説明

静電荷像現像用トナーの製造方法

【課題】トナー母体粒子の合着を防止し、さらに溶媒除去能力が高く、省エネルギーなトナーの製造方法。
【解決手段】有機溶媒中にトナー材料を含む油滴から有機溶媒を除去し、トナー母体粒子を作製する方法であって、前記油滴は、トナー材料を有機溶媒に溶解又は分散した油相を水系媒体中に乳化または分散させたものであり、前記有機溶媒除去工程は、前記油滴含有の前記水系媒体を、略鉛直な壁面に沿って流下させて液膜を形成し、該液膜に減圧水蒸気を接触させ、かつ前記壁面から加熱して油滴中の有機溶媒を除去するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザープリンタあるいはファクシミリ等の電子写真プロセスを用いる画像形成技術の高画質化に対応したトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、市場からの高画質化の強い要求から、電子写真装置及びトナーの開発が進められている。高画質化に対応したトナーとしては、粒径分布が狭い球形のトナー粒子のトナーが知られている。これにより、現像時のトナーの挙動が揃って、微小ドットの再現性を向上させることができる。しかしながら、小粒径で粒径分布が狭い球形のトナーは、クリーニング性が低下するという問題がある。特に、ブレードクリーニングでは、このようなトナーを安定的にクリーニングすることが困難である。
【0003】
このため、特にいわゆるケミカルトナーの場合、トナー粒子の形状を異形化することが知られている。これにより、トナー粒子の流動性を低下させることができ、ブレードクリーニングで、トナー粒子を除去しやすくなる。しかしながら、トナー粒子を異形化しすぎると、現像時のトナーの挙動が不安定となり、微小ドットの再現性が低下するという問題がある。さらに、定着前の被転写体上のトナー層中でのトナーの充填率が低下するため、定着時のトナー層中での熱伝導度が小さくなり、低温定着性が低下するという問題がある。特に、定着時に印加される圧力が小さい場合に、この傾向が顕著になる。
【0004】
例えば、結着樹脂と着色剤とを水と混和しない溶媒中で混合する工程、得られた組成物を分散安定剤の存在下で水系媒体中に分散させる工程、得られた懸濁液から加熱および/または減圧により溶媒を除去し、表面に凹凸を有する粒子を形成する工程、および加熱によりトナー粒子を球形化または変形する工程を有する静電荷像現像用トナーの製造方法が提案されている(特許文献1の特開平9−15903号公報)。しかしながら、規則性のない不定形トナーが得られるため、帯電安定性が低下するという問題がある。
【0005】
また、結着樹脂と着色剤等の混合物を水性媒体と混合し乳化させてトナー粒子を得る方法が提案されており(特許文献2の特開平5−66600号公報、特許文献3の特開平8−211655号公報)、懸濁重合法と同様にトナーの小粒径化や球形化に容易に対応できる。更に、懸濁重合法によりも使用する結着樹脂種が幅広く選択でき、揮発性有機化合物の低減が容易である。また、着色剤等の濃度を低濃度から高濃度まで任意に変えることが容易であるという長所を有しており、小粒径の球形トナーの製法として優れた特徴を持っている。
【0006】
このような、重合トナーは、水溶性媒体中に非水溶性液滴を作製する性質上、乳化後非水溶性液滴中の溶剤成分を除去する必要がある。
溶剤成分除去には減圧蒸留による方法があり、揮発成分の沸点を下げることで樹脂のガラス転移点以下で熱を与えることができる上、必要な熱エネルギーを小さくできるため、一般的に広く使用されている。
【0007】
乳化・分散工程を連続して行なう場合、タンク内を減圧すると、乳化機背圧に影響を及ぼし、乳化制御が複雑化することに加え、流入する乳化分散液の体積分も真空ポンプで抜き取る必要があり、タンク内の圧力調整が煩雑化するため、乳化が完了してから回分式で減圧蒸留するのが一般的である。
特許文献4の特開2002−55484号公報には、得られたトナー粒子を減圧及び加熱が可能な容器に供給し、トナー粒子のガラス転移温度Tg未満の温度の飽和水蒸気、過熱水蒸気、高湿空気などを容器に投入しながら減圧加熱処理し、回分式で未反応の重合性単量体を除去する方法が提案されている。
【0008】
しかし、回分式で減圧蒸留すると、連続して乳化された初期の乳化分散液は、タンク内で溶剤濃度が高いまま長時間放置されることになり、凝集、合一により乳化分散時に得られた小粒径かつシャープな粒径分布を維持することができず、また、上記減圧蒸留工程で乳化分散液の固形分濃度が増加するため、粒子が凝集し易く、タンク内壁面へのスケールも発生し易くなる。加えて、回分式では非水溶性液滴中の溶剤成分の除去効率が低く、一連のトナー製造工程でのボトルネックとなって、トナー製造全体の効率を下げる原因となっている。
【0009】
加熱した壁面に、壁面に沿って略鉛直下向きに溶媒を流し、連続して有機溶媒を除去する方法が知られているが、該方法を樹脂含有溶媒に適用すると、溶媒の膜が薄くすぐに樹脂が焦げ付くため、従来は適用が困難と考えられていたが、本発明者らは、壁面の加熱温度をトナー母体粒子のガラス転移点以下の温度にし、連続して有機溶媒を除去することを可能にしたトナーの製造方法を提案している(特許文献5の特願2009−298824号明細書参照)。
しかし、この方法ではトナー母体粒子同士が合着することがあり、小粒径で粒径分布が狭い球形のトナーを工業的に製造する場合のプロセス、特に、トナー組成物を有機溶媒に溶解又は分散した溶解物又は分散物を水系媒体中に分散し、得られた乳化分散液の溶剤を除去する工程に関して十分とは言えないことがその後の検討過程で判明した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記略鉛直な壁面に沿って乳化分散液を流下させ、有機溶媒を除去する工程を含むトナー製造方法を自らさらに改良するものに相当し、トナー母体粒子の合着を防止し、さらに溶媒除去能力が高く、省エネルギーなトナーの製造方法を提供することを目的とする。
また、粒度分布が狭く、かつ形状が揃い、微小ドットの再現性及びクリーニング性に優れるトナーを製造可能なトナーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記(1)〜(11)によって解決される。
(1)有機溶媒中にトナー材料を含む油滴から有機溶媒を除去し、トナー母体粒子を作製する工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記油滴は、少なくとも結着樹脂及び/又は結着樹脂前駆体、着色剤、離型剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散した油相(第一の液)を水系媒体中に乳化または分散させたものであり、
前記有機溶媒除去工程は、前記油滴含有の前記水系媒体(第二の液)を、略鉛直な壁面に沿って流下させて液膜を形成し、
該液膜に減圧水蒸気を接触させ、かつ前記壁面から加熱して油滴中の有機溶媒を除去するものであることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
(2)前記略鉛直な壁面は管の内壁面であり、該管の上部より減圧水蒸気を供給することを特徴とする前記第(1)項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(3)前記管は、上端円周にV字溝(Vノッチ)構造を有すものであることを特徴とする前記第(2)項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(4)前記第二の液は、25℃でのブルックフィールド粘度計の回転数60rpmの粘度測定値が50mPa・s〜1,000mPa・sであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(5)前記第二の液を連続して有機溶媒除去することを特徴とする前記第(1)乃至第(4)項のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(6)前記トナー母体粒子のガラス転移点温度より低い温度で、有機溶媒を除去することを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(7)前記トナー母体粒子の体積平均粒径が、3μm以上7μm以下であることを特徴とする前記第(1)乃至(6)項のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(8)前記トナー母体粒子の数平均粒経(Dn)に対する体積粒経(Dv)の比が(Dv/Dn)が、1.0以上1.2以下であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(9)前記トナー母体粒子の平均円形度が、0.94以上0.99以下であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(10)前記トナー母体粒子は、2μm以下である粒子の含有量が10個数%以下であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(9)項のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(11)前記トナー母体粒子は、ガラス転移点が40℃以上70℃以下であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(10)項のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、本発明の、有機溶媒中にトナー材料を含む油滴から有機溶媒を除去し、トナー母体粒子を作製する工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、前記油滴は、少なくとも結着樹脂及び/又は結着樹脂前駆体、着色剤、離型剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散した油相(第一の液)を水系媒体中に乳化または分散させたものであり、前記有機溶媒除去工程は、前記油滴含有の前記水系媒体(第二の液)を、略鉛直な壁面に沿って流下させて液膜を形成し、該液膜に減圧水蒸気を接触させ、かつ前記壁面から加熱して油滴中の有機溶媒を除去する工程母体粒子を有するトナーの製造方法によれば、微小ドットの再現性及びクリーニング性に優れるトナーを、連続的して多量のトナーを製造できると共に、省エネルギー化することができる。
上記製造方法により得られる母体粒子を有するトナーは、小粒径でかつ粒度分布が狭く、低温定着性、耐熱保存性、微小ドットの再現性及びクリーニング性に優れるため、安定した高品質画像を継続的に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る母体粒子を有するトナーの製造方法における有機溶媒を揮発させる工程において用いられる管の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る母体粒子を有するトナーの製造方法における有機溶媒を揮発させる工程において用いられる管の上端部の形状の一例を示す概略図である。
【図3】本発明に係る母体粒子を有するトナーの製造方法により得られるトナーを用いて画像形成する際に適用できる従来公知の画像形成装置の一例を示す図である。
【図4】有機溶媒を除去した管の内壁の状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のトナーの製造方法について、以下、詳細に説明する。
前述のように、本発明のトナーの製造方法は、有機溶媒中にトナー材料を含む油滴から有機溶媒を除去し、トナー母体粒子を作製する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、前記油滴は、少なくとも結着樹脂及び/又は結着樹脂前駆体、着色剤、離型剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散した油相(第一の液)を水系媒体中に乳化または分散させたものであり、前記油滴を含む水系媒体(第二の液)を、略鉛直な壁面に沿って流下させて液膜を形成し、該液膜に減圧水蒸気を接触させ、かつ前記壁面から加熱して油滴中の有機溶媒を除去することを特徴とするものである。
【0015】
本発明のトナー製造方法は、第二の液の液膜を壁面に沿って流下させることで液膜の流れが安定し、油滴(トナー母体粒子)間の距離が縮まらず、かつ一方向に流れるため合着を防止できる。さらに第二の液を薄膜流体とすることで、伝熱面積及び有機溶媒の蒸発面積を大きくでき、効率良く連続的に有機溶媒の除去が可能である。加えて、前記液膜に減圧水蒸気を接触させることにより、水蒸気が凝縮し第二の液に潜熱を与えるため、壁面の温度を高温にしないですみ、省エネルギー化できると共に壁面へトナー母体粒子が付着・焼き付きを防止でき、液膜の流れが乱れることがない。また、前記水系媒体(第二の液)中の水は、有機溶媒と共沸し混合蒸気となって排出されるが、排出される量以上の水が凝縮するため、前記第二の液は固形分が濃縮されず、合着を防止でき、トナーの粒度分布が悪化することなく、効率良く連続的に有機溶媒を除去することができ、微小ドットの再現性及びクリーニング性に優れるトナーを製造することが可能となる。
【0016】
本発明のトナーの製造方法では、前記のように、壁面および減圧水蒸気により加熱して有機溶媒を揮発させる。気体の減圧水蒸気と第二の液とが接触し、水蒸気が凝縮して液体に相変化すると、第二の液に潜熱を与え、第二の液の有機溶媒が気化する。100℃の水の潜熱は、539kcal/kgと大きく、相変化を伴う熱交換は、相変化を伴わない熱交換と比較して、大きな熱量を交換できる。
減圧水蒸気からの加熱のみでは、壁面等から熱が奪われ十分に第二の液に熱供給が行われず、有機溶媒の除去が効率良くできない。
壁面からの加熱は、有機溶媒を除去する効率をよくするために、供給する第二の液よりも壁面の温度を高くし、第二の液と壁面との温度差を確保する必要がある。この場合、母体粒子の凝集を防ぐために、壁面の温度の上限に制約があり、第二の液の液温を母体粒子のガラス転移点以下にすることが好ましい。
壁面に沿って流れる第二の液の温度がトナー母体粒子のガラス転移点を超えると、第二の液の粒子が、凝集しやすくなり、かつ、第二の液の凝集物が壁面に蓄積し、液膜が不均一になり、有機溶媒を効率よく揮発させることが困難になることがある。
減圧水蒸気を接触させることで、壁面の温度を母体粒子のガラス転移点を低くでき、壁面へのスケール付着等による伝熱能力の低下の恐れもなく、伝熱効率の高い有機溶媒の除去が可能である。
【0017】
本発明のトナーの製造方法では、減圧状態で有機溶媒を揮発させることが好ましい。大気圧下では、有機溶媒を効率よく揮発させることが困難になる。一般に、1気圧で100℃未満の沸点をもつ有機溶媒は、水よりも蒸気圧が高く、水と有機溶媒との混合物を減圧下で蒸留操作をした場合、有機溶媒が先に揮発し、やがて有機溶媒と水が共沸する。さらに有機溶媒が揮発した後は水が蒸発し、水を単蒸留した時の沸点に等しくなる。水蒸気蒸留の場合、有機溶媒と水との組成比が変化しても、水の沸点より、液温が高くなることはない。すなわち、蒸留する系内の圧力が決まれば、蒸留する液の上限温度が決まるため、有機溶媒除去工程の圧力を制御すれば、第二の液の液温を母体粒子のガラス転移点以下にすることは比較的容易であり、母体粒子の凝集を防ぐことができ、有機溶媒除去する系内の圧力は20kPa未満であることが好ましい。
【0018】
本発明のトナー製造方法で用いる第二の液は、25℃でのブルックフィールド粘度計の回転数60rpmの粘度測定値が50mPa・s〜1,000mPa・sであることが好ましく、100Pa・s〜300mPa・sであることがさらに好ましい。50mPa・s未満であると管内の壁面上に液膜が均一に形成されにくくなり、1000Pa・sを超えると液膜の膜厚が厚くなり、有機溶媒を効率よく揮発させることが困難になる。
【0019】
本発明のトナー製造方法は、上記のように、第二の液から有機溶媒を揮発除去してトナー母体粒子を作製した後、洗浄、乾燥し、精製することが好ましい。
前記トナー母体粒子は、体積平均粒径が3〜7μmであることが好ましい。体積平均粒径が3μm未満であると、一成分現像剤として用いる場合に、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着が発生することがある。また、二成分現像剤として用いる場合に、現像装置における長期の攪拌により、キャリアの表面にトナーが融着してキャリアの帯電能力を低下させることがある。一方、体積平均粒径が7μmを超えると、高解像で高画質の画像を形成することが困難になると共に、二成分現像剤として用いる場合に、現像剤中のトナーの収支が行われた場合に、トナーの粒径の変動が大きくなることがある。
