A0101〜A1616において一定である。このため、全ての検出部A0101〜A1616の、上下方向のばね定数は一定である。
【0031】
図2に示すように、制御装置7は、表側配線用コネクタ5、裏側配線用コネクタ6と、電気的に接続されている。制御装置7は、記憶部70と演算部71とを有している。記憶部70には、検出部A0101〜A1616の静電容量と荷重との対応を示すテーブル、周囲温度に対する補正量などが格納されている。また、記憶部70には、表側配線用コネクタ5、裏側配線用コネクタ6から入力されるインピーダンス、位相が、一時的に格納される。演算部71は、当該インピーダンス、位相を基に、検出部A0101〜A1616の静電容量を算出する。そして、静電容量から検出部A0101〜A1616に加わる荷重を検出する。
【0032】
[静電容量型センサの動き]
次に、本実施形態の静電容量型センサ1の動きについて簡単に説明する。静電容量型センサ1の荷重検出の原理となるコンデンサーの静電容量は、以下の式(1)から算出される。
C=ε・S/d ・・・式(1)
式(1)中、Cは静電容量、εは誘電率、Sは対向する電極の重複面積、dは電極間距離である。電極間距離dは、誘電層2の上下方向厚さに相当する。重複面積Sは、図2にハッチングで示す検出部A0101〜A1616の面積、すなわち表側電極01X〜16Xと、裏側電極01Y〜16Yと、の重複面積に相当する。
【0033】
図3に示すように、任意の検出部A0101〜A1616に上方から荷重が加わると、誘電層2が上下方向に圧縮される。このため、誘電層2の上下方向厚さが小さくなる。ここで、誘電層2の上下方向厚さは、式(1)の電極間距離dに対応している。したがって、誘電層2の上下方向厚さが小さくなると、その分、静電容量Cが大きくなる。図2に示す制御装置7は、当該静電容量Cの変化を基に、任意の検出部A0101〜A1616に加わる荷重を算出する。
【0034】
[作用効果]
次に、本実施形態の静電容量型センサ1の作用効果について説明する。本実施形態の静電容量型センサ1によると、誘電層2に多数の貫通孔20が穿設されている。このため、発泡体の密度が高く、誘電層の硬度が高い場合であっても、誘電層2つまり検出部A0101〜A1616の上下方向のばね定数を小さくすることができる。すなわち、発泡体の密度を上げたことによるばね定数の増加分を、誘電層2に貫通孔20を配置することにより、相殺できる。
【0035】
したがって、本実施形態の静電容量型センサ1によると、誘電層2と同じウレタン発泡体製であって、誘電層2よりも硬度が低く、かつ貫通孔20が形成されていない誘電層を備える別の静電容量型センサと比較して、同等の小荷重を検出することができる。また、誘電層2の密度が高い分、誘電層2をへたりにくくすることができる。このため、誘電層2の耐久性を高くすることができる。
【0036】
また、表側または裏側から見て、単一の検出部A0101〜A1616全面に占める、複数の貫通孔20の総面積の割合は、全ての検出部A0101〜A1616において、一定である。このため、全ての検出部A0101〜A1616のばね定数を揃えることができる。したがって、複数の検出部A0101〜A1616間において、検出感度がばらつくのを抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態の静電容量型センサ1の誘電層2はウレタン発泡体製である。このため、荷重が入力される際、誘電層2は、上下方向に圧縮変形する分、水平方向に膨出しにくい。すなわち、当該膨出分をウレタン発泡体のセル(空孔)が消費するため、誘電層2の密度は上がるものの、水平方向に膨出しにくい。したがって、誘電層2の変形が、誘電層2に上下方向に積層される、表側基材3、裏側基材4により規制されにくい。
【0038】
また、検出部A0101〜A1616において、誘電層2は、表側電極01X〜16X、裏側電極01Y〜16Yに、固定されていない。この点においても、誘電層2の変形が、表側基材3、裏側基材4により規制されにくい。また、静電容量型センサ1の荷重検出特性に方向性が発現しにくい。
【0039】
また、本実施形態の静電容量型センサ1によると、誘電層2は、四隅において、表側基材3および裏側基材4に接着されている。このため、使用時に誘電層2にシワがよりにくい。
【0040】
また、本実施形態の静電容量型センサ1によると、貫通孔20は、非加熱状態での打ち抜き加工により誘電層2に穿設されている。このため、発泡体を部分的に加熱し溶融させて貫通孔20を形成する場合と比較して、発泡体が変質しにくい。したがって、誘電層2の全体に亘って、特性がばらつきにくい。
【0041】
<第二実施形態>
