説明

静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法、現像剤、及び、画像形成方法

【課題】トナー像の転写効率に優れ、残存トナーのクリーニング性を一層向上した静電荷像現像用トナーを提供すること。
【解決手段】中心粒子の表面に別の粒子が付着したトナー母粒子について、周囲長さ(PM)/円相当径(D)の比Xの数平均値が3.6以上5.0以下である静電荷像現像用トナー、好ましくは、トナー母粒子の表面に付着された粒子を有し、前記付着された粒子(付着粒子)の粒子径が、100〜500nmである静電荷像現像用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法、現像剤、及び、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスにおける画像形成は、複写するに際して、光導電性物質を用いた感光体に形成された静電潜像に、磁気ブラシ現像法等によりトナーを付着させてトナー像として現像し、該感光体上のトナー像を、紙、シート等の記録材(転写材)に転写した後、熱、溶剤、圧力等を利用して定着し、永久画像を得るものである。
このトナーを用いる画像形成では、トナー像の転写効率の維持と残存トナーのクリーニング性が重要である。
【0003】
特許文献1には、トナーの表面に架橋構造を有する樹脂組成物突起を有し、トナー母粒子の溶解性パラメーターと前記樹脂組成物との溶解度パラメーターの差が特定の範囲にあり、トナーが特定の形状係数を有し、前記突起の外径とトナー母粒子の体積平均粒子径との比を特定したトナーが記載されている。
【0004】
特許文献2には、結着樹脂及び着色剤を含有し、コアシェル構造を有する電子写真用トナーであって、コアは主として結晶性樹脂を含み、シェルはコアに対して15質量%以上120質量%以下であり、シェルは段差0.3μm以上の半球状の突起を有し、かつシェルは乳化凝集法により作製されることを特徴とする電子写真用トナー、結晶性樹脂を主成分とする結着樹脂及び着色剤を含むコアの分散液に、シェル形成用樹脂の微粒子分散液を混合し、コア表面にシェル形成用樹脂の微粒子を付着凝集させる。
【0005】
特許文献3には、少なくとも着色剤、離型剤、結着樹脂、および有機概念図I/O値を特定の数値範囲に特定した帯電制御樹脂を溶媒中に溶解または分散させ、O/W型湿式造粒方式により円形度が0.970以上の球状トナーとすると共に、そのトナー核表面に平均粒径が100nm〜500nmで、かつトナー核表面に対して被覆率10%〜80%で一体化された粒状の凸部を形成し、制御された構造の静電荷像現像用トナーが開示されている。
【0006】
特許文献4には、少なくとも、バインダ樹脂、着色剤を含んで構成されるトナーにおいて、以下の表面性状を有するトナー母体粒子に無機微粒子を付着させてなるトナーが開示されている。(1)表面粗さRaが1〜30nmであり、(2)表面粗さの標準偏差RMSが10〜90nmであり、(3)凹部の底から凸部の頂までの高低差が10nm以上の凸部の数が1〜20個/μmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−158319号公報
【特許文献2】特開2005−274964号公報
【特許文献3】特開2008−233430号公報
【特許文献4】特開2004−246344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、トナー像の転写効率に優れ、残存トナーのクリーニング性を一層向上したトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、以下の手段<1>、<7>、<8>及び<9>により解決された。好ましい実施形態<2>〜<6>と共に列記する。
<1>中心粒子の表面に別の粒子が付着したトナー母粒子であって、周囲長さ(PM)/円相当径(D)の比Xの体積平均値が3.6以上5.0以下であることを特徴とする、静電荷像現像用トナー、
<2>前記付着した粒子(付着粒子)の粒子径の体積平均値が、100〜500nmである、<1>に記載の静電荷像現像用トナー、
<3>前記中心粒子の結着樹脂が、ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂である、<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナー、
<4>前記付着粒子が有機樹脂粒子である、<1>〜<3>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、
<5>SEM観察による、前記トナー母粒子の全投影面積に対する前記付着粒子の投影面積の割合の数平均値が、20〜80%である、<1>〜<4>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、
<6>前記付着粒子が、前記中心粒子の表面から内部に前記付着粒子の直径の半分未満しか埋め込まれていない、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、
<7>少なくとも結着樹脂及び着色剤を含む分散液を凝集し凝集体を形成する凝集工程と、前記凝集体の表面に粒子を付着する粒子付着工程と、前記凝集体と付着した粒子とを融合させ合一させる融合工程と、を含む、<1>〜<6>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法、
<8><1>〜<6>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーとキャリアとを含有する、現像剤、
<9>像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー又は<8>に記載の現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を被記録媒体の表面に転写する転写工程と、転写された前記トナー像を被記録媒体に定着する定着工程と、を含む画像形成方法。
【発明の効果】
【0010】
上記<1>に記載の発明によれば、高速で多数枚の画像出力を行っても、トナー像の転写効率の低下を抑制し、かつ、クリーニング性の低下を制御可能な静電荷像現像用トナーを提供することができる。
上記<2>に記載の発明によれば、高速で多数枚の画像出力を行っても、トナー像の転写効率の低下をより抑制し、かつ、クリーニング性の低下をより制御可能な静電荷像現像用トナーを提供することができる。
上記<3>に記載の発明によれば、高速で多数枚の画像出力を行っても、トナー像の転写効率の低下をより抑制し、かつ、クリーニング性の低下をより制御可能な静電荷像現像用トナーを提供することができる。
上記<4>に記載の発明によれば、高速で多数枚の画像出力を行っても、トナー像の転写効率の低下をより抑制し、かつ、クリーニング性の低下をより制御可能な静電荷像現像用トナーを提供することができる。
上記<5>に記載の発明によれば、高速で多数枚の画像出力を行っても、トナー像の転写効率の低下をより抑制し、かつ、クリーニング性の低下をより制御可能な静電荷像現像用トナーを提供することができる。
上記<6>に記載の発明によれば、高速で多数枚の画像出力を行っても、トナー像の転写効率の低下をより抑制し、かつ、クリーニング性の低下をより制御可能な静電荷像現像用トナーを提供することができる。
上記<7>に記載の発明によれば、高速で多数枚の画像出力を行っても、トナー像の転写効率の低下をより抑制し、かつ、クリーニング性の低下をより制御可能な静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することができる。
上記<8>に記載の発明によれば、高速で多数枚の画像出力を行っても、トナー像の転写効率の低下をより抑制し、かつ、クリーニング性の低下をより制御可能な現像剤を提供することができる。
上記<9>に記載の発明によれば、高速で多数枚の画像出力を行っても、トナー像の転写効率の低下をより抑制し、かつ、クリーニング性の低下をより制御可能な画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施態様の静電荷像現像用トナーの一例を示す電子顕微鏡写真である。
【図2】本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本実施形態について説明する。
【0013】
(静電荷像現像用トナー)
本実施形態の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、中心粒子の表面に別の粒子が付着したトナー母粒子であって、周囲長さ(PM)/円相当径(D)の比Xの体積平均値が3.6以上5.0以下(3.6〜5.0)であることを特徴とする。
【0014】
なお、本実施形態において、「A〜B」との記載は、AからBの間の範囲だけでなく、その両端であるA及びBも含む範囲を表す。例えば、「A〜B」が数値範囲であれば、「A以上B以下」又は「B以上A以下」を表す。
【0015】
上記Xの測定方法は、外添剤のない状態のトナー母粒子を電子顕微鏡観察して、画像処理することにより算出される。また体積平均は、トナー粒子50個について平均値を求めたものである。外添剤の共存するトナーから外添剤のないトナー母粒子を分離する方法は、実施例に記載する。
上記Xの値が3.6未満であると、トナー粒子の表面の凹凸が少なく、転写効率及びクリーニング性に劣る傾向が見られ、また、Xの値が5.0を超えても、付着粒子の個数が多くなり粒子形状が不安定となり、転写効率及びクリーニング性に劣る傾向が見られる。 更にトナー表面に外添剤を使用した場合に、トナー粒子の表面の凹凸が多いため、外添剤が埋没しやすくなり、外添剤による効果の寄与がなくなってしまう。そのため現像剤の設計が困難となりやすい。
【0016】
図1は、本実施態様の静電荷像現像用トナーの一例を示す電子顕微鏡写真である。
図1に示すように、本実施形態の静電荷像現像用トナーは、中心粒子の表面に別の粒子が付着したトナー母粒子を含有する。トナー母粒子の円相当直径は、2〜8μmであることが好ましく、3〜7μmであることがより好ましい。このトナー母粒子の表面に付着された粒子(付着粒子)の粒子径は、体積平均で100〜500nmであることが好ましい。より好ましくは200〜500nmである。
中心粒子と付着粒子の材料等については後述する。
【0017】
以下、本実施形態に用いられるトナー構成材料やトナーの製造方法等について説明する。
【0018】
<結着樹脂>
本実施形態のトナーは、中心粒子が少なくとも結着樹脂を含有する。結着樹脂としては、特に限定はなく、付加重合系樹脂、重縮合系樹脂が例示される。この中でも、付加重合系樹脂としてエチレン性不飽和化合物の付加重合樹脂が好ましく、アクリル樹脂がより好ましく、重縮合系樹脂としてポリエステル樹脂が好ましく、ポリオールとポリカルボン酸とのポリエステル樹脂がより好ましい。
以下に詳しく述べる。
【0019】
付加重合系樹脂としては、各種エチレン性不飽和化合物の単独重合体及び共重合体が好ましく使用される。エチレン性不飽和化合物の付加重合樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン等の単独重合体又は共重合体が例示される。
特に好ましく使用される付加重合系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体が挙げられる。
【0020】
本実施形態に使用される重縮合系樹脂としては、ポリエステル樹脂が例示でき、ポリオール成分とポリカルボン酸成分から重縮合により合成される。なお、本実施形態においては、前記ポリエステル樹脂として市販品を使用してもよいし、適宜合成したものを使用してもよい。
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸、などが挙げられ、更に加えて、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられる。
三価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
さらに、前述の脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸成分を含有することがより好ましい。エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸は、エチレン性不飽和結合を介して、ラジカル的に架橋させるために定着時のホットオフセットを防ぐために好適に用いられる。このようなジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級エステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でもコストの点で、フマル酸、マレイン酸等が好ましく挙げられる。
【0022】
多価アルコール成分としては、二価のアルコールとしては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1.5〜6)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