【0020】
また、トナー母体粒子の数平均粒経(Dn)に対する体積粒経(Dv)の比が1.0〜1.2であることが好ましい。この比が1.2を超えると、現像時にトナーの挙動にバラツキが発生し、微小ドットの再現性が低下し、高品位な画像が得られないことがある。
なお、母体粒子の体積平均粒径及び数平均粒径は、コールターカウンター法を用いて測定することができる。
【0021】
また、トナー母体粒子は、平均円形度が0.94〜0.99であることが好ましい。平均円形度が0.94未満であると、トナー粒子の形状が球形から離れすぎるため、転写性が低下して高画質画像が得られないことがある。また、平均円形度が0.99を超えると、感光体や転写ベルトでクリーニング不良が発生し、画像上に汚れが発生することがある。
なお、母体粒子の粒径が2μm以下である粒子の含有量及び平均円形度は、フロー式粒子像分析装置を用いて測定することができる。
【0022】
本発明において、トナー母体粒子は、粒径が2μm以下である粒子の含有量が10個数%以下であることが好ましい。粒径が2μm以下である粒子の含有量が10個数%を超えると、二成分現像剤として用いる場合に、現像装置における長期の攪拌により、キャリアの表面にトナーが融着してキャリアの帯電能力を低下させることがある。
【0023】
本発明において、トナー母体粒子のガラス転移点が40〜70℃であることが好ましい。ガラス転移点が40℃未満であると、現像機内でのブロッキングや感光体へのフィルミングが発生しやすくなることがあり、70℃を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0024】
本発明において、トナー材料として用いられる着色剤としては、公知の染料及び顔料を使用することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロロオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロムバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトポン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0025】
着色剤としては、顔料と樹脂が複合化された複合体、即ち、マスターバッチを用いてもよい。マスターバッチは、顔料と樹脂の混合物に高せん断力を印加して、混合混練することにより得られる。この際、顔料と結着樹脂の相互作用を高めるために、有機溶媒を用いてもよい。混合混練する際に高せん断力を印加する高せん断分散装置としては、3本ロールミル等を用いることができる。
【0026】
また、マスターバッチは、フラッシング法を用いて製造してもよい。具体的には、顔料を含む水性ペーストを、樹脂及び有機溶媒と混合混練することにより、顔料を結着樹脂側に移行させた後、水分と有機溶媒を除去する。フラッシング法を用いると、顔料のウエットケーキをそのまま用いることができるため、乾燥する必要がない。
【0027】
マスターバッチを製造する際に用いられる樹脂としては、前述の変性ポリエステル、ポリエステルの他に、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0028】
本発明において、トナー材料として用いられる離型剤としては、特に限定されないが、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
これら以外の離型剤としては、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド、ポリn−ステアリルメタクリレート、ポリn−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートの単独重合体又は共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等の低分子量の結晶性高分子、側鎖に長鎖アルキル基を有する結晶性高分子等が挙げられる。
【0029】
前記第一の液を調製する際に用いられる有機溶媒は、揮発除去することを考慮すると、沸点が100℃未満であることが好ましい。このような有機溶媒としては、特に限定されないが、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、芳香族系溶媒(トルエン、キシレン等)及びハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素)が好ましい。
このとき、結着樹脂及び/又は活性水素基を有する化合物と該化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体が可溶な有機溶媒を使用すると、第一の液の粘度が低下し、トナーの粒度分布を狭くすることができる。
【0030】
前記第二の液を調製する際に用いられる水系媒体としては、特に限定されないが、水、水と混和可能な溶媒と水の混合溶媒等が挙げられる。水と混和可能な溶媒としては、特に限定されないが、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等);ジメチルホルムアミド;テトラヒドロフラン;セルソルブ類(メチルセルソルブ等);低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)等が挙げられる。
【0031】
また、水系媒体は、必要に応じて、分散剤を含有してもよい。これにより、第二の液の分散安定性を向上させると共に、トナーの粒度分布を狭くすることができる。分散剤としては、界面活性剤、無機微粒子分散剤、樹脂微粒子分散剤等を用いることができる。
【0032】
界面活性剤としては、特に限定されないが、アニオン性界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等);アミン塩型のカチオン性界面活性剤(アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等);4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤(アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等);非イオン性界面活性剤(脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等);両性界面活性剤(アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等)が挙げられる。中でも、添加量を非常に少量とすることができるため、フルオロアルキル基を有する界面活性剤が好ましい。
【0033】
フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数が2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。
【0034】
フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤の市販品としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)等が挙げられる。
フルオロアルキル基を有するカチオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級又は3級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0035】
フルオロアルキル基を有するカチオン性界面活性剤の市販品としては、サーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキン工業社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
【0036】
無機微粒子分散剤としては、特に限定されないが、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。
【0037】
樹脂微粒子分散剤としては、特に限定されないが、PMMA微粒子、ポリスチレン微粒子、スチレン−アクリロニトリル共重合体微粒子等が挙げられる。
