説明

静電容量式の検出装置及び方法並びに座標検出用プログラム

【課題】 検出精度を高めるとともに任意の形状からなる操作キーとして使用できるようにした静電容量式の検出装置を提供する。
【解決手段】 センシング領域A内であって前記引回し領域Bx、Byに隣接する所定範囲内の領域を不感帯領域Ex,Eyとし、かつ前記不感帯領域Ex,Ey以外を動作領域Fとして設定し、前記動作領域Fから検出されたデータ信号のみを用いて前記被検出体の座標位置の検出を行うようしたことから、座標検出の精度を高めることが可能となる。また動作領域を例えば十字形状に設定することにより、十字キーとしての使用が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルやグライドポイントに使用される静電容量式の検出装置に係わり、特に検出精度を高めるとともに任意の形状からなる操作キーとして使用できるようにした静電容量式の検出装置及び方法並びに座標検出用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明である静電容量式の検出装置に関連する先行技術としては、例えば以下の特許文献1に示すようなパッド型のポインティングデバイスが存在する。
【0003】
特許文献1では、フィルム基板10の下面にX方向に延びるとともにY方向に所定の間隔で配置された複数のX電極x1,x2,…,x15,x16からなるはX電極層20Xが設けられ、このX電極層20Xの表面(下面)に絶縁膜12が形成され、さらに前記絶縁膜12の表面(下面)にY方向に延びるとともにX方向に所定の間隔で配置された複数のY電極y1,y2,…,y15,y16からなるY電極層20Yが形成されている。すなわち、前記X電極層20XとY電極層20Yとが絶縁膜12を介して互いに直交するマトリック状に対向配置された状態でフィルム基板10の下面に設けられている。
【0004】
前記Y電極y1,y2,…,y15,y16およびX電極x1,x2,…,x15,x16は前記絶縁膜12の縁部に設けられたスルーホール、接点および電極などを介して引き出されており、最終的にはフィルム基板10の延長部11の端部Dsに集められ、そこから制御基板回路4の導電部5に接続されている。
【特許文献1】特開2003−99185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記静電容量式の検出装置は、指などの被検出体を前記X電極層およびY電極層に接近させたときに、前記被検出体と各X電極の間、および前記被検出体と各Y電極との間に形成される静電容量の変化を検出することにより、前記被検出体のX、Y方向の位置を検知するものである。
【0006】
したがって、X、Y方向の検出精度を高めるためには、前記被検出体が各X、Y電極以外の電極に接近にしたとき、それら電極と被検出体との間に静電容量が形成されないこと、あるいは例え前記静電容量が形成されたとしてもその変化量が小さいことが必要である。
【0007】
しかし、上記従来の静電容量式の検出装置では、前記Y電極y1,y2,…,y15,y16およびX電極x1,x2,…,x15,x16の端部から引き出され、スルーホールまで延びる引き出し線が、前記Y電極やX電極に隣接して配置される構成であるため、前記引き出し線と被検出体との間に静電容量が形成されやすく、しかもその変化量が小さくすることができないため、被検出体のX,Y方向の位置検出の精度を高め難いという問題がある。
【0008】
また上記のような平面パッド型のポインティングデバイスを、例えばゲーム用の十字キーの代わりとして使用しようとすると、十字方向以外の方向の静電容量の変化をも取得してしまうため、操作者がイメージする十字方向への操作を思い通りに行うことができないという問題がある。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、センシング領域の近傍に引き出し用の延長線など密集配置したような場合であっても、前記延長線から受ける影響を防止し、座標検出の精度を高めた静電容量式の検出装置を提供することを目的としている。
【0010】
