説明

静電容量型センサ

【課題】近接する複数の検出部間において、互いに変形の影響を受けにくい静電容量型センサを提供することを課題とする。
【解決手段】静電容量型センサ1は、発泡体U製であって一体物の誘電層2と、誘電層2の表側に配置される複数の表側電極01X〜16Xと、誘電層2の裏側に配置される複数の裏側電極01Y〜16Yと、表側または裏側から見て、表側電極01X〜16Xと裏側電極01Y〜16Yとが重複する部分に配置される複数の検出部A0101〜A1616と、を備える。誘電層2は、検出部A0101〜A1616を構成する単位部22と、隣り合う単位部22間を仕切る凹部20と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体製の誘電層を備える静電容量型センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、複数の表側電極と、複数の裏側電極と、誘電層と、を備える静電容量型センサが開示されている。表側電極および裏側電極は、帯状を呈している。誘電層は、表側電極と裏側電極との間に介装されている。表側電極の延在方向と裏側電極の延在方向とは、互いに直交している。すなわち、上方から見て、複数の表側電極と、複数の裏側電極と、は格子状に配置されている。上方から見て、表側電極と裏側電極とが交差する複数の交差点には、各々、検出部が配置されている。複数の検出部は、前後方向および左右方向に並んでいる。また、同文献の段落[0099]には、誘電層の材質として、発泡体が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−43881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の静電容量型センサのように、単一の誘電層に対して複数の検出部を備える静電容量型センサの場合、近接する複数の検出部間において、誘電層の変形の影響が出るおそれがある。
【0005】
例えば、任意の検出部aだけに荷重が加えられ、任意の検出部aの誘電層が変形した場合、当該変形により、当該検出部に近接する別の検出部bの誘電層までもが、変形してしまうおそれがある。この場合、実際に荷重が加えられた検出部aのみならず、実際には荷重が加えられていない検出部bまで、静電容量が変化してしまう。このため、検出座標に誤差が生じやすくなる。
【0006】
また、検出部aの変形に要するエネルギの一部が、検出部bの変形に消費されることになる。このため、検出部aの検出値に誤差が生じやすくなる。また、検出部a、bの双方に荷重が加えられる場合であっても、より加えられた荷重の大きい検出部が、より加えられた荷重の小さい検出部に、影響を与えてしまう。
【0007】
本発明の静電容量型センサは、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、近接する複数の検出部間において、互いに変形の影響を受けにくい静電容量型センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明の静電容量型センサは、発泡体製であって一体物の誘電層と、該誘電層の表側に配置される複数の表側電極と、該誘電層の裏側に配置される複数の裏側電極と、表側または裏側から見て、該表側電極と該裏側電極とが重複する部分に配置される複数の検出部と、を備える静電容量型センサであって、前記誘電層は、前記検出部を構成する単位部と、隣り合う該単位部間を仕切る凹部と、を有することを特徴とする。ここで、「凹部」には、発泡成形時に形成される発泡体のセル(空孔)は含まれない。
【0009】
本発明の静電容量型センサによると、誘電層が、検出部に対応する単位部を有している。また、隣り合う単位部間には凹部が介在している。このため、凹部を挟んで隣接する単位部同士は、互いに相手方の単位部の変形の影響を受けにくい。したがって、近接(隣接していない場合を含む)する複数の検出部間において、検出座標に誤差が生じにくくなる。また、任意の単一の検出部において、検出値(例えば、荷重、変形量など)に誤差が生じにくくなる。
【0010】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記凹部は、前記誘電層を表裏方向に貫通するスリットである構成とする方がよい。スリットは、誘電層を貫通している。このため、本構成によると、スリットを挟んで隣接する単位部同士が、互いに相手方の単位部の変形の影響を受けにくくなる。また、静電容量型センサの表側から荷重が入力された場合と、裏側から荷重が入力された場合とで、スリットを挟んで隣接する単位部間の変形の影響は変わらない。このため、変形の影響に方向性が発生しにくい。
