説明

静電容量型面状センサ

【課題】 比較的安価で、配線の電気抵抗の差が小さく、面圧分布の測定精度が高い静電容量型面状センサを提供する。
【解決手段】 静電容量型面状センサ1は、誘電層20と、バインダーおよび導電性炭素粉末を含む複数の表側電極01Y〜08Yと、バインダーおよび導電性炭素粉末を含む複数の裏側電極01X〜08Xと、誘電層20を介して表側電極01Y〜08Yと裏側電極01X〜08Xとが対向することにより形成される複数の検出部A0101〜A0808と、バインダーおよび導電性炭素粉末を含む複数の表側配線01y〜08yと、バインダーおよび導電性炭素粉末を含む複数の裏側配線01x〜08xと、を備える。複数の表側配線01y〜08yおよび複数の裏側配線01x〜08xの各々の電気抵抗は、略同じである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量の変化から面圧分布を検出可能な静電容量型面状センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、誘電層、表側電極、裏側電極、検出部、表側配線、および裏側配線を備える静電容量型面状センサが開示されている。静電容量型面状センサに荷重が加わると、荷重が加わった部分に対応する検出部の厚さ、すなわち、表側電極と裏側電極との間の距離が変化する。これにより、検出部の静電容量が変化する。静電容量型面状センサは、当該静電容量の変化に基づいて、面圧分布を検出する。
【0003】
同文献に開示された静電容量型面状センサにおいては、誘電層は、エラストマーからなる。よって、誘電層の弾性変形を規制しないように、表側電極、裏側電極(以下、適宜「電極」と称す)は、各々、エラストマー分のポリマーとカーボンブラックとを含むカーボンペーストから形成される。また、電極よりも電気抵抗を小さくするため、表側配線、裏側配線(以下、適宜「配線」と称す)は、各々、エラストマー分のポリマーと銀粉末とを含む銀ペーストから形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−43881号公報
【特許文献2】特開2007−10338号公報
【特許文献3】特開2009−9291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配線材料の銀ペーストは、比較的高価である。加えて、銀ペーストを印刷して配線を形成する場合には、多層刷りを行うことが多い。このため、銀ペーストの使用量が多く、コスト高になる。また、電極材料と配線材料とが異なるため、電極と配線とを別々に形成する必要がある。したがって、コスト削減、作業効率の向上という観点から、配線についても、電極と同様に、カーボンペーストから形成することが望ましい。
【0006】
ところで、物体の電気抵抗は、次の式(1)から算出される。
r=ρL/S・・・(1)
式(1)中、rは電気抵抗、ρは体積抵抗率、Lは長さ、Sは断面積(厚さ×幅)である。式(1)から明らかなように、物体の長さLが長いほど、電気抵抗rは大きくなる。静電容量型面状センサにおいて、配線は、個々の電極とコネクタとを接続する。通常、電極における配線との接続部がコネクタから遠いほど、電極−コネクタ間の長さは長くなる。つまり、配線の長さは長くなる。よって、配線の電気抵抗は大きくなる。
【0007】
配線からの出力値には、電極および配線の抵抗成分が含まれる。したがって、静電容量の測定において、配線からの出力値をそのまま用いると、検出部の位置ごとに、電極および配線の合計抵抗が異なることにより、静電容量が変わってしまうおそれがある。これにより、面圧分布の測定精度が低下する。静電容量の測定方法としては、インピーダンス方式や、チャージ電荷方式が知られている。特に、インピーダンス方式の場合、配線の電気抵抗の影響を受けやすい。また、チャージ電荷方式においては、配線の電気抵抗により、電荷チャージ量が変化する。特に、周波数を高くした場合に、電荷チャージ量の差が大きくなる。
【0008】
通常、電極の幅は、配線の幅よりも広い。また、個々の電極の長さは略一定である。よって、検出部の位置による静電容量のばらつきは、主に配線の電気抵抗の差から生じると考えてよい。カーボンペーストは、バインダーのポリマーにカーボンブラックを混合して調製される。しかし、銀粉末と比較して、カーボンブラックの体積抵抗率は大きい。このため、カーボンペーストから配線を形成すると、銀ペーストから配線を形成した場合と比較して、配線の電気抵抗が大きくなる。したがって、検出部の位置により静電容量が変化するという上記問題が、より顕著になる。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、比較的安価で、配線の電気抵抗の差が小さく、面圧分布の測定精度が高い静電容量型面状センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するため、本発明の静電容量型面状センサは、エラストマーまたは樹脂製の誘電層と、該誘電層の表側に配置され、バインダーおよび導電性炭素粉末を含む複数の表側電極と、該誘電層の裏側に配置され、バインダーおよび導電性炭素粉末を含む複数の裏側電極と、該誘電層を介して該表側電極と該裏側電極とが対向することにより形成される複数の検出部と、該表側電極に接続され、バインダーおよび導電性炭素粉末を含む複数の表側配線と、該裏側電極に接続され、バインダーおよび導電性炭素粉末を含む複数の裏側配線と、を備え、該検出部の静電容量の変化から面圧分布を検出可能な静電容量型面状センサであって、複数の該表側配線および複数の該裏側配線の各々の電気抵抗は、略同じであることを特徴とする。
【0011】
