説明

静電潜像現像用樹脂被覆キャリアとその製造方法、及びそれを用いた画像形成方法

【課題】静電潜像現像用樹脂被覆キャリアの抵抗及び帯電付与能力がキャリア使用開始時から常に安定し、キャリア付着、エッジ効果、かぶりのない高品質のプリント画像を継続して得られるキャリア、その製造方法、及びそれを用いた画像形成方法の提供。
【解決手段】芯材粒子の表面に樹脂と導電性微粒子を有する被覆層を形成してなる静電潜像現像用樹脂被覆キャリアにおいて、前記芯材粒子と導電性微粒子の合計で算出される表面露出率がX線光電子分析装置による測定で、6%以上12%以下であることを特徴とする静電潜像現像用樹脂被覆キャリア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像現像用樹脂被覆キャリアとその製造方法、及びそれを用いた画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真法等の静電潜像現像法による画像形成方法においては、感光体や静電記録体上に種々の手段を用いて静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーと呼ばれる粒子を付着させて、静電潜像を現像する方法が一般的に使用されている。
【0003】
この現像に際してはキャリアをトナーと混合し、両者を撹拌し摩擦帯電させてトナーに適正な量の正又は負の電荷を付与している。キャリアは、一般に芯材粒子の表面に樹脂等の被覆層を有するいわゆる被覆キャリアと、表面に被覆層を有しない非被覆キャリアとに大別されるが、現像剤寿命や、形成される画質を考慮した場合には、被覆キャリアの方が優れている。それ故、種々のタイプの被覆キャリアが開発され、且つ実用化されている。
【0004】
キャリアに要求される特性は種々あるが、トナーに適正な電荷を安定して付与することができること、その適正且つ安定な帯電付与能を長期にわたって維持することができることが求められている。この為には、キャリアが好適な電気的性質を有し、又、湿度や温度等の環境変化に対する耐性を有し、且つ、耐衝撃性、耐摩擦性が高く長期的に帯電付与能が変化しないことが重要であり、種々の被覆キャリアが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記被覆キャリアは現像剤の長寿命化が図れるという利点はあるが、それでも長期間使用した場合、現像器内における摩擦や衝撃(ストレス)により被覆層が磨耗して、トナーへの帯電付与性能を低下させることがある。したがって、キャリア被覆層の構成は、長期間にわたり帯電付与性能を安定化させるため、摩擦や衝撃を受けてもトナーの帯電量低下を引き起こさない被覆層が求められている。
【0006】
又、現像器内においては、トナーとの摩擦によりキャリア表面にトナーより脱離した外添剤やトナーの微粒子が付着することがある。キャリアに付着したトナー微粒子や外添剤は新たなトナーとの接触を妨げるため、帯電効率と帯電安定性を低下させる。
【0007】
そこで、現像器内でトナーや外添剤との摩擦によりキャリアの被覆層が削られ、被覆層の表面に付着した外添剤やトナーの微粒子が除去される構成になっているキャリアが提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0008】
しかし、これらに開示された技術ではキャリア表面へ付着を抑制することができ、常に新しい表面を形成することができるため帯電自体の安定性は向上するものと見られているが、長期にわたっての使用での現像安定性を確保するまでには至っていないのが現状である。
【0009】
更に、キャリアの被覆層に低抵抗微粒子(導電性微粒子)を傾斜配向させ、長期にわたり帯電性を維持させる技術が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3912594号公報
【特許文献2】特許第3943514号公報
【特許文献3】特許第3926937号公報
【特許文献4】特開2008−8938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、市場からの高画質化、高速化の要求に応じて年々性能向上をはかる必要があり、しかも使用期間を通じてその性能を維持する高耐久性も求められている。その観点から見ると導電性微粒子を傾斜配向させても、尚高画質化と高耐久性の両方の要求を満たせず、市場の要求を満たす現像剤が得られていないのが現状である。
【0012】
その理由は、導電性微粒子を多量に入れた場合には、初期のキャリア抵抗を調整しても、長時間の使用中に被覆層が摩擦・脱落等で減少して行くため、キャリアの抵抗が徐々に変化して画像領域へキャリアが付着してしまうことがある。又、キャリア表面に導電性微粒子が多量に存在するため、十分な帯電性を得ることが非常に困難なこともある。
【0013】
逆に、導電性微粒子を少量しか添加しない場合には、特に初期において、エッジ効果が高くなり、例えば紙送り方向に対してハーフトーン画像の後端に隣接してべた画像が存在する原稿をプリントすると、べた画像との境界付近のハーフトーン画像部に白抜けを起こしたり、高バイアス現像時に現像領域のエッジ部へのキャリア付着が発生したりするので、高耐久性を維持しつつ白抜けを発生させないキャリアは得られていないのが現状である。
【0014】
本発明の目的は、静電潜像現像用樹脂被覆キャリア(以下、単にキャリアとも云う)の抵抗及び帯電付与能力がキャリア使用開始時から常に安定し、キャリア付着、エッジ効果、かぶりのない高品質のプリント画像を継続して得られるキャリア、その製造方法、及びそれを用いた画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、下記の構成を採ることにより解決される。
【0016】
1.芯材粒子の表面に樹脂と導電性微粒子を有する被覆層を形成してなる静電潜像現像用樹脂被覆キャリアにおいて、
前記芯材粒子と導電性微粒子の合計で算出される表面露出率がX線光電子分析装置による測定で、6%以上12%以下であることを特徴とする静電潜像現像用樹脂被覆キャリア。
【0017】
2.前記芯材粒子の形状係数が130以上150以下であり、
前記被覆層の層厚が0.5μm以上2.0μm以下であり、