【0011】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記凹部は、前記単位部の外縁を囲むように配置される構成とする方がよい。本構成によると、任意の単位部に対して、略全周的に、他の単位部が影響を及ぼすことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、近接する複数の検出部間において、互いに変形の影響を受けにくい静電容量型センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一実施形態の静電容量型センサの斜視分解図である。
【図2】同静電容量型センサの上面透過図である。
【図3】図2のIII−III方向断面図である。
【図4】図2の枠IV内の拡大図である。
【図5】第二実施形態の静電容量型センサの前後方向断面図である。
【図6】同静電容量型センサの誘電層の製造方法に用いる金型の前後方向断面図である。
【図7】第三実施形態の静電容量型センサの上面透過図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の静電容量型センサの実施の形態について説明する。
【0015】
<第一実施形態>
[静電容量型センサの構成]
まず、本実施形態の静電容量型センサの構成について説明する。図1に、本実施形態の静電容量型センサの斜視分解図を示す。図2に、本実施形態の静電容量型センサの上面透過図を示す。図3に、図2のIII−III方向断面図を示す。なお、図1においては、表側基材3を透過して示す。また、表側配線用コネクタ5、裏側配線用コネクタ6、表側配線01x〜16x、裏側配線01y〜16yを省略して示す。また、図2においては、検出部A0101〜A1616、スリット20にハッチングを施して示す。
【0016】
図1〜図3に示すように、本実施形態の静電容量型センサ1は、誘電層2と、表側電極01X〜16Xと、裏側電極01Y〜16Yと、表側配線01x〜16xと、裏側配線01y〜16yと、表側基材3と、裏側基材4と、表側配線用コネクタ5と、裏側配線用コネクタ6と、制御装置7と、を備えている。なお、後述する検出部A0101〜A1616の符号「A○○△△」中、上二桁の「○○」は、表側電極01X〜16Xに対応している。下二桁の「△△」は、裏側電極01Y〜16Yに対応している。
【0017】
誘電層2は、ウレタン発泡体製であって、四角形板状を呈している。ウレタン発泡体は、本発明の「発泡体」の概念に含まれる。誘電層2は、多数のスリット20と、多数の単位部22と、を備えている。単位部22は、四角形状を呈している。単位部22は、後述する検出部A0101〜A1616に対応して、合計256箇所配置されている。
【0018】
スリット20は、断面帯状を呈している。スリット20は、非加熱状態でウレタン発泡体を打ち抜くことにより形成されている。また、スリット20は、上下方向(表裏方向)に誘電層2を貫通している。また、多数のスリット20は、単位部22の四縁(外縁)を囲むように、配置されている。
【0019】
表側基材3は、ゴム製であって、四角形板状を呈している。表側基材3は、誘電層2の上方(表側)に積層されている。裏側基材4は、ゴム製であって、四角形板状を呈している。裏側基材4は、誘電層2の下方(裏側)に積層されている。
【0020】
図3に示すように、表側基材3の外縁と裏側基材4の外縁とは、後述する表側配線用コネクタ5の接続部分、裏側配線用コネクタ6の接続部分を除いて、接合されている。すなわち、表側基材3と裏側基材4とは、袋状に貼り合わされている。誘電層2は、当該袋内に収容されている。誘電層2の上面四隅は、表側基材3の下面四隅に、スポット的に接着されている。また、誘電層2の下面四隅は、裏側基材4の上面四隅に、スポット的に接着されている。このように、誘電層2は、表側基材3および裏側基材4に、使用時にシワがよらないように、位置決めされている。ただし、誘電層2は、四隅が接着された状態で、表側基材3および裏側基材4に対して、水平方向(前後左右方向)に弾性変形可能である。
【0021】
表側電極01X〜16Xは、表側基材3の下面に、合計16本配置されている。表側電極01X〜16Xは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。表側電極01X〜16Xは、各々、帯状を呈している。表側電極01X〜16Xは、各々、左右方向に延在している。表側電極01X〜16Xは、前後方向に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。