本発明の静電容量型面状センサにおいて、表側電極および表側配線は、共に、バインダーおよび導電性炭素粉末を含んで形成される。同様に、裏側電極および裏側配線も、バインダーおよび導電性炭素粉末を含んで形成される。配線材料として銀粉末を使用しないため、製造コストを削減することができる。また、印刷法により、表側配線、裏側配線を形成する場合には、各々、バインダーおよび導電性炭素粉末を含む配線材料を、一回塗工すればよい。つまり、必ずしも多層刷りは必要ない。また、表側電極と表側配線、裏側電極と裏側配線を、各々同時に形成することも可能である。この場合、作業工程を減らすことができ、よりコスト削減を図ることができる。このように、本発明の静電容量型面状センサは、量産化に好適である。
【0012】
表側配線は、複数の表側電極の各々と表側コネクタとを接続する。表側配線の電気抵抗は、表側配線の両端間、つまり、表側電極への接続端と表側コネクタへの接続端との間の電気抵抗である。同様に、裏側配線は、複数の裏側電極の各々と裏側コネクタとを接続する。裏側配線の電気抵抗は、裏側配線の両端間、つまり、裏側電極への接続端と裏側コネクタへの接続端との間の電気抵抗である。また、「電気抵抗が略同じ」とは、任意の配線を比較した場合、それらの電気抵抗の差が、20kΩ以下であることを意味する。
【0013】
本発明の静電容量型面状センサによると、表側配線、裏側配線の長さが異なっていても、それらの電気抵抗は略同じである。このため、検出部の位置ごとにおける、電極および配線の合計抵抗の差は、小さい。したがって、検出部の位置による、静電容量のばらつきは小さい。このように、本発明の静電容量型面状センサにおいては、静電容量の場所依存性が小さい。したがって、面圧分布の測定精度が高い。
【0014】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、複数の前記表側配線および複数の前記裏側配線は、長さが長いほど断面積が大きい配線を含む構成とする方がよい。
【0015】
配線の体積抵抗率、長さが同じ場合、上記式(1)に示すように、断面積が大きいほど、電気抵抗は小さくなる。したがって、長い配線ほど断面積を大きくすることにより、長さが異なる複数の配線の電気抵抗を、略同じにすることができる。つまり、本構成によると、配線の長さに応じて断面積を調整することにより、長さが異なる複数の配線の電気抵抗を、容易に揃えることができる。なお、表側配線および裏側配線のうちの一部の配線を、長さが長いほど断面積が大きくなるように形成してもよい。また、表側配線および裏側配線の全てを、長さが長いほど断面積が大きくなるように形成してもよい。
【0016】
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、複数の前記表側配線および複数の前記裏側配線は、長さが長いほど幅が広い配線を含む構成とする方がよい。
【0017】
配線の断面積は、幅および厚さで調整される(断面積=幅×厚さ)。配線を印刷法により形成する場合、使用する版の制約、作業効率等の観点から、配線ごとに厚さを変えることは難しい。この点、本構成によると、配線の厚さが同じ場合でも、幅を広くすることにより、断面積を大きくすることができる。これにより、複数の配線の電気抵抗を、容易に揃えることができる。
【0018】
なお、特許文献2には、アルミニウム製の配線群を備える面圧分布センサが開示されている。当該面圧センサによると、基板の折り曲げ部分に形成される配線群の幅が、広く形成されている。また、基板の狭い領域に形成される配線群の幅が、狭く形成されている。しかし、特許文献2の面圧分布センサにおいては、配線の幅を変えて、折り曲げ部分における配線の耐久性と、省スペース化とを図っているにすぎない。したがって、配線の電気抵抗は全く考慮されていない。
【0019】
また、特許文献3には、基板上に二次元マトリクス状に配置される酸化インジウム錫(ITO)製の複数のパッド電極と、該パッド電極を相互に接続するITO製の行接続電極および列接続電極と、マトリクス周縁に配置される座標検出端子と、を備えるタッチセンサが開示されている。行接続電極および列接続電極の幅は、マトリクスの中央部において広く形成されている。しかし、行接続電極および列接続電極は、各々のパッド電極と座標検出端子とを接続していない。パッド電極と座標検出端子とは、別途、金属製の配線で接続されている。このように、特許文献3には、配線の電気抵抗を揃えるという思想はない。
【0020】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、複数の前記表側配線および複数の前記裏側配線は、幅狭部を有する配線を含む構成とする方がよい。
【0021】
上述したように、配線の体積抵抗率、長さが同じ場合、断面積が大きいほど、電気抵抗は小さくなる。厚さが一定の配線が幅狭部を有する場合、幅狭部において、断面積が他の部分よりも小さくなる。よって、幅狭部の分だけ、配線の電気抵抗が大きくなる。本構成によると、任意の配線に幅狭部を適宜配置して、当該配線の電気抵抗を大きくする。例えば、長さが最も長い最長配線以外の配線に、幅狭部を配置して、全ての配線の電気抵抗を、最長配線の電気抵抗に揃えることができる。
【0022】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記表側電極、前記裏側電極、前記表側配線、および前記裏側配線は、全て印刷法により形成される構成とする方がよい。
【0023】
