静電荷像現像用トナー、現像剤および画像形成方法
【課題】本発明は、帯電量の経時変化が少ない安定した帯電量を維持しつつ、初期の帯電量立ち上がりが速く、帯電量分布がシャープで鮮鋭性の良好な可視画像を長期にわたり形成することが出来、耐久性に富んだ静電荷像現像用トナーを提供すること、低温定着システムに対応した静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【解決手段】少なくとも結着樹脂及び樹脂微粒子及び帯電制御剤を含有するトナー組成物を含む溶解物または分散物を、水系溶媒中に分散させ得られた分散液から溶媒を除去することにより得られるトナーで、前記樹脂微粒子は少なくともイオン結合可能な官能基を有し、前記帯電制御剤はトナー内部で前記樹脂微粒子とイオン結合していることを特徴とする静電荷像現像用トナーである。
【解決手段】少なくとも結着樹脂及び樹脂微粒子及び帯電制御剤を含有するトナー組成物を含む溶解物または分散物を、水系溶媒中に分散させ得られた分散液から溶媒を除去することにより得られるトナーで、前記樹脂微粒子は少なくともイオン結合可能な官能基を有し、前記帯電制御剤はトナー内部で前記樹脂微粒子とイオン結合していることを特徴とする静電荷像現像用トナーである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真や静電記録などにおいて、感光体表面に形成された静電荷像を顕像化する静電荷像現像用トナー、該トナーを含有する現像剤、該トナーを用いる画像形成方法、該トナーを収納した容器、及び該トナーを装填した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真装置や静電記録装置等において、電気的または磁気的潜像は、トナーによって顕像化されている。例えば、電子写真法では、感光体上に静電荷像(潜像)を形成し、次いで、該潜像をトナーを用いて現像して、トナー画像を形成している。トナー画像は、通常、紙等の転写材上に転写され、次いで、加熱等の方法で定着させている。
【0003】
静電荷像現像に使用されるトナーは、一般に、結着樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、その他の添加剤を含有させた着色粒子であり、その製造方法には、大別して粉砕法と懸濁重合法とがある。粉砕法では、熱可塑性樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、オフセット防止剤などを溶融混合して均一に分散させ、得られた組成物を粉砕、分級することによりトナーを製造している。粉砕法によれば、ある程度優れた特性を有するトナーを製造することができるが、トナー用材料の選択に制限がある。例えば、溶融混合により得られる組成物は、経済的に使用可能な装置により粉砕し、分級できるものでなければならない。この要請から、溶融混合した組成物は、充分に脆くせざるを得ない。このため、実際に上記組成物を粉砕して粒子にする際に、高範囲の粒径分布が形成され易く、良好な解像度と階調性のある複写画像を得ようとすると、例えば、粒径5μm以下の微粉と20μm以上の粗粉を分級により除去しなければならず、収率が非常に低くなるという欠点がある。また、粉砕法では、着色剤や帯電制御剤などを熱可塑性樹脂中に均一に分散することが困難である。配合剤の不均一な分散は、トナーの流動性、現像性、耐久性、画像品質などに悪影響を及ぼす。
【0004】
近年、これらの粉砕法における問題点を克服するために、懸濁重合法によるトナーの製造方法が提案され、実施されている。静電潜像現像用のトナーを重合法によって製造する技術は公知であり、例えば懸濁重合法によってトナー粒子を得ることが行われている。しかしながら、懸濁重合法で得られるトナー粒子は感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまう。このため、乳化重合法により得られる樹脂微粒子を会合させて不定形のトナー粒子を得る方法が開示されている(特許文献1参照)。
しかし、乳化重合法で得られるトナー粒子は、水洗浄工程を経ても、界面活性剤が、表面だけでなく、粒子内部にも多量に残存し、トナーの帯電の環境安定性を損ない、かつ帯電量分布を広げ、得られた画像の地汚れが不良となる。また、残存する界面活性剤により、感光体や帯電ローラ、現像ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまう。
【0005】
また、乳化重合法によって得られる樹脂微粒子を会合させて不定形のトナー粒子を得る方法では、下記のような問題を生じる。
耐オフセット性を向上させるために、離型剤微粒子を会合させる場合において、該離型剤微粒子がトナー粒子の内部に取り込まれてしまい、この結果、耐オフセット性の向上を十分に図ることができない。樹脂微粒子、離型剤微粒子、着色剤微粒子などがランダムに融着してトナー粒子が構成されるので、得られるトナー粒子間において組成(構成成分の含有割合)および構成樹脂の分子量等にバラツキが発生し、この結果、トナー粒子間で表面特性が異なり、長期にわたり安定した画像を形成することができない。さらに低温定着が求められる低温定着システムにおいては、トナー表面に偏在する樹脂微粒子による定着阻害が発生し、定着温度幅を確保できない。
【0006】
一方、溶解懸濁法製法というトナー製法が提案されている(特許文献2参照)。この手法は、懸濁重合法がモノマーからポリマー粒子を形成するのに対して、有機溶剤等に溶解したポリマーから造粒する手法であり、樹脂の選択範囲の拡大や、極性の制御性等の利点をあげている。また、トナーの構造制御(コア/シェル構造の調製)が可能という利点を挙げているが、シェル構造は樹脂のみの層で顔料やワックスの表面への露出を低下させることを目的にしており、特に表面状態を工夫したわけではなく、またそのような構造にもなっていない。したがって、シェル構造にはなっているがトナー表面は通常の樹脂であって、特に工夫はなく、より低温定着を目指した際には、耐熱保存性、環境帯電安定性の点で十分でなく問題であった。
【0007】
また、上記懸濁重合法、乳化重合法および溶解懸濁法のいずれもスチレン−アクリル酸エステル系共重合体を用いることが一般的で、ポリエステル系樹脂では粒子化に難があり粒径、粒度分布、形状制御が困難であった。また、より低温定着を目指した場合に定着性に限界があった。
【0008】
一方、耐熱保存性、低温定着を目的として、ウレア結合で変性されたポリエステルを使用することも知られているが(例えば特許文献3参照)、特に表面が工夫されたものでなく、特により条件の厳しい環境帯電安定性の点で十分でなく問題であった。
【0009】
また、電子写真の分野では、高画質化が様々な角度から検討されており、中でも、トナーの小径化および球形化が極めて有効であるとの認識が高まっている。しかし、トナーの小径化が進むにつれて転写性、定着性が低下し、貧弱な画像となってしまう傾向が見られる。一方、トナーを球形化することにより転写性が改善されることが知られている(特許文献4参照)。このような状況の中、カラー複写機やカラープリンタの分野では、さらに画像形成の高速化が望まれている。高速化のためには「タンデム方式」が有効である(例えば、特許文献5参照)。
【0010】
一方、熱ローラなどの加熱部材を使用して行われる接触加熱方式による定着工程において、加熱部材に対するトナー粒子の離型性(以下、「耐オフセット性」という。)が要求される。ここに、耐オフセット性は、トナー粒子表面に離型剤を存在させることにより向上させることができる。これに対し、特許文献6、特許文献7では樹脂微粒子をトナー粒子中に含有させるだけでなく、当該樹脂微粒子がトナー粒子の表面に偏在していることにより、耐オフセット性を向上する方法が開示されている。しかし、定着下限温度が上昇し、低温定着性即ち省エネ定着性が十分でない。
【0011】
一方で、トナーの帯電特性に関しては、特に負帯電トナーの帯電能力を上げる手段として粉砕トナーでフッ素系化合物を電荷制御剤等の役目でトナーに含有させることも知られている(特許文献8、特許文献9等参照)。しかしながら、該手法では十分な帯電立ち上がり性の改善効果はなく、トナー地汚れ(かぶり)や、トナー飛散が発生して問題があった。また、環境帯電安定性の点でも問題であった。
【0012】
帯電制御剤は極性を有する化合物が多く、水相と油相を使用する、水系の乳化による造粒の場合に帯電制御剤を内添して用いられると、油相と水相への親和性、溶解性の影響から水相に溶出することが多く、水系造粒トナーに帯電制御剤を内添することは実質的に困難であった(特許文献10参照)。
【0013】
また、特許文献11では湿式外添によりフッ素系化合物をトナー表面に含有させる事で帯電能力が高く、帯電量分布がシャープで弱帯電、逆帯電トナーが少ない構成のトナーが開示されている。しかしながら、該手法ではキャリアとの長時間撹拌による帯電量経時減少が発生して問題があった。また、特許文献11ではフッ素系化合物を水系媒体中に分散させる事でトナー中に含有させる構成のトナーが開示されている。しかしながら該手法でも帯電量経時減少は発生する。これらの帯電量減少は、従来は原因が知られておらず、解決は困難であった。
【0014】
即ち上記のごとく、帯電性に関して、トナー(特に負帯電トナー)の帯電能力を上げる手段として、フッ素系化合物を電荷制御剤等の役目としてトナーに含有することだけでは、十分な帯電性の効果が得られないことが課題となっていた。即ち、単純にトナー製造工程内でフッ素系化合物を含有するのでは十分な帯電性の改善効果が得られない場合があり、フッ素処理時の方法、条件については、検討が必要とされていた。
【0015】
【特許文献1】特許第2537503号公報
【特許文献2】特許第3141783号公報
【特許文献3】特開平11−133667号公報
【特許文献4】特開平9−258474号公報
【特許文献5】特開平5−341617号公報
【特許文献6】特開2000−292973号公報
【特許文献7】特開2000−292978号公報
【特許文献8】特許第2942588号公報
【特許文献9】特許第3102797号公報
【特許文献10】特許第3069936号公報
【特許文献11】特開2005−115213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものである。
即ち本発明の第1の目的は、帯電量の経時変化が少ない安定した帯電量を維持しつつ、初期の帯電量立ち上がりが速く、帯電量分布がシャープで鮮鋭性の良好な可視画像を長期にわたり形成することが出来、耐久性に富んだ静電荷像現像用トナーを提供することにある。
本発明の第2の目的は、低温定着システムに対応した静電荷像現像用トナーを提供することにある。
本発明の第3の目的は、上記静電荷像現像用トナーを含有する現像剤、該トナーを用いる画像形成方法、該トナーを収納した容器、および該トナーを装填した画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、フッ素系化合物を電荷制御剤の役目としてトナーに含有させた、従来のトナーの帯電量経時減少原因を次のように結論付けた。
即ち、トナー乳化時の粒子間凝集抑制目的で有機樹脂微粒子をトナー材料として使用し、フッ素系化合物でトナー表面を処理した場合には、前述の表面近傍の有機樹脂微粒子にフッ素系化合物が優先的に付加する事で、フッ素系化合物そのものがトナー表面に偏在していることに起因しており、キャリアとの撹拌によるトナー表面削れやトナー表面割れが発生した際に電荷制御剤の役目をしているフッ素系化合物がトナーから消失するためである。
【0018】
その証拠を、SEM像観察、X線光電子分光測定、NMR測定、帯電量測定結果から次のように説明する。
結着樹脂と有機微粒子のみを用いて、N,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム・ヨージド(以下フッ素化合物(1)とする)を、特開2005−115213号公報と同様の手法により付加させることにより作成したトナーの分析を行ったところ、次の結果が得られた。
1:キャリアと混合撹拌後のトナーのSEM像を観察したところ、トナー表面に変化があり、トナー外皮状部分に剥がれが発生している様子が見られた。
測定は日本電子製JSM−7400Fを使用した。図1は表面の1部が削れているトナーを示す図で、図2は表面が殆ど削れ、外皮状の部分の一部のみが残っているトナーを示す図である。
【0019】
2:EDS元素マッピング法を用い、フッ素の存在位置を調べたところ、トナー外皮状部分にフッ素が多量に存在し、一方トナー内部には殆どフッ素が存在しない、という結果が得られた。
測定はJSM−7400を使用した。結果を図3、図4に示す。図中の黒い部分がフッ素検出量の多い部分である。図3は、図1のフッ素存在位置を示す図であり、図4は、図2のフッ素存在位置を示す図である。図3を見ると表面削れ部分にフッ素が多く存在しており、最表面には殆どフッ素が検出されない事を示している。図4を見ると、わずかに残された外皮状部分にフッ素が存在していることがわかるが、外皮が削れきった内部にはフッ素が殆ど検出されていない。このことから、フッ素はトナー表面近傍の外皮状部分に主に存在しており、内部には殆ど存在しないことが解る。
【0020】
3:X線光電子分光を用いてフッ素系化合物のトナー中での存在状態を調べたところ、前記のフッ素系化合物は結着樹脂または有機樹脂微粒子に存在するカルボキシル基とイオン結合している、という結果が得られた。
測定は島津製作所製AXIS−ULTRAを使用した。N,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム・ヨージドは、原材料粉末中ではN,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウムイオンとヨウ素がイオン結合しているが、分析したトナー中ではヨウ素が存在せず、またヨウ素が存在しないこと以外は原材料粉末中と同様の状態で存在しているという結果が図5〜図10から得られた。結着樹脂または有機微粒子中で安定してイオン結合することが出来る部分はカルボキシル基しか存在せず、このことから結着樹脂または有機微粒子中のカルボキシル基とイオン結合しているという結論に至った。
【0021】
4:NMR測定結果から、フッ素系化合物は主にトナー表面の有機樹脂微粒子に付加しているという結果が得られた。
NMR測定は日本電子社製JNM−A400を使用。フッ素定量結果は、結着樹脂中のビスフェノールA系分子数に対するフッ素系化合物数比として得た。19F−NMRを用いたトナー中のフッ素化合物の定量分析を行い、フッ素化合物存在量の経時変化を調べたところ、キャリアとの撹拌初期ではフッ素化合物検出量が増加するという結果が得られた(図11参照)。これは、NMR測定用溶媒として用いたTHF−d8に溶解しない物質にフッ素化合物が付加していることを示しており、使用した材料では有機微粒子がこれにあたる。有機微粒子がTHF−d8に溶解しない事は、結着樹脂の1H−NMR測定と、結着樹脂と有機微粒子で作成したトナーの1H−NMR測定結果の比較から、異なるピークが観測されないことから確認した(図12、図13参照)。
有機微粒子はトナー造粒時のトナー形状(粒度分布、円形度など)を制御するために用いられ、乳化時にトナー表面および内部(主に表面付近)に付着し、トナー表面に付着した有機微粒子が乳化時にトナー粒子間の凝集を抑制する。この有機微粒子を構成するメタクリル酸はカルボキシル基を持っており、有機微粒子中には多量のカルボキシル基が存在する。一方、ポリエステル系の結着樹脂では樹脂末端にしかカルボキシル基は存在せず、有機微粒子が主に存在するトナー表面にはトナー内部よりもカルボキシル基が多い。
【0022】
高分子化合物である有機微粒子を構成する単量体の一つであるメタクリル酸にはカルボキシル基が存在し、トナー中に存在するカルボキシル基は結着樹脂よりも有機微粒子中に多く存在するという事実は、SEM像、XPS測定の結果、NMR測定を矛盾無く説明可能である。
【0023】
5:帯電量の経時変化を調べたところ、NMR定量分析結果と比較して、フッ素系化合物を含むトナーの帯電量は含有するフッ素系化合物の存在量の影響が大きいという結果が得られた。
帯電量はブローオフ法を使用して、トナーと鉄粉キャリアTEFV200/300(パウダーテック株式会社製)からなる現像剤をトナー濃度7重量%で測定した。帯電量の経時変化を調べたところ、NMRによるフッ素化合物定量分析結果との相関が見られた(図14参照)。これにより、フッ素系化合物を電荷制御剤の役目として含有させたトナーの帯電量は、フッ素系化合物の存在量の影響が大きいことを結論付けた。
【0024】
以上の結果から、帯電減少はトナー表面近傍に偏在する有機微粒子にフッ素系化合物が優先的に付加していることで、トナー表面削れが発生した際に、トナー中の帯電制御剤量が減少することが原因であると結論付けた。
本発明者らが検討を重ねた結果、トナー帯電量の経時変化を少なくし安定した帯電性を実現するために有機微粒子にN,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム・ヨージド等のフッ素系化合物をイオン結合により付加させ、前記フッ素系化合物の付加した有機微粒子を使用してトナーを作成しトナー内部にフッ素系化合物を存在させ、トナー表面近傍へのフッ素系化合物の偏在を抑制することで達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
かくして本発明によれば、下記(1)〜(18)が提供される。
(1)少なくとも結着樹脂及び樹脂微粒子及び帯電制御剤を含有するトナー組成物を含む溶解物または分散物を、水系溶媒中に分散させ得られた分散液から溶媒を除去することにより得られるトナーで、前記樹脂微粒子は少なくともイオン結合可能な官能基を有し、前記帯電制御剤はトナー内部で前記樹脂微粒子とイオン結合していることを特徴とする、静電荷像現像用トナー。
(2)前記帯電制御剤は4級アンモニウム塩であることを特徴とする前記(1)記載の静電荷像現像用トナー。
(3)前記帯電制御剤は下記一般式(1)で表されるフッ素系化合物であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の静電荷像現像用トナー。
【化1】
(式中、R1〜R4は炭素数1〜10の低級アルキル基、アリール基、Xは−SO2−、−CO−、YはI、Br、n、mは正の整数を表す。)
【0026】
