説明

静電容量式入力装置

【課題】 特に、各層を必要な機能に応じた層構成で形成できるとともに低コスト化を実現できる静電容量式入力装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 フィルム基材10のセンサ部20側に、検出電極12と、X駆動電極(第1の駆動電極)13とがセンサ側絶縁層14を介して積層され、また検出電極12と同じ形成面にY駆動電極(第2の駆動電極)11が形成される。X駆動電極13は、第1の導電層62で形成され、検出電極12及びY駆動電極11は、第1の導電層62よりも低抵抗の第2の導電層60と、第1の導電層62及び第2の導電層60よりも高抵抗の第3の導電層61との積層構造で形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動電極と検出電極の間の静電容量の変化によって指等の接近を検出する静電容量式入力装置に係り、特に電極の層構成に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、フィルム基材に電極パターンが形成されたセンサ部と、リジッド基板に形成された回路部とを有する静電容量式入力装置が開示されている。この特許文献1では電極パターンをITO膜で形成している。
【0003】
また下記特許文献2には、駆動電極と検出電極の少なくとも一部がカーボンを含む導電層で形成された静電容量式入力装置が開示されている。特許文献2に記載された発明では、カーボンを含む導電層により電極を形成することで、コストダウンを図ることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−271311号公報
【特許文献2】特開2010−218535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駆動電極及び検出電極を形成するにあたり、コストダウンとともに各層の必要な機能に応じた層構成とすることが必要である。
【0006】
またフィルム基材のセンサ部側に対し反対面側を回路部として、グランド層や回路配線層を形成した構成では、グランド層や回路配線層の層構成の適正化も必要である。
【0007】
さらにセンサ部や回路部に用いられる絶縁層についても、低コスト化とともに、絶縁性を確保するために適切な層構成が必要である。
【0008】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するものであり、特に、各層を必要な機能に応じた層構成で形成できるとともに低コスト化を実現できる静電容量式入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フィルム基材のセンサ部側に、検出電極と、電圧が印加される第1の駆動電極とがセンサ側絶縁層を介して積層され、前記検出電極にて前記第1の駆動電極との間の静電容量の変化を検出する静電容量式入力装置において、
前記第1の駆動電極は、第1の導電層で形成され、前記検出電極は、前記第1の導電層よりも低抵抗の第2の導電層と、前記第1の導電層及び前記第2の導電層よりも高抵抗の第3の導電層との積層構造で形成されることを特徴とするものである。
【0010】
電圧が印加される第1の駆動電極は検出電極より電気抵抗値が高くてもよいが、第1の駆動電極全体に電圧を適切に印加すべく電気抵抗値は高すぎないことが必要である(電圧降下の抑制)。一方、検出電極は、電流の変化を検出するものであるから低抵抗であることが必要であるが、全体を低抵抗の導電材料で形成するとコスト増大に繋がるため、低抵抗となる導電層の形成領域を必要最小限に抑えたい。
【0011】
そこで本発明では、第1の駆動電極を第1の導電層で形成し、検出電極を第2の導電層と第3の導電層の積層構造で形成し、このとき第1の導電層には第3の導電層よりも電気抵抗値の低い材質を用いて第1の駆動電極の電気抵抗値がさほど高くならないように調整し、一方、検出電極には、低抵抗の第2の導電層を用いるが、第2の導電層のみで検出電極を形成するとコスト高となるため低抵抗の第2の導電層と高抵抗の第3の導電層の積層構造として第2の導電層の使用量を減らした。
【0012】
以上により、第1の駆動電極及び検出電極を必要な機能に応じた層構成で形成でき、位置検出精度の安定化を図ることができるとともに低コスト化を実現できる。
【0013】