樹脂微粒子分散剤の市販品としては、PB−200H(花王社製)、SGP(総研社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、SGP−3G(総研社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製等が挙げられる。
【0038】
また、無機微粒子分散剤、樹脂微粒子分散剤と、高分子系保護コロイドを併用してもよい。高分子系保護コロイドとしては、特に限定されないが、酸類(アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等);水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体(アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等);ビニルアルコール;ビニルアルコールとのエーテル類(ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等);ビニルアルコールとカルボン酸のエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等);アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、これらのメチロール化物;酸クロライド類(アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等);窒素原子又はその複素環を有するもの(ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等)等の単独重合体又は共重合体が挙げられる。また、これら以外の高分子系保護コロイドとしては、ポリオキシエチレン系(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等);セルロース類(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)等が挙げられる。
【0039】
また、母体粒子の表面に帯電制御剤を付着固定化したものを、トナーとして、用いてもよい。このとき、母体粒子と帯電制御剤を容器中で回転体を用いて混合する方法が知られているが、本発明においては、容器内壁より突出した固定部材が存在しない容器中で、回転体の周速が40〜150m/秒で混合することが好ましい。
【0040】
帯電制御剤としては、特に限定されないが、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、リンの単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料等が挙げられる。これら以外の帯電制御剤としては、スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩基等の官能基を有する高分子化合物が挙げられる。
【0041】
帯電制御剤の市販品としては、ニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)等が挙げられる。
帯電制御剤は、樹脂との複合体、即ち、マスターバッチとして添加してもよいし、第一の液を調製する際に添加してもよい。
【0042】
また、母体粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するために、母体粒子に無機微粒子を外添したものを、トナーとして用いることが好ましい。無機微粒子としては、特に限定されないが、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられ、二種以上併用してもよい。このとき、無機微粒子として、疎水性シリカ微粒子と疎水性酸化チタン微粒子を併用することが好ましく、疎水性シリカ微粒子と疎水性酸化チタン微粒子の平均粒径が50nm以下であることが特に好ましい。これにより、所望の帯電レベルを得るために現像機の内部でトナーを攪拌混合する際に、トナーから無機微粒子が脱離することを抑制することができる。
【0043】
本発明のトナーの製造方法を用いて製造されているトナーは、磁性キャリアと混合し、2成分系現像剤として用いることができる。また、本発明のトナーの製造方法を用いて製造されているトナーは、磁性キャリアを使用しない1成分系現像剤、即ち、磁性トナー或いは非磁性トナーとしても用いることができる。
【0044】
本発明のトナーの製造方法における有機溶媒を揮発させる工程に用いる脱溶剤装置の一例(概略構成)を図1に示す。
図1において、脱溶剤装置(1)は、供給部(2)と、加熱部(3)とを有し、供給部(2)は、第二の液を供給する供給口(4)と、減圧水蒸気供給口5と有する。加熱部(3)は、内管(6)と、外管(7)と、熱源供給口(8)、熱源排出口(9)、内管排出口(11)を有する。
供給タンク(15)の第二の液を、内管(6)の上面に設けられた供給口(4)から供給し、前記内管(6)の上端から内壁面に沿って第二の液の液膜を流下させると共に、水蒸気供給タンク(17)から、減圧水蒸気圧力調整弁(18)により調整された減圧水蒸気が、減圧水蒸気供給口5から内管(6)の内側に供給され、内管(6)の内壁面を流下する液膜に接触し、液膜が加熱される。さらに、内管(6)内は、有機溶媒を揮発させる際には真空ポンプ(24)と圧力調節弁(23)によって、20kPa以下に減圧される。
このとき、減圧水蒸気の供給量は、減圧水蒸気圧力調整弁(18)により調整され、真空ポンプ(24)、及び圧力調整弁(22)により、所望の減圧度に制御され、気液平衡により、脱溶剤温度は制御され、第二の液はトナー母体粒子のガラス転移点を超えることなく、脱溶剤することができる。
さらに、前記内管(6)と前記外管(7)の間には、熱媒体(10)が供給され、内管(6)が加熱され、第二の液の液温がトナー母体粒子の結着樹脂のガラス転移点以下の温度に制御されるため、トナー母体粒子が、軟化して凝集することなく、第二の液から有機溶媒を効率よく揮発させることができる。
また、内管(6)の下部にはタンク(12)が接続されている。このため、有機溶媒が除去された第二の液と、第二の液から揮発した有機溶媒のガス及び水蒸気とは、タンク(12)内で気体と液体に分離される。
有機溶媒が除去された第二の液は、タンク排出口(13)を経由して、排出ポンプ(19)により排出される。
他方、気体は、蒸気出口(14)を経由して、凝縮器(20)で、冷却水により凝縮され、凝縮液タンク(21)に貯められ、凝縮液排出ポンプ(23)により排出される。
【0045】
また、前記内管(6)の上端は、図2に示すような、周囲にV字の切り欠き部を有すると第二の液を安定して流下できるため好ましい。第二の液が供給される内管(6)の上部にV字溝を設けることで、粘性の高い処理物でも均一な液膜を形成できる。第二の液が内管に均一な液膜を形成することは、内管壁への固着を防止する上で重要である。液膜が偏流した場合、効率よく有機溶剤を除去できなかったり、発生した固着物が製品に混入したりする恐れがある。また、均一な液膜はトナー粒子に均等に熱を与えることができるため、得られたトナー粒子に品質にばらつきがない。
【0046】
本発明に係るトナーの製造方法により得られるトナーを含む1成分系現像剤及び2成分系現像剤は、従来公知の画像形成装置を用いて画像を形成する際に適用することができる。
【0047】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、本発明のトナーを用いて画像を形成する。なお、本発明のトナーは、一成分現像剤及び二成分現像剤のいずれにも用いることができるが、一成分現像剤として用いることが好ましい。また、本発明の画像形成装置は、無端型の中間転写手段を有することが好ましい。さらに、本発明の画像形成装置は、感光体と、感光体及び/又は中間転写手段に残存したトナーをクリーニングするクリーニング手段を有することが好ましい。このとき、クリーニング手段は、クリーニングブレードを有してもよいし、有さなくてもよい。また、本発明の画像形成装置は、加熱装置を有するローラ又は加熱装置を有するベルトを用いて画像を定着する定着手段を有することが好ましい。さらに、本発明の画像形成装置は、定着部材にオイル塗布を必要としない定着手段を有することが好ましい。さらに、必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなることが好ましい。