三価以上のアルコールとしては、例えば、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
非晶性ポリエステル樹脂(「非結晶性ポリエステル樹脂」ともいう。)では、前記した原料モノマーの中でも、二価以上の第二級アルコール及び/又は二価以上の芳香族カルボン酸化合物が好ましい。二価以上の第二級アルコールとしては、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセロール等が挙げられる。これらの中では、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましい。
二価以上の芳香族カルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及びトリメリット酸が好ましく、テレフタル酸及びトリメリット酸がより好ましい。
また、軟化点90〜150℃、ガラス転移点50〜75℃、数平均分子量2,000〜10,000、重量平均分子量8,000〜150,000、酸価5〜30mgKOH/g、水酸基価5〜40mgKOH/gを示す樹脂が特に好ましく用いられる。
【0023】
また、トナーに低温定着性を付与するために結着樹脂の少なくとも一部に結晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂では、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなることが好ましく、主鎖部分の炭素数が4〜20である直鎖型ジカルボン酸、直鎖型脂肪族ジオールがより好ましい。直鎖型であると、ポリエステル樹脂の結晶性に優れ、結晶融点が適度であるため、耐トナーブロッキング性、画像保存性、及び、低温定着性に優れる。また、炭素数が4以上であると、エステル結合濃度が低く、電気抵抗が適度であり、トナー帯電性に優れる。また、20以下であると、実用上の材料の入手が容易である。前記炭素数としては14以下であることがより好ましい。
【0024】
結晶性ポリエステルの合成に好適に用いられる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、又は、その低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。これらのうち、入手容易性を考慮すると、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が好ましい。
脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、入手容易性を考慮すると1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
三価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
多価カルボン酸成分のうち、脂肪族ジカルボン酸の含有量が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。脂肪族ジカルボン酸の含有量が80モル%以上であると、ポリエステル樹脂の結晶性に優れ、融点が適度であるため、耐トナーブロッキング性、画像保存性。及び、低温定着性に優れる。
多価アルコール成分のうち、前記脂肪族ジオール成の含有量が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。前記脂肪族ジオール成の含有量が80モル%以上であると、ポリエステル樹脂の結晶性に優れ、融点が適度であるため、耐トナーブロッキング性、画像保存性、及び、低温定着性に優れる。
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調製等の目的で、酢酸、安息香酸等の一価の酸や、シクロヘキサノールベンジルアルコール等の一価のアルコールも用いられる。
【0026】
ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等が挙げられ、モノマーの種類によって使い分けて製造する。
ポリエステル樹脂は、上記多価アルコールと多価カルボン酸を常法に従って縮合反応させることによって製造してもよい。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物を取得することによって製造される。
【0027】
また、本実施形態のトナーにおける結着樹脂の含有量としては、特に制限はないが、静電荷像現像用トナーの全重量に対し、5〜95重量%であることが好ましく、20〜90重量%であることがより好ましく、40〜85重量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、定着性、保管性、粉体特性、帯電特性等に優れる。
【0028】
<離型剤>
本実施形態のトナーは、少なくとも離型剤を含有する。離型剤は、中心粒子に含有させることが好ましい。
【0029】
本実施形態に用いられる離型剤は、特に制限はなく、公知のものが用いられ、次のようなワックスから得られるものが好ましい。パラフィンワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体等である。誘導体とは酸化物、ビニルモノマーとの重合体、グラフト変性物を含む。この他に、アルコール、脂肪酸、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、エステルワックス、酸アミド等も用いられる。
【0030】
離型剤として用いられるワックスは、70〜140℃のいずれかの温度で溶融しかつ1〜200センチポアズの溶融粘度を示すことが好ましく、1〜100センチポアズの溶融粘度を示すことがより好ましい。溶融するのが70℃以上であると、ワックスの変化温度が十分高く、耐ブロッキング性、及び、複写機内温度が高まった時に現像性に優れる。140℃以下であると、ワックスの変化温度が十分低く、高温での定着を行う必要がなく、省エネルギー性に優れる。また、溶融粘度が200センチポアズ以下であると、トナーからの溶出が適度であり、定着剥離性に優れる。
【0031】
また、前記離型剤の含有量としては、トナーの全重量に対し、3〜60重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがより好ましく、7〜20重量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、トナーの加熱部材へのオフセットの防止性により優れるとともに、フィードロール汚染の防止性により優れる。
【0032】
<着色剤>
本実施形態のトナーは、着色剤を含有することが好ましい。着色剤は、中心粒子に含有させることが好ましい。
着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシン、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーン・オキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド238、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3などが代表的なものとして例示される。
着色剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用される。
【0033】
本実施形態のトナーにおいて、着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透過性、トナー中での分散性の観点から選択される。着色剤の添加量は、特に制限はないが、トナーの全重量に対して、3〜60重量%の範囲内が好適である。
【0034】
<その他のトナー添加剤>
本実施形態のトナーには、前記したような成分以外にも、更に必要に応じて内添剤、帯電制御剤、無機粉体(無機粒子)、有機粒子等の種々の成分を添加してもよい。
内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、またはこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。
帯電制御剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロムなどの錯体からなる染料、トリフェニルメタン系顔料などが挙げられる。
また、無機粉体は、主にトナーの粘弾性調整を目的としてトナーに添加され、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、燐酸カルシウム、酸化セリウム等の下記に詳細に列挙するような通常、トナーの外添剤として使用されるすべての無機粒子が挙げられる。
【0035】
本実施形態のトナー母粒子の体積平均粒径は、2〜8μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。上記範囲であると、帯電性、現像性、及び、画像の解像性に優れる。
【0036】
また、本実施形態のトナー母粒子は、体積平均粒度分布指標GSDvが1.28以下であることが好ましい。体積分布指標GSDvが1.28以下であると、画像の解像性に優れる。
なお、本実施形態において、トナーの粒径や、上記した体積平均粒度分布指標GSDvの値は、次のようにして測定し算出した。まず、コールターカウンターTAII(ベックマン・コールター社製)、マルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)等の測定器を用いて測定されたトナーの粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、個々のトナー粒子の体積について小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を、体積平均粒子径D16vと定義し、累積50%となる粒径を、体積平均粒子径D50vと定義する。同様に、累積84%となる粒径を、体積平均粒子径D84vと定義する。この際、体積平均粒度分布指標(GSDv)は、D84v/D16vとして定義されるこれらの関係式を用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)を算出される。
【0037】
また、本実施形態のトナー母粒子は、形状係数SF1(=((トナー径の絶対最大長)2/トナーの投影面積)×(π/4)×100)が、110〜160の範囲が好ましく、110〜140の範囲がより好ましい。
なお、形状係数SF1の値は、トナーの丸さを示すものであり、真球の場合は100となり、トナーの形状が不定形になるに従って増大するものである。また、形状係数SF1を用いた算出に際して必要となる値、すなわち、トナー径の絶対最大長、トナーの投影面積は光学顕微鏡((株)ニコン製、Microphoto−FXA)を用いて倍率500倍に拡大したトナー粒子像を撮影し、得られた画像情報を、インターフェースを介して、例えば、(株)ニレコ製画像解析装置(LuzexIII)に導入して画像解析を行って求めた。なお、形状係数SF1の平均値は、無作為にサンプリングした1,000個のトナー粒子を測定して得られたデータを元にして算出した。
形状係数SF1が110以上であると、画像形成の際に転写工程での残存トナーの発生が抑制され、ブレード等によりクリーニングする際のクリーニング性に優れ、結果として画像欠陥が抑制される。一方、形状係数SF1が160以下であると、トナーを現像剤として使用する場合に、現像器内でのキャリアとの衝突によりトナーが破壊されることを防止し、結果として微粉の発生を抑制し、これによってトナー表面に露出した離型剤成分により感光体表面等が汚染されることを防ぎ、帯電特性に優れるばかりでなく、微粉に起因するかぶりの発生等が抑制される。
【0038】
<付着粒子>
本実施形態のトナーにおいて、中心粒子の表面に別の粒子が付着したトナー母粒子について、周囲長さ(PM)/円相当径(D)の比Xの体積平均値が3.6以上5.0以下とするためには、トナー母粒子の表面に付着している粒子(付着粒子)の粒子径の体積平均値が、100〜500nmであることが好ましい。
【0039】
また、前記付着粒子は、有機樹脂粒子であることが好ましい。以下、付着粒子が有機樹脂粒子である場合を中心にして説明する。
上記の付着粒子として使用する有機樹脂粒子としては、付加重合系樹脂及び重縮合系樹脂が例示される。この中でも、付加重合系樹脂としてアクリル樹脂が好ましく、重縮合系樹脂としてポリエステル樹脂が好ましい。アクリル樹脂粒子として、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を主たるモノマー単位とすることが好ましい。
付着粒子として使用する有機樹脂粒子は、付着させる凝集粒子を構成する結着樹脂と化学組成が同じでも異なっていてもよい。
【0040】
本実施形態において、付着粒子として好ましく使用される有機樹脂粒子は、架橋されていても、架橋されていなくてもよいが、架橋されていないことが好ましい。
有機樹脂粒子は、トナー母粒子に固定されている。この点で、流動化剤であり、トナー母粒子に固定されていない外添剤とは異なる。
【0041】
<トナー形状>
本実施形態のトナー粒子は、SEM観察による、トナー母粒子の全投影面積に対する前記付着粒子の投影面積の割合の数平均値が、20〜80%であることが好ましく、30〜60%であることが好ましい。
また、本実施形態のトナー粒子は、前記付着粒子が、中心粒子の表面から内部に前記付着粒子の直径の半分未満しか埋め込まれていないことが好ましく、前記付着粒子の直径の1/4以下しか埋め込まれていないことがより好ましい。付着粒子の埋め込み程度は、トナー粒子の電子顕微鏡写真撮影により判別できる。
【0042】
<静電荷像現像用トナーの製造方法>
本実施形態のトナーの製造方法は、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含む分散液を凝集し凝集体を形成する凝集工程と、前記凝集体の表面に粒子を付着する粒子付着工程と、前記凝集体と付着した粒子を融合させ合一させる融合工程と、を含む。
上記凝集工程において、結着樹脂及び着色剤に加えて離型剤粒子を含む分散液を凝集し凝集体を形成することが好ましい。
【0043】
上記の粒子付着工程は、トナーのコア粒子を形成するコア粒子形成工程の後に、前記コア粒子の表面にシェル層を被覆し、その後コア粒子の外側に付着粒子を付着する工程であることが好ましい。好ましくはシェル層の被覆工程後に、100〜500nmの付着粒子を添加し、コア粒子に付着させた方がよい。同時に添加した場合には、コア及びシェル層に埋没しやすくなり、周囲長さ(PM)/円相当径(D)の比Xの体積平均値が低下する傾向にある。付着粒子添加量はトナーに対し10〜40%であることが好ましく、10〜30%がより好ましい。10%以上を添加することで、周囲長さ(PM)/円相当径(D)の比Xの体積平均値を所定の値にすることができ、転写性とクリーニング性の両立が可能となる。また40%以下では、トナー表面の凹凸が適切になり、外添剤の埋没が抑制され、現像剤の設計が容易となりやすい。
この場合、コア粒子の形成とシェル層の被覆に使用する結着樹脂の分散液は同種の結着樹脂を含む分散液であっても、異種の結着樹脂を含む分散液であってもよい。
【0044】
トナーのコア粒子を作製する方法として、好ましくは、懸濁重合法、乳化凝集法、シード重合法、膨潤重合法など、水系媒体中で重合性単量体粒子の重合及び/又は重合体粒子を形成してトナーを製造する方法が挙げられる。更にはコア粒子に粒子を含むシェル層を被覆した構造を有するトナーの作製が容易である点から、湿式製法、特に乳化凝集法を利用することが好ましい。
乳化凝集法では、乳化重合、又は、乳化によって作製された樹脂粒子分散体に着色剤や電荷調整剤、離型剤などの水分散体等トナーに必要とされる機能を付与するための添加剤の分散体を水系媒体中で混合して、水系媒体中でホモミキサーなどの各種の分散機を用いて機械的に剪断をしながら凝集剤等を用いて分散体を凝集成長をさせ、更に樹脂粒子を融合させてコア粒子を形成する工程を経てトナー粒子を得る。
【0045】
本実施形態における乳化凝集法は、コア粒子である凝集体を形成する工程と、この凝集体の表面に多数の粒子が突起した状態で付着する粒子付着工程とからなる。
コア粒子である凝集体を形成する前段の工程においては、第1の結着樹脂からなり、体積平均粒径が1μm以下である第1の樹脂粒子を分散した第1の樹脂粒子分散液と、着色剤を分散した着色剤粒子分散液とを少なくとも混合した混合分散液に、凝集剤を添加し、加熱することにより凝集体を形成する凝集工程と、前記凝集体を融合させ合一させる融合工程とを含む。
合一された凝集体の表面に粒子を付着する後段の工程においては、合一された凝集体がコア粒子として形成された混合分散液に、第2の結着樹脂からなり、体積平均粒径が1μm以下である第2の樹脂粒子を分散した第2の樹脂粒子分散液を添加して、コア粒子の表面に、第2の樹脂粒子を付着させながら被覆する工程である。更にトナー表面に凹凸をつけるため、多数の付着粒子をコア粒子の表面に付着させる付着工程である。粒子付着工程の後に、粒子が付着したコアシェル粒子全体を融合させ合一させる融合工程を含むものであることが好ましい。
【0046】
なお、凝集工程においては、混合分散液中の各種粒子成分を凝集させただけのコア粒子(コア凝集粒子)を形成してもよく、加熱温度を第1の結着樹脂のガラス転移温度よりも高くして凝集と同時に融合させたコア粒子(コア融合粒子)を形成してもよい。また、融合工程は、第1又は第2の結着樹脂のガラス転移温度のいずれか高い方の温度以上に加熱することにより実施してもよいが、粒子を付着したシェル付け凝集粒子がコア融合粒子を用いて形成されている場合には、機械的ストレスを利用して融合してもよい。なお、これらの工程の詳細については後述する。
【0047】
一般に、乳化凝集法は、乳化重合、又は、乳化により樹脂分散液を作製し、一方で、離型剤を分散した離型剤粒子分散液、好ましくは溶媒に着色剤を分散させた着色剤粒子分散液を作製して、これらを混合して凝集粒子を形成させた後(凝集工程)、加熱することによって融合させ合一させて(融合工程)、トナー粒子を得る方法である。なお、本実施形態においては、凝集工程の後、融合工程の前に、凝集粒子の表面に更に多数の樹脂粒子、好ましくは有機樹脂粒子を付着させる、付着工程を有する。
【0048】
次に本実施形態のトナーを製造する際に好適なトナー製造方法について更に詳細に説明する。
【0049】
−トナーの製造方法−
次に、上述した凝集工程、付着工程、及び、融合工程を含む本実施形態に用いられるトナーの製造方法について、各工程毎により詳細に説明する。
【0050】
−凝集工程−
凝集工程においては、まず、第1の結着樹脂分散液、離型剤分散液、好ましくは着色剤分散液や、その他の成分を混合して得られた混合分散液に凝集剤を添加し、第1の結着樹脂の融点よりもやや低めの温度にて加熱することにより、各々の成分からなる粒子を凝集させた凝集粒子(コア凝集粒子)を形成する。なお、第1の結着樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱して、凝集と同時に融合も行い、融合粒子(コア融合粒子)を形成してもよい。
【0051】
凝集粒子の形成は、回転剪断型ホモジナイザーで撹拌下、室温で凝集剤を添加することにより行う。凝集工程に用いられる凝集剤は、各種分散液の分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、二価以上の金属錯体が好適に用いられる。
特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に好ましい。
【0052】
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が一価より二価、二価より三価、三価より四価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
【0053】
−粒子付着工程−
粒子付着工程では、上記した凝集工程を経て形成された第1の結着樹脂を含むコア粒子(コア凝集粒子、あるいは、コア融合粒子)の表面又は外側に、第2の結着樹脂からなる樹脂粒子及び付着粒子を付着させることにより被覆層を形成する(以下、コア粒子表面に被覆層を設けた凝集粒子を「粒子付着凝集粒子」ともいう。)。ここで、この被覆層は、後述する融合工程を経て形成される本実施形態のトナーのシェル層に相当するものである。
なお、シェル層を含むコア粒子は、中心粒子に相当する。
被覆層(シェル層)の形成は、凝集工程においてコア粒子を形成した分散液中に、第2の樹脂粒子の分散液を追添加することにより行うことができる。更に付着粒子、好ましくは有機樹脂粒子を追添加することで、トナー表面に凹凸をつけることができる
被覆層の形成に使用する第2の結着樹脂固形分重量と付着粒子重量とは、第2の結着樹脂/付着粒子=0.2〜5.0の範囲にあることが好ましい。
付着粒子の樹脂のガラス転位温度のTgAと第2の結着樹脂のTgBとの関係は、TgA>TgBであることが好ましい。TgAがTgBより高いと融合工程においてトナー表面に凹凸をつけやすくなる。
【0054】
第2の結着樹脂からなる樹脂粒子及び付着粒子を、前記コア粒子の表面に均一に付着させて被覆層を形成し、得られた粒子付着凝集粒子を後述する融合工程において加熱融合すると、コア粒子の表面の被覆層に含まれる第2の結着樹脂からなる樹脂粒子が溶融してシェル層が形成される。このため、シェル層の内側に位置するコア層に含まれる離型剤等の成分が、トナーの表面へと露出することを効果的に防止される。
粒子付着工程における、付着粒子を含む第2の樹脂粒子分散液の添加混合の方法としては、第2の結着樹脂からなる樹脂粒子を先に添加した後に、付着粒子を添加した方が好ましい。ただしそれ以外の条件については特に制限はなく、例えば、徐々に連続的に行ってもよいし、複数回に分割して段階的に行ってもよい。このようにして、第2の樹脂粒子分散液を添加混合することにより、微小な粒子の発生を抑制し、得られるトナーの粒度分布をシャープになる。
本実施形態において、第2の結着樹脂からなる樹脂粒子の付着工程が行われる回数としては、1回であってもよいし、複数回であってもよい。前者の場合、前記コア凝集粒子の表面に第2の結着樹脂を主成分とする層が1層のみ形成される。これに対し、後者の場合、第2の樹脂粒子分散液だけでなく、剥離剤分散液や、その他の成分からなる粒子分散液を複数利用すれば、コア凝集粒子表面に、特定の成分を主成分とする層が積層形成される。
【0055】
後者の場合、複雑かつ精密な階層構造を有するトナーを得ることができ、トナーに所望の機能を付与し得る点で有利である。前記付着工程を複数回行ったり、多段階で実施する場合、得られるトナーの表面から内部にかけての組成や物性を段階的に変化させることができ、トナーの構造が容易に制御される。この場合、コア粒子の表面に段階的に複数の層が積層され、トナーの粒子の内部から外部にかけて構造変化や組成勾配をもたせられ、物性を変化させられる。また、この場合、シェル層は、コア粒子の表面に積層された全ての層に相当し、最も外側の層は、第2の結着樹脂を主成分とする層から構成される。なお、以下の説明においては、付着工程が1回のみである場合を前提として説明する。
【0056】
前記コア粒子に第2の結着樹脂からなる樹脂粒子を付着させる条件は、以下の通りである。即ち、付着工程における加熱温度としては、コア凝集粒子中に含まれる第1の結着樹脂の融点近傍の温度であることが好ましく、具体的には融点±10℃以内の温度範囲であるのが好ましい。
加熱温度が(第1の結着樹脂の融点−10℃)以上の温度であると、コア粒子表面に存在する第1の結着樹脂からなる樹脂粒子と、コア凝集粒子表面に付着した第2の結着樹脂からなる樹脂粒子との付着が良好であり、その結果、形成されるシェル層の厚みが均一になる。
また、加熱温度が(第1の結着樹脂の融点+10℃)以下の温度であると、コア粒子表面に存在する第1の結着樹脂からなる樹脂粒子と、コア粒子表面に付着した第2の結着樹脂からなる樹脂粒子とが付着が抑制され、得られるトナー芯粒子は、粒径/粒度分布に優れる。
付着工程における加熱時間としては、加熱温度に依存するので一概に規定することはできないが、5分〜2時間であることが好ましい。
【0057】
なお、付着工程においては、コア粒子が形成された混合分散液に第2の樹脂粒子分散液を追添加した分散液は、静置されていてもよいし、ミキサー等により穏やかに撹拌されていてもよい。後者の場合の方が、均一な付着樹脂凝集粒子が形成され易い点で有利である。
【0058】
−融合工程−
融合工程においては、加熱を行うことにより付着工程で得られた付着樹脂凝集粒子を融合させる。融合工程は、第1の結着樹脂及び第2の結着樹脂のガラス転移温度のうち、いずれか高い方の温度以上で好ましく実施される。融合の時間としては、加熱の温度が高ければ短い時間で足り、加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。すなわち、融合の時間は、加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、30分〜10時間であることが好ましい。
【0059】
また、コア粒子がコア融合粒子である場合には、第2の結着樹脂からなる樹脂粒子を付着させてもよい。この場合は、コア融合粒子を含む分散液を、一旦ろ過し、分散液の水分率を30重量%〜50重量%に制御したのち、更に第2の樹脂粒子分散液を加える。これにより、コア融合粒子の表面に第2の結着樹脂からなる粒子を付着させる。
分散液の水分率が30重量%以上であると、第2の結着樹脂からなる粒子の付着性が良好であり、この粒子のコア融合粒子の遊離が抑制される。また、水分率が50重量%以下であると、撹拌が容易であり、コア融合粒子表面に第2の結着樹脂からなる粒子が均一に付着される。
【0060】
なお、コア融合粒子の表面に第2の結着樹脂からなる粒子及び付着粒子を付着させて得られた粒子付着凝集粒子に、後述の洗浄/乾燥工程終了後に、ヘンシェルミキサー等による機械的なストレスを加えることによって、コア融合粒子表面に付着した第2の結着樹脂からなる粒子を融合させる。このように、液相中での加熱の代わりに機械的ストレスを加えることによって融合工程を行ってもよい。
【0061】
−洗浄/乾燥工程−
融合工程を経て得られた融合粒子は、ろ過などの固液分離や、洗浄、乾燥を実施することが好ましい。これにより外添剤が添加されない状態のトナーが得られる。