本発明では、前記第1の導電層はカーボンを含む導電材料で形成され、前記第2の導電層は銀を含む導電材料で形成され、前記第3の導電層は、カーボンを含み且つ前記第1の導電層よりも電気抵抗値の高い導電材料で形成されることが好ましい。
【0014】
また本発明では、前記第3の導電層の電極幅は前記第2導電層の電極幅より広いことが好ましい。これにより第2の導電層を構成する低抵抗の導電材料の使用量を減らし、より効果的にコスト削減を図ることが出来る。
【0015】
また本発明では、前記第2の導電層は直線的に延出形成されており、前記第3の導電層は、前記第2の導電層に重ねられて第2の導電層よりも幅広で直線的に延出形成される電極本体部と、前記電極本体部に対して直交する方向であって前記電極本体部よりも短い枝電極部とを有して形成されることが好ましい。これにより、位置検出精度の向上を効果的に促進できるとともに、より低コスト化を実現できる。
【0016】
また本発明では、前記検出電極と同じ形成面には前記第1の駆動電極と前記センサ側絶縁層を介して対向し、前記第1の駆動電極に対して直交方向に形成された第2の駆動電極が形成されており、
前記第2の駆動電極は前記検出電極と同じ導電層で形成されていることが好ましい。
【0017】
これにより、位置検出精度の安定化ととともに、製造工程を簡易にでき、製造コストの低減を図ることが出来る。
【0018】
また本発明では、前記センサ側絶縁層は、積層方向にて対向する一方の電極に沿って形成された延出絶縁層と、前記積層方向にて対向する電極同士の交差位置に形成された交差絶縁層との積層構造で形成されることが好ましい。これにより高い絶縁性とともにセンサ側絶縁層の形成を必要最小限の領域に抑えることができ、低コスト化を実現できる。
【0019】
また本発明では、前記延出絶縁層は前記交差絶縁層より密着性に優れた絶縁材料で、前記交差絶縁層は、前記延出絶縁層より絶縁性に優れた絶縁材料で形成されることが好ましい。これにより、センサ側絶縁層の形成を必要最小限の領域に抑えても高い絶縁性とともに高い密着性を確保できる。
【0020】
また本発明では、前記フィルム基材の前記センサ部側とは反対側の回路部側には、前記フィルム基材から離れる方向に向けて、グランド層、回路側絶縁層及び回路配線層が順に積層されており、
前記グランド層は、前記回路配線層に比べて広い範囲に形成されており、前記グランド層と前記回路配線層は異なる導電層で形成されていることが好ましい。
【0021】
グランド層は形成領域を広範囲にしてシールド効果を高める一方、回路配線層はグランド層に比べて限られた範囲内での形成となる。グランド層は低抵抗であることが必要であるが印刷精度は低くてもよい。一方、回路配線層は低抵抗と狭ピッチ形成が可能な材質であることが必要である。そこで本発明では、広範なグランド層を回路配線層と異なる導電層で形成し、グランド層には回路配線層よりも安価な材質を選択できるようにすることで、グランド層及び回路配線層を必要な機能等に応じた層構成で形成できるとともに低コスト化を実現できる。
【0022】
また本発明では、前記グランド層を構成する第4の導電層は、銀を含む導電材料で形成され、前記回路配線層を構成する第5の導電層は、銀を含み且つ前記第4の導電層よりも電気抵抗値が低い導電材料で形成されることが好ましい。
【0023】
また本発明では、前記回路側絶縁層は、前記グランド層を覆う広範な絶縁層と、前記広範な絶縁層よりも範囲が限定され、前記広範な絶縁層と前記回路配線層との間に位置する部分的絶縁層との積層構造で形成されることが好ましい。高い絶縁性とともに回路側絶縁層の形成を必要最小限の領域に抑えることができ、低コスト化を実現できる。
【0024】
また本発明では、前記広範な絶縁層は、前記部分的絶縁層より絶縁性に優れた絶縁材料で、前記部分的絶縁層は、前記広範な絶縁層より密着性に優れた絶縁材料で形成されることが好ましい。これにより、高い絶縁性とともに回路配線層と絶縁層間の密着性を確保できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の静電容量式入力装置によれば、各層を必要な機能に応じた層構成で形成できるとともに低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態における静電容量式入力装置の平面図、
【図2】本実施形態における静電容量式入力装置の裏面図、