(4)前記フッ素系化合物がN,N,N−トリメチル−〔3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル〕アンモニウム・ヨージドであることを特徴とする前記(3)に記載の静電荷像現像用トナー。
(5)前記結着樹脂は、カルボキシル基末端を有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに静電荷像現像用トナー。
(6)前記結着樹脂は、ポリエステル系樹脂であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(7)前記フッ素系化合物の含有量がトナーに対して0.05〜10重量%であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(8)前記結着樹脂の酸価が1〜30mgKOHであることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(9)前記トナー結着樹脂のガラス転移点(Tg)が40〜90℃であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかいに記載の静電荷像現像用トナー。
【0027】
(10)前記トナー表面又は内部に樹脂微粒子を併用し、該樹脂微粒子がビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及び/またはそれらの混合物からなることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(11)前記樹脂微粒子の重量平均分子量が5000〜20万であることを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(12)前記トナー粒子の体積平均粒径が4〜8μmであることを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(13)前記トナー粒子の体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比Dv/Dnが1.25以下であることを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(14)前記(1)〜(13)のいずれかに記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤。
【0028】
(15)一成分現像剤および二成分現像剤のいずれかである前記(14)に記載の現像剤。
(16)前記(1)〜(13)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
(17)トナーリサイクル機構を有する現像装置による画像形成方法において、前記(1)〜(13)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
(18)前記(1)〜(13)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを収納した容器。
【0029】
以下、本発明をさらに詳述する。
(フッ素系化合物)
本発明トナーに用いるフッ素系化合物としては、含フッ素四級アンモニウム塩等が用いられ、例えば下記一般式(1)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化2】
(式中、R1〜R4は炭素数1〜10の低級アルキル基、アリール基、Xは−SO2−、−CO−、YはI、Br、n、mは正の整数を表す。)
【0030】
本発明において、上記一般式(1)で表されるフッ素系化合物の特に好ましいものとしては、N,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム・ヨージド、及び他のフッ素系化合物との混合物等が挙げられる。尚本発明の効果は該フッ素系化合物の純度、PH、熱分解温度等該微粉末の特性に限定されるものではない。
【0031】
該フッ素系化合物は、トナーに対し、好ましくは0.05〜10重量%の範囲で、より好ましくは0.1〜8重量%の範囲で、トナー母体内部にイオン結合により含有させることができる。該フッ素系化合物含有量が0.05重量%より少ない場合には、十分な帯電量が得られず、本発明の効果が十分に得られない。一方10重量%を超える場合には、現像剤の定着不良を生じる。
【0032】
本発明における結着樹脂としてはポリエステル樹脂を用いるが、ポリエステル樹脂としては大きく分けて変性ポリエステルと未変性ポリエステル樹脂があり、いずれも使用可能である。
(未変性ポリエステル)
本発明において、未変性ポリエステルをトナーバインダー成分として含有させることで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上する。未変性ポリエステルとしては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられる。
【0033】
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)および3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0034】
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)および3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、(2−1)単独、および(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0035】
結着樹脂として使用するポリエステルの酸価は1〜30が好ましく、さらに好ましくは5〜20である。適度な酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向があり、酸価が5〜20であれば耐熱保存性と低温定着の両立が容易である。
【0036】
本発明において、トナーバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)は通常40〜90℃、好ましくは55〜65℃である。40℃未満ではトナーの耐熱保存性が悪化し、90℃を超えると低温定着性が不十分となる。トナーバインダーの貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて10000dyne/cm2となる温度(TG’)が、通常100℃以上、好ましくは110〜200℃である。100℃未満では耐ホットオフセット性が悪化する。トナーバインダー樹脂の粘性としては、測定周波数20Hzにおいて1000ポイズとなる温度(Tη)が、通常180℃以下、好ましくは90〜160℃である。180℃を超えると低温定着性が悪化する。すなわち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、TG’はTηより高いことが好ましい。言い換えるとTG’とTηの差(TG’−Tη)は0℃以上が好ましい。さらに好ましくは10℃以上であり、特に好ましくは20℃以上である。差の上限は特に限定されない。また、耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、TηとTgの差は0〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜90℃であり、特に好ましくは20〜80℃である。
【0037】
(樹脂微粒子)
本発明で使用される樹脂微粒子は、水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。
ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合また共重合したポリマーで、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
又、イオン結合可能な官能基としては、カルボキシル基、水酸基、ニトリル、ハロゲン、硫化物、チオール、有機リン、硝酸、ニトロ化合物等が挙げられる。
【0038】
(Dv/Dn(体積平均粒径/個数平均粒径の比))
本発明において、該トナーの体積平均粒径(Dv)が4〜8μmであり、個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が1.25以下、好ましくは1.10〜1.25である乾式トナーにより、耐熱保存性、低温定着性、耐ホットオフセット性のいずれにも優れ、とりわけフルカラー複写機などに用いた場合に画像の光沢性に優れ、更に二成分現像剤においては、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なくなり、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性が得られる。また、一成分現像剤として用いた場合においても、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なくなると共に、現像ローラーへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化する為のブレード等の部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期の使用(攪拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られた。
【0039】
一般的には、トナーの粒子径は小さければ小さい程、高解像で高画質の画像を得る為に有利であると言われているが、逆に転写性やクリーニング性に対しては不利である。また、本発明の範囲よりも体積平均粒子径が小さい場合、二成分現像剤では現像装置における長期の攪拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させたり、一成分現像剤として用いた場合には、現像ローラーへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化する為のブレード等の部材へのトナーの融着を発生させやすくなる。
また、これらの現象は微粉の含有率が本発明の前記範囲より多いトナーにおいても同様である。
【0040】
逆に、トナーの粒子径が本発明の前記範囲よりも大きい場合には、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなると共に、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなる場合が多い。また、体積平均粒子径/個数平均粒子径(Dv/Dn)が1.25よりも大きい場合も同様であることが明らかとなった。
また、体積平均粒子径/個数平均粒子径(Dv/Dn)が1.10より小さい場合には、トナーの挙動の安定化、帯電量の均一化の面から好ましい面もあるが、トナーを十分に帯電出来なかったり、クリーニング性を悪化させる場合があることが明らかとなった。
【0041】
(ウレア変性ポリエステル)
本発明においては、前記未変性ポリエステル系樹脂単独使用だけでなく、変性されているポリエステルをトナーバインダー樹脂として含有させてもよい。変性ポリエステル系樹脂からなるプレポリマーと伸長または架橋する化合物との反応生成物としては、ウレア結合で変性されたポリエステルが好ましい。
ウレア結合で変性されたポリエステルとしては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との反応物などが挙げられる。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させた物などが挙げられ、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)として好ましいものは前記の未変性ポリエステルと同様のものである。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0042】
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0043】
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0044】
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0045】
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0046】
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0047】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0048】
本発明で示されるトナー中の残存モノマー量調整は如何なる手法によってもよい。例えばウレア変性ポリエステル及びまたは未変性ポリエステルの縮重合時の温度や時間によっても制御できる。
本発明のウレア変性ポリエステルは、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。バインダー樹脂としてウレア変性ポリエステル単独の場合は、数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0049】
(着色剤)
本発明においては、着色剤を併用してもよい。本発明の着色剤としては公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。
着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0050】
本発明で用いる着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いてもよい。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0051】
該マスターバッチはマスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練してマスターバッチを得る事ができる。この際着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。またいわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0052】
(離型剤)
本発明においては、ワックスを含有させてもよい。本発明のワックスとしては公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。本発明のワックスの融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。
トナー中のワックスの含有量は通常0〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%である。
【0053】
(製造方法)
トナーバインダー樹脂である未変性ポリエステルは以下の方法などで製造することができる。ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。
ウレア変性ポリエステルを併用する場合には、前記と同様の方法で未変性ポリエステルを作成し、次いで40〜140℃にて、これにポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)を得る。さらに(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。(3)を反応させる際および(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。
【0054】
本発明の静電荷像現像用トナーは以下の方法で製造することができるが勿論これらに限定されることはない。
(水系媒体中でのトナー製造法)
本発明に用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
水系媒体中で未変性ポリエステルと他のトナー組成物(以下トナー原料と呼ぶ)である着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、帯電制御剤、変性ポリエステル樹脂などからなる分散体を安定して形成させる方法としては、トナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。
トナー原料は、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、本発明においては、着色剤、離型剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
【0055】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。高温なほうが、トナー原料からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
トナー組成物100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
【0056】
プレポリマー(A)からウレア変性ポリエステル(i)を合成する工程は水系媒体中でトナー組成物を分散する前にアミン類(B)を加えて反応させても良いし、水系媒体中に分散した後にアミン類(B)を加えて粒子界面から反応を起こしても良い。この場合製造されるトナー表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
【0057】
トナー組成物が分散された油性相を水が含まれる液体に乳化、分散するための分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0058】
フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ〕−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる,