【0048】
本発明の画像形成装置は、感光体と、現像手段、クリーニング手段等の構成要素をプロセスカートリッジとして構成し、プロセスカートリッジを画像形成装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。また、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、分離手段及びクリーニング手段の少なくとも1つを感光体と共に支持してプロセスカートリッジを形成し、画像形成装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、画像形成装置本体のレール等の案内手段を用いて着脱自在の構成としてもよい。
【0049】
図3に、本発明の画像形成装置の一例を示す。この画像形成装置は、図示を省略している本体筐体内に、図2中、時計方向に回転駆動される潜像担持体(1)が収納されており、潜像担持体(1)の周囲に、帯電装置(2)、露光装置(3)、本発明の静電荷像現像用トナー(T)を有する現像装置(4)、クリーニング部(5)、中間転写体(6)、支持ローラ(7)、転写ローラ(8)、除電手段(不図示)等を備えている。
【0050】
この画像形成装置は、記録媒体例としての複数枚の記録紙(P)を収納する給紙カセット(不図示)を備えており、給紙カセット内の記録紙(P)は、図示しない給紙ローラにより1枚ずつ図示しないレジストローラ対でタイミング調整された後、転写手段としての転写ローラ(8)と、中間転写体(6)の間に送り出される。
【0051】
この画像形成装置は、潜像担持体(1)を図1中、時計方向に回転駆動して、潜像担持体(1)を帯電装置(2)で一様に帯電した後、露光装置(3)により画像データで変調されたレーザーを照射して潜像担持体(1)に静電潜像を形成し、静電潜像の形成された潜像担持体(1)に現像装置(4)でトナーを付着させて現像する。次に、現像装置(4)でトナー像を形成した潜像担持体(1)から中間転写体(6)に転写バイアスを付加してトナー像を中間転写体(6)上に転写し、さらに該中間転写体(6)と転写ローラ(8)の間に記録紙(P)を搬送することにより、記録紙(P)にトナー像を転写する。さらに、トナー像が転写された記録紙(P)を定着手段(不図示)に搬送する。
【0052】
定着手段は、内蔵ヒータにより所定の定着温度に加熱される定着ローラと、定着ローラに所定圧力で押圧される加圧ローラとを備え、転写ローラ(8)から搬送されてきた記録紙を加熱、加圧して、記録紙上のトナー像を記録紙に定着させた後、排紙トレー(不図示)上に排出する。
【0053】
一方、画像形成装置は、転写ローラ(8)でトナー像を記録紙に転写した潜像担持体(1)をさらに回転して、クリーニング部(5)で潜像担持体(1)の表面に残留するトナーを掻き落として除去した後、不図示の除電装置で除電する。画像形成装置は、除電装置で除電した潜像担持体(1)を帯電装置(2)で一様に帯電させた後、上記と同様に、次の画像形成を行う。
【0054】
以下、本発明の画像形成装置に好適に用いられる各部材について詳細に説明する。
潜像担持体(1)としては、その材質、形状、構造、大きさ等について、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としては、ドラム状、ベルト状が好適に挙げられ、その材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体等が挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点で、アモルファスシリコンや有機感光体が好ましい。
【0055】
潜像担持体(1)に静電潜像を形成する際には、例えば、潜像担持体(1)の表面を帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成手段により行うことができる。静電潜像形成手段は、例えば、潜像担持体(1)の表面を帯電させる帯電装置(2)と、潜像担持体(1)の表面を像様に露光する露光装置(3)を少なくとも備える。
【0056】
帯電は、例えば、帯電装置(2)を用いて潜像担持体(1)の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
帯電装置(2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えた、それ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等が挙げられる。
【0057】
帯電装置(2)の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等の形態を採ってもよく、電子写真装置の仕様や形態に合わせて選択可能である。磁気ブラシを用いる場合、磁気ブラシは、例えば、Zn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。また、ブラシを用いる場合、例えば、ファーブラシの材質としては、カーボン、硫化銅、金属又は金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで構成される。
帯電装置(2)は、上記のような接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電器を用いることが好ましい。
【0058】
露光は、例えば、露光装置(3)を用いて感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。露光装置(3)としては、帯電装置(2)により帯電された潜像担持体(1)の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光器が挙げられる。
【0059】
現像は、例えば、本発明のトナーを用いて静電潜像を現像することにより行うことができ、現像装置(4)により行うことができる。現像装置(4)は、例えば、本発明のトナーを用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、本発明のトナーを収容し、静電潜像にトナーを接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0060】
現像装置(4)としては、周面にトナーを担持し、潜像担持体(1)に接して回転すると共に、潜像担持体(1)上に形成された静電潜像にトナーを供給して現像を行う現像ローラ(40)と、現像ローラ(40)の周面に接し、現像ローラ(40)上のトナーを薄層化する薄層形成部材(41)を有する態様が好ましい。
【0061】
現像ローラ(40)としては、金属ローラ及び弾性ローラのいずれかが好適に用いられる。金属ローラとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルミニウムローラ等が挙げられる。金属ローラは、ブラスト処理を施すことで、比較的容易に任意の表面摩擦係数を有する現像ローラ(40)を作製することができる。具体的には、アルミニウムローラにガラスビーズブラストで処理することにより、ローラ表面を粗面化でき、現像ローラ上に適正なトナー付着量が得られる。
【0062】
弾性ローラとしては、弾性ゴム層を被覆したローラが用いられ、さらに、表面にはトナーと逆の極性に帯電しやすい材料からなる表面コート層が設けられる。弾性ゴム層は、薄層形成部材(41)との当接部での圧力集中によるトナー劣化を防止するために、JIS−Aで60度以下の硬度に設定される。表面粗さ(Ra)は、0.3〜2.0μmに設定され、必要量のトナーが表面に保持される。また、現像ローラ(40)には、潜像担持体(1)との間に電界を形成させるための現像バイアスが印加されるので、弾性ゴム層は、10〜1010Ωの抵抗値に設定される。現像ローラ(40)は、時計回りの方向に回転し、表面に保持したトナーを薄層形成部材(41)及び潜像担持体(1)との対向位置へと搬送する。
【0063】
薄層形成部材(41)は、供給ローラ(42)と現像ローラ(40)の当接位置よりも低い位置に設けられる。薄層形成部材(41)は、ステンレス(SUS)、リン青銅等の金属板バネ材料を用い、自由端側を現像ローラ(40)の表面に10〜40N/mの押圧力で当接させたもので、その押圧下を通過したトナーを薄層化するとともに摩擦帯電によって電荷を付与する。さらに、薄層形成部材(41)には摩擦帯電を補助するために、現像バイアスに対してトナーの帯電極性と同方向にオフセットさせた値の規制バイアスが印加される。