【図3】図1に示すA−A線に沿って切断し矢印方向から見た静電容量式入力装置の部分拡大縦断面図、
【図4】図1に示すB−B線に沿って切断し矢印方向から見た静電容量式入力装置の部分拡大縦断面図、
【図5】本実施形態におけるY駆動電極と検出電極との部分拡大平面図、
【図6】本実施形態におけるセンサ部の部分拡大平面図、
【図7】本実施形態における回路部に設けられるグランド層、及び部分絶縁層の形成領域を説明するための裏面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本実施形態における静電容量式入力装置1の平面図、図2は静電容量式入力装置1の裏面図、図3は、図1に示すA−A線に沿って切断し矢印方向から見た部分拡大縦断面図、図4は図1に示すB−B線に沿って切断し矢印方向から見た部分拡大縦断面図、図5は、本実施形態におけるY駆動電極と検出電極との部分拡大平面図、図6は、本実施形態におけるセンサ部の部分拡大平面図、図7は本実施形態における回路部に設けられるグランド層、部分絶縁層の形成領域を説明するための裏面図、である。
【0028】
図3,図4の断面図に示すように、静電容量式入力装置1は、表側2と裏側3を有している。図1は静電容量式入力装置1を表側2から見た状態を示しており、図2は静電容量式入力装置1を裏側3から見た状態を示している。
【0029】
図1に示すように、表側2にはそのほぼ全域にX駆動電極(第1の駆動電極)13およびY駆動電極(第2の駆動電極)11と検出電極12が設けられている。なお図1には一つのX駆動電極に対して符号13を付した。また図1では、Y駆動電極及び検出電極を一部だけ図示し、また一つのY駆動電極及び一つの検出電極に対して符号11,12を付した。
各電極11,12、13は印刷にてパターン形成されている。
【0030】
図3,図4に示すように、静電容量式入力装置1は樹脂フィルム、樹脂シートからなる可撓性のフィルム基材10を有する。フィルム基材10を構成する合成樹脂は、例えばPET(ポリエチレン・テレフタレート)である。
【0031】
フィルム基材10の表側2はセンサ部20を構成し、フィルム基材10の表面10aに、直接にまたは絶縁層を介して、図1に示す複数のY駆動電極11と複数の検出電極12とが形成されている。
【0032】
またY駆動電極11と検出電極12の表面にセンサ側絶縁層14が設けられ、X駆動電極13はセンサ側絶縁層14上に形成されている。このX駆動電極13の表面は図示しない表面絶縁層で覆われている。
【0033】
図1に示すように、それぞれのY駆動電極11はX1−X2方向へ直線的に延びる電極本体部11aを有している。複数のY駆動電極11は、電極本体部11aがY1−Y2方向に一定の間隔を空けて平行に延びるように形成されている。検出電極12は、X1−X2方向へ直線的に延びる電極本体部12aを有しており、複数の検出電極12は、電極本体部12aがY1−Y2方向へ一定の間隔を空けて平行に延びるように形成されている。Y駆動電極11の電極本体部11aと検出電極12の電極本体部12aは、Y1−Y2方向に交互に配列しており、電極本体部11aと電極本体部12aは互いに平行である。
【0034】
図1に示すように、X駆動電極13は、Y1−Y2方向に直線的に延びており、X1−X2方向に一定の間隔を空けて互いに平行に形成されている。
【0035】
図1に示すように、Y駆動電極11は、枝電極部11bを有している。枝電極部11bは、X1−X2方向に間隔を空けて複数本形成されており、それぞれが電極本体部11aと導通して電極本体部11aからY1方向とY2方向へ向けて短く突出している。検出電極12も枝電極部12bを有している。枝電極部12bは、X1−X2方向へ間隔を空けて複数本設けられている。それぞれの枝電極部12bは、電極本体部12aと導通し、電極本体部12aからY1方向とY2方向へ向けて短く突出している。
【0036】
図1に示すように、X駆動電極13は、Y駆動電極11の電極本体部11aと検出電極12の電極本体部12aの上方を交差するように通過している。また、検出電極12に枝電極部12bが設けられていることで、検出電極12の電極本体部11aとX駆動電極13との交差部分において、検出電極12とX駆動電極13との結合容量を増大でき、しかも操作面の全域において、検出電極12とX駆動電極13との結合容量の大きなばらつきが発生しないように調整されている。
【0037】
