説明

静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、静電荷像現像用トナーの製造方法及び画像形成装置

【課題】離型剤の偏在を抑制し、定着性の悪化を防止できる静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、静電荷像現像用トナーの製造方法及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】少なくとも結着樹脂と離型剤と下記式(1)に示す構造の物質を含む静電荷像現像用トナーであり、下記式(1)に示す構造の物質を添加することにより、トナー粒子中の離型剤の分散性を向上することができる。
【化1】


上記式中、XはHまたはNaを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、静電荷像現像用トナーの製造方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々な分野で利用されている。電子写真法においては、帯電、露光工程により感光体上に静電荷像を形成し、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」という場合がある)を含む現像剤で静電荷像を現像し、転写、定着工程を経て静電荷像が可視化される。
【0003】
上記トナーの製造方法としては、例えば乳化重合凝集法があり、結着樹脂、離型剤、着色剤等を分散させた混合分散液から凝集工程等を経てトナーの微粒子を製造する。この際に、混合分散液の分散安定性の向上等を目的として種々の界面活性剤が用いられてきた。例えば、下記特許文献1には、少なくとも結着樹脂と、離型剤と、を含有する静電荷現像用トナーであって、2価以上の価数を取りうる金属元素と、スルホン基を有する界面活性剤と、カルボキシル基を有する界面活性剤と、を含有し、前記結着樹脂固形分100gに対する前記スルホン基を有する界面活性剤の量a(mol)と、前記結着樹脂固形分100gに対する前記カルボキシル基を有する界面活性剤の量b(mol)と、の関係が、下記式(a)及び下記式(b)の条件を満たす静電荷現像用トナーが開示されている。
0.0015≦a≦0.006・・・・・式(a)
0.018≦1.62×a+b≦0.025・・・・・式(b)
【0004】
また、上記離型剤は、定着工程において、定着ロールとトナー画像との剥離性を確保するために使用される。この離型剤としては、一般にワックスが使用されており、例えば、下記特許文献2には、少なくとも結着樹脂と着色剤からなるトナーにおいて、該トナー中に軟化点が100〜155℃である、ポリプロピレンワックスおよびポリエチレンワックスの少なくとも一方または双方のワックスが前記結着樹脂100重量部に対して総含有量で0.5〜1重量部の範囲で含有されるとともに、軟化点が45〜90℃である、パラフィンワックス及びその誘導体、並びにマイクロクリスタリンワックス及びその誘導体の少なくとも一方のワックスが含有されてなる、少なくとも2種類以上のワックスを含有しており、前記結着樹脂100重量部に対して前記ワックスの総含有量が0.7〜2重量部である電子写真用トナーが開示されている。
【0005】
また、下記特許文献3には、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、結着樹脂として、酸価が5〜20mgKOH/gの熱可塑性ポリエステル樹脂を少なくとも主成分として含有し、離型剤として、140℃における溶融粘度が100mPa・s以下で、酸価が2mgKOH/g以下のワックスを0.5〜10重量%含有し、且つエチレンユニット、(メタ)アクリル酸エステルユニット、および(メタ)アクリル酸グリシジルエステルユニットおよび/または一酸化炭素ユニットからなり、エチレンユニットを55重量%以上含有する共重合体を、ワックスに対して0.2〜2倍量含有する静電荷像現像用トナーが開示されている。
【0006】
また、下記特許文献4には、上記乳化重合凝集法において、凝集工程に続いて行われる、凝集粒子を融合させるための融合工程の前にキレート剤(EDTA等)を添加し、凝集工程における凝集のために凝集粒子に導入された金属イオンに上記キレート剤を配位させ、後の洗浄工程でキレート配位金属イオンをトナー外に除去する技術が開示されている。これにより、トナー中の金属イオンの含有量が削減され、トナーの含水性が低下して、高湿環境下における転写性を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−76519号公報
【特許文献2】特許第3474838号公報
【特許文献3】特許第3562495号公報
【特許文献4】特開2008−185648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、離型剤の偏在を抑制し、定着性の悪化を防止できる静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、静電荷像現像用トナーの製造方法及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の静電荷像現像用トナーの発明は、少なくとも結着樹脂と離型剤と下記式(1)に示す構造の物質を含むことを特徴とする。
【0010】
【化1】

上記式中、XはHまたはNaを表す。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、温度50℃、湿度85%の環境下において、24時間放置の保管条件で保管後における、低温オフセットが発生しない最低定着温度が、保管前における前記最低定着温度より高くならないことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の静電荷像現像用現像剤の発明は、請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用トナーを含むことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載のトナーカートリッジの発明は、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための、請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用トナーが収納され、前記画像形成装置に着脱可能に構成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載のプロセスカートリッジの発明は、請求項3に記載の静電荷像現像用現像剤が収容された現像手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の静電荷像現像用トナーの製造方法の発明は、少なくとも体積平均粒径が1μm以下の結着樹脂粒子の分散液と離型剤粒子の分散液とを混合する混合工程と、凝集剤を添加して前記結着樹脂粒子と離型剤粒子とを凝集させる凝集工程と、前記凝集工程の後に下記式(1)に示す構造の物質を加え、前記結着樹脂粒子の主成分である結着樹脂の融点以上の温度で凝集粒子を合一させる合一工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
【化1】

上記式中、XはHまたはNaを表す。
【0017】
請求項7記載の画像形成装置の発明は、像保持体と、前記像保持体の表面に静電荷像を形成させる静電荷像形成手段と、請求項3に記載の静電荷像現像用現像剤により前記静電荷像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、前記像保持体上に形成された前記トナー画像を被転写体上に転写する転写手段と、前記被転写体上に転写された前記トナー画像を定着する定着手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、離型剤の偏在を抑制し、定着性の悪化を抑制できる静電荷像現像用トナーを提供できる。
【0019】
請求項2の発明によれば、高温環境下での保管中に離型剤が偏在することを抑制することができる静電荷像現像用トナーを提供できる。
【0020】
請求項3の発明によれば、離型剤の偏在を抑制し、定着性の悪化を抑制できる静電荷像現像用現像剤を提供できる。
【0021】
請求項4の発明によれば、離型剤の偏在を抑制し、定着性の悪化を抑制できる静電荷像現像用トナーが収容されたトナーカートリッジを提供できる。
【0022】
請求項5の発明によれば、離型剤の偏在を抑制し、定着性の悪化を抑制できる静電荷像現像用現像剤が収容されたプロセスカートリッジを提供できる。
【0023】
請求項6の発明によれば、離型剤の偏在を抑制し、定着性の悪化を抑制できる静電荷像現像用トナーの製造方法を提供できる。
【0024】
請求項7の発明によれば、離型剤の偏在を抑制し、定着性の悪化を抑制できる画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の一例である4連タンデム方式のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】実施形態に係る静電潜像現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0027】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態にかかる静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」という場合がある)は、少なくとも結着樹脂、離型剤及び1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸またはそのナトリウム塩を含有することを特徴とする。
【0028】