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−l29(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−l02、(ダイキン工業社製)、メガファックF−ll0、F−l20、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0059】
また、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級もしくは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−l21(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキン工業社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−l32(トーケムプロダクツ社製)などが挙げられる。
【0060】
また水に難溶の無機化合物分散剤としてリン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いる事が出来る。
また高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0061】
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長および/または架橋反応後、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
【0062】
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ウレア変性ポリエステルやプレポリマー(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いたほうが粒度分布がシャープになる点で好ましい。該溶剤は沸点が100℃未満の揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。プレポリマー(A)100重量部に対する溶剤の使用量は、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。溶剤を使用した場合は、伸長および/または架橋反応後、常圧または減圧下にて加温し除去する。
【0063】
伸長および/または架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0064】
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。
分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、または粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際微粒子、または粗粒子はウェットの状態でも構わない。
用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
【0065】
得られた乾燥後のトナーの粉体と離型剤微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0066】
(現像剤)
本発明の現像剤は、本発明の前記トナーを少なくとも含有してなり、キャリア等の適宜選択したその他の成分を含有してなる。該現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンター等に使用する場合には、寿命向上等の点で前記二成分現像剤が好ましい。
本発明の前記トナーを用いた前記一成分現像剤の場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着がなく、現像器の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。また、本発明の前記トナーを用いた前記二成分現像剤の場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像器における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0067】
(二成分用キャリア)
本発明のトナーを二成分系現像剤に用いる場合には、磁性キャリアと混合して用いれば良く、現像剤中のキャリアとトナーの含有比は、キャリア100重量部に対してトナー1〜10重量部が好ましい。磁性キャリアとしては、粒子径20〜200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなど従来から公知のものが使用できる。また、被覆材料としては、アミノ系樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等があげられる。またポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂およびスチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、およびシリコーン樹脂等が使用できる。また必要に応じて、導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が使用できる。これらの導電粉は、平均粒子径1μm以下のものが好ましい。平均粒子径が1μmよりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になる。
【0068】
(現像ローラ)
本発明のトナーを一成分系現像剤に用いる場合に用いうる現像ローラーの材質としては弾性層を持たないものとして、アルミニウム、鉄、SUSなどの金属が挙げられる。またその表面はサンドブラストなどの加工法で加工されたものも含まれる。弾性層を持つものとしては、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ネオプレンゴム、イソプレンゴム、NBR等公知の材料を用いる事ができ、弾性層の形態としては、ゴム、発泡体、スポンジ等の形態にして用いた場合に効果的であり、これらの弾性層の材質を現像ローラーの部分によって変えることも有効であるが必ずしも限定されない。
また、磁界発生層を設けることも可能であり、磁界強度を現像ローラーの部分によって変えても良い。また、現像ローラーにトナーを供給するトナー供給ローラーを設けてもよく、この2つのローラー間は接触、非接触が適宜選択できる。また、この2つのローラーの間には交流あるいは直流、または交流+直流の電界を印加しても良い。トナー供給ローラーを設けることによって、トナーの帯電が円滑に行われ、現像ローラー上のトナー層のバラツキを無くすことができる。トナー供給ローラーの材質は特に限定されず、スポンジ、ゴム、SUSあるいはこれらにコーティングを施したもの等の公知の材料を用いることができる。また、場合によっては供給ローラーの他に、現像に用いられなかったトナーを現像ローラーからいったん剥ぎ取る働きを有する剥ぎ取りローラーを設けることも可能である。また、離型成分を含有させるコート層を設けても良い。コート樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能である。
【0069】
また、現像位置に対して、現像ローラー回転の上流側、下流側にブレードを設けることも可能である。さらに、これらの部材に電圧を印加することも可能である。供給ローラーにおいても剥ぎ取りと供給の作用を兼ねさせることも可能である。さらに、現像部の上流側にトナー層規制部材を設けることも好ましい。このトナー層規制部材は板状のものであっても良いし、回転ローラーを用いても構わない。この
トナー層規制部材により、トナーに電荷注入を行っても良い。
また、本発明で用いる現像方式として、現像ローラーと静電荷像保持体とが接している接触現像方式を用いても、接していない非接触現像方式を用いても良く、特に限定されない。
【発明の効果】
【0070】
本発明の静電荷像現像用トナーは、帯電量の経時変化が少なく、撹拌初期の帯電立ち上がりが良好で、低温定着性に優れ、耐久性に富んだトナーである。また、本発明により、上記トナーを含有する現像剤、該トナーを用いる画像形成方法、該トナーを収納した容器、および該トナーを装填した画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、部は重量部を示す。
〔実施例1〕
〜有機微粒子エマルションの合成〜
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、メタクリル酸166部、アクリル酸ブチル110部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、3800回転/分で30分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し4時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で6時間熟成してビニル系樹脂(メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。[微粒子分散液1]をレーザー回折式粒度分布測定器(LA−920 島津製)で測定した体積平均粒径は、110nmであった。[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。該樹脂分のTgは58℃であり、重量平均分子量は13万であった。[微粒子分散液1]10部に対し、N,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム・ヨージド(以下、フッ素系化合物(1)とする)を1wt%濃度で分散させた水溶液20部を混合撹拌し、[微粒子分散液1−2]を得た。
【0072】
〜水相の調整〜
水86部、[微粒子分散液1-2]3.5部、ドデシルジフェニルェーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液(エレミノールMON−7):三洋化成工業製)25部、酢酸エチル14部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。
【0073】
〜低分子ポリエステルの合成〜
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物691部、テレフタル酸309部を投入し、常圧窒素気流下で、210℃で10時間縮合反応した。次いで10〜15mmHgの減圧下で脱水しながら5時間反応を継続した後に冷却し、[低分子ポリエステル1]を得た。
得られたポリエステル樹脂のTHF可溶分の重量平均分子量は3,500、酸価10KOHmg/g、水酸基価50KOHmg/g、ガラス転移点40℃であった。
【0074】
〜油相の作成〜
撹拌棒をセットした容器に、[低分子ポリエステル1]1020部、酢酸エチル550部を仕込み、10時間混合し[油相1]を得た。
〜乳化⇒脱溶剤〜
[水相1]210部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で3,000rpmで5分間混合した後[油相1]110部を加え、TKホモミキサーで、回転数9,000rpmで30分間混合し[乳化スラリー1]を得た。
撹拌機をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で10時間脱溶剤した後、45℃で10時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。[分散スラリー1]は、体積平均粒径5.40μm、個数平均粒径4.70μm(コールターエレクトロニクス社製コールターマルチサイザーIIIで測定)であった。
【0075】
〜洗浄⇒乾燥〜
[乳化スラリー1]100部を減圧濾過した後、
1:濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数15,000rpmで5分間)した後濾過する操作を5回行った。
2:1の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数15,000rpmで30分間)した後濾過した。
3:2の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数15,000rpmで10分間)した後濾過する操作を5回行い[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、体積平均粒径Dv5.30μm、個数平均粒径Dn4.80μm、Dv/Dn1.10(コールターカウンターTAIIで測定)の[トナー1]を得た。
【0076】
図15はトナー1で、X線光電子分光による測定ではヨウ素のメインピーク(I 3d)が存在しないことを示す、ヨウ素のメインピーク付近のプロット図である。
図16はトナー1で、X線光電子分光により検出されたフッ素のメインピーク(F 1s)を示すプロット図である。
図17はフッ素化合物(1)で、X線光電子分光により検出されたヨウ素のメインピーク(I 3d)を示すプロット図である。
図18はフッ素化合物(1)で、X線光電子分光により検出されたフッ素のメインピーク(F 1s)を示すプロット図である。
図19はトナー1の帯電量経時変化を示すプロット図である。帯電量は、トナーと鉄粉キャリアTEFV200/300(パウダーテック株式会社製)からなる現像剤現像剤6gを計量し、密閉できる金属円柱に仕込みブローして帯電量を求めた。トナー濃度は7重量%に調整した。
図20はトナー1のSEM観察像(左)と、EDS元素マッピングで得られた左の写真の対応する位置でのフッ素付加位置を示す図(右)である。
図21は表面が僅かに削れた分析用トナーのSEM観察像(左)と、EDS元素マッピングで得られた左の写真の対応する位置でのフッ素付加位置を示す図(右)である。
【0077】
X線光電子分光測定の結果から、トナー1にはヨウ素が存在しない。また、フッ素メインピークは原材料粉と同じ状態でトナー中に存在している。このことから、トナー1中ではフッ素化合物(1)がイオン結合によりカルボキシル基に付加していることがわかる。
また、トナー1の帯電量の経時変化は、フッ素化合物を使用した従来のトナーと同様に初期の帯電立ち上がりは速いが、トナー1では経時での帯電減少が少ない。
また、攪拌後のトナー1で、表面削れの発生している粒子をEDS元素マッピング法を用いて観察した所、トナー表面、トナーの外皮状部分、トナー内部のいずれにもフッ素が偏在している様子は見られなかった。EDS元素マッピングの結果からトナー中でフッ素の局在化が見られず、XPSでフッ素が観測されているという結果は、フッ素はトナー中で特定の部位に偏在することなく一様に分散していることを表す。
SEM観察から、割れの発生しているトナーは100個中28個だった。
【0078】
〔実施例2〕
実施例1のフッ素系化合物(1)の代わりに下記式で表されるフッ素系化合物(2)を使用したこと以外は同様の方法でトナー2を作成した。
【化3】
〔実施例3〕
実施例1のフッ素系化合物(1)の代わりに下記式で表されるフッ素系化合物(3)を使用したこと以外は同様の方法でトナー3を作成した。
【化4】
【0079】
〔実施例4〕
実施例1のフッ素系化合物(1)の代わりに下記式で表されるフッ素系化合物(4)を使用したこと以外は同様の方法でトナー4を作成した。
【化5】
〔実施例5〕
〜低分子ポリエステルの合成〜
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物271部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物354部、テレフタル酸285部、イソフタル酸14部を投入し、常圧窒素気流下で、210℃で10時間縮合反応した。次いで4−t−ブチル安息香酸76部を投入し、210℃で5時間縮合反応を継続した。更に0〜15mmHgの減圧下で脱水しながら5時間反応を継続した後に冷却し、[低分子ポリエステル2]を得た。得られたポリエステル樹脂のTHF可溶分の重量平均分子量は4,000、酸価55KOHmg/g、水酸基価40KOHmg/g、ガラス転移点51℃であった。
実施例1の[低分子ポリエステル1]の代わりに[低分子ポリエステル2]を使用したこと以外は同様の方法でトナー5を作成した。
【0080】
〔実施例6〕
〜低分子ポリエステルの合成〜
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物73部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物590部、テレフタル酸254部、イソフタル酸46部を投入し、常圧窒素気流下で、210℃で10時間縮合反応した。次いで4−t−ブチル安息香酸38部を投入し、210℃で5時間縮合反応を継続した。更に0〜15mmHgの減圧下で脱水しながら5時間反応を継続した後に冷却し、[低分子ポリエステル3]を得た。得られたポリエステル樹脂のTHF可溶分の重量平均分子量は4,200、酸価8KOHmg/g、水酸基価48KOHmg/g、ガラス転移点45℃であった。
実施例1の[低分子ポリエステル1]の代わりに[低分子ポリエステル3]を使用したこと以外は同様の方法でトナー6を作成した。
【0081】
〔実施例7〕
〜低分子ポリエステルの合成〜
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物662部、テレフタル酸269部、無水トリメリット酸12部を投入し、常圧窒素気流下で、210℃で10時間縮合反応した。次いで4−t−ブチル安息香酸57部を投入し、210℃で5時間縮合反応を継続した。更に10〜15mmHgの減圧下で脱水しながら5時間反応を継続した後に冷却し、ポリエステル[低分子ポリエステル4]を得た。得られたポリエステル樹脂のTHF可溶分の重量平均分子量は12,500、酸価25KOHmg/g、水酸基価60KOHmg/g、ガラス転移点51℃であった。
実施例1の[低分子ポリエステル1]の代わりに[低分子ポリエステル4]を使用したこと以外は同様の方法でトナー7を作成した。
【0082】
〔実施例8〕
〜有機微粒子エマルションの合成〜