図1に示す実施の形態では、X駆動電極13に枝電極部が設けられていないが、X駆動電極13に枝電極部が設けられていてもよい。
【0038】
Y駆動電極11の電極本体部11aと検出電極12の電極本体部12aが互いに平行に対向しているとともに、Y駆動電極11の枝電極部11bと検出電極12の一対の枝電極部12bとが、X1−X2方向にて対向するように配置されている。前記枝電極部11bと枝電極部12bが設けられていることで、Y駆動電極11と検出電極12との結合容量を増大でき、しかも操作面の全域において、Y駆動電極11と検出電極12との結合容量の大きなばらつきが発生しないように調整されている。
【0039】
図2に示すように、フィルム基材10の裏側3は回路部21を構成し、フィルム基材10の裏面10bには、図3,図4に示すように、導電性材料で形成されたグランド層(シールド層)17が形成されている。グランド層17は、操作面のほぼ全域を裏側から覆うように形成されている。図7にグランド層17の形成領域を斜線で示した。グランド層17は、後述するスルーホール上やそのほか、グランド層17を形成できない箇所があればその領域を除いて裏面10bのほぼ全面に形成される。
【0040】
図3,図4に示すように、グランド層17の裏面は回路側絶縁層18で覆われている。この回路側絶縁層18の裏面18aに図2,図3,図4に示すように、回路配線層19が形成されている。なお図2には一部の回路配線層19のみを図示した。
【0041】
図2に示すように、回路配線層19は、Y配線層19aと検出配線層19bおよびX配線層19cを有している。
【0042】
図1に示すように、操作面の縁部に沿って、スルーホール24,25が形成されている。なお図1,図2には、各一つのスルーホールにのみ符号24,25を付した。図3,図4に示すように、スルーホール24,25は、フィルム基材10を貫通して形成されており、内部に導電層36,37が充填されている。そして、それぞれのスルーホール24内の導電層36を介して複数本のY駆動電極11とY配線層19aとが個別に導通している。同様に、それぞれのスルーホール25内の導電層37を介して複数本のX駆動電極13とX配線層19cとが個別に導通している。
【0043】
また検出電極12に対するスルーホール26は図2に示すように一つであり、このスルーホール26もフィルム基材10を貫通して形成されており、内部に導電層が充填されている。そして、検出電極12は一本に纏められて、スルーホール26を介して検出電極12と導通した一本の検出配線層19bが回路部21側に形成されている。
スルーホール内を埋める導電層36,37は、例えば銀を含む導電材料で形成される。
【0044】
図2に示すように、回路部21には回路側絶縁層18の裏面18aに、電子素子としてICパッケージ27が実装されており、各回路配線層19がICパッケージ27内の回路に導通している。ICパッケージ27内には、駆動回路や検出回路が含まれている。またICパッケージ27から回路配線層19が延出してコネクタ部29に接続されている。
【0045】
また図3,図4に示すように回路配線層19は、レジスト等の配線絶縁層28で覆われている。ただし実装ランド部(図示せず)の部分に配線絶縁層28は形成されておらず、実装ランド部は露出した状態となっている。なお実装ランド部は回路配線層19に重ねられて形成され、例えば、銀を含む導電材料で形成される。
【0046】
ICパッケージ27内の駆動回路によって、Y配線層19aを介してY駆動電極11にパルス状の電圧が一定の時間間隔で与えられる。このパルス状の電圧は複数のY駆動電極11に順番に与えられる。また、駆動回路によって、X配線層19cを介してX駆動電極13にパルス状の電圧が一定の時間間隔で与えられ、このときもパルス状の電圧が複数のX駆動電極13に順番に与えられる。ただし、Y駆動電極11とX駆動電極13には、異なる時間に電圧が与えられる。
【0047】
それぞれのY駆動電極11と検出電極12との間には静電容量が形成されている。いずれかのY駆動電極11にパルス状の電圧が印加されると、電圧の立ち上がりに同期して、電圧が与えられたY駆動電極11に隣接する検出電極12に瞬間的な電流が流れる。ほぼ接地電位の人の指(操作体)がセンサ部20の操作面に触れて、指がいずれかのY駆動電極11に接近すると、指とY駆動電極11との間に静電容量が形成され且つ指と検出電極12との間に静電容量が形成されるために、指が接近しているY駆動電極11と検出電極12との間の静電容量が変化する。検出電極12に流れる電流量は前記静電容量の変動に応じて変化するため、指の近くに位置するY駆動電極11に電圧が与えられたときに検出電極12に流れる電流量と、指が接近していないY駆動電極11に電圧を与えたときに検出電極12に流れる電流量との間に変化が生じる。
【0048】
検出回路では、検出電極12から検出配線層19bを経て検出される電流値の変化と、どのY駆動電極11に電圧が与えられているかによって、指が接近している箇所のY座標上の位置を推定することができる。同様に、電流値の変化とどのX駆動電極13に電圧が与えられているかによって、指が接近している箇所のX座標上の位置を推定することができる。
【0049】
Y駆動電極11に枝電極部11bが形成され、検出電極12に枝電極部12bが形成されているため、Y駆動電極11と検出電極12の間の結合容量を大きくでき、操作面での結合容量のばらつきを少なくできる。これは、X駆動電極13と検出電極12との間も同じである。そのため、操作面内のいずれかの位置に指を触れたときに、指の位置を検出するための分解能を高く設定できる。
【0050】
本実施形態の静電容量式入力装置1では、図3,図4、図5に示すように、Y駆動電極(第2の駆動電極)11と検出電極12とが第2の導電層60と第3の導電層61との積層構造で形成されている。一方、X駆動電極(第1の駆動電極)13は、図3,図4に示すように第1の導電層62で形成されている。
【0051】
ここで、電圧が印加されるX駆動電極13は検出電極12より電気抵抗値が高くてもよいが、X駆動電極13全体に電圧を適切に印加すべく電気抵抗値は高すぎないことが必要である(電圧降下の抑制)。一方、検出電極12は、電流の変化を検出するものであるから低抵抗であることが必要であるが、全体を低抵抗の導電材料で形成するとコスト増大に繋がるため、低抵抗となる導電層の形成領域を必要最小限に抑えたい。
【0052】
そこで本実施形態では、上記したようにX駆動電極13を第1の導電層62で形成し、検出電極12を第2の導電層60と第3の導電層61の積層構造で形成し、このとき第1の導電層62には第3の導電層61よりも電気抵抗値の低い材質を用いてX駆動電極13の電気抵抗値がさほど高くならないように調整し、一方、検出電極12には、第1の導電層62よりも低抵抗の第2の導電層60を用いるが、第2の導電層60のみで検出電極12を形成するとコスト高となるため低抵抗の第2の導電層60と高抵抗の第3の導電層61との積層構造として第2の導電層60の使用量を減らした。
【0053】
図5に示すように、第2の導電層60はX1−X2方向に直線状で形成されている。一方、第3の導電層61は第2の導電層60上に重ねられて、第2の導電層60よりも幅広で直線状に延出形成される電極本体部11a、12aと、電極本体部11a,12aに対してY1−Y2方向に直交し、電極本体部11a、12aよりも短い枝電極部11b,12bとを有して形成されている。
【0054】
なお図5では、検出電極12を構成する第2の導電層60上の一部に第3の導電層61が重ねられた形態となっている。検出電極12において第3の導電層61は、枝電極部12bが形成される付近にのみ形成され、一部の第2の導電層60が露出した状態になっている。
【0055】
図5に示すように、第2の導電層60を細く形成し、第3の導電層61を幅広で且つ枝電極部11b,12bを前記第3の導電層61で形成することで第2の導電層60の使用量を効果的に減らすことができる。
【0056】
第1の導電層62,第2の導電層60及び第3の導電層61は印刷形成可能な材質からなり、第1の導電層62はカーボンを含む導電材料で、第2の導電層60は銀を含む導電材料で、第3の導電層61は、カーボンを含み且つ第1の導電層62よりも電気抵抗値が高い導電材料で形成されることが好ましい。
【0057】
第1の導電層62及び第3の導電層61は、カーボンペーストを印刷することで形成される。カーボンペーストは、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブなどの微小なカーボンフィラーが溶融状態のバインダー樹脂内に混入されている。前記カーボンフィラーは、導電性、印刷性などの必要に応じて単独、または2種類以上混合したり、粒径の異なるものを併せて用いることができる。カーボンペーストを電極の形状に応じてスクリーン印刷し、乾燥硬化させまたは加熱硬化させることで、第1の導電層62及び第3の導電層61を形成できる。
【0058】
上記したように第1の導電層62は第3の導電層61よりも電気抵抗値が低いが、例えば、第1の導電層62に含まれるカーボン量を第3の導電層61よりも増やすことで電気抵抗値を小さくすることができる。
【0059】
第2の導電層60には、溶融状態のバインダー樹脂に粉状の銀フィラーが含まれた銀ペーストを使用し、スクリーン印刷で電極層のパターンを形成し、乾燥硬化させまたは加熱硬化させる。
【0060】
本実施形態では図3,図4,図5に示すように、Y駆動電極11と検出電極12とをともに第2の導電層60と第3の導電層61の積層構造で形成した。Y駆動電極11に求められる特性・機能はX駆動電極13と同じであるから、Y駆動電極11をX駆動電極13と同様に第1の導電層62で形成することも可能である。
【0061】
しかしながら本実施形態ではY駆動電極11は検出電極12と同じ形成面であるため、わざわざY駆動電極11と検出電極12とを異なる層構成とするよりも同じとしたほうが、製造工程の簡略化を図ることができ、製造コストの低減を図ることが可能になる。
【0062】
各導電層60〜62の厚みは例えば数μm〜十数μm程度である。また第1の導電層62及び第3の導電層61の電極幅は、例えば0.3mm〜0.7mm程度であり、第2の導電層60の電極幅は例えば0.1mm前後である。
【0063】
本実施形態では、X駆動電極13は第1の導電層62の単層構造で形成されるが、第1の導電層62とともに上面に保護層等を設けてもよいし、下面に下地層を設けてもよい。また本実施形態では、Y駆動電極11及び検出電極12は第2の導電層60と第3の導電層61との積層構造であるが、各導電層60,61とともに上面に保護層等を設けてもよいし、下面に下地層を設けてもよい。
【0064】
また本実施形態では、Y駆動電極11及び検出電極12に枝電極部11b,12bが設けられ、これにより位置検出精度の向上を図ることが可能であるが、枝電極部11b,12bを設けるのは任意であり、枝電極部11b,12bが無い場合には、第3の導電層61は第2の導電層60よりも幅の広い電極本体部11a,12aで形成される。
【0065】
また本実施形態では、静電容量式入力装置1の裏側3に回路部21が形成され、回路部21にはグランド層17及び回路配線層19が形成されている。図2,図3,図4,図7に示すように、グランド層17は形成領域を広範囲にしてシールド効果を高める一方、回路配線層19はグランド層17に比べて限られた範囲内での形成となる。グランド層17は低抵抗であることが必要であるものの印刷精度は低くてもよい。一方、回路配線層19は低抵抗と狭ピッチ形成が必要である。そこで本実施形態では、広範なグランド層17を回路配線層19と異なる導電層で形成し、グランド層17には回路配線層19よりも安価な材質を選択できるようにして、グランド層17及び回路配線層19を必要な機能等に応じた層構成で形成できるとともに低コスト化を実現できる。
【0066】
具体的には、グランド層17を構成する第4の導電層65は、銀を含む導電材料で形成され、回路配線層19を構成する第5の導電層66は、銀を含み且つ第4の導電層65よりも電気抵抗値の低い導電材料で形成されていることが好適である。
【0067】
例えば第5の導電層66に含まれる銀フィラーを第4の導電層65よりも多くすることで低抵抗化を図ることが可能になる。
【0068】
また本実施形態では、第2の導電層60と第5の導電層66とに同じ低抵抗の導電材料を用いることができる。
第4の導電層65及び第5の導電層66の厚みは例えば数μm〜十数μm程度である。
【0069】
図3,図4に示すように、センサ側絶縁層14は3層構造で形成されている。図3,図4,図6に示すようにセンサ側絶縁層14の最下層は、Y1−Y2方向に沿って延出し、X駆動電極13下に位置する延出絶縁層70である。図6に示すように延出絶縁層70の幅寸法(X1−X2方向への寸法)はX駆動電極13の幅寸法よりも広い。
【0070】
延出絶縁層70上には、図6に示すように、X駆動電極13とY駆動電極11、及びX駆動電極13と検出電極12との交差位置に形成された交差絶縁層71,72が形成されている。
【0071】
図6に示すように下側に位置する交差絶縁層71の面積は、上側に位置する交差絶縁層72の面積よりも広い。
【0072】