前記導電性微粒子の平均粒子径が被覆層の層厚の0.7倍以上1.5倍以下であり、
前記導電性微粒子の含有量が樹脂100質量部に対して2質量部以上8質量部以下であることを特徴とする前記1に記載の静電潜像現像用樹脂被覆キャリア。
【0018】
3.芯材粒子の表面に樹脂と導電性微粒子を含有する被覆層を形成する静電潜像現像用樹脂被覆キャリアの製造方法において、
機械的衝撃力が付与できる高速撹拌混合機を用い、芯材粒子、樹脂及び導電性微粒子の混合物を非加熱下もしくは加熱下で高速撹拌し、芯材粒子の表面に樹脂を溶解あるいは軟化させて樹脂及び導電性微粒子を含有する被覆層を形成する被覆工程、
形成された被覆層に更に熱又は衝撃の何れかを加えて被覆層表面に芯材粒子や導電性微粒子を露出させる表面露出率調整工程を有し、
前記表面露出率がX線光電子分析装置測定で、6%以上12%以下であることを特徴とする静電潜像現像用樹脂被覆キャリアの製造方法。
【0019】
4.前記1または2に記載の静電潜像現像用樹脂被覆キャリアを用いて2成分現像剤を作製し、該2成分現像剤を用いた現像器で感光体の潜像を現像することを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明のキャリア、その製造方法、及びそれを用いた画像形成方法は、キャリアの抵抗及び帯電付与能力がキャリア使用開始時から常に安定し、キャリア付着、エッジ効果、かぶりのない高品質のプリント画像を継続して得られる優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のキャリアの一例を示す拡大断面図である。
【図2】撹拌羽根付高速撹拌混合機の一例を示す概略図である。
【図3】本発明に係わる画像形成装置の一実施形態を示すカラー画像形成装置の概要断面構成図である。
【図4】図3の現像器の一例を示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
芯材粒子の表面に被覆層を設けたキャリアは高耐久性があり、省資源化の観点からも好ましく広く用いられるようになってきている。
【0023】
本発明者等は、芯材粒子の表面に樹脂と導電性微粒子を有する被覆層を設けて作製したキャリアの芯材粒子と導電性微粒子の表面露出率を特定の値に規定することにより上記問題が解決できるのではと考え種々検討を行った。
【0024】
種々検討結果、芯材粒子の表面に樹脂を主成分とする被覆層を設けることで高抵抗となった抵抗を、被覆層の表面に芯材粒子と導電性微粒子を特定量露出させて導通回路を設け、その導通回路から電荷を逃がすことで下げると、低温低湿及び高温高湿のプリント環境で多数枚プリントしても、キャリア付着、エッジ効果、かぶりの発生が無くなり、継続して高品質のプリント画像が得られることを見出した。
【0025】
本発明のキャリアは、芯材粒子の表面に設けた樹脂と導電性微粒子を有する被覆層の表面に芯材粒子と導電性微粒子を特定量露出させたもので、キャリア表面に露出させた芯材粒子と導電性微粒子の露出部による導通回路を設けることで、初期キャリアからキャリア寿命まで、好ましい範囲に帯電付与能力を保持できることを特徴としている。
【0026】
本発明において、初期キャリアとは、プリント枚数が100枚に満たない現像剤中のキャリアを指すものとし、画像形成装置の初期設定に使用した現像剤中のキャリアが該当する。
【0027】
図1は、本発明のキャリアの一例を示す拡大断面図である。
【0028】
図1において、1はキャリア、2は芯材粒子、3は導電性微粒子、4は樹脂、5は芯材粒子の露出部、6は導電性微粒子の露出部、7は被覆層を示す。
【0029】
本発明のキャリアは、図1に示すように、キャリアの表面に芯材粒子の一部と導電性微粒子の一部が露出しているものである。
【0030】
先ず、表面露出率について説明する。
【0031】
《表面露出率》
本発明において、表面露出率は、6.0%以上12.0%以下、好ましくは7.0%以上11.0%以下である。
【0032】
表面露出率(%)を6%以上とすることで、導通回路が十分となりキャリアの抵抗を下げることができ、エッジ効果の発生を防止できる。例えば、紙送り方向に対してハーフトーン画像の後端に隣接してべた画像が存在する原稿をプリントしても、べた画像との境界付近のハーフトーン画像が白抜けを起こすことを防止できる。又、高バイアス現像時に現像領域のエッジ部へのキャリア付着も防止できる。
【0033】
一方、表面露出率(%)を12%以下とすることで、導通回路が過剰とならず、帯電付与能力が保持でき、キャリア付や着飛散も防止できる。
【0034】
本発明において、表面露出率(%)とは、キャリアの表面に露出している芯材粒子の露出率と導電性微粒子の露出率を加算した値を云う。
【0035】
詳細には、100個のキャリアについて、キャリアの表面に露出している芯材粒子の露出率と導電性微粒子の露出率を加算した値を求め、その平均値を云う。
【0036】
(芯材粒子の露出率(F1)の測定)
芯材粒子の露出率は、X線光電子分析装置(XPS)「ESCA−1000(島津製作所製)」を用い、下記の方法で測定する。
【0037】
分析装置のX線強度を10kV,30mA、分析深度;Normalモードにおいて、芯材粒子表面上の組成は均一と仮定し、芯材粒子の主元素(例えば、炭素、酸素、鉄、マンガン、マグネシウム)から定量元素を選択し、定量元素の元素ピーク面積強度から、芯材粒子の露出率(%)(F1)を算出する。
【0038】
(導電性微粒子の露出率(F2)の測定)
導電性微粒子の露出率は、X線光電子分析装置(XPS)「ESCA−1000(島津製作所製)」を用い、下記の方法で測定することができる。
【0039】
分析装置のX線強度を10kV,30mA、分析深度;Normalモードにおいて、電性微粒子表面上の組成は均一と仮定し、導電性微粒子の主元素(例えば、シリカ、スズ、酸素)から定量元素を選択し、定量元素の元素ピーク面積強度から、導電性微粒子の露出率(%)(F2)を算出する。
【0040】
(表面露出率の計算)
下記式により表面露出率を100個のキャリアについて求め、その平均値を算出する。
【0041】
表面露出率(%)=(F1+F2)×100
(表面露出率を調整する手法)
表面露出率を6%以上12%以下に調整する手法としては特に限定されないが、好ましくは下記の手法を挙げることができる。