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30:三洋化成工業製)14部、スチレン137部、メタクリル酸138部、過硫酸アンモニウム1.2部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し4時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、71℃で6時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エテレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液2]を得た。[微粒子分散液2]をレーザー回折式粒度分布測定器(LA−920 島津製)で測定した体積平均粒径は、0.18μmであった。[微粒子分散液2]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。該樹脂分のTgは150℃であった。[微粒子分散液2]10部に対し、N,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム・ヨージド(以下、フッ素系化合物(1)とする)を1wt%濃度で分散させた水溶液20部を混合撹拌し、[微粒子分散液2−2]を得た。
実施例1の[微粒子分散液1−2]の代わりに[微粒子分散液2−2]を用いたこと以外は同様の方法でトナー8を作成した。
【0083】
〔実施例9〕
〜有機微粒子エマルションの合成〜
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、スチレン80部、メタクリル酸83部、アクリル酸ブチル110部、チオグリコール酸ブチル12部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液を得た。これを、[微粒子分散液3]とする。この[微粒子分散液3]をレーザー回折式粒度分布測定器(LA−920 島津製)で測定した体積平均粒径は、120nmであった。[微粒子分散液3]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。該樹脂分のTgは42℃であり、重量平均分子量は3万であった。[微粒子分散液3]10部に対し、N,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム・ヨージド(以下、フッ素系化合物(1)とする)を1wt%濃度で分散させた水溶液20部を混合撹拌し、[微粒子分散液3−2]を得た。
実施例1の[微粒子分散液1−2]の代わりに[微粒子分散液3−2]を用いたこと以外は同様の方法でトナー9を作成した。
【0084】
〔実施例10〕
〜水相の作成〜
水86部、[微粒子分散液1−2]1.5部、ドデシルジフェニルェーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液(エレミノールMON−7):三洋化成工業製)25部、酢酸エチル14部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相2]とする。
実施例1の[水相1]の代わりに[水相2]を用いたこと以外は同様の方法でトナー10を作成した。
〔実施例11〕
〜水相の作成〜
水86部、[微粒子分散液1−2]10.5部、ドデシルジフェニルェーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液(エレミノールMON−7):三洋化成工業製)25部、酢酸エチル14部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相3]とする。
実施例1の[水相1]の代わりに[水相3]を用いたこと以外は同様の方法でトナー10を作成した。
【0085】
〔比較例1〕
〔実施例1〕の[微粒子分散液1−2]にフッ素化合物(1)を加えない事以外は〔実施例1〕と同様にして[水相4]を得た。
〜乳化⇒脱溶剤〜
〔実施例1〕の[水相1]の代わりに[水相4]を用いたこと以外は実施例1と同様にして[乳化スラリー2]を得た。
〜洗浄⇒乾燥〜
[乳化スラリー2]100部を減圧濾過した後、
1:濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数15,000rpmで5分間)した後濾過する操作を5回行った。
2:1の濾過ケーキに10%塩酸100部と、フッ素化合物(1)を1wt%濃度で分散させた水溶液を、トナー母体に対してフッ素化合物が0.1wt%になるよう混合し、TKホモミキサーで混合(回転数15,000rpmで30分間)した後濾過した。
3:2の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数15,000rpmで10分間)した後濾過する操作を5回行い[濾過ケーキ2]を得た。
[濾過ケーキ2]を循風乾燥機にて45℃で24時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、体積平均粒径Dv5.02μm、個数平均粒径Dn4.51μm、Dv/Dn=1.11(コールターカウンターTAIIで測定)の[トナー12]を得た。
【0086】
図22はトナー12で、X線光電子分光による測定ではヨウ素のメインピーク(I 3d)が存在しないことを示す、ヨウ素のメインピーク付近のプロット図である。
図23はトナー12で、X線光電子分光により検出されたフッ素のメインピーク(F 1s)を示すプロット図である。
図24はフッ素化合物(1)で、X線光電子分光により検出されたヨウ素のメインピーク(I 3d)を示すプロット図である。
図25はフッ素化合物(1)で、X線光電子分光により検出されたフッ素のメインピーク(F 1s)を示すプロット図である。
図26はトナー12の帯電量経時変化を示すプロット図である。
図27はトナー12のSEM観察像(左)と、EDS元素マッピングで得られた左の写真の対応する位置でのフッ素付加位置を示す図(右)である。
X線光電子分光測定の結果から、トナー12にはヨウ素が存在しない。また、フッ素、窒素のメインピークは原材料粉と同じ状態でトナー中に存在している。このことから、トナー12中ではフッ素化合物(1)がイオン結合によりカルボキシル基に付加していることがわかる。
トナー12の帯電量の経時変化は、トナー1やフッ素化合物を使用した従来のトナーと同様に初期の帯電立ち上がりは速いが、トナー1とは異なり経時での帯電減少が見られる(図24参照)。
また、攪拌後のトナー12で、表面削れの発生している粒子をEDS元素マッピング法を用いて観察した所、トナーの外皮状部分にフッ素の偏在が見られた。
また、SEM観察から、表面割れの発生しているトナーは100個中47個だった。
【0087】
〔比較例2〕
〔比較例1〕の濾過ケーキにフッ素化合物(1)を加えないこと以外は比較例1と同様にして体積平均粒径Dv5.01μm、個数平均粒径Dn4.50μm、Dv/Dn=1.11(コールターカウンターTAIIで測定)の[トナー13]を得た。
フッ素化合物を含有しない構成のトナー13の帯電量経時変化は、トナー1、トナー2とは異なり帯電立ち上がりは遅く、帯電量最大に達するまでの時間は600秒である。帯電量の減少は見られず、ほぼ単調増加関数である(図28参照)。
【0088】
[評価手法]
(1)体積平均粒子径(Dv)および[Dv/Dn]値の測定
トナーの粒度分布は種々の方法で測定可能であるが、本発明においてはコールターマルチサイザーを用いて行なった。即ち、測定装置としてはコールターマルチサイザーIIe型(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機社製)及びパーソナルコンピューターを接続し、電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製した。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加え、超音波分散器で約1〜3分の分散処理を行なった。さらに、別のビーカーに電解水溶液100〜200mlを入れ、その中に前記サンプル分散液を所定の濃度になるように加え、前記コールターマルチサイザーIIIによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用い、50,000個の粒子の平均を測定することにより行なった。得られた体積平均粒子径(Dv)と個数平均粒子形(Dn)からDv/Dnを求めた。
(2)帯電
1:帯電量
2成分系現像剤6gを計量し、密閉できる金属円柱に仕込み、640rpmの攪拌速度で攪拌し、ブローオフ法により帯電量を求めた。なお、トナー濃度は7重量%に調整する。キャリアはTEFV200/300(パウダーテック株式会社製)を用いた。
2:帯電速度
前記帯電量測定で、60秒での帯電量が最大帯電量の7割以上の帯電量の時に良好であるとして○とし、7割に達していないものを×とした。
3:帯電減少
前記帯電量測定で、3600秒での帯電量が最大帯電量の7割以上の帯電量の時に良好であるとして○とし、7割以下に減少したものを×とした。
【0089】
(3)樹脂のガラス転移点(Tg、℃)の測定
樹脂のTgを測定する装置として、理学電機社製TG−DSCシステムTAS−100を使用した。先ず、試料約10mgをアルミ製試料容器に入れ、それをホルダユニットにのせ、電気炉中にセットする。次に、室温から昇温速度10℃/分で150℃まで加熱した後、150℃で10分間放置した後、室温まで試料を冷却して10分間放置し、更に、窒素雰囲気下で再度150℃まで昇温速度10℃/分で加熱してDSC測定を行った。Tgは、TAS−100システム中の解析システムを用いて、吸熱カーブ部分の接線とベースラインとの交点からTgを算出した。
(4)定着性
リコー製imagio Neo 450を用いて、普通紙および厚紙の転写紙(リコー製タイプ6200およびNBSリコー製複写印刷用紙)にベタ画像で、1.0±0.1mg/cm2の割合でトナーが現像される様に調整を行ない、定着ベルトの温度が可変となる様に調整を行なって、普通紙でオフセットの発生しない温度を、厚紙で定着下限温度を測定した。定着下限温度は、得られた定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって定着下限温度とした。
【0090】
(5)樹脂の酸価の測定
樹脂の酸価の測定方法は、JIS K0070に準拠した方法による。ただし、サンプルが溶解しない場合は、溶媒にジオキサンまたはTHF等の溶媒を用いる。
(6)樹脂の重量平均分子量(Mw)
樹脂の重量平均分子量は、THF可溶分についてGPCを用いて以下の条件で測定される。
装置 :東ソー製 HLC−8120
カラム:TSKgelGMHXL(2本)
TSKgelMultiporeHXL−M(1本)
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25%のTHF溶液
溶液注入量:100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :ポリスチレン
得られたクロマトグラム上最大のピ−ク高さを示す分子量をピークトップ分子量と称する。
(7)耐久性
SEM像観察でランダムに100個のトナーを観察し、いくつのトナーが割れているかを数えた。割れているトナーが、100個中30個以下を○とした。
【0091】
評価項目を表1に示す。
【表1】
表1
【0092】
本発明によると、結着樹脂である未変性ポリエステル末端にN,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウムイオンを付加させ、トナー内部に一様にN,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウムイオンを存在させる事でトナー表面削れが発生しても帯電量の経時減少が少ない、また耐久性に富んだトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】SEM観察で得られた、表面がわずかに削れた分析用トナーを示す図である。
【図2】SEM観察で得られた、表面が削れて殆ど残っていない分析用トナーを示す図である。
【図3】SEM観察のEDS元素マッピングで得られた、表面がわずかに削れた分析用トナーのフッ素付加位置示す図である。
【図4】SEM観察のEDS元素マッピングで得られた、表面が削れて殆ど残っていない分析用トナーのフッ素付加位置示す図である。
【図5】X線光電子分光により得られた、分析用トナーではヨウ素のメインピークが存在しないことをしめすプロット図である。
【図6】X線光電子分光により得られた、分析用トナーのフッ素のメインピークを示すプロット図である。
【図7】X線光電子分光により得られた、分析用のトナーの窒素のメインピークをしめすプロット図である。
【図8】X線光電子分光により得られた、フッ素化合物(1)のヨウ素のメインピークを示すプロット図である。
【図9】X線光電子分光により得られた、フッ素化合物(1)のフッ素のメインピークを示すプロット図である。
【図10】X線光電子分光により得られた、フッ素化合物(1)の窒素のメインピークを示すプロット図である。
【図11】1H−NMR測定により得られた、分析用トナーのピークを示す図である。
【図12】1H−NMR測定により得られた、分析用トナー作成に用いた未変性ポリエステルのピークを示す図である。
【図13】NMR定量分析により得られた、分析用トナーの結着樹脂ポリエステル中のビスフェノールA誘導体数に対するフッ素化合物(1)分子数比の経時変化を示すプロット図である。
【図14】分析用トナーの帯電量経時変化を図示したものである。
【図15】X線光電子分光により得られた、実施例1のトナーではヨウ素のメインピークが存在しないことを示すプロット図である。
【図16】X線光電子分光により得られた、実施例1のトナーのフッ素のメインピークを示すプロット図である。
【図17】X線光電子分光により得られた、フッ素化合物(1)のヨウ素のメインピークを示すプロット図である。
【図18】X線光電子分光により得られた、フッ素化合物(1)のフッ素のメインピークを示すプロット図である。
【図19】実施例1のトナーの帯電量経時変化を図示したものである。
【図20】トナー1のSEM観察像(左)と、EDS元素マッピングで得られた左の写真の対応する位置でのフッ素付加位置を示す図(右)である。
【図21】表面が僅かに削れた分析用トナーのSEM観察像(左)と、EDS元素マッピングで得られた左の写真の対応する位置でのフッ素付加位置を示す図(右)である。
【図22】X線光電子分光により得られた、比較例1のトナーではヨウ素のメインピークが存在しないことを示すプロット図である。
【図23】X線光電子分光により得られた、比較例1のトナーのフッ素のメインピークを示すプロット図である。
【図24】X線光電子分光により得られた、フッ素化合物(1)のヨウ素のメインピークを示すプロット図である。
【図25】X線光電子分光により得られた、フッ素化合物(1)のフッ素のメインピークを示すプロット図である。
【図26】比較例1のトナーの帯電量経時変化を図示したものである。
【図27】トナー12のSEM観察像(左)と、EDS元素マッピングで得られた左の写真の対応する位置でのフッ素付加位置を示す図(右)である。
【図28】比較例2のトナーの帯電量経時変化を図示したものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真や静電記録などにおいて、感光体表面に形成された静電荷像を顕像化する静電荷像現像用トナー、該トナーを含有する現像剤、該トナーを用いる画像形成方法、該トナーを収納した容器、及び該トナーを装填した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真装置や静電記録装置等において、電気的または磁気的潜像は、トナーによって顕像化されている。例えば、電子写真法では、感光体上に静電荷像(潜像)を形成し、次いで、該潜像をトナーを用いて現像して、トナー画像を形成している。トナー画像は、通常、紙等の転写材上に転写され、次いで、加熱等の方法で定着させている。
【0003】
静電荷像現像に使用されるトナーは、一般に、結着樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、その他の添加剤を含有させた着色粒子であり、その製造方法には、大別して粉砕法と懸濁重合法とがある。粉砕法では、熱可塑性樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、オフセット防止剤などを溶融混合して均一に分散させ、得られた組成物を粉砕、分級することによりトナーを製造している。粉砕法によれば、ある程度優れた特性を有するトナーを製造することができるが、トナー用材料の選択に制限がある。例えば、溶融混合により得られる組成物は、経済的に使用可能な装置により粉砕し、分級できるものでなければならない。この要請から、溶融混合した組成物は、充分に脆くせざるを得ない。このため、実際に上記組成物を粉砕して粒子にする際に、高範囲の粒径分布が形成され易く、良好な解像度と階調性のある複写画像を得ようとすると、例えば、粒径5μm以下の微粉と20μm以上の粗粉を分級により除去しなければならず、収率が非常に低くなるという欠点がある。また、粉砕法では、着色剤や帯電制御剤などを熱可塑性樹脂中に均一に分散することが困難である。配合剤の不均一な分散は、トナーの流動性、現像性、耐久性、画像品質などに悪影響を及ぼす。
【0004】
近年、これらの粉砕法における問題点を克服するために、懸濁重合法によるトナーの製造方法が提案され、実施されている。静電潜像現像用のトナーを重合法によって製造する技術は公知であり、例えば懸濁重合法によってトナー粒子を得ることが行われている。しかしながら、懸濁重合法で得られるトナー粒子は感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまう。このため、乳化重合法により得られる樹脂微粒子を会合させて不定形のトナー粒子を得る方法が開示されている(特許文献1参照)。
しかし、乳化重合法で得られるトナー粒子は、水洗浄工程を経ても、界面活性剤が、表面だけでなく、粒子内部にも多量に残存し、トナーの帯電の環境安定性を損ない、かつ帯電量分布を広げ、得られた画像の地汚れが不良となる。また、残存する界面活性剤により、感光体や帯電ローラ、現像ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまう。
【0005】
また、乳化重合法によって得られる樹脂微粒子を会合させて不定形のトナー粒子を得る方法では、下記のような問題を生じる。
耐オフセット性を向上させるために、離型剤微粒子を会合させる場合において、該離型剤微粒子がトナー粒子の内部に取り込まれてしまい、この結果、耐オフセット性の向上を十分に図ることができない。樹脂微粒子、離型剤微粒子、着色剤微粒子などがランダムに融着してトナー粒子が構成されるので、得られるトナー粒子間において組成(構成成分の含有割合)および構成樹脂の分子量等にバラツキが発生し、この結果、トナー粒子間で表面特性が異なり、長期にわたり安定した画像を形成することができない。さらに低温定着が求められる低温定着システムにおいては、トナー表面に偏在する樹脂微粒子による定着阻害が発生し、定着温度幅を確保できない。
【0006】
一方、溶解懸濁法製法というトナー製法が提案されている(特許文献2参照)。この手法は、懸濁重合法がモノマーからポリマー粒子を形成するのに対して、有機溶剤等に溶解したポリマーから造粒する手法であり、樹脂の選択範囲の拡大や、極性の制御性等の利点をあげている。また、トナーの構造制御(コア/シェル構造の調製)が可能という利点を挙げているが、シェル構造は樹脂のみの層で顔料やワックスの表面への露出を低下させることを目的にしており、特に表面状態を工夫したわけではなく、またそのような構造にもなっていない。したがって、シェル構造にはなっているがトナー表面は通常の樹脂であって、特に工夫はなく、より低温定着を目指した際には、耐熱保存性、環境帯電安定性の点で十分でなく問題であった。
【0007】
また、上記懸濁重合法、乳化重合法および溶解懸濁法のいずれもスチレン−アクリル酸エステル系共重合体を用いることが一般的で、ポリエステル系樹脂では粒子化に難があり粒径、粒度分布、形状制御が困難であった。また、より低温定着を目指した場合に定着性に限界があった。
【0008】
一方、耐熱保存性、低温定着を目的として、ウレア結合で変性されたポリエステルを使用することも知られているが(例えば特許文献3参照)、特に表面が工夫されたものでなく、特により条件の厳しい環境帯電安定性の点で十分でなく問題であった。
【0009】
また、電子写真の分野では、高画質化が様々な角度から検討されており、中でも、トナーの小径化および球形化が極めて有効であるとの認識が高まっている。しかし、トナーの小径化が進むにつれて転写性、定着性が低下し、貧弱な画像となってしまう傾向が見られる。一方、トナーを球形化することにより転写性が改善されることが知られている(特許文献4参照)。このような状況の中、カラー複写機やカラープリンタの分野では、さらに画像形成の高速化が望まれている。高速化のためには「タンデム方式」が有効である(例えば、特許文献5参照)。
【0010】
一方、熱ローラなどの加熱部材を使用して行われる接触加熱方式による定着工程において、加熱部材に対するトナー粒子の離型性(以下、「耐オフセット性」という。)が要求される。ここに、耐オフセット性は、トナー粒子表面に離型剤を存在させることにより向上させることができる。これに対し、特許文献6、特許文献7では樹脂微粒子をトナー粒子中に含有させるだけでなく、当該樹脂微粒子がトナー粒子の表面に偏在していることにより、耐オフセット性を向上する方法が開示されている。しかし、定着下限温度が上昇し、低温定着性即ち省エネ定着性が十分でない。
【0011】
一方で、トナーの帯電特性に関しては、特に負帯電トナーの帯電能力を上げる手段として粉砕トナーでフッ素系化合物を電荷制御剤等の役目でトナーに含有させることも知られている(特許文献8、特許文献9等参照)。しかしながら、該手法では十分な帯電立ち上がり性の改善効果はなく、トナー地汚れ(かぶり)や、トナー飛散が発生して問題があった。また、環境帯電安定性の点でも問題であった。
【0012】
帯電制御剤は極性を有する化合物が多く、水相と油相を使用する、水系の乳化による造粒の場合に帯電制御剤を内添して用いられると、油相と水相への親和性、溶解性の影響から水相に溶出することが多く、水系造粒トナーに帯電制御剤を内添することは実質的に困難であった(特許文献10参照)。
【0013】
また、特許文献11では湿式外添によりフッ素系化合物をトナー表面に含有させる事で帯電能力が高く、帯電量分布がシャープで弱帯電、逆帯電トナーが少ない構成のトナーが開示されている。しかしながら、該手法ではキャリアとの長時間撹拌による帯電量経時減少が発生して問題があった。また、特許文献11ではフッ素系化合物を水系媒体中に分散させる事でトナー中に含有させる構成のトナーが開示されている。しかしながら該手法でも帯電量経時減少は発生する。これらの帯電量減少は、従来は原因が知られておらず、解決は困難であった。
【0014】
即ち上記のごとく、帯電性に関して、トナー(特に負帯電トナー)の帯電能力を上げる手段として、フッ素系化合物を電荷制御剤等の役目としてトナーに含有することだけでは、十分な帯電性の効果が得られないことが課題となっていた。即ち、単純にトナー製造工程内でフッ素系化合物を含有するのでは十分な帯電性の改善効果が得られない場合があり、フッ素処理時の方法、条件については、検討が必要とされていた。
【0015】
【特許文献1】特許第2537503号公報
【特許文献2】特許第3141783号公報
【特許文献3】特開平11−133667号公報
【特許文献4】特開平9−258474号公報
【特許文献5】特開平5−341617号公報
【特許文献6】特開2000−292973号公報
【特許文献7】特開2000−292978号公報
【特許文献8】特許第2942588号公報
【特許文献9】特許第3102797号公報
【特許文献10】特許第3069936号公報
【特許文献11】特開2005−115213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものである。
即ち本発明の第1の目的は、帯電量の経時変化が少ない安定した帯電量を維持しつつ、初期の帯電量立ち上がりが速く、帯電量分布がシャープで鮮鋭性の良好な可視画像を長期にわたり形成することが出来、耐久性に富んだ静電荷像現像用トナーを提供することにある。
本発明の第2の目的は、低温定着システムに対応した静電荷像現像用トナーを提供することにある。
本発明の第3の目的は、上記静電荷像現像用トナーを含有する現像剤、該トナーを用いる画像形成方法、該トナーを収納した容器、および該トナーを装填した画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、フッ素系化合物を電荷制御剤の役目としてトナーに含有させた、従来のトナーの帯電量経時減少原因を次のように結論付けた。
即ち、トナー乳化時の粒子間凝集抑制目的で有機樹脂微粒子をトナー材料として使用し、フッ素系化合物でトナー表面を処理した場合には、前述の表面近傍の有機樹脂微粒子にフッ素系化合物が優先的に付加する事で、フッ素系化合物そのものがトナー表面に偏在していることに起因しており、キャリアとの撹拌によるトナー表面削れやトナー表面割れが発生した際に電荷制御剤の役目をしているフッ素系化合物がトナーから消失するためである。
【0018】
その証拠を、SEM像観察、X線光電子分光測定、NMR測定、帯電量測定結果から次のように説明する。
結着樹脂と有機微粒子のみを用いて、N,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム・ヨージド(以下フッ素化合物(1)とする)を、特開2005−115213号公報と同様の手法により付加させることにより作成したトナーの分析を行ったところ、次の結果が得られた。
1:キャリアと混合撹拌後のトナーのSEM像を観察したところ、トナー表面に変化があり、トナー外皮状部分に剥がれが発生している様子が見られた。
測定は日本電子製JSM−7400Fを使用した。図1は表面の1部が削れているトナーを示す図で、図2は表面が殆ど削れ、外皮状の部分の一部のみが残っているトナーを示す図である。
【0019】
2:EDS元素マッピング法を用い、フッ素の存在位置を調べたところ、トナー外皮状部分にフッ素が多量に存在し、一方トナー内部には殆どフッ素が存在しない、という結果が得られた。
測定はJSM−7400を使用した。結果を図3、図4に示す。図中の黒い部分がフッ素検出量の多い部分である。図3は、図1のフッ素存在位置を示す図であり、図4は、図2のフッ素存在位置を示す図である。図3を見ると表面削れ部分にフッ素が多く存在しており、最表面には殆どフッ素が検出されない事を示している。図4を見ると、わずかに残された外皮状部分にフッ素が存在していることがわかるが、外皮が削れきった内部にはフッ素が殆ど検出されていない。このことから、フッ素はトナー表面近傍の外皮状部分に主に存在しており、内部には殆ど存在しないことが解る。
【0020】
3:X線光電子分光を用いてフッ素系化合物のトナー中での存在状態を調べたところ、前記のフッ素系化合物は結着樹脂または有機樹脂微粒子に存在するカルボキシル基とイオン結合している、という結果が得られた。
測定は島津製作所製AXIS−ULTRAを使用した。N,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム・ヨージドは、原材料粉末中ではN,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウムイオンとヨウ素がイオン結合しているが、分析したトナー中ではヨウ素が存在せず、またヨウ素が存在しないこと以外は原材料粉末中と同様の状態で存在しているという結果が図5〜図10から得られた。結着樹脂または有機微粒子中で安定してイオン結合することが出来る部分はカルボキシル基しか存在せず、このことから結着樹脂または有機微粒子中のカルボキシル基とイオン結合しているという結論に至った。
【0021】
4:NMR測定結果から、フッ素系化合物は主にトナー表面の有機樹脂微粒子に付加しているという結果が得られた。
NMR測定は日本電子社製JNM−A400を使用。フッ素定量結果は、結着樹脂中のビスフェノールA系分子数に対するフッ素系化合物数比として得た。19F−NMRを用いたトナー中のフッ素化合物の定量分析を行い、フッ素化合物存在量の経時変化を調べたところ、キャリアとの撹拌初期ではフッ素化合物検出量が増加するという結果が得られた(図11参照)。これは、NMR測定用溶媒として用いたTHF−d8に溶解しない物質にフッ素化合物が付加していることを示しており、使用した材料では有機微粒子がこれにあたる。有機微粒子がTHF−d8に溶解しない事は、結着樹脂の1H−NMR測定と、結着樹脂と有機微粒子で作成したトナーの1H−NMR測定結果の比較から、異なるピークが観測されないことから確認した(図12、図13参照)。
有機微粒子はトナー造粒時のトナー形状(粒度分布、円形度など)を制御するために用いられ、乳化時にトナー表面および内部(主に表面付近)に付着し、トナー表面に付着した有機微粒子が乳化時にトナー粒子間の凝集を抑制する。この有機微粒子を構成するメタクリル酸はカルボキシル基を持っており、有機微粒子中には多量のカルボキシル基が存在する。一方、ポリエステル系の結着樹脂では樹脂末端にしかカルボキシル基は存在せず、有機微粒子が主に存在するトナー表面にはトナー内部よりもカルボキシル基が多い。
【0022】
高分子化合物である有機微粒子を構成する単量体の一つであるメタクリル酸にはカルボキシル基が存在し、トナー中に存在するカルボキシル基は結着樹脂よりも有機微粒子中に多く存在するという事実は、SEM像、XPS測定の結果、NMR測定を矛盾無く説明可能である。
【0023】
5:帯電量の経時変化を調べたところ、NMR定量分析結果と比較して、フッ素系化合物を含むトナーの帯電量は含有するフッ素系化合物の存在量の影響が大きいという結果が得られた。
帯電量はブローオフ法を使用して、トナーと鉄粉キャリアTEFV200/300(パウダーテック株式会社製)からなる現像剤をトナー濃度7重量%で測定した。帯電量の経時変化を調べたところ、NMRによるフッ素化合物定量分析結果との相関が見られた(図14参照)。これにより、フッ素系化合物を電荷制御剤の役目として含有させたトナーの帯電量は、フッ素系化合物の存在量の影響が大きいことを結論付けた。
【0024】
以上の結果から、帯電減少はトナー表面近傍に偏在する有機微粒子にフッ素系化合物が優先的に付加していることで、トナー表面削れが発生した際に、トナー中の帯電制御剤量が減少することが原因であると結論付けた。
本発明者らが検討を重ねた結果、トナー帯電量の経時変化を少なくし安定した帯電性を実現するために有機微粒子にN,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム・ヨージド等のフッ素系化合物をイオン結合により付加させ、前記フッ素系化合物の付加した有機微粒子を使用してトナーを作成しトナー内部にフッ素系化合物を存在させ、トナー表面近傍へのフッ素系化合物の偏在を抑制することで達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
かくして本発明によれば、下記(1)〜(18)が提供される。
(1)少なくとも結着樹脂及び樹脂微粒子及び帯電制御剤を含有するトナー組成物を含む溶解物または分散物を、水系溶媒中に分散させ得られた分散液から溶媒を除去することにより得られるトナーで、前記樹脂微粒子は少なくともイオン結合可能な官能基を有し、前記帯電制御剤はトナー内部で前記樹脂微粒子とイオン結合していることを特徴とする、静電荷像現像用トナー。
(2)前記帯電制御剤は4級アンモニウム塩であることを特徴とする前記(1)記載の静電荷像現像用トナー。
(3)前記帯電制御剤は下記一般式(1)で表されるフッ素系化合物であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の静電荷像現像用トナー。
【化1】
(式中、R1〜R4は炭素数1〜10の低級アルキル基、アリール基、Xは−SO2−、−CO−、YはI、Br、n、mは正の整数を表す。)
【0026】
(4)前記フッ素系化合物がN,N,N−トリメチル−〔3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル〕アンモニウム・ヨージドであることを特徴とする前記(3)に記載の静電荷像現像用トナー。
(5)前記結着樹脂は、カルボキシル基末端を有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに静電荷像現像用トナー。
(6)前記結着樹脂は、ポリエステル系樹脂であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(7)前記フッ素系化合物の含有量がトナーに対して0.05〜10重量%であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(8)前記結着樹脂の酸価が1〜30mgKOHであることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(9)前記トナー結着樹脂のガラス転移点(Tg)が40〜90℃であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかいに記載の静電荷像現像用トナー。
【0027】
(10)前記トナー表面又は内部に樹脂微粒子を併用し、該樹脂微粒子がビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及び/またはそれらの混合物からなることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(11)前記樹脂微粒子の重量平均分子量が5000〜20万であることを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(12)前記トナー粒子の体積平均粒径が4〜8μmであることを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(13)前記トナー粒子の体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比Dv/Dnが1.25以下であることを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(14)前記(1)〜(13)のいずれかに記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤。
【0028】
(15)一成分現像剤および二成分現像剤のいずれかである前記(14)に記載の現像剤。
(16)前記(1)〜(13)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
(17)トナーリサイクル機構を有する現像装置による画像形成方法において、前記(1)〜(13)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
(18)前記(1)〜(13)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを収納した容器。
【0029】
以下、本発明をさらに詳述する。
(フッ素系化合物)
本発明トナーに用いるフッ素系化合物としては、含フッ素四級アンモニウム塩等が用いられ、例えば下記一般式(1)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化2】
(式中、R1〜R4は炭素数1〜10の低級アルキル基、アリール基、Xは−SO2−、−CO−、YはI、Br、n、mは正の整数を表す。)
【0030】
本発明において、上記一般式(1)で表されるフッ素系化合物の特に好ましいものとしては、N,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム・ヨージド、及び他のフッ素系化合物との混合物等が挙げられる。尚本発明の効果は該フッ素系化合物の純度、PH、熱分解温度等該微粉末の特性に限定されるものではない。
【0031】
該フッ素系化合物は、トナーに対し、好ましくは0.05〜10重量%の範囲で、より好ましくは0.1〜8重量%の範囲で、トナー母体内部にイオン結合により含有させることができる。該フッ素系化合物含有量が0.05重量%より少ない場合には、十分な帯電量が得られず、本発明の効果が十分に得られない。一方10重量%を超える場合には、現像剤の定着不良を生じる。
【0032】
本発明における結着樹脂としてはポリエステル樹脂を用いるが、ポリエステル樹脂としては大きく分けて変性ポリエステルと未変性ポリエステル樹脂があり、いずれも使用可能である。