また本発明は、動作モードに応じ、センシング領域の一部を任意の形状からなる操作キーとして使用できるようにした静電容量式の検出装置及び方法並びに座標検出用プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、プログラムされたコンピュータを用いて座標位置の検出を行う静電容量式の検出装置であって、
被検出体が接触しまたは接近するセンシング領域と、前記センシング領域内に静電容量を座標として形成し且つ前記被検出体の位置を前記静電容量の変化を示すデータ信号として出力する複数のセンサ電極と、個々のセンサ電極と前記センシング領域の外部に設けられた外部回路との間を接続する引き回し用の延長線と、前記センシング領域の近傍に設けられるとともに前記延長線が密集配置された引回し領域と、
前記センシング領域のうち、前記引き回し領域に隣接する所定範囲内の領域を不感帯領域とし、かつ前記不感帯領域以外の領域を動作領域としたときに、
前記センシング領域内のすべての座標におけるデータ信号を取得する検出手段と、
前記検出されたデータ信号が、前記不感帯領域と前記動作領域とのいずれの領域から出力されたものであるかを判別する判別手段と、
前記データ信号が前記動作領域から出力されたものと判別されたときに前記データ信号を用いて前記被検出体の座標位置を特定する座標特定手段と、を有していることを特徴とするものである。
【0012】
上記第1の発明では、センシング領域を引回し領域に隣接する不感帯領域と、それ以外の動作領域とにソフトウェアで分離し、前記不感帯領域から検出されるデータ信号を無視して、動作領域のみから検出されるデータ信号のみを座標入力用の基礎データとして使用するようにしたことから、引回し領域から受ける影響を少なくし精度の高い座標検出を実現することができる。
【0013】
また本発明は、プログラムされたコンピュータを用いて座標位置の検出を行う静電容量式の検出装置であって、
被検出体が接触しまたは接近するセンシング領域と、前記センシング領域内に静電容量を座標として形成し且つ前記被検出体の位置を前記静電容量の変化を示すデータ信号として出力する複数のセンサ電極と、
前記センシング領域内に所定の形状からなる境界線を仮想的に形成し、前記境界線の内側と外側の一方を不感帯領域、他方を動作領域としたときに、前記データ信号が前記不感帯領域と前記動作領域とのいずれの領域から出力されたものであるかを判別する判別手段と、
前記データ信号が前記動作領域から出力されたものと判別されたときに前記データ信号を用いて前記被検出体の座標位置の特定を行う座標特定手段と、を有していることを特徴とするものである。
【0014】
上記第2の発明では、動作モードに応じ、例えば十字キーを始めとする様々な操作キーとして使用することが可能となるため、操作性および機動性を優れた静電容量式の検出装置を提供できる。
【0015】
上記において、前記センシング領域を前記不感帯領域と前記動作領域とに区分けする領域設定手段が設けられているものが好ましい。
【0016】
すなわち、前記領域設定手段はソフトウェアで構成することができ、この場合の領域設定手段は静電容量式の検出装置の記憶手段(RAM等)内に他の手段(判別手段や座標特定手段)とともに格納されていてもよいし、あるいは前記静電容量式の検出装置をその上位の本体機器(例えばPC等の制御装置など)に取り付ける際に、静電容量式の検出装置と本体機器との間の橋渡しを行うドライバソフト内に前記領域設定手段のみを組み込むようにした構成であってもよい。
【0017】
また前記所定の形状として複数のパターンが用意されており、前記複数のパターンの中から一のパターンが選択可能とされているものが好ましい。
【0018】
上記手段では、様々な形状の操作キーを実現できる。
例えば、前記センサ電極は、X方向に延びるとともにY方向に所定の間隔で配置された複数のX電極と、Y方向に延びるとともにX方向に所定の間隔で配置された複数のY電極とが、互いに直交しながらマトリックス状に対向対置されたものとして構成することができる。
【0019】
また本発明は、プログラムされたコンピュータによって静電容量式検出装置の座標位置を検出する方法であって、
被検出体が前記静電容量式検出装置に設けられたセンシング領域に接触しまたは接近したときに、前記センシング領域内に静電容量を座標として形成し且つ前記被検出体の位置を前記静電容量の変化を示すデータ信号として検出する工程、
前記センシング領域を不感帯領域と動作領域とに区分けする工程、