(1)芯材粒子として、形状係数(SF−1)が130以上150以下と、芯材粒子表面に凹凸部を有する形状のものを用いる。
(2)被覆層の平均層厚(L)を0.5μm以上2.0μm以下に調整する。
(3)導電性微粒子として、導電性微粒子の平均粒子径(D)が被覆層の平均層厚(L)に対して、0.7倍以上1.5倍以下のものを用いる。
(4)被覆層中に導電性微粒子を2質量%以上8質量%以下含有させる。
(5)芯材粒子表面に樹脂と導電性微粒子を有する被覆層を形成する工程の後に、表面露出率を調整する工程を行い、この工程でストレスを加えることで芯材粒子の凸部や導電性微粒子を被覆している樹脂を剥がして芯材粒子や導電性微粒子を露出させる。或いは、熱及び衝撃を加えることで凸部表面にある樹脂を凹部側に移動させることで芯材粒子を露出させる。
【0042】
本発明では、上記(1)を主体に(2)〜(5)を組み合わせてキャリアを作製する手法が好ましい。
【0043】
表面露出率を6.0%以上12.0%以下にすることにより本発明の目的が達成できる理由は明確ではないが、下記の如く考えている。
【0044】
次に、本発明で規定している項目について説明する。
【0045】
(芯材粒子の形状係数(SF−1))
芯材粒子としては、形状係数(SF−1)が130以上150以下と異形化したものが好ましい。
【0046】
形状係数(SF−1)が130以上150以下の芯材粒子を用いることにより、長期使用して被覆層が減耗しても、磨耗するのは芯材粒子の凸部のみで、凹部の被覆層は磨耗されず、キャリア抵抗を決める主因子は表面に露出した芯材粒子の凸部のみとなるため、キャリア使用開始時から寿命(使用期限末期)までキャリアの抵抗、帯電付与能力の変動を非常に少なくすることができる。
【0047】
その結果、形状係数(SF−1)が130以上150以下の芯材粒子を使用することにより、全使用期間を通してエッジ部へのキャリア付着や、エッジ効果、かぶり、トナー飛散は非常に少なくなる。
【0048】
更に、形状係数(SF−1)が130以上150以下の新剤粒子を用いることにより、芯材粒子露出率も調整し易い。
【0049】
本発明において、芯材粒子の形状係数(SF−1)とは、下記式1により算出される数値である。
【0050】
式1
SF−1=(芯材粒子の最大長)/(芯材粒子の投影面積)×(n/4)×100
先ず、芯材粒子のSF−1の測定にあたっては、芯材粒子を準備するが、芯材粒子単体でなく現像剤である場合には、前準備を行う。
・前準備
ビーカーに、現像剤、少量の中性洗剤、純水を添加してよくなじませ、ビーカー底に磁石を当てながら上澄み液を捨てる。更に、純水を添加し上澄み液を捨て、トナーおよび中性洗剤を取り除き、キャリアのみを分離する。その後、分離して得られたキャリアの被覆層を溶剤で溶解除去し、芯材粒子単体を得る。
【0051】
詳細には、キャリア2gを20mlのガラス瓶に投入し、次に、ガラス瓶にメチルエチルケトン15ml投入し、ウェーブロータで10分間撹拌し、溶媒にて被覆層を溶解する。磁石を用いて芯材粒子のみを取り出し、更にメチルエチケトン10mlで芯材粒子を3回洗浄する。洗浄した芯材粒子を乾燥し、測定用の芯材粒子を得る。本発明において測定用の芯材粒子とは、この前処理を行った後の粒子を指すものとする。
・測定
芯材粒子の形状係数の測定は、走査型電子顕微鏡により倍率150倍で、ランダムに100個以上の芯材粒子を写真撮影し、スキャナーにより取り込んだ写真画像を、画像処理解析装置「LUZEX AP」((株)ニレコ)を用いて行う。
【0052】
(被覆層の平均層厚)
芯材粒子の表面に形成する被覆層は、少なくとも樹脂と導電性微粒子を有する層である。
【0053】
被覆層の平均層厚は、0.5μm以上2.0μm以下の範囲であることが好ましい。被覆層の平均層厚を0.5μm以上とすることで耐久性が確保でき、2.0μm以下とすることでトナーが過剰に帯電されるのを防止できる。
【0054】
被覆層の平均層厚は、以下の方法により算出される値である。
【0055】
キャリアの中心を通る面を、集束イオンビーム試料作成装置「SMI2050」(エスエスアイナノテクノロジー(株)製)を用いて切断し、断面観察用の試料を作製する。
【0056】
この断面観察試料を透過型電子顕微鏡「JEM−2010F」(日本電子(株)製)にて拡大して撮影し、撮影された写真をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置「LUZEX AP」((株)ニレコ製)を用いて、キャリア50個を解析することにより被覆層の平均層厚を求める。
【0057】
好ましくは、先ずキャリア粒子を常温硬化性のエポキシ樹脂中に十分分散させた後、包埋し、粒径100nm程度のスチレン微粉末に分散させた後加圧成形する。必要により得られたブロックを四三酸化ルテニウム、又は、四三酸化オスミウムを併用し染色を施した後、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、キャリア粒子1個の断面が視野に入る倍率(約10000倍)にて写真撮影する。キャリア粒子の中心から10°間隔でキャリア粒子表面に向かって直線を引き、各直線が芯材粒子表面3と接する点をA、被覆層表面と接する点をBとし、AB間の距離を36点測定し、その平均値をキャリア粒子1個における被覆層の平均層厚とした。本発明における被覆層の平均層厚とは、キャリア粒子50個についての36点平均層厚の平均値にて示されるものである。
【0058】
被覆層の平均層厚の調整は、キャリア製造時に芯材粒子に対し添加する樹脂と導電性微粒子の添加量により調整する方法が好ましい。
【0059】
(導電性微粒子の体積平均粒径)
導電性微粒子は、その体積平均粒径が、被覆層の平均層厚の0.7倍以上1.5倍以下であるものを用いることが好ましい。
【0060】
導電性微粒子の平均粒子径(D)が被覆層の平均層厚(L)に対して、上記範囲であると、導電性微粒子と芯材が直接接触して導通回路を形成することができ、少量の導電性微粒子で抵抗を下げることができる。
【0061】
