説明

静電潜像担持体、並びにプロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法

【課題】 感光体表面に傷がつくことによって発生する異常画像を未然に防止することができ、小粒径キャリアの使用を可能とする異物耐性が強く、優れた自己治癒性を備えた静電潜像担持体、並びに、これを用いたプロセスカートリッジ、画像形成方法及び画像形成装置の提供。
【解決手段】 支持体と、該支持体上に感光層と、該感光層上に表面層とを有してなり、該表面層と同じ組成の膜をスライドガラス上に厚み5μmとなるように成膜し、該膜を#000のスチールウールを用いて500gfの荷重で50回ラビングした後の該膜のヘイズ値が10%以下である静電潜像担持体である。該ヘイス値が1.0%以下が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機などに用いられる静電潜像担持体(以下、「感光体」、「電子写真感光体」と称することもある)、並びに、これを用いたプロセスカートリッジ、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
子孫に豊かな地球環境を伝承する願いを込めて制定された行動計画「アジェンダ21」が採択されて10年余りが経過し、世間の環境保護に対する認識も相当深化したと言える。例えば、ゴミを分別するようになったり、裏紙をプリント用紙として多用するようになってきたことは、身近な意識変化の事例と言える。
現在、工業製品の環境性能は、その存亡を左右するほど一般にも重要視されつつある。この状況下、感光体の使用形態は未だ使い捨てを前提としたサプライ製品としての性格が強く、地球環境に与えるインパクトは許容されない事態となりつつある。この対応として、感光体自体の設計及び使いこなし面から、感光体の摩耗や創傷を抑制することが必要となる。同時に、感光体周りの感光体接触部材へ与えるダメージも少なくすることができれば、作像エンジンの経時劣化を抑制することが可能となり、結果として、部品の交換頻度や装置自体の買い換えを抑制し、省資源化や大気汚染防止などの環境負荷の低減に貢献することができる。
【0003】
現在、高耐久な感光体として代表的なものにアモルファスシリコン感光体を挙げることができる。しかしながら、アモルファスシリコン感光体の製法はドライプロセスとなるため製造コストが高く、使用対象は一部の例外を除き、ハイエンド機に限定されている。このアモルファスシリコン感光体の高い耐久性は全体に占める使用比率が小さいため、環境負荷の低減に十分貢献できていないと考えられる。環境負荷の低減を果たすためには、その使用比率を高めるため、感光体の高耐久化に加えて低コスト化を備えることが望ましい。これには低コストな有機感光体を高耐久化することが有利である。
【0004】
前記有機感光体に金属並の耐摩耗性が付与された場合には、耐摩耗性向上並の耐傷性が必要となる。感光体表面に傷が生じると、電子写真プロセスにおける放電ハザードが創傷部分に集中してその部位の変質をもたらしてしまう。また、創傷によって形成された溝にトナー成分や紙粉が埋め込まれることが原因で、局所的に地汚れや画像ボケ等の画像欠陥が生じやすくなる。耐摩耗性向上が進むと、一度生じた傷は刻印されるかの如く経時で消失し難い。その結果、創傷が感光体のロングライフ化を阻害することになる。
【0005】
このため、感光層の摩耗を低減することにより感光体寿命を向上させることが検討され、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、感光体の表面保護層として、コロイダルシリカ含有硬化性シリコーン樹脂を用いることが提案されている。
また、特許文献2及び特許文献3には、有機ケイ素変性正孔輸送性化合物を硬化性有機ケイ素系高分子中に結合させた樹脂層を表面に有する感光体が提案されている。
また、特許文献4には、電荷輸送性付与基を有する硬化性シロキサン樹脂を三次元網目構造状に硬化させる感光体の製造方法が提案されている。
【0006】
しかし、これらの提案では、高硬度にするための硬質モノマーの使用や、架橋密度を高めることによる硬化収縮時の歪みの増大により、素材への密着性が低下したりクラックが発生したりするという問題が生じやすい。また、現像剤キャリアなどの極めて硬い物質が感光体表面に付着し、摺擦すると、アモルファスシリコンのような硬い表面でも傷が刻印されてしまう電子写真固有の課題を解決することは極めて困難である。表面硬度の高い感光体を使用する場合には、キャリア付着を回避するため、現像剤キャリアの粒径は極端に大きなものを使用するかキャリアを使用しない1成分現像方式に制限されてしまう。
更に、耐擦傷性を向上するためには表面硬度を高くするよりは、応力緩和を向上させる方が有利であると考えられる。
【0007】
したがって現在までのところ、静電潜像担持体の創傷に対する耐久性の向上については十分な手立てが図られていない。このため、静電潜像担持体は表面に傷が付かないように過剰な包材で保護されており、誰もが気軽に取り扱えない製品に位置づけられているのが現状である。
【0008】
【特許文献1】特開平6−118681号公報
【特許文献2】特開平9−124943号公報
【特許文献3】特開平9−190004号公報
【特許文献4】特開2000−171990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、静電潜像担持体の保護材を簡略化でき、保管又は輸送における包材を簡素化でき、誰もが手軽に扱うことのでき、また、静電潜像担持体表面に傷がつくことによって発生する異常画像を未然に防止することができ、小粒径キャリアの使用を可能とする異物耐性が強く、優れた自己治癒性を備えた静電潜像担持体、並びに、これを用いたプロセスカートリッジ、画像形成方法及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に感光層と、該感光層上に表面層とを少なくとも有してなり、該表面層と同じ組成の膜をスライドガラス上に厚み5μmとなるように成膜し、該膜を#000のスチールウールを用いて500gfの荷重で50回ラビングした後の該膜のヘイズ値が10%以下であることを特徴とする静電潜像担持体である。
<2> ヘイズ値が1.0%以下である前記<1>に記載の静電潜像担持体である。
<3> 表面層が、ポリジメチルシロキサン系共重合体とポリカプロラクトンとポリシロキサンとを含む組成物の硬化物、及びポリカプロラクトンと、ポリシロキサンとを骨格中に導入したポリジメチルシロキサン系共重合体の硬化物の少なくともいずれかを含む前記<1>から<2>のいずれかに記載の静電潜像担持体である。
<4> 硬化物が、ポリジメチルシロキサン系共重合体のウレタン架橋物及びポリジメチルシロキサン系共重合体のメラミン架橋物のいずれかである前記<3>に記載の静電潜像担持体である。
<5> 表面層が、下記構造式(1)で表される電荷輸送物質を含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の静電潜像担持体である。
【化2】