前記固液分離は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好ましい。前記洗浄は、帯電性の点から十分にイオン交換水による置換洗浄を施すことが好ましい。乾燥工程では、通常の振動型流動乾燥法、スプレードライ法、凍結乾燥法、フラッシュジェット法など、任意の方法が採用される。トナーの粒子は、乾燥後の含水分率を、1.0重量%以下に調整することが好ましく、0.5重量%以下に調整することがより好ましい。
【0062】
−分散液の調製−
前記結着樹脂分散液を作製するには公知の乳化方法を用いられるが、得られる粒度分布がシャープであり、かつ体積平均粒径が0.08〜0.40μmの範囲に得やすい転相乳化法が有効である。
転相乳化法は、樹脂を溶かす有機溶剤、更に両親媒性の有機溶剤の単独、又は混合溶剤に樹脂を溶かして油相とする。その油相を撹拌しながら塩基性化合物を少量滴下し、更に撹拌しながら水を少しずつ滴下し、油相中に水滴が取り込まれる。次に水の滴下量がある量を超えると油相と水相が逆転して油相が油滴となる。その後、減圧化の脱溶剤工程を経て水分散液が得られる。
ここで両親媒性の有機溶剤とは、20℃における水に対する溶解性が好ましくは5g/L以上であり、より好ましくは10g/L以上であるものをいう。この溶解性が5g/L以上であると、水性化処理速度の加速効果に優れ、得られる水分散体も貯蔵安定性に優れる。
【0063】
また、かかる有機溶剤としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、更には、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が例示される。
これらの溶剤は、1種単独で使用しても、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0064】
次に塩基性化合物に関しては、本実施形態において、結着樹脂として用いられるポリエステル樹脂は、水媒体に分散させる際に塩基性化合物で中和されることが好ましい。本実施形態においては、ポリエステル樹脂のカルボキシル基との中和反応が水性化の起動力であり、しかも生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって、粒子間の凝集が防止される。
塩基性化合物としては、アンモニア、沸点が250℃以下の有機アミン化合物等が挙げられる。
好ましい有機アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げられる。
【0065】
塩基性化合物は、ポリエステル樹脂中に含まれるカルボキシル基に応じて、少なくとも部分中和し得る量、すなわち、カルボキシル基に対して0.2〜9.0倍モル当量を添加することが好ましく、0.6〜2.0倍モル当量を添加することがより好ましい。0.2倍当量以上であると、塩基性化合物添加の効果が十分得られ、9.0倍モル当量以下であると、油相の親水性が適度であり、粒径分布が狭い良好な分散液を得られる。
【0066】
前記離型剤分散液は、少なくとも離型剤を分散させてなる。分散させる離型剤は、前述したように、予め溶融混合工程により、シロキサン結合を有する有機珪素化合物が複合化されて存在する離型剤である。
離型剤は、公知の方法で分散されるが、例えば、回転剪断型ホモジナイザーやボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。また、離型剤は、極性を有するイオン性界面活性剤を用い、既述したようなホモジナイザーを用いて水系溶媒中に分散し、離型剤粒子分散液を作製してもよい。本実施形態において、離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記離型剤粒子の平均粒径としては、1.0μm以下が好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。
【0067】
前記着色剤分散液は、少なくとも着色剤を分散させてなる。
着色剤は、公知の方法で分散されるが、例えば、回転剪断型ホモジナイザーやボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。また、着色剤は、極性を有するイオン性界面活性剤を用い、既述したようなホモジナイザーを用いて水系溶媒中に分散し、着色剤粒子分散液を作製してもよい。着色剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記着色剤の体積平均粒径(以下、単に平均粒径ということがある。)としては、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.01〜0.5μmが特に好ましい。
【0068】
前記樹脂粒子の樹脂と、前記離型剤と、前記着色剤との組み合わせとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜自由に選択して用いられる。
本実施形態においては、目的に応じて、前記結着樹脂分散液、前記離型剤分散液、及び前記着色剤分散液の少なくともいずれかに、内添剤、帯電制御剤、無機粒体、有機粒体、滑剤、研磨材などのその他の成分(粒子)を分散させてもよい。その場合、前記結着樹脂分散液、離型剤分散液及び着色剤分散液の少なくともいずれかの中に、その他の成分(粒子)を分散させてもよいし、樹脂粒子分散液、離型剤分散液、及び着色剤分散液を混合してなる混合液中に、その他の成分(粒子)を分散させてなる分散液を混合してもよい。
【0069】
前記結着樹脂分散液、前記離型剤分散液、前記着色剤分散液及び前記その他の成分における分散媒としては、例えば、水系媒体などが挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。好適な組み合わせとしては、蒸留水、イオン交換水を用いることが好ましい。樹脂粒子、着色剤粒子及び離型剤粒子等、各々の分散粒子の水系媒体中における安定性、ひいては分散液の保存性の点で界面活性剤の添加は有利であるだけでなく、凝集工程における前記凝集粒子の安定性の点からも有利である。
また、着色剤の水系媒体中での分散安定性をより安定化させ、トナー中での着色剤のエネルギーを低くするために添加する分散剤として、ロジン、ロジン誘導体、カップリング剤、高分子分散剤などが挙げられる。
【0070】
本実施形態においては、分散安定性向上のため、水系媒体に界面活性剤を添加混合しておくのが好ましい。
このようにして得られた粒子分散液の体積平均一次粒子径は、例えば、レーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700、(株)堀場製作所製)で測定することが挙げられる。測定法としては分散液となっている状態の試料を固形分で約2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、約40mlにする。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、約2分待って、セル内の濃度がほぼ安定になったところで測定する。得られたチャンネルごとの体積一次粒径を、体積一次粒径の小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均一次粒径とした。
【0071】
−外添工程−
トナー母粒子の表面にシリカ、チタニアなどの無機粒子を外添する方法としては、特に制限はなく、公知の方法が用いられ、例えば、機械的方法、又は、化学的方法で付着させる方法が挙げられる。
【0072】
(静電荷像現像剤)
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、静電荷像現像剤として使用される。
本実施形態の静電荷像現像剤は、本実施形態の静電荷像現像用トナーを含有すること以外は、特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成を取り得る。本実施形態の静電荷像現像用トナーを、単独で用いると一成分系の静電荷像現像剤として調製され、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像剤として調製される。
一成分系現像剤として、現像スリーブ又は帯電部材と摩擦帯電して、帯電トナーを形成して、静電潜像に応じて現像する方法も適用される。
【0073】
本実施形態において、現像方式は特に規定されるものではないが二成分現像方式が好ましい。また上記条件を満たしていれば、キャリアは特に規定されないが、キャリアの芯材としては、例えば、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、これらとマンガン、クロム、希土類等との合金、及び、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられるが、芯材表面性、芯材抵抗の観点から、フェライト、特にマンガン、リチウム、ストロンチウム、マグネシウム等との合金が好ましく挙げられる。
【0074】
本実施形態で用いるキャリアは、芯材表面に樹脂を被覆してなることが好ましい。前記樹脂としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択される。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン等のポリビニル系樹脂及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂、等のそれ自体公知の樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本実施形態においては、これらの樹脂の中でも、フッ素系樹脂及び/又はシリコーン樹脂を少なくとも使用することが好ましい。前記樹脂として、フッ素系樹脂及び/又はシリコーン樹脂を少なくとも使用すると、トナーや外添剤によるキャリア汚染(インパクション)の防止効果が高い点で有利である。
前記樹脂による被膜は、前記樹脂中に樹脂粒子及び/又は導電性粒子が分散されていることが好ましい。前記樹脂粒子としては、例えば、熱可塑性樹脂粒子、熱硬化性樹脂粒子等が挙げられる。これらの中でも、比較的硬度を上げることが容易な観点から熱硬化性樹脂が好ましく、トナーに負帯電性を付与する観点からは、N原子を含有する含窒素樹脂による樹脂粒子が好ましい。なお、これらの樹脂粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記樹脂粒子の平均粒径としては、0.1〜2μmが好ましく、0.2〜1μmがより好ましい。前記樹脂粒子の平均粒径が0.1μm以上であると、前記被膜における樹脂粒子の分散性に優れ、一方、2μm以下であると、前記被膜から樹脂粒子の脱落が生じにくい。
【0075】
前記導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属粒子、カーボンブラック粒子、更に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズ、カーボンブラック、金属等で覆った粒子等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性、コスト、導電性等が良好な点で、カーボンブラック粒子が好ましい。前記カーボンブラックの種類としては、特に制限はないが、DBP吸油量が50〜250ml/100gであるカーボンブラックが製造安定性に優れて好ましい。芯材表面への、前記樹脂、前記樹脂粒子、前記導電性粒子による被覆量は、0.5〜5.0重量%であることが好ましく、0.7〜3.0重量%であることがより好ましい。
【0076】
前記被膜を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、架橋性樹脂粒子等の前記樹脂粒子及び/又は前記導電性粒子と、マトリックス樹脂としてのスチレンアクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等の前記樹脂とを溶剤中に含む被膜形成用液を用いる方法等が挙げられる。
具体的には前記キャリア芯材を、前記被膜形成用液に浸漬する浸漬法、被膜形成用液を前記キャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、前記キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で前記被膜形成用液を混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態において、ニーダーコーター法が好ましい。
【0077】
前記被膜形成用液に用いる溶剤としては、マトリックス樹脂としての前記樹脂のみを溶解することが可能なものであれば、特に制限はなく、それ自体公知の溶剤の中から選択され、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等が挙げられる。前記被膜に前記樹脂粒子が分散されている場合において、その厚み方向及びキャリア表面の接線方向に、前記樹脂粒子及びマトリックス樹脂としての前記粒子が均一に分散しているため、前記キャリアを長期間使用して前記被膜が摩耗したとしても、常に未使用時と同様な表面形成を保持でき、前記トナーに対し、良好な帯電付与能力を長期間にわたって維持される。また、前記被膜に前記導電性粒子が分散されている場合においては、その厚み方向及びキャリア表面の接線方向に、前記導電性粒子及びマトリックス樹脂としての前記樹脂が均一に分散しているため、前記キャリアを長期間使用して前記被膜が摩耗したとしても、常に未使用時と同様な表面形成を保持でき、キャリア劣化が長期間防止される。なお、前記被膜に前記樹脂粒子と前記導電性粒子とが分散されている場合において、上述の効果が同時に発揮される。
【0078】
以上のように形成された磁性キャリア全体の104V/cmの電界下における磁気ブラシの状態での電気抵抗は108〜1013Ωcmであることが好ましい。磁性キャリアの該電気抵抗が108Ωcm以上であると、像担持体上の画像部にキャリアの付着が抑制され、また、ブラシマークが出にくい。一方、磁性キャリアの該電気抵抗が1013Ωcm以下であると、エッジ効果の発生が抑制され、良好な画質が得られる。
なお、体積固有抵抗は以下のように測定する。
エレクトロメーター(KEITHLEY社製、商品名:KEITHLEY 610C)及び高圧電源(FLUKE社製、商品名:FLUKE 415B)と接続された一対の20cm2の円形の極板(鋼製)である測定治具の下部極板上に、サンプルを厚さ約1mm〜3mmの平坦な層を形成するように載置する。次いで上部極板をサンプルの上にのせた後、サンプル間の空隙をなくすため、上部極板上に4Kgの重しをのせる。この状態でサンプル層の厚さを測定する。次いで、両極板に電圧を印加することにより電流値を測定し、次式に基づいて体積固有抵抗を計算する。
体積固有抵抗=印加電圧×20÷(電流値−初期電流値)÷サンプル厚
上記式中、初期電流は印加電圧0のときの電流値であり、電流値は測定された電流値を示す。
【0079】
二成分系の静電荷像現像剤における本実施形態のトナーとキャリアとの混合割合は、キャリア100重量部に対して、トナー2〜10重量部であることが好ましい。また、現像剤の調製方法は、特に限定されないが、例えば、Vブレンダー等で混合する方法等が挙げられる。
【0080】
(画像形成方法)
また、静電荷像現像剤(静電荷像現像用トナー)は、静電荷像現像方式(電子写真方式)の画像形成方法に使用される。
本実施形態の画像形成方法は、前記像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記像保持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像用トナー又は静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記像保持体表面に形成された前記トナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、転写された前記トナー像を被記録媒体に定着する定着工程と、を含むことを特徴とする。
【0081】
前記各工程は、それ自体一般的な工程であり、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。なお、本実施形態の画像形成方法は、それ自体公知のコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施される。
【0082】
前記帯電工程は、像保持体を帯電させる工程である。
前記潜像形成工程は、像保持体表面に静電潜像を形成する工程である。
前記現像工程は、前記像保持体表面に形成された前記静電潜像を本実施形態の静電荷像現像用トナー又は本実施形態の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する工程である。
前記転写工程は、前記トナー像を被転写体上に転写する工程である。
前記定着工程は、加熱部材と加圧部材との間に未定着の前記トナー像が形成された前記被転写体を通過させ前記トナー像を定着する工程である。
【0083】
前記定着工程において用いられる加熱部材としては、少なくとも最表層の表面エネルギーが30×10-3N/m以上3,000×10-3N/m以下であり、300×10-3N/m以上1,500×10-3N/m以下であることが好ましい。
このように表面エネルギーの高い加熱部材は、金属材又は無機材により形成されていることが好ましく、金属材により形成されていることがより好ましい。
加熱部材を形成する金属材としては、Fe、Cr、Cu、Ni、Co、Mn、Al、ステンレスなどのこれらの合金、及びこれらの酸化物などが挙げられ、中でも、Al、ステンレスが好ましく、Alがより好ましい。
加熱部材を形成する無機材としては、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。
なお、加熱部材は、少なくともその最表層が前記金属材又は無機材により形成されているものであることが好ましい。例えば、加熱部材の全体が前記金属材又は無機材により形成されていてもよいし、加熱部材の最表層が前記金属材又は無機材により形成され、最表層以外の部分が他の材料により形成されていてもよい。
加熱部材の形状としては、例えば、円筒状のロール形状が挙げられる。
【0084】
定着工程において、加熱部材は、離型剤の融点以上に加熱され、トナーに含有される離型剤が加熱部材により溶融状態となる。定着工程における加熱部材の温度は、130〜170℃であることが好ましく、140〜160℃であることがより好ましい。上記範囲であると、トナーに含有される離型剤が確実に溶融状態となる。
本実施形態に用いられる離型剤は、前述の通り、シロキサン結合を有する有機珪素化合物を含有し、溶融状態での加熱部材との接触角が50°以下である。このため、トナーから溶出した離型剤が高い親和性でムラなく加熱部材に広がり、かつ、次に画像形成を行った用紙などの被記録媒体への離型剤の移行が低減される。こうして、画像形成後の被記録媒体を搬送するフィードロールの離型剤による汚染が抑制され、連続運転時の動作不良が抑制される。
【0085】
(画像形成装置)
本実施形態の画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体を帯電させる帯電手段と、前記像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像用トナー又は静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像保持体表面に形成された前記トナー像を被転写体表面に転写する転写手段と、加熱部材と加圧部材との間に未定着の前記トナー像が形成された前記被転写体を通過させ前記トナー像を定着する定着手段と、を有することを特徴とする。
【0086】
前記像保持体、及び、前記の各手段は、前記の画像形成方法の各工程で述べた構成を好ましく用いられる。
前記の各手段は、いずれも画像形成装置において公知の手段が利用される。また、本実施形態で用いる画像形成装置は、前記した構成以外の手段や装置等を含むものであってもよい。また、本実施形態で用いる画像形成装置は前記した手段のうちの複数を同時に行ってもよい。
【0087】
(トナーカートリッジ及びプロセスカートリッジ)
本実施形態のトナーカートリッジは、本実施形態の静電荷像現像用トナーを少なくとも収容しているトナーカートリッジである。本実施形態のトナーカートリッジは、本実施形態の静電荷像現像用トナーを静電荷像現像剤として収納していてもよい。
また、本実施形態のプロセスカートリッジは、像保持体表面上に形成された静電潜像を前記静電荷像現像用トナー又は前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、像保持体、前記像保持体表面を帯電させるための帯電手段、及び、前記像保持体表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、を備え、本実施形態の静電荷像現像用トナー、又は、本実施形態の静電荷像現像剤を少なくとも収容しているプロセスカートリッジである。
【0088】
本実施形態のトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能であることが好ましい。すなわち、トナーカートリッジが着脱可能な構成を有する画像形成装置において、本実施形態のトナーを収納した本実施形態のトナーカートリッジが好適に使用される。
また、トナーカートリッジは、トナー及びキャリアを収納するカートリッジであってもよく、トナーを単独で収納するカートリッジとキャリアを単独で収納するカートリッジとを別体としたものでもよい。
【0089】
本実施形態のプロセスカートリッジは、画像形成装置に脱着されることが好ましい。
また、本実施形態のプロセスカートリッジは、その他必要に応じて、除電手段等、その他の部材を含んでもよい。
トナーカートリッジ及びプロセスカートリッジとしては、公知の構成を採用してもよく、例えば、特開2008−209489号公報、及び、特開2008−233736号公報等が参照される。
【0090】
(画像形成装置の例)
本実施形態の画像形成装置の一例について図3を参照しながら説明するが、何ら本実施形態を限定するものではない。図3は本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
【0091】
図3において、複写機により構成された画像形成装置U1の上端のプラテンガラスPG上面には、自動原稿搬送装置U2が載置されている。前記自動原稿搬送装置U2は、複写しようとする複数の原稿Giが重ねて載置される原稿給紙トレイTG1を有している。前記原稿給紙トレイTG1に載置された複数の各原稿Giは、順次プラテンガラスPG上の複写位置を通過して原稿排紙トレイTG2に排出されるように構成されている。前記自動原稿搬送装置U2は、その後端部(−X端部)に設けた左右方向に延びるヒンジ軸(図示せず)により前記画像形成装置U1に対して回動可能であり、原稿Giを作業者が手でプラテンガラスPG上に置く際に上方に回動される。
【0092】
前記画像形成装置U1は、ユーザがコピースタート等の作動指令信号を入力操作するUI(ユーザインタフェース)を有している。画像形成装置U1上面の透明なプラテンガラスPGの下方に配置された原稿読取装置IITは、プラテンレジ位置(OPT位置)に配置された露光系レジセンサ(プラテンレジセンサ)Sp、及び露光光学系Aを有している。前記露光光学系Aは、その移動及び停止が露光系レジセンサSpの検出信号により制御され、常時はホーム位置に停止している。前記自動原稿搬送装置U2によりプラテンガラスPG上面の露光位置を通過する原稿Gi又は手動でプラテンガラスPG上に置かれた原稿からの反射光は、前記露光光学系Aを介して、固体撮像素子CCDでR(赤)、G(緑)、B(青)の電気信号に変換される。
【0093】
イメージプロセッシングシステムIPSは、固体撮像素子CCDから入力される前記RGBの電気信号をK(黒)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の画像データに変換して一時的に記憶し、前記画像データを所定のタイミングで潜像形成用の画像データとしてレーザー駆動回路DLに出力する。レーザー駆動回路DLは、入力された画像データに応じてレーザー駆動信号を潜像形成装置ROSに出力する。前記イメージプロセッシングシステムIPS及びレーザー駆動回路DLの作動は、マイコンにより構成されたコントローラCにより制御される。
【0094】
像担持体PRは矢印Ya方向に回転しており、その表面は、次に帯電器(チャージロール)CRにより一様に帯電された後、潜像書込位置Q1において潜像形成装置ROSのレーザビームLにより露光走査されて静電潜像が形成される。フルカラー画像を形成する場合は、K(黒)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の4色の画像に対応した静電潜像が順次形成され、モノクロ画像の場合はK(黒)画像に対応した静電潜像のみが形成される。
【0095】
前記静電潜像が形成された像担持体PR表面は、回転移動して現像領域Q2、1次転写領域Q3を順次通過する。ロータリ式の現像装置Gは、回転軸Gaの回転に伴って前記現像領域Q2に順次回転移動するK(黒)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の4色の現像器GK、GY、GM、GCを有している。前記各色の現像器GK、GY、GM、GCは、前記現像領域Q2に現像剤を搬送する現像ロールGRを有しており、現像領域Q2を通過する像担持体PR上の静電潜像をトナー像に現像する。前記各現像器GK、GY、GM、GCの現像容器にはカートリッジ装着部Hk、Hy、Hm、Hc(図1参照)に装着されたトナー補給用カートリッジから各色のトナーが補給されるように構成されている。なお、このようなロータリ式現像装置は、例えば特開2000−131942号公報、特開2000−231250号公報等に記載されている。
【0096】
前記像担持体PRの下方には中間転写ベルトBと、ベルト駆動ロールRd、テンションロールRt、ウォーキングロールRw、アイドラロール(フリーロール)Rf及びバックアップロールT2aを含む複数のベルト支持ロール(Rd,Rt,Rw,Rf,T2a)と、1次転写ロールT1と、それらを支持するベルトフレーム(図示せず)とを有している。そして、前記中間転写ベルトBは前記ベルト支持ロール(Rd,Rt,Rw,Rf,T2a)により回転移動可能に支持されており、画像形成装置動作時には矢印Yb方向に回転する。
【0097】