【0064】
現像ローラ(40)の表面を構成するゴム弾性体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、スチレン−ブタジエン系共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム又はこれらの2種以上のブレンド物等が挙げられる。これらの中でも、エピクロロヒドリンゴムとアクリロニトリル−ブタジエン系共重合体ゴムのブレンドゴムが特に好ましい。
現像ローラ(40)は、例えば、導電性シャフトの外周にゴム弾性体を被覆することにより製造される。導電性シャフトは、例えば、ステンレス(SUS)等の金属で構成される。
【0065】
転写は、例えば、潜像担持体(1)を帯電することにより行うことができ、転写ローラにより行うことができる。転写ローラとしては、トナー像を中間転写体(6)上に転写して転写像を形成する第一次転写手段と、転写像を記録紙(P)上に転写する第二次転写手段(転写ローラ(8))を有する態様が好ましい。このとき、トナーとして、二色以上、好ましくは、フルカラートナーを用い、トナー像を中間転写体(6)上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、複合転写像を記録紙(P)上に転写する第二次転写手段を有する態様がさらに好ましい。
【0066】
なお、中間転写体(6)は、特に制限はなく、目的に応じて、公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
転写手段(第一次転写手段、第二次転写手段)は、潜像担持体(1)上に形成されたトナー像を記録紙(P)側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有することが好ましい。転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。転写手段としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器等が挙げられる。
【0067】
なお、記録紙(P)としては、代表的には、普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0068】
定着は、例えば、記録紙(P)に転写されたトナー像に対して、定着手段を用いて行うことができ、各色のトナー像に対して、記録紙(P)に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナー像を積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトの組み合わせ等が挙げられる。なお、加熱加圧手段による加熱温度は、80〜200℃が好ましい。
【0069】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、部は、質量部を意味する。
【実施例】
【0070】
【実施例1】
【0071】
先ず、トナーの製造に必要な樹脂微粒子分散液、ポリエステル、プレポリマー、マスターバッチ(変性層状無機鉱物と樹脂との混合物からなる複合体)、トナー材料分散液、水系媒体をそれぞれ下記により製造した。
【0072】
(樹脂微粒子分散液の製造)
撹拌棒及び温度計を設置した反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩[エレミノールRS−30(三洋化成工業社製)]11部、スチレン83部、メタクリル酸83部、アクリル酸ブチル110部及び過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400rpmで15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。次に、系内温度が75℃になるまで加熱し、5時間反応させた。さらに、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30部を添加し、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液(樹脂微粒子分散液1)を得た。得られた樹脂微粒子分散液1は、LA−920(HORIBA社製)を用いて測定した体積平均粒径が105nmであった。また、樹脂微粒子分散液1の一部を乾燥して単離した樹脂は、ガラス転移点が59℃、重量平均分子量が150000であった。
【0073】
(ポリエステルの製造)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管を設置した反応容器中に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAのプロピオンオキサイド3モル付加物529部、テレフタル酸208部、イソフタル酸46部及びジブチルスズオキサイド2部を投入し、常圧下、230℃で5時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で5時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸44部を添加し、常圧下、180℃で2時間反応させて、ポリエステル1を合成した。得られたポリエステル1は、THF可溶分の重量平均分子量が5200、ガラス転移点が45℃、酸価が20mgKOH/gであった。
【0074】
(プレポリマーの製造)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管を設置した反応容器中に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物795部、イソフタル酸200部、テレフタル酸65部及びジブチルスズオキサイド2部を投入し、常圧の窒素気流下、210℃で8時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で脱水しながら5時間反応させた後、80℃まで冷却した。さらに、酢酸エチル1300部及びイソホロンジイソシアネート170部を添加して、2時間反応させて、プレポリマー1を合成した。得られたプレポリマー1は、重量平均分子量が5000であった。
【0075】
(マスターバッチの製造)
水1200部、4級アンモニウムイオンでイオン交換された変性ベントナイトBENTONE57(ELEMENTIS社製)174部及び1570部のポリエステル1を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。得られた混合物を、二本ロールを用いて150℃で30分間混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、マスターバッチ1を作製した。マスターバッチ中の変性ベントナイトは、体積平均粒径が0.4μm、粒径が1μm以上である粒子の含有量が2体積%であった。
【0076】
(トナー材料分散液〔第一の液〕の調製)
23.4部のプレポリマー1、123.6部のポリエステル1、20部のマスターバッチ1及び酢酸エチル80部を入れて攪拌した。一方、カルナバワックス15部、カーボンブラック20部及び酢酸エチル120部を、ビーズミルを用いて30分間分散した。得られた2つの液を混合し、TK式ホモミキサーを用いて12000rpmで5分間攪拌した後、ビーズミルを用いて10分間分散した。得られた分散液にイソホロンジアミン2.9部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて12000rpmで5分間攪拌して、トナー材料分散液1を調製した。
【0077】
(水系媒体の製造)
イオン交換水529.5部、70部の樹脂微粒子分散液1及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部を入れ、TK式ホモミキサーを用いて12000rpmで攪拌し、水系媒体1を調製した。
【0078】
(第二の液の調製)
水系媒体を72kg/時、トナー材料分散液を48kg/時でパイプラインホモミキサー(特殊機化工業製)に供給し、2960rpmの回転数で連続運転を行ない、第二液を120kg/時で連続的に得た。得られた乳化液〔第二の液〕は、ブルックフィールド粘度計を用いて測定される回転数60rpm、温度25℃における粘度が200mPa・秒であった。また、乳化液中の酢酸エチルの含有量は20質量%であった。