図3,図4,図6に示したように、センサ側絶縁層14をY駆動電極11及び検出電極12の上面全面を覆うように形成せず、X駆動電極13とY駆動電極11、及びX駆動電極13と検出電極12との間の絶縁性を保つ最小限の領域にのみセンサ側絶縁層14を形成した。ただしX駆動電極13とY駆動電極11、及びX駆動電極13と検出電極12との交差位置により高い絶縁性を保つべく、前記交差位置に交差絶縁層71,72を重ねて形成した。この実施形態では、交差絶縁層71,72を2層としたが所望の厚みを確保できれば単層であってもよいし、2層より多くしてもよい。
【0073】
以上により、高い絶縁性とともにセンサ側絶縁層14の形成を必要最小限の領域に抑えることができ、低コスト化を実現できる。
【0074】
本実施形態では、延出絶縁層70は各導電層との密着性に優れた絶縁材料で、交差絶縁層71,72は、延出絶縁層70よりも密着性が劣るものの絶縁性の高い絶縁材料で形成されることが好適である。延出絶縁層70,及び交差絶縁層71、72にはいずれもレジスト材料を用いることができるが、例えば市販品にて密着性に優れたレジスト材料と、密着性よりも絶縁性に優れたレジスト材料とを使い分けることで延出絶縁層70と交差絶縁層71,72との積層構造からなるセンサ側絶縁層14を適切に形成することができる。
【0075】
各絶縁層70,71,72をいずれも数μm〜数十μmの厚みで形成できる。また図6では、延出絶縁層70をX駆動電極13に沿って形成したが、Y駆動電極11の表面及び検出電極12の表面に沿って形成することもできる。ただし、Y駆動電極11と検出電極12との合計本数が、X駆動電極13よりも多く、したがって、Y駆動電極11及び検出電極12に沿って延出絶縁層70を形成すると延出絶縁層70の形成領域が大きくなることと、X駆動電極13の形成面の高低差がフィルム基材10表面から交差絶縁層72の表面までとなり、大きくなるため、本実施形態では延出絶縁層70をX駆動電極13下に沿って形成することが好ましい。
【0076】
図3,図4に示すように回路側絶縁層18もセンサ側絶縁層14と同様に3層構造となっている。
【0077】
回路側絶縁層18は、グランド層17を覆う広範な絶縁層73と、広範な絶縁層73よりも範囲が限定され、広範な絶縁層73と回路配線層19との間に位置する部分的絶縁層75と、広範な絶縁層73と部分的絶縁層75との間に位置し、ほぼ部分的絶縁層75と同じ大きさで形成された中間絶縁層74との積層構造で形成されている。
【0078】
広範な絶縁層73は、図7に示すグランド層17表面のほぼ全域を覆っている。一方、部分的絶縁層75及び中間絶縁層74は、図7の点線で囲まれた範囲内に形成され、すなわち図2に示す回路配線層19、ICパッケージ27及びコネクタ部29等と重なる最小限の領域にのみ形成される。
【0079】
以上により高い絶縁性とともに、回路側絶縁層18の形成を必要最小限の領域に抑えることができ、低コスト化を実現することが出来る。
【0080】
広範な絶縁層73は、部分的絶縁層75よりも絶縁性に優れた絶縁材料で、部分的絶縁層75は、広範な絶縁層73よりも密着性に優れた絶縁材料で形成されることが好ましい。広範な絶縁層73と部分的絶縁層75の間に位置する中間絶縁層74は、広範な絶縁層73と同様に絶縁性に優れた絶縁材料とする。
【0081】
これによりグランド層17と回路配線層19との間に高い絶縁性を確保できる。また狭ピッチで形成され多数本の配線パターンからなる回路配線層19や実装ランド部と絶縁層との間の密着性を適切に確保することが出来る。
【0082】
広範な絶縁層73,中間絶縁層74、及び部分的絶縁層75にはいずれもレジスト材料を用いることができるが、例えば市販品にて密着性に優れたレジスト材料と、密着性よりも絶縁性に優れたレジスト材料とを使い分けることで広範な絶縁層73、中間絶縁層74、及び部分的絶縁層75の積層構造からなる回路側絶縁層18を適切に形成することができる。
【0083】
広範な絶縁層73のみで高い絶縁性を確保できれば、中間絶縁層74の形成を削除できる。あるいは回路側絶縁層18の層構成を3層以上とすることも可能である。
各絶縁層73,74,75をいずれも数μm〜数十μmの厚みで形成できる。
【0084】
例えば、延出絶縁層70と部分的絶縁層75とに同じ絶縁材料を使用でき、交差絶縁層71,72と広範な絶縁層73及び中間絶縁層74とに同じ絶縁材料を使用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 静電容量式入力装置