フルカラー画像を形成する場合、潜像書込位置Q1において第1色目の静電潜像が形成され、現像領域Q2において1色目のトナー像Tnが形成される。このトナー像Tnは、1次転写領域Q3を通過する際に、1次転写ロールT1によって中間転写ベルトB上に静電的に1次転写される。その後同様にして、第1色目のトナー像Tnを担持した中間転写ベルトB上に、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像Tnが順次重ねて1次転写され、最終的にフルカラーの多重トナー像が中間転写ベルトB上に形成される。単色のモノカラー画像を形成する場合には1個の現像器のみを使用し、単色トナー像が中間転写ベルトB上に1次転写される。1次転写後、像担持体PR表面は、残留トナーが除電器JRにより除電され、像担持体クリーナCL1によりクリーニングされる。
【0098】
前記バックアップロールT2aの下方には、2次転写ロールT2bが前記バックアップロールT2aに対して離隔した位置と接触した位置との間で移動可能に配置されている。前記バックアップロールT2a及び2次転写ロールT2bにより2次転写器T2が構成されている。前記バックアップロールT2a及び2次転写ロールT2bの接触領域により2次転写領域Q4が形成されている。前記2次転写ロールT2bには、現像装置Gで使用するトナーの帯電極性と逆極性の2次転写電圧が電源回路Eから供給され、前記電源回路EはコントローラCにより制御される。
【0099】
給紙トレイTR1又はTR2に収容された記録シートSは、所定のタイミングでピックアップロールRpにより取り出され、さばきロールRsで1枚ずつ分離されて、給紙路SH1の複数の搬送ロールRaによりレジロールRrに搬送される。前記レジロールRrに搬送された記録シートSは、前記1次転写された多重トナー像又は単色トナー像が2次転写領域Q4に移動するのにタイミングを合わせて、転写前シートガイドSG1から2次転写領域Q4に搬送される。前記2次転写領域Q4において前記2次転写器T2は、中間転写ベルトB上のトナー像を記録シートSに静電的に2次転写する。2次転写後の中間転写ベルトBは、ベルトクリーナCL2により残留トナーが除去される。前記像担持体PR、帯電ロールCR、現像装置G、1次転写ロールT1、中間転写ベルトB、2次転写器T2等により、記録シートSにトナー像を転写して形成するトナー像形成装置(PR+CR+G+T1+B+T2)が構成されている。
【0100】
なお、前記2次転写ロールT2b及びベルトクリーナCL2は、中間転写ベルトBと離接(離隔及び接触)自在に配設されており、カラー画像が形成される場合には最終色の未定着トナー像が中間転写ベルトBに1次転写されるまで、中間転写ベルトBから離隔している。なお、前記2次転写ロールクリーナCL3は、前記2次転写ロールT2bと一緒に中間転写ベルトBに対して離接移動を行う。トナー像が2次転写された前記記録シートSは、転写後シートガイドSG2、シート搬送ベルトBHにより定着領域Q5に搬送される。定着領域Q5は定着装置Fの加熱ロールFhと加圧ロールFpとが圧接する領域(ニップ)であり、定着領域Q5を通過する記録シートSは、定着装置Fにより加熱定着される。加熱ロールFhは、例えば金属材により形成されたものである。
【0101】
図3において、記録シートSのトナー像を定着する定着領域Q5の下流側には、駆動ロール16aと従動ロール16bとを有するシート搬送ロール16、駆動ロールRb1と従動ロールRb2とを有するシート搬送ロールRb、及びシート排出路SH2が順次設けられている。シート排出路SH2には、シート反転路SH3が接続されている。前記シート排出路SH2及びシート反転路SH3の分岐点には、切替ゲートGT1が設けられている。シート排出路SH2に搬送された記録シートSは、複数の搬送ロールRaによりシート排出ロールRhに搬送され、画像形成装置U1の上端部に形成されたシート排出口Kaから排紙トレイTR3に排出される。前記シート反転路SH3にはシート循環路SH4が接続されており、その接続部にはシート状部材により構成されたマイラゲートGT2が設けられている。前記マイラゲートGT2は、前記切替ゲートGT1からシート反転路SH3を搬送されてきた記録シートSをそのまま通過させるとともに、一旦通過してからスイッチバックして来た記録シートSを、シート循環路SH4側に向かわせる。シート循環路SH4に搬送された記録シートSは前記給紙路SH1を通って前記転写領域Q4に再送される。前記符号SH1〜SH4で示された要素によりシート搬送路SHが構成されている。前記シート搬送路SH及びそこに配置されたシート搬送機能を有するロールRa、Rh等によりシート搬送装置USが構成されている。
【実施例】
【0102】
以下、実施例を交えて詳細に本実施形態を説明するが、何ら本実施形態を限定するものではない。なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示すものとする。
【0103】
<結着樹脂であるポリエステルの合成>
−ポリエステル樹脂(1)の調製−
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:114部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:84部
テレフタル酸ジメチルエステル:75部
ドデセニルコハク酸:19.5部
トリメリット酸:7.5部
【0104】
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、及び精留塔を備えたフラスコに上記成分を入れ、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内を撹拌した後、ジブチル錫オキサイド3.0部を投入した。さらに、生成する水を留去しながら6時間を要して190℃から240℃まで温度を上げ、240℃で更に2時間脱水縮合反応を継続し、ポリエステル樹脂(1)を合成した。
得られたポリエステル樹脂(1)のガラス転移温度は54℃、酸価は15.3mgKOH/g、重量平均分子量は58,000、数平均分子量は5,600であった。
【0105】
−ポリエステル樹脂(2)の調製−
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:114部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:84部
テレフタル酸ジメチルエステル:75部
ドデセニルコハク酸:19.5部
トリメリット酸:7.5部
【0106】
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、及び精留塔を備えたフラスコに上記成分を入れ、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内を撹拌した後、ジブチル錫オキサイド3.0部を投入した。さらに、生成する水を留去しながら6時間を要して190℃から240℃まで温度を上げ、240℃で更に5時間脱水縮合反応を継続し、ポリエステル樹脂(2)を合成した。
得られたポリエステル樹脂(2)のガラス転移温度は54℃、酸価は15.3mgKOH/g、重量平均分子量は120,000、数平均分子量は9,000であった。
【0107】
−ポリエステル樹脂分散液(1)の調製−
ポリエステル樹脂(1)(Mw:58,000):160重量部
酢酸エチル:233部
水酸化ナトリウム水溶液(0.3N):0.1部
上記成分をセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、スリーワンモーター(新東科学(株)製)により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液を更に撹拌しながら、徐々にイオン交換水373部を加え、転相乳化させ、脱溶剤することによりポリエステル樹脂分散液(1)(固形分濃度:30%)を得た。分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は160nmであった。
【0108】
−ポリエステル樹脂分散液(2)の調製−
ポリエステル樹脂(2)(Mw:120,000):160部
酢酸エチル:160部
水酸化ナトリウム水溶液(0.3N):0.1部
上記成分をセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、スリーワンモーター(新東科学(株)製)により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液を更に撹拌しながら、徐々にイオン交換水373部を加え、転相乳化させ、脱溶剤することによりポリエステル樹脂分散液(2)(固形分濃度:30%)を得た。分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は320nmであった。
【0109】
−ポリエステル樹脂分散液(3)の調製−
ポリエステル樹脂(2)(Mw:120,000):160部
酢酸エチル:120部
水酸化ナトリウム水溶液(0.3N):0.1部
上記成分をセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、スリーワンモーター(新東科学(株)製)により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液を更に撹拌しながら、徐々にイオン交換水373部を加え、転相乳化させ、脱溶剤することによりポリエステル樹脂分散液(3)(固形分濃度:30%)を得た。分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は470nmであった。
【0110】
アクリル樹脂分散液を凝集粒子形成用の結着樹脂として調製した。
−スチレン−アクリル樹脂分散液(1)の調製−
スチレン:308重量部
n−ブチルアクリレート:100重量部
アクリル酸:4重量部
ドデカンチオール:5重量部
プロパンジオールアクリレート:1.5重量部
【0111】
上記の成分を混合溶解し、他方、アニオン性界面活性剤ダウファックス(ダウケミカル(株)製)4重量部をイオン交換水550重量部に溶解したものをフラスコ中に収容し、上記の混合溶液を添加して分散し乳化して、10分間ゆっくりと撹拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム6重量部を溶解したイオン交換水溶液50重量部を投入した。
次いで、系内を十分に窒素で置換した後、フラスコを撹拌しながらオイルバスで系内が75℃になるまで加熱し、乳化重合を行った。
これにより、樹脂粒子の中心粒径(体積平均粒径)240nm、ガラス転移温度52℃、重量平均分子量Mw24,000のスチレン−アクリル樹脂分散液(1)(固形分濃度:42%)を得た。
【0112】
別のアクリル樹脂分散液を付着粒子用に以下のようにして調製した。
−スチレン−アクリル樹脂分散液(2)の調製−
スチレン:100重量部
n−ブチルアクリレート:308重量部
アクリル酸:4重量部
ドデカンチオール:3重量部
プロパンジオールアクリレート:1.5重量部
【0113】
上記の成分を混合溶解し、他方、アニオン性界面活性剤ダウファックス(ダウケミカル(株)製)2重量部をイオン交換水550重量部に溶解したものをフラスコ中に収容し、上記の混合溶液を添加して分散し乳化して、10分間ゆっくりと撹拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム6重量部を溶解したイオン交換水溶液50重量部を投入した。
次いで、系内を十分に窒素で置換した後、フラスコを撹拌しながらオイルバスで系内が70℃になるまで加熱し、乳化重合を行った。
これにより、樹脂粒子の中心粒径(体積平均粒径)345nm、ガラス転移温度52℃、重量平均分子量Mw66,000の大径スチレン−アクリル樹脂分散液(2)(固形分濃度:42%)を得た。
【0114】
−スチレン−アクリル樹脂分散液(3)の調製−
スチレン:50重量部
n−ブチルアクリレート:358重量部
アクリル酸:4重量部
ドデカンチオール:1.5重量部
プロパンジオールアクリレート:1.5重量部
【0115】
上記の成分を混合溶解し、他方、アニオン性界面活性剤ダウファックス(ダウケミカル(株)製)2重量部をイオン交換水550重量部に溶解したものをフラスコ中に収容し、上記の混合溶液を添加して分散し乳化して、10分間ゆっくりと撹拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム6重量部を溶解したイオン交換水溶液50重量部を投入した。
次いで、系内を十分に窒素で置換した後、フラスコを撹拌しながらオイルバスで系内が65℃になるまで加熱し、乳化重合を行った。
これにより、樹脂粒子の中心粒径(体積平均粒径)470nm、ガラス転移温度52℃、重量平均分子量Mw69,000のスチレン−アクリル樹脂分散液(3)(固形分濃度:42%)を得た。
【0116】
−スチレン−アクリル樹脂分散液(4)の調製−
スチレン:296質量部
n−ブチルアクリレート:92質量部
アクリル酸:12重量部
ドデカンチオール:16質量部
四臭化炭素:4質量部
以上の試薬は、いずれも和光純薬工業(株)製を使用した。