本実施形態の静電容量型センサと、第一実施形態の静電容量型センサとの相違点は、貫通孔の代わりに、非貫通タイプの凹部が配置されている点である。ここでは相違点についてのみ説明する。
【0042】
図5に、本実施形態の静電容量型センサの前後方向断面図を示す。なお、図3と対応する部位については同じ符号で示す。図5に示すように、誘電層2における、図3の貫通孔20に対応する部位には、凹部21が配置されている。凹部21は、誘電層2の上面に開口している。凹部21は、誘電層2の下面に開口していない。
【0043】
図6に、同静電容量型センサの誘電層の製造方法に用いる金型の前後方向断面図を示す。図6に示すように、金型9は、共に金属製の下型90と上型91とを備えている。下型90は、上方に開口する凹部900を備えている。一方、上型91の下面には、凹部900に対向して、多数のピン910が突設されている。
【0044】
誘電層2の製造時においては、まず、四角形板状のウレタン発泡体Uを、下型90の凹部900に収容する。次に、加熱された上型91を、下型90に当接させる。すなわち、型締めを行う。この際、ウレタン発泡体Uのうち、ピン910に対応する部分は、ピン910により下方に圧縮される。また、ウレタン発泡体Uのうち、ピン910に対応する部分は、ピン910により加熱され、溶融する。このようにして、図5に示すように、ウレタン発泡体Uつまり誘電層2に多数の凹部21が形成される。
【0045】
本実施形態の静電容量型センサ1と、第一実施形態の静電容量型センサとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。また、本実施形態の静電容量型センサ1によると、表側または裏側から見て、単一の検出部A0116〜A1616全面に占める、複数の凹部21の総面積の割合は、全ての検出部A0116〜A1616において、一定である。このため、全ての検出部A0116〜A1616のばね定数を揃えることができる。したがって、複数の検出部A0116〜A1616間において、検出感度がばらつくのを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態の静電容量型センサ1によると、ウレタン発泡体Uを溶融させることにより、多数の凹部21を形成している。このため、凹部21の形状精度、位置精度が高くなる。
【0047】
<その他>
以上、本発明の静電容量型センサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0048】
例えば、誘電層2の材質は特に限定しない。発泡体であればよい。例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、天然ゴム、イソプレンゴムのような、エラストマーの発泡体を用いてもよい。また、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、ユリア樹脂、シリコーン、ポリイミド、メラミン樹脂のような、樹脂の発泡体を用いてもよい。
【0049】
また、発泡体の製造方法は特に限定しない。例えば、発泡体は、スラブ品(駆動中のコンベア上に原液を流し連続発泡させることにより、発泡体の連続体を製造した後、当該連続体を所定長に裁断することにより得られる発泡体)であっても、モールド品(金型に原液を注入し発泡させた後、金型から取り出すことにより得られる発泡体)であってもよい。また、発泡体のセル(気泡)は、独泡タイプでも連泡タイプでもよい。
【0050】
図2にハッチングで示す、単一の検出部A0101〜A1616の面積を100%とした場合、単一の検出部A0101〜A1616に占める貫通孔20、凹部21の総面積は、3%以上97%以下である方が好ましい。3%以上としたのは、3%未満の場合、検出部A0101〜A1616のばね定数を下げることが困難になるからである。一方、97%以下としたのは、97%超過の場合、表側電極01X〜16Xと裏側電極01Y〜16Yとの間に隙間(式(1)における電極間距離d)を確保するのが困難になるからである。
【0051】
より好ましくは、図2にハッチングで示す、単一の検出部A0101〜A1616の面積を100%とした場合、単一の検出部A0101〜A1616に占める貫通孔20、凹部21の総面積は、40%以上60%以下である方が好ましい。この場合、誘電層2と同じ発泡体製であって、誘電層2と比較して硬度が0.5倍程度であって、かつ貫通孔20が形成されていない誘電層を備える別の静電容量型センサと比較して、ばね定数を同じ程度に揃えることができる。このため、半分程度の硬度を有する軟らかい発泡体と、同等の小荷重を検出することができる。
【0052】
好ましくは、誘電層2の硬度は、JIS K 6400の40%圧縮硬さにおいて、110N以上150N以下とする方がよい。人間を測定対象とする静電容量型センサ1の発泡体(貫通孔20なし、凹部21なし)のJIS K 6400の40%圧縮硬さとしては、65(±17)N程度が好適である。このため、発泡体の硬さを110N以上150N以下に設定すると、貫通孔20や凹部21の、配置数、形状、寸法、位置などを最適化することで、人間を測定対象とする静電容量型センサとして好適なように、誘電層2のばね定数を容易に調整することができる。
【0053】
また、上記実施形態の静電容量型センサ1の場合、表側電極01X〜16X、表側配線01x〜16x、裏側電極01Y〜16Y、裏側配線01y〜16yを、エラストマーを含んで形成した。この場合、これらの電極および配線が伸縮するため、誘電層2と一体となって変形することができる、という利点がある。これらの電極および配線は、金属製であってもよい。また、有機繊維の表面に金属めっきを施した材料製であってもよい。
【0054】
また、表側電極01X〜16X、裏側電極01Y〜16Yの本数、形状(電極の幅、長さなど)、配置(隣接する電極間の間隔、表側電極と裏側電極との交差角度など)は特に限定しない。
【0055】
また、静電容量型センサ1の用途は特に限定しない。小荷重を検出する場合は、ばね定数を下げるために、検出部A0101〜A1616における、貫通孔20、凹部21の総面積を広くすればよい。また、誘電層2として、硬度の低い発泡体を用いればよい。一方、大荷重を検出する場合は、ばね定数を上げるために、検出部A0101〜A1616における、貫通孔20、凹部21の総面積を狭くすればよい。また、誘電層2として、硬度の高い発泡体を用いればよい。
【0056】
また、貫通孔20、凹部21の形状は特に限定しない。上方または下方から見て、円形、楕円形、長円形(一対の向かい合う半円同士を二本の直線で繋いだ形状)、または三角形、四角形、五角形などの多角形としてもよい。また、凹部21の開口を誘電層2の下面に配置してもよい。また、複数の凹部21の開口を、誘電層2の上面および下面に配置してもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、静電容量型センサ1に対する荷重入力方向を上下方向としたが、荷重入力方向は特に限定しない。左右方向、前後方向、またはこれらの方向に対して傾斜する方向であってもよい。また、静電容量型センサ1の配置方向も水平方向に限定しない。垂直方向、または水平方向および垂直方向に対して傾斜する方向であってもよい。
【0058】
また、誘電層2に用いられる発泡体のセル(空孔)の密度は特に限定しない。密度が同じでセルの数が異なる複数の発泡体がある場合、セルの数が少ない発泡体を用いる方が好ましい。こうすると、誘電層2の硬度の低下を抑制しつつ、誘電層2をへたりにくくすることができる。このため、誘電層2の耐久性が向上する。
【符号の説明】
【0059】
1:静電容量型センサ、2:誘電層、3:表側基材、4:裏側基材、5:表側配線用コネクタ、6:裏側配線用コネクタ、7:制御装置、9:金型。
01X〜16X:表側電極、01Y〜16Y:裏側電極、01x〜16x:表側配線、01y〜16y:裏側配線、20:貫通孔、21:凹部、70:記憶部、71:演算部、90:下型、91:上型。
900:凹部、910:ピン。
A0101〜A1616:検出部、U:ウレタン発泡体(発泡体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体製であって、表面および裏面のうち少なくとも一方に開口する複数の凹部を有し、表裏方向に弾性変形可能な誘電層と、
該誘電層の表側に配置される複数の表側電極と、
該誘電層の裏側に配置される複数の裏側電極と、
表側または裏側から見て、該表側電極と該裏側電極とが重複する部分に配置される複数の検出部と、
を備え、
表側または裏側から見て、単一の該検出部に占める複数の該凹部の面積の割合は、全ての該検出部において略同じである静電容量型センサ。
【請求項2】
前記検出部において、前記誘電層は、複数の前記表側電極および複数の前記裏側電極に、直接または間接的に固定されない請求項1に記載の静電容量型センサ。
【請求項3】
前記凹部は、非加熱状態で前記発泡体を打ち抜くことにより形成される貫通孔である請求項1または請求項2に記載の静電容量型センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−173100(P2012−173100A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34667(P2011−34667)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】