ここで、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸またはそのナトリウム塩は、下記式(1)で表される、
【0029】
【化1】

上記式中、XはHまたはNaを表す。
【0030】
一般的に、離型剤(ワックス等)を含有するトナーを長時間に亘り高温環境下で保管すると、ガラス転移温度が0℃以下のような離型剤は分子鎖運動が活性化し、離型剤同士がトナー内で凝集することにより、トナー粒子内で不均一な分布で存在(偏在)する場合がある。このような離型剤の偏在が発生すると、定着工程における剥離性が悪化し、オフセット発生の原因となる。なお、オフセットとは、トナー画像の一部が定着ロールに付着し取り去られる現象をいう。
【0031】
本発明者らは、トナー中に上記式(1)で表される物質を含有させることにより、長時間に亘る高温環境下での保管後においても、離型剤の偏在を抑制でき、作製当初の離型剤の状態を維持することができることを見いだした。
【0032】
<トナーの製造方法>
以下、実施形態にかかる静電荷像現像用トナーの製造方法を説明する。本製造方法としては特に制限はないが、乳化凝集法が好ましい。混練粉砕法は着色剤、離型剤等をせん断力で樹脂内部に分散させる方法であり、また懸濁重合法は着色剤、離型剤等を重合性単量体中に分散させ、その後重合性単量体を重合させる方法であり、初めからトナー内部の構成は不均一になりやすく、本願の上記式(1)で表される物質を加えても、乳化凝集法に比較すれば効果は小さいためである。乳化凝集法は、少なくとも体積平均粒径が1μm以下の結着樹脂粒子の分散液と離型剤粒子の分散液とを混合する混合工程と、凝集剤を添加して上記結着樹脂粒子と離型剤粒子とを凝集させる凝集工程と、上記凝集工程の後に、上記式(1)で表される1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸またはそのナトリウム塩を加え、上記結着樹脂粒子の主成分である結着樹脂の融点以上の温度で凝集粒子を合一させる合一工程と、を有していることが特徴となっている。なお、必要に応じて、着色剤分散液を添加して凝集させてもよい。
【0033】
また、凝集工程において、凝集粒子(コア凝集粒子)を形成した後に、第2の結着樹脂粒子を分散した第2の結着樹脂分散液を添加して、上記コア凝集粒子表面に上記第2の結着樹脂の微粒子が付着した樹脂付着凝集粒子を形成して、コアシェル構造のトナーを作製することも好ましい。
【0034】
−結着樹脂−
上記結着樹脂としては、スチレン−アクリル樹脂(スチレンとアクリル酸エステルとの共重合体)、ポリエステル樹脂等を使用することができる。
【0035】
スチレン−アクリル樹脂に使用されるアクリル酸エステルとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、nブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。また、スチレン−アクリル樹脂の重合は、ジフェニルオキシドジスルホン酸塩等の界面活性剤を乳化剤として使用した乳化重合が好適である。この場合の重合開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウム等を使用することができる。
【0036】
また、スチレン−アクリル樹脂の重量平均分子量Mwは6000から40000であることが望ましい。重量平均分子量Mwが、6000未満であると、定着の際にトナーが紙等の記録媒体の表面へしみ込んで定着ムラを生じたり、定着画像の折り曲げ耐性に対する強度が低下したりする場合がある。また、重量平均分子量Mwが40000を超えると、溶融時の粘度が高くなりすぎて定着に適当な粘度まで至るための温度が高くなることがあり、結果として低温定着性が損なわれる場合がある。
【0037】
また、スチレン−アクリル樹脂のガラス転移温点(Tg)は40から80℃の範囲であることが望ましい。Tgが40℃より低いと、トナーの保存性や定着画像の保存性が低下する場合がある。また80℃より高いと、従来に比べ低温で定着されなくなる場合がある。
【0038】
一方、上記ポリエステル樹脂を構成する重合性単量体成分としては、芳香族成分を有する重合性単量体や直鎖状脂肪族成分を有する重合性単量体を用いることができる。さらに、構成される重合性単量体由来成分は、重合体中、単一種で各々30mol%以上であることが望ましい。ポリエステル樹脂においては、構成成分として2種以上の重合性単量体が必須であるが、各必須構成重合性単量体種において同上の構成(30mol%以上)であることが望ましい。
【0039】
ポリエステル樹脂は、例えば多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とから合成される。なお、本実施形態においては、ポリエステル樹脂として市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0040】
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられ、さらに、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられるがこの限りではない。
【0041】
3価以上のカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
また、多価カルボン酸成分としては、上記脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸成分が含まれていてもよい。
【0043】
さらに、多価カルボン酸成分としては、上記脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸成分を含有してもよい。
【0044】
多価アルコール成分としては、脂肪族ジオールが好ましく、主鎖部分の炭素数が7から20である直鎖型脂肪族ジオールがより望ましい。脂肪族ジオールが分岐型では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融解温度が降下してしまう場合がある。また、主鎖部分の炭素数が7未満であると、芳香族ジカルボン酸と縮重合させる場合、融解温度が高くなり、低温定着が困難となることがある一方、主鎖部分の炭素数が20を超えると実用上の材料の入手が困難となり易い。主鎖部分の炭素数としては14以下であることがより望ましい。
【0045】
ポリエステル樹脂の合成に好適に用いられる脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
また、多価アルコール成分として3価以上のアルコールも使用することができ、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
多価アルコール成分のうち、上記脂肪族ジオールの含有量が80mol%以上であることが好ましく、より望ましくは90mol%以上である。脂肪族ジオールの含有量が80mol%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融解温度が降下する為、耐トナーブロッキング性、画像保存性及び低温定着性が悪化してしまう場合がある。
【0048】
なお、必要に応じて酸価や水酸基価の調製等の目的で、多価カルボン酸や多価アルコールを合成の最終段階で添加してもよい。多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類等が挙げられる。
【0049】
上記ポリエステル樹脂の製造方法には特に制限はなく、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができる。例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。上記多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるが、通常1/1程度である。上記ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180〜230℃の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。
【0050】
上記ポリエステル樹脂の製造の際に使用される触媒としては、例えば、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物及びアミン化合物等が挙げられる。
【0051】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6000から300000であることが望ましい。重量平均分子量(Mw)が、6000未満であると、定着の際にトナーが紙等の記録媒体の表面へしみ込んで定着ムラを生じたり、定着画像の折り曲げ耐性に対する強度が低下したりする場合がある。また、重量平均分子量(Mw)が300000を超えると、溶融時の粘度が高くなりすぎて定着に適当な粘度まで至るための温度が高くなることがあり、結果として定着性が損なわれる場合がある。
【0052】
−着色剤−
トナーは、必要に応じて着色剤を含んでよい。着色剤としては、染料であっても顔料であってもかまわないが、耐光性や耐水性の観点から顔料が望ましい。
【0053】
本実施形態において、着色剤として用いられる顔料は例えば以下のものが挙げられる。黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、クロムイエロー、ハンザイエロー、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーメネントイエローNCG等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー93等が挙げられ、顔料分散性の点からC.I.ピグメントイエロー74が好ましい。黄色顔料としては、上記顔料の1種または2種以上を併せて使用することができる。