本構成によると、電極や配線の形成成分を含む塗料を印刷するだけで、電極および配線を容易に形成することができる。印刷法によれば、大きな面積、薄膜、細線、複雑な形状の場合でも、電極、配線を形成しやすい。印刷する際には、バインダーおよび導電性炭素粉末を含む塗料を、一回塗工すればよい。つまり、必ずしも多層刷りは必要ない。また、表側電極と表側配線、裏側電極と裏側配線を、各々同時に形成することも可能である。したがって、作業工程を減らすことができ、コスト削減を図ることができる。また、量産化にも好適である。
【0024】
印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、パッド印刷、リソグラフィー等が挙げられる。なかでも、高粘度の塗料が使用でき、塗膜厚さの調整が容易であるという理由から、スクリーン印刷法が好適である。
【0025】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記表側電極は、帯状を呈し複数列並んで配列され、前記裏側電極は、帯状を呈し複数列並んで配列され、複数の該表側電極と複数の該裏側電極とは、表裏方向から見て、略直交して配置される構成とする方がよい。
【0026】
本構成において、表側電極、裏側電極は、共に帯状である。並びに、検出部は、表側電極と裏側電極との交差部分を利用して配置される。このため、電極の配置数が少なくなる。また、検出部から静電容量を検出するための配線数が少なくなる。また、本構成によると、複数の検出部を、センサの全面に分散させやすい。なお、本明細書において「帯状」とは、細長い形状を意味し、必ずしも幅が長手方向に一定でなくてもよい。例えば、長手方向の所定の部分の幅が広くなっていても、反対に所定の部分の幅が狭くなっていてもよい。また、両側部は直線状でも、曲線状でもよい。配列される表側電極の間隔は、同じでも異なっていてもよい。同様に、裏側電極の間隔も、同じでも異なっていてもよい。
【0027】
(7)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、さらに、前記誘電層を介して対向配置される表側基材と裏側基材とを備え、該表側基材の裏面には、該誘電層の表面に接触するように配置される複数の前記表側電極と、複数の前記表側配線と、が形成されており、該裏側基材の表面には、該誘電層の裏面に接触するように配置される複数の前記表側電極と、複数の前記裏側配線と、が形成される構成とする方がよい。
【0028】
例えば、誘電層がエラストマーまたは樹脂の発泡体からなる場合には、誘電層の表面および裏面に、直接印刷することにより、表側電極、裏側電極等を形成することは難しい。この点、本構成によると、誘電層に直接印刷することなく、誘電層の表面および裏面に、表側電極、裏側電極等を、配置することができる。したがって、誘電層の材料選択の自由度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第一実施形態の静電容量型面状センサの上面透過図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】同静電容量型面状センサの製造方法における積層工程の模式図である。
【図4】第二実施形態の静電容量型面状センサにおける裏側配線付近の拡大図である。
【図5】第三実施形態の静電容量型面状センサにおける裏側配線付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の静電容量型面状センサの実施の形態について説明する。
【0031】
<第一実施形態>
[静電容量型面状センサの構成]
まず、本実施形態の静電容量型面状センサの構成について説明する。図1に、本実施形態の静電容量型面状センサの上面透過図を示す。図2に、図1のII−II断面図を示す。図1においては、表裏方向(厚さ方向)に積層される部材を透過して示す。また、検出部A0101〜A0808にハッチングを施して示す。検出部の符号「A○○△△」中、上二桁の「○○」は、裏側電極01X〜08Xに対応している。下二桁の「△△」は、表側電極01Y〜08Yに対応している。図1、図2に示すように、本実施形態の静電容量型面状センサ1は、誘電層20と、表側基材21と、裏側基材22と、表側電極01Y〜08Yと、裏側電極01X〜08Xと、検出部A0101〜A0808と、表側配線01y〜08yと、裏側配線01x〜08xと、表側コネクタ23と、裏側コネクタ24と、を備えている。
【0032】
誘電層20は、ウレタンフォーム製であって、矩形シート状を呈している。誘電層20は、XY方向(前後左右方向)に延在している。表側基材21は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムである。同様に、裏側基材22は、PET製のフィルムである。表側基材21の形状と、裏側基材22の形状は、同じである。表側基材21と裏側基材22とは、誘電層20を挟んで積層されている。
【0033】
表側電極01Y〜08Yは、表側基材21の裏面(下面)に、合計8本配置されている。表側電極01Y〜08Yは、各々、ポリエステル樹脂および導電性カーボンブラックを含んで形成されている。表側電極01Y〜08Yは、各々、帯状を呈している。表側電極01Y〜08Yは、各々、Y方向(前後方向)に延在している。表側電極01Y〜08Yは、X方向(左右方向)に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。表側電極01Y〜08Yは、各々、誘電層20の表面(上面)に接触するように配置されている。
【0034】
表側配線01y〜08yは、表側基材21の裏面に、合計8本配置されている。表側配線01y〜08yは、各々、ポリエステル樹脂および導電性カーボンブラックを含んで形成されている。表側コネクタ23は、表側基材21の裏面の右後隅に配置されている。表側コネクタ23には、図示しない演算部が、電気的に接続されている。表側配線01y〜08yは、各々、表側電極01Y〜08Yの後端部と、表側コネクタ23と、を接続している。