(未変性ポリエステル)
本発明において、未変性ポリエステルをトナーバインダー成分として含有させることで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上する。未変性ポリエステルとしては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられる。
【0033】
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)および3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0034】
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)および3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、(2−1)単独、および(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0035】
結着樹脂として使用するポリエステルの酸価は1〜30が好ましく、さらに好ましくは5〜20である。適度な酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向があり、酸価が5〜20であれば耐熱保存性と低温定着の両立が容易である。
【0036】
本発明において、トナーバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)は通常40〜90℃、好ましくは55〜65℃である。40℃未満ではトナーの耐熱保存性が悪化し、90℃を超えると低温定着性が不十分となる。トナーバインダーの貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて10000dyne/cm2となる温度(TG’)が、通常100℃以上、好ましくは110〜200℃である。100℃未満では耐ホットオフセット性が悪化する。トナーバインダー樹脂の粘性としては、測定周波数20Hzにおいて1000ポイズとなる温度(Tη)が、通常180℃以下、好ましくは90〜160℃である。180℃を超えると低温定着性が悪化する。すなわち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、TG’はTηより高いことが好ましい。言い換えるとTG’とTηの差(TG’−Tη)は0℃以上が好ましい。さらに好ましくは10℃以上であり、特に好ましくは20℃以上である。差の上限は特に限定されない。また、耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、TηとTgの差は0〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜90℃であり、特に好ましくは20〜80℃である。
【0037】
(樹脂微粒子)
本発明で使用される樹脂微粒子は、水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。
ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合また共重合したポリマーで、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
又、イオン結合可能な官能基としては、カルボキシル基、水酸基、ニトリル、ハロゲン、硫化物、チオール、有機リン、硝酸、ニトロ化合物等が挙げられる。
【0038】
(Dv/Dn(体積平均粒径/個数平均粒径の比))
本発明において、該トナーの体積平均粒径(Dv)が4〜8μmであり、個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が1.25以下、好ましくは1.10〜1.25である乾式トナーにより、耐熱保存性、低温定着性、耐ホットオフセット性のいずれにも優れ、とりわけフルカラー複写機などに用いた場合に画像の光沢性に優れ、更に二成分現像剤においては、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なくなり、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性が得られる。また、一成分現像剤として用いた場合においても、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なくなると共に、現像ローラーへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化する為のブレード等の部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期の使用(攪拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られた。
【0039】
一般的には、トナーの粒子径は小さければ小さい程、高解像で高画質の画像を得る為に有利であると言われているが、逆に転写性やクリーニング性に対しては不利である。また、本発明の範囲よりも体積平均粒子径が小さい場合、二成分現像剤では現像装置における長期の攪拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させたり、一成分現像剤として用いた場合には、現像ローラーへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化する為のブレード等の部材へのトナーの融着を発生させやすくなる。
また、これらの現象は微粉の含有率が本発明の前記範囲より多いトナーにおいても同様である。
【0040】
逆に、トナーの粒子径が本発明の前記範囲よりも大きい場合には、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなると共に、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなる場合が多い。また、体積平均粒子径/個数平均粒子径(Dv/Dn)が1.25よりも大きい場合も同様であることが明らかとなった。
また、体積平均粒子径/個数平均粒子径(Dv/Dn)が1.10より小さい場合には、トナーの挙動の安定化、帯電量の均一化の面から好ましい面もあるが、トナーを十分に帯電出来なかったり、クリーニング性を悪化させる場合があることが明らかとなった。
【0041】
(ウレア変性ポリエステル)
本発明においては、前記未変性ポリエステル系樹脂単独使用だけでなく、変性されているポリエステルをトナーバインダー樹脂として含有させてもよい。変性ポリエステル系樹脂からなるプレポリマーと伸長または架橋する化合物との反応生成物としては、ウレア結合で変性されたポリエステルが好ましい。
ウレア結合で変性されたポリエステルとしては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との反応物などが挙げられる。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させた物などが挙げられ、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)として好ましいものは前記の未変性ポリエステルと同様のものである。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0042】
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0043】
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0044】
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0045】
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0046】
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0047】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0048】
本発明で示されるトナー中の残存モノマー量調整は如何なる手法によってもよい。例えばウレア変性ポリエステル及びまたは未変性ポリエステルの縮重合時の温度や時間によっても制御できる。
本発明のウレア変性ポリエステルは、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。バインダー樹脂としてウレア変性ポリエステル単独の場合は、数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0049】
(着色剤)
本発明においては、着色剤を併用してもよい。本発明の着色剤としては公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。
着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0050】
本発明で用いる着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いてもよい。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0051】
該マスターバッチはマスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練してマスターバッチを得る事ができる。この際着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。またいわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0052】
(離型剤)
本発明においては、ワックスを含有させてもよい。本発明のワックスとしては公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。本発明のワックスの融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。
トナー中のワックスの含有量は通常0〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%である。
【0053】
(製造方法)
トナーバインダー樹脂である未変性ポリエステルは以下の方法などで製造することができる。ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。
ウレア変性ポリエステルを併用する場合には、前記と同様の方法で未変性ポリエステルを作成し、次いで40〜140℃にて、これにポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)を得る。さらに(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。(3)を反応させる際および(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。
【0054】
本発明の静電荷像現像用トナーは以下の方法で製造することができるが勿論これらに限定されることはない。
(水系媒体中でのトナー製造法)
本発明に用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
水系媒体中で未変性ポリエステルと他のトナー組成物(以下トナー原料と呼ぶ)である着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、帯電制御剤、変性ポリエステル樹脂などからなる分散体を安定して形成させる方法としては、トナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。
トナー原料は、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、本発明においては、着色剤、離型剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
【0055】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。高温なほうが、トナー原料からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
トナー組成物100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
【0056】
プレポリマー(A)からウレア変性ポリエステル(i)を合成する工程は水系媒体中でトナー組成物を分散する前にアミン類(B)を加えて反応させても良いし、水系媒体中に分散した後にアミン類(B)を加えて粒子界面から反応を起こしても良い。この場合製造されるトナー表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
【0057】
トナー組成物が分散された油性相を水が含まれる液体に乳化、分散するための分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0058】
フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ〕−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる,
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−l29(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−l02、(ダイキン工業社製)、メガファックF−ll0、F−l20、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0059】
また、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級もしくは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−l21(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキン工業社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−l32(トーケムプロダクツ社製)などが挙げられる。
【0060】
また水に難溶の無機化合物分散剤としてリン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いる事が出来る。
また高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0061】
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長および/または架橋反応後、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
【0062】
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ウレア変性ポリエステルやプレポリマー(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いたほうが粒度分布がシャープになる点で好ましい。該溶剤は沸点が100℃未満の揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。プレポリマー(A)100重量部に対する溶剤の使用量は、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。溶剤を使用した場合は、伸長および/または架橋反応後、常圧または減圧下にて加温し除去する。
【0063】
伸長および/または架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0064】
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。
分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、または粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際微粒子、または粗粒子はウェットの状態でも構わない。
用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
【0065】
得られた乾燥後のトナーの粉体と離型剤微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0066】
(現像剤)
本発明の現像剤は、本発明の前記トナーを少なくとも含有してなり、キャリア等の適宜選択したその他の成分を含有してなる。該現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンター等に使用する場合には、寿命向上等の点で前記二成分現像剤が好ましい。
本発明の前記トナーを用いた前記一成分現像剤の場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着がなく、現像器の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。また、本発明の前記トナーを用いた前記二成分現像剤の場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像器における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0067】
(二成分用キャリア)