【0079】
(有機溶媒の除去)
図1に示した構成の管(脱溶剤装置1)を用いて、上記乳化液〔第二の液〕中の有機溶媒を下記条件により、揮発させた。
この脱溶剤装置の内管(6)は、長さ3m、内径が28.4mm、伝熱面の周囲長(L)が89.2mm、伝熱面積(S)が0.27mである。
内管(6)の内壁面の温度を40℃、水蒸気供給量3kg/時となるように、減圧水蒸気圧力調整弁(15)を開け、内管(6)内の圧力を75mmHg(10kPa)として、脱溶剤装置(1)(図1参照)に第二の液(乳化液)液温20℃を供給速度120kg/時で、上記第二の液の調製工程で作製された第二の液を連続して供給し、内管(6)の内壁面を流下させた。同時に内管と外管の間に、40℃の温水(熱媒体10)を10kg/分で流し、液膜流とされた乳化液の温度を前記管の壁面を介して母体粒子のガラス転移点以下に維持しつつ加熱して酢酸エチルを揮発させた。
このとき、内管(6)を通過した乳化液〔第二の液〕の有機溶媒の濃度は2.5重量%であった。
【0080】
次に、得られたスラリーの一部をジャケット付タンク中に入れて、ジャケットの温水温度を45℃として熟成した後、濾別、洗浄、乾燥、風力分級し、球形状の母体粒子を得た。
得られた母体粒子100部及び帯電制御剤ボントロンE−84(オリエント化学社製)0.25部をQ型ミキサー(三井鉱山社製)に仕込み、タービン型羽根の周速を50m/秒に設定して、2分間混合及び1分間休止を5サイクル行った。次に、疎水性シリカH2000(クラリアントジャパン社製)を0.5部添加し、タービン型羽根の周速を15m/秒に設定して、30秒間混合及び1分間休止を5サイクル行って、トナーを作製した。
【0081】
実施例1における乳化液〔第二の液〕中の有機溶媒の脱溶媒条件、揮発工程に要した時間、乳化液中の酢酸エチル含有量、乳化液中の固形分〔揮発させる前のスラリーの固形分〕、揮発工程に要した時間、揮発工程後のスラリーの温度、スラリー中の残存酢酸エチル量、揮発工程後のスラリーの固形分、内管排出部の付着の有無をまとめて下記表1に示す。
【実施例2】
【0082】
実施例1において、図2に示す内管(6)の上部円周を25等分する高さ4.26mm、角度45℃のV字溝を設置した内管(6)を用いる他は実施例1と同様にしてトナーを作製した。
内管(6)を通過した乳化液〔第二の液〕の有機溶媒の濃度は2.5重量%であった。
なお、図2(a)は内管上部のV字溝構造を示し、図2(b)は該V字溝構造の拡大図である。
【実施例3】
【0083】
前記トナー材料分散液の調合において、23.4部のプレポリマー1、123.6部のポリエステル1、20部のマスターバッチ1及び酢酸エチル80部を入れて攪拌した。一方、カルナバワックス15部、カーボンブラック20部及び酢酸エチル60部を、ビーズミルを用いて30分間分散した。このトナー材料分散液を70kg/時、水系媒体を50kg/時として、実施例1と同様にして、第二の液を作製した。このときの25℃の乳化液粘度はブルックフィールド粘度計の回転数60rpmで1000mPa・sであった。また、乳化液の有機溶媒濃度は22.2重量%であった。
この第二の液を用いる他は実施例1と同様にしてトナーを得た。
内管(6)を通過した乳化液〔第二の液〕の有機溶媒の濃度は1.5重量%であった。
【実施例4】
【0084】
前記トナー材料分散液の調合において、11.7部のプレポリマー1、61.8部のポリエステル1、20部のマスターバッチ1及び酢酸エチル180部を入れて攪拌した。一方、カルナバワックス15部、カーボンブラック20部及び酢酸エチル120部を、ビーズミルを用いて30分間分散した。このトナー材料分散液を36kg/時、水系媒体を84kg/時として、実施例1と同様にして、第二の液を作製した。このときの25℃の乳化液粘度はブルックフィールド粘度計の回転数60rpmで50mPa・sであった。また、乳化液の有機溶媒濃度は20.9重量%であった。
この第二の液を用いる他は実施例1と同様にしてトナーを得た。
内管(6)を通過した乳化液〔第二の液〕の有機溶媒の濃度は1.3重量%であった。
【0085】
[比較例1]
有機溶媒を除去する工程を、間接加熱が可能なジャケット付きタンクを用いた従来のバッチ処理により実施した。タンク下方に減圧水蒸気を流入する供給口を設置し、減圧水蒸気を3kg/時となるように供給した。実施例1と同様にして調整した120kgの乳化液を、ジャケット加熱温水を40℃、10kg/分、タンク内の減圧度75mmHg(10kPa)、有機溶剤濃度が実施例1と同様に2.5重量%となるまで揮発させ、トナーを作製した。
【0086】
[比較例2]
減圧水蒸気を供給しない他は、実施例1と同様にしてトナーを作製した。
内管(6)を通過した乳化液〔第二の液〕の有機溶媒の濃度は11重量%であった。
【0087】
上記実施例及び比較例の操行条件を表1に示す。
揮発工程後の乳化液に関して、体積平均粒径(Dv)、及び体積平均粒径(Dv)と数平均粒径(Dn)の比(Dv/Dn)、母体粒子における粒径が2μm以下である粒子の含有量、母体粒子の平均円形度、残溶剤濃度、内管またはタンク壁面の固着の評価結果を表2に示す。
作製したトナーの画像粒状性、鮮鋭性、クリーニング性、粗大粒子数の評価結果を表3に示す。
上記作製した実施例、比較例の母体粒子及びトナーに関して下記評価方法により評価した。
【0088】
<減圧水蒸気供給量>
純水を張った減圧下のタンク外周にコイル状に銅管を巻き、減圧水蒸気圧力調整弁(15)から水蒸気を供給し、純水を蒸発させた。供給した減圧水蒸気は、純水に熱を供給して凝縮するため、銅管内でトラップした蒸気量を計量した。
【0089】
<内管の固着>
有機溶媒を除去した後の内管に固着が見られない場合を○、固着が少ない場合を△、固着が多い場合を×として、評価した。
固着が見られない内管、固着が少ない内管、及び、固着が多い内管の写真を、それぞれ図4に示す。
【0090】
<スラリー中の酢酸エチルの残存量>
トルエン4gをメスフラスコ中に計量して、DMFで500mLに希釈し、内標準液を調製した。次に、スラリー1.5gをDMFで約50mLに希釈した後、内標準液10mLをホールピペットで採取して投入した後、スターラーを用いて、400rpmで4分間攪拌した。さらに、得られたスラリー希釈液をガスクロマトグラフGC−2010(島津製作所社製)のオートサンプラーにセットし、測定した。測定終了後に、内標準物質のトルエンと酢酸エチルの比率から、内標準法によりスラリー中の酢酸エチルの残存量を算出した。なお、スラリー希釈液の注入量を2.0μLとした。測定条件を以下に示す。
試料気化室
注入モード:スプリット
気化室温度:180℃
キャリアガス:He
圧力:40.2kPa
全流量:56.0mL/分
カラム流量:1.04mL/分
線速度:20.0cm/秒
パージ流量:3.0mL/分
スプリット比:50.0
カラム
名称:ZB−50
液相の膜厚:0.25μm
長さ:30.0m
内径:0.32mmID
カラム上限温度:340℃
カラムオーブン
カラム温度:60℃
温度プログラム:60℃ホールド6分→昇温速度60℃/分→230℃ホールド5分
検出器
検出器温度:250℃
メイクアップガス:N2/Air
メイクアップ流量:30.0mL/分
N2流量:47.0mL/分
Air流量:400mL/分
【0091】
<数平均粒径(Dn)及び体積平均粒径(Dv)>
コールターカウンターTA−II型(コールター社製)を、個数分布及び体積分布を出力するインターフェイス(日科技研社製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC社製)と接続して、数平均粒径及び体積平均粒径を測定した。具体的には、まず、電解液ISOTON−II(コールター社製)100〜150ml中に、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)ネオゲンSC−A(第一工業製薬社製)0.1〜5mlを加えた。次に、試料(母体粒子)2〜20mgを加え、超音波分散器を用いて約1〜3分間分散させた。得られた試料分散液の数平均粒径及び体積平均粒径を、100μmアパーチャーを用いて測定した。なお、チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32.00〜40.30μmの13チャンネルを使用し、粒径が2.00〜40.30μmの粒子を測定対象とした。