前記検出されたデータ信号が、前記不感帯領域と前記動作領域とのいずれの領域から出力されたものであるかを判別する工程、
前記データ信号が前記動作領域から出力されたものと判別されたときに、前記データ信号を用いて前記被検出体の座標位置を特定する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0020】
さらに本発明は、静電容量式の検出装置に用いる座標検出用のプログラムであって、
コンピュータを、被検出体が前記静電容量式検出装置に設けられたセンシング領域に接触しまたは接近したときに、前記センシング領域内に静電容量を座標として形成し且つ前記被検出体の位置を前記静電容量の変化を示すデータ信号として検出する検出手段と、
前記センシング領域内の所定の領域を不感帯領域とし、その他の領域を動作領域とに設定したときに、前記検出されたデータ信号が、前記不感帯領域と前記動作領域とのいずれの領域から出力されたものであるかを判別する判別手段と、
前記データ信号が前記動作領域から出力されたものと判別されたときに前記データ信号を用いて前記被検出体の座標位置を特定する座標特定手段として機能させるためのものである。
【0021】
上記において、前記センシング領域を、前記不感帯領域と前記動作領域とに区分けする領域設定手段を有しているものが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の静電容量式の検出装置では、センシング領域のうち、引回し領域に隣接する一部に不感帯領域を設定し、この不感帯領域から検出されるデータ信号を座標入力用の基礎データとして使用しないようにしたことから、引回し領域から受ける影響が少なくなり座標検出の精度を高めることができる。
【0023】
また本発明では、例えば平面パッド型のポインティングデバイスを十字キーとして使用するなど、動作モードに応じてセンシング領域の一部を任意の操作キーとしての使用を可能とすることにより、操作性および機動性に優れた静電容量式の検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は本発明の第1の実施の形態を示す静電容量式の検出装置を示す概略構成図、図2は図1のII−II線における断面図、図3はカバーシートの操作面を示すとともにセンシング領域を拡大して示す図1同様の概略構成図、図4は静電容量式の検出装置の動作を示すフローチャートである。
【0025】
図1に示すように、この静電容量式の検出装置10はY方向に延びるとともにX方向に所定の間隔で配置された複数のX電極(センサ電極)x1,x2,・・・,xnと、同じくX方向に延びるとともにY方向に所定の間隔で配置された複数のY電極(センサ電極)y1,y2,・・・,ynとを有している。
【0026】
図2に示すように、前記複数のX電極x1,x2,・・・,xnは誘電シート11の一方の面(裏面)に設けられており、前記複数のY電極y1,y2,・・・,ynは前記誘電シート11の他方の面(表面)に設けられている。すなわち、前記複数のX電極x1,x2,・・・,xnと前記複数のY電極y1,y2,・・・,ynとは前記誘電シート11を介して互いに直交するマトリックス状に対向対置されている。このため、前記X電極x1,x2,・・・,xnと前記複数のY電極y1,y2,・・・,ynとの間に静電容量Cを形成することが可能とされている。
【0027】
前記誘電シート11の一方の面の上には、前記複数のX電極x1,x2,・・・,xnを覆う絶縁膜13が形成され、同様に前記誘電シート11の他方の面の下には、前記複数のY電極y1,y2,・・・,ynを覆う絶縁膜12が形成されている。そして、前記絶縁膜12の上層にはカバーシート15が固定されており、前記絶縁膜13の下層には基板14が固定されている。前記絶縁膜12とカバーシート15との間の固定、および前記絶縁膜13と基板14との固定は接着剤などを用いて行われるが、前記絶縁膜12,13自体が接着剤であってもよい。
【0028】
前記カバーシート15は、例えばポリエステル樹脂などで形成されている、その表面(Z1側の面)が指などの被検出体が接触し且つ摺動する操作面15aである。前記複数のY電極y1,y2,・・・,ynと前記複数のX電極x1,x2,・・・,xnとは前記操作面15aの下面側の位置にマトリックス状に配置されており、図1および図2に示すようにカバーシート15と対向する部分のうち、XY平面内においてそれぞれ両端に位置する4本の電極線、すなわちX電極x1、電極Xn、Y電極y1およびY電極ynによって囲まれる領域が静電容量式の検出装置10のセンシング領域Aとされている。
【0029】
図1に示すように前記複数のX電極x1,x2,・・・,xnの端部は、センシング領域Aから図示Y2側の外部にそれぞれ引き出される延長線Xaを有している。各延長線Xaは、前記センシング領域Aに隣接する引回し領域Bx内に密集配線されており、前記引回し領域Bxを介してマルチプレクサなどで構成される切換え手段21Xに接続されている。同様に、前記複数のY電極y1,y2,・・・,ynの端部は、それぞれ延長線Yaとしてセンシング領域Aの外部に隣接して設けられた引回し領域Byに内に密集配線されており、この引回し領域By介して外部に設けられた切換え手段21Yに接続されている。
【0030】
前記一方の切換え手段21Yには発振手段23に接続されており、この発振手段23から前記Y電極y1,y2,・・・,ynに対し、所定の電圧を選択的に印加することができるようになっている。また前記他方の切換え手段21Xには増幅手段24が接続されており、その出力はA/D変換手段25を介して静電容量式の検出装置10の外部に設けられた機器本体側のコンピュータ30(PC等の制御装置)に接続されている。
【0031】
また静電容量式の検出装置10はRAMなどからなる記憶手段26を有しており、この記憶手段26内には前記検出装置10とコンピュータ30との間の橋渡しを行うドライバソフトが格納されている。前記ドライバソフトとしては、後述するように検出装置10を駆動させてデータ信号を取得するための検出処理の他に、領域設定処理、判別処理、位置特定処理など各種のプログラムモジュールがある。
【0032】
なお、前記ドライバソフトは、そのすべてがコンピュータ30のメモリ部30Bにインストールされている構成であってもよいし、後述するように領域設定処理のみがメモリ部30Bにインストールされた構成であってもよい。
【0033】
前記コンピュータ30は主としてCPUからなる中央制御部30Aとメモリ部30Bなどを有しており、前記中央制御部30Aは静電容量式の検出装置10の前記A/D変換手段25から出力されるデータ信号を取得するだけでなく、例えば前記切換え手段21X,21Yの切り換えのタイミングなどを設定することが可能とされている。なお、前記発振手段23はコンピュータ30側から出力されるクロック信号に基づいて駆動されるものが好ましい。また前記メモリ部30Bには、OS(オペレーティングシステム)の他に、各種のアプリケーションソフトおよび前記中央制御部30Aを所定の処理手順(アルゴリズム)にしたがって動作させる各種のプログラムモジュール(領域設定処理、検出処理、判別処理、位置特定処理など)が格納されている。
【0034】
前記増幅手段24は切換え手段21Xに現れる電圧を所定の利得で増幅する機能を有し、またA/D変換手段25は増幅後の電圧(アナログ値)を所定のサンプリング周期でディジタル値に変換する機能を有している。なお、前記増幅手段24とA/D変換手段25との間に不要なノイズを除去するフィルタ手段を設けた構成であってもよい。
【0035】
上記静電容量式の検出装置10の動作について説明する。
前記静電容量式の検出装置10における座標位置の検出は、前記中央制御部30Aが前記メモリ部30Bに格納されているプログラムに記述されたアルゴリズムにしたがう検出処理により行われる。すなわち、中央制御部30Aは前記切換え手段21Yと切換え手段21Xとを動作させ、先ず前記切換え手段21YのスイッチSW1をオンさせ、この状態で前記切換え手段21X側のスイッチをSW1からSWnまで順次オンさせる。
【0036】
発振手段23から前記Y電極y1に所定の電圧からなるパルス信号が、前記切換え手段21X側のスイッチSW1からSWnの切り換えのタイミングに合わせた周波数で入力されると、各Y電極y1とこれに対向してマトリックス状に配置された各X電極x1,x2,・・・,xnとの間に誘電束が順次発生し、各電極間に前記静電容量Cが順次形成される。このため、順次発生する静電容量Cを介して前記X電極x1,x2,・・・,xn側に電圧が順次印加される。