【0022】
表側配線01x〜16xは、表側基材3の下面に、合計16本配置されている。表側配線01x〜16xは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。表側配線01x〜16xは、各々、線状を呈している。表側配線用コネクタ5は、表側基材3および裏側基材4の左辺中央に配置されている。表側配線01x〜16xは、各々、表側電極01X〜16Xの左端と、表側配線用コネクタ5と、を接続している。
【0023】
裏側電極01Y〜16Yは、裏側基材4の上面に、合計16本配置されている。裏側電極01Y〜16Yは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。裏側電極01Y〜16Yは、各々、帯状を呈している。裏側電極01Y〜16Yは、各々、前後方向に延在している。裏側電極01Y〜16Yは、左右方向に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。
【0024】
このように、表側電極01X〜16Xと裏側電極01Y〜16Yとは、上方または下方から見て、互いに直交する格子状に配置されている。また、多数の前記スリット20は、隣り合う表側電極01X〜16X間の隙間、および隣り合う裏側電極01Y〜16Y間の隙間に介在している。
【0025】
裏側配線01y〜16yは、裏側基材4の上面に、合計16本配置されている。裏側配線01y〜16yは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。裏側配線01y〜16yは、各々、線状を呈している。裏側配線用コネクタ6は、表側基材3および裏側基材4の左前隅に配置されている。裏側配線01y〜16yは、各々、裏側電極01Y〜16Yの前端と、裏側配線用コネクタ6と、を接続している。
【0026】
検出部A0101〜A1616は、図2にハッチングで示すように、表側電極01X〜16Xと、裏側電極01Y〜16Yと、が上下方向に交差する部分(重複する部分)に配置されている。検出部A0101〜A1616は、各々、表側電極01X〜16Xの一部と、裏側電極01Y〜16Yの一部と、誘電層2の一部である単位部22と、を備えている。検出部A0101〜A1616は、合計256個(=16個×16個)配置されている。検出部A0101〜A1616は、誘電層2の略全面に亘って、均等に配置されている。図1に示すように、多数の前記スリット20は、検出部A0101〜A1616同士を区画するように、誘電層2の全体に亘って、に点線格子状に配置されている。
【0027】
図4に、図2の枠IV内の拡大図を示す。図4に示すように、検出部A0215を構成する単位部22の前後左右には、四つのスリット20が配置されている。スリット20の長辺の長さは、単位部22の一辺の長さと同じである。このため、検出部A0215は、前後左右方向に隣接する検出部A0115、A0315、A0214、A0216から、隔離されている。他の検出部A0101〜A1616も、検出部A0215同様に、隣接する検出部A0101〜A1616から隔離されている。誘電層2は、前後方向に延在するスリット20と、左右方向に延在するスリット20と、の交差部23により、一体に繋がっている。すなわち、誘電層2は一体物である。
【0028】
図2に示すように、制御装置7は、表側配線用コネクタ5、裏側配線用コネクタ6と、電気的に接続されている。制御装置7は、記憶部70と演算部71とを有している。記憶部70には、検出部A0101〜A1616の静電容量と荷重との対応を示すテーブル、周囲温度に対する補正量などが格納されている。また、記憶部70には、表側配線用コネクタ5、裏側配線用コネクタ6から入力されるインピーダンス、位相が、一時的に格納される。演算部71は、当該インピーダンス、位相を基に、検出部A0101〜A1616の静電容量を算出する。そして、静電容量から検出部A0101〜A1616に加わる荷重を検出する。
【0029】
[静電容量型センサの動き]
次に、本実施形態の静電容量型センサ1の動きについて説明する。静電容量型センサ1の荷重検出の原理となるコンデンサーの静電容量は、以下の式(1)から算出される。
C=ε・S/d ・・・式(1)