上記化合物を混合して溶解したものを、非イオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製)24部及びアニオン性界面活性剤(ネオゲンSC:第一工業製薬(株)製)40質量部をイオン交換水550質量に溶解したフラスコ中で乳化重合させ、10分間ゆっくり混合しながら、これに過硫酸アンモニウム(和光純薬(株)製)16質量部を溶解したイオン交換水50質量部を投入した。窒素置換を行った後、前記フラスコ内を撹拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。その結果、樹脂粒子の中心粒径(体積平均粒径)200nmであり、ガラス転移温度58℃、重量平均分子量Mw12,000のスチレン−アクリル樹脂分散液(4)(固形分濃度:42%)を得た。
【0117】
−スチレン−アクリル樹脂分散液(5)の調製−
アクリル酸:320質量部
n−ブチルアクリレート:280質量部
ドデカンチオール:12質量部
グリシジルメタクリレート:8質量部
以上の試薬は、いずれも和光純薬工業(株)製を使用した。
以上の成分を混合し溶解した混合物を、非イオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製)48部及びアニオン性界面活性剤(ネオゲンSC:第一工業製薬(株)製)32質量部をイオン交換水610質量部に溶解した溶液に加えて、フラスコ中で分散し、乳化し、10分間ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム(和光純薬(株)製)32質量部を溶解したイオン交換水50質量部を投入し、窒素置換を0.1リットル/分で20分行った。その後、フラスコ内を撹拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。その結果、樹脂粒子の中心粒径(体積平均粒径)200nmであり、ガラス転移温度63℃、重量平均分子量Mw42,000のスチレン−アクリル樹脂分散液(5)(固形分濃度:42%)を得た。
【0118】
−シアン顔料分散液−
シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン)):100部
アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンR):1.5部
イオン交換水:400部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて1時間ほど分散して、着色剤(シアン顔料)粒子を分散させてなる着色剤粒子分散液を調製した。シアン顔料分散液におけるシアン顔料粒子の体積平均粒径は0.16μm、固形分濃度は20%であった。
【0119】
−離型剤分散液−
パラフィンワックス(日本精蝋(株)製、HNP−9、融点:75℃):50部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):0.5部
イオン交換水:200部
以上を混合して95℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、体積平均粒径が0.23μmである離型剤粒子を分散させてなる離型剤分散液(固形分濃度:20%)を調製した。
【0120】
<実施例1>
以下のようにしてトナー(1)を調製した。
以下の凝集体を形成するコア組成物と粒子付着用シェル組成物と付着粒子組成物とを使用して、凝集法によりトナー(1)を製造した。
凝集体を形成するためのコア組成物
イオン交換水:650部
ポリエステル樹脂分散液(1):367部
シアン顔料分散液:50部
離型剤分散液:100部
アニオン性界面活性剤:5.5部
(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、20重量%)
【0121】
付着粒子用シェル組成物
ポリエステル樹脂分散液(1):100部
アニオン性界面活性剤:3.0部
(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、20重量%)
【0122】
付着粒子組成物
ポリエステル樹脂分散液(1):100部
アニオン性界面活性剤:3.0部
(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、20重量%)
【0123】
上記のコア組成物を、温度計、pH計、撹拌機、を具備した3リットルの反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、撹拌回転数150rpmにて、30分間保持した。
【0124】
ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)で分散しながら、P
AC(王子製紙(株)製:30%粉末品)1.0部をイオン交換水10部に溶解させたPAC水溶液を添加した。その後、0.3N硝酸水溶液を添加し、凝集工程でのpHを3.5に調整した。50℃まで昇温し、コールターマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて粒径を測定し、体積平均粒径が5.0μmの凝集体とした。その後pHを2.5に落とした。
次にpHを2.5に調整した付着粒子用シェル組成物を追添加し、5分後に更にpH4.3に調整した付着粒子組成物を追添加し、凝集体の表面に有機樹脂粒子を付着(シェル構造)させた。
【0125】
続いて、10重量%のNTA(ニトリロ三酢酸)金属塩水溶液(キレスト70:キレスト株式会社製)を40部加えた後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、昇温速度を0.05℃/分にして90℃まで昇温し、90℃で3時間保持した後、冷却し、ろ過して粗トナー粒子を得た。これを更にイオン交換水にて再分散し、ろ過することを繰り返して、ろ液の電気伝導度が20μS/cm以下となるまで洗浄を行った後、40℃のオーブン中で5時間真空乾燥して、トナー粒子を得た。
【0126】
得られたトナー粒子100重量部に対して疎水性シリカ(日本アエロジル社製、RY50)を1.5重量部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル(株)製、T805)を1.0重量部とを、サンプルミルを用いて10,000rpmで30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分してトナー(1)を調製した。得られたトナー(1)の体積平均粒子径は5.9μmであった。
その他のトナー(1)の形状に関する特性値は表1に記載した。
【0127】
<実施例2>
実施例1において付着粒子組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(1)の代わりにポリエステル樹脂分散液(2)を用いた以外は、実施例1と同様に行いトナー(2)を作成した。得られたトナーの体積平均粒子径は5.8μmであった。
【0128】
<実施例3>
実施例1において付着粒子組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(1)の代わりにポリエステル樹脂分散液(3)を用いた以外は、実施例1と同様に行いトナー(3)を作成した。得られたトナーの体積平均粒子径は5.7μmであった。
【0129】
<実施例4>
実施例2において付着粒子用シェル組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(1)を133部に変更し、同様に付着粒子組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(2)を67部に変更した以外は、実施例2と同様に行いトナー(4)を作成した。得られたトナーの体積平均粒子径は5.8μmであった。
【0130】
<実施例5>
実施例2において付着粒子用シェル組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(1)を33部に変更し、同様に付着粒子組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(2)を167部に変更した以外は、実施例2と同様に行いトナー(5)を作成した。得られたトナーの体積平均粒子径は5.7μmであった。
【0131】
<実施例6>
実施例4において付着粒子組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(2)の代わりにポリエステル樹脂分散液(3)を用いた以外は、実施例4と同様に行いトナー(6)を作成した。得られたトナーの体積平均粒子径は5.8μmであった。
【0132】
<実施例7>
実施例5において付着粒子組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(2)の代わりにポリエステル樹脂分散液(3)を用いた以外は、実施例5と同様に行いトナー(7)を作成した。得られたトナーの体積平均粒子径は5.7μmであった。
【0133】
<実施例8>
実施例1において付着粒子組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(1)100部の代わりにスチレン−アクリル樹脂分散液(1)72部を用いた以外は、実施例1と同様に行いトナー(8)を作成した。得られたトナーの体積平均粒子径は5.8μmであった。
【0134】
<実施例9>
実施例1において付着粒子組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(1)100部の代わりにスチレン−アクリル樹脂分散液(2)72部を用いた以外は、実施例1と同様に行いトナー(9)を作成した。得られたトナーの体積平均粒子径は5.7μmであった。
【0135】
<実施例10>
実施例1において付着粒子組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(1)100部の代わりにスチレン−アクリル樹脂分散液(3)72部を用いた以外は、実施例1と同様に行いトナー(10)を作成した。得られたトナーの体積平均粒子径は5.9μmであった。
【0136】
<実施例11>
イオン交換水:750部
スチレン−アクリル樹脂分散液(1):262部
シアン顔料分散液:50部
離型剤分散液:100部
硫酸アルミニウム(和光純薬(株)製):1.5部
以上の成分を、3リットルの反応容器に入れホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)を用いて混合し、分散した後、撹拌しながらマントルヒーターで50℃まで加熱した。50℃で30分保持した後、コールターマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて粒径を測定し、体積平均粒径が4.8μmの凝集体とした。このときのpHは2.0であった。
更にpH2.5に調整したスチレン−アクリル樹脂分散液(1)72部を追添加し、5分後にpH4.3に調整したスチレン−アクリル樹脂分散液(2)72部を追添加し、凝集体の表面に有機樹脂粒子を付着(シェル構造)させた。更に50℃で30分間保持して、凝集体を作成し、この凝集粒子を含む分散液、1N水酸化ナトリウムを追加して、系のpHを7.0に調整した後ステンレス製フラスコを密閉し、磁気シールを用いて撹拌を継続しながら90℃まで加熱し、4時間保持した後、冷却し、ろ過して粗トナー粒子を得た。これを更にイオン交換水にて再分散し、ろ過することを繰り返して、ろ液の電気伝導度が20μS/cm以下となるまで洗浄を行った後、40℃のオーブン中で5時間真空乾燥して、トナー粒子を得た。
【0137】
得られたトナー粒子100重量部に対して疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、RY50)を1.5重量部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル(株)製、T805)を1.0重量部とを、サンプルミルを用いて10,000rpmで30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分してトナー(11)を調製した。得られたトナー(11)の体積平均粒子径は5.8μmであった。
【0138】
<実施例12>
実施例11において、スチレン−アクリル樹脂分散液(2)の代わりにスチレン−アクリル樹脂分散液(3)を用いた以外は、実施例11と同様に行いトナー(12)を作成した。得られたトナーの体積平均粒子径は5.8μmであった。
【0139】
<比較例1>
実施例2において付着粒子用シェル組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(1)を167部に変更し、同様に付着粒子組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(2)を33部に変更した以外は、実施例2と同様に行いトナー(13)を作成した。得られたトナーの体積平均粒子径は5.8μmであった。
【0140】
<比較例2>
実施例3において付着粒子用シェル組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(1)を167部に変更し、同様に付着粒子組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(3)を33部に変更した以外は、実施例3と同様に行いトナー(14)を作成した。得られたトナーの体積平均粒子径は5.7μmであった。