本発明のトナーを二成分系現像剤に用いる場合には、磁性キャリアと混合して用いれば良く、現像剤中のキャリアとトナーの含有比は、キャリア100重量部に対してトナー1〜10重量部が好ましい。磁性キャリアとしては、粒子径20〜200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなど従来から公知のものが使用できる。また、被覆材料としては、アミノ系樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等があげられる。またポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂およびスチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、およびシリコーン樹脂等が使用できる。また必要に応じて、導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が使用できる。これらの導電粉は、平均粒子径1μm以下のものが好ましい。平均粒子径が1μmよりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になる。
【0068】
(現像ローラ)
本発明のトナーを一成分系現像剤に用いる場合に用いうる現像ローラーの材質としては弾性層を持たないものとして、アルミニウム、鉄、SUSなどの金属が挙げられる。またその表面はサンドブラストなどの加工法で加工されたものも含まれる。弾性層を持つものとしては、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ネオプレンゴム、イソプレンゴム、NBR等公知の材料を用いる事ができ、弾性層の形態としては、ゴム、発泡体、スポンジ等の形態にして用いた場合に効果的であり、これらの弾性層の材質を現像ローラーの部分によって変えることも有効であるが必ずしも限定されない。
また、磁界発生層を設けることも可能であり、磁界強度を現像ローラーの部分によって変えても良い。また、現像ローラーにトナーを供給するトナー供給ローラーを設けてもよく、この2つのローラー間は接触、非接触が適宜選択できる。また、この2つのローラーの間には交流あるいは直流、または交流+直流の電界を印加しても良い。トナー供給ローラーを設けることによって、トナーの帯電が円滑に行われ、現像ローラー上のトナー層のバラツキを無くすことができる。トナー供給ローラーの材質は特に限定されず、スポンジ、ゴム、SUSあるいはこれらにコーティングを施したもの等の公知の材料を用いることができる。また、場合によっては供給ローラーの他に、現像に用いられなかったトナーを現像ローラーからいったん剥ぎ取る働きを有する剥ぎ取りローラーを設けることも可能である。また、離型成分を含有させるコート層を設けても良い。コート樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能である。
【0069】
また、現像位置に対して、現像ローラー回転の上流側、下流側にブレードを設けることも可能である。さらに、これらの部材に電圧を印加することも可能である。供給ローラーにおいても剥ぎ取りと供給の作用を兼ねさせることも可能である。さらに、現像部の上流側にトナー層規制部材を設けることも好ましい。このトナー層規制部材は板状のものであっても良いし、回転ローラーを用いても構わない。この
トナー層規制部材により、トナーに電荷注入を行っても良い。
また、本発明で用いる現像方式として、現像ローラーと静電荷像保持体とが接している接触現像方式を用いても、接していない非接触現像方式を用いても良く、特に限定されない。
【発明の効果】
【0070】
本発明の静電荷像現像用トナーは、帯電量の経時変化が少なく、撹拌初期の帯電立ち上がりが良好で、低温定着性に優れ、耐久性に富んだトナーである。また、本発明により、上記トナーを含有する現像剤、該トナーを用いる画像形成方法、該トナーを収納した容器、および該トナーを装填した画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、部は重量部を示す。
〔実施例1〕
〜有機微粒子エマルションの合成〜
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、メタクリル酸166部、アクリル酸ブチル110部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、3800回転/分で30分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し4時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で6時間熟成してビニル系樹脂(メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。[微粒子分散液1]をレーザー回折式粒度分布測定器(LA−920 島津製)で測定した体積平均粒径は、110nmであった。[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。該樹脂分のTgは58℃であり、重量平均分子量は13万であった。[微粒子分散液1]10部に対し、N,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム・ヨージド(以下、フッ素系化合物(1)とする)を1wt%濃度で分散させた水溶液20部を混合撹拌し、[微粒子分散液1−2]を得た。
【0072】
〜水相の調整〜
水86部、[微粒子分散液1-2]3.5部、ドデシルジフェニルェーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液(エレミノールMON−7):三洋化成工業製)25部、酢酸エチル14部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。
【0073】
〜低分子ポリエステルの合成〜
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物691部、テレフタル酸309部を投入し、常圧窒素気流下で、210℃で10時間縮合反応した。次いで10〜15mmHgの減圧下で脱水しながら5時間反応を継続した後に冷却し、[低分子ポリエステル1]を得た。
得られたポリエステル樹脂のTHF可溶分の重量平均分子量は3,500、酸価10KOHmg/g、水酸基価50KOHmg/g、ガラス転移点40℃であった。
【0074】
〜油相の作成〜
撹拌棒をセットした容器に、[低分子ポリエステル1]1020部、酢酸エチル550部を仕込み、10時間混合し[油相1]を得た。
〜乳化⇒脱溶剤〜
[水相1]210部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で3,000rpmで5分間混合した後[油相1]110部を加え、TKホモミキサーで、回転数9,000rpmで30分間混合し[乳化スラリー1]を得た。
撹拌機をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で10時間脱溶剤した後、45℃で10時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。[分散スラリー1]は、体積平均粒径5.40μm、個数平均粒径4.70μm(コールターエレクトロニクス社製コールターマルチサイザーIIIで測定)であった。
【0075】
〜洗浄⇒乾燥〜
[乳化スラリー1]100部を減圧濾過した後、
1:濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数15,000rpmで5分間)した後濾過する操作を5回行った。
2:1の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数15,000rpmで30分間)した後濾過した。
3:2の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数15,000rpmで10分間)した後濾過する操作を5回行い[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、体積平均粒径Dv5.30μm、個数平均粒径Dn4.80μm、Dv/Dn1.10(コールターカウンターTAIIで測定)の[トナー1]を得た。
【0076】
図15はトナー1で、X線光電子分光による測定ではヨウ素のメインピーク(I 3d)が存在しないことを示す、ヨウ素のメインピーク付近のプロット図である。
図16はトナー1で、X線光電子分光により検出されたフッ素のメインピーク(F 1s)を示すプロット図である。
図17はフッ素化合物(1)で、X線光電子分光により検出されたヨウ素のメインピーク(I 3d)を示すプロット図である。
図18はフッ素化合物(1)で、X線光電子分光により検出されたフッ素のメインピーク(F 1s)を示すプロット図である。
図19はトナー1の帯電量経時変化を示すプロット図である。帯電量は、トナーと鉄粉キャリアTEFV200/300(パウダーテック株式会社製)からなる現像剤現像剤6gを計量し、密閉できる金属円柱に仕込みブローして帯電量を求めた。トナー濃度は7重量%に調整した。
図20はトナー1のSEM観察像(左)と、EDS元素マッピングで得られた左の写真の対応する位置でのフッ素付加位置を示す図(右)である。
図21は表面が僅かに削れた分析用トナーのSEM観察像(左)と、EDS元素マッピングで得られた左の写真の対応する位置でのフッ素付加位置を示す図(右)である。
【0077】
X線光電子分光測定の結果から、トナー1にはヨウ素が存在しない。また、フッ素メインピークは原材料粉と同じ状態でトナー中に存在している。このことから、トナー1中ではフッ素化合物(1)がイオン結合によりカルボキシル基に付加していることがわかる。
また、トナー1の帯電量の経時変化は、フッ素化合物を使用した従来のトナーと同様に初期の帯電立ち上がりは速いが、トナー1では経時での帯電減少が少ない。
また、攪拌後のトナー1で、表面削れの発生している粒子をEDS元素マッピング法を用いて観察した所、トナー表面、トナーの外皮状部分、トナー内部のいずれにもフッ素が偏在している様子は見られなかった。EDS元素マッピングの結果からトナー中でフッ素の局在化が見られず、XPSでフッ素が観測されているという結果は、フッ素はトナー中で特定の部位に偏在することなく一様に分散していることを表す。
SEM観察から、割れの発生しているトナーは100個中28個だった。
【0078】
〔実施例2〕
実施例1のフッ素系化合物(1)の代わりに下記式で表されるフッ素系化合物(2)を使用したこと以外は同様の方法でトナー2を作成した。
【化3】
〔実施例3〕
実施例1のフッ素系化合物(1)の代わりに下記式で表されるフッ素系化合物(3)を使用したこと以外は同様の方法でトナー3を作成した。
【化4】
【0079】
〔実施例4〕
実施例1のフッ素系化合物(1)の代わりに下記式で表されるフッ素系化合物(4)を使用したこと以外は同様の方法でトナー4を作成した。
【化5】
〔実施例5〕
〜低分子ポリエステルの合成〜
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物271部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物354部、テレフタル酸285部、イソフタル酸14部を投入し、常圧窒素気流下で、210℃で10時間縮合反応した。次いで4−t−ブチル安息香酸76部を投入し、210℃で5時間縮合反応を継続した。更に0〜15mmHgの減圧下で脱水しながら5時間反応を継続した後に冷却し、[低分子ポリエステル2]を得た。得られたポリエステル樹脂のTHF可溶分の重量平均分子量は4,000、酸価55KOHmg/g、水酸基価40KOHmg/g、ガラス転移点51℃であった。
実施例1の[低分子ポリエステル1]の代わりに[低分子ポリエステル2]を使用したこと以外は同様の方法でトナー5を作成した。
【0080】
〔実施例6〕
〜低分子ポリエステルの合成〜
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物73部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物590部、テレフタル酸254部、イソフタル酸46部を投入し、常圧窒素気流下で、210℃で10時間縮合反応した。次いで4−t−ブチル安息香酸38部を投入し、210℃で5時間縮合反応を継続した。更に0〜15mmHgの減圧下で脱水しながら5時間反応を継続した後に冷却し、[低分子ポリエステル3]を得た。得られたポリエステル樹脂のTHF可溶分の重量平均分子量は4,200、酸価8KOHmg/g、水酸基価48KOHmg/g、ガラス転移点45℃であった。
実施例1の[低分子ポリエステル1]の代わりに[低分子ポリエステル3]を使用したこと以外は同様の方法でトナー6を作成した。
【0081】
〔実施例7〕
〜低分子ポリエステルの合成〜
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物662部、テレフタル酸269部、無水トリメリット酸12部を投入し、常圧窒素気流下で、210℃で10時間縮合反応した。次いで4−t−ブチル安息香酸57部を投入し、210℃で5時間縮合反応を継続した。更に10〜15mmHgの減圧下で脱水しながら5時間反応を継続した後に冷却し、ポリエステル[低分子ポリエステル4]を得た。得られたポリエステル樹脂のTHF可溶分の重量平均分子量は12,500、酸価25KOHmg/g、水酸基価60KOHmg/g、ガラス転移点51℃であった。
実施例1の[低分子ポリエステル1]の代わりに[低分子ポリエステル4]を使用したこと以外は同様の方法でトナー7を作成した。
【0082】
〔実施例8〕
〜有機微粒子エマルションの合成〜
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30:三洋化成工業製)14部、スチレン137部、メタクリル酸138部、過硫酸アンモニウム1.2部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し4時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、71℃で6時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エテレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液2]を得た。[微粒子分散液2]をレーザー回折式粒度分布測定器(LA−920 島津製)で測定した体積平均粒径は、0.18μmであった。[微粒子分散液2]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。該樹脂分のTgは150℃であった。[微粒子分散液2]10部に対し、N,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム・ヨージド(以下、フッ素系化合物(1)とする)を1wt%濃度で分散させた水溶液20部を混合撹拌し、[微粒子分散液2−2]を得た。
実施例1の[微粒子分散液1−2]の代わりに[微粒子分散液2−2]を用いたこと以外は同様の方法でトナー8を作成した。
【0083】
〔実施例9〕
〜有機微粒子エマルションの合成〜
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、スチレン80部、メタクリル酸83部、アクリル酸ブチル110部、チオグリコール酸ブチル12部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液を得た。これを、[微粒子分散液3]とする。この[微粒子分散液3]をレーザー回折式粒度分布測定器(LA−920 島津製)で測定した体積平均粒径は、120nmであった。[微粒子分散液3]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。該樹脂分のTgは42℃であり、重量平均分子量は3万であった。[微粒子分散液3]10部に対し、N,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム・ヨージド(以下、フッ素系化合物(1)とする)を1wt%濃度で分散させた水溶液20部を混合撹拌し、[微粒子分散液3−2]を得た。
実施例1の[微粒子分散液1−2]の代わりに[微粒子分散液3−2]を用いたこと以外は同様の方法でトナー9を作成した。
【0084】
〔実施例10〕
〜水相の作成〜
水86部、[微粒子分散液1−2]1.5部、ドデシルジフェニルェーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液(エレミノールMON−7):三洋化成工業製)25部、酢酸エチル14部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相2]とする。
実施例1の[水相1]の代わりに[水相2]を用いたこと以外は同様の方法でトナー10を作成した。
〔実施例11〕
〜水相の作成〜
水86部、[微粒子分散液1−2]10.5部、ドデシルジフェニルェーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液(エレミノールMON−7):三洋化成工業製)25部、酢酸エチル14部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相3]とする。
実施例1の[水相1]の代わりに[水相3]を用いたこと以外は同様の方法でトナー10を作成した。
【0085】
〔比較例1〕
〔実施例1〕の[微粒子分散液1−2]にフッ素化合物(1)を加えない事以外は〔実施例1〕と同様にして[水相4]を得た。
〜乳化⇒脱溶剤〜
〔実施例1〕の[水相1]の代わりに[水相4]を用いたこと以外は実施例1と同様にして[乳化スラリー2]を得た。
〜洗浄⇒乾燥〜
[乳化スラリー2]100部を減圧濾過した後、
1:濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数15,000rpmで5分間)した後濾過する操作を5回行った。
2:1の濾過ケーキに10%塩酸100部と、フッ素化合物(1)を1wt%濃度で分散させた水溶液を、トナー母体に対してフッ素化合物が0.1wt%になるよう混合し、TKホモミキサーで混合(回転数15,000rpmで30分間)した後濾過した。
3:2の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数15,000rpmで10分間)した後濾過する操作を5回行い[濾過ケーキ2]を得た。