2 表側
3 裏側
10 フィルム基材
11 Y駆動電極
12 検出電極
13 X駆動電極
14 センサ側絶縁層
17 グランド層
18 回路側絶縁層
19 回路配線層
20 センサ部
21 回路部
24、25、26 スルーホール
27 ICパッケージ
60 第2の導電層
61 第3の導電層
62 第1の導電層
65 第4の導電層
66 第5の導電層
70 延出絶縁層
71,72 交差絶縁層
73 広範な絶縁層
74 中間絶縁層
75 部分的絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材のセンサ部側に、検出電極と、電圧が印加される第1の駆動電極とがセンサ側絶縁層を介して積層され、前記検出電極にて前記第1の駆動電極との間の静電容量の変化を検出する静電容量式入力装置において、
前記第1の駆動電極は、第1の導電層で形成され、前記検出電極は、前記第1の導電層よりも低抵抗の第2の導電層と、前記第1の導電層及び前記第2の導電層よりも高抵抗の第3の導電層との積層構造で形成されることを特徴とする静電容量式入力装置。
【請求項2】
前記第1の導電層はカーボンを含む導電材料で形成され、前記第2の導電層は銀を含む導電材料で形成され、前記第3の導電層は、カーボンを含み且つ前記第1の導電層よりも電気抵抗値の高い導電材料で形成される請求項1記載の静電容量式入力装置。
【請求項3】
前記第3の導電層の電極幅は前記第2の導電層の電極幅より広い請求項1又は2に記載の静電容量式入力装置。
【請求項4】
前記第2の導電層は直線的に延出形成されており、前記第3の導電層は、前記第2の導電層に重ねられて第2の導電層よりも幅広で直線的に延出形成される電極本体部と、前記電極本体部に対して直交する方向であって前記電極本体部よりも短い枝電極部とを有して形成される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項5】
前記検出電極と同じ形成面には前記第1の駆動電極と前記センサ側絶縁層を介して対向し、前記第1の駆動電極に対して直交方向に形成された第2の駆動電極が形成されており、
前記第2の駆動電極は前記検出電極と同じ導電層で形成されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項6】
前記センサ側絶縁層は、積層方向にて対向する一方の電極に沿って形成された延出絶縁層と、前記積層方向にて対向する電極同士の交差位置に形成された交差絶縁層との積層構造で形成される請求項1ないし5のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項7】
前記延出絶縁層は前記交差絶縁層より密着性に優れた絶縁材料で、前記交差絶縁層は、前記延出絶縁層よりも絶縁性に優れた絶縁材料で形成される請求項6記載の静電容量式入力装置。
【請求項8】
前記フィルム基材の前記センサ部側とは反対側の回路部側には、前記フィルム基材から離れる方向に向けて、グランド層、回路側絶縁層及び回路配線層が順に積層されており、
前記グランド層は、前記回路配線層に比べて広い範囲に形成されており、前記グランド層と前記回路配線層は異なる導電層で形成されている請求項1ないし7のいずれか1項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項9】
前記グランド層を構成する第4の導電層は、銀を含む導電材料で形成され、前記回路配線層を構成する第5の導電層は銀を含み且つ前記第4の導電層よりも電気抵抗値が低い導電材料で形成される請求項8記載の静電容量式入力装置。
【請求項10】
前記回路側絶縁層は、前記グランド層を覆う広範な絶縁層と、前記広範な絶縁層よりも範囲が限定され、前記広範な絶縁層と前記回路配線層との間に位置する部分的絶縁層との積層構造で形成される請求項8又は9に記載の静電容量式入力装置。
【請求項11】
前記広範な絶縁層は、前記部分的絶縁層より絶縁性に優れた絶縁材料で、前記部分的絶縁層は、前記広範な絶縁層より密着性に優れた絶縁材料で形成される請求項10記載の静電容量式入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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