ただし、前記構造式(1)中、R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換又は無置換のアリール基を表す。Ar、Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換又は無置換のアリーレン基を表す。X及びXは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水酸基、−O−(CH−OH(ただし、pは1〜10の整数を表す)のいずれかを表す。
<6> 電荷輸送物質の表面層における含有量が1〜50質量%である前記<1>から<5>のいずれかに記載の静電潜像担持体である。
<7> 表面層が、導電性フィラーを含む前記<1>から<6>のいずれかに記載の静電潜像担持体である。
<8> 表面層の厚みが1〜10μmである前記<1>から<7>のいずれかに記載の静電潜像担持体である。
<9> 感光層が、単層型感光層である前記<1>から<8>のいずれかに記載の静電潜像担持体である。
<10> 感光層が、支持体上に、少なくとも電荷発生層及び電荷輸送層を有する積層型感光層である前記<1>から<8>のいずれかに記載の静電潜像担持体である。
<11> 前記<1>から<10>のいずれかに記載の静電潜像担持体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段から選択される少なくとも1つの手段を一体に有することを特徴とするプロセスカ−トリッジである。
<12> 静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有してなり、
前記静電潜像担持体が、前記<1>から<10>のいずれかに記載の静電潜像担持体を有することを特徴とする画像形成装置である。
<13> 画像形成装置が、静電潜像担持体表面に潤滑性付与剤を塗布する潤滑性付与剤塗布手段を有する前記<12>に記載の画像形成装置である。
<14> 潤滑性付与剤が、金属石鹸である前記<13>に記載の画像形成装置である。
<15> 金属石鹸が、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸カルシウムから選択される少なくとも1種である前記<14>に記載の画像形成装置である。
<16> 静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含んでなり、
前記静電潜像担持体が、前記<1>から<10>のいずれかに記載の静電潜像担持体であることを特徴とする画像形成方法である。
【0011】
本発明の静電潜像担持体は、その表面に自己治癒性塗料等の高復元力を有する塗料が塗布された表面層が形成されているので、傷などがついても、傷つき部分が復元され、表面の塗膜が再生される。このため、傷がついてもその傷が残らなくなり、結果的に傷つきにくくなる。しかも、塗料の塗布により形成された層であるので、形成が容易でありコストが安くなる。
ここで、前記自己治癒性とは、多少の擦過傷又は圧力によるへこみ傷に対して一時的には他の平面と比べて傷として存在するが、その塗膜の弾性により経時的に修復し傷を消滅させてしまう機能を意味する。
【0012】
前記自己治癒性塗料は、官能基側鎖(架橋点とアクリル主鎖との間の鎖)が一般のアクリル樹脂塗料に比べて長くなっている。このことは、自己治癒性塗料の側鎖、ひいてはアクリル主鎖間の架橋部分の力学的自由度が非常に高い構造であることを示している。したがって、この長い側鎖が外圧に対してバネの働きをして弾性による自己治癒機能を実現する。なお、通常、自己治癒性塗料は、塗膜表面の潤滑性が一般の塗膜に比べて高く、表面摩擦係数が低くなっている。このため、硬いものに当たってもそれが滑りやすくなり、外圧による力が塗膜と平行方向に多く分散され塗膜と垂直な方向の力が弱くなる。このため、塗膜自体も傷つきにくくなる。
前記静電潜像担持体の表面に自己治癒性を発現させるためには表面層を形成する樹脂膜はバネの作用をする網目状の構造をもつのが有利である。これには表面層の樹脂膜に架橋構造をもたせ、更に架橋構造内にソフトセグメントとハードセグメントを持たすとよい。ソフトセグメントだけでは弾性が弱くなり形状を保持することが困難となる。またハードセグメントばかりでは傷が刻印されるため不適となる。
ソフトセグメントはポリカプロラクトンが好ましく、ハードセグメントとしてウレタン又はメラミンを硬化剤に用いることが好ましい。
【0013】
一方、静電潜像担持体としての基本的な機能を有している必要がある。具体的には、コントラストの高いプリント画像を得るため、露光による十分な光減衰を確保する必要がある。十分な光減衰を確保するためには、感光体表面からの電荷注入性を付与する目的で導電性フィラーを配合することが有利となる。また、架橋樹脂膜に電荷輸送セグメントを導入し、下層からの電荷注入性と表面層内の電荷輸送性を付与するとよい。この際、これらの添加物が電荷のトラッピングサイトになったり、硬化不良の原因となったりしては感光体そのものの品質を劣化させてしまうため、このような不具合を防止することが好ましい。
導電性フィラーを配合するケースでは表面層の抵抗を下層の抵抗と比較して2桁程度落とすとよい。また、導電性フィラーの配合で表面層の透明性が消失してしまうと露光による電荷発生が不十分となるため、配合するフィラーは成膜後も透明であるものが望ましい。具体的には導電性フィラーとして酸化スズを用いるとよい。表面層の抵抗は導電性フィラーの抵抗値、配合量と表面層の厚み設定によってコントロールすることができる。
【0014】
架橋性電荷輸送物質を含有させる場合、下層からの電荷注入性を確保する必要から電荷キャリアがホールの場合、硬化後の電荷輸送成分のイオン化ポテンシャルは下層の電荷輸送物質よりも同等以下にする必要がある。電荷キャリアがエレクトロンの場合はこの逆となる。更に、下層に含有される電荷輸送物質と未硬化時の電荷輸送成分のイオン化ポテンシャル差は大きくないことが望ましい。なぜなら、これらが混合した状態で存在すると一方の電荷輸送成分がトラップサイトとして作用するためである。具体的には0.1eV以下の組み合わせがよい。十分な電荷輸送能を確保する必要から電荷輸送成分は特に以下の化合物が好適である。
更に、自己治癒性を有する表面層を成膜する際、下層の成分を溶解し、これが表面層に混入すると、これらがトラップサイトとして作用することが多い。そこで、表面層の成膜に用いる溶剤は下層を溶かさないものが好ましい。成膜方法にも左右されるが通常、1ml/10mg以上の溶解度となるものを使用するとよい。
【0015】
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有してなり、前記静電潜像担持体が、本発明の前記静電潜像担持体である。その結果、長期間にわたって良好な画像を安定に形成することができる。
【0016】
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含んでなり、前記静電潜像担持体が、本発明の前記静電潜像担持体である。その結果、長期間にわたって良好な画像を安定に形成することができる。
【0017】
本発明のプロセスカートリッジは、静電潜像形成手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段の少なくとも1つと、本発明の前記静電潜像担持体とを有する。その結果、利便性に優れ、長期間にわたって良好な画像を安定に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、耐擦傷性に優れ、かつ機械強度に優れるため、従来、静電潜像担持体の創傷防止を目的とした保護材を簡略化でき、加えて、誰もが手軽に静電潜像担持体を扱うことが可能となる。また、表面に傷がつくことによって発生する異常画像を未然に防止できるため、現像剤の小粒径キャリアの使用が可能となり、画像形成装置の長期使用でも、高い画質が得られるプロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(静電潜像担持体)
本発明の静電潜像担持体は、支持体と、該支持体上に感光層と、該感光層上に表面層とを有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0020】
前記静電潜像担持体は、優れた自己修復性を有する。この自己修復性は、静電潜像担持体における表面層と同じ組成の膜をスライドガラス上に厚み5μmとなるように成膜し、該膜を#000のスチールウールを用いて500gfの荷重で50回ラビングした後のヘイズ値が10%以下であることが必要であり、1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下がより好ましい。前記ヘイズ値が10%を超えると、自己修復性が不十分となることがある。
ここで、前記ヘイズ値は、例えば、市販のヘイズメーターなどにより測定することができる。
【0021】
前記静電潜像担持体は、第一の形態では、支持体と、該支持体上に単層型感光層と、該単層型感光層上に表面層を設けてなり、更に必要に応じて、その他の層を有してなる。
また、前記静電潜像担持体は、第二の形態では、支持体と、該支持体上に電荷発生層、及び電荷輸送層を少なくともこの順に有する積層型感光層と、該積層型感光層上に表面層を設けてなり、更に必要に応じて、その他の層を有してなる。なお、前記第二形態では、電荷発生層、及び電荷輸送層は逆に積層しても構わない。
【0022】
ここで、図1は、本発明の静電潜像担持体の模式断面図であり、支持体201上に感光層202を設けた構成のものである。
また、図2、図3、図4、及び図5は、各々本発明の他の静電潜像担持体の層構成例を示すものである。
図2は、感光層が電荷発生層(CGL)203と、電荷輸送層(CTL)204より構成される機能分離型タイプのものである。図3は、支持体201と、機能分離型タイプの感光層の電荷発生層(CGL)203と、電荷輸送層(CTL)204の間に下引き層205を入れたものである。図4は、電荷輸送層204の上に表面層206を積層したタイプのものである。図5は、下引き層205と電荷発生層203との間に中間層207を設けたタイプのものである。なお、本発明の静電潜像担持体は、支持体201上に感光層202を少なくとも有していれば、上記のその他の層、及び感光層のタイプは任意に組み合わされていても構わない。
【0023】
<表面層>
前記表面層は、上述したように優れた自己治癒性を有し、(1)ポリジメチルシロキサン系共重合体とポリカプロラクトンとポリシロキサンとを含む組成物の硬化物、及び(2)ポリカプロラクトンと、ポリシロキサンとを骨格中に導入したポリジメチルシロキサン系共重合体の硬化物の少なくともいずれかを含んでなり、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
【0024】
前記(1)の組成物としては、(i)ポリジメチルシロキサン系共重合体と、ポリカプロラクトンと、ポリシロキサンとがそれぞれ独立して組成物の構成成分となる場合、(ii)ポリカプロラクトンが骨格中に導入されたポリジメチルシロキサン系共重合体と、ポリシロキサンとが組成物の構成成分となる場合、(iii)ポリシロキサンが骨格中に導入されたポリジメチルシロキサン系共重合体と、ポリカプロラクトンとが組成物の構成成分となる場合、が挙げられ、それぞれの組成物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記(2)のポリカプロラクトン及びポリシロキサンが骨格中に導入されたポリジメチルシロキサン系共重合体は、単独で用いることもできるし、前記(1)の組成物の1種又は2種以上と混合して用いることもできる。
前記(1)の組成物、又は前記(2)のポリジメチルシロキサン系共重合体としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
該市販品としては、例えば、株式会社ナトコ製の商品名「自己治癒性クリヤーNo.100」、などが好適に挙げられる。
【0025】
−ポリジメチルシロキサン系共重合体−
前記ポリジメチルシロキサン系共重合体は、ポリジメチルシロキサン部分と、ビニルモノマーの重合体鎖部分とを有する共重合体であり、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であっても構わない。
【0026】
前記ポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体の合成は、例えば、リビング重合法、高分子開始剤法、高分子連鎖移動法等によって行うことができるが、工業的には、高分子開始剤法、又は高分子連鎖移動法により行うのが好ましい。
【0027】
前記高分子開始剤法としては、例えば、下記構造式で表される高分子アゾ系ラジカル重合開始剤を使用してビニルモノマーと共重合させることにより、効率よくブロック共重合体を合成することができる。また、ペルオキシモノマーと不飽和基を有するポリジメチルシロキサンとを低温で共重合させて、過酸化物基を側鎖に導入したプレポリマーを合成し、該プレポリマーをビニルモノマーと共重合させる二段階の重合を行うこともできる。
【化3】

ただし、前記構造式中、mは10〜300の整数、nは1〜50の整数を表す。
【0028】
前記高分子連鎖移動法としては、例えば、下記構造式で表されるシリコーンオイルに、例えば、HS−CHCOOH、HS−CHCHCOOH、等を付加してSH基を有するシリコーン化合物とする。その後、該SH基の連鎖移動を利用して該シリコーン化合物とビニルモノマーとを共重合させることにより、ブロック共重合体を合成することができる。
【化4】

ただし、前記構造式中、mは10〜300の整数を表す。
【0029】
前記ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体としては、例えば、下記構造式で表されるポリジメチルシロキサンのメタクリルエステル等と、ビニルモノマーとを共重合させることにより、容易にかつ収率よくグラフト共重合体を合成することができる。
【化5】

ただし、前記構造式中、mは10〜300の整数を表す。
【0030】
前記ポリジメチルシロキサンとの共重合体に用いられるビニルモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、などが挙げられる。
また、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコール等のOH基を有するビニルモノマーを用いることもできる。更に、カージュラEとアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸等との反応物を用いることもできる。
【0031】
−ポリカプロラクトン−
前記ポリカプロラクトンとしては、例えば、下記構造式(i)で表される2官能ポリカプロラクトンジオール類、下記構造式(ii)で表される3官能ポリカプロラクトントリオール類、その他の4官能ポリカプロラクトンポリオール等、が挙げられる。これらの中でも、ポリカプロラクトントリオールが特に好ましい。
【化6】

ただし、前記構造式(i)中、m+nは4〜35の整数を表す。Rは、C、COC、C(CH(CHのいずれかを表す。
【化7】

ただし、前記構造式(ii)中、l+m+nは3〜30の整数を表す。RはCHCHCH、CHC(CH、CHCHC(CHのいずれかを表す。
【0032】
また、ポリカプロラクトンをポリジメチルシロキサン系共重合体の骨格に導入する場合には、ラジカル重合性ポリカプロラクトンを用いることが好ましい。該ラジカル重合性ポリカプロラクトンとしては、例えば、下記構造式で表されるラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート類が好適に挙げられる。
【化8】

ただし、前記構造式中、Rは、水素原子、メチル基を表す。nは1〜25の整数を表す。
【0033】
−ポリシロキサン−
前記ポリシロキサンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトキエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するシラン化合物の部分加水分解物や、有機溶媒中に無水ケイ酸の微粒子を安定に分散させたオルガノシリカゾル、又は該オルガノシリカゾルにラジカル重合性を有する上記シラン化合物を付加させたもの等を使用することができる。
該ポリシロキサンは、得られる表面層材料に耐熱性、耐汚染性等を付与し、表面層材料の表面硬度を向上させるのに重要な役割を果たす。
【0034】
前記ポリジメチルシロキサン系共重合体は、通常、溶液重合によって製造される。この溶液重合における溶液としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤、などが単独又は混合溶剤として用いられる。更に必要に応じて、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性の重合開始剤が用いられる。
前記溶液重合の反応温度は、50〜150℃が好ましく、反応時間は3〜12時間が好ましい。
【0035】
前記ポリジメチルシロキサン系共重合体の骨格中にポリカプロラクトン及びポリシロキサンの少なくともいずれかを導入する場合には、該ポリジメチルシロキサン系共重合体を重合する際にポリカプロラクトン及びポリシロキサンの少なくともいずれかを添加して共重合すればよい。なお、上記組成物を製造する場合には、各構成成分を常法により混合すればよい。
【0036】
前記ポリジメチルシロキサン系共重合体(ポリカプロラクトン及びポリシロキサンの少なくともいずれかが骨格中に導入されたものを含む)中のポリジメチルシロキサン部分の量は、1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。前記ポリジメチルシロキサン部分は、感光体表面に潤滑性を与え、タッキング性を低減する効果があるが、該ポリジメチルシロキサン部分の量が1質量%未満であると、上記効果が十分に発揮されないことがあり、30質量%を超えると、表面層材料の耐汚染性が低下することがある。
前記ポリジメチルシロキサン部分の分子量は、1000〜30000が好ましく、効果的に表面層材料表面に配向し、潤滑性を与える分子量としては、5000〜20000がより好ましい。
【0037】
前記ポリカプロラクトンの含有量は、ポリジメチルシロキサン系共重合体の骨格に導入される場合であっても、組成物中で独立して存在する場合であっても、該組成物の固形分中に5〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
前記ポリカプロラクトンは、表面層材料に対して高い反撥弾性と良好な密着性を付与し、擦過力が及ぼされると、該擦過力をエネルギー弾性変形により吸収する働きを有するが、該ポリカプロラクトンの含有量が5質量%未満であると、表面層材料の耐擦傷性及び耐チッピング性が低下することがあり、50質量%を超えると、表面層材料の耐汚染性が低下することがある。
【0038】
前記ポリシロキサンの含有量は、ポリジメチルシロキサン系共重合体の骨格に導入される場合であっても、組成物中で独立して存在する場合であっても、該組成物の固形分中1〜20質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましい。
前記ポリシロキサンは、表面層材料に対して耐汚染性、耐候性、耐熱性を付与するとともに表面層材料の表面硬度を向上させる働きを有するが、該ポリシロキサンの含有量が1質量%未満であると、前記効果が十分に発揮されないことがあり、20質量%を超えると、表面層材料の耐擦傷性が低下することがある。
【0039】
前記原材料を硬化させることにより本発明の表面層材料が得られるが、このとき、上記ポリジメチルシロキサン系共重合体(ポリカプロラクトン及び/又はポリシロキサンが骨格中に導入されたものを含む)はウレタン架橋及びメラミン架橋の少なくともいずれかが好ましい。
【0040】
前記ポリジメチルシロキサン系共重合体をウレタン架橋するには、OH基を有する該ポリジメチルシロキサン系共重合体に対して、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート、あるいは上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤を上記原材料に添加して硬化させる。更に必要に応じて、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート等を触媒として添加してもよい。該ウレタン架橋は、室温乾燥又は焼付乾燥が可能であり、通常、室温乾燥は8時間〜1週間行われ、該焼付乾燥は40〜300℃にて5秒〜120分間行われるのが好ましい。
【0041】
前記ポリジメチルシロキサン系共重合体をメラミン架橋するには、アルコキシメチロールメラミン等のメラミン架橋剤を上記原材料に添加して硬化させればよく、更に必要に応じてパラトルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、四塩化フタル酸等を触媒として添加してもよい。該メラミン架橋は、80〜250℃、5秒〜60分間の焼付乾燥を行うのが好ましい。
【0042】
前記表面層には、感光体の感度特性を確保する目的で、表面層の下層からの電荷注入性を可能とし、かつこの表面層に電荷輸送性を付与するには電荷輸送能に優れるα−フェニルスチルベン骨格を有する化合物を用いることが好ましい。
【0043】
前記α−フェニルスチルベン骨格を有する化合物としては、下記構造式(1)で表される化合物が好適である。
【化9】

【0044】
前記構造式(1)において、R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基を表す。
前記アリール基としては、例えば、芳香族炭化水素基としてフェニル基;縮合多環基としてナフチル基、ピレニル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテニリデンフェニル基;非縮合多環基としてビフェニリル基、ターフェニリル基、下記構造式(I)で表される基;複素環基としてチエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基、などが挙げられる。
【化10】

ただし、前記構造式(I)中、Wは−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−及び、下記構造式で表される基を表す。R106は、水素原子、又はアルキル基を表す。
【化11】

ただし、cは1〜12の整数を表す。
【化12】

ただし、dは1〜3の整数を表す。
【化13】

ただし、R107は、水素原子、又はアルキル基を表す。eは1〜3の整数を表す。
【化14】

ただし、R108は、水素原子、又はアルキル基を表す。fは1〜3の整数を表す。
【0045】
Ar、Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリーレン基を表し、上記R及びRで示したアリール基の2価基が挙げられる。
【0046】
上述のアリール基及びアリーレン基は以下に示す基を置換基として有してもよい。また、これら置換基は、前記構造式中のR106、R107、R108の具体例として表される。
(1)ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。
(2)アルキル基としては、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。これらのアルキル基は、さらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有してもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i-プロピル基、t-ブチル基、s-ブチル基、n-ブチル基、i-ブチル基、トリフルオロメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、2−エトキシエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−フェニルベンジル基、などが挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR109)として、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基などが挙げられる。
(4)アリールオキシ基としては、アリール基としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基、などが挙げられる。
(5)置換メルカプト基又はアリールメルカプト基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p-メチルフェニルチオ基、などが挙げられる。
(6)下記構造式で表される基である。
【化15】

ただし、前記構造式中、R110及びR111は、各々独立にアルキル基又はアリール基を表す。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i-プロピル基、t-ブチル基、s-ブチル基、n-ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、又はナフチル基が挙げられる。
これらはアルキル基及びアリール基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。また、アリール基上の炭素原子と共同で環を形成してもよい。具体的には、ジエチルアミノ基、N−メチル-N−フェニルアミノ基、N,N-ジフェニルアミノ基、N,N-ジ(p-トリル)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基などが挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、メチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基;アルキレンジチオ基、などが挙げられる。
【0047】
及びXは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水酸基、−O−(CH−OH(ただし、pは1〜10の整数を表す)のいずれかを表す。
【0048】
前記構造式(1)で表される電荷輸送物質は、アルコール類やセロソルブ類などの溶媒に溶解し易く、これらの溶媒を用いて成膜すると、クリヤーで均一な成膜がし易く有用である。
以上説明したように表面層に電荷輸送物質を配合することにより、帯電安定性を高める作用を持つ。その結果、下地との誘電率の差が緩和されることが多い。前記表面層と下地との誘電率が大きく異なると、各層で充放電のバランスが崩れてしまい、帯電安定性が確保しにくくなる。結果、残像等の異常画像を生じてしまうことがある。前記電荷輸送物質の配合は感度特性の向上の他に帯電安定性が得られるため、高信頼性を付与するのに有利である。
【0049】
前記表面層は、感光層の一部である電荷輸送層のようなに厚膜(例えば、15〜40μm程度)にする必要がないため、電荷輸送層並の電荷移動度を確保する電荷輸送成分の含有量(大凡、電荷輸送層全重量に対して30質量%〜70質量%)は必要としないが、前記構造式(1)で表される電荷輸送物質の前記表面層における含有量は、1〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
【0050】
前記表面層には、感光体の感度特性を確保する目的で、別の手段として、表面層の表面からの電荷注入性を可能とするために導電性フィラー(固有抵抗低下剤)を添加してもよい。前記導電性フィラーは、表面層を硬化し成膜後も透明であることが好ましく、例えば、ITO微粒子、酸化スズ微粒子、などが挙げられる。
【0051】
前記表面層塗料を調製する際に使用できる分散溶媒としては、一般の有機溶剤を使用することができる。ただし、成膜時に下地の溶解性分が混入すると硬化不良や残留電位の蓄積サイトの生成を生じてしまうため好ましくない。表面層塗料の成分を十分に溶解又は分散し、かつ下地に対する溶解性が1ml/10mg以下の溶解度となる溶媒を選択することが好ましい。この場合、下地の材料にもよるが、アルコール類、セロソルブ類等が利用しやすい。
他方、表面層塗料成分が下地に混入し、トラップサイトを生成すると、激しい残留電位の蓄積が見られる。ポアソン方程式の関係に沿って、厚みの2乗に比例するためと思われる。このため、下地を溶解させない溶媒を選択することは極めて重要となる。
【0052】
前記表面層の形成方法としては、例えば、浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。これらの中でも、スプレー塗工法とリングコート法は生産上、品質の安定性を確保し易い方法であり特に好適である。
前記表面層の厚みは、1〜10μmが好ましく、2〜5μmがより好ましい。
【0053】
<複層型感光層>
前記複層型感光層は、少なくとも電荷発生層、及び電荷輸送層をこの順に有してなり、更に必要に応じて、中間層、その他の層を有してなる。
【0054】
−電荷発生層−
前記電荷発生層は、少なくとも電荷発生物質を含んでなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
【0055】
前記電荷発生物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、無機系材料と有機系材料とのいずれかを用いることができる。
【0056】
前記無機系材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶セレン、アモルファス−セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物、などが挙げられる。
【0057】
前記有機系材料としては、特に制限はなく、公知の材料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン又はトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン又はナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
なお、必要に応じて、電荷輸送物質を添加してもよい。また、電荷発生層のバインダー樹脂として、上述のバインダー樹脂の他に、高分子電荷輸送物質を添加することもできる。
【0060】
前記電荷発生層を形成する方法としては、真空薄膜作製法と、溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
前者の方法としては、グロー放電重合法、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、加速イオンインジェクション法等が挙げられる。この真空薄膜作製法は、上述した無機系材料又は有機系材料を良好に形成することができる。
また、後者のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、電荷発生層形成用塗工液を用いて、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法などの慣用されている方法を用いて行うことができる。
【0061】
前記電荷発生層形成用塗工液に用いられる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、沸点が40℃〜80℃のテトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、メタノール、エタノールは、塗工後の乾燥が容易であることから特に好適である。
前記電荷発生層形成用塗工液は、上記有機溶媒中に前記電荷発生物質と、バインダー樹脂を分散、溶解して製造する。有機顔料を有機溶媒に分散する方法としては、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、振動ミルなどの分散メディアを用いた分散方法や、高速液衝突分散方法などが挙げられる。
【0062】
前記電荷発生層の厚みに応じて、電子写真特性、特に光感度が変化し、一般的に厚みが厚いほど光感度が高くなる。従って、前記電荷発生層の厚みは、要求される画像形成装置のスペックによって好適な範囲に設定することが好ましく、電子写真方式の感光体として要求される感度を得るためには、通常、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。
【0063】
−電荷輸送層−
前記電荷輸送層は、帯電電荷を保持させ、かつ、露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。帯電電荷を保持させる目的を達成するためには、電気抵抗が高いことが要求される。また、保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的を達成するためには、誘電率が小さく、かつ、電荷移動性がよいことが要求される。
【0064】
前記電荷輸送層は、少なくとも電荷輸送物質を含んでなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0065】
前記電荷輸送物質としては、正孔輸送物質、電子輸送物質、高分子電荷輸送物質、などが挙げられる。
前記電子輸送物質(電子受容性物質)としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
前記正孔輸送物質(電子供与性物質)としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
前記高分子電荷輸送物質としては、以下のような構造を有するものが挙げられる。
(a)カルバゾール環を有する重合体
例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、特開昭50−82056号公報、特開昭54−9632号公報、特開昭54−11737号公報、特開平4−175337号公報、特開平4−183719号公報、特開平6−234841号公報に記載の化合物等が例示される。
(b)ヒドラゾン構造を有する重合体
例えば、特開昭57−78402号公報、特開昭61−20953号公報、特開昭61−296358号公報、特開平1−134456号公報、特開平1−179164号公報、特開平3−180851号公報、特開平3−180852号公報、特開平3−50555号公報、特開平5−310904号公報、特開平6−234840号公報に記載の化合物等が例示される。
(c)ポリシリレン重合体
例えば、特開昭63−285552号公報、特開平1−88461号公報、特開平4−264130号公報、特開平4−264131号公報、特開平4−264132号公報、特開平4−264133号公報、特開平4−289867号公報に記載の化合物等が例示される。
(d)トリアリールアミン構造を有する重合体
例えば、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノポリスチレン、特開平1−134457号公報、特開平2−282264号公報、特開平2−304456号公報、特開平4−133065号公報、特開平4−133066号公報、特開平5−40350号公報、特開平5−202135号公報に記載の化合物等が例示される。
(e)その他の重合体
例えば、ニトロピレンのホルムアルデヒド縮重合体、特開昭51−73888号公報、特開昭56−150749号公報、特開平6−234836号公報、特開平6−234837号公報に記載の化合物等が例示される。
【0068】
また、前記高分子電荷輸送物質としては、上記以外にも、例えば、トリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリウレタン樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエステル樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエーテル樹脂、などが挙げられる。
前記高分子電荷輸送物質としては、例えば、特開昭64−1728号公報、特開昭64−13061号公報、特開昭64−19049号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−225014号公報、特開平4−230767号公報、特開平4−320420号公報、特開平5−232727号公報、特開平7−56374号公報、特開平9−127713号公報、特開平9−222740号公報、特開平9−265197号公報、特開平9−211877号公報、特開平9−304956号公報、等に記載の化合物が挙げられる。
【0069】
また、電子供与性基を有する重合体としては、上記重合体だけでなく、公知の単量体との共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマー、更には、例えば、特開平3−109406号公報に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体などを用いることもできる。
【0070】
前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノキシ樹脂などが用いられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記電荷輸送層は、架橋性のバインダー樹脂と架橋性の電荷輸送物質との共重合体を含むこともできる。
【0071】
前記電荷輸送層は、これらの電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。前記電荷輸送層には、更に必要に応じて、前記電荷輸送物質及びバインダー樹脂以外に、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等などの添加剤を適量添加することもできる。
【0072】
前記電荷輸送層の厚みは、5〜100μmが好ましく、近年の高画質化の要求から、電荷輸送層を薄膜化することが図られており、1200dpi以上の高画質化を達成するためには、5〜30μmがより好ましい。
【0073】
<単層型感光層>
前記単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記電荷発生物質、電荷輸送物質、及びバインダー樹脂としては、前述した材料を用いることができる。
【0074】
キャスティング法により単層型感光層を設ける場合、多くの場合、かかる単層型感光層は、電荷発生物質と低分子並びに高分子電荷輸送物質を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。また、かかる単層型感光層には、必要により、可塑剤を添加することもできる。更に、必要に応じて用いることのできるバインダー樹脂としては、先に電荷輸送層で挙げたバインダー樹脂をそのまま用いることができる。その他に、電荷発生層と同様のバインダー樹脂を混合して用いてもよい。
【0075】
前記単層型感光層の厚みは、5〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。前記厚みが5μm未満であると帯電性が低下することがあり、100μmを超えると感度の低下をもたらすことがある。
【0076】
なお、本発明においては、表面層のガスバリアー性向上、及び耐環境性改善のため、各層に酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質及びレベリング剤を添加することができる。
これらの化合物の代表的な材料を以下に記す。
各層に添加できる酸化防止剤として、例えば、次の(a)〜(d)のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0077】
(a)フェノール系酸化防止剤
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、スチレン化フェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、シクロヘキシルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2′−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−i−プロピリデンビスフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4′−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリスメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアネート、トリス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル]イソシアネート、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)
【0078】
(b)アミン系酸化防止剤
フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニレン−N′−i−プロピル−p−フェニレンジアミン、アルドール−α−ナフチルアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノリン
【0079】
(c)硫黄系酸化防止剤
チオビス(β−ナフトール)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ドデシルメルカプタン、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルチオカルバメート、イソプロピルキサンテート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート
【0080】
(d)リン系酸化防止剤
トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルイソデシルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)、ジステアリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト
【0081】
各層に添加できる可塑剤として、例えば次の(a)〜(m)のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)リン酸エステル系可塑剤
リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニルなどが挙げられる。
【0082】
(b)フタル酸エステル系可塑剤
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなどが挙げられる。
【0083】
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤
トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチルなどが挙げられる。
【0084】
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチルなどが挙げられる。
【0085】
(e)脂肪酸エステル誘導体
オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリンなどが挙げられる。
【0086】
(f)オキシ酸エステル系可塑剤
アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなどが挙げられる。
【0087】
(g)エポキシ可塑剤
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシルなどが挙げられる。
【0088】
(h)二価アルコールエステル系可塑剤
ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートなどが挙げられる。
【0089】
(i)含塩素可塑剤
塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチルなどが挙げられる。
【0090】
(j)ポリエステル系可塑剤
ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステルなどが挙げられる。
【0091】
(k)スルホン酸誘導体
p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミドなどが挙げられる。
【0092】
(l)クエン酸誘導体
クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシルなどが挙げられる。
【0093】
(m)その他
ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチルなどが挙げられる。
【0094】
各層に添加できる紫外線吸収剤として、例えば次の(a)〜(f)のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)ベンゾフェノン系
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0095】
(b)サルシレート系
フェニルサルシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
【0096】
(c)ベンゾトリアゾール系
(2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0097】
(d)シアノアクリレート系
エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル−2−カルボメトキシ−3−(パラメトキシ)アクリレートなどが挙げられる。
【0098】
(e)クエンチャー(金属錯塩系)
ニッケル〔2,2′−チオビス(4−t−オクチル)フェノレート〕ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェートなどが挙げられる。
【0099】
(f)HALS(ヒンダードアミン)
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
なお、各層に添加できる低分子電荷輸送物質は、電荷発生層の説明に記載したものと同じものを用いることができる。
【0100】
−支持体−
前記支持体としては、導電性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電体又は導電処理をした絶縁体が好適であり、例えば、Al、Ni、Fe、Cu、Au等の金属、又はそれらの合金;ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス等の絶縁性基体上にAl、Ag、Au等の金属、あるいはIn、SnO等の導電材料の薄膜を形成したもの;樹脂中にカーボンブラック、グラファイト、Al、Cu、Ni等の金属粉、導電性ガラス粉などを均一に分散させ、樹脂に導電性を付与した樹脂基体、導電処理をした紙、などが挙げられる。
【0101】
前記支持体の形状、大きさとしては、特に制約はなく、板状、ドラム状あるいはベルト状のいずれのものも使用できるが、ベルト状の支持体を用いると、内部に駆動ローラ、従動ローラを設ける必要があるなど装置が複雑化したり、大型化する反面、レイアウトの自由度が増すなどのメリットがある。しかし、保護層を形成する場合は、該保護層の可撓性が不足して、表面にクラックとよばれる亀裂が入る可能性があり、それが原因で粒状の地肌汚れが発生することが考えられる。このため、支持体としては剛性の高いドラム状のものが好適である。
【0102】
前記支持体と前記感光層との間には、必要に応じて、下引き層を設けてもよい。前記下引き層は、接着性を向上する、モアレなどを防止する、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減するなどの目的で設けられる。
【0103】
前記下引き層は、一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂は、その上に感光層を溶剤を用いて塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが好ましい。
前記樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂、などが挙げられる。
また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。これらの下引き層は、適当な溶媒を用いて、慣用される塗工法によって形成することができる。
【0104】
なお、前記下引き層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えば、ゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層、Alを陽極酸化にて設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作製法により設けたもの、などを用いることもできる。
前記下引き層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。
【0105】
前記静電潜像担持体(感光体)においては、必要に応じて前記支持体上に、接着性、電荷ブロッキング静を向上させるために中間層を設けてもよい。該中間層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。
前記樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
【0106】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
本発明の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
【0107】
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記静電潜像形成工程は前記静電潜像形成手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記定着工程は前記定着手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0108】
−静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段−
前記静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。
前記静電潜像担持体としては、本発明の前記静電潜像担持体を用いる。
【0109】
前記静電潜像の形成は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。
前記静電潜像形成手段は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0110】
前記帯電は、例えば、前記帯電器を用いて前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。
【0111】
前記帯電部材の形状としてはローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等、どのような形態をとってもよく、電子写真装置の仕様や形態にあわせて選択可能である。磁気ブラシを用いる場合、磁気ブラシは例えばZn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。又はブラシを用いる場合、例えば、ファーブラシの材質としては、カーボン、硫化銅、金属又は金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで帯電器とする。
前記帯電器は、もちろん上記のような接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電器を用いることが好ましい。
前記帯電器が静電潜像担持体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。
また、帯電器が、静電潜像担持体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、該帯電ローラに直流並びに交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0112】
−現像工程及び現像手段−
前記現像工程は、前記静電潜像を、前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0113】
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
【0114】
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該静電潜像担持体(感光体)の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0115】
前記現像器に収容させる現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。
【0116】
−転写工程及び転写手段−
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0117】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記静電潜像担持体(感光体)上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0118】
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせ、などが挙げられる。
前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0119】
前記除電工程は、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0120】
前記クリーニング工程は、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0121】
画像形成装置は、静電潜像担持体表面に潤滑性付与剤を塗布する潤滑性付与剤塗布手段を有することが好ましい。前記潤滑性付与剤としては、金属石鹸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸カルシウムから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0122】
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記電子写真用カラートナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0123】
前記制御手段は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0124】
ここで、図6は、本発明の画像形成装置の一例を説明するための概略図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図6において、感光体11は、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有し、かつ、感光体表面に自己治癒性を有することを特徴とする感光体である。感光体11はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
帯電手段12は、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド ステート チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。帯電手段は、消費電力の低減の観点から、感光体に対し接触もしくは近接配置したものが良好に用いられる。中でも、帯電手段への汚染を防止するため、感光体と帯電手段表面の間に適度な空隙を有する感光体近傍に近接配置された帯電機構が望ましい。転写手段16には、一般に上記の帯電器を使用できるが、転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
【0125】
露光手段13、除電手段1A等に用いられる光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を挙げることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルタ、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルタ、干渉フィルタ、色温度変換フィルタなどの各種フィルタを用いることもできる。
現像手段14により感光体上に現像されたトナー15は、記録媒体18に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング手段17により、感光体より除去される。クリーニング手段は、ゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用され、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0126】
また、図示を省略しているが、本発明の画像形成装置には、電子写真感光体表面に潤滑性付与剤を塗布する機構を備えていてもよい。特に、近年、電子写真の高画質化に有利とされている球形トナーの実用化が進んでいるが、球形トナーは、従来の粉砕型のトナーと比較して、ブレードクリーニングが困難であることが知られている。そのため、クリーニングブレードの当接圧を強めたり、硬度の高いウレタンゴムブレードを用いるなどの対策が行われている。
【0127】
これらの方法はブレードが当接する電子写真感光体表面に対するハザードが大きくなる傾向であり、実際、球形トナーを用いると、電子写真感光体の表面摩耗量は増加する傾向にあることが分かってきている。本発明の電子写真感光体は、耐摩耗性が非常に高いため、上記のようなハザードが大きい条件においても、保護層が摩耗することはほとんどないが、対クリーニングブレードの摩擦係数が高いことに起因すると考えられるブレード鳴き、ブレードエッジの摩耗などの不具合を発生させることがあった。
そこで、本発明の画像形成装置においては、電子写真感光体表面に潤滑性付与剤を塗布する潤滑性付与剤塗布手段を備えることによって、クリーニングブレードに対する電子写真感光体表面の摩擦係数を長期間にわたって低減することができ、上記不具合を解消することができる、画像形成装置、及び画像形成方法を得ることができる。
【0128】
図7は、潤滑性付与剤116を棒状にした固形物をクリーニングブラシ114に押し当てており、該クリーニングブラシ114が回転する際に潤滑性付与剤を掻き取り、ブラシに付着した潤滑性付与剤が感光体表面に塗布される仕組みとなっている。前記潤滑性付与剤は固形である必要はなく、液体や粉体、半練り状でも、感光体表面に塗布することができ、電子写真特性を満たすものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記潤滑性付与剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸;カルナウバ、ラノリン、木ろう等のワックス類;シリコーンオイル等の潤滑性オイル;などが挙げられる。これらの中でも、棒状に加工することが比較的容易で、潤滑性付与効果が高い点から、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウムが特に好ましい。
【0129】
図7に示す潤滑性付与剤塗布手段をクリーニングユニット117に備えることで、ドラム周りのレイアウト設計が容易になったり、装置を簡略化することができるなどのメリットがある反面、クリーニングされたトナーに潤滑性付与剤が多量に混入するためトナーリサイクルが困難になったり、ブラシのクリーニング効率が低下するなどの不具合が発生する場合もある。また、図示を省略しているが、潤滑性付与剤塗布手段を有した塗布ユニットをクリーニングユニットと別に独立して設けることで、上記不具合を解消することもできる。その場合、塗布ユニットは、クリーニングユニットの下流に設けることが好ましい。更に、塗布ユニットを複数箇所に設け、それらを同時、又は順次働かせることで、潤滑性付与剤の塗布効率を高めたり、消費量をコントロールするなどの効果を持たせることができる。
【0130】
次に、図8は、本発明の画像形成装置を用いた電子写真プロセスの別の例を示す。この図8において、感光体11は、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有し、かつ、感光体表面に自己治癒性を有する感光体である。感光体11はベルト状の形状を示しているが、ドラム状、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
感光体11は駆動手段1Cにより駆動され、帯電手段12による帯電、露光手段13による像露光、現像(図示せず)、転写手段16による転写、クリーニング前露光手段によるクリーニング前露光、クリーニング手段17によるクリーニング、除電手段1Aによる除電が繰返し行われる。図8においては、感光体(この場合は支持体が透光性である)の支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行われる。
以上の電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、図8において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、及びその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行うこともできる。
【0131】
また、以上に示すような画像形成手段は、複写機、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。
【0132】
図9は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す。この画像形成装置では、感光体(11)の周囲に帯電手段(12)、露光手段(13)、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の各色トナー毎の現像手段(14Bk,14C,14M,14Y)、中間転写体である中間転写ベルト(1F)、クリーニング手段(17)が順に配置されている。
ここで、図9中に示すBk、C、M、Yの添字は上記のトナーの色に対応し、必要に応じて添字を付けたり適宜省略する。感光体11は、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有し、かつ、感光体表面に自己治癒性を有することを特徴とする感光体である。各色の現像手段14Bk,14C,14M,14Yは各々独立に制御可能となっており、画像形成を行う色の現像手段のみが駆動される。
【0133】
感光体11上に形成されたトナー像は中間転写ベルト1Fの内側に配置された第1の転写手段(1D)により、中間転写ベルト(1F)上に転写される。第1の転写手段1Dは感光体11に対して接離可能に配置されており、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fを感光体11に当接させる。各色の画像形成を順次行い、中間転写ベルト1F上で重ね合わされたトナー像は第2の転写手段1Eにより、記録媒体18に一括転写された後、定着手段19により定着されて画像が形成される。第2の転写手段1Eも中間転写ベルト1Fに対して接離可能に配置され、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fに当接する。
転写ドラム方式の電子写真装置では、転写ドラムに静電吸着させた転写材に各色のトナー像を順次転写するため、厚紙にはプリントできないという転写材の制限があるのに対し、図9に示すような中間転写方式の電子写真装置では中間転写体1F上で各色のトナー像を重ね合わせるため、転写材の制限を受けないという特長がある。
【0134】
図10は、本発明による電子写真装置の別の例を示す。この電子写真装置は、トナーとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色を用いるタイプとされ、各色毎に画像形成部が配設されている。また、各色毎の感光体(11Y,11M,11C,11Bk)が設けられている。
この電子写真装置に用いられる感光体11は、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有し、かつ、感光体表面に自己治癒性を有することを特徴とする感光体である。各感光体11Y,11M,11C,11Bkの周りには、帯電手段12、露光手段13、現像手段14、クリーニング手段17等が配設されている。また、直線上に配設された各感光体11Y,11M,11C,11Bkの各転写位置に接離する転写材担持体としての搬送転写ベルト1Gが駆動手段1Cにて掛け渡されている。この搬送転写ベルト1Gを挟んで各感光体1Y,1M,1C,1Bkに対向する転写位置には転写手段16が配設されている。
図10の形態のようなタンデム方式の電子写真装置は、各色毎に感光体1Y,1M,1C,1Bkを持ち、各色のトナー像を搬送転写ベルト1Gに保持された記録媒体18に順次転写するため、感光体を一つしか持たないフルカラー画像形成装置に比べ、はるかに高速のフルカラー画像の出力が可能となる。
【0135】
以上の電子写真装置は自己治癒性を有する感光体が搭載されるため、従来現像剤キャリアが感光体表面に付着することによって発生した傷も抑制されるため、この付着度合いが強くなる小粒径の現像剤キャリアを搭載することができる。具体的には粒径が5μm未満の現像剤キャリアを指す。これにより、出力画像は格段に高い解像性を得ることが可能となる。
【0136】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の前記静電潜像担持体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段から選択される少なくとも1つの手段を一体に有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、その他の手段を有してなる。
前記現像手段としては、前記トナー乃至前記現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容されたトナー乃至現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを少なくとも有してなり、更に、担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。
【0137】
ここで、前記プロセスカートリッジは、例えば、図11に示すように、感光体101を内蔵し、帯電器102、現像手段104、クリーニング手段107を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。なお、103は露光器、105は記録媒体、108は搬送ローラである。
前記感光体101としては、上述した本発明の前記静電潜像担持体が用いられる。前記露光器103としては、高解像度で書き込みを行うことのできる光源が用いられる。前記帯電器102としては、任意の帯電部材が用いられる。
【0138】
本発明の画像形成装置としては、前記静電潜像担持体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。又、帯電器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを静電潜像担持体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としてもよい。
これにより、静電潜像担持体やその他プロセス部材の交換を短時間に、容易に行うことができるようになるので、メンテナンスに要する時間が短縮でき、コストダウンにつながる。また、プロセス部材と静電潜像担持体が一体となっているので、相対的な位置の精度向上などの利点もある。
【実施例】
【0139】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0140】
(実施例1)
肉厚0.8mm、直径100mmのアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液を塗布し、乾燥させることにより、厚み3.5μmの下引き層を形成した。
〔下引き層用塗工液〕
・アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・10質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・7質量部
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製)・・・40質量部
・メチルエチルケトン・・・200質量部
【0141】
次に、下引き層上に、下記組成の電荷発生層用塗工液を塗布し、乾燥させることにより、厚み0.2μmの電荷発生層を形成した。
〔電荷発生層用塗工液〕
・チタニルフタロシアニン(株式会社リコー製)・・・20質量部
・ポリビニルアルコール(エスレックB BX−1、積水化学工業株式会社製)・・・ 10質量部
・メチルエチルケトン・・・100質量部
【0142】
次に、電荷発生層上に、下記組成の電荷輸送層用塗工液を塗布し、乾燥させることにより、厚み18μmの電荷輸送層を形成した。
〔電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート樹脂(パンライトTS−2050、帝人化成株式会社製)・・・7質量部
・下記構造式で表される低分子電荷輸送物質・・・10質量部
【化16】

・テトラヒドロフラン・・・79質量部
・1質量%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業株式会社製)テトラヒドロフラン溶液・・・1質量部
【0143】
次に、電荷輸送層上に、下記組成の表面層用塗工液をリングコートで塗工し、硬化させて厚み5μmの表面層を形成した。なお、表面層の硬化条件は150℃にて30分とした。以上により感光体を作製した。
〔表面層用塗工液〕
・自己治癒性樹脂(主剤)(自己治癒性クリヤーNo.100、ナトコ株式会社製)・・・2質量部
・自己治癒性樹脂(硬化剤)(自己治癒性クリヤーNo.2、ナトコ株式会社製)・・・1質量部
・メチルイソブチルケトン・・・17質量部
【0144】
(実施例2)
実施例1において、表面層用塗工液に用いたメチルイソブチルケトンをエチルセロソルブに変えた以外は、実施例1と同様にして、感光体を作製した。
【0145】
(実施例3)
実施例1において、下引き層の厚みを2μm、電荷輸送層の厚みを30μmに変えた以外は、実施例1と同様にして、感光体を作製した。
【0146】
(実施例4)
実施例1において、電荷輸送層用塗工液を以下のものに変えた以外は、実施例1と同様にして、感光体を作製した。
〔電荷輸送層用塗工液〕
・下記構造式で表される高分子電荷輸送物質(重量平均分子量=100,000)・・・12質量部
【化17】

・テトラヒドロフラン・・・87質量部
・1質量%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液・・・1質量部
【0147】
(実施例5)
実施例1において、表面層用塗工液を以下のものに変えた以外は、実施例1と同様にして、感光体を作製した。
〔表面層用塗工液〕
・自己治癒性樹脂(主剤)(自己治癒性クリヤーNo.100、ナトコ株式会社製)・・・19質量部
・自己治癒性樹脂(硬化剤)(自己治癒性クリヤーNo.2、ナトコ株式会社製)・・・51質量部
・下記構造式で表される架橋性電荷輸送物質・・・30質量部
【化18】

・エチルセロソルブ・・・900質量部
【0148】
(実施例6)
実施例1において、表面層用塗工液を以下のものに変えた以外は、実施例1と同様にして、感光体を作製した。
〔表面層用塗工液〕
・自己治癒性樹脂(主剤)(自己治癒性クリヤーNo.100、ナトコ株式会社製)・・・6質量部
・自己治癒性樹脂(硬化剤)(自己治癒性クリヤーNo.2、ナトコ株式会社製)・・・29質量部
・下記構造式で表される架橋性電荷輸送物質・・・15質量部
【化19】

・エチルセロソルブ・・・450質量部
【0149】
(実施例7)
実施例1において、表面層用塗工液を以下のものに変えた以外は、実施例1と同様にして、感光体を作製した。
〔表面層用塗工液〕
・自己治癒性樹脂(主剤)(自己治癒性クリヤーNo.100、ナトコ株式会社製)・・・6質量部
・硬化剤(スーパーベッカミンL−145−60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・3質量部
・下記構造式で表される架橋性電荷輸送物質・・・1質量部
【化20】

・メチルイソブチルケトン・・・17質量部
【0150】
(実施例8)
実施例7において、架橋性電荷輸送物質を次のものに変えた以外は、実施例7と同様にして、感光体を作製した。
【化21】

【0151】
(実施例9)
実施例1において、表面層用塗工液を以下のものに変えた以外は、実施例1と同様にして、感光体を作製した。
〔表面層用塗工液〕
・自己治癒性樹脂(主剤)(自己治癒性クリヤーNo.100、ナトコ株式会社製)・・・2質量部
・自己治癒性樹脂(硬化剤)(自己治癒性クリヤーNo.2、ナトコ株式会社製)・・・1質量部
・スズ−アンチモン系酸化物(T−1、三菱マテリアルズ株式会社製)・・・2質量部
・エチルセロソルブ・・・900質量部
【0152】
(比較例1)
実施例1において、電荷輸送層の厚みを30μmに変更し、表面層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、感光体を作製した。
【0153】
(比較例2)
実施例1において、表面層用塗工液を以下のものに変えた以外は、実施例1と同様にして、感光体を作製した。
〔表面層用塗工液〕
・ポリカーボネート樹脂(パンライトTS−2050、帝人化成株式会社製)・・・7質量部
・下記構造式で表される低分子電荷輸送物質・・・5質量部
【化22】

・α−アルミナ(スミコランダムAA−02、住友化学工業株式会社製)・・・3質量部
・固有抵抗低下剤(BYK−P104、ビックケミー社製)・・・0.1質量部
・シクロヘキサノン・・・80質量部
・テトラヒドロフラン・・・280質量部
【0154】
<耐擦傷性試験>
得られた実施例1〜9及び比較例1〜2の各表面層と同じ組成の膜をスライドガラス上に厚み5μmとなるように成膜し、該膜を#000のスチールウールを用いて500gfの荷重で50回ラビングした後のヘイズ値(%)をヘイズメーターにより測定した。結果を表1に示す。
【0155】
<画像形成試験>
以上のように作製した実施例1〜9及び比較例1〜2の各感光体を実装用にした後、感光体の像露光部位が現像手段のスリーブ部に至るまでのプロセス時間を95msecに改造した高速電子写真装置(株式会社リコー製、imagio Neo1050 Pro)に搭載し、画素密度が600dpi×600dpiで画像濃度が6%となるテキストとグラフィック画像のパターンを連続999枚づつ印刷する条件で通算30万枚、コピー用紙(株式会社リコー製、マイペーパー)に複写印刷した。
なお、トナーは純正品を用い、現像剤は純正品のものに対して平均キャリア粒径が20μmのものに変更した現像剤を使用した。電子写真装置の帯電手段は装置に取り付けられているスコロトロンチャージャーをそのまま用いた。電子写真装置のプロセス状態をコントロールする回路(プロセスコントロール)は作動させて試験を行った。試験環境は、24℃、54%RHであった。
【0156】
画像形成試験終了後、以下のようにして、表面粗さ、摩耗量、露光部電位、及び解像度評価を行った。結果を表1に示す。
【0157】
(1)感光体の表面粗さ測定
耐久試験終了後、感光体表面に東京精密社製ピックアップE−DT−S02Aを取り付けた触針式表面粗さ計(Surfcom、東京精密社製)により、10点平均粗さRzを測定した。
【0158】
(2)厚み測定
耐久試験終了後、渦電流方式厚み測定器(FISCHER SCOPE mms、フィッシャー社製)により、感光体ドラム長手方向1cm間隔に厚みを測定し、それらの平均値を感光層厚みとした。
【0159】
(3)感光体表面電位測定
耐久試験終了後、表面電位計(Trek MODEL344、トレック社製)のプローブを取り付けた改造現像ユニットを複写機内現像部に取り付け、感光体中央部の表面電位を測定した。
【0160】
(4)解像度測定
耐久試験終了後、600dpi×600dpiの画素密度で、黒ベタパッチの画像濃度が0.8となる現像条件で竹の子チャートの複写印刷を行い、このときの最大解像度を測定した。
【0161】
【表1】

表1の結果から、実施例1〜8の表面層は、比較例1〜2に比べて、耐擦傷性に極めて優れた性状を示すことが解る。また、実施例9も比較例1〜2と比較すれば格段に優れた耐擦傷性を有すると言える。この性質から、一般のユーザーが感光体を気軽に交換できることや包材の簡略化が可能となる。
また、試験終了後の表面の凹凸もこれを反映し、実施例1〜9の各感光体は表面平滑な状態を維持している。これに加え、耐摩耗性に優れることから機械的耐久性に極めて優れた感光体と見なされる。比較例1と比較例2の感光体は現像剤キャリアが所々、感光体表面に埋め込まれた形跡があり、これが表面粗さに反映している。
露光部電位については、実施例1と比較して実施例2〜9の各感光体は軒並み低い値を確保している。これは、表面層の下地に対する溶解性が抑制されていること(実施例2、実施例4)、高感度が得られるように感光層の厚み調節が図られていること(実施例3)、表面層に電荷輸送セグメントが導入されていること(実施例5〜8)、表面層に導電性フィラーが添加されていること(実施例9)、が功を奏していると解釈される。なお、プリント画像の解像度は現像剤に小粒径キャリアを使用しているため、軒並み解像度が高く、実施例1〜9の各感光体は比較例1と同等以上の解像度が得られている。耐擦傷性に優れる性状は耐久性のみならず電子写真装置の高画質化にも寄与すると判断される。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の静電潜像担持体は、耐擦傷性に優れ、かつ機械強度に優れるため、従来、感光体の創傷防止を目的とした保護材を簡略化でき、加えて、誰もが手軽に感光体を扱うことが可能となる。また、表面に傷がつくことによって発生する異常画像を未然に防止できるので、現像剤の小粒径キャリアの使用が可能となり、画像形成装置の長期使用でも、高い画質を得ることができ、かつ、画像形成装置の長期未使用後における初期の複写操作でもトナー搬送経路でのトナー搬送が円滑に実行できるので、プリンタ、ファクシミリ装置、複写機、又はこれらの複合機、特に電子写真方式の画像形成装置及び画像形成方法に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】図1は、本発明の静電潜像担持体の層構成の一例を示す模式断面図である。
【図2】図2は、本発明の静電潜像担持体の層構成の他の一例を示す模式断面図である。
【図3】図3は、本発明の静電潜像担持体の層構成の他の一例を示す模式断面図である。
【図4】図4は、本発明の静電潜像担持体の層構成の他の一例を示す模式断面図である。
【図5】図5は、本発明の静電潜像担持体の層構成の他の一例を示す模式断面図である。
【図6】図6は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図7】図7は、本発明の画像形成装置に用いられる潤滑剤塗布機構の一例を示す概略構成図である。
【図8】図8は、本発明の画像形成装置の他の一例を用いた電子写真プロセスを説明するための図である。
【図9】図9は、本発明の画像形成装置の更に他の一例を示す概略図である。
【図10】図10は、本発明の画像形成装置の更に他の一例を示す概略図である。
【図11】図11は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0164】
11 感光体
12 帯電手段
13 露光手段
14 現像手段
15 トナー
16 転写手段
17 クリーニング手段
18 記録媒体
19 定着手段
1A 除電手段
1B クリーニング前露光手段
1C 駆動手段
1D 第1の転写手段
1E 第2の転写手段
1F 中間転写体
1G 記録媒体担持体
201 支持体
202 感光層
203 電荷発生層
204 電荷輸送層
205 下引き層
206 表面層
207 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に感光層と、該感光層上に表面層とを少なくとも有してなり、該表面層と同じ組成の膜をスライドガラス上に厚み5μmに成膜し、得られた膜を#000のスチールウールを用いて500gfの荷重で50回ラビングした後の該膜のヘイズ値が10%以下であることを特徴とする静電潜像担持体。
【請求項2】
ヘイズ値が1.0%以下である請求項1に記載の静電潜像担持体。
【請求項3】
表面層が、ポリジメチルシロキサン系共重合体とポリカプロラクトンとポリシロキサンとを含む組成物の硬化物、及びポリカプロラクトンと、ポリシロキサンとを骨格中に導入したポリジメチルシロキサン系共重合体の硬化物の少なくともいずれかを含む請求項1から2のいずれかに記載の静電潜像担持体。
【請求項4】
硬化物が、ポリジメチルシロキサン系共重合体のウレタン架橋物及びポリジメチルシロキサン系共重合体のメラミン架橋物のいずれかである請求項3に記載の静電潜像担持体。
【請求項5】
表面層が、下記構造式(1)で表される電荷輸送物質を含有する請求項1から4のいずれかに記載の静電潜像担持体。
【化1】

ただし、前記構造式(1)中、R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換又は無置換のアリール基を表す。Ar、Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換又は無置換のアリーレン基を表す。X及びXは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水酸基、−O−(CH−OH(ただし、pは1〜10の整数を表す)のいずれかを表す。
【請求項6】
電荷輸送物質の表面層における含有量が1〜50質量%である請求項1から5のいずれかに記載の静電潜像担持体。
【請求項7】
表面層が、導電性フィラーを含む請求項1から6のいずれかに記載の静電潜像担持体。
【請求項8】
表面層の厚みが1〜10μmである請求項1から7のいずれかに記載の静電潜像担持体。
【請求項9】
感光層が、単層型感光層である請求項1から8のいずれかに記載の静電潜像担持体。
【請求項10】
感光層が、支持体上に、少なくとも電荷発生層及び電荷輸送層を有する積層型感光層である請求項1から8のいずれかに記載の静電潜像担持体。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の静電潜像担持体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段から選択される少なくとも1つの手段を一体に有することを特徴とするプロセスカ−トリッジ。
【請求項12】
静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有してなり、
前記静電潜像担持体が、請求項1から10のいずれかに記載の静電潜像担持体を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
画像形成装置が、静電潜像担持体表面に潤滑性付与剤を塗布する潤滑性付与剤塗布手段を有する請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
潤滑性付与剤が、金属石鹸である請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
金属石鹸が、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸カルシウムから選択される少なくとも1種である請求項14に記載の画像形成装置。
【請求項16】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含んでなり、
前記静電潜像担持体が、請求項1から10のいずれかに記載の静電潜像担持体であることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−350163(P2006−350163A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178924(P2005−178924)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】