【0141】
<比較例3>
凝集体を形成するためのコア組成物
イオン交換水:460部
ポリエステル樹脂分散液(1):367部
シアン顔料分散液:50部
離型剤分散液:100部
アニオン性界面活性剤:5.5部
(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、20重量%)
【0142】
付着粒子用シェル組成物
ポリエステル樹脂分散液(1):33部
ポリエステル樹脂分散液(2):167部
アニオン性界面活性剤:6.0部
(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、20重量%)
【0143】
上記のコア組成物を、温度計、pH計、撹拌機、を具備した3リットルの反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、撹拌回転数150rpmにて、30分間保持した。
【0144】
ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)で分散しながら、P
AC(王子製紙(株)製:30%粉末品)1.0部をイオン交換水10部に溶解させたPAC水溶液を添加した。その後、0.3N硝酸水溶液を添加し、凝集工程でのpHを3.5に調整した。50℃まで昇温し、コールターマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて粒径を測定し、体積平均粒径が5.0μmの凝集体とした。その後pHを2.5に落とした。
次にpHを2.5に調整した付着粒子用シェル組成物を追添加し、凝集体の表面に勇気樹脂粒子を付着(シェル構造)させた。
【0145】
続いて、10重量%のNTA(ニトリロ三酢酸)金属塩水溶液(キレスト70:キレスト株式会社製)を40部加えた後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、昇温速度を0.05℃/分にして90℃まで昇温し、90℃で3時間保持した後、冷却し、ろ過して粗トナー粒子を得た。これを更にイオン交換水にて再分散し、ろ過することを繰り返して、ろ液の電気伝導度が20μS/cm以下となるまで洗浄を行った後、40℃のオーブン中で5時間真空乾燥して、トナー粒子を得た。
【0146】
得られたトナー粒子100重量部に対して疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、RY50)を1.5重量部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル(株)製、T805)を1.0重量部とを、サンプルミルを用いて10,000rpmで30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分してトナー(15)を調製した。得られたトナー(15)の体積平均粒子径は6.0μmであった。
【0147】
<比較例4>
比較例3において付着粒子用シェル組成物として使用するポリエステル樹脂分散液(2)の代わりにポリエステル樹脂分散液(3)を用いた以外は、比較例3と同様に行いトナー(16)を作成した。得られたトナーの体積平均粒子径は5.8μmであった。
【0148】
<比較例5>
イオン交換水:900部
スチレン−アクリル樹脂分散液(4):305部
シアン顔料分散液:80部
離型剤分散液:150部
硫酸アルミニウム(和光純薬(株)製):1.5部
以上の成分を、3リットルの反応容器に入れホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)を用いて混合し、分散した後、撹拌しながらマントルヒーターで50℃まで加熱した。50℃で30分保持した後、コールターマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて粒径を測定し、体積平均粒径が4.8μmの凝集体とした。
更にスチレン−アクリル樹脂分散液(4)30部とスチレン−アクリル樹脂分散液(5)20部との混合物を追添加し、更に50℃で30分間保持して、凝集体を作成し、この凝集粒子を含む分散液、1N水酸化ナトリウムを追加して、系のpHを7.0に調整した後ステンレス製フラスコを密閉し、磁気シールを用いて撹拌を継続しながら90℃まで加熱し、4時間保持した後、冷却し、ろ過して粗トナー粒子を得た。これを更にイオン交換水にて再分散し、ろ過することを繰り返して、ろ液の電気伝導度が20μS/cm以下となるまで洗浄を行った後、40℃のオーブン中で5時間真空乾燥して、トナー粒子を得た。
【0149】
得られたトナー粒子100重量部に対して疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、RY50)を1.5重量部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル(株)製、T805)を1.0重量部とを、サンプルミルを用いて10,000rpmで30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分してトナー(17)を調製した。得られたトナー(17)の体積平均粒子径は5.8μmであった。
【0150】
<外添剤を除去する条件>
外添剤付着強度の測定は、トナーをトリトン溶液(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(和光純薬工業株式会社製0.2重量%水溶液)に分散させた分散液に、超音波振動(出力20W、周波数20kHz)を5分間作用させ、その後ろ過し、外添剤を除去したトナー母粒子を得た。なお電子写真を確認したところ、一旦外添剤を付着した後に除去したトナー母粒子と外添剤を付着させる前では、ほぼ同等であり、周囲長さ(PM)/円相当径(D)の比Xの値は同じであった。
【0151】
<転写効率の評価方法>
高温高湿(30℃、80%RH)の環境下にて、5cm×2cmのソリッドバッチを現像し、感光体表面の現像トナー画像を、テープ表面の粘着性を利用して転写し、その重量(W1)を測定した。また、同様にソリッドバッチを現像した感光体表面の現像トナー画像を目視でムラの程度を評価した。次に、同様の現像トナー像を、紙(J紙:富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製)表面に転写させ、その転写画像の重量(W2)を測定した。これらより、以下の式により転写効率を求め、転写性を評価した。
転写効率(%) = (W2/W1)×100
また、現像性はこの時のW1の重量により評価した。
【0152】
−現像性の評価基準−
○:W1が4.5g/m2以上
△:W1が4.0g/m2以上4.5g/m2未満
×:W1が4.0g/m2未満
【0153】
−転写性(転写効率)の評価基準−
◎:転写効率が95%以上
○:転写効率が90%以上95%未満
△:転写効率が85%以上90%未満
×:転写効率が85%未満
【0154】
<クリーニング性の評価方法>
室温28℃、湿度90%の環境室にて、得られた現像剤を、図2に示した4連タンデム方式の富士ゼロックス(株)社製DocuCentre Color450a改造機(定着器のプロセススピードを外部電源コントロールにて行うように改造したもの)の現像器に充填し、富士ゼロックス(株)製カラーペーパー(J紙)に画像の先端10cmにトナーのり量6g/m2に調整して、現像剤保持体の周速度2000mm/secにて、それぞれ連続10,000枚の画像形成を行った。2,000枚画像形成するごとに感光体上の付着物を目視にて確認し、以下の基準にて評価を行った。
【0155】
−クリーニング性の評価基準−
◎:10,000枚まで感光体に付着物が確認できない。
○:4,000枚まで感光体に付着物が確認できない。
△:4,000枚画像形成した時点において、筋状の付着物が確認される。しかし、実用上問題のないレベル。
×:感光体ほぼ全域に付着物がある。
【0156】
<凹凸の円周計測定方法>
トナー母粒子をS4800(走査型電子顕微鏡:(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用い、トナー全体が観察できるようにし10,000倍の倍率にてトナー画像を得る。次に、ニレコ社製LUZEXを用い、トナー全体像を画像解析し、該トナー粒子のPM値(円周囲長)を求めた。次にトナー粒子径D50vを測定し、以下の式にて比Xを求めた。
比X=PM値(円周囲長)/トナー円相当径D50v
この比Xは真円であれば、円周率である3.14に近づく。一方で、比Xが大きければ、該トナー形状の凹凸が大きいことを示す。
【0157】
【表1】

【符号の説明】
【0158】
U1:画像形成装置
PG:プラテンガラス
U2:自動原稿搬送装置
Gi:原稿
TG1、TG2:トレイ
IIT:原稿読取装置
Sp:露光系レジセンサ
A:露光光学系
CCD:固体撮像素子
IPS:イメージプロセッシングシステム
DL:レーザー駆動回路
ROS:潜像形成装置
C:コントローラ
PR:像担持体
CR:帯電器
Q1:潜像書込位置
Q2:現像領域
Q3:1次転写領域
G:ロータリ式の現像装置
Ga:回転軸
GK、GY、GM、GC:4色の現像器
GR:現像ロール
Hk、Hy、Hm、Hc:カートリッジ装着部
B:中間転写ベルト
Rd:ベルト駆動ロール
Rt:テンションロール
Rw:ウォーキングロール
Rf:アイドラロール
T2a:バックアップロール
T1:1次転写ロール
JR:除電器
CL1:像担持体クリーナ
T2b:2次転写ロール
T2:2次転写器
Q4:2次転写領域
E:電源回路
S:記録シート
Rp:ピックアップロール
Rs:さばきロール
SH1:給紙路
Ra:搬送ロール
Rr:レジロール
SG1:転写前シートガイド
CL2:ベルトクリーナ
CL3:2次転写ロールクリーナ
SG2:転写後シートガイド
BH:シート搬送ベルト
Q5:定着領域
F:定着装置
Fh:加熱ロール
Fp:加圧ロール
16a:駆動ロール
16b:従動ロール
16:シート搬送ロール
Rb1:駆動ロール
Rb2:従動ロール
Rb:シート搬送ロール
SH2:シート排出路
SH3:シート反転路
GT1:切替ゲート
Ra:搬送ロール
Rh:シート排出ロール
Ka:シート排出口
TR3:排紙トレイ
SH4:シート循環路
GT2:マイラゲート
SH:シート搬送路
US:シート搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心粒子の表面に別の粒子が付着したトナー母粒子であって、周囲長さ(PM)/円相当径(D)の比Xの体積平均値が3.6以上5.0以下であることを特徴とする、静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記付着した粒子(付着粒子)の粒子径の体積平均値が、100〜500nmである、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記中心粒子の結着樹脂が、ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂である、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記付着粒子が有機樹脂粒子である、請求項1〜3いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
SEM観察による、前記トナー母粒子の全投影面積に対する前記付着粒子の投影面積の割合の数平均値が、20〜80%である、請求項1〜4いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記付着粒子が、前記中心粒子の表面から内部に前記付着粒子の直径の半分未満しか埋め込まれていない、請求項1〜5のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
少なくとも結着樹脂及び着色剤を含む分散液を凝集し凝集体を形成する凝集工程と、
前記凝集体の表面に粒子を付着する粒子付着工程と、
前記凝集体と付着した粒子とを融合させ合一させる融合工程と、を含む、請求項1〜6いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーとキャリアとを含有する、現像剤。
【請求項9】
像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、
前記像保持体の表面に形成された静電潜像を、請求項1〜6のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー又は請求項8に記載の現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を被記録媒体の表面に転写する転写工程と、
転写された前記トナー像を被記録媒体に定着する定着工程と、を含む
画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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