【0037】
同様に、スイッチSW2がオンする状態に前記切換え手段21Yが切り換えられ、この状態で前記切換え手段21X側のスイッチをSW1からSWnまで順次切り換える。次にスイッチSW3がオンする状態に前記切換え手段21Yが切り換えられ、この状態で前記切換え手段21X側のスイッチをSW1からSWnまで順次切り換える。このように、前記検出処理では、中央制御部30Aの指令により前記切換え手段21Yのスイッチを1度切り換えるたびに、前記切換え手段21X側のスイッチをSW1からSWnまで順次切り換えるという動作が繰り返される。よって、マトリックス状態に配置されたX電極x1,x2,・・・,xnとY電極、y1,y2,・・・,ynとが交差する部分に所定の周波数で電圧が印加されることにより、前記交差部分に静電容量Cが所定の周波数で形成される。
【0038】
ここで、指などの被検出体を前記カバーシート15の操作面15a上の任意の位置に接触または接近させると、被検出体が接近したX電極から前記誘電束の一部が被検出体に引き抜かれ、被検出体の近傍に位置する前記静電容量が減少させられる。このため、前記順次マトリックス状に形成される静電容量Cの大きさが部分的に変化するため、被検出体に対応する前記X電極x1,x2,・・・,xnからはその変化量に応じた電圧が検出される。このとき検出される電圧値は、前記被検出体からの距離が近いほど一定の電圧値から低くなる電圧値として検出され、距離が遠い電極ほど前記一定の電圧値として検出される。
【0039】
各X電極x1,x2,・・・,xnに表れる各電圧は、前記切換え手段21XのスイッチSW1からSWnまでの切り換えのタイミングに応じて前記増幅手段24に入力され、この増幅手段24において所定のゲインで増幅された後にA/D変換手段25に入力される。前記A/D変換手段25は、少なくとも前記切換え手段21Xの切り換え周波数以上の変換周波数で前記増幅後の各電圧をデジタル・データ信号Dに変換した後、前記データ信号Dを中央制御部30Aに送付する。そして、前記中央制御部30Aは前記A/D変換手段25から順次送出される前記データ信号Dを解析することにより、操作面15aに位置する被検出体の座標位置(X−Y平面上の位置)の決定を行えるようになっている。
【0040】
ところで、上記のようにY電極には、引回し領域Byに延びる複数の延長線Yaが接続されている。したがって、指などの被検出体を引回し領域Byに接近させると、前記センシング領域Aのうち前記引回し領域Byに隣接する位置に配置されているX電極(例えばX電極x1やx2)と、前記被検出体が接近したいずれかの延長線Yaと、によって静電容量Cが形成されてしまうことがある。このため、被検出体をセンシング領域A以外の引回し領域By上に接触等させたにもかかわらず、あたかも被検出体がセンシング領域A上(X電極x1やx2に対応する位置)に接触したことを示すエラーデータ信号が検出され、このエラーデータ信号に基づいて生成された座標位置が前記中央制御部30Aから出力されてしまうおそれがある。
【0041】
そこで、本願発明では、中央制御部30Aが、引回し領域Byから一定の範囲内に設けられたX電極、例えばX電極x1やx2から取得されるデータ信号Dを無視し、座標位置を検出するための基礎データとして使用しないようにしている。
【0042】
すなわち、中央制御部30Aは最初に前記のような検出処理を行うのではなく、図4に示すように領域設定処理(ST1)を行い、その後に検出処理(ST2)、判別処理(ST3)、座標特定処理(ST4)を行うようにしている。
【0043】
最初に領域設定処理(ST1)について説明する。なお、図3に示すように、カバーシート15の操作面15aに対向し、且つ座標(x1,y1)、座標(xn,y1)、座標(xn,yn)および座標(x1,yn)で囲まれる全座標の範囲をセンシング領域Aとし、前記引回し領域Byから図示X1方向の前記センシング領域A内の一定の範囲内のX電極を例えばX電極x1,x2とする。同様に引回し領域Bxから図示Y1方向の前記センシング領域A内の一定の範囲内のY電極を、例えばY電極yn−1,ynとする。
【0044】
前記ST1では、図3に示すように、中央制御部30Aが、先ず前記センシング領域A内の前記引回し領域Byの近傍に、点線で示す座標(x1,y1)、座標(x2,y1)、座標(x2,yn)および座標(xn,y1)で囲まれた領域を不感帯領域Eyとして設定する。同様に、中央制御部30Aは前記センシング領域A内の前記引回し領域Bxの近傍に、一点鎖線で示す座標(x1,yn−1)、座標(xn,yn−1)、座標(xn,yn)および座標(x1,yn)で囲まれた領域を不感帯領域Exとして設定する(領域設定処理)。
【0045】
次に、前記中央制御部30Aは、上述した検出処理を行うことにより、センシング領域A内のすべての座標(X電極x1,x2,・・・,xnとY電極、y1,y2,・・・,ynとが交差する部分)に対応するデータ信号Dの取得を所定のサンプリング周期で行う(検出処理)。
【0046】
ST3では、前記検出処理において検出されたデータ信号Dが、前記不感帯領域Ey,Exから検出されたものか、それとも動作領域Fから検出されたものであるかの判別を行う(判別処理)。
【0047】
そして、ST4では前記ST2において検出されたデータ信号Dが、前記動作領域F1内から検出されたデータ信号Dである場合に限り、前記データ信号Dを座標位置を特定するための基礎データとして使用し、被検出体の座標位置の特定が行われる(座標特定処理)。
【0048】
このように、本願発明ではエラーデータ信号を含む可能性の高い前記不感帯領域Ey,Exから検出されるデータ信号Dを使用せず、エラーデータ信号を含む可能性の低い前記動作領域Fから検出されるデータ信号Dのみを使用するようにしたため、被検出体について精度の高い座標位置を特定することが可能である。
【0049】
図5は本発明の第2の実施の形態として、カバーシートの操作面を示す図3同様の概略構成図である。
【0050】
図5に示すものでは、カバーシート15の操作面15a上に十字状の操作キー(十字キー)が形成された状態を仮想的に示している。
【0051】
例えば、本願の静電容量式の検出装置10を搭載した本体機器(PC(パーソナルコンピュータ)など)においてゲームソフトが実行されているときに、操作者により十字キーを使用する動作モードが選択されると、前記コンピュータ30内ではメモリ部30Bに格納されている複数のプログラムの中から、十字キー用のプログラムが中央制御部30Aにロードされて実行されるようになっている。
【0052】
この第2の実施の形態に示す検出装置の動作は、前記第1の実施の形態と同様である。すなわち、前記中央制御部30Aは、図4のST1に示すように十字キー用のプログラムを実行し、前記センシング領域A上に、図5において二重線で示すような十字形状の境界線41を仮想的に形成する。そして、中央制御部30Aは前記プログラムにしたがって前記境界線41の内側を動作領域F1に設定し、前記境界線41の外側を不感帯領域E1に設定する(領域設定処理)。なお、プログラムよっては、前記境界線41の内側を不感帯領域E1に設定し、前記境界線41の外側を動作領域F1に設定するものであってもよい。
【0053】
次に中央制御部30Aは、図4のST2に示すようにセンシング領域A内のすべての座標に対応するデータ信号Dの取得を所定のサンプリング周期で行う(検出処理)。そして、ST3に示すように、検出されたデータ信号Dが、前記不感帯領域E1から検出されたものか、それとも動作領域F1から検出されたものであるかの判別し(判別処理)、ST4において前記データ信号Dが前記不感帯領域E1から検出されたものと判断された場合にはそのデータ信号Dを座標位置特定のための基礎データとしては使用せず、前記動作領域F1から検出されたものと判断された場合に限り、そのデータ信号Dを座標位置特定のための基礎データとして使用し、前記被検出体の座標位置の特定を行う(座標特定処理)。
【0054】
したがって、操作者は前記カバーシート15の操作面15aを十字キーとして操作することが可能となるため、操作性および機動性に優れた静電容量式の検出装置10を提供することができる。
【0055】
なお、前記カバーシート15の操作面15aの表面で、且つ前記動作領域F1に対応する位置に十字形状のマークを印刷等しておくと、操作者に十字キーとして動作する位置を視覚的に認識させることができるようになる。
【0056】
図6は本発明の第3の実施の形態として、カバーシートの操作面を示す図3同様の概略構成図である。
【0057】