【0035】
表側配線01y〜08yは、各々、幅および長さが異なる線状を呈している。具体的には、表側配線01y〜08yの長さは、表側電極01Y〜08Yの後端部−表側コネクタ23間の距離に応じて、08y→07y→06y→05y→04y→03y→02y→01yの順に、長くなっている。また、表側配線01y〜08yの幅は、08y→07y→06y→05y→04y→03y→02y→01yの順に、広くなっている。つまり、表側配線01y〜08yにおいては、長さが長いほど、幅が広くなっている。なお、表側配線01y〜08yの幅は、全長に亘って一定である。表側配線01y〜08yの厚さは、全て同じである。よって、表側配線01y〜08yにおいては、長さが長いほど、断面積が大きくなっている。これにより、表側配線01y〜08yの各々の電気抵抗は、略同じになっている。
【0036】
裏側電極01X〜08Xは、裏側基材22の表面(上面)に、合計8本配置されている。裏側電極01X〜08Xは、各々、ポリエステル樹脂および導電性カーボンブラックを含んで形成されている。裏側電極01X〜08Xは、各々、帯状を呈している。裏側電極01X〜08Xは、各々、X方向(左右方向)に延在している。裏側電極01X〜08Xは、Y方向(前後方向)に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。裏側電極01X〜08Xは、各々、誘電層20の裏面(下面)に接触するように配置されている。
【0037】
裏側配線01x〜08xは、裏側基材22の表面に、合計8本配置されている。裏側配線01x〜08xは、各々、ポリエステル樹脂および導電性カーボンブラックを含んで形成されている。裏側コネクタ24は、裏側基材22の表面の右後隅に配置されている。裏側コネクタ24には、図示しない演算部が、電気的に接続されている。裏側配線01x〜08xは、各々、裏側電極01X〜08Xの右端部と、裏側コネクタ24と、を接続している。
【0038】
裏側配線01x〜08xは、各々、幅および長さが異なる線状を呈している。具体的には、裏側配線01x〜08xの長さは、裏側電極01X〜08Xの右端部−裏側コネクタ24間の距離に応じて、08x→07x→06x→05x→04x→03x→02x→01xの順に、長くなっている。また、裏側配線01x〜08xの幅は、08x→07x→06x→05x→04x→03x→02x→01xの順に、広くなっている。つまり、裏側配線01x〜08xにおいては、長さが長いほど、幅が広くなっている。なお、裏側配線01x〜08xの幅は、全長に亘って一定である。裏側配線01x〜08xの厚さは、全て同じである。よって、裏側配線01x〜08xにおいては、長さが長いほど、断面積が大きくなっている。これにより、裏側配線01x〜08xの各々の電気抵抗は、略同じになっている。
【0039】
検出部A0101〜A0808は、図1にハッチングで示すように、表側電極01Y〜08Yと、裏側電極01X〜08Xと、が上下方向に交差する部分(重複する部分)に配置されている。検出部A0101〜A0808は、合計64個(=8個×8個)配置されている。検出部A0101〜A0808は、誘電層20の略全面に亘って、略等間隔に配置されている。検出部A0101〜A0808は、各々、表側電極01Y〜08Yの一部と、裏側電極01X〜08Xの一部と、誘電層20の一部と、を備えている。検出部A0101〜A0808を包囲する矩形状の領域Sにおいて、面圧分布が検出される。
【0040】
[静電容量型面状センサの製造方法]
次に、本実施形態の静電容量型面状センサ1の製造方法について説明する。本実施形態の静電容量型面状センサ1の製造方法は、導電塗料調製工程と、表側印刷工程と、裏側印刷工程と、積層工程と、基材貼着工程と、を有している。
【0041】
導電塗料調製工程においては、電極および配線を形成するための導電塗料を調製する。導電塗料は、溶剤のエチルカルビトールアセテート200質量部に、バインダーポリマーのポリエステル樹脂100質量部、イソシアネート系硬化剤5質量部、および導電性カーボンブラック(ケッチェンブラック、ライオン(株)製「EC300J」)60質量部を添加して、ロールで混練りして調製した。
【0042】
表側印刷工程においては、調製した導電塗料を、スクリーン印刷機を用いて、表側基材21の下面(図2における下面。印刷時には上向きに配置する。)に印刷する。その後、加熱により塗膜を硬化させて、表側電極01Y〜08Yおよび表側配線01y〜08yを形成する。
【0043】
裏側印刷工程においては、表側印刷工程と同様に、スクリーン印刷機を用いて、裏側基材22の上面に導電塗料を印刷する。その後、加熱により塗膜を硬化させて、裏側電極01X〜08Xおよび裏側配線01x〜08xを形成する。
【0044】
積層工程においては、表側基材21、誘電層20、および裏側基材22を積層する。図3に、本工程の模式図を示す。図3は、図2(図1のII−II断面)に対応する。図3に示すように、本工程においては、下から順に、裏側基材22、誘電層20、表側基材21を積層する。この際、誘電層20は、形成された表側電極01Y〜08Yと、裏側電極01X〜08Xと、の間に挟持される。
【0045】
基材貼着工程においては、積層された表側基材21および裏側基材22の周縁部を、貼り合わせる。このようにして、本実施形態の静電容量型面状センサ1は、製造される。
【0046】
[静電容量型面状センサの動き]
次に、本実施形態の静電容量型面状センサ1の動きについて説明する。静電容量型面状センサ1においては、静電容量の測定方法として、チャージ電荷方式を採用している。すなわち、表側コネクタ23、裏側コネクタ24に接続される演算部は、積分回路を有している。積分回路は、抵抗、コンデンサ、およびオペアンプから構成されている。表側電極01Y〜08Y、裏側電極01X〜08Xには、矩形波電圧を印加する。検出部A0101〜A0808において発生した電荷は、積分回路で積分されて電圧値に変換された後、増幅されて出力される。出力された電圧値から、静電容量Cが算出される。
【0047】
まず、静電容量型面状センサ1に荷重が加わる前(初期状態)に、検出部A0101〜A0808ごとに、静電容量Cを算出する。すなわち、検出部A0101から検出部A0808までを、あたかも走査するように、静電容量Cを算出する。続いて、静電容量型面状センサ1に荷重が加わった後に、検出部A0101〜A0808ごとに、静電容量Cを算出する。荷重が加わった部分の検出部においては、表側電極と裏側電極との距離が小さくなる。これにより、当該検出部の静電容量Cは、大きくなる。この静電容量Cの変化量ΔCから、検出部A0101〜A0808ごとの面圧が算出される。
【0048】
[作用効果]
次に、本実施形態の静電容量型面状センサ1の作用効果について説明する。本実施形態の静電容量型面状センサ1によると、表側電極01Y〜08Y、表側配線01y〜08y、裏側電極01X〜08X、および裏側配線01x〜08xは、いずれも、ポリエステル樹脂および導電性カーボンブラックを含んで形成されている。配線材料として、銀粉末を使用しないため、低コストである。
【0049】
また、表側配線01y〜08y、裏側配線01x〜08xにおいては、いずれも、長さが長いほど、幅が広い。つまり、表側配線01y〜08y、裏側配線01x〜08xにおいては、長さが長いほど、断面積が大きい。これにより、表側配線01y〜08y、裏側配線01x〜08xの電気抵抗を、容易に揃えることができる。すなわち、表側配線01y〜08yにおいては、長さが異なっていても、電気抵抗は略同じである。裏側配線01x〜08xにおいても、同様に、電気抵抗は略同じである。このため、検出部A0101〜A0808において、配線の電気抵抗の差に起因する静電容量のばらつきは小さい。したがって、面圧分布の測定精度が高い。
【0050】
また、表側電極01Y〜08Y、表側配線01y〜08yは、スクリーン印刷による一層刷りで、形成されている。裏側電極01X〜08X、裏側配線01x〜08xについても、同様である。印刷法を採用することにより、幅が異なる表側配線01y〜08y、裏側配線01x〜08xの各々を、容易に形成することができる。また、電極および配線が、一回の印刷で形成されるため、作業工程を減らすことができる。これにより、静電容量型面状センサ1を、効率良くかつ低コストに製造することができる。したがって、静電容量型面状センサ1は、量産化に好適である。
【0051】
表側電極01Y〜08Y、裏側電極01X〜08Xは、共に帯状である。並びに、検出部A0101〜A0808は、表側電極01Y〜08Yと裏側電極01X〜08Xとの交差部分を利用して配置されている。このため、電極の配置数が少なくなる。また、配線数も少なくなる。
【0052】
また、表側電極01Y〜08Yは、誘電層20の全面に亘って、X方向およびY方向に、略等間隔に配置されている。同様に、裏側電極01X〜08Xは、誘電層20の全面に亘って、X方向およびY方向に、略等間隔に配置されている。また、表側電極01Y〜08Yと、裏側電極01X〜08Xと、は上下方向から見て、略直交して配置されている。このため、検出部A0101〜A0808を、誘電層20の全面に分散させることができる。
【0053】
また、表側電極01Y〜08Y、表側配線01y〜08yは、表側基材21の下面に形成されている。裏側電極01X〜08X、裏側配線01x〜08xは、裏側基材22の上面に形成されている。すなわち、電極、配線を、誘電層20に直接印刷しない。このため、発泡体等の印刷に不向きな材料であっても、誘電層20として用いることができる。したがって、誘電層20の材料選択の自由度が高い。
【0054】
<第二実施形態>
本実施形態の静電容量型面状センサと、第一実施形態の静電容量型面状センサと、の相違点は、表側配線01y〜08y、裏側配線01x〜08xについて、個々の配線の幅(全長に亘り一定)を変えるのではなく、配線の途中に幅狭部を配置して、電気抵抗を揃えた点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。なお、表側配線01y〜08y、裏側配線01x〜08xの構成は同じである。したがって、ここでは両者を代表して、裏側配線01x〜08xについて説明する。
【0055】
図4に、本実施形態の静電容量型面状センサにおける裏側配線付近の拡大図を示す。図1と対応する部位については、同じ符合で示す。なお、説明の便宜上、図4においては、表側基材21を省略して示す。図4に示すように、裏側配線01x〜08xは、裏側基材22の表面に、合計8本配置されている。
【0056】
裏側配線01x〜08xの厚さ、および後述する幅狭部30以外の部分の幅は、全て同じである。裏側配線01x〜08xの長さは、裏側電極01X〜08Xの右端部−裏側コネクタ24間の距離に応じて、08x→07x→06x→05x→04x→03x→02x→01xの順に、長くなっている。つまり、裏側配線01xの長さが、最も長い。最長の裏側配線01x以外の裏側配線02x〜08xは、各々、幅狭部30を有する。幅狭部30は、段差状にくびれた形状を呈している。幅狭部30においては、同じ配線の他の部分よりも、断面積が小さくなっている。したがって、幅狭部30の数が多いほど、配線の電気抵抗は大きくなる。具体的には、裏側配線02xは、幅狭部30を一つ有する。そして、配線の長さが短くなるごとに、幅狭部30の数が一つずつ増加している。したがって、最も短い裏側配線08xは、幅狭部30を七つ有する。このように、長さが異なっていても、幅狭部30が配置されていることにより、裏側配線01x〜08xの電気抵抗は、略同じになっている。換言すれば、最長の裏側配線01x以外の裏側配線02x〜08xに、幅狭部30を適宜配置することにより、裏側配線02x〜08xの電気抵抗が、裏側配線01xの電気抵抗に揃えられている。
【0057】
本実施形態の静電容量型面状センサは、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の静電容量型面状センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の静電容量型面状センサによると、厚さおよび幅が同じ裏側配線02x〜08xに、幅狭部30を配置することにより、裏側配線02x〜08xの電気抵抗を大きくすることができる。これにより、裏側配線02x〜08xの全ての電気抵抗を、最長の裏側配線01xの電気抵抗に揃えることができる。また、幅狭部30の配置数を変えることにより、裏側配線02x〜08xの電気抵抗を、容易に調整することができる。
【0058】
<第三実施形態>
本実施形態の静電容量型面状センサと、第二実施形態の静電容量型面状センサと、の相違点は、表側配線01y〜08y、裏側配線01x〜08xを、全長に亘り幅を変えた配線と、途中に幅狭部を配置した配線と、の両方で構成した点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。なお、表側配線01y〜08y、裏側配線01x〜08xの構成は同じである。したがって、第二実施形態と同様、ここでは両者を代表して、裏側配線01x〜08xについて説明する。
【0059】
図5に、本実施形態の静電容量型面状センサにおける裏側配線付近の拡大図を示す。図4と対応する部位については、同じ符合で示す。また、図4と同様に、図5においても、表側基材21を省略して示す。図5に示すように、裏側配線01x〜08xは、裏側基材22の表面に、合計8本配置されている。
【0060】
裏側配線01x〜08xの厚さは、全て同じである。裏側配線01x〜08xの長さは、裏側電極01X〜08Xの右端部−裏側コネクタ24間の距離に応じて、08x→07x→06x→05x→04x→03x→02x→01xの順に、長くなっている。
【0061】
裏側配線01xの幅は、裏側配線02xの幅よりも、広くなっている。裏側配線01x、02xの幅は、全長に亘って一定である。裏側配線01xの長さは、裏側配線02xの長さよりも長い。よって、裏側配線01xにおいては、幅を広くして、断面積を大きくすることにより、電気抵抗を小さくしている。これにより、裏側配線01x、02xの電気抵抗は、略同じになっている。
【0062】
また、裏側配線07xの幅は、裏側配線02xの幅よりも、狭くなっている。裏側配線07xの幅は、全長に亘って一定である。裏側配線07xの長さは、裏側配線02xの長さよりも短い。よって、裏側配線07xにおいては、幅を狭くして、断面積を小さくすることにより、電気抵抗を大きくしている。また、裏側配線08xの幅は、裏側配線07xの幅よりも、さらに狭くなっている。裏側配線08xの幅は、全長に亘って一定である。裏側配線08xの長さは、裏側配線07xの長さよりも短い。よって、裏側配線08xにおいては、幅をさらに狭くして、断面積を小さくすることにより、電気抵抗を大きくしている。こうすることにより、裏側配線07x、08xの電気抵抗は、裏側配線01x、02xの電気抵抗と、略同じになっている。
【0063】
一方、裏側配線02x〜06xの幅は、後述する幅狭部30〜32以外の部分において、全て同じである。裏側配線03xは、幅狭部30を一つ有する。幅狭部30は、段差状にくびれた形状を呈している。裏側配線03xよりも短い裏側配線04xは、幅狭部30を二つ有する。上述したように、幅狭部30の数が多いほど、配線の電気抵抗は大きくなる。したがって、長さが短くても、幅狭部30が配置されていることにより、裏側配線03x、04xの電気抵抗は、裏側配線01x、02xの電気抵抗と、略同じになっている。
【0064】
また、裏側配線05xは、幅狭部31と幅狭部32とを一つずつ有する。幅狭部31、32は、いずれもスロープ状にくびれた形状を呈している。幅狭部31は、幅狭部32よりも長さ方向に大きい。幅狭部の配置数のみを比較すると、裏側配線04x、裏側配線05xは、いずれも二つの幅狭部を有する。しかし、裏側配線04xに配置された幅狭部30と、裏側配線05xに配置された幅狭部31、32とは、形状および大きさが異なる。すなわち、裏側配線04x、05xにおいては、各々の長さに応じて、異なる形状、大きさの幅狭部30〜32を配置することにより、電気抵抗が調整されている。これにより、裏側配線05xの電気抵抗は、裏側配線04xの電気抵抗と、略同じになっている。つまり、裏側配線05xの電気抵抗は、裏側配線01x、02xの電気抵抗と、略同じになっている。
【0065】
また、裏側配線06xは、二つの幅狭部30と一つの幅狭部32とを有する。これにより、裏側配線06xの電気抵抗は、裏側配線01x、02xの電気抵抗と、略同じになっている。このように、配線の長さが異なっていても、全長に亘って幅を変える、あるいは幅狭部30〜32を配置することにより、裏側配線01x〜08xの電気抵抗は、略同じになっている。換言すれば、裏側配線01x、03x〜08xの電気抵抗が、裏側配線02xの電気抵抗に揃えられている。
【0066】
本実施形態の静電容量型面状センサは、構成が共通する部分に関しては、第二実施形態の静電容量型面状センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の静電容量型面状センサによると、裏側配線01x、07x、08xの幅を調整することにより、長さが異なる裏側配線01x、02x、07x、08xの電気抵抗を、容易に揃えることができる。また、裏側配線03x〜06xに、幅狭部30〜32を適宜配置することにより、厚さおよび幅が同じで、長さが異なる裏側配線02x〜06xの電気抵抗を、容易に揃えることができる。
【0067】
<その他>
以上、本発明の静電容量型面状センサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0068】
例えば、第一実施形態においては、配線の長さが長いほど、幅を広くして、表側配線および裏側配線の電気抵抗を略同じにした。しかし、配線の幅ではなく、厚さを変えてもよい。また、配線の幅、厚さの両方を変えてもよい。
【0069】
また、第二、第三実施形態においては、所定の配線に幅狭部を配置して、表側配線および裏側配線の電気抵抗を略同じにした。ここで、幅狭部の形状は、配線の他の部分と比較して断面積が小さくなる形状であれば、特に限定されない。幅狭部においては、配線の断面積が連続して徐々に小さくなっても、段階的に小さくなってもよい。幅狭部は、第二、第三実施形態における段差状、あるいはスロープ状にくびれた形状の他、V字状の切欠き形状、配線の一部が途中で二つに分岐した形状等であってもよい。また、幅狭部の大きさ、位置、配置数についても、特に限定されない。幅狭部の形状、大きさ、位置、配置数については、配線の電気抵抗を所定の値にできるよう、適宜調整すればよい。また、全長に亘り配線の幅を狭くした上で、さらに幅狭部を配置してもよい。
【0070】
上記実施形態では、表側電極、裏側電極をいずれも長方形の帯状に形成した。しかし、表側電極、裏側電極の幅は、必ずしも延在方向(前後方向または左右方向)に一定でなくてもよい。例えば、表側電極と裏側電極とが交差する部分だけ、表側電極、裏側電極の幅を広く形成してもよい。また、上記実施形態では、表側電極、裏側電極を、いずれも等間隔に形成した。しかし、用途に応じて、表側電極、裏側電極の間隔を変えてもよい。
【0071】
表側電極、裏側電極、表側配線、および裏側配線を構成するバインダーとしては、エラストマーおよび樹脂から適宜選択すればよい。電極と配線とにおいて、異なるバインダーを使用してもよい。エラストマーとしては、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム等が挙げられる。樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂(ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等)、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、変性セルロース類(セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)等)が挙げられる。
【0072】
表側電極、裏側電極、表側配線、および裏側配線を構成する導電性炭素粉末としては、カーボンブラックやグラファイト粉末から適宜選択すればよい。電極と配線とにおいて、異なる導電性炭素粉末を使用してもよい。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。なかでも、導電性が高いという観点から、ケッチェンブラック、アセチレンブラックが好適である。グラファイト粉末としては、リン片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛粉末や、人造黒鉛粉末が挙げられる。なかでも、導電性が高く、耐コネクター挿抜性に優れるという観点から、リン片状黒鉛粉末が好適である。
【0073】
導電性炭素粉末の平均粒子径(一次粒子)は、0.01μm以上100μm以下であることが望ましい。0.01μm未満の場合には、凝集性が高く、塗料を調製した場合に均一に分散させることが難しい。好ましくは0.03μm以上である。反対に、100μmを超えると、凝集体(二次粒子)を形成しにくくなる。好ましくは50μm以下である。
【0074】
電極や配線の伸縮性を確保するという観点から、比較的少量の導電性炭素粉末を配合して、高い導電性を発現できることが望ましい。例えば、導電性炭素粉末の配合量は、電極または配線の体積を100vol%とした場合の75vol%以下であることが望ましい。50vol%以下であるとより好適である。
【0075】
なお、電極および配線には、上記バインダーおよび導電性炭素粉末に加えて、各種添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、硬化剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、着色剤、分散剤、カップリング剤、レベリング剤、消泡剤等が挙げられる。
【0076】
電極、配線の印刷方法は、特に限定されない。スクリーン印刷の他、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、パッド印刷、リソグラフィー等を用いてもよい。また、印刷法においては、電極や配線を形成するための塗料を調製する。塗料調製の際には、エステル系、ケトン系、エーテルエステル系、塩素系、アルコール系、エーテル系、炭化水素系等の溶剤を使用すればよい。なかでも、作業性を考慮すると、沸点が140℃以上の溶剤が望ましい。このような溶剤としては、エチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、イソホロン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0077】
誘電層は、エラストマーまたは樹脂で構成される。エラストマーには、ゴムおよび熱可塑性エラストマーが含まれる。例えば、静電容量を大きくするという観点では、比誘電率が高いものが望ましい。具体的には、常温における比誘電率が3以上、さらには5以上のものが望ましい。例えば、エステル基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン基、アミド基、スルホン基、ウレタン基、ニトリル基等の極性官能基を有するエラストマー、あるいは、これらの極性官能基を有する極性低分子量化合物を添加したエラストマーが好適である。エラストマーは架橋されていても、されていなくてもよい。
【0078】
また、誘電層に使用するエラストマーまたは樹脂のヤング率を調整することにより、用途に応じて、静電容量型面状センサの検出感度や検出レンジを調整することができる。例えば、測定対象物の荷重が小さい場合は、ヤング率が小さい発泡体を用いるとよい。好適なエラストマーとしては、例えばシリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム等が挙げられる。また、好適な樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン(架橋発泡ポリスチレンを含む)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。ポリプロピレンとしては、ポリエチレン(PE)および/またはエチレンプロピレンゴム(EPR)により変性したポリプロピレン(変性PP)を用いてもよい。また、これらの樹脂の二種以上を含むポリマーアロイまたはポリマーブレンドを用いてもよい。
【0079】
上記実施形態では、静電容量型面状センサを、表側基材および裏側基材を備えて構成した。表側基材、裏側基材の材質は、特に限定されない。上記実施形態におけるPETの他、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)等からなる屈曲性を有する樹脂フィルムを用いることができる。また、表側基材、裏側基材を用いなくてもよい。この場合、誘電層の表裏両面に、直接、電極および配線を形成すればよい。
【符号の説明】
【0080】
1:静電容量型面状センサ
20:誘電層 21:表側基材 22:裏側基材 23:表側コネクタ
24:裏側コネクタ 30〜32:幅狭部
01X〜08X:裏側電極 01Y〜08Y:表側電極
01x〜08x:裏側配線 01y〜08y:表側配線
A0101〜A0808:検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーまたは樹脂製の誘電層と、
該誘電層の表側に配置され、バインダーおよび導電性炭素粉末を含む複数の表側電極と、
該誘電層の裏側に配置され、バインダーおよび導電性炭素粉末を含む複数の裏側電極と、
該誘電層を介して該表側電極と該裏側電極とが対向することにより形成される複数の検出部と、
該表側電極に接続され、バインダーおよび導電性炭素粉末を含む複数の表側配線と、
該裏側電極に接続され、バインダーおよび導電性炭素粉末を含む複数の裏側配線と、
を備え、該検出部の静電容量の変化から面圧分布を検出可能な静電容量型面状センサであって、
複数の該表側配線および複数の該裏側配線の各々の電気抵抗は、略同じであることを特徴とする静電容量型面状センサ。
【請求項2】
複数の前記表側配線および複数の前記裏側配線は、長さが長いほど断面積が大きい配線を含む請求項1に記載の静電容量型面状センサ。
【請求項3】
複数の前記表側配線および複数の前記裏側配線は、長さが長いほど幅が広い配線を含む請求項2に記載の静電容量型面状センサ。
【請求項4】
複数の前記表側配線および複数の前記裏側配線は、幅狭部を有する配線を含む請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の静電容量型面状センサ。
【請求項5】
前記表側電極、前記裏側電極、前記表側配線、および前記裏側配線は、全て印刷法により形成される請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の静電容量型面状センサ。
【請求項6】
前記表側電極は、帯状を呈し複数列並んで配列され、
前記裏側電極は、帯状を呈し複数列並んで配列され、
複数の該表側電極と複数の該裏側電極とは、表裏方向から見て、略直交して配置される請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の静電容量型面状センサ。
【請求項7】
さらに、前記誘電層を介して対向配置される表側基材と裏側基材とを備え、
該表側基材の裏面には、該誘電層の表面に接触するように配置される複数の前記表側電極と、複数の前記表側配線と、が形成され、
該裏側基材の表面には、該誘電層の裏面に接触するように配置される複数の前記表側電極と、複数の前記裏側配線と、が形成される請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の静電容量型面状センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−163348(P2012−163348A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21664(P2011−21664)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】