体積平均粒径が被覆層の数平均層厚の0.7倍以上の導電性微粒子を用いることにより、導電性微粒子を表面に露出させることができ、導通回路が形成しやすく、所望の抵抗を得るには導電性微粒子の添加量が少なくてすむ。導電性微粒子の添加量が多くなると帯電付与性が低下し、所望のトナー帯電量を得ることができない。所望の帯電量をえるため、導電性微粒子の添加量を少なくすると、エッジ効果が高くなり、例えば紙送り方向に対してハーフトーン画像の後端に隣接してべた画像が存在する原稿をプリントすると、べた画像との境界付近のハーフトーン画像に白抜けが発生し問題となる。
【0062】
一方、体積平均粒径が被覆層の平均層厚の1.5倍以下の導電性微粒子を用いることにより、導電性微粒子を被覆層中に保持でき、被覆層からの脱離を防止でき、導電性微粒子が機内に飛散したり、画像に付着したりして画像不良となることを防止できる。
【0063】
被覆層の平均層厚が0.5μmのときは、導電性微粒子の数平均粒子径が0.35μm以上0.75μm以下のものが好ましく用いられる。被覆層の平均層厚が2.0μmのときは導電性微粒子の数平均粒子径が1.4μm以上3.0μm以下のものが好ましく用いられる。
【0064】
導電性微粒子の数平均粒子径(D)は、光散乱電気泳動粒径測定装置「ELS−800」(大塚電子工業株式会社製)で測定することができる。
【0065】
(被覆層中に含有する導電性微粒子の量)
被覆層中に含有する導電性微粒子の量は、樹脂100質量部に対して2質量部以上8質量部以下であることが好ましい。2質量部以上とすることで表面露出率6%以上のキャリアを作製しやすい。一方、8質量部以下とすることで芯材粒子と被覆層の接着性を確保しつつ表面露出率12%以下のキャリアを作製しやすい。
【0066】
次に、キャリアを構成する部材(芯材粒子、導電性母粒子、樹脂)について説明する。
【0067】
〈芯材粒子〉
本発明で用いられる芯材粒子としては、鉄粉、マグネタイト、各種フェライト系粒子またはそれらを樹脂中に分散したものを挙げることができる。好ましくはマグネタイトや各種フェライト系粒子である。フェライトとしては、銅、亜鉛、ニッケル、マンガン等の重金属を含有するフェライトやアルカリ金属及び/またはマグネシウム等のアルカリ土類金属を含有する軽金属フェライトが好ましい。
【0068】
新剤粒子の形状係数(SF−1)としては、130以上150以下のものが好ましい。詳細については、前記の「芯材粒子の形状係数(SF−1)」に記載してある。
【0069】
芯材粒子の粒径としては、その体積平均粒径が10μm以上100μm以下のものが好ましく、20μm以上80μm以下のものがより好ましい。上記範囲の体積平均粒径を有する芯材粒子を用いると、本発明で規定している表面露出率に調整しやすく好ましい。
【0070】
芯材粒子の磁化特性としては、その飽和磁化が2.5×10−5〜15.0×10−5Wb・m/kgのものが好ましい。
【0071】
尚、芯材粒子の体積平均粒径は、湿式分散器を備えてなるレーザ回折式粒度分布測定装置「HELOS」(シンパテック社製)により測定される体積基準の平均粒径である。
【0072】
飽和磁化は、「直流磁化特性自動記録装置3257−35」(横河電気株式会社製)により測定される。
【0073】
芯材粒子は、原料となる例えばフェライトなどを造粒、乾燥した後、加熱処理により焼成を行い、得られた芯材粒子を解砕、分級する工程を経て作製される。焼成工程は、造粒乾燥した粒子を容器に入れ、焼成炉に入れて焼成する。
【0074】
芯材粒子の形状係数SF−1が130以上150以下の異形化芯材粒子の作製方法は、特に限定されないが、焼成工程において、焼成温度を1300〜1500℃と従来よりも高めに設定して作製する方法が好ましい。
【0075】
〈導電性微粒子〉
導電性微粒子としては、導電性微粒子の体積抵抗が1〜1×10Ωcmのものが好ましい。導電性微粒子の好ましい例として、酸化チタン、酸化スズ、マグネタイト等を挙げることができる。
【0076】
導電性微粒子の粒径は、被覆層の平均膜厚に左右されるが、その体積平均粒径が0.35μm以上3.0μm以下のものが好ましく用いられる。
【0077】
〈樹脂〉
被覆層を形成するのに好適な樹脂としては、芯材粒子表面に樹脂と導電性微粒子を被覆する被覆工程で良好に被覆層を形成でき、表面露出率調整工程で芯材粒子及び導電性微粒子を好ましい範囲に露出させることができるものが好ましい。
【0078】
好ましい樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体やスチレン−アクリル酸共重合体等の共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変成樹脂(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成樹脂):ポリテトラクロルエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロルトリフルロルエチレン等のフッ素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂を挙げることができる。尚、トナーのスペント化防止の点で特に好ましい樹脂としては、ポリアクリレート樹脂あるいはスチレン−アクリル酸共重合体樹脂を挙げることができる。
【0079】
次に、キャリアの特性について説明する。
【0080】
(キャリアの体積平均粒径)
芯材粒子の表面に被覆層を設けたキャリアの体積平均粒径は、10μm以上100μm以下であるものが好ましく、更に好ましくは20μm以上80μm以下である。上記範囲の体積平均粒径を有するキャリアを用いると、高品質(例えば、高解像力、高濃度)のプリント画像が得られ好ましい。
【0081】
キャリアの体積平均粒径は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパテック社製)により測定することができる。
【0082】
(キャリアのSF−1)
被覆層を形成したキャリアのSF−1としては、110以上120以下が好ましい。この範囲にあると、キャリアの流動性が良好となり好ましい。
【0083】
キャリア粒子のSF−1の測定にあたっては、キャリア単体でなく現像剤である場合には、現像剤からキャリアを分離し、キャリア単独で測定する。
【0084】
キャリアのSF−1は、芯材粒子のSF−1と同じ測定方法で測定することができる。
【0085】
(キャリアの抵抗の測定)
本発明において、キャリアの抵抗は、現像剤からトナーを分離してキャリアを単離し、単離したキャリアのみの抵抗を測定したときの値である。
【0086】
キャリアの使用開始時の抵抗(初期抵抗)は5×10〜3×1010Ωcmが好ましく、より好ましくは8×10〜1×1010Ωcmである。キャリアの抵抗が上記範囲内であると、初期使用時における実写において、べた画像部の中央部の画像濃度が低く、且つ端部が濃くなるエッジ効果を抑制し、長期使用後においてもキャリア付着、トナー飛散を抑制する効果を十分に発揮できる。
【0087】
キャリアの抵抗とは、磁気ブラシによる現像条件下に動的に測定される抵抗のことで、下記の抵抗測定方法により求めることができる。
【0088】
キャリアの抵抗測定は、感光体ドラムと同寸法のアルミ製電極ドラムを感光体ドラムに置き換え、現像スリーブ上にキャリア粒子を供給して磁気ブラシを形成させ、この磁気ブラシを電極ドラムと摺擦させ、このスリーブとドラムとの間に電圧(500V)を印加して両者間に流れる電流を測定する。キャリアの抵抗は測定値から下記式2により求める。
【0089】
式2
DVR(Ωcm)=(V/I)×(N×L/Dsd)
DVR:キャリア抵抗(Ωcm)
V:現像スリーブとドラム間の電圧(V)
I:測定電流値(A)
N:現像ニップ幅(cm)
L:現像スリーブ長(cm)
Dsd:現像スリーブとドラム間距離(cm)
本発明においては、V=500V、N=1cm、L=6cm、Dsd=0.6mmにて測定を行うものとする。
【0090】
次に、キャリアの製造方法について説明する。
【0091】
キャリアの表面被覆率は、前記の芯材粒子の形状係数、被覆層の層厚と導電性微粒子の平均粒子径、導電性微粒子の含有量等により調整できるが、更に、キャリアの製造方法によっても調整することができる。
【0092】
《キャリアの製造方法》
キャリアの製造方法は、キャリアの表面被覆率が6%以上12%以下になるよう芯材粒子の表面に樹脂と導電性微粒子を有する被覆層を設けることができる方法であれば特に限定されるものではない。
【0093】
キャリアの好ましい作製方法として、湿式コート法、乾式コート法による作製方法を挙げることができる。
【0094】
以下に各作製方法について説明する。
【0095】
〈湿式コート法〉としては、下記のものがある。
【0096】
(1)流動層式スプレーコート法
被覆用樹脂を溶剤に溶解した塗布液を、流動層を用いて磁性体粒子の表面にスプレー塗布し、次いで乾燥して被覆層を作製する方法
(2)浸漬式コート法
被覆用樹脂を溶剤に溶解した塗布液中に、磁性体粒子を浸漬して塗布処理し、次いで乾燥して被覆層を作製する方法
(3)重合法
反応性化合物を溶剤に溶解した塗布液中に、磁性体粒子を浸漬して塗布処理し、次いで熱等を加えて重合反応を行い、被覆層を作製する方法。
【0097】
〈乾式コート法〉
乾式コート法は、本発明で規定しているキャリアの表面露出率を調整しやすく特に好ましい方法である。
【0098】
乾式コート法に用いることができる装置としては、例えば、撹拌羽根付高速撹拌混合機、タービュラー、ボールミル、振動ミルなどで撹拌混合することが挙げられる。好ましくは、撹拌羽根付高速撹拌混合機である。
【0099】
図2は、撹拌羽根付高速撹拌混合機の一例を示す概略図である。
【0100】
図2において、11は本体上蓋で、該上蓋11には原料投入口12、投入弁13、フィルター14、点検口15が設けられている。原料投入口12より所定量の芯材粒子及び被覆用樹脂粒子及び導電性微粒子が投入され、投入された前記原料はモーター22により駆動される水平方向回転体18により撹拌される。該回転体18はその中心部18dに互いに120°の角度間隔で配置された撹拌羽根18a、18b及び18cが結合されていて、これらの羽根は底部10aの面に対して約35°傾けて取り付けられている。このため前記撹拌羽根18a、18b及び18cを高速回転させると、前記原料は上方へ掻き上げられ、本体容器10の上部内壁に衝突して落下するが途中、水平方向回転体19に衝突し、原料の撹拌の促進及び凝集の解砕が行われる。尚17は調温用ジャケット、16は温度計、20は製品取出口、21及び24は排出弁、23は容器内排気口である。
【0101】
図2に示す撹拌羽根付高速撹拌混合機を用いてキャリアを作製する方法としては、被覆層を形成する工程の後に表面露出率調整工程を行う2工程で行う方法が好ましい。
【0102】
(被覆層を形成する工程)
芯材粒子と樹脂粒子と導電性微粒子を混合し、芯材粒子の表面に樹脂粒子と導電性微粒子を被着させ、その後機械的衝撃力と熱を加えて被着した樹脂粒子を溶融或いは軟化させて芯材粒子表面に固着させ、被覆層を形成する。
【0103】
加熱する場合は80〜130℃が好ましく、衝撃力を起こす回転数としては、加熱中は10m/s以上、冷却時にはキャリア粒子同士の凝集を抑制するため5m/s以下が好ましい。衝撃力を付与する時間としては、20〜60分が好ましい。
【0104】
(表面露出率を調整する工程)
その後、低回転数で衝撃力を付与し、被覆されたキャリアにストレスを加え、芯材粒子の凸部の樹脂や導電性微粒子を被覆している樹脂を剥がして芯材粒子や導電性微粒子を露出させる。或いは、熱及び衝撃を加えることで凸部表面にある樹脂を凹部側に移動させることで芯材粒子を露出させる。
【0105】
表面露出率を調整する工程においては、加熱温度を60℃以下に低温化し、回転数を低速にすることで樹脂はがれを防止し、被覆層に熱及び弱い衝撃を加えることで凸部表面にある樹脂を凹部側に移動させたり、芯材粒子や導電性微粒子を露出させたりすることで表面露出量を調整する。衝撃力を付与する時間は、好ましくは、60〜90分が好ましい。
【0106】
次に、本発明のキャリアを用いた現像剤について説明する。
【0107】
《現像剤》
本発明のキャリアは、トナーと混合して2成分現像剤として用いることができる。
【0108】
2成分現像剤は、モノ黒のトナー画像形成、或いはカラーのトナー画像形成に用いられる。
【0109】
本発明に係る2成分現像剤は、本発明のキャリアとトナーとを混合することにより作製することができる。
【0110】
キャリアとトナーの混合比は、質量比でキャリア:トナー=100:10〜100:2が好ましい。
【0111】
キャリアとトナーの混合は、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を使用することができる。
【0112】
(トナー)
本発明に用いられるトナーとしては、通常よく用いられるものを特に限定なく用いることができる。例えば結着樹脂としてスチレン−アクリル系樹脂或いはポリエステル系樹脂を用いることができ、又、着色剤も従来より用いられている着色剤を用いることができ、更に必要に応じて離型剤や荷電制御剤が添加される。
【0113】
製造方法は、いわゆる粉砕法でも重合法によるトナー製造方法でもよく、トナー粒子形成後に多くの場合、シリカ微粒子等の外添剤が添加される。
【0114】
トナーは、体積基準におけるメディアン径(D50)で3.0μm以上8.0μm以下が好ましく、4.0μm以上7.0μm以下がより好ましい。
【0115】
体積基準におけるメディアン径(D50)の測定は、以下のようにして行う。
【0116】
「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピュータシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した装置を用いて測定、算出する。測定手段としては、トナー0.02gを界面活性剤溶液20g(トナーの分散を目的として、例えば、界面活性剤を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作製する。このトナー分散液をサンプルスタンド内のISOTON II(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5〜10質量%になるまでピペットにて注入する。この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値が得られる。測定機において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を50mmにし、測定範囲である1〜30mmの範囲を256分割して各頻度値を算出する。体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準におけるメディアン径とする。
【0117】
次に、上記で作製した現像剤を用いる画像形成方法について説明する。
【0118】
(画像形成方法)
本発明のキャリアは、感光体ドラムと現像スリーブの移動方向が、双方が最も近接し対面する領域(いわゆる現像領域)において同一方向となる現像システム(順転現像システム)において、より効果が得られる。順転現像システムでは、上記領域での感光体ドラムの移動方向と現像剤スリーブの移動方向が逆方向になる現像システム(逆転現像システム)と比較して、現像ニップ部への単位時間当たりのトナー供給量が少ないためにエッジ効果がより発生しやすくなってしまうからである。
【0119】
以下に、順転現像システムである画像形成装置の一例について、図3及び図4を用いて説明する。
【0120】
図3は、本発明に係わる画像形成装置の一実施形態を示すカラー画像形成装置の概要断面構成図である。
【0121】
図3において、画像形成装置GSは、画像形成装置本体GHと画像読取装置YSとから構成される。
【0122】
画像形成装置本体GHは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、ベルト状の中間転写体6と給紙搬送手段及び定着装置24とからなる。
【0123】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Yは、像担持体としての感光体ドラム1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像器4Y及びクリーニング手段8Yを有する。マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10Mは、像担持体としての感光体ドラム1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像器4M及びクリーニング手段8Mを有する。シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10Cは、像担持体としての感光体ドラム1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像器4C及びクリーニング手段8Cを有する。黒(K)色の画像を形成する画像形成部10Kは、像担持体としての感光体ドラム1K、帯電手段2K、露光手段3K、現像器4K及びクリーニング手段8Kを有する。帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光装置3C及び帯電手段2Kと露光装置3Kとは、潜像形成手段を構成する。
【0124】
中間転写体6は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持されている。画像形成部10Y、10M、10C及び10Kより形成された各色の画像は、回動する中間転写体6上に転写手段7Y、7M、7C及び7Kにより逐次転写されて(1次転写)、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録紙Pは、給紙手段21により給紙され、給紙ローラ22A、22B、22C、レジストローラ23等を経て、転写手段7Aに搬送され、記録紙P上にカラー画像が転写される(2次転写)。カラー画像が転写された記録紙Pは、定着装置24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0125】
一方、転写手段7Aにより記録紙Pにカラー画像を転写した後、記録紙Pを曲率分離した中間転写体6は、クリーニング手段8Aにより残留トナーが除去される。
【0126】
4Y、4M、4C、4Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の、小粒径のトナーとキャリアからなる2成分現像剤を内包する現像器であり、5Y、5M、5C、5Kは、現像器4Y、4M、4C、4Kにそれぞれ新規のトナーを補給するトナー補給手段である。
【0127】
画像形成装置本体GHの上部には、自動原稿送り装置201と原稿画像走査露光装置202から成る画像読取装置YSが設置されている。自動原稿送り装置201の原稿台上に載置された原稿dは搬送手段により搬送され、原稿画像走査露光装置202の光学系により原稿の片面又は両面の画像が走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれる。
【0128】
ラインイメージセンサCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、画像書き込み部(露光手段)3Y、3M、3C、3Kに信号を送る。
【0129】
自動原稿送り装置201は自動両面原稿搬送手段を備えている。この自動原稿送り装置201は原稿載置台上から給送される多数枚の原稿dの内容を、連続して一挙に読み取り、記憶手段に蓄積することが可能であるから(電子RDH機能)、複写機能により多数枚の原稿内容を複写する場合、或いはファクシミリ機能により多数枚の原稿dを送信する場合等に便利に使用される。
【0130】
尚、上記画像形成装置本体GHの内部には環境条件を検出するための環境条件検出手段としての温湿度センサTSが設けられる。又、現像制御部に接続されるコピー枚数をカウントするための枚数カウンタが画像形成装置本体GHに設けられる。
【0131】
次に、現像器4Y、4M、4C、4Kを代表して現像器4とし、また感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kを代表して感光体ドラム1として、図4を用いて本発明の画像形成装置に用いられる現像器について以下に説明する。
【0132】
図4は、図3の現像器の一例を示す概要断面構成図である。
【0133】
尚、以下の説明において2成分現像剤を現像剤ともいう。又、黒の塗りつぶし矢印は2成分現像剤の現像剤担持体への供給、搬送方向を示し、白抜き矢印は現像剤担持体からの2成分現像剤の剥ぎ取り、回収方向を示すものである。
【0134】
現像器4は、現像器枠体40、現像剤担持体である現像ローラ41、磁界発生手段(マグネットロール)42、穂切り板からなる規制手段43、水車型の供給手段44、スクリューからなり撹拌・搬送を行う撹拌スクリュー45、46、剥ぎ取りローラ47、剥ぎ取り板48、スクリューからなる回収手段49、トナー濃度検出センサTD等から構成されている。
【0135】
感光体ドラム1の矢印で示す周速度Vpの反時計方向の回転と現像ローラ41の矢印で示す周速度Vsの時計方向の回転により、現像領域DRにおいて、静電潜像が現像される。交流バイアスに、潜像の極性と同極性の直流バイアス重畳した現像バイアスが現像ローラ41にバイアス電源BSにより印加され、反転現像が行われる。
【0136】
現像ローラ41は、静電潜像を担持する感光体ドラム1に対向して配置され、回転可能に支持されており、矢印で示すように回転して現像剤を現像領域DRに搬送(同一方向となる現像システム(順転現像システム))し、現像領域DRにおいて現像剤を担持して現像に必要な現像剤層を形成する。
【実施例】
【0137】
以下、本発明を下記の実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0138】
先ず、芯材粒子を作製し、この芯材粒子を用いてキャリアを作製した。
【0139】
《芯材粒子の作製》
(芯材粒子1の作製)
MnO換算で21.0モル%、MgO換算で3.3モル%、SrO換算で0.7モル%、Fe換算で75.0モル%になるように各原材料を適量配合し、水を加え、湿式ボールミルで10時間粉砕、混合し、乾燥させ、950℃で4時間保持した後、湿式ボールミルで24時間粉砕を行ったスラリーを造粒乾燥し、撹拌装置を内蔵した焼成炉内に容積の5割量を添加して、周速10m/s、1300℃にて4時間保持した後、解砕し、体積平均粒子径が35μmになるよう粒度調整を行い、「芯材粒子1」を作製した。尚、芯材粒子1のSF−1は130であった。
【0140】
(芯材粒子2〜5の作製)
芯材粒子1の作製において、焼成温度を表1に示すように変更する以外は芯材粒子1の作製方法と同様にして、「芯材粒子2〜5」を作製した。
【0141】
表1に、芯材粒子作製時の焼成温度、芯材粒子のSF−1、体積平均粒径を示す。
【0142】
【表1】

【0143】
尚、芯材粒子のSF−1、体積平均粒径は前記の方法で測定した値である。
【0144】
《導電性微粒子の準備》
導電性微粒子として、以下のものを準備した。
【0145】
導電性微粒子1:酸化チタン(体積平均粒径=0.35μm)
導電性微粒子2:酸化チタン(体積平均粒径=0.50μm)
導電性微粒子3:酸化チタン(体積平均粒径=0.75μm)
導電性微粒子4:酸化チタン(体積平均粒径=0.7μm)
導電性微粒子5:酸化チタン(体積平均粒径=1.0μm)
導電性微粒子6:酸化チタン(体積平均粒径=1.5μm)
導電性微粒子7:酸化チタン(体積平均粒径=1.4μm)
導電性微粒子8:酸化チタン(体積平均粒径=2.0μm)
導電性微粒子9:酸化チタン(体積平均粒径=3.5μm)
導電性微粒子10:酸化スズ(体積平均粒径=1.0μm)
《キャリアの作製》
(キャリア1の作製)
上記で作製した「芯材粒子1」100質量部と、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の「共重合体樹脂微粒子」2質量部と、「導電性微粒子1(酸化チタン)」5.0質量部とを、図2に示す「撹拌羽根付高速混合機」に投入し、120℃に加熱し、撹拌羽根の回転速度10m/sで30分間撹拌混合して機械的衝撃力の作用で芯材粒子の表面に被覆層を形成した。
【0146】
その後、40℃に冷却し、撹拌羽根の回転速度2m/sで60分間撹拌混合してストレスを与えて表面露出率を調整し、平均層厚1.0μmの「キャリア1」を作製した。
【0147】
(キャリア2〜18の作製)
キャリア1の作製において用いた芯材粒子と樹脂と導電性微粒子、それらの量を、表2に示すように変更した以外はキャリア1の作製方法と同様にして、「キャリア2〜18」を作製した。
【0148】
(キャリア19の作製)
キャリア1作製において、芯材粒子の表面に被覆層を形成した後、表面露出率の調整を行わなかったキャリアを「キャリア19」とした。
【0149】
(キャリア20の作製)
キャリア1の作製において、芯材粒子の表面に被覆層を形成した後の工程を、30℃に冷却し、撹拌羽根の回転速度4m/sで120分間撹拌混合してストレスを与えて表面露出率を調整した以外は同様にして「キャリア20」を作製した。
【0150】
表2に、キャリア1〜20の作製で用いた芯材粒子、樹脂、導電性微粒子、キャリアの表面露出率等を示す。
【0151】
【表2】

【0152】
尚、キャリアの表面露出率は、前記の方法で測定して求めた値である。
【0153】
《現像剤の調製》
上記で作製した各キャリア100質量部と、画像形成装置「8050(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)」用の黒色トナー6質量部を撹拌機で混合し「現像剤1〜20」を調製した。
【0154】
《性能評価》
性能評価用に画像形成装置「8050」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を準備した。この画像形成装置に上記で作製した現像剤を順次装填し、黒色トナー単色にて画像面積が10%の画像チャート(文字画像が7%、人物顔写真、べた白画像、べた黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像)を、A4判上質紙(64g/m)にプリントした。
【0155】
評価は、初期と100万枚プリント後に行った。
【0156】
(トナーの帯電量)
トナーの帯電量の測定は、平行平板(アルミ)電極間に現像剤を配置し、電極間ギャップが0.5mm、DCバイアスが1.0kV、ACバイアスが4.0kV、2.0kHzの条件でトナーを現像させた際の現像効率を測定した。現像されたトナーの電荷量と質量を測定し、単位質量当たりの電荷量Q/m(μC/G)を帯電量とした。尚、トナーの帯電量が−23〜−43μC/gであれば、問題ないレベルといえる。
【0157】
(キャリア付着)
キャリア付着は、100万枚プリント後に、無画像チャートを現像し、その時、感光体表面に付着しているキャリア個数をルーペにより5視野を観察し、100cm当たりのキャリア付着個数の平均個数で評価した。尚、評価は、◎と○を合格とし、×を不合格とする。
【0158】
評価基準
◎:キャリア付着個数が、20個以下
○:キャリア付着個数が、21個以上、50個未満
×:キャリア付着個数が、50個以上。
【0159】
(エッジ効果)
エッジ効果は、プリント初期時に、画像濃度0.5のべたハーフトーン画像のプリント方向後部に画像濃度1.2〜1.3のべた画像が存在する画像チャートをプリントし、べた画像とハーフトーン画像の境界部に白抜けが発生する程度を目視で評価した。尚、評価は、◎と○を合格とし、×を不合格とする。
【0160】
評価基準
◎:白抜けが発生せず良好
○:白抜けが若干に認められるが実用上問題なし
×:白抜けが発生し、実用上問題有り。
【0161】
(かぶり)
かぶりは、まず印字されていない白紙について、反射濃度計「RD−918」(マクベス社製)を用いて20ヶ所の絶対画像濃度を測定して平均し、白紙濃度とする。次に評価形成画像100万枚目の白地部分について、同様に20ヶ所の絶対画像濃度を測定して平均し、この平均濃度から白紙濃度を引いた値をかぶり濃度として評価した。かぶり濃度は0.003以下を合格とする。
【0162】
表3に、評価結果を示す。
【0163】
【表3】

【0164】
表3から明らかなように、本発明の「キャリア1〜3、6〜16」を使用した「現像剤1〜3、6〜16」では、全ての評価項目で、初期から長期間使用後まで問題なく、本発明の目的が達成されていることが判る。一方、比較例の「キャリア4、5、17〜20」を使用した「現像剤4、5、17〜20」では、何れかの評価項目で問題が有り、本発明の目的を達成できていいないことが判る。の抵抗及び帯電性が安定してので、高画質の画像を長期間連続して得ることができる。
【符号の説明】
【0165】
1 キャリア
2 芯材粒子
3 導電性微粒子
4 樹脂
5 芯材粒子の露出部
6 導電性微粒子の露出部
7 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材粒子の表面に樹脂と導電性微粒子を有する被覆層を形成してなる静電潜像現像用樹脂被覆キャリアにおいて、
前記芯材粒子と導電性微粒子の合計で算出される表面露出率がX線光電子分析装置による測定で、6%以上12%以下であることを特徴とする静電潜像現像用樹脂被覆キャリア。
【請求項2】
前記芯材粒子の形状係数が130以上150以下であり、
前記被覆層の層厚が0.5μm以上2.0μm以下であり、
前記導電性微粒子の平均粒子径が被覆層の層厚の0.7倍以上1.5倍以下であり、
前記導電性微粒子の含有量が樹脂100質量部に対して2質量部以上8質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用樹脂被覆キャリア。
【請求項3】
芯材粒子の表面に樹脂と導電性微粒子を含有する被覆層を形成する静電潜像現像用樹脂被覆キャリアの製造方法において、
機械的衝撃力が付与できる高速撹拌混合機を用い、芯材粒子、樹脂及び導電性微粒子の混合物を非加熱下もしくは加熱下で高速撹拌し、芯材粒子の表面に樹脂を溶解あるいは軟化させて樹脂及び導電性微粒子を含有する被覆層を形成する被覆工程、
形成された被覆層に更に熱又は衝撃の何れかを加えて被覆層表面に芯材粒子や導電性微粒子を露出させる表面露出率調整工程を有し、
前記表面露出率がX線光電子分析装置測定で、6%以上12%以下であることを特徴とする静電潜像現像用樹脂被覆キャリアの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の静電潜像現像用樹脂被覆キャリアを用いて2成分現像剤を作製し、該2成分現像剤を用いた現像器で感光体の潜像を現像することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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