【0054】
黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、マグネタイト等が挙げられる。
【0055】
橙色顔料としては赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジGG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンGK等が挙げられる。
【0056】
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、キナクリドン、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ等が挙げられる。
【0057】
青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレートなどが挙げられる。
【0058】
紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。
【0059】
緑色顔料としては、酸化クロム、クロムグリーン、ピグメントグリーン、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等が挙げられる。
【0060】
白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等が挙げられる。
【0061】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等が挙げられる。
【0062】
また、必要に応じて着色剤として染料を用いることもできる。該染料としては、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料、例えば、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等が挙げられる。また、これらの単独、もしくは混合し、さらには固溶体の状態で使用できる。
【0063】
上記着色剤は、例えばアニオン性界面活性剤を用い、回転せん断型ホモジナイザやボールミル、サンドミル、アトライタ等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等によって水系溶媒に分散される。
【0064】
−離型剤−
トナーに含まれる離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス類、ミツロウ等の動物系ワックス類、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス類、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルワックス類、ステアリン酸ブチル、オレイン酸プロピル、モノステアリン酸グリセリド、ジステアリン酸グリセリド、ペンタエリスリトールテトラベヘネート等の高級脂肪酸と単価または多価低級アルコールとのエステルワックス類、ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ジステアリン酸ジグリセリド、テトラステアリン酸トリグリセリド等の高級脂肪酸と多価アルコール多量体とからなるエステルワックス類、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン高級脂肪酸エステルワックス類、コレステリルステアレート等のコレステロール高級脂肪酸エステルワックス類などが挙げられる。これらの離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0065】
離型剤の融解温度は、50℃から100℃が望ましく、60℃から95℃がより望ましい。
【0066】
離型剤のトナー中の含有量は0.5から15質量%が望ましく、1.0から12質量%がより望ましい。離型剤の含有量が0.5質量%より少ないと、特にオイルレス定着において剥離不良となる場合がある。離型剤の含有量が15質量%より多いと、トナーの流動性が悪化する等、画質および画像形成の信頼性を低下させる場合がある。
【0067】
−その他の添加剤−
トナーは、上記成分以外にも、必要に応じて内添剤、帯電制御剤、無機粉体(無機粒子)、有機粒子等の種々の成分を含んでもよい。
【0068】
上記内添剤としては、例えばフェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、マンガン、ニッケル等の金属、合金、またはこれら金属を含有する化合物などの磁性体などが挙げられ、トナー特性としての帯電性を阻害しない程度の量が使用される。
【0069】
また、上記帯電制御剤としては、特に制限はないが、特にカラートナーを用いた場合、無色または淡色のものが好ましく使用される。例えば、4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミニウム、鉄、クロムなどの錯体からなる染料、トリフェニルメタン系顔料などが挙げられるが、後述する凝集や融合・合一時の安定性に影響するイオン強度の制御と廃水汚染の低減との観点から、水に溶解しにくい材料の方が好ましい。
【0070】
また、上記無機粒子や有機粒子は、トナー表面に外添される外添剤であるが、せん断をかけながらトナー粒子表面に添加することが好ましい。具体的には以下のものが挙げられる。
【0071】
無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、塩化セリウム、ベンガラ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。中でも、シリカ粒子や酸化チタン粒子が望ましく、疎水化処理(表面処理)された粒子が特に望ましい。
【0072】
無機粒子は、一般に流動性を向上させる目的で使用される。上記無機粒子の1次粒径としては、1から200nmの範囲が望ましく、その添加量としては、トナー100質量部に対して、0.01から20質量部の範囲が望ましい。
【0073】
有機粒子は、一般にクリーニング性や転写性を向上させる目的で使用され、具体的には例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0074】
−乳化凝集−
以下、本実施形態の静電荷像現像用トナーの製造方法について、乳化凝集法により詳細に説明する。
【0075】
乳化凝集法においては、一般に乳化重合等により製造された結着樹脂粒子の分散液とイオン性界面活性剤による離型剤分散液とを混合し、凝集剤を添加して結着樹脂粒子と離型剤粒子との凝集を生じさせてトナー径に相当する凝集粒子を形成する。次に、上記式(1)で表される1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸またはそのナトリウム塩を加え、結着樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱することにより凝集粒子を融合・合一し、洗浄、乾燥してトナーを得る。トナー形状は不定形から球状まで製造しうる。また、本実施形態のトナーでは、着色剤分散液を添加しうる。
【0076】
なお、上記製造方法は、原料分散液を一括して混合し、これらを凝集させ融合する方法であるが、凝集工程の初期の段階で極性のイオン性界面活性剤の量のバランスを予めずらしておき、例えば、少なくともアルミニウムを含む無機金属塩、もしくは少なくともアルミニウムを含む重合体を用いてこれをイオン的に中和し、ガラス転移温度以下でコア凝集粒子を形成し、安定した後、さらに必要に応じてコア凝集粒子又は追加粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度または溶融温度以下の高い温度でわずかに加熱することにより安定化させた後、必要に応じて、第2段階として上記のバランスのずれを補填する極性、量の粒子分散液を添加し、さらに必要に応じてコア凝集粒子または追加粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度以下の高い温度でわずかに加熱することにより安定化させた後、ガラス転移温度以上に加熱して第2段階で加えた粒子をコア凝集粒子の表面に付着させたまま融合・合一させてもよい。以下、順を追って説明する。
【0077】
結着樹脂分散液は、スチレン−アクリル樹脂の乳化重合による他、水系媒体とポリエステル樹脂等の結着樹脂とを混合した溶液に、剪断力を与えることにより形成される。その際、結着樹脂の軟化点以上の温度に加熱することで、ポリマー液の粘性を下げて粒子分散体を形成する。
【0078】
結着樹脂分散液を形成する際に用いる分散機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。また、これらの分散機は、結着樹脂分散液と着色剤分散液との混合及び凝集にも使用する。
【0079】
本実施形態における結着樹脂分散液、着色剤分散液、離型剤分散液、およびその他の成分における分散媒としては、例えば水系媒体などが挙げられる。
【0080】
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
また、上記各分散液の分散安定を目的として界面活性剤を用いてもよい。上記界面活性剤としては、例えば硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤、ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でもイオン性界面活性剤が好ましく、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤がより好ましい。
【0082】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油ナトリウム等の脂肪酸セッケン類、オクチルサルフェート、ラウリルサルフェート、ラウリルエーテルサルフェート、ノニルフェニルエーテルサルフェート等の硫酸エステル類、ラウリルスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、トリイソプロピルナフタレンスルホネート、ジブチルナフタレンスルホネートなどのアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム類、ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、モノオクチルスルホサクシネート、ジオクチルスルホサクシネート、ラウリン酸アミドスルホネート、オレイン酸アミドスルホネート等のスルホン酸塩類、ラウリルホスフェート、イソプロピルホスフェート、ノニルフェニルエーテルホスフェート等のリン酸エステル類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩類、スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム等のスルホコハク酸塩類などが挙げられる。
【0083】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、オレイルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、ステアリルアミノプロピルアミン酢酸塩等のアミン塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド、オレイルビスポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド、ラウロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、アルキルベンゼントリメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類などが挙げられる。
【0084】
非イオン系界面活性剤は、上記アニオン系界面活性剤またはカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。
【0085】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート等のアルキルエステル類、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル、ポリオキシエチレン大豆アミノエーテル、ポリオキシエチレン牛脂アミノエーテル等のアルキルアミン類、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のアルキルアミド類、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンナタネ油エーテル等の植物油エーテル類、ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル類などが挙げられる。
【0086】
上記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。また、界面活性剤の各分散液中における含有量としては、一般的には少量であり、具体的には0.01質量%以上10質量%以下の範囲であり、より好ましくは0.05質量%以上5質量%以下の範囲であり、更に好ましくは0.1質量%以上2質量%以下の範囲である。含有量が0.01質量%未満であると、樹脂粒子分散液、着色剤分散液、離型剤分散液等の各分散液が不安定になり、そのため凝集を生じたり、また凝集時に各粒子間の安定性が異なるため、特定粒子の遊離が生じる等の問題が生じる場合がある。特に、着色剤としてカーボンブラックを使用する場合には、遊離したカーボンブラックにより導電路が形成されてトナー粒子の帯電性が悪化する。また、10質量%を越えると、粒子の粒度分布が広くなったり、また、粒子径の制御が困難になる等の理由から好ましくない。一般的には粒子径の大きい懸濁重合トナー分散物は、界面活性剤の使用量は少量でも安定である。なお、界面活性剤の量が増加すると、トナーの帯電の環境安定性が低下するので、界面活性剤の添加量は少ない方が好適である。
【0087】
また、常温(25℃)で固体の水性ポリマー等も用いうる。具体的には、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系化合物、ポリビニルアルコール、ゼラチン、デンプン、アラビアゴム等が使用される。
【0088】
本実施形態における結着樹脂分散液の樹脂粒子の粒径は、体積平均粒径で1μm以下であり、好ましくは100nm以上300nm以下の範囲である。体積平均粒径が1μmを越えると、凝集融合して得るトナー粒子の粒度分布が広くなったり、遊離粒子が発生してトナーの性能や信頼性が低下する場合がある。なお、100nm未満ではトナーを凝集成長させるのに時間を要し工業的には適さない場合があり、300nmを超えると、離型剤及び着色剤の分散が不均一となると共にトナー表面性の制御が困難になる場合がある。
【0089】
本実施形態の乳化凝集法では、凝集工程において、互いに混合された結着樹脂分散液、離型剤分散液、及び必要に応じて着色剤分散液中の各粒子が凝集して凝集粒子を形成する。この凝集工程では、粒子の凝集を安定に、また迅速に、またはより狭い粒度分布を持つ凝集粒子を得るため、凝集剤を添加する。
【0090】
上記凝集剤としては、特に制限されないが、凝集粒子の安定性、凝集剤の熱や経時に対する安定性、洗浄時の除去を考慮し、無機酸の金属塩が用いられる。具体的には塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム等の無機酸の金属塩などが挙げられるが、本実施形態では、最終的なトナー粒子の定着時の粘度をコントロールする観点から、アルミニウムを含む凝集剤(例えば、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリミョウバン等)が好適である。
【0091】
これらの凝集剤の添加量は、電荷の価数により異なるが、いずれも少量であって、アルミニウム等の三価の場合は0.5質量%以下程度である。凝集剤の量は少ない方が好ましいため、価数の多い化合物を用いることが好ましい。
【0092】
上記凝集工程を経た後には、形成された凝集粒子の表面に結着樹脂粒子を付着させることにより被覆層を形成してもよい(付着工程)。これにより、いわゆるコア層とこのコア層を被覆する被覆層とにより構成されるコア/シェル構造を有するトナーが得られる。
【0093】
被覆層(シェル層)の形成は、凝集工程において凝集粒子(コア粒子)を形成した分散媒中に、結着樹脂分散液を追添加することにより行う。
【0094】
上記凝集工程、もしくは凝集工程ならびに付着工程を実施した後、合一工程にて凝集粒子の合一を行う。合一工程においては、凝集工程と同様の攪拌下で、凝集粒子の懸濁液のpHを5以上10以下の範囲にすることにより、凝集の進行を止め、溶液中にて、この凝集粒子中に含まれる結着樹脂の溶融温度のうち最も高い温度以上、または非晶性樹脂粒子(シェル層構成樹脂を含む)が含まれる場合には、非晶性樹脂粒子のガラス転移温度(樹脂の種類が2種類以上の場合は最も高いガラス点移温度を有する樹脂のガラス転移温度)に加熱し、上記式(1)で表される1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸またはそのナトリウム塩を加えて攪拌し、融合・合一することによりトナー粒子を得る。
【0095】
合一工程における加熱温度としては、上記結着樹脂のガラス転移温度以上であれば問題はない。好ましくは上記結着樹脂のガラス転移温度+10℃以上、より好ましくは+15℃以上で行うことで、融合・合一を進行させることができる。
【0096】
また、加熱時間としては、合一が為される程度行えばよく、0.2時間以上10時間以下行えばよい。その後、上記結着樹脂のガラス転移温度以下まで降温して、粒子を固化する際、降温速度によって粒子形状及び表面性が変化する場合がある。例えば、早い速度で降温した場合には球状化及び表面が平滑化しやすく、逆にゆっくり降温した場合は、粒子形状が不定形化し、粒子表面に凹凸が生じやすい。そのため、少なくとも0.5℃/分以上の速度で、好ましくは1.0℃/分以上の速度で降温するのが好ましい。
【0097】
上記凝集工程および合一工程終了後、合一粒子としてトナーが得られる。合一して得た合一粒子(トナー)は、後述するように、ろ過などの固液分離工程を経て洗浄を行っても良い。凝集剤として添加したアルミニウム等の金属は、上記1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸またはそのナトリウム塩とキレート錯体を形成し、洗浄工程により除去される。
【0098】
上記洗浄工程の後、固液分離工程、乾燥工程を経て本実施形態のトナー母粒子を得る。固液分離工程には特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好適である。さらに、乾燥工程も特に制限はないが、生産性の点から真空乾燥、凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。
【0099】
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、以上述べたようにしてトナー母粒子を作製し、このトナー母粒子に上記無機粒子等を添加し、サンプルミル、ヘンシェルミキサー等で混合して製造しうる。
【0100】
<静電荷像現像用現像剤>
本実施形態の静電荷像現像用現像剤は、本実施形態の静電荷像現像用トナーを含有する以外は特に制限はなく、目的に応じた成分組成をとりうる。本実施形態の静電荷像現像用現像剤は、静電荷像現像用トナーを単独で用いると一成分系の静電荷像現像用現像剤となり、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像用現像剤となる。
【0101】
例えば、二成分系の場合、使用するキャリアとしては特に制限はなく、それ自体公知のキャリアを使用することができる。例えば、特開昭62−39879号公報、特開昭56−11461号公報等に記載された樹脂被覆キャリア等の公知のキャリアが挙げられる。
【0102】
キャリアの具体例としては、以下の樹脂被覆キャリアが挙げられる。該キャリアの核体粒子としては、通常の鉄粉、フェライト、マグネタイト造型物などが挙げられ、その体積平均粒径は30μm以上200μm以下の範囲である。
【0103】
上記樹脂被覆キャリアの被覆樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸類、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の含窒素アクリル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン類、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロぺニルケトン等のビニルケトン類、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、弗化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン等のビニル系フッ素含有モノマーなどの単独重合体、または2種類以上のモノマーからなる共重合体、さらに、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等を含むシリコーン樹脂類、ビスフェノール、グリコール等を含有するポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0104】
これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上併用してもよい。
【0105】
被覆樹脂の被覆量としては、上記核体粒子100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の範囲が好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲がより好ましい。
【0106】
キャリアの製造には、加熱式ニーダー、加熱型ヘンシェルミキサー、UMミキサーなどが使用され、上記被覆樹脂の量によっては、加熱型流動転動床、加熱型キルンなどが使用される。
【0107】
上記二成分系の静電荷像現像用現像剤における本実施形態の静電荷像現像用トナーとキャリアとの混合比(質量比)は特に制限はなく、目的に応じて選択されるが、トナー:キャリア=1:100から30:100程度の範囲が望ましく、3:100から20:100程度の範囲がより望ましい。
【0108】
<画像形成装置>
次に、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーを用いた画像形成装置について説明する。
【0109】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、この像保持体上に形成された静電荷像(静電潜像)を現像剤によりトナー画像として現像する現像手段と、上記像保持体上に形成されたトナー画像を被転写体上に転写する転写手段と、上記被転写体上に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、上記像保持体を清掃部材で摺擦し転写残留成分を清掃する清掃手段とを有し、上記現像剤として本実施形態に係る静電荷像現像用現像剤を用いるものである。以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0110】
なお、この画像形成装置において、例えば上記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されたカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよく、該プロセスカートリッジは、現像剤保持体を少なくとも備え、本実施形態に係る静電荷像現像用現像剤を収容する構成となっている。
【0111】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の一例である4連タンデム方式のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。なお、以下の記載では、図1に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1から第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定めた距離離間して並設されている。なお、これらのユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0112】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図1における上方には、各ユニットを通して中間転写体として機能する中間転写ベルト20が配置されている。中間転写ベルト20は、図1における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22と、中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24とに巻回されて設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に予め定めた張力が与えられている。また、中間転写ベルト20を介して駆動ローラ22と対向する位置に、中間転写体清掃装置30が備えられている。
【0113】
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給される。
【0114】
上述した第1から第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)とした参照符号を付すことにより、第2から第4ユニット10M、10C、10Kについても説明できるので、それぞれの説明を省略する。
【0115】
第1ユニット10Yは、像保持体として機能する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定めた電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体清掃装置(清掃手段)6Yが順に配設されている。
【0116】
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0117】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800V程度の電位に帯電される。
【0118】
感光体1Yは、導電性の基体上に感光層を積層して形成されている。ここで導電性とは、JIS K 7194「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に基づき測定した体積抵抗率が10Ω・cm未満である導電性をいう。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0119】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
【0120】
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定めた現像位置まで回転される。次に、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(トナー画像)化される。
【0121】
現像装置4Y内には、本実施形態に係るイエロートナーが収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくと、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定めた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定めた1次転写位置へ搬送される。
【0122】
感光体1Y上のイエロートナー画像が1次転写位置へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに予め定めた1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部(図示せず)によって+10μA程度に制御されている。一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体清掃装置6Yで除去されて回収される。
【0123】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
【0124】
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2から第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0125】