式(1)中、Cは静電容量、εは誘電率、Sは対向する電極の重複面積、dは電極間距離である。電極間距離dは、誘電層2の上下方向厚さに相当する。重複面積Sは、図2にハッチングで示す検出部A0101〜A1616の面積、すなわち表側電極01X〜16Xと、裏側電極01Y〜16Yと、の重複面積に相当する。
【0030】
図3に示すように、任意の検出部A0101〜A1616に上方から荷重が加わると、誘電層2が上下方向に圧縮される。このため、誘電層2の上下方向厚さが小さくなる。ここで、誘電層2の上下方向厚さは、式(1)の電極間距離dに対応している。したがって、誘電層2の上下方向厚さが小さくなると、その分、静電容量Cが大きくなる。図2に示す制御装置7は、当該静電容量Cの変化を基に、任意の検出部A0101〜A1616に加わる荷重を算出する。
【0031】
ここで、図4に示すように、単一の検出部A0215だけに荷重が加えられる場合、検出部A0215の単位部22(誘電層2)が圧縮される。仮にスリット20が配置されていないと、検出部A0215の単位部22のみならず、前後左右方向に隣接する検出部A0115、A0315、A0214、A0216の単位部22も変形してしまうおそれがある。
【0032】
この点、検出部A0215の単位部22の周囲には、四つのスリット20が配置されている。このため、検出部A0215の単位部22の変形の影響が、前後左右方向に隣接する検出部A0115、A0315、A0214、A0216の単位部22に発現しにくい。つまり、荷重が加えられていない検出部A0115、A0315、A0214、A0216の単位部22が、荷重が加えられた検出部A0215の単位部22の影響を受けにくい。
【0033】
また、二つの検出部A0215、A0216に荷重が加えられる場合、検出部A0215、A0216の単位部22が圧縮される。仮に、検出部A0215に加えられる荷重の方が、検出部A0216に加えられる荷重よりも、大きい場合であって、検出部A0215、A0216間にスリット20が配置されていないと、検出部A0215の変形の影響が、検出部A0216に発現してしまう。
【0034】
この点、検出部A0215、A0216間にはスリット20が配置されている。このため、検出部A0215の単位部22の変形の影響が、検出部A0216の単位部22に発現しにくい。つまり、小荷重が加えられた検出部A0216の単位部22が、大荷重が加えられた検出部A0215の単位部22の影響を受けにくい。
【0035】
[作用効果]
次に、本実施形態の静電容量型センサ1の作用効果について説明する。本実施形態の静電容量型センサ1によると、誘電層2が、検出部A0101〜A1616に対応する単位部22を有している。また、隣り合う単位部22間にはスリット20が介在している。このため、スリット20を挟んで隣接する単位部22同士は、互いに相手方の単位部22の変形の影響を受けにくい。したがって、近接(隣接していない場合を含む)する複数の検出部A0101〜A1616間において、検出座標に誤差が生じにくくなる。また、任意の単一の検出部A0101〜A1616において、検出値(荷重)に誤差が生じにくくなる。
【0036】
また、本実施形態の静電容量型センサ1によると、スリット20が誘電層2を貫通している。このため、スリット20を挟んで隣接する単位部22同士が、互いに相手方の単位部22の変形の影響を受けにくくなる。また、静電容量型センサ1の表側から荷重が入力された場合と、裏側から荷重が入力された場合とで、スリット20を挟んで隣接する単位部22間の変形の影響は変わらない。このため、変形の影響に方向性が発生しにくい。
【0037】
また、本実施形態の静電容量型センサ1によると、スリット20が単位部22の外縁を囲むように配置されている。このため、任意の単位部22に対して、略全周的に、他の単位部22が影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態の静電容量型センサ1の誘電層2はウレタン発泡体製である。このため、荷重が入力される際、誘電層2は、上下方向に圧縮変形する分、水平方向に膨出しにくい。すなわち、当該膨出分をウレタン発泡体のセル(空孔)が消費するため、誘電層2の密度は上がるものの、水平方向に膨出しにくい。したがって、誘電層2の変形が、誘電層2に上下方向に積層される、表側基材3、裏側基材4により規制されにくい。また、スリット20の溝幅が狭い場合であっても、スリット20を挟んで隣接する単位部22同士が、互いに相手方の単位部22の変形の影響を受けにくい。
【0039】
また、本実施形態の静電容量型センサ1によると、誘電層2は、四隅において、表側基材3および裏側基材4に接着されている。このため、使用時に誘電層2にシワがよりにくい。
【0040】
また、本実施形態の静電容量型センサ1によると、スリット20は、トムソン刃を用いた、非加熱状態での打ち抜き加工により誘電層2に穿設されている。このため、発泡体を部分的に加熱し溶融させてスリット20を形成する場合と比較して、発泡体が変質しにくい。したがって、誘電層2の全体に亘って、特性がばらつきにくい。
【0041】
<第二実施形態>
本実施形態の静電容量型センサと、第一実施形態の静電容量型センサとの相違点は、スリットの代わりに、非貫通タイプの凹部が配置されている点である。ここでは相違点についてのみ説明する。
【0042】
図5に、本実施形態の静電容量型センサの前後方向断面図を示す。なお、図3と対応する部位については同じ符号で示す。図5に示すように、誘電層2における、図3のスリット20に対応する部位には、凹部21が配置されている。凹部21は、誘電層2の上面に開口している。凹部21は、誘電層2の下面に開口していない。
【0043】
図6に、同静電容量型センサの誘電層の製造方法に用いる金型の前後方向断面図を示す。図6に示すように、金型9は、共に金属製の下型90と上型91とを備えている。下型90は、上方に開口する凹部900を備えている。一方、上型91の下面には、凹部900に対向して、多数のリブ910が突設されている。多数のリブ910は、格子状に配置されている。
【0044】
誘電層2の製造時においては、まず、四角形板状のウレタン発泡体Uを、下型90の凹部900に収容する。次に、加熱された上型91を、下型90に当接させる。すなわち、型締めを行う。この際、ウレタン発泡体Uのうち、リブ910に対応する部分は、リブ910により下方に圧縮される。また、ウレタン発泡体Uのうち、リブ910に対応する部分は、リブ910により加熱され、溶融する。このようにして、図5に示すように、ウレタン発泡体Uつまり誘電層2に多数の凹部21が形成される。
【0045】
本実施形態の静電容量型センサ1と、第一実施形態の静電容量型センサとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。また、本実施形態の静電容量型センサ1によると、隣り合う単位部22間には凹部21が介在している。このため、凹部21を挟んで隣接する単位部22同士は、互いに相手方の単位部22の変形の影響を受けにくい。したがって、近接(隣接していない場合を含む)する複数の検出部A0101〜A1616間において、検出座標に誤差が生じにくくなる。また、任意の単一の検出部A0101〜A1616において、検出値(荷重)に誤差が生じにくくなる。
【0046】
<第三実施形態>
本実施形態の静電容量型センサと、第一実施形態の静電容量型センサとの相違点は、前後方向に延在するスリットが、点線状ではなく、直線状に連なっている点である。ここでは相違点についてのみ説明する。
【0047】
図7に、本実施形態の静電容量型センサの上面透過図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。また、前後方向に延在するスリット20を強調して示す。図7に示すように、前後方向に延在するスリット20は、裏側電極01Y〜16Yの前後方向略全長に亘って延在している。左右方向に隣接する検出部A0101〜A1616同士は、前後方向に延在するスリット20により、完全に分断されている。
【0048】
本実施形態の静電容量型センサ1と、第一実施形態の静電容量型センサとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。また、本実施形態の静電容量型センサ1によると、左右方向に隣接する検出部A0101〜A1616同士が、前後方向に延在するスリット20により、完全に分断されている。このため、左右方向に隣接する検出部A0101〜A1616同士が、互いの変形の影響を受けなくなる。
【0049】
<その他>
以上、本発明の静電容量型センサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0050】
例えば、誘電層2の材質は特に限定しない。発泡体であればよい。例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、天然ゴム、イソプレンゴムのような、エラストマーの発泡体を用いてもよい。また、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、ユリア樹脂、シリコーン、ポリイミド、メラミン樹脂のような、樹脂の発泡体を用いてもよい。