図6に示す第3の実施の形態は、カバーシート15の操作面15a上、すなわちセンシング領域A内に環状の操作キー(リングキー)が形成された状態を仮想的に示している。
【0058】
この場合にも、前記コンピュータ30内のメモリ部30Bに格納されている複数のプログラムの中から、リングキー専用のプログラムが中央制御部30Aにロードされて実行される。すなわち、図6に示すように、前記中央制御部30Aはセンシング領域A上に径寸法の異なる2種類の二重線で示す内側境界線42と外側境界線43とを仮想的に形成する。そして、中央制御部30Aは前記プログラムにしたがって前記内側境界線42と外側境界線43とに挟まれた領域を動作領域F2に設定し、前記内側境界線42の内側および外側境界線43の外側を不感帯領域E2,E3にそれぞれ設定する(ST1;領域設定処理)。
【0059】
次に中央制御部30Aは、センシング領域A内のすべての座標に対応するデータ信号Dの取得を所定のサンプリング周期で行い(ST2;検出処理)、検出されたデータ信号Dが、前記不感帯領域E2またはE3から出力されたものか、それとも動作領域F2から出力されたものであるかの判別を行し(ST3;判別処理)、前記データ信号Dが前記不感帯領域E2またはE3から出力されたものである場合には座標位置特定のための基礎データとしは使用せず、前記動作領域F2から出力されたものである場合に限り座標位置特定のための基礎データとして使用することにより、前記被検出体の座標位置の特定を行う(ST4;座標特定処理)。したがって、操作者は前記カバーシート15の操作面15aをリングキーとして操作することが可能となり、操作性および機動性に優れた静電容量式の検出装置10を提供することが可能となる。
【0060】
上記実施の形態では、操作キーとして十字キーやリングキーの場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、その他例えばX方向又はY方向に直線的に延びるバー状の操作キー、その他スター(星)状など様々な形状からなる操作キーとすることが可能である。すなわち、前記コンピュータ30のメモリ部30B内には各種の操作キーのパターン形状に対応する複数のプログラムが格納されており、その中から一つのパターンが選択されて実行されるようになっている。
【0061】
なお、操作キーの選択は例えば実行中のソフト(例えばゲームソフト)内の一処理として行うことができ、操作キーの実行は上記のようなプログラムに基づいて行うことが可能である、したがって、操作者は、PCのモニタ表示部に表示される表示内容に応じて、前記操作キーを機動的に設定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す静電容量式の検出装置を示す概略構成図、
【図2】図1のII−II線における断面図、
【図3】カバーシートの操作面を示すとともにセンシング領域を拡大して示す図1同様の概略構成図、
【図4】静電容量式の検出装置の動作を示すフローチャート、
【図5】本発明の第2の実施の形態として、カバーシートの操作面を示す図3同様の概略構成図、
【図6】本発明の第3の実施の形態として、カバーシートの操作面を示す図3同様の概略構成図、
【符号の説明】
【0063】
10 静電容量式の検出装置
11 誘電シート
12,13 絶縁膜
14 基板
15 カバーシート
15a 操作面
21X,21Y 切換え手段
23 発振手段
24 増幅手段
25 A/D変換手段
26 記憶手段
30 コンピュータ
30A 中央制御部
30B メモリ部
41 境界線
42 内側境界線
43 外側境界線
A センシング領域
Bx,By 引回し領域
Ex,Ey,E1,E2,E3 不感帯領域
F,F1,F2 動作領域
Xa,Ya 延長線
x1,x2,・・・,xn X電極(センサ電極)
y1,y2,・・・,yn Y電極(センサ電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムされたコンピュータを用いて座標位置の検出を行う静電容量式の検出装置であって、
被検出体が接触しまたは接近するセンシング領域と、前記センシング領域内に静電容量を座標として形成し且つ前記被検出体の位置を前記静電容量の変化を示すデータ信号として出力する複数のセンサ電極と、個々のセンサ電極と前記センシング領域の外部に設けられた外部回路との間を接続する引き回し用の延長線と、前記センシング領域の近傍に設けられるとともに前記延長線が密集配置された引回し領域と、
前記センシング領域のうち、前記引き回し領域に隣接する所定範囲内の領域を不感帯領域とし、かつ前記不感帯領域以外の領域を動作領域としたときに、
前記センシング領域内のすべての座標におけるデータ信号を取得する検出手段と、
前記検出されたデータ信号が、前記不感帯領域と前記動作領域とのいずれの領域から出力されたものであるかを判別する判別手段と、
前記データ信号が前記動作領域から出力されたものと判別されたときに前記データ信号を用いて前記被検出体の座標位置を特定する座標特定手段と、を有していることを特徴とする静電容量式の検出装置。
【請求項2】
プログラムされたコンピュータを用いて座標位置の検出を行う静電容量式の検出装置であって、
被検出体が接触しまたは接近するセンシング領域と、前記センシング領域内に静電容量を座標として形成し且つ前記被検出体の位置を前記静電容量の変化であるデータ信号として出力する複数のセンサ電極と、
前記センシング領域内に所定の形状からなる境界線を仮想的に形成し、前記境界線の内側と外側の一方を不感帯領域、他方を動作領域としたときに、前記センシング領域内のすべての座標におけるデータ信号を取得する検出手段と、
前記データ信号が前記不感帯領域と前記動作領域とのいずれの領域から出力されたものであるかを判別する判別手段と、
前記データ信号が前記動作領域から出力されたものと判別されたときに前記データ信号を用いて前記被検出体の座標位置の特定を行う座標特定手段と、を有していることを特徴とする静電容量式の検出装置。
【請求項3】
前記センシング領域を前記不感帯領域と前記動作領域とに区分けする領域設定手段が設けられている請求項1または2記載の静電容量式の検出装置。
【請求項4】
前記所定の形状として複数のパターンが用意されており、前記複数のパターンの中から一のパターンが選択可能とされている請求項2または3記載の静電容量式の検出装置。
【請求項5】
前記センサ電極は、X方向に延びるとともにY方向に所定の間隔で配置された複数のX電極と、Y方向に延びるとともにX方向に所定の間隔で配置された複数のY電極とが、互いに直交しながらマトリックス状に対向対置されたものである請求項1ないし4のいずれか記載の静電容量式の検出装置。
【請求項6】
プログラムされたコンピュータによって静電容量式検出装置の座標位置を検出する方法であって、
被検出体が前記静電容量式検出装置に設けられたセンシング領域に接触しまたは接近したときに、前記センシング領域内に静電容量を座標として形成し且つ前記被検出体の位置を前記静電容量の変化を示すデータ信号として検出する工程、
前記センシング領域を不感帯領域と動作領域とに区分けする工程、
前記検出されたデータ信号が、前記不感帯領域と前記動作領域とのいずれの領域から出力されたものであるかを判別する工程、
前記データ信号が前記動作領域から出力されたものと判別されたときに、前記データ信号を用いて前記被検出体の座標位置を特定する工程とを含むことを特徴とする静電容量式検出装置の座標位置検出方法。
【請求項7】
静電容量式の検出装置に用いる座標検出用のプログラムであって、
コンピュータを、被検出体が前記静電容量式検出装置に設けられたセンシング領域に接触しまたは接近したときに、前記センシング領域内に静電容量を座標として形成し且つ前記被検出体の位置を前記静電容量の変化を示すデータ信号として検出する検出手段と、
前記センシング領域内の所定の領域を不感帯領域とし、その他の領域を動作領域とに設定したときに、前記検出されたデータ信号が、前記不感帯領域と前記動作領域とのいずれの領域から出力されたものであるかを判別する判別手段と、
前記データ信号が前記動作領域から出力されたものと判別されたときに前記データ信号を用いて前記被検出体の座標位置を特定する座標特定手段として機能させるための座標検出用プログラム。
【請求項8】
前記センシング領域を、前記不感帯領域と前記動作領域とに区分けする領域設定手段を有している請求項7記載の座標検出用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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