第1から第4ユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被転写体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に予め定めたタイミングで給紙され、予め定めた2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0126】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれトナー画像が加熱され、色重ねしたトナー画像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0127】
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー画像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー画像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0128】
本実施形態の画像形成装置は、本実施形態の静電荷像現像用トナーを用いているため、定着工程における剥離性及び低温定着性が良好である
【0129】
<プロセスカートリッジ、トナーカートリッジ>
図2は、本実施形態に係る静電荷像現像用現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107とともに、帯電ローラ108、現像装置111、感光体清掃装置(清掃手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、一体化したものである。なお、図2において、符号300は被転写体を表す。
【0130】
上記プロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱可能に構成したものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0131】
図2に示すプロセスカートリッジ200では、帯電ローラ108、現像装置111、清掃装置(清掃手段)113、露光のための開口部118及び除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせる。本実施形態に係るプロセルカートリッジ200では、感光体107のほかには、帯電ローラ108、現像装置111、感光体清掃装置(清掃手段)113、露光のための開口部118及び除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備えるものであってもよい。
【0132】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。本実施形態に係るトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱され、少なくとも、上記画像形成装置内に設けられた現像装置111に供給するためのトナーを収納するトナーカートリッジであって、上記トナーを既述した本実施形態に係るトナーとしたものである。なお、本実施形態に係るトナーカートリッジには、少なくともトナーが収容されていればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば静電荷像現像用現像剤が収容されていてもよい。
【0133】
従って、トナーカートリッジが着脱されうる構成を有する画像形成装置においては、本実施形態に係るトナーを収納したトナーカートリッジを利用することにより、本実施形態に係るトナーを容易に現像装置に供給しうる。
【0134】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kが着脱されうる構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジを交換しうる。
【実施例】
【0135】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
【0136】
−結着樹脂分散液(1)の調製−
・エチレングリコール 22.1部
・ネオペンチルグリコール 21.6部
・1,9−ノナンジオール 68.6部
・テレフタル酸 97.2部
・トリメリット酸 76.8部
【0137】
上記成分をフラスコに仕込み、1.5時間かけて温度200℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを1.2部投入した。更に、生成する水を除去しながら同温度から6時間かけて240℃まで温度を上げ、240℃で更に4時間脱水縮合反応を継続し、重量平均分子量が60000であるポリエステル樹脂(1)を得た。
【0138】
次いで、これを溶融状態のまま、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に毎分100gの速度で移送した。別途準備していた水性媒体タンクに試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37質量%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で上記ポリエステル樹脂溶融体と同時に上記キャビトロンに移送した。回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm(4.9×10Pa)の条件でキャビトロンを運転し、固形分39.1%の結着樹脂分散液(1)を得た。
【0139】
−結着樹脂分散液(2)の調製−
・スチレン 450部
・nブチルアクリレート 167部
・アクリル酸 15部
・ドデカンチオール 11部
【0140】
上記成分を混合溶解して溶液を調整した。アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス)12質量部をイオン交換水250部に溶解し、上記溶液を加えてフラスコ中で分散し乳化した(単量体乳化液A)。さらに、同じくアニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス)1質量部を555部のイオン交換水に溶解し、重合用フラスコに仕込んだ。重合用フラスコを密栓し、還流管を設置し、窒素を注入しながらゆっくりと攪拌し、75℃まで重合用フラスコをウォーターバスで加熱し、保持した。過硫酸アンモニウム9部をイオン交換水92部に溶解し、重合用フラスコ中に定量ポンプを介して、20分かけて滴下した後、単量体乳化液Aをやはり定量ポンプを介して200分かけて滴下した。その後、ゆっくりと攪拌を続けながら重合用フラスコを75℃に、4時間保持して重合を終了した。これにより固形分量が34.1質量%の結着樹脂分散液(2)を得た。
【0141】
−着色剤分散液の調整−
・カーボンブラック(CABOT社製、R330) 80部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス) 10部
・イオン交換水 245部
【0142】
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて20分間分散した後、循環式長音波分散機(日本精機製作所製、RUS−600TCVP)にかけて固形分量24.7質量%の着色剤分散液を調製した。
【0143】
−離型剤分散液(1)の調製−
・離型剤(日本精鑞社製、FT105) 90部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス) 15部
・イオン交換水 270部
【0144】
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて20分間分散した後、循環式長音波分散機(日本精機製作所製、RUS−600TCVP)にかけて固形分量25.2質量%の離型剤分散液(1)を調製した。離型剤分散液(1)における離型剤粒子の数平均粒径は270nmであった。
【0145】
−離型剤分散液(2)の調製−
離型剤分散液(1)の調製において、ホモジナイザーによる分散時間を20分間から50分間に変更した以外は、同様の操作を行い、固形分量23.9質量%の離型剤分散液(2)を調整した。離型剤分散液(2)における離型剤粒子の数平均粒径は140nmであった。
【0146】
[実施例1]
−トナー母粒子(1)の作製−
・結着樹脂分散液(1) 152.2部
・着色剤分散液 28.7部
・離型剤分散液(1) 27.8部
・界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス) 6部
・イオン交換水 456部
【0147】
上記の成分を、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)で混合分散する。その後、この分散液に10%硫酸アルミニウム水溶液5部を加え、フラスコ内の内容物を攪拌した。均一に分散されたことを確認し、スリーワンモーターを用いて内容物を攪拌しながら、2℃/分の昇温速度で44℃まで加熱攪拌し、44℃で35分間保持した。その後、あらかじめpHを4.3に調整した、追加の結着樹脂分散液(1)65.2部を添加し、40分間攪拌した。得られた内容物を光学顕微鏡で観察すると、粒径が6.1μmの凝集粒子が生成していることが確認された。0.8mol/L水酸化ナトリウム水溶液を14部添加し、その後、温度を上げて87℃に到達した時点で1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(東京化成工業株式会社製)15%水溶液を10部添加したのち5時間かけて凝集粒子を合一させ、冷却後、ろ過し、イオン交換水で充分洗浄後、乾燥して、体積平均粒径が5.8μmのトナー母粒子(1)を得た。
【0148】
−トナー(1)の作製−
市販のヒュームドシリカRX50(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒子径D50:40nm)を用意した。
【0149】
得られたトナー母粒子(1)100部に対し、外添剤としてヒュームドシリカRX50(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒子径D50:40nm)を3部加え、ヘンシェルミキサーを用い周速45m/sで10分間ブレンドを行った後、45μm網目のシーブを用いて粗大粒子を除去し、トナー(1)を得た。
【0150】
[実施例2]
−トナー母粒子(2)の作製−
・結着樹脂分散液(2) 175.9部
・着色剤分散液 28.7部
・離型剤分散液(1) 27.8部
・界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス) 3部
・イオン交換水 486.7部
【0151】
上記の成分を、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)で混合分散する。その後、この分散液に10%硫酸アルミニウム水溶液5部を加え、フラスコ内の内容物を攪拌した。均一に分散されたことを確認し、スリーワンモーターを用いて内容物を攪拌しながら、2℃/分の昇温速度で47℃まで加熱攪拌し、47℃で50分間保持した。その後、あらかじめpHを2.7に調整した、追加の結着樹脂分散液(2)74.8部を添加し、40分間攪拌した。得られた内容物を光学顕微鏡で観察すると、粒径が6.0μmの凝集粒子が生成していることが確認された。0.8mol/L水酸化ナトリウム水溶液を14部添加し、その後、温度を上げて91℃に到達した時点で1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(東京化成工業株式会社製)15%水溶液を10部添加したのち5時間かけて凝集粒子を合一させ、冷却後、ろ過し、イオン交換水で充分洗浄後、乾燥して、体積平均粒径が5.7μmのトナー母粒子(2)を得た。
【0152】
−トナー(2)の作製−
トナー(1)の作製において、トナー母粒子(1)の代わりにトナー母粒子(2)を用いたこと以外は同様の操作を行い、トナー(2)を得た。
【0153】
[比較例1]
−トナー母粒子(3)の作製−
・結着樹脂分散液(1) 152.2部
・着色剤分散液 28.7部
・離型剤分散液(1) 27.8部
・界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス) 6部
・イオン交換水 456部
【0154】
上記の成分を、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)で混合分散する。その後、この分散液に10%硫酸アルミニウム水溶液5部を加え、フラスコ内の内容物を攪拌した。均一に分散されたことを確認し、スリーワンモーターを用いて内容物を攪拌しながら、2℃/分の昇温速度で44℃まで加熱攪拌し、44℃で35分間保持した。その後、あらかじめpHを4.3に調整した、追加の結着樹脂分散液(1)65.2部を添加し、40分間攪拌した。得られた内容物を光学顕微鏡で観察すると、粒径が6.2μmの凝集粒子が生成していることが確認された。0.8mol/L水酸化ナトリウム水溶液を14部添加し、その後、温度を上げて87℃に到達した時点で15%EDTA(エチレンジアミン四酢酸)水溶液を10部添加したのち、5時間かけて凝集粒子を合一させ、冷却後、ろ過し、イオン交換水で充分洗浄後、乾燥して、体積平均粒径が6.0μmのトナー母粒子(3)を得た。
【0155】
−トナー(3)の作製−
トナー(1)の作製において、トナー母粒子(1)の代わりにトナー母粒子(3)を用いたこと以外は同様の操作を行い、トナー(3)を得た。
【0156】
[実施例3]
−トナー母粒子(4)の作製−
・結着樹脂分散液(1) 152.2部
・着色剤分散液 28.7部
・離型剤分散液(1) 27.8部
・界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス) 18部
・イオン交換水 456部
【0157】
上記の成分を、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)で混合分散する。その後、この分散液に10%硫酸アルミニウム水溶液5部を加え、フラスコ内の内容物を攪拌した。均一に分散されたことを確認し、スリーワンモーターを用いて内容物を攪拌しながら、2℃/分の昇温速度で44℃まで加熱攪拌し、44℃で35分間保持した。その後、あらかじめpHを4.3に調整した、追加の結着樹脂分散液(1)65.2部を添加し、40分間攪拌した。得られた内容物を光学顕微鏡で観察すると、粒径が6.2μmの凝集粒子が生成していることが確認された。0.8mol/L水酸化ナトリウム水溶液を14部添加し、その後、温度を上げて87℃に到達した時点で1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(東京化成工業株式会社製)15%水溶液を10部添加したのち5時間かけて凝集粒子を合一させ、冷却後、ろ過し、イオン交換水で充分洗浄後、乾燥して、体積平均粒径が6.1μmのトナー母粒子(4)を得た。
【0158】
−トナー(4)の作製−
トナー(1)の作製において、トナー母粒子(1)の代わりにトナー母粒子(4)を用いたこと以外は同様の操作を行い、トナー(4)を得た。
【0159】
[実施例4]
−トナー母粒子(5)の作製−
・結着樹脂分散液(1) 152.2部
・着色剤分散液 28.7部
・離型剤分散液(2) 27.8部
・界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス) 6部
・イオン交換水 453部
【0160】
上記の成分を、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)で混合分散する。その後、この分散液に10%硫酸アルミニウム水溶液5部を加え、フラスコ内の内容物を攪拌した。均一に分散されたことを確認し、スリーワンモーターを用いて内容物を攪拌しながら、2℃/分の昇温速度で44℃まで加熱攪拌し、44℃で35分間保持した。その後、あらかじめpHを4.3に調整した、追加の結着樹脂分散液(1)65.2部を添加し、40分間攪拌した。得られた内容物を光学顕微鏡で観察すると、粒径が6.3μmの凝集粒子が生成していることが確認された。0.8mol/L水酸化ナトリウム水溶液を14部添加し、その後、温度を上げて87℃に到達した時点で1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(東京化成工業株式会社製)15%水溶液を10部添加したのち5時間かけて凝集粒子を合一させ、冷却後、ろ過し、イオン交換水で充分洗浄後、乾燥して、体積平均粒径が6.1μmのトナー母粒子(5)を得た。
【0161】
−トナー(5)の作製−
トナー(1)の作製において、トナー母粒子(1)の代わりにトナー母粒子(5)を用いたこと以外は同様の操作を行い、トナー(5)を得た。
【0162】
[実施例5]
−トナー母粒子(6)の作製−
・結着樹脂分散液(1) 119.1部
・着色剤分散液 28.7部
・離型剤分散液(1) 79.4部
・界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス) 6部
・イオン交換水 456部
【0163】
上記の成分を、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)で混合分散する。その後、前記分散液に10%硫酸アルミニウム水溶液5部を加え、フラスコ内の内容物を攪拌した。均一に分散されたことを確認し、スリーワンモーターを用いて内容物を攪拌しながら、2℃/分の昇温速度で44℃まで加熱攪拌し、44℃で35分間保持した。その後、あらかじめpHを4.3に調整した、追加の結着樹脂分散液(1)65.2部を添加し、40分間攪拌した。得られた内容物を光学顕微鏡で観察すると、粒径が6.3μmの凝集粒子が生成していることが確認された。0.8mol/L水酸化ナトリウム水溶液を14部添加し、その後、温度を上げて87℃に到達した時点で1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(東京化成工業株式会社製)15%水溶液を10部添加したのち5時間かけて凝集粒子を合一させ、冷却後、ろ過し、イオン交換水で充分洗浄後、乾燥して、体積平均粒径が6.2μmのトナー母粒子(6)を得た。
【0164】
−トナー(6)の作製−
トナー(1)の作製において、トナー母粒子(1)の代わりにトナー母粒子(6)を用いたこと以外は同様の操作を行い、トナー(6)を得た。
【0165】
−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸の測定−
以下のようにして、トナー粒子中に1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸が含有されているかどうかを確認した。
【0166】
(1)トナー0.1gを秤量し、これに0.5mol/LのNaOH水溶液50mL、及び20%界面活性剤(テイカ株式会社製テイカパワー)を適量加えて、28℃で2時間ボールミルを用いて混合・攪拌を行った。
(2)その後、(1)の結果物を遠心分離機により2000rpmで、30分間分離を行った。
(3)(2)で得られた上澄み液を、JIS規格5Aの濾紙を用い、固液分離を行った。
(4)(3)で得られた濾液8.5mL、酢酸緩衝溶液1.0mL(1M酢酸20.0mL、1mol/L酢酸ナトリウム30.0mL、及びイオン交換水100mLを十分に混合したもの)、並びに0.19%塩化鉄(III)水溶液0.5mLを三角フラスコに秤量し、十分に混合を行った。
(5)(4)で得られた試料を、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて、下記の条件により測定し、分散液中に1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸が含有されているかどうかを確認した。
【0167】
分析装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製LaChromElite L−2000シリーズ
カラム:HITACHI GL−W520−S(Φ7.8mm×300mm)
検出器:L−2455形ダイオードアレイ検出器 測定波長:UV190〜400nm
定量波長:UV284nm
移動相:50mmol/Lリン酸水素2カリウム
送液速度:1.0mL/分
サンプル注入量:10μL
カラム温度:50℃
【0168】
以上の測定手順により、実施例1,2にかかるトナー粒子中に1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸が含有されていることが確認できた。
【0169】
−定着特性の評価−
得られたトナー(1)〜(6)をそれぞれ使用した静電荷像現像用現像剤を、定着器を取り出したカラー複写機DocuCentreColor400(富士ゼロックス社製)の現像器に充填した。静電荷像現像用現像剤を充填した現像器を温度50℃、湿度85%の環境下において24時間放置した後に、トナー載り量が0.45mg/cmとなるように調整して未定着画像を出力した。なお出力画像は50mm×50mm大の画像密度が100%となるソリッド画像で、用紙は「C2R」(富士ゼロックスインターフィールド社製)を用いた。
【0170】
画像の定着は、カラー複写機DocuCenterIIC2200(富士ゼロックス社製)から取り出した定着器を、定着器のロール温度を変更できるように改造し、定着器の用紙搬送速度は250mm/秒として、この条件で上記未定着画像を定着器の温度を100℃から220℃まで5℃ずつ適宜変えて定着し定着画像を得た。
【0171】
最低定着温度(低温オフセットが発生しない最低温度であり、この値が低い程低温定着性が良好なことを表す。以下MFTという)以上において得られたホットオフセット温度(以下HOT)を評価した。なお、実施例4にてホットオフセット温度が210℃と低下が見られた以外は、他の実施例、比較例共にホットオフセットは発生しなかった。
【0172】
上記評価結果を表1に示す。なお、表1において、CyDTAは、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸を表し、EDTAは、エチレンジアミン四酢酸を表す。また、活性剤は、界面活性剤を表す。また、D50vは、50%体積平均粒子径を表す。また、GSDvは(84%体積粒子径/50%体積平均粒子径)/(50%体積平均粒子径/16%体積粒子径)を表す。また、保管後定着特性は、温度50℃、湿度85%の環境下において、24時間放置後の最低定着温度の上昇により評価できる。
【0173】
【表1】

【0174】
上記表1に示されるように、結着樹脂としてポリエステル樹脂を使用した実施例1、スチレンアクリル樹脂を使用した実施例2とも、保管前後におけるMFTは105℃(実施例1)、110℃(実施例2)であり、保管後のMFTが保管前のMFTより高くなることがなく、良好であった。
【0175】
これらの結果は、凝集工程の後にCyDTAを添加して凝集粒子を合一させることにより達成されたものである。CyDTAは、立体配座をとるシクロヘキサンを分子中に持つため、夏場の保管環境として想定される気温50〜60℃ではシクロヘキサン構造はある程度立体的な構造を維持するため、結着樹脂−離型剤の界面から脱離することがないので、トナー粒子中の離型剤の分散性を維持することができる。このため、オフセットが発生し難く、上記保管条件での保管前後のMFTが同じ値となっている。一方、CyDTAは、100℃程度の温度では変形し易くなるため、結着樹脂−離型剤の界面から脱離し、定着特性を阻害することがない。このため、定着強度が向上する。以上のことから、CyDTAの添加により、トナー粒子中の離型剤の分散性とトナーの定着性とを両立して向上できることがわかる。
【0176】
これに対して、比較例1は、添加剤としてEDTA使用しており、保管後のMFTが125℃に上昇(悪化)した。EDTAは、立体配座をとるシクロヘキサンを分子中に有しておらず、熱エネルギーにより立体的な構造が容易に変形するため、高温環境下に長時間曝されると離型剤と結着樹脂の界面から脱離し、トナー粒子中の離型剤の分散性を保つことができない。このため、保管後のMFTの値がCyDTAを添加した場合に較べて高温となっている。
【0177】
また、実施例3は、CyDTAを添加しているが、離型剤の偏在を抑制する一般的な対策として、界面活性剤の増量も行っている。界面活性剤は熱に対する構造安定性が高いため、界面活性剤を増量すると、トナー画像の用紙等への定着を若干阻害する。このため、実施例3ではMFTがやや高い結果となった。
【0178】
また、実施例4は、保管前のHOTが210℃に低下(悪化)した。実施例4の場合は、CyDTAを添加しているが、離型剤の偏在を抑制する一般的な対策として、離型剤分散液の粒子径を小さくしている(数平均粒径が140nmである離型剤分散液(2)を使用している)。離型剤粒子の数平均粒径が小さいものを使用することで、トナー母粒子中での分散性は向上する。一方、定着時に十分な剥離性を発現させるためには、離型剤粒子のドメインが一定の大きさである必要があり、離型剤粒子の数平均粒径が小さい場合は、そのドメインが一定の大きさ以下となるため、他の実施例、比較例に比較して剥離性が発現され難くなり、そのためホットオフセットの発生温度がやや低下した。
【0179】
また、実施例5は、保管前のMFTが120℃に上昇した。実施例5の場合は、CyDTAを添加しているが、離型剤の偏在を抑制する一般的な対策として、離型剤を増量している(トナー母粒子(6)の作製時に79.4部添加している)。離型剤の含有量が多くなると、離型剤によって結着樹脂同士のすべりが生じやすくなり、その結果樹脂分子間の凝集力が低下してしまい、MFTがやや高温となっている。
【0180】
以上の実施例3〜5に対して、CyDTAの添加により離型剤の分散性を確保できるので、界面活性剤の増量、離型剤分散液の粒子径の小径化、離型剤の増量は必要ないといえる。実施例1,2では、CyDTAを添加しつつ、界面活性剤の増量、離型剤分散液の粒子径の小径化、離型剤の増量を行わず、良好な定着性を確保できている。
【符号の説明】
【0181】
1Y,1M,1C,1K,107 感光体(像保持体)、2Y,2M,2C,2K,108 帯電ローラ、3Y,3M,3C,3K レーザ光線、3 露光装置、4Y,4M,4C,4K,111 現像装置(現像手段)、5Y,5M,5C,5K 1次転写ローラ、6Y,6M,6C,6K,113 感光体清掃装置(清掃手段)、8Y,8M,8C,8K トナーカートリッジ、10Y,10M,10C,10K 画像形成ユニット、20 中間転写ベルト、22 駆動ローラ、24 支持ローラ、26 2次転写ローラ(転写手段)、28,115 定着装置(定着手段)、30 中間転写体清掃装置、112 転写装置、116 取り付けレール、117 除電露光のための開口部、118 露光のための開口部、200 プロセスカートリッジ、P,300 記録紙(被転写体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂と離型剤と下記式(1)に示す構造の物質を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【化1】

上記式中、XはHまたはNaを表す。
【請求項2】
請求項1に記載の静電荷像現像用トナーであって、温度50℃、湿度85%の環境下において、24時間放置の保管条件で保管後における、低温オフセットが発生しない最低温度が、保管前における前記最低温度より高くならないことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用トナーを含むことを特徴とする静電荷像現像用現像剤。
【請求項4】
画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための、請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用トナーが収納され、
前記画像形成装置に着脱可能に構成されたことを特徴とするトナーカートリッジ。
【請求項5】
請求項3に記載の静電荷像現像用現像剤が収容された現像手段を備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
少なくとも体積平均粒径が1μm以下の結着樹脂粒子の分散液と離型剤粒子の分散液とを混合する混合工程と、
凝集剤を添加して前記結着樹脂粒子と離型剤粒子とを凝集させる凝集工程と、
前記凝集工程の後に下記式(1)に示す構造の物質を加え、前記結着樹脂粒子の主成分である結着樹脂の融点以上の温度で凝集粒子を合一させる合一工程と、
を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【化1】

上記式中、XはHまたはNaを表す。
【請求項7】
像保持体と、
前記像保持体の表面に静電荷像を形成させる静電荷像形成手段と、
請求項3に記載の静電荷像現像用現像剤により前記静電荷像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、
前記像保持体上に形成された前記トナー画像を被転写体上に転写する転写手段と、
前記被転写体上に転写された前記トナー画像を定着する定着手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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