説明

静電潜像現像用透明トナー、静電潜像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法

【課題】定着された画像が熱や圧力により対向する用紙や像に移行する現象が抑制される静電潜像現像用透明トナーの提供。
【解決手段】結着樹脂と離型剤とを含み、示差走査熱量計(DSC)によりASTM法に基づいて測定された昇温過程でのトナー中における前記離型剤に由来する吸熱ピークTmと、降温過程での前記トナー中における前記離型剤に由来する発熱ピークTcと、の差が20℃以上50℃以下であり、トナー中における前記離型剤のドメインにナトリウムが存在する、静電潜像現像用透明トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像現像用透明トナー、静電潜像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、少なくとも結着樹脂及び離型剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、該離型剤が13C−NMRによる分岐炭素の割合において0.5から20であることを満足し、且つ下記特性;示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸熱ピーク及び降温時の発熱ピークに関し、吸熱のオンセット温度が50から100℃の範囲にあり、温度60から130℃の領域に少なくとも1つの吸熱ピークP1があり、該吸熱ピークP1のピーク温度±20℃の範囲内に降温時の最大発熱ピークがある、を満足することを特徴とする静電荷像現像用トナーが提案されている。
【特許文献1】特開平10−73952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、離型剤のドメインにナトリウムが存在しない場合に比較して、定着された画像が熱や圧力により対向する用紙や像に移行する現象(以下、「ドキュメントオフセット現象」と称する場合がある)が抑制される静電潜像現像用透明トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち、請求項1に係る発明は、
結着樹脂と離型剤とを含み、
示差走査熱量計(DSC)によりASTM法に基づいて測定された昇温過程でのトナー中における前記離型剤に由来する吸熱ピークTmと、降温過程での前記トナー中における前記離型剤に由来する発熱ピークTcと、の差(Tm−Tc)が20℃以上50℃以下であり、
前記トナー中における前記離型剤のドメインにナトリウムが存在する、静電潜像現像用透明トナーである。
【0005】
請求項2に係る発明は、
蛍光X線測定により測定された前記トナー中における前記ナトリウムの濃度が0.1atom%以上1.5atom%以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用透明トナーである。
【0006】
請求項3に係る発明は、
前記トナー中の前記離型剤のドメインにおける前記ナトリウムの濃度は、前記トナー中の前記離型剤のドメイン以外の領域における前記ナトリウムの濃度の2倍以上10倍以下である、請求項1又は請求項2に記載の静電潜像現像用透明トナーである。
【0007】
請求項4に係る発明は、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の静電潜像現像用透明トナーを含む静電潜像現像剤である。
【0008】
請求項5に係る発明は、
白色導電剤を含有するキャリアを含む、請求項4に記載の静電潜像現像剤である。
【0009】
請求項6に係る発明は、
芯材と、前記芯材を被覆し0.2μm以上1.0μm以下の厚みを有する被覆樹脂層と、を有するキャリアを含む請求項4に記載の静電潜像現像剤である。
【0010】
請求項7に係る発明は、
前記被覆樹脂層は白色導電剤を含む、請求項6に記載の静電潜像現像剤である。
【0011】
請求項8に係る発明は、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の静電潜像現像用透明トナーを収容する、トナーカートリッジである。
【0012】
請求項9に係る発明は、
請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載の静電潜像現像剤を収容する現像装置を備えた、プロセスカートリッジである。
【0013】
請求項10に係る発明は、
潜像保持体と、
前記潜像保持体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記潜像保持体に形成された前記静電潜像を、請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載の静電潜像現像剤によりトナー画像として現像する現像手段と、
前記潜像保持体に形成された前記トナー画像を被転写体に転写する転写手段と、
前記被転写体に転写された前記トナー画像を定着する定着手段と、を有する画像形成装置である。
【0014】
請求項11に係る発明は、
潜像保持体に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記潜像保持体に形成された前記静電潜像を、請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載の静電潜像現像剤によりトナー画像として現像する現像工程と、
前記潜像保持体に形成された前記トナー画像を被転写体に転写する転写工程と、
前記被転写体に転写された前記トナー画像を定着する定着工程と、を有し、
定着された前記トナー画像の断面における離型剤のドメインの形状係数SF1が120以上150以下である、画像形成方法である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、離型剤のドメインにナトリウムが存在しない場合に比較して、定着された画像が熱や圧力により対向する用紙や像に移行する現象が抑制される。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、トナー中におけるナトリウムの濃度が特定の範囲から外れる場合に比較して、定着された画像が熱や圧力により対向する用紙や像に移行する現象が抑制される。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、離型剤ドメインにおけるナトリウムの濃度と離型剤ドメイン以外の領域におけるナトリウムの濃度との比が特定の範囲から外れる場合に比較して、定着された画像が熱や圧力により対向する用紙や像に移行する現象が抑制される。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、トナー中における離型剤のドメインにナトリウムが存在しない場合に比較して、定着された画像が熱や圧力により対向する用紙や像に移行する現象が抑制される。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、白色導電剤以外の導電剤を用いた場合に比較して、キャリア片が被転写体にトナーと共に転写された場合においても、トナー画像中においてキャリア片が目につきにくくなる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、キャリアの被覆樹脂層の厚みが特定の範囲から外れる場合に比較して、トナーの抵抗値が低下しても、当該抵抗値の低下に起因する現像性及び転写性の低下が抑制される。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、キャリアの被覆樹脂層に白色導電剤以外の導電剤を含んだ場合に比較して、キャリア片が被転写体にトナーと共に転写された場合においても、トナー画像中においてキャリア片が目につきにくくなる。
【0022】
請求項8に係る発明によれば、トナー中における離型剤ドメインにナトリウムが存在しない場合に比較して、ドキュメントオフセット現象が抑制される。
【0023】
請求項9に係る発明によれば、トナー中における離型剤ドメインにナトリウムが存在しない場合に比較して、ドキュメントオフセット現象が抑制される。
【0024】
請求項10に係る発明によれば、トナー中における離型剤ドメインにナトリウムが存在しない場合に比較して、ドキュメントオフセット現象が抑制される。
【0025】
請求項11に係る発明によれば、離型剤ドメインの形状係数SF1が上記範囲から外れる場合に比較して、光沢ムラが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】実施例における光沢度の測定位置を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の静電潜像現像用透明トナー、静電潜像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
<静電潜像現像用透明トナー>
本実施形態に係る静電潜像現像用透明トナー(以下、「透明トナー」と称する場合がある)は、結着樹脂と離型剤とを含む。そして透明トナーを示差走査熱量計(DSC)によりASTM法で測定し、昇温過程におけるトナー中の離型剤に由来する吸熱ピークをTm、降温過程におけるトナー中の離型剤に由来する発熱ピークをTcとすると、TmとTcとの差(Tm−Tc)は20℃以上50℃以下である。また透明トナーは、離型剤ドメインにナトリウムが存在する。
なお、本実施形態において透明トナーとは、透明トナー像に用いられるトナーであり、具体的には、染料、顔料等の着色剤の含有量が0.01質量%以下である無色のトナーをいう。
【0029】
本実施形態の透明トナーは、上記構成であるため、定着された画像が熱や圧力により対向する用紙や像に移行する現象(以下、「ドキュメントオフセット現象」と称する場合がある)が抑制される。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
透明トナーの内部には、離型剤ドメインと離型剤ドメイン以外の領域とが存在し、本実施形態においてはその離型剤ドメインにナトリウムが存在する。
離型剤ドメインに存在するナトリウムは、イオンとして存在するため極性を有し、樹脂などの炭化水素化合物に対する親和性よりも、水などの極性を有するものに対する親和性の方が、高いと考えられる。そのため、ナトリウムを含む離型剤ドメインは、ナトリウムを含まない離型剤ドメインに比べて、トナーの粒子の内部よりも表面に近いところに存在しやすいため、離型剤がトナーの粒子の外部に出やすい状態にあると考えられる。よって、離型剤ドメインにナトリウムが存在するトナーを用いて画像形成を行うと、定着時に離型剤が染み出しやすく、画像全体を離型剤で覆いやすくなる。一般的に樹脂のガラス転移温度よりも離型剤の融点の方が高いため熱や圧力の影響を受けにくくなり、ドキュメントオフセット現象が抑制されると考えられる。
【0030】
なお、離型剤ドメイン中にナトリウムが含まれているか否かは、下記方法により確認される。
まず、トナー粒子をビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と硬化剤を用いて包埋したのち、切削用サンプルを作製する。次にダイヤモンドナイフを用いた切削機、例えばLEICAウルトラミクロトーム(日立テクノロジーズ社製)を用いて−100℃の下、切削サンプルを切削し、観察用サンプルを作製する。更に、この観察用サンプルを四酸化ルテニウム雰囲気下となっているデシケーター内に放置し、染色を行う。染色の判断は、同時に放置したテープの染色具合により判断される。この様にして染色された観察サンプルをTEMにより倍率5000倍で観察する。
なお、トナーサンプルは四酸化ルテニウムで染色されているため、結着樹脂の領域(離型剤ドメイン以外の領域)や離型剤の領域(離型剤ドメイン)が、染色の濃淡の違いや形状から判別される。トナー内部の棒状、塊状に存在し、より白いコントラストの部分を離型剤ドメインと判断する。
次に、離型剤ドメイン中のナトリウムについては、観察用サンプルを電子顕微鏡S4100に取り付けたエネルギー分散型X線分析装置EMAX model6923H(HORIBA社製)を用いて加速電圧20kVでマッピングし、離型剤ドメイン中にナトリウムが含まれているか否かを判別する。
【0031】
また本実施形態の透明トナーにおいては、TmとTcとの差(Tm−Tc)が20℃以上50℃以下である。TmとTcとの差は、小さければ小さいほど、加熱により溶融した離型剤の冷却に伴って結晶化しやすい。一方、本実施形態のようにTmとTcとの差が20℃以上であれば、20℃よりも小さい場合に比べて離型剤の冷却による結晶成長が抑制される。そのため、結晶成長に伴って離型剤ドメインの形状が扁平形になることも抑制され、離型剤ドメインの形状が扁平形であることに起因して定着画像の表面で光が乱反射して光沢むらが発生することも抑制される。またTmとTcとの差を50℃よりも大きくすることは技術的に困難である。なお、TmとTcとの差は、25℃以上50℃以下がより好ましく、30℃以上50℃以下がさらに好ましい。
【0032】
なお、示差走査熱量計(DSC)によりASTM法(D3418−8)に基づく上記Tm及びTcは、以下の方法によって求めたものである。1)試料10mgをアルミニウムセル中に入れ、蓋をする(これを試料用セルという)。比較用にアルミナ10mgを同様に同型のアルミニウムセル中に入れ、蓋をする(これを比較用セルという)。2)試料用セルと比較用セルとをそれぞれ測定装置にセットし、窒素雰囲気下で30℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温させ、200℃で10分間放置する。3)放置後、液体窒素を用いて−10℃/分の降温速度で−30℃まで温度を下げ、10分間−30℃で放置する。4)放置後、20℃/分の昇温速度で−30℃から200℃まで昇温する。4)の操作の際に、吸熱・発熱曲線を求める。得られた吸熱・発熱曲線からTm及びTcを決定する。測定装置としては、パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計DSC−7を用いた。
【0033】
なお、得られた吸熱・発熱曲線において、Tm及びTcがトナーに含まれる離型剤由来のものであるか否かは以下のように判断する。
まず、トナーを180℃に熱したトルエンに溶かし、その後冷却して結晶化した離型剤のみを分取した。得られた離型剤について前記と同様にDSCによって昇温過程での吸熱ピークを求めた。このとき、トナーのTmと離型剤のみの吸熱ピークが一致すれば、トナーのTmがトナーに含まれる離型剤由来のものと判断される。
次に、離型剤のみを分取したときの残ったトナー溶解トルエンのトルエンを揮発させ、残った固形分について前記と同様にDSCによって降温過程での発熱ピークを求めた。このときの発熱ピークは離型剤以外を由来とするものであるため、これらのピーク以外のトナーのTcは離型剤由来のものと判断される。
【0034】
また、TmとTcとの差を制御する方法としては、例えば、離型剤ドメイン中のナトリウム含有量により制御する方法等が挙げられる。また離型剤ドメインには、ナトリウムの他、Al等の金属元素が含まれていてもよい。
【0035】
本実施形態においては、蛍光X線測定により測定されたトナー中におけるナトリウムの濃度が0.1atom%以上1.5atom%以下であることが好ましい。トナー中のナトリウムの濃度が上記範囲であることにより、上記範囲よりも小さい場合に比べて、ドキュメントオフセット現象が抑制される。またトナー中のナトリウムの濃度が上記範囲であることにより、上記範囲よりも大きい場合に比べて、定着工程を行う前に離型剤がトナーの粒子の外部に出てしまうことが抑制される。定着工程を行う前に離型剤がトナーの粒子の外部に出てしまうと、画像表面が荒れてしまい、光沢ムラの原因となる場合がある。なお、トナー中におけるナトリウムの濃度は、0.2atom%以上1.0atom%以下がより好ましく、0.3atom%以上0.8atom%以下がさらに好ましい。
【0036】
また本実施形態においては、離型剤ドメインにおけるナトリウムの濃度が、離型剤ドメイン以外の領域におけるナトリウムの濃度の2倍以上10倍以下であることが好ましい。離型剤ドメイン以外の領域におけるナトリウムの濃度に対する離型剤ドメインにおけるナトリウムの濃度の比(以下、「ナトリウム濃度比」と称する場合がある)が上記範囲であることにより、ナトリウム濃度比が小さい場合に比べて、ドキュメントオフセット現象がより抑制される。またナトリウム濃度比が上記範囲であることにより、上記範囲よりも大きい場合に比べて、離型剤がトナー表面近傍に集まりすぎることが抑制されるため、トナーの流動性の低下が抑制される。なお、上記ナトリウム濃度比は、3倍以上9倍以下がより好ましく、5倍以上8倍以下がさらに好ましい。
【0037】
以下に、本実施形態に係る透明トナーを構成する各成分について説明する。
本実施形態に係るトナーは、結着樹脂と離型剤と必要に応じてその他の添加剤とを含んで構成される。
【0038】
(結着樹脂)
本実施形態における結着樹脂としては、スチレン/アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、等公知の樹脂材料を用いられるが、ポリエステル樹脂が特に望ましい。
【0039】
以下、本実施形態における非結晶性樹脂を代表してポリエステル樹脂を中心に説明する。
本実施形態において望ましく用いられるポリエステル樹脂としては、例えば多価カルボン酸類と多価アルコール類との縮重合により得られるものが挙げられる。
多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類;が挙げられ、これらの多価カルボン酸を1種又は2種以上用いてもよい。これら多価カルボン酸の中でも、芳香族カルボン酸を用いることが望ましい。また、ジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用してもよい。
【0040】