[濾過ケーキ2]を循風乾燥機にて45℃で24時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、体積平均粒径Dv5.02μm、個数平均粒径Dn4.51μm、Dv/Dn=1.11(コールターカウンターTAIIで測定)の[トナー12]を得た。
【0086】
図22はトナー12で、X線光電子分光による測定ではヨウ素のメインピーク(I 3d)が存在しないことを示す、ヨウ素のメインピーク付近のプロット図である。
図23はトナー12で、X線光電子分光により検出されたフッ素のメインピーク(F 1s)を示すプロット図である。
図24はフッ素化合物(1)で、X線光電子分光により検出されたヨウ素のメインピーク(I 3d)を示すプロット図である。
図25はフッ素化合物(1)で、X線光電子分光により検出されたフッ素のメインピーク(F 1s)を示すプロット図である。
図26はトナー12の帯電量経時変化を示すプロット図である。
図27はトナー12のSEM観察像(左)と、EDS元素マッピングで得られた左の写真の対応する位置でのフッ素付加位置を示す図(右)である。
X線光電子分光測定の結果から、トナー12にはヨウ素が存在しない。また、フッ素、窒素のメインピークは原材料粉と同じ状態でトナー中に存在している。このことから、トナー12中ではフッ素化合物(1)がイオン結合によりカルボキシル基に付加していることがわかる。
トナー12の帯電量の経時変化は、トナー1やフッ素化合物を使用した従来のトナーと同様に初期の帯電立ち上がりは速いが、トナー1とは異なり経時での帯電減少が見られる(図24参照)。
また、攪拌後のトナー12で、表面削れの発生している粒子をEDS元素マッピング法を用いて観察した所、トナーの外皮状部分にフッ素の偏在が見られた。
また、SEM観察から、表面割れの発生しているトナーは100個中47個だった。
【0087】
〔比較例2〕
〔比較例1〕の濾過ケーキにフッ素化合物(1)を加えないこと以外は比較例1と同様にして体積平均粒径Dv5.01μm、個数平均粒径Dn4.50μm、Dv/Dn=1.11(コールターカウンターTAIIで測定)の[トナー13]を得た。
フッ素化合物を含有しない構成のトナー13の帯電量経時変化は、トナー1、トナー2とは異なり帯電立ち上がりは遅く、帯電量最大に達するまでの時間は600秒である。帯電量の減少は見られず、ほぼ単調増加関数である(図28参照)。
【0088】
[評価手法]
(1)体積平均粒子径(Dv)および[Dv/Dn]値の測定
トナーの粒度分布は種々の方法で測定可能であるが、本発明においてはコールターマルチサイザーを用いて行なった。即ち、測定装置としてはコールターマルチサイザーIIe型(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機社製)及びパーソナルコンピューターを接続し、電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製した。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加え、超音波分散器で約1〜3分の分散処理を行なった。さらに、別のビーカーに電解水溶液100〜200mlを入れ、その中に前記サンプル分散液を所定の濃度になるように加え、前記コールターマルチサイザーIIIによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用い、50,000個の粒子の平均を測定することにより行なった。得られた体積平均粒子径(Dv)と個数平均粒子形(Dn)からDv/Dnを求めた。
(2)帯電
1:帯電量
2成分系現像剤6gを計量し、密閉できる金属円柱に仕込み、640rpmの攪拌速度で攪拌し、ブローオフ法により帯電量を求めた。なお、トナー濃度は7重量%に調整する。キャリアはTEFV200/300(パウダーテック株式会社製)を用いた。
2:帯電速度
前記帯電量測定で、60秒での帯電量が最大帯電量の7割以上の帯電量の時に良好であるとして○とし、7割に達していないものを×とした。
3:帯電減少
前記帯電量測定で、3600秒での帯電量が最大帯電量の7割以上の帯電量の時に良好であるとして○とし、7割以下に減少したものを×とした。
【0089】
(3)樹脂のガラス転移点(Tg、℃)の測定
樹脂のTgを測定する装置として、理学電機社製TG−DSCシステムTAS−100を使用した。先ず、試料約10mgをアルミ製試料容器に入れ、それをホルダユニットにのせ、電気炉中にセットする。次に、室温から昇温速度10℃/分で150℃まで加熱した後、150℃で10分間放置した後、室温まで試料を冷却して10分間放置し、更に、窒素雰囲気下で再度150℃まで昇温速度10℃/分で加熱してDSC測定を行った。Tgは、TAS−100システム中の解析システムを用いて、吸熱カーブ部分の接線とベースラインとの交点からTgを算出した。
(4)定着性
リコー製imagio Neo 450を用いて、普通紙および厚紙の転写紙(リコー製タイプ6200およびNBSリコー製複写印刷用紙)にベタ画像で、1.0±0.1mg/cm2の割合でトナーが現像される様に調整を行ない、定着ベルトの温度が可変となる様に調整を行なって、普通紙でオフセットの発生しない温度を、厚紙で定着下限温度を測定した。定着下限温度は、得られた定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって定着下限温度とした。
【0090】
(5)樹脂の酸価の測定
樹脂の酸価の測定方法は、JIS K0070に準拠した方法による。ただし、サンプルが溶解しない場合は、溶媒にジオキサンまたはTHF等の溶媒を用いる。
(6)樹脂の重量平均分子量(Mw)
樹脂の重量平均分子量は、THF可溶分についてGPCを用いて以下の条件で測定される。
装置 :東ソー製 HLC−8120
カラム:TSKgelGMHXL(2本)
TSKgelMultiporeHXL−M(1本)
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25%のTHF溶液
溶液注入量:100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :ポリスチレン
得られたクロマトグラム上最大のピ−ク高さを示す分子量をピークトップ分子量と称する。
(7)耐久性
SEM像観察でランダムに100個のトナーを観察し、いくつのトナーが割れているかを数えた。割れているトナーが、100個中30個以下を○とした。
【0091】
評価項目を表1に示す。
【表1】
表1
【0092】
本発明によると、結着樹脂である未変性ポリエステル末端にN,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウムイオンを付加させ、トナー内部に一様にN,N,N−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウムイオンを存在させる事でトナー表面削れが発生しても帯電量の経時減少が少ない、また耐久性に富んだトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】SEM観察で得られた、表面がわずかに削れた分析用トナーを示す図である。
【図2】SEM観察で得られた、表面が削れて殆ど残っていない分析用トナーを示す図である。
【図3】SEM観察のEDS元素マッピングで得られた、表面がわずかに削れた分析用トナーのフッ素付加位置示す図である。
【図4】SEM観察のEDS元素マッピングで得られた、表面が削れて殆ど残っていない分析用トナーのフッ素付加位置示す図である。
【図5】X線光電子分光により得られた、分析用トナーではヨウ素のメインピークが存在しないことをしめすプロット図である。
【図6】X線光電子分光により得られた、分析用トナーのフッ素のメインピークを示すプロット図である。
【図7】X線光電子分光により得られた、分析用のトナーの窒素のメインピークをしめすプロット図である。
【図8】X線光電子分光により得られた、フッ素化合物(1)のヨウ素のメインピークを示すプロット図である。
【図9】X線光電子分光により得られた、フッ素化合物(1)のフッ素のメインピークを示すプロット図である。
【図10】X線光電子分光により得られた、フッ素化合物(1)の窒素のメインピークを示すプロット図である。
【図11】1H−NMR測定により得られた、分析用トナーのピークを示す図である。
【図12】1H−NMR測定により得られた、分析用トナー作成に用いた未変性ポリエステルのピークを示す図である。
【図13】NMR定量分析により得られた、分析用トナーの結着樹脂ポリエステル中のビスフェノールA誘導体数に対するフッ素化合物(1)分子数比の経時変化を示すプロット図である。
【図14】分析用トナーの帯電量経時変化を図示したものである。
【図15】X線光電子分光により得られた、実施例1のトナーではヨウ素のメインピークが存在しないことを示すプロット図である。
【図16】X線光電子分光により得られた、実施例1のトナーのフッ素のメインピークを示すプロット図である。
【図17】X線光電子分光により得られた、フッ素化合物(1)のヨウ素のメインピークを示すプロット図である。
【図18】X線光電子分光により得られた、フッ素化合物(1)のフッ素のメインピークを示すプロット図である。
【図19】実施例1のトナーの帯電量経時変化を図示したものである。
【図20】トナー1のSEM観察像(左)と、EDS元素マッピングで得られた左の写真の対応する位置でのフッ素付加位置を示す図(右)である。
【図21】表面が僅かに削れた分析用トナーのSEM観察像(左)と、EDS元素マッピングで得られた左の写真の対応する位置でのフッ素付加位置を示す図(右)である。
【図22】X線光電子分光により得られた、比較例1のトナーではヨウ素のメインピークが存在しないことを示すプロット図である。
【図23】X線光電子分光により得られた、比較例1のトナーのフッ素のメインピークを示すプロット図である。
【図24】X線光電子分光により得られた、フッ素化合物(1)のヨウ素のメインピークを示すプロット図である。
【図25】X線光電子分光により得られた、フッ素化合物(1)のフッ素のメインピークを示すプロット図である。
【図26】比較例1のトナーの帯電量経時変化を図示したものである。
【図27】トナー12のSEM観察像(左)と、EDS元素マッピングで得られた左の写真の対応する位置でのフッ素付加位置を示す図(右)である。
【図28】比較例2のトナーの帯電量経時変化を図示したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂及び樹脂微粒子及び帯電制御剤を含有するトナー組成物を含む溶解物または分散物を、水系溶媒中に分散させ得られた分散液から溶媒を除去することにより得られるトナーで、前記樹脂微粒子は少なくともイオン結合可能な官能基を有し、前記帯電制御剤はトナー内部で前記樹脂微粒子とイオン結合していることを特徴とする、静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記帯電制御剤は4級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記帯電制御剤は下記一般式(1)で表されるフッ素系化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
【化1】
(式中、R1〜R4は炭素数1〜10の低級アルキル基、アリール基、Xは−SO2−、−CO−、YはI、Br、n、mは正の整数を表す。)
【請求項4】
前記フッ素系化合物がN,N,N−トリメチル−〔3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル〕アンモニウム・ヨージドであることを特徴とする請求項3に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記樹脂微粒子は、カルボキシル基末端を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記結着樹脂は、ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記フッ素系化合物の含有量がトナーに対して0.05〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記結着樹脂の酸価が1〜30mgKOHであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
前記結着樹脂のガラス転移点(Tg)が40〜90℃であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
前記樹脂微粒子がビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及び/またはそれらの混合物からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項11】
前記樹脂微粒子の重量平均分子量が5000〜20万であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項12】
前記トナー粒子の体積平均粒径が4〜8μmであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項13】
前記トナー粒子の体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比Dv/Dnが1.25以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤。
【請求項15】
一成分現像剤および二成分現像剤のいずれかである請求項14に記載の現像剤。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項17】
トナーリサイクル機構を有する現像装置による画像形成方法において、請求項1〜13のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを収納した容器。
【請求項1】
少なくとも結着樹脂及び樹脂微粒子及び帯電制御剤を含有するトナー組成物を含む溶解物または分散物を、水系溶媒中に分散させ得られた分散液から溶媒を除去することにより得られるトナーで、前記樹脂微粒子は少なくともイオン結合可能な官能基を有し、前記帯電制御剤はトナー内部で前記樹脂微粒子とイオン結合していることを特徴とする、静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記帯電制御剤は4級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記帯電制御剤は下記一般式(1)で表されるフッ素系化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
【化1】
(式中、R1〜R4は炭素数1〜10の低級アルキル基、アリール基、Xは−SO2−、−CO−、YはI、Br、n、mは正の整数を表す。)
【請求項4】
前記フッ素系化合物がN,N,N−トリメチル−〔3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル〕アンモニウム・ヨージドであることを特徴とする請求項3に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記樹脂微粒子は、カルボキシル基末端を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記結着樹脂は、ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記フッ素系化合物の含有量がトナーに対して0.05〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記結着樹脂の酸価が1〜30mgKOHであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
前記結着樹脂のガラス転移点(Tg)が40〜90℃であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
前記樹脂微粒子がビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及び/またはそれらの混合物からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項11】
前記樹脂微粒子の重量平均分子量が5000〜20万であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項12】
前記トナー粒子の体積平均粒径が4〜8μmであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項13】
前記トナー粒子の体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比Dv/Dnが1.25以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤。
【請求項15】
一成分現像剤および二成分現像剤のいずれかである請求項14に記載の現像剤。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項17】
トナーリサイクル機構を有する現像装置による画像形成方法において、請求項1〜13のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを収納した容器。
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図20】
【図21】
【図27】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図20】
【図21】
【図27】
【公開番号】特開2008−225419(P2008−225419A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67883(P2007−67883)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]