【0051】
また、発泡体の製造方法は特に限定しない。例えば、発泡体は、スラブ品(駆動中のコンベア上に原液を流し連続発泡させることにより、発泡体の連続体を製造した後、当該連続体を所定長に裁断することにより得られる発泡体)であっても、モールド品(金型に原液を注入し発泡させた後、金型から取り出すことにより得られる発泡体)であってもよい。また、発泡体のセル(気泡)は、独泡タイプでも連泡タイプでもよい。
【0052】
また、上記実施形態の静電容量型センサ1の場合、表側電極01X〜16X、表側配線01x〜16x、裏側電極01Y〜16Y、裏側配線01y〜16yを、エラストマーを含んで形成した。この場合、これらの電極および配線が伸縮するため、誘電層2と一体となって変形することができる、という利点がある。これらの電極および配線は、金属製であってもよい。また、有機繊維の表面に金属めっきを施した材料製であってもよい。
【0053】
また、表側電極01X〜16X、裏側電極01Y〜16Yの本数、形状(電極の幅、長さなど)、配置(隣接する電極間の間隔、表側電極と裏側電極との交差角度など)は特に限定しない。
【0054】
また、スリット20、凹部21の溝幅は特に限定しない。上記実施形態においては、隣接する電極間の間隔を100%として、スリット20、凹部21の溝幅を50%とした。しかしながら、スリット20、凹部21の溝幅は、隣接する電極間の間隔を100%として、0%以上100%以下であればよい。
【0055】
また、スリット20、凹部21の位置は特に限定しない。上記実施形態においては、隣接する電極間の中央に、スリット20、凹部21を配置した。しかしながら、どちらか片方の電極寄りにスリット20、凹部21を配置してもよい。
【0056】
また、検出部A0101〜A1616の形状は特に限定しない。例えば、正方形状、長方形状、三角形、五角形などの多角形状、真円形、楕円形、長円形(対向する一対の半円同士を一対の直線で繋いだ形状)であってもよい。この場合、スリット20、凹部21を、検出部A0101〜A1616の外縁を囲むように配置してもよい。例えば、検出部A0101〜A1616よりも一回り大きく、かつ検出部A0101〜A1616と相似形の、スリット20、凹部21を配置してもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、静電容量型センサ1に対する荷重入力方向を上下方向としたが、荷重入力方向は特に限定しない。左右方向、前後方向、またはこれらの方向に対して傾斜する方向であってもよい。また、静電容量型センサ1の配置方向も水平方向に限定しない。垂直方向、または水平方向および垂直方向に対して傾斜する方向であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1:静電容量型センサ、2:誘電層、3:表側基材、4:裏側基材、5:表側配線用コネクタ、6:裏側配線用コネクタ、7:制御装置、9:金型。
01X〜16X:表側電極、01Y〜16Y:裏側電極、01x〜16x:表側配線、01y〜16y:裏側配線、20:スリット、21:凹部、22:単位部、23:交差部、70:記憶部、71:演算部、90:下型、91:上型、900:凹部、910:リブ。
A0101〜A1616:検出部、U:ウレタン発泡体(発泡体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体製であって一体物の誘電層と、
該誘電層の表側に配置される複数の表側電極と、
該誘電層の裏側に配置される複数の裏側電極と、
表側または裏側から見て、該表側電極と該裏側電極とが重複する部分に配置される複数の検出部と、
を備える静電容量型センサであって、
前記誘電層は、前記検出部を構成する単位部と、隣り合う該単位部間を仕切る凹部と、を有することを特徴とする静電容量型センサ。
【請求項2】
前記凹部は、前記誘電層を表裏方向に貫通するスリットである請求項1に記載の静電容量型センサ。
【請求項3】
前記凹部は、前記単位部の外縁を囲むように配置される請求項1または請求項2に記載の静電容量型センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−173101(P2012−173101A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34677(P2011−34677)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】