前記ポリエステル樹脂における多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールを1種又は2種以上用いてもよい。これら多価アルコールの中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより望ましい。また、ジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
【0041】
また、ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上50000以下であることが望ましく、7000以上20000以下であることがさらに望ましい。
なお、本実施形態において、重量平均分子量は、THF可溶物を、東ソー製GPC・HLC−8120、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で測定し、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出したものである。
【0042】
前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は50℃以上80℃以下の範囲であることが望ましい。ポリエステル樹脂のTgは50℃以上65℃以下であることがより望ましい。
【0043】
なお、必要に応じて酸価や水酸基価の調製等の目的で、多価カルボン酸や多価アルコールを合成の最終段階で添加してもよい。多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等の一分子中に少なくとも3つのカルボキシル基を有する芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0044】
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類等が挙げられる。
【0045】
前記ポリエステル樹脂の製造は、例えば重合温度を180℃以上230℃以下として行われ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。
重合性単量体が、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助溶剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い重合性単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い重合性単量体とその重合性単量体と重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0046】
前記ポリエステル樹脂の製造の際に使用される触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。
【0047】
(離型剤)
本実施形態に係るトナーは離型剤を含む。離型剤としては、例えば、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン等のパラフィンワックス;シリコーン樹脂;ロジン類;ライスワックス;カルナバワックス;エステルワックス;モンタンワックス等が挙げられる。これらの中でも、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス等が好ましく、パラフィンワックス、エステルワックス等がさらに好ましい。本実施形態に用いられる離型剤の融解温度は、60℃以上120℃以下が望ましく、70℃以上110℃以下がより望ましい。トナー中における離型剤の含有量は、0.5質量%以上15質量%以下が望ましく、1.0質量%以上12質量%以下がより望ましい。
【0048】
(その他の添加剤)
本実施形態に係るトナーには、上記成分以外にも、更に必要に応じて内添剤、帯電制御剤、無機粉体(無機粒子)、有機粒子等の種々の成分を添加してもよい。
内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、またはこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。
【0049】
無機粒子としては、種々の目的のために添加されるが、トナーにおける粘弾性調整のために添加されてもよい。この粘弾性調整により、画像光沢度や紙への染み込みが調整される。無機粒子としては、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、あるいはこれらの表面を疎水化処理した物等、公知の無機粒子を単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、シリカ粒子は種々の表面処理を施されてもよく、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものが好ましく用いられる。
【0050】
(トナーの特性)
本実施形態に係るトナーの体積平均粒子径は2μm以上9μm以下の範囲であることが望ましく、より望ましくは4.5μm以上8.5μm以下の範囲であり、さらに望ましくは5μm以上8μm以下の範囲である。
なお、上記体積平均粒子径の測定は、コールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で行われる。この際、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行った。
【0051】
さらに、本実施形態に係るトナーは、形状係数SF1が110以上140以下の範囲の球状であることが好ましく、120以上135以下の範囲であることがより好ましい。
ここで上記形状係数SF1は、下記式(1)により求められる。
SF1=(ML/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(1)
上記式(1)中、MLはトナーの絶対最大長、Aはトナーの投影面積を各々示す。
【0052】
前記SF1は、主に顕微鏡画像または走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、例えば、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式(1)によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0053】
本実施形態に係るトナーは、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー及びブラックトナーからなる群より選択される少なくとも一種の有色トナーと共にトナーセットを構成してもよい。
有色トナーに用いられる着色剤としては、染料であっても顔料であってもかまわない。
有色トナーにおける前記着色剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下の範囲が望ましい。また、必要に応じて表面処理された着色剤を使用したり、顔料分散剤を使用したりすることも有効である。前記着色剤の種類を選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等が得られる。
【0054】
なお、本実施形態における有色トナーは、着色剤を含む以外、本実施形態に係るトナー(透明トナー)と同様の成分を含有してもよい。また、粒子径等のトナーの特性に係る好ましい範囲も本実施形態に係るトナーと同様である。
【0055】
<トナーの製造方法>
本実施形態に係るトナーの製造方法は特に限定されず、公知である混練・粉砕製法等の乾式法や、凝集・合一法や懸濁重合法等の湿式法等によって作製される。これらの方法の中でも、コアシェル構造のトナーを作成容易な乳化凝集法が好ましい。以下、凝集・合一法による本実施形態のトナーの製造方法について詳しく説明する。
【0056】
本実施形態に係る凝集・合一法は、例えば、結着樹脂の粒子が分散された樹脂粒子分散液を調整する樹脂粒子分散液調整工程と、離型剤の粒子が分散された離型剤粒子分散液を調整する離型剤粒子分散液調整工程と、樹脂粒子及び離型剤粒子が凝集して形成された凝集体を形成する凝集工程と、凝集体を融合させる融合工程とを有する。
本実施形態においては、上記離型剤粒子分散液調整工程において調整された離型剤粒子分散液にナトリウム化合物が含まれていることが好ましい。ナトリウム化合物を含む離型剤粒子分散液を用いてトナーを作製することにより、離型剤ドメインにナトリウムが存在するトナーが得られる。そして、ナトリウム化合物を含む離型剤粒子分散液を用いることにより、凝集工程において凝集体が形成される際、離型剤粒子に取り込まれたナトリウムの水に対する親和性が高いことにより、離型剤粒子が外側へ引っ張られ、離型剤が凝集体の表面に近いところに存在しやすくなると考えられる。
以下、各工程について説明する。
【0057】
(樹脂粒子分散液調整工程)
樹脂粒子分散液の作製は、例えば、水系媒体と樹脂とを混合した溶液に、分散機により剪断力を与えることにより行われる。その際、加熱して樹脂成分の粘性を下げて粒子を形成してもよい。また分散した樹脂粒子の安定化のため、分散剤を使用してもよい。さらに、樹脂が油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば、該樹脂をそれらの溶剤に解かして水中に分散剤や高分子電解質と共に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子分散液を作製してもよい。
【0058】
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類;などが挙げられるが、水のみであることが望ましい。
また、乳化工程に使用される分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機塩;等が挙げられる。
【0059】
前記乳化液の作製に用いる分散機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。樹脂粒子の大きさとしては、その平均粒子径(体積平均粒子径)は1.0μm以下が好ましく、60nm以上300nm以下の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは150nm以上250nm以下の範囲である。
【0060】
(離型剤粒子分散液調整工程)
離型剤粒子分散液の調製に際しては、例えば、離型剤及びナトリウム化合物を、バンバリーミキサーやエクストルーダーなどの混練機で混練した後、イオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質と共に、水中に分散し、離型剤の融解温度以上の温度に加熱すると共に、強いせん断力を付与するホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて分散処理する。この処理を経ることにより、ナトリウムを含んだ離型剤粒子分散液が得られる。
上記ナトリウム化合物としては、例えば、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
上記分散処理により、ナトリウム及び体積平均粒子径が1μm以下の離型剤粒子を含む離型剤粒子分散液が得られる。なお、より好ましい離型剤粒子の体積平均粒子径は、100nm以上500nm以下である。
【0061】
(凝集工程)
前記凝集工程においては、上記樹脂粒子分散液及び離型剤粒子分散液等を混合して混合液とし、樹脂粒子のガラス転移温度以下の温度で加熱して凝集させ、凝集粒子を形成する。凝集粒子の形成は、例えば、攪拌下、混合液のpHを酸性にすることによってなされる。凝集工程におけるpHとしては、2以上7以下の範囲が望ましく、この際、凝集剤を使用することも有効である。
なお、凝集工程において、離型剤粒子分散液は、樹脂粒子分散液等の各種分散液とともに一度に添加・混合してもよいし、複数回に分割して添加しても良い。
凝集剤としては、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体が好適に用いられる。
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。
【0062】
また、前記凝集粒子が所望の粒子径になったところで樹脂粒子分散液を追添加することで(被覆工程)、コア凝集粒子の表面を樹脂で被覆した構成のトナーを作製してもよい。追添加する場合、追添加前に凝集剤を添加したり、pH調整を行ったりしてもよい。
【0063】
(融合工程)
融合工程においては、前記凝集工程に準じた攪拌条件下で、凝集粒子の懸濁液のpHを3以上9以下の範囲に上昇させることにより凝集の進行を止め、前記樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱を行うことにより凝集粒子を融合させる。また、前記樹脂で被覆した場合には、該樹脂も融合しコア凝集粒子を被覆する。前記加熱の時間としては、融合がされる程度行えばよく、0.5時間以上10時間以下程度行えばよい。
【0064】
融合後に冷却し、融合粒子を得る。また冷却の工程で、樹脂のガラス転移温度±10℃の温度で冷却速度を落とす、いわゆる徐冷をすることで結晶化を促進してもよい。
融合して得た融合粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程を経てトナー粒子が得られる。
【0065】
−外添剤および内添剤−
得られたトナー粒子は、シリカ、チタニア、酸化アルミに代表される無機酸化物を添加付着してもよい。これらは、例えばV型ブレンダーやヘンシェルミキサー、レディゲミキサー等によって行われ、段階を分けて付着させてもよい。
【0066】
前記無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、塩化セリウム、ベンガラ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げられる。
【0067】
更に、必要に応じて種々の添加剤を添加してもよく、これらの添加剤としては、他の流動化剤やポリスチレン粒子、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリフッ化ビニリデン粒子等のクリーニング助剤やジンクステアリルアミド、チタン酸ストロンチウム等の感光体付着物除去を目的とした研磨剤等が挙げられる。
【0068】
前記外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下の範囲が好ましく、0.3質量部以上2質量部以下の範囲がより好ましい。更に必要に応じ、超音波篩分機、振動篩分機、風力篩分機などを使って、トナーの粗大粒子を外添後取り除いてもよい。
【0069】
また、上述した外添剤以外にも、帯電制御剤、有機粒体、滑剤、研磨剤などのその他の成分(粒子)を添加させてもよい。
帯電制御剤としては、特に制限はないが、無色または淡色のものが好ましく使用され、例えば、4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミニウム、鉄、クロムなどの錯体、トリフェニルメタン系顔料などが挙げられる。
有機粒体としては、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等の通常トナー表面の外添剤として使用される粒子が挙げられる。
滑剤としては、例えば、エチレンビスステアリル酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩等が挙げられる。
研磨剤としては、例えば、前述のシリカ、アルミナ、酸化セリウムなどが挙げられる。
【0070】
<静電潜像現像剤>
本実施形態に係る静電潜像現像剤(以下、「現像剤」と称する場合がある)は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係るトナーは、そのまま一成分現像剤として、あるいは二成分現像剤として用いられる。二成分現像剤として用いる場合にはキャリアと混合して使用される。
【0071】
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが用いられる。例えば酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物や、これら芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア等が挙げられる。またマトリックス樹脂に導電剤などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0072】
本実施形態の現像剤は、白色導電剤を用いたキャリアを含むことが望ましい。導電剤として白色導電剤を用いることにより、キャリア片が被転写体に転写された際に、トナー像中においてキャリア片が目につきにくくなる。白色導電剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。また白色導電剤は、例えば、樹脂コートキャリアにおいては樹脂被覆層に添加されて用いられ、樹脂分散型キャリアにおいてはマトリックス樹脂に分散されて用いられる。
【0073】
またキャリアとして樹脂コートキャリアを用いる場合、被覆樹脂層の厚みが0.2μm以上1.0μm以下が望ましく、0.25μm以上0.8μm以下がより望ましく、0.3μm以上0.6μm以下がさらに望ましい。被覆樹脂層の厚みを上記範囲にすることにより、キャリアの抵抗値が確保されるため、抵抗値の低いトナーを用いてもトナーの帯電性が良好となり、現像性及び転写性の低下が抑制される。
【0074】
上記被覆樹脂層の厚みは、以下の測定により得られた値である。具体的には、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(旭化成ケミカル社)7gと硬化剤であるZENAMID250(ヘンケルジャパン社)3gを静かに混合、調製した後、キャリアを1g混合し24時間放置することで硬化物が得られる。この硬化物をダイヤモンドナイフ(型番Type Cryo DIATOME社製)を備え付けた切削装置LEICAウルトラミクロトーム(型番ULTRACUT UCT 日立ハイデクノロジーズ社製)を用いて、100℃下にて包埋した切削用サンプルを切削し、観察用サンプルを作製する。透過電子検出器を備えた日立高分解能電解放出型走査電子顕微鏡(S4800 日立ハイデクノロジーズ社製)にて、観察用サンプル中の染色したトナーの断面図を1万倍の拡大倍率で観察する。観察されるTEMの画像から、キャリア50個について切断面を観察し、被覆樹脂層の最も厚い部分を10万倍の拡大倍率で観察して厚みを測定し、その平均値を「樹脂被覆層の厚み」とする。
【0075】
キャリアに使用される被覆樹脂・マトリックス樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
導電剤としては、金、銀、銅といった金属やカーボンブラック、更に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ、カーボンブラック等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
またキャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられる。キャリアの芯材の体積平均粒子径としては、一般的には10μm以上500μm以下の範囲にあり、望ましくは30μm以上100μm以下の範囲にある。
【0078】
またキャリアの芯材の表面に樹脂被覆するには、前記被覆樹脂、および必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
【0079】
具体的な樹脂被覆方法としては、キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0080】
前記二成分現像剤における、本実施形態に係るトナーと上記キャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100程度の範囲が望ましく、3:100乃至20:100程度の範囲がより望ましい。
【0081】
<トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、潜像保持体と、前記潜像保持体に形成された静電潜像を本実施形態に係る静電潜像現像剤によりトナー画像として現像する現像手段と、前記潜像保持体に形成されたトナー画像を被転写体に転写する転写手段と、前記被転写体に転写されたトナー画像を定着する定着手段とを有し、必要に応じて前記潜像保持体の転写残留成分をクリーニングするクリーニング手段等のその他の手段を有してもよい。
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、感光体ドラム等の潜像保持体上に保持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置や、各色毎の現像器を備えた複数の潜像保持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等であってもよい。
【0082】
なお、この画像形成装置において、例えば前記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。該プロセスカートリッジとしては、現像剤保持体を少なくとも備え、本実施形態に係る静電潜像現像剤を収容する本実施形態に係るプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0083】
以下に、図面を参照しながら本実施形態に係る画像形成装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。本実施形態に係る画像形成装置は、潜像保持体としての感光体が複数、即ち画像形成ユニット(画像形成手段)が複数設けられたタンデム型の構成に係るものである。
【0084】
本実施形態に係る画像形成装置は、図1に示すように、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンそしてブラックの各色の画像を形成する4つの画像形成ユニット50Y、50M、50C、50Kと、透明画像を形成する画像形成ユニット50Tが、間隔をおいて並列的に(タンデム状に)配置されている。
【0085】
ここで、各画像形成ユニット50Y、50M、50C、50K、50Tは、収容されている現像剤中のトナーの色を除き同様の構成を有しているため、ここではイエロー画像を形成する画像形成ユニット50Yについて代表して説明する。尚、画像形成ユニット50Yと同様の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、透明(T)を付した参照符号を付すことにより、各画像形成ユニット50M、50C、50K、50Tの説明を省略する。本実施形態においては、画像形成ユニット50Tに収容されている現像剤中のトナー(透明トナー)として本実施形態に係るトナーが用いられる。
【0086】
イエローの画像形成ユニット50Yは、潜像保持体としての感光体11Yを備えており、この感光体11Yは、図示の矢印A方向に沿って図示しない駆動手段によって予め定められたプロセススピードで回転駆動されるようになっている。感光体11Yとしては、例えば、赤外領域に感度を持つ有機感光体が用いられる。
【0087】
感光体11Yの上部には、帯電ロール(帯電手段)18Yが設けられており、帯電ロール18Yには、不図示の電源により予め定められた電圧が印加され、感光体11Yの表面が予め定められた電位に帯電される。
【0088】
感光体11Yの周囲には、帯電ロール18Yよりも感光体11Yの回転方向下流側に、感光体11Yの表面を露光して静電潜像を形成する露光装置(静電潜像形成手段)19Yが配置されている。なお、ここでは露光装置19Yとして、スペースの関係上、小型のLEDアレイを用いているが、これに限定されるものではなく、他のレーザービーム等による静電潜像形成手段を用いても勿論問題無い。
【0089】
また、感光体11Yの周囲には、露光装置19Yよりも感光体11Yの回転方向下流側に、イエロー色の現像剤を保持する現像剤保持体を備える現像装置(現像手段)20Yが配置されており、感光体11Y表面に形成された静電潜像を、イエロー色のトナーによって顕像化し、感光体11Y表面にトナー画像を形成する構成になっている。
【0090】
感光体11Yの下方には、感光体11Y表面に形成されたトナー画像を一次転写する中間転写ベルト(一次転写手段)33が、5つの感光体11T,11Y,11M,11C,11Kの下方に渡るように配置されている。この中間転写ベルト33は、一次転写ロール17Yによって感光体11Yの表面に押し付けられている。また、中間転写ベルト33は、駆動ロール12、支持ロール13およびバイアスロール14の3つのロールによって張架され、感光体11Yのプロセススピードと等しい移動速度で、矢印B方向に周動されるようになっている。中間転写ベルト33表面には、上記のようにして一次転写されたイエローのトナー画像に先立ち透明トナー画像が一次転写され、次にイエローのトナー画像が一次転写され、更にマゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナー画像が順次一次転写され、積層される。
【0091】
また、感光体11Yの周囲には、一次転写ロール17Yよりも感光体11Yの回転方向(矢印A方向)下流側に、感光体11Yの表面に残留したトナーやリトランスファーしたトナーを清掃するためのクリーニング装置15Yが配置されている。クリーニング装置15Yにおけるクリーニングブレードは、感光体11Yの表面にカウンター方向に接触するように取り付けられている。
【0092】
中間転写ベルト33を張架するバイアスロール14には、中間転写ベルト33を介して二次転写ロール(二次転写手段)34が接触されている。中間転写ベルト33表面に一次転写され積層されたトナー画像は、バイアスロール14と二次転写ロール34との接触部において、図示しない用紙カセットから給紙される記録紙(被転写体)P表面に、静電的に転写される。この際、中間転写ベルト33上に転写、積層されたトナー画像は透明トナー画像が一番下(中間転写ベルト33に接する位置)になっているため、記録紙P表面に転写されたトナー画像では、透明トナー画像が一番上になる。
【0093】
また、二次転写ロール34の下流には、記録紙P上に多重転写されたトナー画像を、熱及び圧力によって記録紙P表面に定着して、永久像とするための定着器(定着手段)35が配置されている。
【0094】
尚、本実施形態に用いられる定着器としては、例えば、表面にフッ素樹脂成分やシリコーン系樹脂に代表される低表面エネルギー材料を用い、ベルト形状を有する定着ベルト、及び、表面にフッ素樹脂成分やシリコーン系樹脂に代表される低表面エネルギー材料を用い、円筒状の定着ロールが挙げられる。
【0095】
次に、透明、イエロー、マゼンタ、シアンそしてブラックの各色の画像を形成する各画像形成ユニット50T、50Y,50M,50C,50Kの動作について説明する。各画像形成ユニット50T、50Y,50M,50C,50Kの動作は、それぞれ同様であるため、イエローの画像形成ユニット50Yの動作を、その代表として説明する。
【0096】
イエローの現像ユニット50Yにおいて、感光体11Yは、矢印A方向に予め定められたプロセススピードで回転する。帯電ロール18Yにより、感光体11Yの表面は予め定められた電位にマイナス帯電される。その後、感光体11Yの表面は、露光装置19Yによって露光され、画像情報に応じた静電潜像が形成される。続いて、現像装置20Yによりマイナス帯電されたトナーが反転現像され、感光体11Yの表面に形成された静電潜像は感光体11Y表面に可視像化され、トナー画像が形成される。その後、感光体11Y表面のトナー画像は、一次転写ロール17Yにより中間転写ベルト33表面に一次転写される。一次転写後、感光体11Yは、その表面に残留したトナー等の転写残留成分がクリーニング装置15Yのクリーニングブレードにより掻き取られ、清掃され、次の画像形成工程に備える。
【0097】
以上の動作が各画像形成ユニット50T,50Y,50M,50C,50Kで行われ、各感光体11T,11Y,11M,11C,11K表面に可視像化されたトナー画像が、次々と中間転写ベルト33表面に多重転写されていく。カラーモード時は、透明、イエロー、マゼンタ、シアンそしてブラックの順に各色のトナー画像が多重転写されるが、二色、三色モード時のときもこの順番で、必要な色のトナー画像のみが単独または多重転写されることになる。その後、中間転写ベルト33表面に単独または多重転写されたトナー画像は、二次転写ロール34により、図示しない用紙カセットから搬送されてきた記録紙P表面に二次転写され、続いて、定着器35において加熱・加圧されることにより定着される。二次転写後に中間転写ベルト33表面に残留したトナーは、中間転写ベルト33用のクリーニングブレードで構成さえたベルトクリーナ16により清掃される。
【0098】
図1において、イエローの画像形成ユニット50Yは、イエロー色の静電潜像現像剤を保持する現像剤保持体を含む現像装置20Yと感光体11Yと帯電ロール18Yとクリーニング装置15Yとが一体となって画像形成装置本体から着脱されるプロセスカートリッジとして構成されている。また、画像形成ユニット50T、50K、50C及び50Mも画像形成ユニット50Yと同様にプロセスカートリッジとして構成されている。
【0099】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。本実施形態に係るトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱されるように装着され、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収納する。なお、本実施形態に係るトナーカートリッジには少なくともトナーが収容されていればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば現像剤が収容されてもよい。
【0100】
従って、トナーカートリッジの着脱がなされる構成を有する画像形成装置においては、本実施形態に係るトナーを収納したトナーカートリッジを利用することにより、本実施形態に係るトナーが容易に現像装置に供給される。
【0101】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ40Y、40M、40C、40K及び40Tの着脱がなされる構成を有する画像形成装置であり、現像装置20Y、20M、20C、20K及び20Tは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジを交換してもよい。
【0102】
<画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成方法は、潜像保持体に静電潜像を形成する潜像形成工程と、現像剤保持体に保持された本実施形態に係る静電潜像現像剤を用いて前記潜像保持体に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する画像形成工程と、前記潜像保持体に形成されたトナー画像を被転写体に転写する転写工程と、前記被転写体に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有し、定着された前記トナー画像の断面における離型剤ドメインの形状係数SF1が120以上150以下としたものである。
【0103】
本実施形態においては、上記透明トナーを用いて画像形成を行うため、その他のトナーを用いる場合に比べて、トナー中の離型剤ドメインの形状が球形に近く、定着工程において離型剤がトナー画像から染み出しやすい。そのため、定着前におけるトナー中の離型剤ドメインは球形に近く、かつ、定着時に離型剤がトナー画像から染み出そうとする際に離型剤ドメインの形状が変化する。したがって、上記トナーを用いて定着画像を形成すると、定着されたトナー画像に残留した離型剤ドメインの断面における形状係数SF1が上記範囲となる。
【0104】
すなわち、定着されたトナー画像に残留した離型剤ドメインの断面における形状係数SF1が上記範囲となるように画像形成を行うことにより、光沢むらが抑制されつつ、ドキュメントオフセット現象が抑制される。具体的には、トナー画像中に残留した離型剤ドメインが従来に比べると球形に近い形状であるため、定着画像を通過した光の乱反射が抑制され、定着後の光沢むらが抑制される。そしてその一方で、離型剤が定着工程においてトナー画像から染み出すことにより、ドキュメントオフセット現象が抑制される。
上記離型剤ドメインの形状係数SF1は、100以上140以下が好ましく、110以上130以下がさらに好ましい。
【0105】
トナー画像の断面における離型剤ドメインの形状係数SF1は以下のようにして測定した値をいう。
トナー画像を5mm四方に切断し、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と硬化剤を用いて包埋し、切削用サンプルを作製する。次にダイヤモンドナイフを用いた切削機、例えばLEICAウルトラミクロトーム(日立テクノロジーズ社製)を用いてー100℃の下、厚さ100nmに切片化し観察用サンプルを作製した。このときトナー画像の観察を行うため、トナー画像に対し垂直方向に切削用サンプルを切断する。これによりトナー画像の断面の観察が容易になる。つぎにトナー断面を走査型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察する。得られた顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み100個の離型剤ドメインの最大長と投影面積を求め、上記トナーの形状係数SF1と同様にして離型剤ドメインの形状係数SF1を得る。
【実施例】
【0106】
以下、本実施形態を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本実施形態は下記実施例に限定されるものではない。なお「部」は特に断わりのない限り「質量部」を表す。
【0107】
(測定方法)
<トナー中におけるナトリウムの濃度>
(株)島津製作所の蛍光X線(XRF−1500)を使用し、全元素分析法にて全元素中におけるナトリウム元素の組成比(%)を測定した。
【0108】
<ナトリウム濃度比の測定>
まず上記方法により、トナー粒子を包埋して切削し、作製した観察用サンプルの断面を染色し、TEMにより観察して離型剤ドメインと離型剤ドメイン以外の領域とを判断した。
次に、観察用サンプルを電子顕微鏡S4100に取り付けたエネルギー分散型X線分析装置EMAX model6923H(HORIBA社製)を用いて加速電圧20kVでマッピングし、離型剤ドメイン中のナトリウム量と離型剤ドメイン以外の領域のナトリウム量とを測定することにより、ナトリウム濃度比を求めた。
【0109】
(実施例A)
[離型剤粒子分散液の調整]
−離型剤粒子分散液1の調製−
・ポリエチレンワックス(東洋ペトロライト株式会社製、PW655、融解温度:97℃):50部
・塩化ナトリウム(和光純薬(株)製):5部
以上をヘンシェルミキサーにて混合した後、バンバリーミキサーを用いて混練した。混練時の温度は95℃で10分混錬を行った。
【0110】
・上記の塩化ナトリウムを添加したポリエチレンワックス:50部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):1.0部
・イオン交換水:200部
以上を混合して95℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で360分間分散処理をして、体積平均粒径が0.23μmである離型剤を分散させてなる離型剤粒子分散液1(固形分濃度:20%)を調製した。
【0111】
−離型剤粒子分散液2から離型剤粒子分散液7の調製−
塩化ナトリウムの添加量を表1のようにした以外は、離型剤粒子分散液1と同様にして、離型剤粒子分散液2から離型剤粒子分散液7を調整した。
【0112】
−離型剤粒子分散液8の調製−
塩化ナトリウムの代わりに炭酸ナトリウムを5.5部添加した以外は、離型剤粒子分散液1と同様にして、離型剤粒子分散液8を調整した。
【0113】
−離型剤粒子分散液9の調製−
ポリエチレンワックスの代わりにエステルワックス(日油(株)製、ニッサンエレクトールWEP5、融解温度:82℃)を50部添加した以外は、離型剤粒子分散液1と同様にして、離型剤粒子分散液9を調整した。
【0114】
−離型剤粒子分散液10の調製−
ポリエチレンワックスの代わりにパラフィンワックス(日本精蝋(株)製、FT115、融解温度:113℃)を50部添加した以外は、離型剤粒子分散液1と同様にして、離型剤粒子分散液10を調整した。
【0115】
−離型剤粒子分散液11の調製−
塩化ナトリウムを添加せず、バンバリーミキサーによる混練をしなかった以外は、離型剤粒子分散液1と同様にして、離型剤粒子分散液11を調整した。
【0116】
−離型剤粒子分散液12の調製−
塩化ナトリウムの添加量を0.3部とした以外は、離型剤粒子分散液1と同様にして、離型剤粒子分散液12を調整した。
【0117】
【表1】

【0118】
[各ポリエステル樹脂の合成]
−ポリエステル樹脂(1)の調製−
・アジピン酸ジメチル:74部
・テレフタル酸ジメチル:192部
・ビスフェノールAエチレンオキシド付加物:216部
・エチレングリコール:38部
・テトラブトキシチタネート(触媒):0.037部、
【0119】
上記成分を加熱乾燥した二口フラスコに入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち攪拌しながら昇温した後、160℃で7時間共縮重合反応させ、その後、10Torrまで徐々に減圧しながら220℃まで昇温し4時間保持した。一旦常圧に戻し、無水トリメリット酸9部を加え、再度10Torrまで徐々に減圧し220℃で1時間保持することによりポリエステル樹脂(1)を合成した。
得られたポリエステル樹脂(1)の分子量を前述の測定方法によりGPCを用いて測定したところ、重量平均分子量(Mw)は12,000であり、数平均分子量は4,000であった。
【0120】
−ポリエステル樹脂(2)の調製−
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:114部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:84部
・テレフタル酸ジメチルエステル:75部
・ドデセニルコハク酸:19.5部
・トリメリット酸:7.5部
【0121】
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、及び精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記成分を入れ、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内を攪拌した後、ジブチル錫オキサイド3.0部を投入した。さらに、生成する水を留去しながら6時間を要して190℃から240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ポリエステル樹脂(2)を合成した。
得られたポリエステル樹脂(2)の重量平均分子量は58,000、数平均分子量は5,600であった。
【0122】
[各ポリエステル樹脂分散液の調整]
−ポリエステル樹脂分散液(1)の調製−
・ポリエステル樹脂(1)(Mw:12,000):160部
・酢酸エチル:233部
・水酸化ナトリウム水溶液(0.3N):0.1部
【0123】
上記成分を1000mlのセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、スリーワンモーター(新東科学(株)製)により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水373部を加え、転相乳化させ、脱溶剤することによりポリエステル樹脂分散液(1)(固形分濃度:30%)を得た。分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は160nmであった。
【0124】
−ポリエステル樹脂分散液(2)の調製−
ポリエステル樹脂(1)の代わりにポリエステル樹脂(2)を用いた以外は、ポリエステル樹脂分散液(1)と同様にしてポリエステル樹脂分散液(2)(固形分濃度:30%)を調製した。分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は160nmであった。
【0125】
[実施例1]
<トナー1の作製>
イオン交換水: 330部
ポリエステル樹脂分散液(2): 210部
アニオン性界面活性剤: 2.8部
(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、20質量%)
上記成分を、温度計、pH計、攪拌機、を具備した3リットルの反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、攪拌回転数150rpmにて、30分間保持した。その後、離型剤粒子分散液1を100部投入し、5分間保持した。そのまま、1.0N硝酸水溶液を添加し、凝集工程でのpHを3.0に調整した。
【0126】
ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)で分散しながら、ポリ塩化アルミニウム0.4部を添加後、攪拌機しながら、50℃まで昇温し、コールターマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて粒径を測定し、体積平均粒径が5.5μmとした。その後ポリエステル樹脂分散液(1)73部、ポリエステル樹脂分散液(2)110部を追添加し、凝集粒子の表面に樹脂粒子を付着させた。
その後、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、昇温速度を0.05℃/分にして90℃まで昇温し、90℃で3時間保持した後、冷却し、ろ過して粗トナー粒子を得た。これを更にイオン交換水にて再分散し、ろ過することを繰り返して、ろ液の電気伝導度が20μS/cm以下となるまで洗浄を行った後、40℃のオーブン中で5時間真空乾燥して、トナー粒子を得た。
【0127】
得られたトナー粒子100部に対して疎水性シリカ(日本アエロジル社製、RY50)を1.5部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル社製、T805)を1.0部とを、サンプルミルを用いて10000rpmで30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分してトナー1を調製した。得られたトナー1の体積平均粒子径は6.1μmであった。トナーにおけるTmとTcとの差(Tm−Tc)、トナー中のナトリウムの濃度、及び離型剤ドメインと離型剤ドメイン以外の領域とのナトリウム濃度比を表2に示す。
【0128】
<キャリア1の作製>
・トルエン14部
・スチレン−メチルメタクリレート共重合体(質量比:80/20、重量平均分子量:70000)2部
・MZ500(酸化亜鉛、チタン工業)0.6部
上記成分を混合し、10分間スターラーで撹拌させて酸化亜鉛が分散した被覆層形成用溶液を調製した。次に、この被覆液とフェライト粒子(体積平均粒径:38μm)100部とを真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分撹拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリアを作製した。なお、得られたキャリアにおける被覆層の厚さは0.5μmであった。
【0129】
<静電潜像現像剤の作製>
得られたキャリア1とトナー1とを、それぞれ100部:8部の割合で2リッターのVブレンダーで混合し、静電潜像現像剤1を作製した。
【0130】
<評価>
−光沢むら−
得られた現像剤を、図1に示した5連タンデム方式の富士ゼロックス(株)社製DocuCentre-III C7600改造機(両面印刷用の5連タンデム改造機)の現像器に充填し、記録紙(OKトップコート+紙、王子製紙(株)社製)上に、定着温度190℃にて、A4両面にトナー載り量が4.5g/mのベタ画像(18cm×27cm)を形成した。形成したソリッド画像の画像部について、グロスメーター(BYK マイクロトリグロス光沢計(20+60+85゜)、ガードナー社製)を用いて、ソリッド画像の先行面を図2のように24点(縦横5cm間隔の格子状の点)について60度グロスの測定を行った。その24点での光沢度の差(最大値-最小値)から光沢むらの評価を行った。また、評価基準は以下の通りであり、結果を表2に示す。