【0092】
<平均円形度及び粒径が2μm以下である粒子の含有量>
フロー式粒子像分析装置FPIA−2100及び解析ソフトFPIA−2100 Data Processing Program for FPIA version00−10(シスメックス社製)を用いて、平均円形度及び粒径が2μm以下である粒子の含有量を測定した。具体的には、まず、ガラス製の100mlビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)ネオゲンSC−A(第一工業製薬社製)0.1〜0.5ml及び試料(母体粒子)0.1〜0.5gを添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜた後、イオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を、超音波分散器(本多電子社製)を用いて3分間分散させた際の濃度が5000〜15000個/μlとなる場合の平均円形度及び粒径が2μm以下である粒子の含有量を測定した。
【0093】
<画像粒状性、鮮鋭性>
デジタルフルカラー複写機imagioColor2800(リコー社製)を用い、単色で写真画像を出力し、画像粒状性、鮮鋭性を目視で評価した。なお、画像粒状性、鮮鋭性がオフセット印刷並みであるものを◎、オフセット印刷よりわずかに悪い程度であるものを○、オフセット印刷よりかなり悪い程度であるものを△、従来の電子写真画像程度(非常に悪い)であるものを×として、判定した。
【0094】
<クリーニング性>
清掃工程を通過した感光体上の転写残トナーを、スコッチテープ(住友スリーエム社製)を用いて白紙に移した。次に、転写残トナーを移した白紙と移していない白紙の反射濃度を、マクベス反射濃度計RD514型を用いて測定した。なお、反射濃度の差が0.01未満であるものを○(良好)、0.1以上であるものを×(不良)として、判定した。
【0095】
<粗大粒子数>
直径5mmの穴の開いた冶具に、目開き25μのメッシュを張り、トナー粒子を0.2g乗せ、反対側からトナー粒子を吸引した。メッシュ上に残ったものを透明テープで採取し、マイクロスコープで粒子数を測定した。粗大粒子数100個未満を◎、100個以上150個未満を○、150個以上200個未満を△、200個以上を×として、評価した。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
実施例1と比較例1から、揮発工程において乳化液を液膜化し、連続処理する本方式が装置壁面へ固着を起こさず、短時間で効率よく優れた品質を有するトナーを作製できていることが確認できた。
実施例2から、内管上部にV字溝を設けることで、液膜のさらなる均一化が達成できる。液膜を均一にすることで、内管の固着を低減できるだけでなく、トナー粒子の凝集をさらに低減することが可能である。
実施例3から、乳化液の粘度を上げると、揮発工程で除去される有機溶媒が多くなっている。乳化液の粘度が高いと、液膜流としたときに、膜厚が厚くなる為、装置内で滞留する時間が長くなったためと思われる。
実施例4から、乳化液の粘度を下げると、揮発工程で除去される有機溶媒が多くなっている。乳化液の粘度が低下すると、膜厚は薄くなり、滞留時間は低下するが、伝熱面積が増加するため、効果的に有機溶媒を除去できたと思われる。
比較例1では、タンク下方から供給した減圧水蒸気と乳化液が効率良く接触できないため、揮発工程に長時間必要であり、トナー製造工程でのボトルネックとなっていることが分かる。また、高濃度の溶剤下に長時間トナー粒子がさらされるため、トナー粒子の凝集が起こる。さらに、揮発工程を経ることで、溶剤と水が共沸し乳化液のトナー粒子濃度が高くなるため、トナー粒子の凝集およびタンク壁面への固着が生じたと考えられる。
比較例2から、減圧水蒸気を供給せずに揮発工程を行うと、溶剤を揮発させるだけの熱量を供給できず、処理後の乳化液の溶剤濃度は11重量%であった。そのため、トナー粒子の凝集や内管への固着が生じたと思われる。
【符号の説明】
【0100】
図1について
1 脱溶剤装置
2 供給部
3 加熱部
4 供給口
5 減圧水蒸気供給口
6 内管
7 外管
8 熱源供給口
9 熱源排出口
10 熱媒体
11 内管排出口
12 タンク
12a 流路開閉弁
12b 循環流路
12c 流路開閉弁
13 タンク排出口
14 蒸気出口
15 供給タンク
15a 第二の液の液膜
16 供給ポンプ
17 水蒸気供給タンク
17a 水蒸気導入口
18 減圧水蒸気圧力調節弁
19 排出ポンプ
20 凝縮器
21 凝縮液受けタンク
22 圧力調整弁
23 凝縮液排出ポンプ
24 真空ポンプ

図3について
1 潜像担持体
2 帯電装置
3 露光装置
4 現像装置
40 現像ローラ
41 薄層形成部材
42 供給ローラ
5 クリーニング部
6 中間転写体
7 支持ローラ
8 転写ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0101】
【特許文献1】特開平9−15903号公報
【特許文献2】特開平5−66600号公報
【特許文献3】特開平8−211655号公報
【特許文献4】特開2002−55484号公報
【特許文献5】特願2009−298824号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中にトナー材料を含む油滴から有機溶媒を除去し、トナー母体粒子を作製する工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記油滴は、少なくとも結着樹脂及び/又は結着樹脂前駆体、着色剤、離型剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散した油相(第一の液)を水系媒体中に乳化または分散させたものであり、
前記有機溶媒除去工程は、前記油滴含有の前記水系媒体(第二の液)を、略鉛直な壁面に沿って流下させて液膜を形成し、
該液膜に減圧水蒸気を接触させ、かつ前記壁面から加熱して油滴中の有機溶媒を除去するものであることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項2】
前記略鉛直な壁面は管の内壁面であり、該管の上部より減圧水蒸気を供給することを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項3】
前記管は、上端円周にV字溝(Vノッチ)構造を有すものであることを特徴とする請求項2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
前記第二の液は、25℃でのブルックフィールド粘度計の回転数60rpmの粘度測定値が50mPa・s〜1,000mPa・sであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
前記第二の液を連続して有機溶媒除去することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項6】
前記トナー母体粒子のガラス転移点温度より低い温度で、有機溶媒を除去することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項7】
前記トナー母体粒子の体積平均粒径が、3μm以上7μm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項8】
前記トナー母体粒子の数平均粒経(Dn)に対する体積粒経(Dv)の比が(Dv/Dn)が、1.0以上1.2以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項9】
前記トナー母体粒子の平均円形度が、0.94以上0.99以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項10】
前記トナー母体粒子は、2μm以下である粒子の含有量が10個数%以下であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項11】
前記トナー母体粒子は、ガラス転移点が40℃以上70℃以下であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate