説明

静電潜像現像用キャリア、静電潜像現像剤、及び画像形成装置

【課題】金属層の剥離が抑制される静電潜像現像用キャリアの提供。
【解決手段】酸化鉄を含む芯材と、前記芯材の表面を被覆する鉄の金属層と、前記金属層の外周面を被覆する樹脂層と、を有する静電潜像現像用キャリア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像現像用キャリア、静電潜像現像剤、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁性体からなるコアの表面を樹脂で被覆した後、さらに樹脂の表面にカーボンブラックが固着された静電潜像現像剤用キャリアにおいて、前記カーボンブラックはそのPH値が7以下でかつ平均粒子径が16nm以下であることを特徴とする静電潜像現像剤用キャリアが開示されている。
【0003】
特許文献2には、磁性体粒子の表面に、内層と外層の2層からなる樹脂コーティング層を設けてなるコーティングキャリアにおいて、前記内層がカーボンブラックを含有してなることを特徴とするコーティングキャリアが開示されている。
【0004】
特許文献3には、キャリア芯材表面にカーボンブラックを含有する樹脂被覆層を設けてなるフルカラー用キャリアにおいて、樹脂被覆層がその厚み方向にカーボンブラックの濃度勾配を持ち、該被覆層の表面に向かう程カーボンブラック濃度が低くなり、しかも該被覆層の表面にはカーボンブラックが存在しないことを特徴とするフルカラー用キャリアが開示されている。
【0005】
特許文献4には、表面がめっきされていることを特徴とする電子写真現像剤用キャリアが開示されている。
特許文献5には、金属酸化物でおよび金属またはマグネタイトで被覆した磁性コアをベースとする電子写真用キャリヤが開示されている。
特許文献6には、核体粒子表面に酸化鉄系の磁性体メッキ層を設けた、飽和磁化20から80emu/gを有する現像剤用磁性キャリアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−202382号公報
【特許文献2】特開平3−73968号公報
【特許文献3】特開平8−179570号公報
【特許文献4】特開平2−116857号公報
【特許文献5】特開平7−225498号公報
【特許文献6】特開昭63−184765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、金属層が鉄ではない場合に比較して、金属層の剥離が抑制される静電潜像現像用キャリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、請求項1に係る発明は、
酸化鉄を含む芯材と、
前記芯材の表面を被覆する鉄の金属層と、
前記金属層の外周面を被覆する樹脂層と、を有する静電潜像現像用キャリアである。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記芯材中に含まれる前記酸化鉄の含有量は、50質量%以上100質量%以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用キャリアである。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記樹脂層は、シリコーン樹脂を含み、
前記静電潜像現像用キャリアの蛍光X線元素分析によって得られる、鉄原子に由来した信号の強度をIFe、シリコン原子に由来した信号の強度をISiとしたとき、IFe/ISiの値が10以上200以下である、請求項1又は請求項2に記載の静電潜像現像用キャリアである。
【0011】
請求項4に係る発明は、
前記樹脂層は、有機金属化合物を含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の静電潜像現像用キャリアである。
【0012】
請求項5に係る発明は、
前記有機金属化合物の金属原子は、鉄原子である、請求項4に記載の静電潜像現像用キャリアである。
【0013】
請求項6に係る発明は、
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の静電潜像現像用キャリアと、トナーと、を含む、静電潜像現像剤である。
【0014】
請求項7に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記静電潜像を請求項6に記載の静電潜像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を被転写体の表面に転写する転写手段と、
前記被転写体の表面に転写された前記トナー像を前記被転写体に定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置である。
【0015】
請求項8に係る発明は、
前記被転写体の搬送速度が1000mm/秒以上である、請求項7に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、金属層が鉄ではない場合に比較して、金属層の剥離が抑制される。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、芯材中に含まれる酸化鉄の含有量が上記範囲から外れる場合に比較して、金属層の剥離が抑制される。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、IFe/ISiの値が上記範囲から比較して、導電性及び帯電性の両立がはかれる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、有機金属化合物を含まない場合に比較して、樹脂層の剥離が抑制される。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、有機金属化合物の金属原子が鉄原子以外の原子である場合に比較して、樹脂層の剥離が抑制される。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、キャリアの金属層が鉄ではない場合に比較して、得られる画像における画像濃度の低下が抑制される。
【0022】
請求項7に係る発明によれば、キャリアの金属層が鉄ではない場合に比較して、得られる画像における画像濃度の低下が抑制される。
【0023】
請求項8に係る発明によれば、搬送速度が上記範囲である条件下において画像形成を行っても、得られる画像における画像濃度の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】キャリアの電気抵抗の測定治具を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の静電潜像現像用キャリア、静電潜像現像剤、及び画像形成装置の実施形態について詳細に説明する。
【0026】
[静電潜像現像用キャリア]
本実施形態に係る静電潜像現像用キャリア(以下、「キャリア」と称する場合がある)は、酸化鉄を含む芯材と、芯材の表面を被覆する鉄の金属層と、金属層の外周面を被覆する樹脂層と、を有する。
本実施形態のキャリアは上記構成であるため、金属層の剥離が抑制される。その理由は定かではないが、芯材に含まれる酸化鉄と金属層を構成する鉄とが、同じ鉄原子を含むため親和性が高く、芯材と金属層との密着性が良好になるからであると推測される。
【0027】
また本実施形態では、芯材の表面を金属層で被覆し、さらにその金属層の外周面を樹脂層で被覆する構成であるため、導電性及び帯電性の両立がしやすい。すなわち、金属層を設けることによりキャリアに導電性が付与され、かつ、その金属層の外周面に樹脂層を設けることにより金属層の露出が抑制され、金属層の露出に起因する帯電性低下が抑制される。
特に本実施形態では、芯材の表面を鉄の金属層で被覆することにより導電性が付与されているため、樹脂層が、例えばカーボンブラック等の導電剤を含有していなくても、目的の電気抵抗値(キャリア抵抗値)が得られやすくなる。そのため、例えば樹脂層が導電剤を含有しない形態を採用すれば、たとえ樹脂層の剥離が起こったとしても、樹脂層に含まれる導電剤によるトナー汚染が抑制される。上記樹脂層に含まれる導電剤によるトナー汚染は画質の低下を招く場合があり、特にトナーとしてカラートナーを用いる場合は、トナーに混入した導電剤によりトナーの色が変化する場合もあるため、画質への影響が大きいと考えられる。しかしながら上記のように、樹脂層に導電剤が含まれない形態を採用すれば、トナーがカラートナーであっても、上記トナー汚染に起因する画質の低下は抑制される。
【0028】
本実施形態のキャリアは、上記の通り金属層の剥離が抑制される。そのため、本実施形態のキャリアを用いた静電潜像現像剤では、キャリアにおける金属層の剥離に起因する現像剤の劣化、すなわち得られた画像における画像濃度の低下が抑制される。
また本実施形態のキャリアを用いた画像形成装置で画像形成を行うと、キャリアにおける金属層の剥離に起因する、画像濃度の低下が抑制される。
さらに本実施形態のキャリアは、例えば被転写体の搬送速度が1000mm/秒以上である画像形成装置に用いても、金属層の剥離が抑制されるため、それに起因する画像の画像濃度の低下が抑制される。すなわち、被転写体の搬送速度が速いことにより、キャリアに大きなストレスがかかる条件下においても、本実施形態のキャリアは芯材と金属層との密着性が良好であるため、金属層の剥離が抑制され、得られた画像における画像濃度の低下が抑制されると考えられる。
なお、上記金属層の剥離に起因する画質低下の原因は定かではないが、例えば、金属層が剥離してキャリアの導電性及び帯電性が変化し、トナー帯電量が変化することにより、現像性や転写性が低下し、画像濃度の低下やカブリの発生が起こると考えられる。また金属層の剥離に起因する画質低下としては、上記の他に、剥離した金属層の剥離片がトナーに混入してトナーが汚染されることにより、トナーの色味や帯電量が変化し、それが画像の濃度や色に影響を与えることも考えられる。
【0029】
本実施形態では、芯材中に含まれる酸化鉄の含有量として、例えば50質量%以上100質量%以下の範囲が挙げられる。上記酸化鉄の含有量が上記範囲であると、上記範囲よりも少ない場合に比べて、芯材と金属層との密着性が良好となる。その理由は定かではないが、酸化鉄の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べて、上記芯材の酸化鉄と金属層の鉄との親和性が向上するからであると推測される。なお、上記酸化鉄の含有量は、例えば60質量%以上90質量%以下の範囲がよく、65質量%以上80質量%以下の範囲がさらによい。
【0030】
本実施形態では、樹脂層がシリコーン樹脂を含み、キャリアの蛍光X線元素分析によって得られるIFe/ISiの値が10以上200以下であることが望ましい。ここで「IFe」は鉄原子に由来した信号の強度を表し、「ISi」はシリコン原子に由来した信号の強度を表す。
上記IFe/ISiの値が上記範囲であることにより、キャリアの導電性及び帯電性の両立がはかれる。その理由は定かではないが、上記IFe/ISiの値が上記範囲であるキャリアにおいては、金属層が芯材の表面全体を被覆し、かつ、樹脂層が金属層の表面全体を被覆していると考えられる。そのため、芯材の表面に金属層が被覆していない部分が存在する場合や、金属層の表面に樹脂層が被覆していない部分が存在する場合に比べて、導電性が付与され、かつ、金属層の露出に起因する導電性低下が抑制されるからであると考えられる。なお、上記IFe/ISiの値は、例えば10以上200以下の範囲がよく、30以上100以下の範囲がさらによい。
【0031】
上記蛍光X線元素分析は、具体的には、例えば、蛍光X線元素分析装置として株式会社リガク製ZSX100sを用い、測定用試料5gを真空用粉末試料容器(RS640:株式会社リガク製)に入れ、試料フォルダーにセットし、SiとFeの測定を行う。測定条件としては、Siの測定では、Si−Kα線を測定線とし、管電圧50kV、管電流50mA、分光結晶にPET、検出器としてPC(プロポーショナルカウンター)を用いる。またFeの測定では、Fe−Kα線を測定線とし、管電圧50kV、管電流50mA、分光結晶にLiF、検出器としてSC(シンチレーションカウンター)を用いる。得られたそれぞれの蛍光X線強度から、その強度比である上記IFe/ISiの値を計算する。
【0032】
本実施形態では、樹脂層が有機金属化合物を含む形態であってもよい。樹脂層が有機金属化合物を含むことにより、樹脂層の剥離が抑制される。その理由は定かではないが、樹脂層に含まれる有機金属化合物が金属層に対して親和性が高いため、金属層と樹脂層との密着性が良好になると推測される。
【0033】
特に樹脂層を構成する樹脂としてシリコーン樹脂を用いた場合、樹脂層の形成においてシリコーン樹脂が硬化するのを補助する触媒として有機金属化合物を用いることにより、有機金属化合物を含んだシリコーン樹脂の樹脂層が形成される。上記過程で樹脂層が形成されたキャリアは特に、金属層と樹脂層との密着性が良好となるが、その理由は、シリコーン樹脂が硬化する過程において、触媒である有機金属化合物が金属層と樹脂層との密着性を強化させるからであると推測される。
【0034】
なお樹脂層に用いるシリコーン樹脂としては、後述するように、例えばストレートシリコーン樹脂及びフッ素変性シリコーン樹脂が挙げられ、一般的にはストレートシリコーン樹脂に比べてフッ素変性シリコーン樹脂の方が磨耗しにくいと考えられる。しかしながら樹脂層に用いるシリコーン樹脂としてストレートシリコーン樹脂を用いた場合でも、上記のように有機金属化合物を触媒として用いてシリコーン樹脂の樹脂層を形成すれば、樹脂硬度があがり金属層と樹脂層との耐磨耗性が良好となる。
【0035】
上記有機金属化合物に含まれる金属原子としては、例えば鉄原子が挙げられる。金属原子が鉄原子である有機金属化合物を用いると、金属原子が他の原子である場合に比べて、さらに樹脂層の剥離が抑制される。その理由は定かではないが、有機金属化合物の金属原子と金属層を構成する金属原子とが同じであることにより、有機金属化合物と金属層との親和性がより高くなり、金属層と樹脂層との密着性がより良好となるからであると考えられる。
【0036】
以下、本実施形態に係る静電潜像現像用キャリアを構成する各成分について詳細に説明する。
<芯材>
芯材は酸化鉄を含み、具体的には、例えば、フェライト、マグネタイト、鉄粉等が挙げられる。またフェライトの例としては、例えば下記式で示される構造のものが挙げられる。
式:(MO)(Fe
【0037】
上記式中、MはCu、Zn、Fe、Mg、Mn、Ca、Li、Ti、Ni、Sn、Sr、Al、Ba、Co及びMoからなる群より選択される少なくとも1種を示す。また、X、Yはmol比を示し、かつ条件X+Y=100の条件を満たす。
上記フェライトの中でも特に、磁力が高く真球形に近いフェライトとしては、例えば、上記式中のMがMnであるマンガンフェライトが挙げられる。
芯材を構成する材料は、上記材料に限られず、また上記材料以外の成分を必要に応じて含んでもよい。
芯材の体積平均粒径としては、例えば、30μm以上90μm以下の範囲が挙げられ、例えば50μm以上80μm以下の範囲であってもよい。
【0038】
なお、体積平均粒径の測定は、例えばコールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用して粒度分布を測定し、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径を、体積平均粒子径と定義する。
【0039】
<金属層>
金属層は、上記芯材の表面を被覆する層であり、Fe原子によって構成されている鉄の層である。すなわち金属層は、Fe原子以外の原子を積極的には含まないものであり、金属層におけるFe原子以外の原子の含有量としては、例えば5モル%以下の範囲が挙げられる。また金属層の厚さとしては、例えば0.05μm以上3μm以下の範囲が挙げられる。
なお、鉄の金属層としては、例えば、芯材に鉄をメッキすることによって得られる鉄のメッキ層、蒸着によって得られる蒸着層、スパッタによって得られるスパッタ層が挙げられる。その中でも簡易に得られやすい層としては、例えばメッキ層が挙げられる。
【0040】
<樹脂層>
樹脂層は、上記金属層の表面を被覆する層であり、樹脂層を構成する樹脂としては特に限られない。上記樹脂の具体例としては、例えば、フッ素系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素アクリル樹脂、アクリル・スチレン樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0041】
上記シリコーン樹脂は、シロキサン結合を有する樹脂(シリコーン樹脂)であり、具体例としては、例えば、側鎖にメチル基やフェニル基を含有したメチルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂等のストレートシリコーン樹脂;これらに他の有機樹脂を化学的に結合させた変性シリコーン樹脂;等が挙げられる。
【0042】
変性シリコーン樹脂の具体例としては、例えばフッ素系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素アクリル樹脂、アクリル・スチレン樹脂、アルキッド樹脂及びウレタン樹脂等で変性した変性シリコーン樹脂、並びに架橋型のフッ素変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0043】
前記ストレートシリコーン樹脂の例としては、例えば下記一般式(II)または一般式(III)で示される繰り返し単位を有するものなどが挙げられる。
【0044】
【化1】

【0045】
上記一般式(II)、一般式(III)において、R、R、及びRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、炭素数が1から4のアルキル基、フェニル基等の有機基を表す。
【0046】
また、前記フッ素変性シリコーン樹脂の例としては、例えば、前記一般式(II)、一般式(III)で示される繰り返し単位と、パーフロロアルキル基含有の有機ケイ素化合物とを加水分解させて得られる架橋型フッ素変性シリコーン樹脂などが挙げられる。上記パーフロロアルキル基含有の有機ケイ素化合物の例としては、CFCHCHSi(OCH、CCHCHSi(CH)(OCH、C17CHCHSi(OCH、C17CHCHSi(OC、(CFCF(CFCHCHSi(OCH等が挙げられる。
【0047】
樹脂層の被覆量としては、例えば、芯材100質量部に対し、0.05質量部以上2質量部以下が挙げられる。また樹脂層の厚さとしては、例えば、0.3μm以上10μm以下の範囲が挙げられる。なお、樹脂層の被覆量は、例えば、芯材の表面性状、芯材の形状、樹脂層の形成に用いる樹脂の量、樹脂層形成時における条件、樹脂形成後における機械的ストレスによる後処理条件等を調整することによって制御される。
【0048】
樹脂層は、上記の通り樹脂の他に有機金属化合物を含んでもよい。樹脂層に含まれる有機金属化合物としては、例えば、鉄のオクチル酸塩、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムプロピレート(シントーファイン(株))、カルシウムオクチレート(シントーファイン(株))、バリウムラウレート(シントーファイン(株))、シブチル錫ジラウレート(シントーファイン(株))、コバルトオクチレート(シントーファイン(株))、ジンクオクチレート(シントーファイン(株))等が挙げられる。鉄系を用いることが好ましい。
【0049】
樹脂層は、樹脂及び有機金属化合物の他に、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
なお、上記の通り、樹脂層がカーボンブラック等の導電剤を含まない形態であれば、樹脂層に含まれる導電剤によるトナー汚染は起こらない。一方、例えば樹脂層にカーボンブラック等の導電剤を含有させる必要がある場合は、カーボンブラックによる上記トナー汚染が抑制されるカーボンブラック含有量として、例えば樹脂層全体に対して5質量%以下の範囲が挙げられる。
【0050】
<キャリアの製造方法>
−芯材の製造−
芯材の製造方法は特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。具体的には、例えば、各原材料の金属酸化物、金属炭酸塩、金属水酸化物、必要に応じてその他の成分を配合し、さらに水を加え、湿式ボールミルで10時間粉砕・混合し、乾燥させた後、950℃で4時間保持する。これを湿式ボールミルで24時間粉砕し5μm以下の粒径とする。このスラリーを造粒乾燥し、窒素雰囲気中、1300℃で6時間保持した後、解砕し、さらに分級して芯材を得る方法が挙げられる。
【0051】
−金属層の形成−
上記芯材の表面に金属層を形成する。金属層を形成する方法は特に限られないが、例えば、メッキ法、蒸着法、スパッタ法等により金属層を形成する方法が挙げられる。またメッキ法としては、具体的には、例えば電界メッキ法、無電解メッキ法が挙げられる。
【0052】
−樹脂層の形成−
芯材の表面に形成された上記金属層の外周面に樹脂層を形成する。樹脂層の形成方法としては、例えば、流動床によるスプレードライ方式、ロータリドライ方式、万能攪拌機による液浸乾燥法等が挙げられ、これらを組み合わせてもよい。上記液侵乾燥法における液浸では、例えば、樹脂を溶剤に溶かし、その中に芯材(本実施形態では金属層が設けられた芯材)を分散し、攪拌しながら、減圧や加熱によって、溶剤を除去することで、樹脂を被覆する方法である。
【0053】
樹脂層の形成方法の具体例としては、例えば、樹脂と、樹脂の硬化触媒として有機金属化合物と、を溶媒に溶解させ、コーティング樹脂溶液を調整し、金属層が形成された芯材の表面(金属層の外周面)に塗布し、樹脂を硬化させ、溶媒を除去する。
ここで、用いる有機金属化合物の量としては、固形分に対して、例えば、0.01質量%以上5質量%以下の範囲が挙げられる。
また上記溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類が挙げられる。
【0054】
−その他の工程−
上記方法により樹脂層が形成された後は、例えば、焼き付けされた後、冷却され、解砕、粒度調整を経てキャリアの粒子が得られる。上記焼き付けにおいては、外部加熱方式又は内部加熱方式のいずれを用いてもよい。焼き付けの方法としては、具体的には、例えば、固定式又は流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉、又はマイクロウェーブによる焼き付けが挙げられる。焼き付けの温度としては、樹脂層を構成する樹脂の種類により異なるが、例えば、樹脂の溶融温度又はガラス転移温度以上の温度が挙げられる。焼き付けの条件としては、具体的には、例えば樹脂層がシリコーン樹脂である場合、200℃以上300℃以下の範囲の温度で30分保持する条件が挙げられる。
【0055】
上記解砕処理の後には、樹脂層表面の粗れやバリ等を除去してもよく、凝集したキャリア粒子の解しを行うために後処理を行ってもよい。後処理の方法としては、例えばキャリア粒子に機械的ストレスを与える方法が挙げられ、具体的には、例えば、ナウターミキサ、ボールミル、バイブロミル等を用いる方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以上のようにして、キャリアが製造される。
【0056】
<キャリアの特性>
キャリアの抵抗値としては、例えば、1×10Ωcm以上1×1011Ωcm以下の範囲が挙げられ、1×10Ωcm以上1×10Ωcm以下の範囲がさらによい。
【0057】
[静電潜像現像剤]
本実施形態に係る静電潜像現像剤(以下、「現像剤」と称する場合がある)は、上記キャリアとトナーとを含む二成分現像剤である。以下、トナーについて説明する。
【0058】
<トナー>
トナーは、結着樹脂を含み、必要に応じて着色剤、帯電制御剤、離型剤、磁性粉、粘性調整剤、その他の内添剤、外添剤等を含んでもよい。
【0059】
結着樹脂としては、例えば、ポリエステル、スチレンアクリル、ポリエーテルポリオール、ウレタン、シリコーン、環状オレフィン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、必要に応じて、2種類以上併用して使用してもよい。
光定着を行う画像形成にトナーを用いる場合、光定着時における臭気の発生が抑制されるトナーとしては、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含む結着樹脂を用いたポリエステル系トナーが挙げられる。
帯電制御剤としては、例えば、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、キレート錯体等が挙げられる。
外添剤としては、例えば、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、フッ素粒子、アクリル粒子等が挙げられ、これらを併用してもよい。
【0060】
トナーの製造方法としては、例えば、粉砕法、単量体を重合して製造する方法、樹脂を溶かして溶液中で粒子化したトナーを形成させる方法等が挙げられる。
上記粉砕法としては、例えば結着樹脂等のトナーを構成する成分を、例えば加圧ニーダ、ロールミル、エクストルーダー等を用いて、溶融混練して分散させ、冷却させた後に、ジェットミル等により粉砕し、例えば風力分級機等の分級機により分級して、トナーを得る方法が挙げられる。
トナーの体積平均粒径としては、例えば、2μm以上10μm以下の範囲が挙げられる。
【0061】
本実施形態の現像剤は、例えば、前記キャリア粒子とトナー粒子とを、ナウターミキサ等で混合して得られる。現像剤中におけるトナーの濃度としては、例えば1質量%以上10質量%以下の範囲が挙げられ、2質量%以上6質量%以下の範囲であってもよい。
【0062】
[画像形成装置]
本実施形態の画像形成装置は、前述のトナー及びキャリアを含む現像剤を用いて、記録媒体(被転写体)上に画像を形成するものであれば特に限定されない。画像形成装置は、具体的には、少なくとも記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段及びトナー像を記録媒体に定着させる定着手段を有する。
【0063】
上記画像形成は、例えば像保持体として電子写真感光体を利用した場合、例えば以下のようにして行う。まず、電子写真感光体の表面を、コロトロン帯電器又は接触帯電器等の帯電手段により帯電した後、露光手段等の静電潜像形成手段により静電潜像を形成する。次いで、表面に現像剤層を形成させた現像ロールを静電潜像に接触又は近接させてトナーを付着させ、電子写真感光体上にトナー像を形成する。形成されたトナー像は、コロトロン帯電器等の転写手段を利用して紙等の記録媒体(被転写体)表面に転写される。さらに、記録媒体表面に転写されたトナー像は、定着器(定着手段)により定着され、記録媒体に画像が形成される。
【0064】
前記電子写真感光体としては、例えば、アモルファスシリコン又はセレン等の無機感光体、ポリシラン又はフタロシアニン等を電荷発生材料や電荷輸送材料として使用した有機感光体等が挙げられる。その中でも特に長寿命なものとしては、例えばアモルファスシリコン感光体等が挙げられる。
前記定着器としては、例えば光により定着を行う光定着器(フラッシュ定着器)や、熱により定着を行う熱定着器等が挙げられる。
【0065】
上記光定着器に用いられる光源としては、例えば、ハロゲンランプ、水銀ランプ、フラッシュランプ、赤外線レーザ等が挙げられる。上記の中でも、瞬時に定着させるためエネルギーが節約される光源としては、例えばフラッシュランプ等が挙げられる。フラッシュランプの発光エネルギーとしては、例えば、1.0J/cm以上7.0J/cm以下の範囲が挙げられ、2J/cm以上5J/cm以下の範囲がさらによい。
【0066】
ここで、フラッシュランプの強度を示すフラッシュ光の単位面積当りの発光エネルギーは、下記式で表される。
式:S=((1/2)×C×V)/(u×L)×(n×f)
上記式(1)中、nは一度に発光するランプ本数(本)、fは点灯周波数(Hz)、Vは入力電圧(V)、Cはコンデンサ容量(F)、uはプロセス搬送速度(cm/s)、Lはフラッシュランプの有効発光幅(通常は最大用紙幅、cm)、Sはエネルギー密度(J/cm)を表す。
【0067】
以下、上記キャリア及びそれを用いた上記現像剤が用いられる、本実施形態の画像形成装置の一例について図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態における画像形成装置の一例について示す概略模式図である。図1の画像形成装置は、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックのトナーによりトナー像形成を行うものである。また図1の画像形成装置は、光定着を行う光定着器を備えた形態であるが、これに限られず、例えば加熱加圧定着を行う熱定着器を備えた形態であってもよい。
【0068】
図1中、1aから1dは帯電手段、2aから2dは露光手段、3aから3dは感光体(像保持体)、4aから4dは現像手段、5aから5dはクリーニング手段、10はロール媒体15から矢印方向に送り出される記録用紙(記録媒体)、20はシアン現像ユニット、30はマゼンタ現像ユニット、40はイエロー現像ユニット、50はブラック現像ユニット、70aから70dは転写ロール(転写手段)、71、72はロール、80は転写電圧供給手段、90は光定着器(定着手段)を各々表す。
【0069】
図1に示す画像形成装置は、帯電手段、露光手段、感光体、および現像手段を含む符号20、30、40、50で示される各色の現像ユニット(トナー像形成手段)と、記録用紙10に接して配置され、記録用紙10を搬送するロール71、72と、各現像ユニットの感光体を押圧するように記録用紙10を介してその反対側に接するように配置された転写ロール70a、70b、70c、70dと、これら3つの転写ロールに電圧を供給する転写電圧供給手段80と、感光体と転写ロールとの圧接部分を図中の矢印方向に通過する記録用紙10の感光体と接触する側に光を照射する光定着器90と、から構成されている。
【0070】
なお、シアン現像ユニット20は、感光体3aの周囲には時計回りに帯電手段1a、露光手段2a、現像手段4a、及びクリーニング手段5aが配置された構成を有する。また、感光体3aにおける現像手段4aの配置位置から時計回りのクリーニング手段5aの配置位置間に感光体3a表面に接するように、記録用紙10を介して転写ロール70aが対向配置されている。
【0071】
他の色の現像ユニットもこの構成に準ずる。なお、本実施形態の画像形成装置においては、シアン現像ユニット20の現像手段4a内にシアントナー及びキャリアを含む現像剤が収納され、他の現像ユニットの現像手段には、各々の色に対応したトナーとキャリアとが収納される。
【0072】
次に、この画像形成装置を用いた画像形成について説明する。まず、ブラック現像ユニット50において、感光体3dを時計回り方向に回転させつつ、帯電手段1dにより感光体3dの表面を帯電する。次に帯電された感光体3dの表面を露光手段2dにより露光することにより、複写しようとする元の画像のブラック色成分の画像に対応した潜像が感光体3d表面に形成される。さらに、この潜像上に現像手段4d内に収納されたブラックトナーを付与することによりこれを現像してブラックトナー像を形成する。イエロー現像ユニット40、マゼンタ現像ユニット30、シアン現像ユニット20においてもこれに準じたプロセスが行なわれ、それぞれ現像ユニットの感光体表面にそれぞれの色のトナー像が形成される。
【0073】
感光体表面に形成された各色のトナー像は、転写ロール70aから70dによる転写電位の作用により、矢印方向に搬送される記録用紙10上に順次転写され、元の画像情報に対応するように記録用紙10の表面に積層されて、最上層からシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの順に積層された積層トナー画像が形成される。
【0074】
次に、この記録用紙10上の積層トナー画像が、光定着器90のところまで搬送され、そこで光定着器90から光の照射を受けて、溶融し、記録用紙10に光定着され画像が形成される。
【実施例】
【0075】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」「%」は「質量部」「質量%」を意味する。
【0076】
<キャリアの製造>
(キャリアコア(芯材)の作製)
Fe、MnO、MgO、SrO、LiOの各原材料を、表1に示す配合比で配合し、水を加え、湿式ボールミルで10時間粉砕・混合し乾燥させ、950℃で4時間保持した後、湿式ボールミルで24時間粉砕を行ったスラリーを造粒乾燥し、窒素雰囲気中において1300℃で6時間保持した後、解砕し粒度調整を調整し、体積平均粒径が35μmのフェライト粒子(芯材)を得た。
【0077】
(金属層の形成)
次に、上記芯材に、バレルメッキ機材を用いて無電界メッキを行った。具体的には、塩化鉄2.5kg/100Lの水溶液を調製し、上記キャリアコア1kgを上記水溶液に投入後,室温(25℃)で15分間撹拌処理を行い,イオン交換処理を行った。その後,水溶液を濾過することにより、Feイオン置換コアを得た。
次いで、このFeイオン置換コアを、水素化ホウ素ナトリウム0.095kgを水50Lに溶解させた水溶液に投入後、室温(25℃)で15分間撹拌処理を行い、置換したFeイオンの還元処理を行った。次いで、水洗した後、濾過回収して乾燥した。
上記作業を複数回繰り返し、金属層の厚さ(メッキ厚)を表1に示す値に制御し、芯材の表面にFeの金属層が形成されたメッキコアを得た。
【0078】
なお、比較例1においては、上記塩化鉄の代わりに硫酸銅を用いた以外は上記と同様にし、芯材の表面にCuの金属層が形成されたメッキコアを得た。また比較例2においては、上記塩化鉄の代わりにメタンスルホン酸スズを用いた以外は上記と同様にし、芯材の表面にスズの金属層が形成されたメッキコアを得た。また比較例3においては、上記塩化鉄の代わりに硫酸ニッケル六水和物を用いた以外は上記と同様にし、芯材の表面にニッケルの金属層が形成されたメッキコアを得た。
【0079】
(樹脂層の形成)
15質量%のトリフルオロプロピル基を含有する架橋型フッ素変性シリコーン樹脂を固形分換算で必要量を秤量し、表1に示す硬化触媒を、表1に示す添加量で添加し、樹脂及び硬化触媒を1000ccのトルエン溶剤に溶解させ、コーティング樹脂溶液を調整した。なお、表1に示す硬化触媒において、有機金属触媒1は金属原子がFeである有機金属化合物(鉄のオクチル酸塩)を示し、有機金属触媒2は金属原子がAlである有機金属化合物(アルミニウムアセチルアセトナート)を示し、非金属触媒はアミン系触媒(γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン)を示す。
【0080】
上記コーティング樹脂溶液を用いて、流動床コーティング装置により、前記メッキコア粒子10kgに対してコーティングを行った。なおコーティングは、コート時間が1時間になるように(すなわち、1時間のコーティングによって樹脂の付着量が表1に示す値となるように)単位時間あたりの噴霧量を調整して行った。そして、100℃にて乾燥を行った。
その後270℃で1時間焼き付けを行い、解砕処理、振動型ミルにて30分間後処理を行ない、金属層の外周面に樹脂層が形成されたキャリアを得た。
【0081】
なお、実施例8においては、上記フッ素変性シリコーン樹脂の代わりにアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート)を用い、硬化触媒を用いない以外は、上記と同様にして樹脂層の形成を行った。
また、実施例15においては、上記フッ素変性シリコーン樹脂の代わりにストレートシリコーン樹脂(SR2400、東レダウコーニング)を用いた以外は、上記と同様にして樹脂層の形成を行った。
【0082】
<トナーの製造>
(イエロートナーの製造)
結着樹脂としてビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を原料とするポリエステル樹脂85質量部(花王社製 FP118)、顔料としてCIpigment Yellow 180(クラリアント社製)5質量部、4級アンモニウム塩(PSY、クラリアント製)0.1質量部、赤外線吸収剤としてジイモニウム(IRG−024TF、日本化薬)1質量部、及びポリエチレンワックス(800P、三井化学社製)5質量部からなるトナー組成物を、各々ヘンシェルミキサーに投入し、予備混合を行った後、エクストルーダー(池貝社製、PCM−30)により100℃以上110℃以下の温度範囲で、250rpmにて溶融混練し、次いでハンマーミルにて粗粉砕し、ジェットミルにて微粉砕した後、気流分級機にて分級を行い、イエロートナー母体粒子を得た。このトナー母体粒子にシリカ1.5質量部(TG820F;キャボット社製)を高速撹拌装置(ヘンシェルミキサ)により外添して平均粒径5.2μmのイエロートナーを得た。
【0083】
(マゼンタトナーの製造)
顔料をC.I.Pigment Red 122(ECR186Y、大日精化社製)に変えた以外は、上記イエロートナーと同様にして、平均粒径5.1μmのマゼンタトナーを得た。
(シアントナーの製造)
顔料をC.I.Pigment Blue15:3(ECB−301、大日精化社製)に変えた以外は、上記イエロートナーと同様にして、平均粒径5.0μmのシアントナーを得た。
【0084】
<現像剤の製造>
上記キャリア94質量部に対し、上記トナー6質量部の比率でボールミルにて混合し、現像剤を得た。
【0085】
<評価>
上記各現像剤を用い、評価を行った。評価装置(画像形成装置)としては、光定着器としてキセノンフラッシュランプを搭載した富士ゼロックス社製 Fuji Xerox 490/980 Continuous Feedプリンタの改造機(概略構成は図1と同様)を用いた。なお、フラッシュランプの発光エネルギーは2.7J/cmとした。また用紙搬送速度は1152mm/sとした。上記条件下において、上記画像形成装置により10万枚の画像形成を行い、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(キャリア電気抵抗測定)
上記画像形成の初期(100枚画像形成後)及び10万枚画像形成後において、画像形成装置の現像器からキャリアを取り出し、キャリアの電気抵抗測定を行った。
図2に、キャリアの電気抵抗の測定治具を示す。図2中の記号は、以下のものを示す。
101:試料セル(10×10×15mm)、{中央部の磁界強度:3400e}
102:電極
103:マグネット(7×15×20mm)、材質:フェライト{表面の磁束密度:950ガウス}
【0087】
キャリアの電気抵抗の測定治具としては、具体的には、デジタル超絶縁計R8340A(アドバンテスト製)を使用した。
冶具の構成は、図2で示すように、試料セル101が中央部にあり、その両端に電極102が設けられ、その脇にはマグネット103が設けられている。絶縁計は図に示すように電極102に配線されている。
上記冶具を用いた具体的な測定方法は、具体的には、まず冶具の試料セル101にキャリアを1077cm入れ、次にデジタル超絶縁計より印加電圧100Vをかけ、15秒後の値を測定し、電気抵抗の値とする。なお、表1中「−」と記載されている欄については、ブレークダウンで測定できなかったことを示す。
【0088】
(キャリア顕微鏡観察)
上記10万枚の画像形成を行った後、画像形成装置の現像器からキャリアを取り出し、顕微鏡でキャリアを観察し、キャリアの金属層(メッキ)及び樹脂層(コーティング樹脂)が剥離しているかどうか、またキャリアの表面にトナーが固着(フィルミング)しているかどうかを確認した。
【0089】
なお、キャリア顕微鏡観察における評価基準は以下の通りである。
G1:金属層及び樹脂層の剥離、並びにトナーの固着は観察されなかった。
G2:金属層及び樹脂層の剥離は観察されなかったが、トナーの固着が観察された。
G3:樹脂層の剥離が観察された
G4:金属層の剥離が観察された
【0090】
(形成された画像の画質評価)
上記画像形成の初期(10枚目)に形成された画像及び10万枚目に形成された画像を目視で観察し、画質を評価した。具体的には、初期に比べて10万枚目において画像濃度が低下したか否か、及び10万枚目の画像におけるかぶりの発生について評価した。
【0091】
画像濃度低下の有無に関する評価における評価基準は以下の通りである。
G1:初期と10万枚目において画像濃度が変わらなかった。
G2:画像濃度が若干低下するが、調整により許容範囲内に入るレベルであった。
G3:画像濃度が大きく低下した。
【0092】
かぶり発生の有無に関する評価における評価基準は以下の通りである。
G1:かぶりは発生しなかった。
G2:10万枚目においてかぶりが若干発生しているが、許容範囲内であった。
G3:10万枚目においてかぶりが発生し、許容範囲を超えていた。
【0093】
【表1】

【0094】
表1から分かるように、実施例では比較例1から比較例3に比べ、キャリアにおける金属層の剥離が抑制されていることが分かる。また実施例では比較例4に比べ、画質が良好であることが分かる。
【符号の説明】
【0095】
1a,1b,1c,1d 帯電手段
2a,2b,2c,2d 露光手段
3a,3b,3c,3d 感光体
4a,4b,4c,4d 現像手段
5a,5b,5c,5d クリーニング手段
10 記録用紙(記録媒体)
20 シアン現像ユニット
30 マゼンタ現像ユニット
40 イエロー現像ユニット
50 ブラック現像ユニット
70a,70b,70c,70d 転写ロール
71,72 ロール
80 転写電圧供給手段
90 光定着手段(定着手段)
101 試料セル
102 電極
103 マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化鉄を含む芯材と、
前記芯材の表面を被覆する鉄の金属層と、
前記金属層の外周面を被覆する樹脂層と、を有する静電潜像現像用キャリア。
【請求項2】
前記芯材中に含まれる前記酸化鉄の含有量は、50質量%以上100質量%以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項3】
前記樹脂層は、シリコーン樹脂を含み、
前記静電潜像現像用キャリアの蛍光X線元素分析によって得られる、鉄原子に由来した信号の強度をIFe、シリコン原子に由来した信号の強度をISiとしたとき、IFe/ISiの値が10以上200以下である、請求項1又は請求項2に記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項4】
前記樹脂層は、有機金属化合物を含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項5】
前記有機金属化合物の金属原子は、鉄原子である、請求項4に記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の静電潜像現像用キャリアと、トナーと、を含む、静電潜像現像剤。
【請求項7】
像保持体と、
前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記静電潜像を請求項6に記載の静電潜像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を被転写体の表面に転写する転写手段と、
前記被転写体の表面に転写された前記トナー像を前記被転写体に定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項8】
前記被転写体の搬送速度が1000mm/秒以上である、請求項7に記載の画像形成装置。

【図2】
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【図1】
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