【0131】
−光沢むらの評価基準−
◎:光沢度の差が5%未満でかつ光沢測定24点の標準偏差が2.5以下
○:光沢度の差が5%未満
△:光沢度の差が5%以上10%未満
×:光沢度の差が10%以上
【0132】
−耐ドキュメントオフセット性−
得られた現像剤を、図1に示した5連タンデム方式の富士ゼロックス(株)社製DocuCentre-III C7600改造機(両面印刷用の5連タンデム改造機)の現像器に充填し、記録紙(ミラーコート256紙、富士ゼロックス社製)上に、定着温度190℃にて、A4両面にトナー載り量が4.5g/cmのベタ画像(18cm×27cm)を2枚形成した。ソリッド画像を形成した記録紙を画像同士が接触するように重ね、垂直荷重80g/cm2をかけて65℃の環境下で14日放置した後、画像の付着による画像欠陥を評価した。
【0133】
−耐ドキュメントオフセット性の評価基準−
○:良好(大きな欠陥なし)
△:実用上問題ないが、画像欠陥が認められる
×:画像欠陥が多く実用に耐えないレベル
【0134】
[実施例2から実施例10]
トナーの作製において、離型剤粒子分散液1の代わりに離型剤粒子分散液2から離型剤粒子分散液10を用いた以外は、トナー1と同様にしてトナー2からトナー10を得た。またトナー1の代わりにトナー2からトナー10を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0135】
[実施例11]
トナーの作製において、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にする代わりにpH8.0した以外は、トナー1と同様にしてトナー11を得た。またトナー1の代わりにトナー11を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0136】
[実施例12]
トナーの作製において、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にする代わりにpH10.0にした以外は、トナー1と同様にしてトナー12を得た。またトナー1の代わりにトナー12を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0137】
[実施例13]
トナーの作製において、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いる代わりに5質量%水酸化カリウム水溶液を用いた以外は、トナー1と同様にしてトナー13を得た。またトナー1の代わりにトナー13を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0138】
[実施例14]
トナーの作製において、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9.0にする代わりにpH11.5にした以外は、トナー1と同様にしてトナー14を得た。またトナー1の代わりにトナー14を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0139】
[比較例1]
トナーの作製において、離型剤粒子分散液1の代わりに離型剤粒子分散液11を用いた以外は、トナー1と同様にしてトナー15を得た。またトナー1の代わりにトナー15を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0140】
[比較例2]
トナーの作製において、離型剤粒子分散液1の代わりに離型剤粒子分散液12を用いた以外は、トナー1と同様にしてトナー16を得た。またトナー1の代わりにトナー16を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0141】
【表2】

【0142】
以上の結果より、実施例では、比較例に比べ、耐ドキュメントオフセット性が良好であり、かつ、光沢むらが抑制されていることが分かる。
【0143】
(実施例B)
<キャリア2の作製>
スチレン−メチルメタクリレート共重合体(質量比:80/20、重量平均分子量:70000)2部の代わりに0.8部にした以外は、キャリア1と同様にしてキャリア2を作製した。なお、得られたキャリアにおける被覆層の厚さは0.2μmであった。
<キャリア3の作製>
スチレン−メチルメタクリレート共重合体(質量比:80/20、重量平均分子量:70000)2部の代わりに5部にした以外は、キャリア1と同様にしてキャリア3を作製した。なお、得られたキャリアにおける被覆層の厚さは0.9μmであった。
【0144】
<静電潜像現像剤2から静電潜像現像剤3の作製>
キャリア1の代わりにキャリア2からキャリア3を用いた以外は、静電潜像現像剤1と同様にして、静電潜像現像剤2から静電潜像現像剤3を作製した。
【0145】
<現像性及び転写性の評価>
静電潜像現像剤1から静電潜像現像剤3を用いて、上記光沢むらの評価と同様に画像形成を行い、現像性及び転写性の低下に起因する画像欠陥を評価したところ、いずれの現像剤を用いた実施例においても画像欠陥が確認されなかった。
【符号の説明】
【0146】
11 感光体
12 駆動ロール
13 支持ロール
14 バイアスロール
15 クリーニング装置
16 ベルトクリーナ
17 一次転写ロール
18 帯電ロール
19 露光装置
20 現像装置
34 二次転写ロール
35 定着器
40 トナーカートリッジ
50 画像形成ユニット
P 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と離型剤とを含み、
示差走査熱量計(DSC)によりASTM法に基づいて測定された昇温過程でのトナー中における前記離型剤に由来する吸熱ピークTmと、降温過程での前記トナー中における前記離型剤に由来する発熱ピークTcと、の差(Tm−Tc)が20℃以上50℃以下であり、
前記トナー中における前記離型剤のドメインにナトリウムが存在する、静電潜像現像用透明トナー。
【請求項2】
蛍光X線測定により測定された前記トナー中における前記ナトリウムの濃度が0.1atom%以上1.5atom%以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用透明トナー。
【請求項3】
前記トナー中の前記離型剤のドメインにおける前記ナトリウムの濃度は、前記トナー中の前記離型剤のドメイン以外の領域における前記ナトリウムの濃度の2倍以上10倍以下である、請求項1又は請求項2に記載の静電潜像現像用透明トナー。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の静電潜像現像用透明トナーを含む静電潜像現像剤。
【請求項5】
白色導電剤を含有するキャリアを含む、請求項4に記載の静電潜像現像剤。
【請求項6】
芯材と、前記芯材を被覆し0.2μm以上1.0μm以下の厚みを有する被覆樹脂層と、を有するキャリアを含む請求項4に記載の静電潜像現像剤。
【請求項7】
前記被覆樹脂層は白色導電剤を含む、請求項6に記載の静電潜像現像剤。
【請求項8】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の静電潜像現像用透明トナーを収容する、トナーカートリッジ。
【請求項9】
請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載の静電潜像現像剤を収容する現像装置を備えた、プロセスカートリッジ。
【請求項10】
潜像保持体と、
前記潜像保持体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記潜像保持体に形成された前記静電潜像を、請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載の静電潜像現像剤によりトナー画像として現像する現像手段と、
前記潜像保持体に形成された前記トナー画像を被転写体に転写する転写手段と、
前記被転写体に転写された前記トナー画像を定着する定着手段と、を有する画像形成装置。
【請求項11】
潜像保持体に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記潜像保持体に形成された前記静電潜像を、請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載の静電潜像現像剤によりトナー画像として現像する現像工程と、
前記潜像保持体に形成された前記トナー画像を被転写体に転写する転写工程と、
前記被転写体に転写された前記トナー画像を定着する定着工程と、を有し、
定着された前記トナー画像の断面における離型剤のドメインの形状係数SF1が120以上150以下である、画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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